説明

椅子式マッサージ機

【課題】
前腕外側であって、肘に近いツボを含め、前腕に広く分布する複数のツボを十分に押圧することができ、また、指伸筋、尺側手根伸筋、尺側手根屈筋などの浅層骨格筋の肘に近い部分を十分に押圧することのできるマッサージ機を提供することを課題とする。
【解決手段】
本発明は、使用者が着座する座部と、座部に立設した背もたれ部と、座部の左右に配置された肘掛部と、肘掛部の上面に対向して立設された内側立上り壁と外側立上り壁とを具備し、それぞれの立上り壁が対向する内壁面に膨縮可能な空気袋を有する椅子式マッサージ機であって、内側立上り壁の内壁面に配設された第一空気袋と、肘掛部の幅方向で第一空気袋に重合される第二空気袋と、外側立上り壁の内壁面に近設された第三空気袋と、肘掛部の長手方向に第三空気袋と列設され、第三空気袋より肘掛部の長手方向に長い第四空気袋と、を具備する椅子式マッサージ機などにより解決することができた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧縮空気の給排によって膨張又は収縮する膨縮機構によって、施療者の手及び手首から前腕に断続的に圧迫を加えて施療を行う機構を備えた腕揉機能を有する椅子式マッサージ機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、椅子式マッサージ機において、リクライニング可能な背もたれ部、座部、肘掛部などを具備し、人体の腰部、背部、頸部、臀部、肘部などをマッサージするために電気により駆動する揉み玉や、圧縮空気を用いた空気圧の変化によって膨張又は収縮する袋体が内装されたものが広く知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、座部と背もたれ部と肘掛け部とを有し、肘掛け部に載置された被施療者の腕をエア給気量に応じて圧迫するエアバックを腕の異なる位置に対応するように複数配置したマッサージ機において、被施療者の身長を検出する手段を設けるとともに、検出した身長に応じて各エアバックへのエア給気量を変更することができる発明が開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、基部を揺動支点として揺動可能に支持された揺動体をエアセルの膨張収縮動作で駆動して揺動体の揺動動作によりマッサージ作用を発生させるマッサージ機において、揺動体が身体に沿って湾曲できるように可撓性を有している発明が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−29398号
【特許文献2】特開2001−258971号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1及び特許文献2では、肘掛け部の上面に形成されたU字状開口の立上り壁の内壁に空気袋を設け、使用者の手や前腕を押圧施療する椅子式マッサージ機が記載されており、その空気袋は左右の立上り壁の内壁に左右対称に配設されている。
【0007】
しかしながら、使用者の手首から肘に至る前腕は、前腕内側と前腕外側で長さが異なっている。すなわち、前腕外側の方が、前腕内側よりも長い。これは、手首の小指付け根付近から肘外側付近に位置する尺骨(しゃっこつ)の長さが、手首の親指付け根付近から肘内側付近に位置する橈骨(とうこつ)の長さよりも長いからである。このため、特許文献1及び特許文献2に記載のマッサージ機に前腕を載置して押圧施療を行っても、肘内側付近には筋肉がなく、立上り壁の内壁に配設された空気袋が肘の内側の骨である内側上顆(ないそくじょうか)などの上腕骨を押圧し痛みを覚えることから、使用者が意図的に前腕全体を空気袋に挟持させないようにしてしまうことで、手の甲の側の前腕、特にそのうち肘外側付近を十分に押圧施療できない恐れがあった。
【0008】
すなわち、特許文献1及び特許文献2に記載のマッサージ機では、使用者が押圧による不快感を緩和するために意図的に前腕を動かした場合、前腕外側に位置する複数のツボを十分に押圧することができず、また、指伸筋(ししんきん)、尺側手根伸筋(しゃくそくしゅこんしんきん)、尺側手根屈筋(しゃくそくしゅこんくっきん)などの浅層骨格筋の肘に近い部分を十分に押圧することができなかった。
【0009】
また、特許文献1及び特許文献2に記載のマッサージ機では、使用者の前腕に広く分布する複数のツボを十分に押圧することもできなかった。
