説明

椅子型マッサージ機

【課題】 座部に着座した被施療者の大腿部を適切に保持しつつ、この大腿部を押圧施療することができる椅子型マッサージ機を提供する。
【解決手段】 椅子型マッサージ機1は、座部2に着座した被施療者の大腿部の外側面に対向して設けられた大腿施療部20を備え、大腿施療部20は、被施療者の大腿部を保持するための大腿保持具21と、大腿保持具21の前側に配設されて大腿部を押圧施療する前側施療具22と、大腿保持具21の後側に配設されて大腿部を押圧施療する後側施療具23とから構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被施療者が着座する座部と、該座部に着座した被施療者の上半身を後方から支持する背凭れ部と、前記座部に着座した被施療者の大腿部の外側面に対向して設けられた大腿施療部とを備える椅子型マッサージ機に関し、特に、座部に着座した被施療者の大腿部を保持した状態で他の部位を押圧施療することができる椅子型マッサージ機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、被施療者が着座する座部と、該座部に着座した被施療者の上半身を後方から支持する背凭れ部とを備える椅子型マッサージ機が多数知られている。このような椅子型マッサージ機の中には、座部に着座した被施療者の大腿部を施療することのできるものも提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この特許文献1に記載の椅子型マッサージ機の場合、座部の側方に立設された左右のアームレストの内側面にエアセルが配設されており、ポンプからの給気によってこのエアセルを膨張させ、座部に着座した被施療者の大腿部を押圧施療できるようになっている。
【特許文献1】特開2006−255155号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、被施療者の身体のうち大腿部は胴体部に比べて重量が小さく、しかも可動範囲が広いため、座部に着座した被施療者の大腿部を押圧施療しようとすると、その押圧力によって移動してしまって適切な施療を行うのが困難になる場合がある。例えば、被施療者が座部に着座したときに踵(かかと)が接地したり、下腿がフットレストにより下方から支持された状態になると、大腿部と座部との接触圧が小さくなるか、又は極端な場合には座面から大腿部が浮いた状態になるため、外方からの押圧力によって大腿部の姿勢は変わりやすくなり、適切な押圧施療を行うことが困難になる。特に、特許文献1に開示されているように大腿部を外側方から押圧施療する場合には、大腿部は内側方へと容易に移動してしまう。
【0005】
これに対して、左右の大腿部の間に配設したエアセルを膨張させ、大腿部を内側から支持することにより、外側方からの押圧力によって大腿部が移動しにくくすることも可能ではある。しかしながらこの場合、座部の中央部分に大きく膨張するエアセルを配設する必要があり、また一般的には、蛇腹状に折り畳まれてエアセルの膨張時に展開可能なカバーによってこのエアセルの上方を覆う必要がある。このように、エアセルを座部の中央に配設し、これを折り畳まれたカバーで覆った構成とすると、埃などの塵芥が折り畳まれたカバーの隙間に溜まりやすくなるなど不都合が生じる。
【0006】
また、座部(特に大腿部内側)にエアセルや折り畳まれて厚みのあるカバーなどがあると、着座した被施療者に対して不快感を与える場合がある。
【0007】
そこで本発明は、座部に着座した被施療者の大腿部を適切に保持しつつ、この大腿部を押圧施療することができる椅子型マッサージ機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は上述したような事情に鑑みてなされたものであり、本発明に係る椅子型マッサージ機は、被施療者が着座する座部と、該座部に着座した被施療者の上半身を後方から支持する背凭れ部と、前記座部に着座した被施療者の大腿部の外側面に対向して設けられた大腿施療部とを備え、該大腿施療部は、被施療者の大腿部を保持するための大腿保持具と、該大腿保持具の前側に配設されて大腿部を押圧施療する前側施療具と、前記大腿保持具の後側に配設されて大腿部を押圧施療する後側施療具とから構成されている。
【0009】
このような構成とすることにより、大腿保持具によって大腿部を保持しつつ、前側施療具及び後側施療具によって適切に大腿部を押圧施療することができる。また、大腿部を保持するに際して座部にエアセルを設ける必要がないため、座部に塵芥が溜まりにくくなるなどの利点がある。
