説明

椅子

【課題】背もたれの上下方向の変位により背もたれの高さと奥行きを調節できるようにし、かつ、その背もたれの取付手段を偏心させて、より広い範囲で使用者の身体に合う椅子に調節できるようにする。
【解決手段】椅子の両側に設けられた背もたれ支持部2cに背もたれ11を、椅子の上下方向に変位可能に備える。更に、前記背もたれ11に、前記背もたれ支持部2cに対して脱着可能に取付ける取付部13a,13bを設け、該取付部の中心を、背もたれの上下方向における中心から上下方向の一方へ偏心させて設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は椅子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、椅子における背もたれにおいて、背もたれ支持部に、その上下方向に複数の取付穴を設け、該取付穴を選択して背もたれを取付けることで、背もたれの高さが変化するようにしたものが知られている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2002−65413号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
前記従来のように、単に、背もたれ支持部に複数の取付穴を設けて背もたれを上下方向に変位するものにおいては、背もたれの上下方向の調節範囲を広げようとすると、背もたれ自体を長く(大きく)するか、背もたれ支持部を長く(高く)する必要がある。そのため、部品が大きくなり、椅子自体が大きくなったり重くなったりして、子供が椅子を取扱うことが困難になる。
【0004】
そこで本発明は、背もたれや背もたれ支持部を大きくすることなく、背もたれの調節範囲を広くできるようにして前記の問題を解決する椅子を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記の課題を解決するために、請求項1記載の発明は、椅子の背もたれを、背もたれ支持部に取付けるようにし、その背もたれを、その上下を逆して取付けた場合に、背もたれの高さが変化するように形成したものである。
【0006】
請求項2記載の発明は、椅子の背もたれに、椅子の両側に設けられた背もたれ支持部に対して脱着可能に取付ける取付部を設け、該取付部の中心を、背もたれの上下方向における中心から上下方向の一方へ偏心させて設けたものである。
【0007】
請求項3記載の発明は、請求項2記載の発明において、前記背もたれの上下の端面のうち、前記取付部の中心を偏心させた側と反対側の端面を、左右方向の中央部が外側へ突出する面に形成したものである。
【0008】
請求項4記載の発明は、椅子の背もたれに、椅子の両側に設けられた背もたれ支持部に脱着可能に取付ける取付手段を設け、該取付手段は背もたれの上下方向に複数配置され、背もたれの上下の一方の端面と該一方の端面側に配置された取付手段との距離を、背もたれの上下の他方の端面と該他方の端面側に配置された取付手段との距離よりも長く設定したものである。
【0009】
請求項5記載の発明は、請求項4記載の発明において、前記背もたれの一方の端面を、背もたれの左右方向の中央部が外側へ突出する面に形成したものである。
【0010】
請求項6記載の発明は、請求項1乃至5のいずれかに記載の発明において、前記背もたれ支持部に、前記背もたれを上下方向に複数段に変位できる取付手段を設けたものである。
【0011】
請求項7記載の発明は、請求項1乃至6のいずれかに記載の発明において、前記背もたれ支持部を、その上方が椅子の後方へ傾斜するように形成したものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、背もたれを、その上下の向きを反対にして付替えることにより、取付位置が同じ高さであっても背もたれの受面を上下方向に変位させることができる。したがって、背もたれ及び背もたれ支持部を長く(大きく)することなく、背もたれの調節範囲を広くでき、前記従来の問題を解消できる。
【0013】
請求項3及び5記載の発明によれば、身体のサポート効果をより効果的にすることができる。
【0014】
請求項6記載の発明によれば、背もたれ支持部に対する背もたれの段階的な変位と、背もたれの上下方向の向きの変化により、背もたれの高さの調整をより細かく設定することができる。
