説明

椅子型マッサージ機

【課題】椅子型マッサージ機において座部を前後動可能なものとする場合に、座部の前部に設ける足揉み装置を座部の前後動に何ら影響されることなく容易に使用できるようにする。
【解決手段】本発明の椅子型マッサージ機1は、座部2と、この座部2を床面F上で支持する基礎フレーム6と、座部2の前部に設けられた足揉み装置5と、を有しており、基礎フレーム6には、座部2を少なくとも前後方向へ移動させる座部移動機構15が設けられ、座部2には、座部2と足揉み装置5との相対距離を保持させつつ座部2に対する足揉み装置5の姿勢を可変とする姿勢変換機構16が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、椅子型マッサージ機に関する。
【背景技術】
【0002】
椅子型マッサージ機として、例えば、特許文献1に開示されたものがある。この椅子型マッサージ機は、座部の後部に背もたれ部が設けられ、座部の前部に足揉み装置が設けられている。この背もたれ部には使用者の背部をマッサージするマッサージ機構が備えられ、足揉み装置には、使用者の下肢をマッサージする下肢マッサージ機構が内蔵されている。特許文献1に開示された椅子型マッサージ機の背もたれ部は、前後にリクライニング可能とされ、足揉み装置は支持部材を介して座部の前方に揺動可能に設けられている。
【0003】
このような椅子型マッサージ機は、背もたれ部にリクライニング機能を有していることから、背もたれ部を後方へ倒した状態で使用されることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−160866号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記したような椅子型マッサージ機において、背もたれ部を後方にリクライニングさせると共に、座部を前方且つ上方へ移動させるような動きを行う機構を備えたものを本願出願人は開発済みである(特願2011−33644)。この機構を採用した場合、座部が前進しつつその前端部が上昇し且つ背もたれ部が後方へ倒れると、座部に着座する使用者の頭の高さや腰の高さが心臓の高さに近づくようになる。これにより、使用者の下肢などの末端部に血が集まりにくくなり、マッサージ効果だけでなく、疲労回復などにも有益となる利点がある。
【0006】
しかし、このように座部を前後動乃至は上下動させる構造にすると、座部の動きに伴って座部と足揉み装置との相対位置が変わってしまい、座部の前後動時には足揉み装置の使用が不便になることが予想される。
本発明は、上記問題点に鑑み、椅子型マッサージ機において座部を前後動乃至は上下動可能なものとする場合に、座部の前部に設ける足揉み装置を座部の動きに何ら影響されることなく容易に使用できるようにした椅子型マッサージ機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するため、本発明においては以下の技術的手段を講じた。
すなわち、本発明に係る椅子型マッサージ機は、座部と、この座部を床面上で支持する基礎フレームと、前記座部の前部に設けられた足揉み装置とを有する椅子型マッサージ機において、前記基礎フレームには、座部を少なくとも前後方向へ移動させる座部移動機構が設けられ、前記座部には、座部と足揉み装置との相対距離を保持させつつ座部に対する足揉み装置の姿勢を可変とする姿勢変換機構が設けられていることを特徴とする。
【0008】
好ましくは、前記座部移動機構は、座部の前方移動時に座部前端を上昇させる前上がり動作と、座部の後方移動時に座部前端を下降させる前下がり動作とを行わせる構成となっており、前記姿勢変換機構は、座部の前上がり動作時において、座部と足揉み装置との相対距離を保持させつつ座部に対する足揉み装置の姿勢を可変とする構成となっているとよい。
【0009】
好ましくは、前記座部移動機構は、前記基礎フレームに設けられていて座部を前後方向へ移動自在に案内するガイド部と、座部を前後方向に移動させる進退駆動部と、を有しており、前記姿勢変換機構は、前記座部に設けられ且つ左右方向軸心回りの揺動を支持する基部支点と足揉み装置に設けられ且つ左右方向軸心回りの揺動を支持する先部支点との間を連結する揺動アームを有しているとよい。
【0010】
好ましくは、前記姿勢変換機構は、前記座部の基部支点から下方へ延びて且つ先端が前方へ屈曲している前方突出部と、この前方突出部に対し前方へスライド自在に設けられた
伸縮杆部とを備えた下アーム部材を有しており、この下アーム部材における伸縮杆部の先端部と足揉み装置とが左右方向軸心回りに揺動自在に連結されているとよい。
好ましくは、前記姿勢変換機構の揺動アームは、前記座部の基部支点から下方へ延びて且つ先端が前方へ屈曲している前方突出部と、この前方突出部に対し前方へスライド自在に設けられた伸縮部とを備えており、前記揺動アームの伸縮部と足揉み装置とが左右方向軸心回りに揺動自在に連結されているとよい。
【0011】
好ましくは、前記姿勢変換機構は、足揉み装置のマッサージ面が上方を向く状態と床面に対面する状態との間で反転可能となるように、足揉み装置の左右側部に設けられた左右方向軸心回りの揺動を支持する反転支点に連結される中間リンクを有しており、前記揺動アームの先端部と中間リンクの一端部とが左右方向軸心まわり揺動自在に連結され、前記下アーム部材の伸縮杆部と中間リンクの他端部とが左右方向軸心まわり揺動自在に連結されているとよい。言い換えれば、前記姿勢変換機構は、一端部が揺動アームの先端部に左右方向軸心まわり揺動自在に連結されると共に、他端部が下アーム部材の伸縮杆部に左右方向軸心まわり揺動自在に連結されている中間リンクを有しており、前記足揉み装置のマッサージ面が上方を向く状態と床面に対面する状態との間で反転可能となるように、中間リンクの中途部が、前記足揉み装置の左右側部に設けられた左右方向軸心回りの揺動を支持する反転支点に連結される構成を採用するとよい。
【0012】
好ましくは、前記姿勢変換機構は、座部の下方に形成された収納位置に足揉み装置を収納可能にする構成とされているとよい。