【0010】
本発明は、上記の問題点に鑑みて発明されたものであって、前腕を人の母指とその他の指とによって、挟むように押圧する揉捏を再現し、肘の付近にあるツボを含め前腕に広く分布する複数のツボを十分に押圧することができ、また、指伸筋、尺側手根伸筋、尺側手根屈筋などの浅層骨格筋の肘に近い部分を広範囲に押圧することのできるマッサージ機を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
すなわち、本発明は、使用者が着座する座部と、前記座部に立設した背もたれ部と、前記座部の左右に配置された肘掛部と、前記肘掛部の上面に対向して立設された使用者の身体側に近い内側立上り壁と使用者の身体側から遠い外側立上り壁とを具備し、それぞれの立上り壁が対向する内壁面に膨縮可能な空気袋を有する椅子式マッサージ機であって、前記内側立上り壁の内壁面に配設された第一空気袋と、前記肘掛部の幅方向で前記第一空気袋に重合される第二空気袋と、前記外側立上り壁の内壁面に近設された第三空気袋と、前記肘掛部の長手方向に前記第三空気袋と列設され、前記第三空気袋より前記肘掛部の長手方向に長い第四空気袋と、を具備する椅子式マッサージ機である。
【0012】
そして、前記第一空気袋及び前期第二空気袋が、重合して前記肘掛部の長手方向に複数列設されている上記の椅子式マッサージ機である。
【0013】
そして、重合している前記第一空気袋と前記第二空気袋とのそれぞれに、通気可能な給排気管が接続され、前記第一空気袋の給排気管、前記第二空気袋の給排気管が合流して配設されている上記の椅子式マッサージ機である。
【0014】
そして、前記第四空気袋が、前記第三空気袋よりも使用者の肘側に配設されている上記の椅子式マッサージ機である。
【0015】
そして、通気可能な給排気管が、前記第三空気袋と前記第四空気袋とに夫々独立して接続されている上記の椅子式マッサージ機である。
【0016】
そして、使用者の手首側に配設される前記第一空気袋及び前記第二空気袋と、前記手首側となる第一空気袋及び第二空気袋に対向する前記第三空気袋とが、同期して膨張又は収縮し、使用者の肘側に配設される前記第一空気袋及び前記第二空気袋と、前記肘側となる第一空気袋及び第二空気袋に対向する前記第四空気袋とが、使用者の手首側に配設される前記第一空気袋及び前記第二空気袋と前記第三空気袋とは異なるタイミングで同期して膨張又は収縮する上記の椅子式マッサージ機である。
【0017】
そして、使用者の手首側に配設される前記第一空気袋及び前記第二空気袋と、前記手首側となる第一空気袋及び第二空気袋に対し斜めに対向する前記第四空気袋とが、同期して膨張又は収縮し、使用者の肘側に配設される前記第一空気袋及び前記第二空気袋と、前記肘側となる第一空気袋及び第二空気袋に対し斜めに対向する前記第三空気袋とが、使用者の手首側に配設される前記第一空気袋及び前記第二空気袋と前記第四空気袋とは異なるタイミングで同期して膨張又は収縮する上記の椅子式マッサージ機である。
【発明の効果】
【0018】
内側立上り壁の内壁面に配設された第一空気袋と、肘掛部の幅方向で第一空気袋に重合される第二空気袋と、外側立上り壁の内壁面に近設された第三空気袋と、肘掛部の長手方向に第三空気袋と列設され、第三空気袋より肘掛部の長手方向に長い第四空気袋と、を具備することにより、手及び手首から肘にかけての前腕外側に位置する複数のツボを十分に押圧することができ、また、指伸筋、尺側手根伸筋、尺側手根屈筋などの浅層骨格筋の肘に近い部分を広範囲に押圧することができる。
【0019】
そして、第一空気袋及び第二空気袋が、重合して肘掛部の長手方向に複数列設されていることにより、前腕を人の母指とその他の指とにより挟み込むように、広範囲を順次押圧してゆく揉捏を再現し、使用者の手及び手首に位置する複数のツボ、そして前腕内側と前腕外側との間付近の部分、すなわち前腕内側の上端側に幅広く分布する複数のツボを押圧することができ、また、同じく前腕内側に位置し疲労が蓄積しやすく太い組織である腕橈骨筋、長橈側手根伸筋(ちょうとうそくしゅこんしんきん)、短橈側手根伸筋(たんとうそくしゅこんしんきん)などの浅層骨格筋を押圧することができる。
【0020】