【0010】
また、前記大腿保持具は、給排気によって膨張及び収縮すると共に収縮状態で平坦な形状を成す第1エアセルを有し、該第1エアセルは、前記座部において被施療者と接触する座面より上方へ突出するように立設され、給気によって下部を基端として上部が展開するように構成されていてもよい。このような構成とすることにより、下部を基端として展開する第1エアセルの上部が大腿部を上方から圧迫するため、このような第1エアセルによって大腿部を適切に保持することができる。
【0011】
また、前記前側施療具及び後側施療具のうち少なくとも一方は、給排気によって膨張及び収縮すると共に収縮状態で平坦な形状を成す第2エアセルを有し、該第2エアセルは、前記座面より上方へ突出するように立設され、給気によって前記大腿保持具に近接する側の端部を基端として離隔する側の端部が展開するように構成されていてもよい。このような構成とすることにより、前側施療具が有する第2エアセルによっては、大腿部における膝部近傍を外側方から押圧施療でき、後側施療具が有する第2エアセルによっては、大腿部における腰部近傍を外側から押圧施療することができる。その結果、このような部位を押圧しつつ、膝部近傍の膝陽関(ひざのようかん:「足陽関」とも称される)というツボや、腰部近傍の居りょう(きょりょう)又は環跳(かんちょう)といったツボを押圧して刺激することができる。
【0012】
また、前記大腿保持具が有する前記第1エアセルは、前記前側施療具又は前記後側施療具が有する前記第2エアセルに比べて、前記座面から上方への突出寸法が大きくなるように構成されていてもよい。このような構成とすることにより、大腿保持具の第1エアセルによって、より上方から大腿部を圧迫することができるため、大腿保持具によって大腿部をより確実に保持することができる。
【0013】
また、前記大腿保持具、前記前側施療具、及び前記後側施療具の動作を制御する制御部を更に備え、該制御部は、前記大腿保持具、前記前側施療具、及び前記後側施療具を互いに独立して制御可能に構成されていてもよい。このような構成とすることにより、被施療者の大腿部に対して多様な施療を実行することができる。
【0014】
また、前記制御部は、前記大腿保持具によって前記座部に着座した被施療者の大腿部を保持した状態で、前記前側施療具及び前記後側施療具のうち少なくとも一方を動作させて大腿部を押圧施療すべく構成されていてもよい。このような構成とすることにより、大腿部の姿勢を略一定に保持しつつ、これを外側方から押圧施療することができる。
【0015】
また、前記座部には、これに着座した被施療者の大腿部又は臀部の下面を上方へ押圧施療する座部施療具が設けられ、前記制御部は、前記大腿保持具によって被施療者の大腿部を保持した状態で前記座部施療具を動作させるべく構成されていてもよい。このような構成とすることにより、大腿部に対し座部施療具によって上向きに押圧して施療する場合であっても、大腿保持具によって大腿部を保持するため、上向きの押圧力により大腿部が上方へ逃げてしまうのを防止し、座部施療具による施療を効果的なものとすることができる。
【0016】
また、前記背凭れ部には、これに上半身を支持された被施療部の腰部又は背部を前方へ押圧施療する背部施療具が設けられ、前記制御部は、前記大腿保持具によって被施療者の大腿部を保持した状態で前記背部施療具を動作させるべく構成されていてもよい。このような構成とすることにより、腰部又は背部への押圧施療時に被施療者の着座位置が前方へずれてしまうのを防止することができ、結果的に腰部又は背部に対して適切に押圧施療することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、座部に着座した被施療者の大腿部を適切に保持しつつ、この大腿部を押圧施療することができる椅子型マッサージ機を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態に係る椅子型マッサージ機について、図面を参照しながら具体的に説明する。図1は、本発明の実施の形態に係る椅子型マッサージ機の全体構成を示す斜視図である。図1に示すように、椅子型マッサージ機1は、被施療者が着座する座部2と、被施療者の上半身を後方から支持する背凭れ部3と、被施療者の腕部を支持するアームレスト4と、被施療者の脚部を支持するフットレスト5とから主として構成されている。なお、以下の説明で用いる方向の概念は、座部2に着座した被施療者から見たときの方向の概念と一致するものとし、その他の場合は適宜説明するものとする。