好ましくは、前記座部の後部には、背もたれ部がリクライニング動作可能に設けられており、この背もたれ部のリクライニング動作時には、背もたれ部の上端部が一の鉛直線に沿いつつ上下動するように構成されていて、前記背もたれ部は、後方へのリクライニング動作において背もたれ部の下端部が前方移動すると共に上端部が下降し、前方へのリクライニング動作において背もたれ部の下端部が後方移動すると共に上端部が上昇する構成とされているとよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る椅子型マッサージ機によれば、座部を前後動乃至は上下動可能なものとする場合に、座部の前部に設けた足揉み装置を座部の動きに何ら影響されることなく使用できるものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係る椅子型マッサージ機の第1実施形態を示した斜視図である。
【図2】本発明に係る椅子型マッサージ機の第1実施形態を下方(裏側)から示した斜視図である。
【図3】椅子型マッサージ機の第1実施形態について背もたれ部が起立し且つ足揉み装置が収納された状態を示した側面図である。
【図4】椅子型マッサージ機の第1実施形態について背もたれ部が後方リクライニング動作し且つ足揉み装置が収納された状態を示した側面図である。
【図5】椅子型マッサージ機の第1実施形態について背もたれ部が後方リクライニング動作し且つ足揉み装置が前方へ突出移動された状態を示した側面図である。
【図6】椅子型マッサージ機の第1実施形態について背もたれ部が起立し且つ足揉み装置が前方へ突出移動された状態を示した側面図である。
【図7】本発明に係る椅子型マッサージ機の第2実施形態を示した斜視図である。
【図8】本発明に係る椅子型マッサージ機の第2実施形態を下方(裏側)から示した斜視図である。
【図9】椅子型マッサージ機の第2実施形態について背もたれ部が起立し且つ足揉み装置が収納された状態を示した側面図である。
【図10】椅子型マッサージ機の第2実施形態について背もたれ部が後方リクライニング動作し且つ足揉み装置が収納された状態を示した側面図である。
【図11】椅子型マッサージ機の第2実施形態について背もたれ部が後方リクライニング動作し且つ足揉み装置が前方へ突出移動された状態を示した側面図である。
【図12】椅子型マッサージ機の第2実施形態について背もたれ部が後方リクライニング動作し且つ足揉み装置が前方へ突出移動したまま背面を上方へ向けるようにされた状態を示した側面図である。
【図13】椅子型マッサージ機の第2実施形態について背もたれ部が起立し且つ足揉み装置が前方へ突出移動された状態を示した側面図である。
【図14】椅子型マッサージ機の第2実施形態について背もたれ部が起立し且つ足揉み装置が前方へ突出移動したまま背面を上方へ向けるようにされた状態を示した側面図である。
【図15】本発明に係る椅子型マッサージ機の第3実施形態を示した斜視図である(背もたれ部が起立状態)。
【図16】椅子型マッサージ機の第3実施形態について背もたれ部が起立し且つ足揉み装置が収納された状態を示した側面図である。
【図17】椅子型マッサージ機の第3実施形態について背もたれ部が後方リクライニング動作し且つ足揉み装置が座部の前部下方(後進位置)へ垂下された状態を示した側面図である。
【図18】椅子型マッサージ機の第3実施形態について背もたれ部が後方リクライニング動作し且つ足揉み装置が前方へ突出移動された状態を示した側面図である。
【図19】本発明に係る椅子型マッサージ機の第3実施形態を示した斜視図である(背もたれ部が前倒状態)。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を、図を基に説明する。
[第1実施形態]
図1〜図6は、本発明に係る椅子型マッサージ機1の第1実施形態を示している。
なお、各図では説明の便宜上、構造の一部を省略して描いてある。また、以下の説明では、図3〜図6の左右方向を実際の装置での前後方向と呼び、図3〜図6の上下方向を実際の装置における上下方向と呼ぶ。図3〜図6の紙面貫通方向を実際の装置での左右方向又は幅方向と呼ぶ。これらの方向は、椅子型マッサージ機1に座った使用者から見たものと一致する。
【0016】
まず、椅子型マッサージ機1の基本構成を説明する。この椅子型マッサージ機1は、座部2(図3以外では座部フレーム2aのみを示す)と、この座部2の後部に設けられた背もたれ部3(図3以外では背部フレーム3aのみを示す)とを有している。また、座部2の前部には、この座部2に着座した使用者の下肢(特にふくらはぎ)を揉みマッサージする足揉み装置5が設けられている。
【0017】
座部2は、使用者の臀部を下方から支持するに十分な広さを有している。この座部2の下部には、この椅子型マッサージ機1を床面Fへ設置するための基礎フレーム6が設けられており、この基礎フレーム6によって座部2が所定高さに支持されるようになっている。この基礎フレーム6は、床面接地用として設けられた下部フレーム7と、この下部フレーム7の上方で座部2の支持高さに合わせて設けられた上部フレーム8と、これら下部フレーム7と上部フレーム8との上下間を連結する支柱部6aとを有して箱形のフレームを形成するようになっている。
【0018】
第1実施形態において、基礎フレーム6は、下部フレーム7と上部フレーム8との上下間(座部2の下方)に、足揉み装置5を収納するための収納位置Pを形成させる役割をも有したものとしてある(図3参照)。
背もたれ部3は、座部2とおおよそ同じ程度の幅で形成されており、その下端部が左右方向の軸心回りに揺動自在に支持する揺動部10を介して座部2の後端部と連結されている。これによって背もたれ部3は、その上端部を後方へ倒したり前方へ起き上がらせたりするように、座部2の後方で揺動自在(リクライニング動作可能)となっている。リクライニング動作の駆動構造に関しては後述する。
【0019】
椅子型マッサージ機1では、座部フレーム2aの左右両側で上方へ突出状態に設けられた左右一対のヒンジ片部11の上端部と、背部フレーム3aの下端部で前方へ屈曲するこ
とによって前方突出するように設けられた左右一対のレバー部12の前端部とが、それぞれ左右方向軸心を有する軸部により連結されている。この連結部は左右一対にあり、揺動部10となっている。この揺動部10により、座部2の後端部と背もたれ部3の下端部とが左右方向の軸心回りに揺動自在に連結される。
【0020】
背もたれ部3の内部には、座部2に着座した使用者の背中〜腰に対して揉みや叩き、或いは振動などのマッサージ動作を行うマッサージ部9が上下移動自在に設けられている(図1参照)。なお、座部2の内部や座部2の左右両側に、座部2に着座した使用者の腰〜臀部〜大腿に対して揉みや叩き、或いは振動などのマッサージ動作を行うマッサージ部(図示略)が設けられたものとしてもよい。
【0021】