そして、重合している前記第一空気袋と前記第二空気袋とのそれぞれに通気可能な給排気管が接続され、前記第一空気袋の給排気管と、前記第二空気袋の給排気管が合流して配設されていることにより、それぞれの空気袋は同期して、すなわち使用者がほぼ同じタイミングと認識する程度のタイミングで膨張又は収縮されるので、使用者の前腕を十分に押圧することができ、またその前腕に掛かる押圧を取り除くことができるというメリハリのある施療が可能となる。
【0021】
そして、肘掛け部の長手方向に長い第四空気袋が、第三空気袋よりも使用者の肘側に配設されていることにより、前腕外側に位置し、肘に近い複数のツボ及び前腕に広く分布する複数のツボを十分に押圧することができるとともに、指伸筋、尺側手根伸筋、尺側手根屈筋などの浅層骨格筋全体を十分に押圧することができる。
【0022】
そして、通気可能な給排気管が、前記第三空気袋と前記第四空気袋とに夫々独立して接続されていることにより、それぞれの空気袋は同期して、又は異なるタイミング、すなわち使用者が異なるタイミングと認識する程度のタイムラグをもって、膨張又は収縮されるので、前腕を人の母指とその他の指とにより挟み込むように、広範囲を順次押圧してゆく揉捏を再現して、使用者の前腕全体を揉みほぐすことができ、あるいは手首側から肘側まで又は肘側から手首側まで順番に揉みほぐすことができるという複雑な施療が可能となる。
【0023】
そして、使用者の手首側に配設される前記第一空気袋及び前記第二空気袋と、前記手首側となる第一空気袋及び第二空気袋に対向する前記第三空気袋とが、同期して膨張又は収縮し、使用者の肘側に配設される前記第一空気袋及び前記第二空気袋と、前記肘側となる第一空気袋及び第二空気袋に対向する前記第四空気袋とが、使用者の手首側に配設される前記第一空気袋及び前記第二空気袋と前記第三空気袋とは異なるタイミングで同期して膨張又は収縮することにより、使用者の手首側から肘側まで対向する空気袋を順番にタイミングをずらして揉みほぐすことができるので、前腕の血液を心臓に還流させる人間に近い施療が可能となる。
【0024】
そして、使用者の手首側に配設される前記第一空気袋及び前記第二空気袋と前記手首側となる第一空気袋及び第二空気袋に対し斜めに対向する前記第四空気袋とが、同期して膨張又は収縮し、使用者の肘側に配設される前記第一空気袋及び前記第二空気袋と、前記肘側となる第一空気袋及び第二空気袋に対し斜めに対向する前記第三空気袋とが、使用者の手首側に配設される前記第一空気袋及び前記第二空気袋と前記第四空気袋とは異なるタイミングで同期して膨張又は収縮することにより、使用者の前腕を複数の部分に分割して、前腕の広範囲に位置する複数のツボ及び浅層骨格筋をそれぞれの空気袋の膨張するタイミングで揉みほぐすことができるので、人の手で順次押圧するのに比べ、複雑な施療が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本件発明の椅子式マッサージ機の外装カバーを外した状態の一実施形態を示す全体斜視図。
【図2】本件発明の椅子式マッサージ機の外装カバーを外した状態の一実施形態を示す左右肘掛け部の平面図。
【図3】本件発明の椅子式マッサージ機の外装カバーを外した状態の一実施形態を示す右肘掛け部のA−A線断面図。
【図4】本件発明の椅子式マッサージ機の外装カバーを外した状態の一実施形態を示す右肘掛け部のB−B線断面図。
【図5】本件発明の椅子式マッサージ機の外装カバーを外した状態の一実施形態を示す右肘掛け部のC−C線断面図。
【図6】本件発明の椅子式マッサージ機の外装カバーを外した状態の一実施形態を示す使用状態の平面図。
【図7】(a)本件発明の椅子式マッサージ機の外装カバーを外した状態の一実施形態を示す空気袋収縮状態の右肘掛け部のD−D線断面図。(b)本件発明の椅子式マッサージ機の外装カバーを外した状態の一実施形態を示す空気袋膨張状態の右肘掛け部のD−D線断面図。
【図8】(a)本件発明の第二空気袋と前腕内側のツボとの相対的な位置関係を示す説明図。(b)本件発明の第二空気袋と前腕外側のツボとの相対的な位置関係を示す説明図。