【0019】
[全体構成]
座部2は、基台2aの上部に設けられた座フレーム2b(図1にその一部を図示)の上部に、略平坦に形成されたクッション部2cが配設されて構成されている。このクッション部2cは、ウレタンフォーム、スポンジ、又は発泡スチロール等の内装材が、ポリエステル製の起毛トリコット、合成皮革、又は天然皮革等から成る外装カバーによって覆われることにより構成されている。
【0020】
座部2の前側には、被施療者の膝から足先に至る下腿部を施療するためのフットレスト5が配設されている。このフットレスト5は側面視で略L字形状を成し、膝から足首に至る部分であって主に脹脛(ふくらはぎ)に対応する上側フットレスト5aと、足首から足先に至る部分に対応する下側フットレスト5bとを、右脚と左脚とにそれぞれ対応して備えている。
【0021】
上側フットレスト5aは前方に開いた溝状を成し、その背面と左右の側面には給排気によって膨張及び収縮するエアセル30a(図6も参照)が、脹脛の背面と左右の側面とに夫々対応して設けられ、脹脛を後方及び左右の側方から押圧施療できるようになっている。また、下側フットレスト5bは上方に開いた溝状を成し、その底面と左右の両側面にも給排気によって膨張及び収縮するエアセル30b(図6も参照)が、足裏、足の甲、及び足首の側面とに夫々対応して設けられ、これらの部位を押圧施療できるようになっている。
【0022】
座部2の後側には、被施療者の上半身を支持する背凭れ部3が設けられている。この背凭れ部3は、被施療者の上半身を支持すべく、一般的な体格の成人が椅子型マッサージ機1に着座した際に該成人の身体の一部がその外部にはみ出ない程度の大きさとされており、正面視で縦長の略長方形を成している。そして、この背凭れ部3の上部には、該背凭れ部3により上半身を支持された被施療者の頭部に対応して枕部6が配設されている。
【0023】
また、背凭れ部3内には長方形状の背フレーム3aが内臓されており、この背フレーム3aは、その下端部から若干上方の位置にて、座部2下方に設けられた座フレーム2bにより回動自在に枢支されている。一方、背フレーム3aの下端部にはエアシリンダ等から成る直動式アクチュエータ3b(図6も参照)の一端が接続され、その他端は座フレーム2bの前部に接続されている。従って、直動式アクチュエータ3bが伸縮することにより、背凭れ部3は枢支位置を中心に上部が前後方向へ回動自在になっており、特に、直動式アクチュエータ3bが縮小することによって後方へ傾倒可能になっている。
【0024】
更に、背凭れ部3内には施療子7aを有する機械式のマッサージ機構7が収容されている。このマッサージ機構7は、上下方向へ延びる図示しないガイドレールに沿って背凭れ部3の長手方向に往復動可能となっており、制御部100(図6参照)からの指示によって被施療者の上半身に対して揉み、叩き、ローリング等のマッサージを実行可能になっている。
【0025】
座部2及び背凭れ部3の両側方には、座部2に着座した被施療者の腕部を支持するアームレスト4が、背凭れ部3の側方位置から座部2に沿って前方へ延設されるようにして配設されている。このアームレスト4は、上部の肘置き部10とその下部のサイドカバー11とから構成されている。肘置き部10は略円筒状を成し、起立した状態の背凭れ部3における上下方向の中央部分より若干上方位置から、下方且つ前方へと向かって座部2の前端近傍に至るまで延設されている。また、肘置き部10の後部内側には被施療者の腕部を挿脱可能な開口10aが形成されており、この開口10aを通じて内部へ挿入された被施療者の腕部を、手先から肘を経由して上腕及び肩に至るまでを支持可能になっている。更に、肘置き部10の内壁面には、前部から後部へかけて複数のエアセル30c(図6も参照)が配設され、被施療者の腕部全体をこのエアセル30cによって押圧施療できるようになっている。
【0026】
また、座部2の左右の側部近傍であって左右のアームレスト4の内側(椅子型マッサージ機1の幅方向の中心側)には、前後方向に延びる大腿施療部20が配設されている。この大腿施療部20は、後述するように、大腿部を保持しつつ該大腿部を外側方から押圧施療できるように構成されている。
【0027】
[施療部の構成]
図2は、図1に示した椅子型マッサージ機1において、大腿施療部20等によって主に被施療者の大腿部を施療するための構成を示す平面図、図3は、図2に示す椅子型マッサージ機1の側面図、図4は、図2に示した大腿施療部20の拡大図、そして図5は、各部に設けられたエアセルの動作を説明するための模式図であって、(a)は椅子型マッサージ機1の正面図、(b)はその平面図である。