足揉み装置5は、正面視すれば略四角形状を呈し、側面視すれば丸みを帯びた三角形状を呈するような箱形に形成されている。足揉み装置5の正面はマッサージ面5aとされており、使用者の下肢(左右の足)を嵌め入れ可能にする左右一対の足入れ部13が形成されている。
各足入れ部13の内側の対向面には、下肢に対して揉みマッサージを行う下肢用マッサージ装置(図示略)が内蔵されている。この下肢用マッサージ装置としては、足の長さ方向に長い板材を左右に揺動させることによって揉みを施す構成としたり、空気の給排によって膨張収縮する空気袋で揉みを施す構成としたりすることができる。
【0022】
図2に示すように、足揉み装置5には、その底面と背面とのコーナー部分に、左右一対の車輪14が前後方向への転動を可能とすべく回転自在に設けられている。
このように、座部2、背もたれ部3及び足揉み装置5を備える椅子型マッサージ機1は、基礎フレーム6に対し、座部2が前後動可能になっており、この座部2の前後動に連動して背もたれ部3がリクライニング動作可能になっており、更に足揉み装置5が種々の姿勢変換を動作可能になっている。座部2を前後動させ且つ座部2の前後動と背もたれ部3のリクライニング動作とを連動させるものは座部移動機構15であり、足揉み装置5の姿勢変換を行わせるものは姿勢変換機構16である。
【0023】
次に、座部移動機構15について説明する。
この座部移動機構15は、座部2を前後方向へ移動自在に案内するガイド部20と、このガイド部20に沿わせつつ座部2を前後方向に移動(駆動)させる進退駆動部21とを有している。
ガイド部20は、基礎フレーム6の上部フレーム8によって構成されている。すなわち、この上部フレーム8は、座部フレーム2aの左右両側部に沿うように長手方向を前後方向へ向けた左右一対の側部材24と、この左右の側部材24における前端部同士を連結する前部材25とを有して形成されている。左右の側部材24は、座部フレーム2aの幅寸法(左右方向の外法)よりもそれぞれ左右外側に張り出す位置に配備されている。なお、これら側部材24や前部材25は、中空の四角形断面を有する角パイプ等により形成されている。
【0024】
これに対し、座部フレーム2aには、左右両側部の外面から左右方向のそれぞれ斜め下方へ向けて左右一対の張出部材27が設けられている。この左右の張出部材27には、基礎フレーム6に設けられた側部材24を外嵌して、当該側部材24の長手方向(即ち、前後方向)に向けて摺動自在となる摺動部28が設けられている。
このように、基礎フレーム6に設けられた上部フレーム8の左右の側部材24が、座部フレーム2aに設けられた左右の摺動部28を前後方向に摺動自在に保持できる構造となっていることにより、ガイド部20が構成されている。なお、側部材24が角パイプ等により形成されているので、摺動部28は側部材24の長手方向(摺動軸線)を中心とした回り止め作用やガタツキ防止作用を受けることになり、安定した摺動を行えるようになっている。
【0025】
ガイド部20(左右の側部材24)は、床面Fと平行(水平)に設けてもよいし、座部2の前端が上昇するように前上がり方向に傾斜させて設けてもよい。前上がり方向に傾斜させる場合は、直線的に傾斜させるものとしてもよいし、曲線的な凹カーブを描きながら上方へ傾斜させるものとしてもよい。
第1実施形態では、側部材24を前上がり方向で直線的且つ緩やかに(小さな傾斜角度で)傾斜させる構造を採用した。そのため、この座部移動機構15は、座部2の前方移動時に、座部2が前進すればするほど座部2の前端が上昇する「前上がり動作」を行い、反対に、座部2の後方移動時に、座部2が後進すればするほど座部2前端が下降する「前下がり動作」を行うようになる。
【0026】
このようなガイド部20に対し、座部2を前後方向に移動(駆動)させる進退駆動部21が設けられている。この進退駆動部21には、例えば、電動の送りネジ機構を採用することができる。図2及び図5から明らかなように、この電動送りネジ機構は、電動モータ30により回転駆動される送りネジ軸31を基礎フレーム6の下部フレーム7に前方突出状態で取り付け、この送りネジ軸31に螺合するナット部材32を、当該送りネジ軸31の軸まわりでは回転不能な状態にしつつ座部フレーム2aの後端部に保持させる構造としてある。
【0027】
座部フレーム2aの後端部には、下方へ屈曲後、更に後方へ屈曲することでクランク形状に形成されたテールフレーム35を設けてあり、この左右のテールフレーム35の後端部同士を連結する後部材36で、ナット部材32を保持させてある。送りネジ軸31は前上がり方向に傾斜させてあるが、これは基礎フレーム6の側部材24、即ち、座部2の前後動を案内するためのガイド部20を前上がり方向に傾斜させていることに対して、ナット部材32の前後動方向を平行させるための構成である。
【0028】
このことから明らかなように、進退駆動部21を作動させる(電動モータ30で送りネジ軸31を回転させてナット部材32を前後動させ、座部フレーム2aを前後方向に押し引きさせる)と、座部2がガイド部20に沿って前後動することになる。座部2と背もたれ部3とは前記揺動部10を介して連結されているため、座部2が前進する際には背もたれ部3の下端部も前進し、反対に座部2が後進するときには背もたれ部3の下端部も後進するようになっている。
【0029】
但し、このままでは背もたれ部3のリクライニング動作が得られないために、座部移動機構15には次の構造が付加されている。
すなわち、背もたれ部3には、その下端部と上端部とを結ぶ方向でレール部材40が設けられており、基礎フレーム6には、背もたれ部3のレール部材40を保持する摺動保持部41と、この摺動保持部41自体を保持する回動支持部42とが設けられている。
【0030】
詳しくは、背もたれ部3のレール部材40は、背もたれ部3の背部フレーム3aを構成するうち長手方向(背もたれ部3にもたれ掛かった使用者の背筋方向)に沿って設けられる左右一対の縦部材45によって形成されている。なお、この縦部材45は、中空の四角形断面を有する角パイプ等により形成されている。
これに対し、基礎フレーム6の摺動保持部41は、背もたれ部3のレール部材40(左右の縦部材45)に外嵌しつつ、このレール部材40をその長手方向で相対的に移動自在となるように保持する構造となっている。なお、縦部材45が角パイプ等により形成されているので、摺動保持部41は縦部材45の長手方向(移動軸線)を中心とした回り止め作用やガタツキ防止作用を受けることになり、安定した相対移動を行えるようになっている。