【図9】(a)人の手による前腕への施療状態を示す参考図。(b)人の手による前腕への施療状態を示す参考図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の椅子式マッサージ機を、図面に示す一実施形態に基づいてこれを詳細に説明する。図1は本件発明の椅子式マッサージ機の外装カバーを外した状態の一実施形態を示す全体斜視図であり、図2は本件発明の椅子式マッサージ機の外装カバーを外した状態の一実施形態を示す左右肘掛け部の平面図であり、図3は本件発明の椅子式マッサージ機の外装カバーを外した状態の一実施形態を示す右肘掛け部のA−A線断面図であり、図4は本件発明の椅子式マッサージ機の外装カバーを外した状態の一実施形態を示す右肘掛け部のB−B線断面図であり、図5は本件発明の椅子式マッサージ機の外装カバーを外した状態の一実施形態を示す右肘掛け部のC−C線断面図であり、図6は本件発明の椅子式マッサージ機の外装カバーを外した状態の一実施形態を示す使用状態の平面図であり、図7(a)は本件発明の椅子式マッサージ機の外装カバーを外した状態の一実施形態を示す空気袋収縮状態の右肘掛け部のD−D線断面図であり、図7(b)は本件発明の椅子式マッサージ機の外装カバーを外した状態の一実施形態を示す空気袋膨張状態の右肘掛け部のD−D線断面図であり、図8(a)は本件発明の第二空気袋と前腕内側のツボとの相対的な位置関係を示す説明図であり、図8(b)は本件発明の第二空気袋と前腕外側のツボとの相対的な位置関係を示す説明図である。また、図9(a)は、人の手により、被施療者の前腕外側部(例えば、腕橈骨筋)を順次、揉捏する場合の参考図であり、図9(b)は、(例えば、長橈側手根伸筋)を順次、揉捏する場合の参考図である。なお、多くの図で外装カバーを外した状態の形態として示しているのは、各構成を説明しやすくするためである。
【0027】
すなわち、本件発明の椅子式マッサージ機は、図1に示すように背もたれ部(1)と、座部(2)と、座部(2)の左右に配置された肘掛部(3)と、肘掛部(3)の上面に対向して立設された使用者の身体側に近い内側立上り壁(31)と使用者の身体側から遠い外側立上り壁(32)とを具備し、それぞれの立上り壁(31、32)が対向する内壁面に膨縮可能な空気袋を有する椅子式マッサージ機であって、内側立上り壁(31)の内壁面に近設された第一空気袋(41)よりも、肘掛部の幅方向で第一空気袋(41)に重合される第二空気袋(42)が肘掛部の上面に対して上側となる位置に配設されるよう構成されている。そして、さらに外側立上り壁(32)には、第三空気袋(43)及び第四空気袋(44)が近設されている。
【0028】
このように肘掛部(3)の上面に対向して立設されたそれぞれの立上がり壁(31、32)の内壁に、それぞれの空気袋(41、42、43、44)を配設することにより、肘掛部(3)を上面に開口するUの字状に形成できるものであり、使用者が着座する際には、スムーズに前腕を挿入して、マッサージを行えるようにしている。
【0029】
そして、図1に示すように座部(2)の下方には、3段階に伸縮可能であり、各構成部材の使用者の下肢部側の内壁面に下肢用空気袋(45)が配設された(図1には最下層の構成部材の空気袋のみ図示)脚支持部(5)を具備する。この脚支持部(5)は、好適な位置まで上方に回動させ、好適な長さに伸縮することができ、下肢用空気袋(45)の膨張収縮により使用者の足を押圧することができる。また、背もたれ部(1)には、マッサージ機構(図示しない)が内装されている。上記背もたれ部(1)、肘掛部(3)、脚支持部(5)に設けられた各空気袋(41、42、43、44、45)とマッサージ機構は、座部(2)の下部に設けられた制御手段(図示しない)によって制御されて、夫々使用者に対するマッサージが行われる。
【0030】
また、座部(2)の下部には、制御手段からの制御によって動作し、上記の各空気袋(41、42、43、44、45)に圧縮空気を給気、排気する圧縮空気給排装置(図示しない)が設けられている。この圧縮空気給排気装置から、給排気管である給排気ホース(図示しない)を介して、リモコン(図示しない)で設定した運転コース、押圧強度又は押圧のタイミングに対応するよう電子制御により空気が供給され、又はそれぞれの空気袋(41、42、43、44、45)から空気が排出される。第一空気袋(41)に接続されている給排気ホースと、第二空気袋(42)に接続されている給排気ホースとは、途中で合流し一本の給排気ホースとして配設されている。換言すれば、一本の給排気ホースが途中で分岐して第一空気袋(41)及び第二空気袋(42)と接続されている。また、第三空気袋(43)と第四空気袋(44)に接続されている給排気ホースは、独立して、すなわち、途中で合流することなく配設されている。
【0031】