【0028】
図2に示すように、座部2の左右の側部近傍であって左右のアームレスト4の内側(椅子型マッサージ機1の幅方向の中心側)には、前後方向に延びる大腿施療部20が配設されている。この大腿施療部20は、前後方向に沿って配設された3つのエアセルを備えている。より具体的には、大腿保持具21を成す保持用エアセル(第1エアセル)41と、その前側に配設された前側施療具22を成す施療用エアセル(第2エアセル)42と、大腿保持具21の後側に配設された後側施療具23を成す施療用エアセル(第2エアセル)43とを備え、更にこれらのエアセル41〜43を収容する外装カバー20aを備えている。
【0029】
図4に示すように、大腿保持具21を成す保持用エアセル41は、給気時に膨張しない基端部41aと膨張する展開部41bとを有し(図3参照)、給気することによって略扇状に膨張すると共に排気したときには平坦な形状に収縮するようになっている。そして、展開部41bが基端部41aの上方に位置するようにして、保持用エアセル41のほぼ全体が座部2の座面部2d(クッション部2cの上面)より上方に突出するようにして配設されている。
【0030】
従って図5(a)にも示すように、この保持用エアセル41に給気すると、上部の展開部41bが椅子型マッサージ機1の左右方向の中心へ向かって且つ座面部2dに接近するように膨張する。その結果、被施療者が座部2に着座しているときにこの保持用エアセル41に給気すると、大腿部の長手方向の中央付近をやや上方から押圧し、これを保持することができるようになっている。
【0031】
図4に示すように、前側施療具22を成す施療用エアセル42は、上記保持用エアセル41と同様に、給気時に膨張しない基端部42aと膨張する展開部42bとを有し(図3も参照)、給気することによって略扇状に膨張すると共に排気したときには平坦な形状に収縮するようになっている。そして、基端部42aが展開部42bよりも保持用エアセル41に近接すると共に、展開部42bが基端部42aの前方に位置するようにして、施療用エアセル42のほぼ全体が座面部2dより上方に突出するようにして配設されている。
【0032】
従って図5(b)にも示すように、この施療用エアセル42に給気すると、前側の展開部42bが椅子型マッサージ機1の左右方向の中心へ向かって且つ後方へ向かうように膨張する。その結果、被施療者が座部2に着座しているときにこの施療用エアセル42に給気すると、大腿部の長手方向の前側部分(膝付近)を側方から若干後方へと押圧することができる。
【0033】
図4に示すように、後側施療具23を成す施療用エアセル43も上記施療用エアセル42と同様に、給気時に膨張しない基端部43aと膨張する展開部43bとを有し(図3も参照)、給気することによって略扇状に膨張すると共に排気したときには平坦な形状に収縮するようになっている。そして、基端部43aが展開部43bよりも保持用エアセル41に近接すると共に、展開部43bが基端部43aの後方に位置するようにして、施療用エアセル43のほぼ全体が座面部2dより上方に突出するようにして配設されている。
【0034】
従って図5(b)にも示すように、この施療用エアセル43に給気すると、後ろ側の展開部43bが椅子型マッサージ機1の左右方向の中心へ向かって且つ前方へ向かうように膨張する。その結果、被施療者が座部2に着座しているときにこの施療用エアセル43に給気すると、大腿部の長手方向の後側部分(臀部付近)を側方から若干前方へと押圧することができる。
【0035】
また、図4に示すように、このような保持用エアセル41とその前後に配設された施療用エアセル42,43とでは高さ寸法が異なっており、前後に配設された施療用エアセル42,43よりも中央の保持用エアセル41が上方へ突出するように構成されている。従って、保持用エアセル41はその膨張により、大腿部をより確実に保持できるようになっている。なお、上述したように保持用エアセル41は、大腿部を外側方及び上方から圧迫してこれを保持するのに好適な構成となっているが、その押圧力により大腿部を押圧施療することが可能であることは言うまでもない。
【0036】
また、外装カバー20aは、これらのエアセル41〜43を収容すべく、中央部分が前部及び後部よりも大きい高さ寸法を有するように構成され、且つ、エアセル41〜43への給気時にこれらの膨張を阻害しないように、余裕のある収容容積が確保された構成となっている。
【0037】