【0031】
一方、回動支持部42は、摺動保持部41を左右方向の軸心回りに回動自在に保持するもので、基礎フレーム6の後側の支柱部6aを上部フレーム8よりも上方へ突出させた位置で、左右方向の対向内側へ突出するように設けられ、この突出方向の先端部で摺動保持部41を保持するようになっている。
すなわち、座部2の前進時において、揺動部10を介して背もたれ部3の下端部に前方引き出し作用が伝わると、背もたれ部3のレール部材40が摺動保持部41内を下方へ摺動しようとするのと同時に、摺動保持部41は、回動支持部42によって支持されている回転中心を支点に、背もたれ部3の上端部を後方へ倒す方向へ回動しようとする。従って、レール部材40の下方摺動と摺動保持部41の後方回動とが協働するようになって、背もたれ部3は、座部2の前進と一緒に当該背もたれ部3の下端部を前進させながら、当該背もたれ部3の上端部を下降させ、後方へ倒れるようにリクライニング動作をすることに
なる。
【0032】
反対に、座部2の後進時において、揺動部10を介して背もたれ部3の下端部に後方押し込み作用が伝わると、背もたれ部3のレール部材40が摺動保持部41内を上方へ摺動しようとするのと同時に、摺動保持部41は、回動支持部42によって支持されている回転中心を支点に、背もたれ部3の上端部を前方へ起こす方向へ回動しようとする。従って、レール部材40の上方摺動と摺動保持部41の前方回動とが協働するようになって、背もたれ部3は、座部2の後進と一緒に当該背もたれ部3の下端部を後進させながら、当該背もたれ部3の上端部を上昇させ、前方へ起き上がるようにリクライニング動作をすることになる。
【0033】
ところで、前記した後方へのリクライニング動作時において、背もたれ部3はレール部材40が摺動保持部41内を下方摺動するようになる。言い換えれば、後方リクライニング動作が進行すればするほど、背もたれ部3は前方へ引き出されてゆくことになるので、その結果、背もたれ部3の上端部は、「一の(ひとつの)鉛直線」に沿いつつ下降することになる。そのため、椅子型マッサージ機1の全体として観察したとき、背もたれ部3の上端部がリクライニング前の状態から後方に大きく突出するようなことにはならない。
【0034】
なお、ここにおいて「一の鉛直線に沿いつつ」との意味は、「1本の直線上を特定の1点が常に移動する(決して離反しない)」といった厳密なものではなく、「背もたれ部3の上端部として認識しうる特定部分が、大きな迂回などすることなく略真っ直ぐに上下動する」程度の意味として理解するものとおく。
このことから、例えば椅子型マッサージ機1を室内壁面Wに近接させて設置したとしても、背もたれ部3の上端部が後方リクライニング時に室内壁面Wに接触し難くなっているので、結果として、椅子型マッサージ機1を室内壁面Wに近接させて設置することができ、室内スペースを徒に狭くすることがない、という利点に繋がる。
【0035】
言うまでもなく、背もたれ部3を後方リクライニングの後、前方リクライニングさせる(前方へ起き上がらせる)場合についても、背もたれ部3の上端部がリクライニング前の状態から後方に大きく突出するようなことにはならないので、椅子型マッサージ機1を室内壁面Wに近接させて設置することができるという効果は享受するところである。
次に、足揉み装置5の姿勢変換を行わせる姿勢変換機構16について説明する。
【0036】
図1、図2及び図5等から明らかなように、姿勢変換機構16は、座部2と足揉み装置5とを連結するための揺動アーム47と、この揺動アーム47を揺動駆動する姿勢駆動部48とを有している。
図1に示すように、座部2には、この揺動アーム47の基端部と連結するために、座部フレーム2aの略中央部(左右の揺動部10の相互間)で、軸心方向を左右方向へ向けてその軸心まわりの揺動を支持する基部支点50が設けられている。また、図2に示すように、足揉み装置5には、揺動アーム47の先端部と連結するために、当該足揉み装置5の背面上部で、軸心方向を左右方向へ向けてその軸心まわりの揺動を支持する先部支点51が設けられている。
【0037】
この揺動アーム47は、図3に示すように、足揉み装置5が座部2下方の収納位置Pに収納されたときに、足揉み装置5と接触干渉することがないように、基端寄り(基部支点50と連結される側)、及び先端寄り(先部支点51と連結される側)の2箇所に、略直角に近い角度で屈曲された曲がり部を有したものとして形成されている。
姿勢駆動部48は、例えば、電動の送りネジ式伸縮機構を採用することができる。この電動伸縮機構は、シリンダ部55の一端部から送りネジ軸56が軸まわりの回転を不能とされた状態で突出されたもので、シリンダ部55内には送りネジ軸56に螺合するナット部材(図示略)が収納されている。すなわち、シリンダ部55に備えられる電動モータ57で送りネジ軸56の回りにナット部材を回転させることにより、シリンダ部55に対して送りネジ軸56を伸長させたり、収縮させたりできる機構となっている。
【0038】
この電動伸縮機構は、座部フレーム2aの基部支点50から径方向へ突出する径方向レバーを設けて、この径方向レバーにシリンダ部55の前端部を連結し、またこのシリンダ部55から後方突出状態に保持される送りネジ軸56の後端部を、座部フレーム2a(テ
ールフレーム35)の後部材36に連結させたものとしてある。
このことから明らかなように、姿勢駆動部48を作動させる(電動モータ57でナット部材を回転させて送りネジ軸56を伸縮動させ、揺動アーム47を前後方向に揺動させる)と、足揉み装置5が基礎フレーム6の前方へ押し出されたり、反対に基礎フレーム6へ向けて引き寄せられたりすることになる。足揉み装置5には床面F上を前後方向に転動するように車輪14が設けられているため、床面F上での足揉み装置5の押し出しや引き寄せは、円滑に行われる。
【0039】
また、足揉み装置5は、車輪14が支点となって当該足揉み装置5の上端部を前後方向へ揺動させることが容易に行える状態となっているので、揺動アーム47の前方揺動で足揉み装置5が前方へ押し出される際には、足揉み装置5が上部を徐々に起立させるようになり、反対に揺動アーム47の後方揺動で足揉み装置5が後方へ引き戻される際には、足揉み装置5が上部を徐々に後方へ倒すようになる。
【0040】
図5に示したように、揺動アーム47が前方揺動する過程にあって、足揉み装置5は、座部2に着座した使用者が足を前方へ投げ出したようなリラックスした姿勢(膝をある程度延ばした姿勢)でも、マッサージ面5aの足入れ部13に足を容易に入れられるような角度に後方傾斜して起立される。また、揺動アーム47が前方揺動する最終段としては、使用者が膝を直角に曲げた姿勢でも容易に足を入れられるような直立角度で起立させることもできる。