また、図1、図2に示すように肘掛部(3)の上面の幅方向で使用者の身体側に近い一端に内側立上り壁(31)が立設されており、また、使用者の身体側に遠い他端に外側立上り壁(32)が立設されている。これらの立上り壁(31、32)は、肘掛部(3)と一体成型されている。
【0032】
そして、図2に示すように内側立上り壁(31)の内壁、すなわち、肘掛部(3)に前腕を載置したときの前腕側の壁に第一空気袋(41)が近設されている。また、第一空気袋(41)の内側、すなわち、肘掛部(3)に前腕を載置したときの前腕側に同じ大きさの第二空気袋(42)が重合、すなわち、重なり合う位置に配設されている。そして、使用者が前腕を載置したときに手首側となる位置に一対の第一空気袋(41)と第二空気袋(42)と、使用者が前腕を載置したときに肘側となる位置に他の対の第一空気袋(41)と第二空気袋(42)とが列設されており、内側立上り壁(31)には、合計二対の第一空気袋(41)と第二空気袋(42)が配設されている。なお、使用者の前腕をより広範囲に施療するために、三対以上の第一空気袋(41)と第二空気袋(42)が配設することもできる。
【0033】
一方、外側立上り壁(32)の内壁には、使用者の手首側に第三空気袋(43)が近設されている。さらに、第四空気袋(44)が、肘掛部(3)の長手方向で第三空気袋(43)よりも長く、当該長手方向で使用者の肘側により近い位置に配設されている。なお、第一空気袋(41)、第二空気袋(42)、第三空気袋(43)は同じ大きさである。このため、肘掛部(3)の長手方向において、内側立上り壁(31)側となる第二空気袋(42)と第二空気袋(42)の長さよりも、外側立上り壁(32)側となる第三空気袋(43)、第四空気袋(44)の方が長くなっており、使用者の前腕内側よりも前腕外側をより広い範囲で押圧することができる。そして、それぞれの空気袋は、空気袋の下側の左右2箇所から延設された止着部を、止め具を介して肘掛部(3)に止着されており、また、それぞれの立上り壁(31、32)からはみ出さずに配設されている。
【0034】
また、第三空気袋(43)と第四空気袋(44)は、それぞれ独立した別個の給排気ホースに接続されているので、それぞれに空気が供給されて膨張し、又はその空気が排出されて収縮する。そして、それらの空気袋は、同期して、又は異なるタイミング、すなわち使用者が異なるタイミングと認識する程度のタイムラグをもって、膨張又は収縮する。例えば、それらの空気袋が異なるタイミングで膨張又は収縮する態様として、第三空気袋(43)が膨張しているときに第四空気袋(44)が収縮する態様が挙げられ、それら空気袋がそれぞれ膨張と収縮を繰り返すことにより使用者の前腕外側の手首側と肘側を交互に施療することが可能となる。
【0035】
図3に示すように第三空気袋(43)と第四空気袋(44)は、肘掛部(3)の上面に対して同じ高さ、すなわち、それぞれ最も膨張したときに最も突出している部分がほぼ同じ高さになるように配設されている。
【0036】
一方、図4、図5に示すように第一空気袋(41)と第二空気袋(42)は、肘掛部(3)の上面に対して第二空気袋(42)の方が第一空気袋(41)より上側、すなわち、断面視で楕円形状に膨張する第二空気袋(42)の最も膨張したときに最も突出している部分が、第一空気袋(41)のその位置よりも上側にある。この構成により、一対の第一空気袋(41)と第二空気袋(42)は、それぞれに接続された分岐を有する給排気ホースで圧縮空気が供給されて、同期して膨張し、第一空気袋(41)の膨張とともに第二空気袋(42)が膨張しながら使用者の前腕を押しつけ、前腕を斜め上方から押圧することができる。また、第二空気袋(42)、第三空気袋(43)及び第四空気袋(44)は、肘掛部(3)の上面に対して同じ高さ、すなわち、それぞれ最も膨張したときに最も突出している部分がほぼ同じ高さになるように配設されている。
【0037】