更に、図2に示すようにこの椅子型マッサージ機1は、座部2の前部及び後部に夫々座施療具24,25が配設されている。これらの座施療具24,25は施療用エアセル44,45を夫々有し、これらの施療用エアセル44,45は共に、給気することによって平坦な状態から全体が膨張するような構成となっている。従って、座部2に被施療者が着座したときに前側の施療用エアセル44へ給気することにより、この施療用エアセル44は上方へ膨張し、大腿部の前側部分を下方から上方へ向けて押圧施療することができる。また、後側の施療用エアセル45へ給気した場合には、この施療用エアセル45も上方へ膨張し、大腿部の後側部分を下方から上方へ向けて押圧施療することができる。
【0038】
また、椅子型マッサージ機1の背凭れ部3の下部であって、座面部2dより若干上方位置には、腰施療具26,27が左右に配設されており、これらの腰施療具26,27は施療用エアセル46,47を夫々有している。施療用エアセル46,47は何れも、上述した施療用エアセル42(43)と同様の構成となっており、給気時に膨張しない基端部46a,47aと膨張する展開部46b,47bとを有し、給気することによって略扇状に膨張すると共に排気したときには平坦な形状に収縮するようになっている。そして図2に示すように、左右の施療用エアセル46,47は、夫々の基端部46a,47aが互いに近接し、且つ夫々の展開部46b,47bが基端部46a,47aの外側方に位置するようにして配設されている。
【0039】
従って図5(b)に示すように、これらの施療用エアセル46,47に給気すると、左右の外方に位置する展開部46b,47bが前方且つ左右方向中心側へ向かって膨張する。その結果、被施療者が座部2に着座して背凭れ部3に上半身を支持させているときにこの施療用エアセル46,47に給気すると、被施療者の腰部の両側部を、後方及び外側方から押圧することができる。
【0040】
[椅子型マッサージ機の機能]
図6は、上述したような椅子型マッサージ機1の機械的な機能を説明するためのブロック図である。図6に示すように椅子型マッサージ機1は制御部100を備えており、この制御部100は座部2の下方などに搭載され、被施療者が操作することのできるリモートコントローラ101(図1も参照)に接続されている。
【0041】
また、制御部100は、駆動部110,111との間で接続されており、駆動部110には直動式アクチュエータ3b(図1も参照)が、駆動部111には給排気装置120が接続されている。駆動部110は、制御部100からの指示に従って駆動信号を出力し、この駆動信号によって直動式アクチュエータ3bは伸縮される。従って、被施療者がリモートコントローラ101を操作するか、又は制御部100の判断により、制御部100から駆動部110へ指示が出力されると、直動式アクチュエータ3bが伸縮して背凭れ部3が前後方向に起伏動する。
【0042】
駆動部111も同様に、制御部100からの指示に従って駆動信号を出力し、この駆動信号によって給排気装置120を駆動させる。給排気装置120はポンプ及びバルブ等から構成され、可撓性のチューブを介して上述したエアセル30a〜30c及びエアセル41〜47に接続されて、これらに対して互いに独立して給排気することができるようになっている。従って、被施療者がリモートコントローラ101を操作するか、又は制御部100の判断により、制御部100から駆動部110へ指示が出力されると、給排気装置120からの給排気によって、エアセル30a〜30c及びエアセル41〜47は独立して膨張及び収縮する。なお、図6に示すように、エアセル41〜47を独立して膨張及び収縮すべく、これらのエアセル41〜47に対応するバルブ41d〜47dが、給排気装置120には個別に備えられている。
【0043】
また、保持用エアセル41と施療用エアセル42,43については、左右の大腿施療部20の夫々に設けられており、本実施の形態に係る椅子型マッサージ機1では、これら左右のエアセル41〜43は互いに独立して膨張及び収縮させることができるようになっている。但し、各エアセル41〜43について左右で同時に膨張及び収縮させる必要がない場合には、左右の各エアセル41〜43へ給排気するチューブを共通化し、左右で同時に膨張及び収縮するように構成してもよい。
【0044】
[施療動作]
図7乃至図9は、椅子型マッサージ機1による被施療者への施療動作、特に、図2〜図6を用いて説明した各エアセル41〜47によって実行される被施療者への施療動作を説明するためのタイミングチャートであり、横軸は経過時間を示し、斜線部分は該当するエアセルへの給気動作を示している。なお、図7乃至図9に示す各タイミングチャートは椅子型マッサージ機1によって実行可能な施療動作の一部を例示したものであり、各エアセル41〜47への給排気タイミングや膨張持続時間、複数のチャートの組合せ(各パートの組合せを含む)、及び繰り返し(各パートの組合せを含む)は適宜プログラムすることによって設定することができる。