【0041】
一方、揺動アーム47が後方揺動する過程の最終段では、図3に示したように、足揉み装置5は、その背面を床面Fに対面させ且つ近接させる状態まで倒れて、座部2下方の収納位置Pに収納されるようになっている。
このような構成の姿勢変換機構16は、前記したように、揺動アーム47が、座部2と足揉み装置5との間に連結されたものであり、またこの揺動アーム47を揺動駆動する姿勢駆動部48(電動伸縮機構)が、座部フレーム2aの基部支点50と後部材36との間に設けられたものである。すなわち、足揉み装置5を支持する基礎となっているのは座部2である。
【0042】
そのため、座部2が前記した座部移動機構15によって前後動や座部2前端の上下動を行ったとしても、「座部2と足揉み装置5との相対距離」は、基部支点50を中心とする揺動アーム47の揺動半径内に常に保持されることになる。このような保持関係の中にあって、姿勢変換機構16は座部2に対する足揉み装置5の姿勢を可変とするものである、と言うことができる。
【0043】
ここにおいて、「座部2と足揉み装置5との相対距離」とは、座部2に着座した使用者が座部2に対する着座位置や着座姿勢をいちいち動かさなくとも、使用者が前方へ足を伸ばしたり座部2の前部で足を下方へ降ろしたりすれば、足揉み装置5へ足を入れられる(足揉み装置5をそのまま使用できる)ような距離関係を言う。このようなことから、座部2と足揉み装置5との間の数値的な厳密さが要求されるものではない。
【0044】
従って、例えば、図4に示すように、足揉み装置5を座部2下方の収納位置Pに収納させたまま、座部2を前進させ、背もたれ部3を後方リクライニング動作させる状況(要するに、足揉み装置5を不使用とする状況)としたり、或いは、図6に示すように、座部2を後進させ、背もたれ部3を前方リクライングさせたままの状況で足揉み装置5を前方突出させたりする、といった使用状況も使用者の所望するとことに応じて自由に選択できるものである。
【0045】
以上説明した構成を有する椅子型マッサージ機1の作動態様を簡単に説明する。
まず、図3に示すように、座部2が後進し、背もたれ部3が前方リクライング状態とされ、足揉み装置5が座部2下方の収納位置Pに収納されている状態とする。収納位置P内の足揉み装置5は、その底面が前方を向き、マッサージ面5aが上を向いており、また底面は座部2の前端部と略面一になっている。
【0046】
この状態から座部移動機構15の電動モータ30を作動させると、図4に示すように、座部2が前進するのに伴い、揺動部10を介して背もたれ部3の下端部が前方へ引き出されるようになり、背もたれ部3は、その上端部を下降させながら、後方へ倒れるように後
方リクライニング動作をすることになる。
従って、この状態の座部2に着座する使用者は、上半身を後方へ傾けてリラックスした姿勢で着座することができる。当然に、背もたれ部3に設けられたマッサージ部9等を作動させれば、使用者は前記のリラックスした姿勢のまま、上半身(背中など)に対するマッサージを受けることができる。
【0047】
使用者の好み等により、姿勢変換機構16の電動モータ57を作動させると、図5に示すように、座部2を基礎として足揉み装置5が収納位置Pから前方へと押し出され、起立姿勢とされる。このとき足揉み装置5は、座部2よりも前方に配置されるので、使用者が足を前方へ投げ出したようなリラックスした姿勢(膝をある程度延ばした姿勢)でも、マッサージ面5aの足入れ部13に足を容易に入れられるようになっている。当然に、足揉み装置5の下肢用マッサージ装置を作動させれば、使用者は前記のリラックスした姿勢のまま、下肢に対するマッサージをも受けることができる。
【0048】
使用者が上半身を起こしたい場合には、座部移動機構15の電動モータ30を前記とは逆方向に作動させることで、図6に示すように、座部2が後進し、これに伴い、揺動部10を介して背もたれ部3の下端部が後方へ押し込まれるようになり、背もたれ部3は、その上端部を上昇させながら、前方へ起こされるように前方リクライニング動作をすることになる。
【0049】
また、椅子型マッサージ機1としての使用を停止又は中断する場合は、更に、姿勢変換機構16の電動モータ57を前記とは逆方向に作動させることで、座部2の後進及び背もたれ部3の前方リクライニング状態に加え、足揉み装置5をも図3に示した当初の収納状態に戻すことができる。
足揉み装置5が収納位置Pに収まると、その底面が前方を向くと共に座部2の前端部から突出しない状態となるので、椅子型マッサージ機1は、単なる椅子としても使用できることになる。
[第2実施形態]
図7〜図14は、本発明に係る椅子型マッサージ機1の第2実施形態を示している。
【0050】
第2実施形態の椅子型マッサージ機1についても、座部2と、この座部2の後部に設けられた背もたれ部3とを有し、また座部2の前部に足揉み装置5が設けられている点で、第1実施形態と同じ基本構成となっている。
座部2が基礎フレーム6によって所定高さに支持されている点、背もたれ部3の下端部が左右方向の軸心回りに揺動自在に支持する揺動部10を介して座部2の後端部と連結されている点、背もたれ部3内や座部2内又はその左右両側などに、座部2に着座した使用者にマッサージ動作を行うマッサージ部9等が設けられている点なども、第1実施形態と略同様である。
【0051】
更に、椅子型マッサージ機1は、座部移動機構15により、座部2が前後動可能であると共に座部2の前後動と背もたれ部3のリクライニング動作とが連動される構成となっており、姿勢変換機構16により、足揉み装置5が種々の姿勢変換を動作可能な構成となっていることでも、第1実施形態と略同様である。
第2実施形態の椅子型マッサージ機1が、第1実施形態と最も異なるところは、座部移動機構15に関しては、座部2を前後方向へ移動自在に案内するためのガイド部20の形成位置にある。また、姿勢変換機構16に関しては、それ自体が揺動アーム47の他、下アーム部材72と中間リンク73とを有して構成されている点にある。
【0052】
そこでまず、座部移動機構15のガイド部20について、第1実施形態との違いを説明する。
図8に示す如く、ガイド部20は、基礎フレーム6の下部フレーム7によって構成されている。この下部フレーム7は、上部フレーム8の左右の側部材24に対して下方で並行するように長手方向を前後方向へ向けた左右一対の側部材60と、この左右の側部材60における後端部同士を連結する後部材61とを有して形成されている。