また、図4に示すように、第一空気袋(41)及び第二空気袋(42)は、重合された状態で、肘掛部(3)の長手方向に複数列設されている。そして、肘掛部(3)の第一空気袋(41)及び第二空気袋(42)は、1個の第一空気袋(41)と、それに重合する1個の第二空気袋(42)とが一対として、一本の給排気ホースが分岐して接続されている。したがって、それぞれに接続されて分岐を有する給排気ホースによって圧縮空気給排装置から空気が供給されて膨張又はその空気が排出されて収縮される。このため、一対の空気袋(41、42)は、同期して、すなわち使用者がほぼ同じタイミングと認識する程度のタイミングで膨張又は収縮されるので、使用者の前腕を十分に押圧することができ、またその前腕に掛かる押圧を取り除くことができるというメリハリのある施療が可能となる。一方、肘掛部の長手方向に複数列設され、使用者の手首側となる一対の第一空気袋(41)及び第二空気袋(42)と、使用者の肘側となる他の対の第一空気袋(41)及び第二空気袋(42)は、それぞれの一対に別々の給排気ホースが接続される。
【0038】
図6に示すように、使用者が前腕を肘掛部(3)に載置して使用するときには、前腕が第二空気袋(42)と、第三空気袋(43)及び第四空気袋(44)とに挟まれる位置関係となる。
【0039】
なお、それぞれの空気袋(41、42、43、44、45)は、伸縮性を有し、空気の密封性に優れている高分子材料が使用されることが好ましく、ポリウレタン、6,6−ナイロン、6−ナイロン、ABS、シリコーン樹脂を単独で又は2つ以上併用して使用されることがさらに好ましい。また、それぞれの空気袋(41、42、43、44、45)は、より空気の密封性を向上させるために単層ではなく2層以上の複数層により構成されても良い。なお、第二空気袋(42)、第三空気袋(43)及び第四空気袋(44)の使用者の身体側の表面に上述した重要なツボをより効果的に押圧するために高分子材料などからなる突起物を有していても良い。
【0040】
次に、これらの使用状態について説明する。
【0041】
図7(a)に示すように、マッサージが開始される前には、第二空気袋(42)及び第四空気袋(44)は使用者の前腕を押圧していない。なお、図面の切断方向の関係で、第三空気袋(43)が図示されていないが、第三空気袋(43)は第四空気袋(44)と同様に使用者の前腕を押圧していない。
【0042】
そして、図7(b)に示すように、リモコンで設定した運転コース、押圧強度又は押圧のタイミングに対応するよう電子制御により圧縮空気給排気装置から空気が供給され、第一空気袋(41)、第二空気袋(42)、第三空気袋(43)、第四空気袋(44)は膨張し始めて使用者の前腕を押圧する。このとき、重合された一対の第一空気袋(41)及び第二空気袋(42)は、それぞれに接続され、分岐を有する給排気ホースによって圧縮空気が供給されるため、内側立上り壁(31)の内壁面に近設された第一空気袋(41)の膨張によって、肘掛部の幅方向で第一空気袋(41)に重合される第二空気袋(42)は膨張しながら使用者の前腕方向に押し出される。これにより、第一空気袋(41)よりも肘掛部(3)の上面に対して上側となる位置に配設された第二空気袋(42)は、使用者の手及び手首から前腕内側を斜め上方より押圧することでき、人の手により揉まれている感覚を再現することができる。
【0043】
より具体的には、前腕の広範囲に位置する複数のツボ、すなわち、手及び手首に位置する太淵(たいえん)、神門(しんもん)、大陵(だいりょう)などの重要なツボ、そして前腕内側に位置する孔最(こうさい)、尺沢(しゃくたく)、曲沢(きょくたく)などの重要なツボを押圧することができ、また、同じく前腕内側の側方に位置する腕橈骨筋、長橈側手根伸筋、短橈側手根伸筋などの浅層骨格筋を押圧することができる。
【0044】
また、前腕外側についても、肘掛部(3)の外側立上り壁(32)の内壁に設けられた第三空気袋(43)及び第四空気袋(44)は、それぞれに接続され、分岐を有する給排気ホースによって圧縮空気が供給されるため、前腕外側の手首から肘にかけての広範囲が押圧される。
【0045】
より具体的には、手及び手首に位置する陽谿(ようけい)、陽池(ようち)、外関(がいかん)などの重要なツボを押圧でき、また、前腕外側であって肘に近い部分に位置する、手三里(てさんり)、四とく(しとく)、曲池(きょくち)、肘頭(ちゅうとう)などの重要なツボを押圧することができる。
【0046】
また、第一空気袋(41)第二空気袋(42)、第三空気袋(43)、第四空気袋(44)は、膨張及び収縮を繰り返し、使用者の前腕をもみほぐすマッサージを行うことができる。
【0047】