【0045】
図7(a)に示す動作では、始めに大腿部の後部外側面に対向する施療用エアセル43へ給気を行ってこれを膨張させた後、保持用エアセル41と臀部に下方から対向するよう座部2に設けられた施療用エアセル45とへ同時に給気を行ってこれらを膨張させている。このようなエアセル41,43,45への給気動作により、臀部及び大腿部の背部及び外側部を押圧施療することができる。また、保持用エアセル41が膨張した後は、これにより大腿部を保持した状態で施療用エアセル43,45によって臀部及び大腿部を下方及び外側方から押圧施療するため、大腿部の位置ずれを抑制して適切に施療を実行することができる。
【0046】
図7(b)に示す動作では、始めに大腿部の前部外側面に対向する施療用エアセル42へ給気を行ってこれを膨張させた後、保持用エアセル41と大腿部の前部に下方から対向するよう座部2に設けられた施療用エアセル44とへ同時に給気を行ってこれらを膨張させている。このようなエアセル41,42,44への給気動作により、大腿部の背部及び外側部を押圧施療することができる。また、保持用エアセル41が膨張した後は、これにより大腿部を保持した状態で施療用エアセル41,44によって大腿部を下方及び外側方から押圧施療するため、大腿部の位置ずれを抑制して適切に施療することができる。
【0047】
図7(c)に示す動作では、始めに保持用エアセル41へ給気を行ってこれを膨張させた後、大腿部の前部及び臀部に下方から対向するよう座部2に設けられた施療用エアセル44,45へと同時に給気を行ってこれらを膨張させている。このようなエアセル41,44,45への給気動作により、大腿部の前側部分の背面と臀部とを押圧施療することができる。また、保持用エアセル41が膨張した後に施療用エアセル44,45が膨張するため、はじめから大腿部の位置ずれを抑制しつつ、大腿部の前部と臀部とを下方から上方へ向かって適切に押圧施療することができる。
【0048】
図7(d)に示す動作では、始めに保持用エアセル41へ給気を行ってこれを膨張させた後、腰部の左側部に対向するよう背凭れ部3に設けられた施療用エアセル46へ給気を行ってこれを膨張させている。このようなエアセル41,46への給気動作により、左右の大腿部を保持してその位置ずれを抑制しつつ、腰部の左側部を前方且つ右方向へ押圧し、上半身を右へ向けさせるような捩りマッサージを行うことができる。
【0049】
図8(a)に示す動作では、始めに保持用エアセル41と大腿部の前部外側面に対向する施療用エアセル42とへ給気を行ってこれらを膨張させた後、腰部の右側部に対向するよう背凭れ部3に設けられた施療用エアセル47へ給気を行ってこれを膨張させている。このようなエアセル41,42,47への給気動作により、大腿部を保持してその位置ずれを抑制しつつ、大腿部の前部を左右の外方から押圧し、且つ上半身を左へ向けさせるような捩りマッサージを行うことができる。
【0050】
なお、この捩りマッサージにおいて上記施療用エアセル42への給気は必須ではないが、本実施の形態に係る椅子型マッサージ機1では左右の施療用エアセル47を独立して膨張及び収縮することができるため、腰部右側の施療用エアセル47の膨張と同時に左右の施療用エアセル42のうち左側のみを膨張させることにより、下半身を右へ向かせつつ上半身を左へ向かせることができ、より捩り効果の高いマッサージが期待できる。そして、図7(d)にて説明した捩りマッサージにおいても同様のことが言える。
【0051】
図8(b)に示す動作では、始めに保持用エアセル41へ給気を行ってこれを膨張させた後、腰部の左側部及び右側部に夫々対向するよう背凭れ部3に設けられた施療用エアセル46,47へ給気を行ってこれらを膨張させている。このようなエアセル41,46,47への給気動作により、大腿部を保持して位置ずれを抑制しつつ、腰部を後方且つ左右の外側方から押圧して施療することができる。
【0052】