【0053】
左右の側部材60は、前後方向の略中央部を境として、前半部は前上がり方向に傾斜して設けられ(前上がり傾斜部)、後半部は床面Fと平行になるよう(後部水平部)に設け
られている。なお、この側部材60は、前半部及び後半部の全てが中空の四角形断面を有する角パイプ等により形成されている。
これに対し、座部フレーム2aには、基礎フレーム6内(左右の側部材24間)に嵌り込むようになる脚フレーム63が設けられている。この脚フレーム63は、前後・左右に離れた合計4本の脚部材64を有しており、これら脚部材64の各下端部を架け渡すように渡り部材65が設けられている。
【0054】
この渡り部材65の前寄り位置及び後寄り位置には、側部材60に外嵌すると共に側部材60の長手方向(即ち、前後方向)に向けて摺動自在となる摺動部67,68(前部摺動部67、後部摺動部68)がそれぞれ設けられている。
前部摺動部67は、側部材60のうち前半部で前上がりに傾斜した領域(前上がり傾斜部)を前後へ摺動するように配備されており、後部摺動部68は、側部材60のうち後半部で水平とされた領域(後部水平部)を前後へ摺動するように配備されている。
【0055】
このように、基礎フレーム6を構成する下部フレーム7の側部材60が、座部フレーム2aに設けられた前部摺動部67及び後部摺動部68を前後方向に摺動自在に保持できる構造となっていることにより、ガイド部20が構成されている。
このガイド部20の構成により、座部2の前方移動時に、座部2が前進すればするほど座部2の前端が上昇する前上がり動作を行い、反対に、座部2の後方移動時に、座部2が後進すればするほど座部2の前端が下降する前下がり動作を行うようになる。
【0056】
但し、第1実施形態の場合とは異なって、座部2の前上がり動作は、前部摺動部67によってのみ生起される(後部摺動部68は摺動位置に関係なく高さ一定である)ので、座部2が前進しても座部2の後部は上昇せず、その結果、座部2が前進すればするほど座部2の前部と後部との高低差が大きくなるという状況が得られる。
なお、このようなガイド部20に対し、座部2を前後方向に移動(駆動)させる進退駆動部21は、第1実施形態と同様に、電動の送りネジ機構を採用してある。すなわち、電動モータ30により回転駆動される送りネジ軸31を基礎フレーム6の下部フレーム7に前方突出状態で取り付け、この送りネジ軸31に螺合するナット部材32を、当該送りネジ軸31の軸まわりでは回転不能な状態にしつつ座部フレーム2aの脚フレーム63に設けた渡り部材65で保持させてある。
【0057】
前記したように、ガイド部20は後半部に水平領域を有しており、この水平領域に沿って移動する後部摺動部68に対し、前後方向の近接位置でナット部材32を保持させるようにしている。そのため、送りネジ軸31は、前上がり方向に傾斜させる必要がなく、水平に設けてある。
次に、足揉み装置5の姿勢変換を行わせる姿勢変換機構16について、第1実施形態との違いを説明する。
【0058】
前記したように、第2実施形態の姿勢変換機構16は、座部2と足揉み装置5とを連結するための揺動アーム47と、この揺動アーム47を揺動駆動する姿勢駆動部48とを有している。更に姿勢変換機構16は、下アーム部材72と中間リンク73とを有している。
これら揺動アーム47、下アーム部材72、中間リンク73は、それぞれ左右一対(2本)設けられている。そして、これら揺動アーム47、下アーム部材72、中間リンク73のうち、中間リンク73が足揉み装置5の左右両側部に配備されている。
【0059】
この中間リンク73の中途部には、足揉み装置5を左右方向軸心まわりの揺動を支持する反転支点75が形成されている。この中間リンク73は、反転支点75から背反する二方向へ向けて連結端部76,77が突出する構造となっている。
図7に示すように、座部フレーム2aには、左右の揺動部10からそれぞれ前方斜め下方へ向けて突出する左右一対のブラケット片78が設けられている。このブラケット片78に、軸心方向を左右方向へ向けてその軸心まわりの揺動を支持する基部支点50が設けられ、この基部支点50を介して揺動アーム47の基端部が連結されている。そして、このように設けられた揺動アーム47の先端部と中間リンク73の一端部(一方の連結端部76)とが、先部支点51を介して揺動自在に連結されている。
【0060】
これに対し、下アーム部材72は、座部2の基部支点50から下方へ延び、その後に前方へ屈曲することで前方へ突出するように形成された前方突出部87と、この前方突出部87に前方へスライド自在な状態で保持された伸縮杆部81とを有して形成されている。そして、このように設けられた伸縮杆部81の先端部と中間リンク73の他端部(他方の連結端部77)とが、補助支点82を介して揺動自在に連結されている。
【0061】
このようなことから、足揉み装置5は中間リンク73の反転支点75を中心に回転自在となっており、図9及び図10に示すように、マッサージ面5aが上方を向く状態と、図12及び図14に示すように、マッサージ面5aが床面Fに対面する状態との間で反転可能となる(ひっくり返すことができる)。またこの反転途中では、図11及び図13に示すように、マッサージ面5aが前方を向く状態にすることもできる。
【0062】
マッサージ面5aが床面Fに対面する状態では、足揉み装置5の背面5bが上方を向いていることになる。すなわち、足入れ部13が上方を向いていないため、座部2に着座した使用者は足を前方へ投げ出し、足揉み装置5の背面5b上へ載せることができる。
なお、姿勢駆動部48には、第1実施形態と同様に、電動の送りネジ式伸縮機構(電動モータ57でシリンダ部55から送りネジ軸56を伸長させたり収縮させたりする機構)を採用してある。
【0063】
この姿勢駆動部48を作動させることで、足揉み装置5が基礎フレーム6の前方へ押し出されたり、反対に基礎フレーム6へ向けて引き寄せられたりする。また、揺動アーム47が前方揺動して足揉み装置5が前方へ押し出される際には、足揉み装置5が上部を徐々に起立させるようになり、反対に揺動アーム47が後方揺動して足揉み装置5が後方へ引き戻される際には、足揉み装置5が上部を徐々に後方へ倒すようになる。これらのことは第1実施形態と略同じである。
【0064】