上記したように、重合して対をなす第一空気袋(41)及び第二空気袋(42)らは、それぞれに接続された分岐を有する給排気ホースを介して圧縮空気給排気装置に接続されており、同期して膨張又は収縮される。一方、肘掛部の長手方向に複数列設され、使用者の手首側となる一対の第一空気袋(41)及び第二空気袋(42)と、使用者の肘側となる他の対の第一空気袋(41)及び第二空気袋(42)とは、それぞれの一対に別々の給排気ホースが接続される。また、第三空気袋(43)と第四空気袋(44)は、独立した別個の給排気ホースによってそれぞれに膨張又は収縮するが、それぞれ同期して膨張又は収縮することも、交互になど異なるタイミングで膨張又は収縮することもでき、前腕を広範囲、且つ順次押圧することができる。
【0048】
したがって、肘掛部の長手方向に複数列設され、使用者の手首側となる一対の第一空気袋(41)及び第二空気袋(42)と、使用者の肘側となる他の対の第一空気袋(41)及び第二空気袋(42)とは、それぞれの対ごとに同期して膨張又は収縮することができる。そのため、それぞれの対は、互いに同期して膨張又は収縮することも、それとは異なるタイミングで膨張又は収縮することもでき、前腕を広範囲、且つ順次押圧することができる。
【0049】
上記の制御により、第一空気袋(41)、第二空気袋(42)、第三空気袋(43)、第四空気袋(44)は、それぞれが同期して膨張及び収縮することも、別々のタイミングで膨張又は収縮することもできる。これにより、各空気袋の膨張又は収縮の順序を変化させて使用者の前腕を全体的にもみほぐすマッサージを行うことができる。
【0050】
また、上記の制御の組み合わせにより、使用者の手首側に配設される第一空気袋(41)及び第二空気袋(42)と、それらの空気袋に対向する第三空気袋(43)とが、同期して膨張又は収縮することができる。そして、使用者の肘側に配設される第一空気袋(41)及び第二空気袋(42)と、それらの空気袋に対向する第四空気袋(44)とが、使用者の手首側に配設される第一空気袋(41)及び第二空気袋(42)と第三空気袋(43)とは異なるタイミングで同期して膨張又は収縮することができる。
【0051】
また、上記段落の制御に変えて、使用者の手首側に配設される第一空気袋(41)及び第二空気袋(42)と、それらの空気袋に斜めに対向する第四空気袋(44)とが、同期して膨張又は収縮することができる。そして、使用者の肘側に配設される第一空気袋(41)及び第二空気袋(42)と、それらの空気袋に斜めに対向する第三空気袋(43)とが、使用者の手首側に配設される第一空気袋(41)及び第二空気袋(42)と第四空気袋(44)とは異なるタイミングで同期して膨張又は収縮することができる。
【0052】
これら種々の制御により、使用者の手首側から肘側まで対向する空気袋を順番にタイミングをずらして揉みほぐすことができ、また使用者の前腕の広範囲に位置する重要なツボ及び浅層骨格筋をそれぞれの空気袋の膨張するタイミングで揉みほぐすことができるので、前腕を人の母指とその他の指とにより挟み込むように、広範囲を順次押圧してゆく揉捏を再現したような人間に近い施療や、前腕の広範囲を一時期に押圧するような人の手では難しい施療が可能となる。なお、これらの制御プログラムは、記憶媒体に格納されており、リモコンからの命令信号に起因して演算処理装置によって実行される。
【0053】
図8(a)に示すように使用者の前腕内側において、第二空気袋(42)により孔最(6a)、尺沢(6b)、曲沢(6c)を上方から押圧することができ、またもう一つの第二空気袋(42)により、太淵(6d)、大陵(6e)、神門(6f)、内関(6g)、げき門(6h)をも上方から押圧することができる。さらに、同じく前腕内側に位置し疲労が蓄積しやすく太い組織である腕橈骨筋、長橈側手根伸筋、短橈側手根伸筋などの浅層骨格筋を押圧することができる。
【0054】
図8(b)に示すように使用者の前腕外側において、第三空気袋(43)により手首付近を含めて押圧することにより、陽谿(6i)、陽池(6j)、外関(6k)などのツボを押圧することができる。また、第四空気袋(44)により、肘付近を含めた幅広い範囲、すなわち、四とく(6l)、手三里(6m)、曲池(6n)、肘頭(6o)などのツボを押圧することができる。さらに、同じく前腕外側に位置する指伸筋、尺側手根伸筋、尺側手根屈筋などの浅層骨格筋を押圧することができる。
【0055】