図8(c)に示す動作では、座部2の後部に設けられた施療用エアセル45、大腿部の後部側面に対向して設けられた施療用エアセル43、その前方に配設された保持用エアセル41、更に前方に配設された施療用エアセル42、及び大腿部の前部下面に対向して配設された施療用エアセル44へ、この順序で所定時間だけ給気を行ってこれらを膨張させている。しかも、各エアセル41〜45への給気に際しては、例えば、施療用エアセル45へ給気し続ける所定時間の完了前に次の施療用エアセル43への給気を開始させており、給気順序が前後する2つのエアセルへの給気動作が、一時的にオーバーラップするようにしている。このようなエアセル41〜45への給気動作により、被施療者の身体において心臓に近い部位から遠い部位へ向かって施療箇所が移動するいわゆる遠心法による施療を実現でき、しかも、給気動作のオーバーラップにより、断続的ではなく滑らかに施療箇所を移動させることができる。
【0053】
図8(d)に示す動作では、大腿部の前部下面に対向して配設された施療用エアセル44、大腿部の前部側面に対向して設けられた施療用エアセル42、その後方に配設された保持用エアセル41、更に後方に設けられた施療用エアセル43、及び座部2の後部に設けられた施療用エアセル45へ、この順序で所定時間だけ給気を行ってこれらを膨張させている。この場合においても、給気順序が前後する2つのエアセルへの給気動作が、一時的にオーバーラップするようにしている。このようなエアセル41〜45への給気動作により、被施療者の身体において心臓に遠い部位から近い部位へ向かって施療箇所が移動するいわゆる求心法による施療を実現でき、しかも、給気動作のオーバーラップにより、断続的ではなく滑らかに施療箇所を移動させることができる。なお、このような動作時には(もちろんこれ以外の動作時にも)、保持用エアセル41は施療用エアセルの役割も担い、対象部位を押圧施療することができる。また、図8(c),(d)に示す動作においては、他のエアセル41,42,44,45が膨張及び収縮する一連の動作期間中、保持用エアセル41の膨張状態を維持し続けるように制御してもよい。
【0054】
図9(a)に示す動作では、始めに保持用エアセル41へ給気を行ってこれを膨張させた後、大腿部の前後の側面に対向して設けられた施療用エアセル42,43と臀部に対向して座部2に設けられた施療用エアセル45とへ同時に給気を行ってこれらを膨張させている。このようなエアセル41〜43,45への給気動作により、大腿部を保持して位置ずれを抑制しつつ、大腿部の側部への外側方からの押圧施療と、臀部への下方からの押圧施療とを同時に実行することができる。
【0055】
図9(b)に示す動作では、始めに保持用エアセル41へ給気を行ってこれを膨張させた後、大腿部の前後の側面に対向して設けられた施療用エアセル42,43と大腿部の前部背面に対向して座部2に設けられた施療用エアセル44とへ同時に給気を行ってこれらを膨張させている。このようなエアセル41〜44への給気動作により、大腿部を保持して位置ずれを抑制しつつ、大腿部の側部への外側方からの押圧施療と、大腿部の前部背面への下方からの押圧施療とを同時に実行することができる。
【0056】
なお、本実施の形態に係る椅子型マッサージ機1では、上述したエアセル41〜47の他に、既に説明したようにエアセル30a〜30cが、アームレスト4及びフットレスト5に配設され、機械式のマッサージ機構7が背凭れ部3に配設されている。従って、これらエアセル30a〜30c及びマッサージ機構7の動作と上記エアセル41〜47の動作とを連動することにより、より多様なマッサージを被施療者に対して行うことができる。特に、保持用エアセル41で大腿部を保持した状態で、エアセル30a〜30c,42〜47、及びマッサージ機構7によって他の部位を施療することにより、身体の位置ずれを抑制して適切な施療位置を適切な押圧力によって施療することができる。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明は、座部に着座した被施療者の大腿部を適切に保持しつつ、この大腿部を押圧施療することができる椅子型マッサージ機に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】椅子型マッサージ機の全体の構成を示す斜視図である。
【図2】図1に示した椅子型マッサージ機において、大腿施療部等によって主に被施療者の大腿部を施療するための構成を示す平面図である。
【図3】図2に示す椅子型マッサージ機の側面図である。
【図4】図2に示した大腿施療部の拡大図である。
【図5】各部に設けられたエアセルの動作を説明するための模式図であって、(a)は椅子型マッサージ機の正面図、(b)はその平面図である。
【図6】椅子型マッサージ機の機械的な機能を説明するためのブロック図である。