なお、揺動アーム47の前方揺動時であって、且つ座部2下方の収納位置Pから足揉み装置5が前方へ出されるときに、下アーム部材72の伸縮杆部81が前方へ突出する動作をし、反対に揺動アーム47の後方揺動時であって、且つ足揉み装置5が収納位置Pへ入り込むときに、下アーム部材72の伸縮杆部81が後方へ収縮する動作をする。
このように足揉み装置5は下アーム部材72によって保持されているため、本第2実施形態では、足揉み装置5に対して、床面F上を前後方向に転動するための車輪(図2等に符号14で示したもの)を設ける必要はないものとされ、第1実施形態に比して構造的簡潔化や軽量化が図られている。
【0065】
ところで、第2実施形態では、座部2の前後動を案内するためのガイド部20において、前上がりの傾斜角度を第1実施形態のガイド部20よりも大きく(急傾斜に)してある。しかも、前記したように、座部2が前進すればするほど座部2の前部と後部との高低差が拡大する構造を採用している。従って、座部2が前進し且つ背もたれ部3が後方へ倒れれば倒れるほど、座部2に着座する使用者の頭の高さや腰の高さが心臓の高さに近づくようになる。これにより、使用者の下肢などの末端部に血が集まりにくくなり、マッサージ効果だけでなく、疲労回復などにも有益となる利点がある。この場合、足揉み装置5を前方突出させて使用者の下肢を支持できるようにすると、一層高い効果が得られるようになることは言うまでもない。
【0066】
第2実施形態において、その他の構成、動作状況、作用効果などについては第1実施形態と略同様であるため、図面に対し、同一作用を奏するものに同一の符号を付することにより、ここでの詳説は省略する。
[第3実施形態]
図15〜図18は、本発明に係る椅子型マッサージ機1の第3実施形態を示している。
【0067】
第3実施形態の椅子型マッサージ機1は、幾つかの構造的改良点を除いて、その殆どの構成を第2実施形態と略同様にしたものである。そこで以下では、第2実施形態との相違点のみを説明する。
まず、足揉み装置5の姿勢変換を行わせる姿勢変換機構16において、姿勢駆動部48には、電動送りネジ機構(電動モータ30で送りネジ軸31を回転してこの送りネジ軸31に螺合するナット部材32を前後動させる構造)を採用している。この電動送りネジ機
構の配備方向は、送りネジ軸31を前方突出状態とさせ、電動モータ30を後側とする向きとする。
【0068】
これに伴い、座部2の下方(基礎フレーム6の内部)で空きスペースを拡大できる利点があるため、座部移動機構15の進退駆動部21で採用する電動送りネジ機構は、送りネジ軸31を後方突出状態とさせ、電動モータ30を前側とする向きで配備可能にしている。このように、姿勢変換機構16の姿勢駆動部48と、座部移動機構15の進退駆動部21とで全く同じタイプの電動送りネジ機構を採用すれば、椅子型マッサージ機1としての構成部品が共通化されることになるので、ひいてはコストダウンが可能となる利点が得られる。また、それぞれの電動送りネジ機構において、電動モータ30が基礎フレーム6の内部に集約される配置となっているので、モータ作動音が外部に漏れず、静音化が図れるという利点もある。
【0069】
次に、姿勢変換機構16の揺動アーム47は、座部2の基部支点50から下方へ延び、その後に前方へ屈曲することで前方へ突出するように形成された前方突出部87と、この前方突出部87に前方へスライド自在な状態で保持された伸縮部88とを有して形成されている。この揺動アーム47の伸縮部88には、その先端部に、反転支点75を有した挟持プレート89が設けられており、この挟持プレート89の反転支点75を介して足揉み装置5が回転自在に連結されている。
【0070】
第3実施形態では、このような構造の揺動アーム47を採用することにより、第2実施形態において必要とされていた下アーム部材72や中間リンク73が省略可能となっている。
なお、図15に示すように、左右の揺動アーム47に対し、伸縮部88間を渡るように渡り部材90が設けられ、この渡り部材90の長手方向中途部に凸型に湾曲するクランク連結部91が設けられている。このクランク連結部91に対し、姿勢駆動部48の出力部(電動送りネジ機構のナット部材32)が直接又は間接的に連結されるようになっている。また、背もたれ部3に設けられるレール部材40が、背もたれ部3の背部フレーム3aとは別体で設けられている。
【0071】
ところで、第3実施形態の椅子型マッサージ機1には、当該椅子型マッサージ機1の輸送時や収納時におけるコンパクト化を図るべく、背もたれ部3を前倒しできる機構100(前倒機構)が備えられている。
前倒機構100は、背もたれ部3の下部側方を回動自在に枢支する前倒枢支部101を有している。この前倒枢支部101は、背もたれ部3の左右側方に設けられて左右方向軸回り回転自在に当該背もたれ部3を支持している。
【0072】
また、背もたれ部3を構成する背部フレーム3aの下端で且つ幅方向中央部には、下方に突出する第1突出片102が設けられている。本第3実施形態の場合、第1突出片102は左右一対に設けられている。この第1突出片102は背もたれ部3が前倒れした際には、それに連動して動き、後方を向くようになる。
一方、座部2を構成する座部フレーム2aの後部側には、幅方向に架け渡されたフレーム梁103が設けられており、このフレーム梁103の幅方向中央部には、後方を向くように突出している第2突出片104が設けられている。この第2突出片104も左右一対に設けられている。
【0073】
前倒機構100は、第1突出片102と第2突出片104を有するものであり、背もたれ部3の起立状態において第1突出片102の先端が第2突出片104の先端に重なり合うように、両片102,104は配置されている。
さらに、前倒機構100は、背もたれ部3の起立状態において、第1突出片102の先端と第2突出片104の先端とを係合させて一体化する係合手段105を有している。係合手段105としては様々な機構が採用可能であるが、本第3実施形態の係合手段105として、第1突出片102の先端及び第2突出片104の先端に貫通可能に重なり合う貫通孔106を設けている。重なり合った貫通孔106にピンを差し込むことで、第1突出片102と第2突出片104とが一体となり、背もたれ部3を起立状態で保持可能となる。
【0074】
一方、背もたれ部3を前倒しの状態とする際には、係合手段105による係合状態を解除、すなわち貫通孔106からピンを抜くことにより、第1突出片102と第2突出片104との結合状態は解除される。