【0015】
請求項7記載の発明によれば、背もたれの前記の上下方向の調節により、座面の奥行きも変化させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明を実施するための最良の形態を図に基づいて説明する。
図1乃至図4に示すように、椅子1を構成する支持枠2,2は木製の厚板材で形成され、椅子1の両側に位置して一対設けられている。該各支持枠2,2は、横脚部2aが床面に対して前後方向に水平に位置し、脚部2bが横脚部2aの後部から上方に向って屈曲するようにして一体に構成されている。該脚部2bは上方に行くほど椅子1の前方に傾斜し、(図1においてA側を前側とし、B側を後側とする)脚部2bの上方には背もたれ支持部2cが一体に構成されている。また、該背もたれ支持部2cは上方に行くほど椅子1の後方に傾斜している。すなわち、脚部2bと背もたれ支持部2cは側面から見て、前方へ屈曲したくの字に形成され椅子1の後方に構成されている。また、前記脚部2bには座部支持部2dが設けられている。
【0017】
なお、前記両支持枠2,2は共に同一構造に形成されているため、両支持枠2,2の同一構造部には同一符号を付して説明する。
【0018】
前記両支持枠2、2の横脚部2aと、脚部2bには、支持棒取付穴が内外に貫通して形成されており、支持棒3,4が、支持枠2、2間に、前記支持棒取付穴を通じてボルト5により固定されている。これにより、両支持枠2,2は相互に所定の間隔を保って平行に保持されている。
【0019】
また、前記両支持枠2,2の座部支持部2d,2dには、前後方向に貫通する座部取付穴6,6が複数、図の実施例では7個、所定の等間隔を有して上下方向に形成されている。
【0020】
前記両支持枠2,2間で、かつ、前方に位置して座部7が配置されており、その座部7における両側面には、木製の座部支枠8が固設されている。該座部支枠8の後部には、前記脚部2bの前面に沿うように屈曲した固定部8aが形成されている。この固定部8aには前後方向に貫通した座部側取付穴9が複数、図の実施例では2個、上下方向に所定の間隔(前記座部取付穴6の穴間隔の2倍の間隔)を有して形成されている。
【0021】
そして、取付手段であるボルト10を両支持枠2,2に形成した座部取付穴6,6と座部側取付穴9に挿通してナット10aを螺合することにより、座部7を両支持枠2,2に着脱可能に取付けるようになっている。
【0022】
前記のように、支持枠2,2の座部取付穴6,6が、上下方向に複数形成されていることにより、所望の座部取付穴6,6を選択して座部7の高さを調節することができる。更に、支持枠2,2の脚部2bが前記のように、前傾姿勢に傾斜していることにより、座部7の取付け位置を高くするほど、座部7を椅子1の前方側へ位置させることができる。
【0023】
また、前記背もたれ支持部2c,2c間には、板状の背もたれ11が配置されている。背もたれ支持部2cには取付手段である調節穴(取付穴)12,12が形成されている。該調節穴12,12は、背もたれ支持部2cの内外面(椅子の左右方向)に貫通する穴で複数、図の実施例では5個上下方向に所定の等間隔を有して形成されている。
【0024】
前記背もたれ11は、図5に示すように、その上下における一方の端面が上下方向の外側へ突出した突出部11aで形成され、他方の端面は直線状の水平面からなる直線部11bで形成されている。前記突出部11aは、背もたれ11の左右方向の中央部X1が最も外側へ突出した円弧面に形成されている。
【0025】
また、該背もたれ11の左右の両端面11c,11dは平行な面で形成されている。両端面11c,11dには、背もたれ11の取付部を構成するナット(取付手段)13a,13bが上下方向に複数、図の実施例では2個設けられている。更に、前記ナット13a,13bは、前記調節穴(取付手段)12,12の上下方向の穴間隔の2倍の間隔で配置されている。更に、該上下2ヶ所のナット13a,13bは、その2ヶ所のナット13a,13b間の中心X3が背もたれ11の上下方向における中心X2に対して、一方側に偏心した位置に埋設されている。すなわち、背もたれ11側のナット13a,13bからなる取付部の中心X3が、背もたれ11の上下方向の中心X2から偏心(オフセット)して設けられている。実施例においては、突出部11a側にある一方のナット13aと突出部11aの端面(一方の端面)との距離H1が、他方のナット13bと直線部11bの端面(他方の端面)との距離H2よりも長くなっている。