【図7】椅子型マッサージ機による被施療者への施療動作を説明するためのタイミングチャートであり、(a)〜(d)はそれぞれ動作バリエーションを示している。
【図8】椅子型マッサージ機による被施療者への施療動作を説明するためのタイミングチャートであり、(a)〜(d)はそれぞれ他の動作バリエーションを示している。
【図9】椅子型マッサージ機による被施療者への施療動作を説明するためのタイミングチャートであり、(a),(b)はそれぞれ更に他の動作バリエーションを示している。
【符号の説明】
【0059】
1 椅子型マッサージ機
2 座部
2d 座面部
3 背凭れ部
4 アームレスト
5 フットレスト
7 マッサージ機構
20 大腿施療部
21 大腿保持具
24,25 座施療具(座部施療具)
26,27 腰施療具(背部施療具)
30a〜30c エアセル
41 保持用エアセル(第1エアセル)
41a,42a,43a 基端部
41b,42b,43b 展開部
42,43 施療用エアセル(第2エアセル)
44〜47 施療用エアセル
100 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被施療者が着座する座部と、該座部に着座した被施療者の上半身を後方から支持する背凭れ部と、前記座部に着座した被施療者の大腿部の外側面に対向して設けられた大腿施療部とを備え、
該大腿施療部は、被施療者の大腿部を保持するための大腿保持具と、該大腿保持具の前側に配設されて大腿部を押圧施療する前側施療具と、前記大腿保持具の後側に配設されて大腿部を押圧施療する後側施療具とから構成されていることを特徴とする椅子型マッサージ機。
【請求項2】
前記大腿保持具は、給排気によって膨張及び収縮すると共に収縮状態で平坦な形状を成す第1エアセルを有し、該第1エアセルは、前記座部において被施療者と接触する座面より上方へ突出するように立設され、給気によって下部を基端として上部が展開するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の椅子型マッサージ機。
【請求項3】
前記前側施療具及び後側施療具のうち少なくとも一方は、給排気によって膨張及び収縮すると共に収縮状態で平坦な形状を成す第2エアセルを有し、該第2エアセルは、前記座面より上方へ突出するように立設され、給気によって前記大腿保持具に近接する側の端部を基端として離隔する側の端部が展開するように構成されていることを特徴とする請求項2に記載の椅子型マッサージ機。
【請求項4】
前記大腿保持具が有する前記第1エアセルは、前記前側施療具又は前記後側施療具が有する前記第2エアセルに比べて、前記座面から上方への突出寸法が大きくなるように構成されていることを特徴とする請求項3に記載の椅子型マッサージ機。
【請求項5】
前記大腿保持具、前記前側施療具、及び前記後側施療具の動作を制御する制御部を更に備え、該制御部は、前記大腿保持具、前記前側施療具、及び前記後側施療具を互いに独立して制御可能に構成されていることを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載の椅子型マッサージ機。
【請求項6】
前記制御部は、前記大腿保持具によって前記座部に着座した被施療者の大腿部を保持した状態で、前記前側施療具及び前記後側施療具のうち少なくとも一方を動作させて大腿部を押圧施療すべく構成されていることを特徴とする請求項5に記載の椅子型マッサージ機。
【請求項7】
前記座部には、これに着座した被施療者の大腿部又は臀部の下面を上方へ押圧施療する座部施療具が設けられ、前記制御部は、前記大腿保持具によって被施療者の大腿部を保持した状態で前記座部施療具を動作させるべく構成されていることを特徴とする請求項5又は6に記載の椅子型マッサージ機。
【請求項8】
前記背凭れ部には、これに上半身を支持された被施療部の腰部又は背部を前方へ押圧施療する背部施療具が設けられ、前記制御部は、前記大腿保持具によって被施療者の大腿部を保持した状態で前記背部施療具を動作させるべく構成されていることを特徴とする請求項5乃至7の何れかに記載の椅子型マッサージ機。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2009−28087(P2009−28087A)
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−192356(P2007−192356)
【出願日】平成19年7月24日(2007.7.24)
【出願人】(000112406)ファミリー株式会社 (175)
【Fターム(参考)】