その際には、図19に示すように、背もたれ部3を前倒枢支部101回りに回動させて前倒しにして、座部2の上面に背もたれ部3が積層された状態とすることができる。図19の状態とすることで、椅子型マッサージ機1の輸送時や収納時におけるコンパクト化を図ることができるようになる。
【0075】
以上述べた第3実施形態において、その他の構成、動作状況、作用効果などについては第2実施形態と略同様であるため、図面に対し、同一作用を奏するものに同一の符号を付することにより、ここでの詳説は省略する。
ところで、本発明に係る椅子型マッサージ機1は、第1〜3実施形態に限定されるものではない。
【0076】
例えば、座部2の上面や足揉み装置5の足入れ部13内等にリミットスイッチ等のセンサを設けておき、このセンサが使用者を検出しているとき、又は、マッサージ部9や下肢マッサージ機構が動作中の場合には、姿勢変換機構16が動作しないような構成を採用することができる。このような構成を採り入れておけば、使用者の下肢を痛める等の不都合な状況を確実に防ぐことができる。
【符号の説明】
【0077】
1 椅子型マッサージ機
2 座部
2a 座部フレーム
3 背もたれ部
3a 背部フレーム
5 足揉み装置
5a マッサージ面
5b 背面
6 基礎フレーム
6a 支柱部
7 下部フレーム
8 上部フレーム
9 マッサージ部
10 揺動部
11 ヒンジ片部
12 レバー部
13 足入れ部
14 車輪
15 座部移動機構
16 姿勢変換機構
20 ガイド部
21 進退駆動部
24 側部材
25 前部材
27 張出部材
28 摺動部
30 電動モータ
31 ネジ軸
32 ナット部材
35 テールフレーム
36 後部材
40 レール部材
41 摺動保持部
42 回動支持部
45 縦部材
47 揺動アーム
48 姿勢駆動部
50 基部支点
51 先部支点
55 シリンダ部
56 ネジ軸
57 電動モータ
60 側部材
61 後部材
63 脚フレーム
64 脚部材
65 渡り部材
67 前部摺動部
68 後部摺動部
72 下アーム部材
73 中間リンク
75 反転支点
76 連結端部
77 連結端部
78 ブラケット片
81 伸縮杆部
82 補助支点
87 前方突出部
88 伸縮部
89 挟持プレート
90 渡り部材
91 クランク連結部
100 前倒機構
101 前倒枢支部
102 第1突出片
103 フレーム梁
104 第2突出片
105 係合手段
106 貫通孔
F 床面
P 収納位置
W 室内壁面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
座部と、この座部を床面上で支持する基礎フレームと、前記座部の前部に設けられた足揉み装置とを有する椅子型マッサージ機において、
前記基礎フレームには、座部を少なくとも前後方向へ移動させる座部移動機構が設けられ、
前記座部には、座部と足揉み装置との相対距離を保持させつつ座部に対する足揉み装置の姿勢を可変とする姿勢変換機構が設けられていることを特徴とする椅子型マッサージ機。
【請求項2】
前記座部移動機構は、座部の前方移動時に座部前端を上昇させる前上がり動作と、座部の後方移動時に座部前端を下降させる前下がり動作とを行わせる構成となっており、
前記姿勢変換機構は、座部の前上がり動作時において、座部と足揉み装置との相対距離を保持させつつ座部に対する足揉み装置の姿勢を可変とする構成となっていることを特徴とする請求項1に椅子型マッサージ機。
【請求項3】
前記座部移動機構は、前記基礎フレームに設けられていて座部を前後方向へ移動自在に案内するガイド部と、座部を前後方向に移動させる進退駆動部と、を有しており、
前記姿勢変換機構は、前記座部に設けられ且つ左右方向軸心回りの揺動を支持する基部支点と足揉み装置に設けられ且つ左右方向軸心回りの揺動を支持する先部支点との間を連結する揺動アームを有している
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の椅子型マッサージ機。
【請求項4】
前記姿勢変換機構は、前記座部の基部支点から下方へ延びて且つ先端が前方へ屈曲している前方突出部とこの前方突出部に対し前方へスライド自在に設けられた伸縮杆部とを備えた下アーム部材を有しており、
前記下アーム部材の伸縮杆部の先端部と足揉み装置とが左右方向軸心回りに揺動自在に連結されていることを特徴とする請求項3に記載の椅子型マッサージ機。
【請求項5】
前記姿勢変換機構の揺動アームは、前記座部の基部支点から下方へ延びて且つ先端が前方へ屈曲している前方突出部と、この前方突出部に対し前方へスライド自在に設けられた伸縮部とを備えており、
前記揺動アームの伸縮部と足揉み装置とが左右方向軸心回りに揺動自在に連結されていることを特徴とする請求項3に記載の椅子型マッサージ機。
【請求項6】
前記姿勢変換機構は、足揉み装置のマッサージ面が上方を向く状態と床面に対面する状態との間で反転可能となるように、足揉み装置の左右側部に設けられた左右方向軸心回りの揺動を支持する反転支点に連結される中間リンクを有しており、
前記揺動アームの先端部と中間リンクの一端部とが左右方向軸心まわり揺動自在に連結され、
前記下アーム部材の伸縮杆部と中間リンクの他端部とが左右方向軸心まわり揺動自在に連結されている
ことを特徴とする請求項4に記載の椅子型マッサージ機。
【請求項7】
前記姿勢変換機構は、座部の下方に形成された収納位置に足揉み装置を収納可能にする構成とされていることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の椅子型マッサージ機。
【請求項8】
前記座部の後部には、背もたれ部がリクライニング動作可能に設けられており、この背もたれ部のリクライニング動作時には、背もたれ部の上端部が一の鉛直線に沿いつつ上下
動するように構成されていて、
前記背もたれ部は、後方へのリクライニング動作において背もたれ部の下端部が前方移動すると共に上端部が下降し、前方へのリクライニング動作において背もたれ部の下端部が後方移動すると共に上端部が上昇する構成とされていることを特徴とする請求項1〜7に記載の椅子型マッサージ機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2012−179214(P2012−179214A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−43732(P2011−43732)
【出願日】平成23年3月1日(2011.3.1)
【出願人】(592009214)大東電機工業株式会社 (106)
【Fターム(参考)】