【0026】
したがって、背もたれ11と背もたれ支持部2c,2cとの取付部(取付位置)の高さを変えることなく背もたれ11を、その上下を逆にして取付た場合に背もたれ11の高さが変化する。
【0027】
そして、図2に示すように、背もたれ11は、取付手段であるボルト14を、両背もたれ支持部2c,2cに形成した上下2個の調節穴12,12を通じて対応するナット13a,13bに螺合して締付けることにより、支持枠2,2間に脱着可能に取付けられている。
【0028】
前記のように、背もたれ支持部2c,2cの調節穴(取付手段)12が、上下方向に複数形成されていることにより、所望の調節穴を選択して背もたれ11の高さを複数段に調節することができる。また、背もたれ支持部2c,2cが前記のように、後傾姿勢に傾斜していることにより、背もたれ11の取付け位置を高くするほど、後傾姿勢を維持しながら、背もたれ11を椅子1の後方側へ位置させることができる。
【0029】
更に、背もたれ11は、前記のように両端面11c,11dが平行で、かつ、支持枠2,2に対しても平行であるので、上下の向きを、その背もたれ11の前後面を反転させることなく反対にして取り付けることが可能となっている。したがって、背もたれ11は、前記のように両端面11c,11dのナット13a,13b間の中心X3が背もたれ11の上下方向の中心X2から偏心されて、ナット13aと突出部11aの端面との間隔H1が前記H2よりも長くなっていることから、図2のように、突出部11aが下向きになるよう配置させると、直線部11bが最下位に位置する場合よりも、より背もたれ11の受面を下方へ配置することができ、逆に、図6のように、突出部11aが上向きになるよう位置させると、直線部11bが最上位に位置する場合よりも、より背もたれ11の受面を上方へ配置することができる。
【0030】
次に、椅子1の使用状態について説明する。
例えば、使用者が子供であって、その身長が小さいときには、図1〜図4に示すように、座部7を座部取付穴6,6における下方の取付穴を使用して低い位置に取付け、背もたれ11を調節穴12,12の下方位置において取付ける。
【0031】
このとき、座部7を下方へ下げるほど、座部7が後方へ位置し、座面の奥行きが浅くなる。また、背もたれ11を下方へ移動させるほど、背もたれ11が前方へ位置し、座面の奥行きが浅くなる。
【0032】
そして、身長が大きくなるほど、図6,7に示すように、座部7を上方の座部取付穴6,6を使用して上方位置に取付け、背もたれ11を、調節穴12,12の上方位置において取付ける。
【0033】
このとき、座部7を上方へ上げるほど、座部7が前方へ位置し、座面の奥行きが深くなる。更に、背もたれ11を上方へ移動させるほど、背もたれ11が後方へ位置し、座面の奥行きが深くなる。
【0034】
したがって、座部7の取付位置と背もたれ11の取付位置を適宜選択して組合わせることにより、身長の変化に合った形態の椅子に変化させることができる。
【0035】
更に、本発明のおいては、背もたれ11における取付部を前記のように偏心させたことにより、次のような効果がある。
【0036】
前記のような身長が小さい子供の使用において、突出部11aを下側にして取付けると、突出部11aが下方、かつ、前方に延びるため、座面と背もたれの間隔を少なくして、更に、座面の奥行きを浅くでき、身長の小さい子供でも、背中から腰にかけて無理なく支持することができる。また、身長が大きい場合の使用においては、突出部11aを上側にして取付けると、突出部11aが上方、かつ、後方に延びるため、背もたれの高さを充分な高さまでとり、座面の奥行きをより深く確保できる。更に、直線部11bが下方に位置して、座面と直線部11bとの間隔が上方と後方に広くなるので、深く腰を位置させることができる。よって身長が大きい人でも、充分にもたれることができる。
【0037】
したがって、背もたれ支持部2c及び背もたれ11を長く(大きく)することなく、背もたれ11の調節範囲を広げることができる。これにより、椅子自体が大きくなったり、重くなったり、バランスが悪くなることを抑制でき、子供が扱いやすくなる。
【0038】