また、上記実施の形態に追加可能な構成として、座部(2)の左右両端部であって、肘掛部(3)の内側立上り壁(31)の座部(2)側に沿って、着座した使用者の大腿部を両側から押圧するための大腿部用空気袋を設けてもよい。この場合、前腕を肘掛部の側方から挿入する従来周知の椅子式マッサージ機が、肘掛部の開口を塞がない様に、空気袋の大きさや配置が制限されてしまうのに対し、本願の椅子式マッサージ機では、開口が上面を向いており、内側立上り壁(31)が座部(2)から立設している形状であるため、大腿部用空気袋の大きさや配置に制限が少なく、使用者の大腿部をより効果的にマッサージできる空気袋を設けることができる。
【符号の説明】
【0056】
1・・・背もたれ部
2・・・座部
3・・・肘掛部
31・・内側立上り壁
32・・外側立上り壁
41・・第一空気袋
42・・第二空気袋
43・・第三空気袋
44・・第四空気袋
45・・下肢用空気袋
5・・・脚支持部
6a〜6o・・・各種ツボ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用者が着座する座部と、前記座部に立設した背もたれ部と、前記座部の左右に配置された肘掛部と、前記肘掛部の上面に対向して立設された使用者の身体側に近い内側立上り壁と使用者の身体側から遠い外側立上り壁とを具備し、それぞれの立上り壁が対向する内壁面に膨縮可能な空気袋を有する椅子式マッサージ機であって、
前記内側立上り壁の内壁面に配設された第一空気袋と、
前記肘掛部の幅方向で前記第一空気袋に重合される第二空気袋と、
前記外側立上り壁の内壁面に近設された第三空気袋と、
前記肘掛部の長手方向に前記第三空気袋と列設され、前記第三空気袋より前記肘掛部の長手方向に長い第四空気袋と、
を具備することを特徴とする椅子式マッサージ機。
【請求項2】
前記第一空気袋及び前記第二空気袋が、重合して前記肘掛部の長手方向に複数列設されていることを特徴とする請求項1に記載の椅子式マッサージ機。
【請求項3】
重合している前記第一空気袋と前記第二空気袋とのそれぞれに、通気可能な給排気管が接続され、前記第一空気袋の給排気管と、前記第二空気袋の給排気管が合流して配設されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の椅子式マッサージ機。
【請求項4】
前記第四空気袋が、前記第三空気袋よりも使用者の肘側に配設されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の椅子式マッサージ機。
【請求項5】
通気可能な給排気管が、前記第三空気袋と前記第四空気袋とに夫々独立して接続されていることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の椅子式マッサージ機。
【請求項6】
使用者の手首側に配設される前記第一空気袋及び前記第二空気袋と、前記手首側となる第一空気袋及び前記第二空気袋に対向する前記第三空気袋とが、同期して膨張又は収縮し、
使用者の肘側に配設される前記第一空気袋及び前記第二空気袋と、それらの空気袋に対向する前記第四空気袋とが、使用者の手首側に配設される前記第一空気袋及び前記第二空気袋と前記第三空気袋とは異なるタイミングで同期して膨張又は収縮することを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の椅子式マッサージ機。
【請求項7】
使用者の手首側に配設される前記第一空気袋及び前記第二空気袋と、前記手首側となる第一空気袋及び前記第二空気袋に対して斜めに対向する前記第四空気袋とが、同期して膨張又は収縮し、
使用者の肘側に配設される前記第一空気袋及び前記第二空気袋と、前記手首側となる第一空気袋及び前記第二空気袋に対して斜めに対向する前記第三空気袋とが、使用者の手首側に配設される前記第一空気袋及び前記第二空気袋と前記第四空気袋とは異なるタイミングで同期して膨張又は収縮することを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の椅子式マッサージ機。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−22405(P2013−22405A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−162864(P2011−162864)
【出願日】平成23年7月26日(2011.7.26)
【出願人】(000136491)株式会社フジ医療器 (137)
【Fターム(参考)】