なお、前記座部7と背もたれ11の位置及び突出部11aの向きは、使用者の成長過程において、デスクに対して適切な座り姿勢、座り位置をとるように組み替えて使用すればよい。すなわち、前記の組合わせに限らず、背もたれ11を高く、かつ、座部7を低くしたり、背もたれ11を低く、かつ、座部7を高くしたり、座部7と背もたれ11を前記の中間に配置したりするなどして、使用者の身長に合わせて、高さを調節し、更に、突出部11aの方向を決めて使用してもよい。
【0039】
以上のことから、背もたれ11は、サポート範囲を広くすることができ、更には、上下を逆にして使用することにより調整を細かくすることができる。また、先が円弧状に膨らんだ形状であることからサポートを効果的にしている。
【0040】
なお、突出部11aは、前記のように円弧状に膨らんだ形状に限らず、水平方向の直線面やその他の形状で形成してもよい。
【0041】
なお、前記実施例では、一本の支持枠2を屈曲して、背もたれ支持部2cを脚部2bと一体に形成したが、背もたれ支持部2cを脚部2bとは別に独立的に設けてもよく、また、背もたれ支持部2cを後方へ傾斜しない形状のものにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明は、通常の椅子に適用できるが、特に学習机用の木製の椅子に適用するとよい。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の実施例を示す椅子の斜視図。
【図2】本発明の実施例における背もたれと座部を下方に位置させた正面図。
【図3】図2の背面図。
【図4】図2の側面図。
【図5】本発明の実施例における背もたれの斜視図。
【図6】本発明の実施例における背もたれと座部を上方に位置させた正面図。
【図7】図6の側面図。
【図8】背もたれと座部を、図2と図6の中間に位置させた正面図。
【図9】図8の側面図。
【符号の説明】
【0044】
1 椅子
2c 背もたれ支持部
11 背もたれ
11a 突出した端面である突出部
13a,13b 取付部を構成するナット
X1 背もたれの左右方向の中央部
X2 背もたれの上下方向の中心
X3 取付部の中心

【特許請求の範囲】
【請求項1】
椅子の背もたれを、背もたれ支持部に取付けるようにし、その背もたれを、その上下を逆して取付けた場合に、背もたれの高さが変化するように形成したことを特徴とする椅子。
【請求項2】
椅子の背もたれに、椅子の両側に設けられた背もたれ支持部に対して脱着可能に取付ける取付部を設け、該取付部の中心を、背もたれの上下方向における中心から上下方向の一方へ偏心させて設けたことを特徴とする椅子。
【請求項3】
前記背もたれの上下の端面のうち、前記取付部の中心を偏心させた側と反対側の端面を、左右方向の中央部が外側へ突出する面に形成したことを特徴とする請求項2記載の椅子。
【請求項4】
椅子の背もたれに、椅子の両側に設けられた背もたれ支持部に脱着可能に取付ける取付手段を設け、該取付手段は背もたれの上下方向に複数配置され、背もたれの上下の一方の端面と該一方の端面側に配置された取付手段との距離を、背もたれの上下の他方の端面と該他方の端面側に配置された取付手段との距離よりも長く設定したことを特徴とする椅子。
【請求項5】
前記背もたれの一方の端面を、背もたれの左右方向の中央部が外側へ突出する面に形成したことを特徴とする請求項4記載の椅子。
【請求項6】
前記背もたれ支持部に、前記背もたれを上下方向に複数段に変位できる取付手段を設けたことを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の椅子。
【請求項7】
前記背もたれ支持部を、その上方が椅子の後方へ傾斜するように形成したことを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の椅子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−75533(P2007−75533A)
【公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−270905(P2005−270905)
【出願日】平成17年9月16日(2005.9.16)
【出願人】(391029406)刈谷木材工業株式会社 (27)
【出願人】(591121498)株式会社ベネッセコーポレーション (30)
【Fターム(参考)】