説明

椅子

【課題】展開状態にある脚載せ部が折れ曲がってしまうことを防止することができるとともに、従来のようなリンクが無くても脚載せ部を折れ曲がり状態とすることができる椅子を提供する。
【解決手段】座部2を有する本体部1に脚載せ部3が回動自在として取り付けられている。脚載せ部3は、下位置とこの下位置から前方へ回動した前位置との間を移動可能である。脚載せ部3はヒンジ部4を有しており、このヒンジ部4により、脚載せ部3は、折れ曲がった状態と、基部3aから先部3bまでを延ばした展開状態とになる。前位置にある脚載せ部3を展開状態として拘束する拘束状態と、この拘束状態が解除されて脚載せ部3がヒンジ部4で自由に折れ曲がることができる解除状態とに切り替わるロック機構を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、脚載せ部を備えている椅子に関する。
【背景技術】
【0002】
使用者の脚を載せる脚載せ部を備えている椅子として、例えば特許文献1がある。この椅子はマッサージ機能を有しているものであり、脚載せ部にマッサージ用のエアセル(空気袋)が設けられている。この脚載せ部は、座部を有する本体部の前部に回動自在として取り付けられており、本体部との間に設けられた伸縮シリンダによって、下位置と前方へ回動した前位置との間を移動可能となっている。また、脚載せ部は、基部側のレッグレストと先部側のフットレストとを有しており、レッグレストに対してフットレストは回動可能となっている。脚載せ部は、下位置の状態で、レッグレストとフットレストとの間で折れ曲がっている。この状態から伸縮シリンダが伸長しレッグレストが略水平となるまで前方へ回動すると、本体部とフットレストとの間に設けられたリンクによってフットレストは連動し、折れ曲がり状態にあった脚載せ部は前方へ真っ直ぐ延びた状態となる。
【0003】
しかしこの椅子では、脚載せ部を真っ直ぐに延びた状態としたり折れ曲がった状態としたりするために、リンクが必要となり、本体部と脚載せ部との間に伸縮シリンダ以外の大きな部材(リンク)が存在することとなる。また、このリンクによれば、レッグレストを略水平となるまで回動させないと脚載せ部はその基部から先部までを延ばした展開状態となることができない。
そこで、特許文献1における別の例のように、リンクの代わりとして、フットレストの後端にストッパを設け、前位置において、ストッパをレッグレストの背面に当接させることにより、折れ曲がり状態にあった脚載せ部を展開状態とすることができる。
【0004】
【特許文献1】特開2003−310682号公報(図2、図3及び図5参照)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記特許文献1において、脚載せ部を展開状態とするために、リンクの代わりとしてフットレストの後端にストッパを設け、フットレストが下向きに回動しないように規制したとしても、そのフットレストは上向きに自由に回動することができる。したがって、何らかの原因によってフットレストが上向きに持ち上がり、その状態から落下するとフットレストと床面との間で使用者等の身体の一部が挟まれてしまうおそれがある。
【0006】
そこで、この発明は、展開状態にある脚載せ部が折れ曲がってしまうことを防止することができるとともに、従来のようなリンクが無くても脚載せ部を折れ曲がり状態とすることができる椅子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するためのこの発明の椅子は、座部を有する本体部と、この本体部の前部に回動自在として取り付けられ、当該前部から垂れ下がった下位置とこの下位置から前方へ回動した前位置との間を移動可能である脚載せ部とを備え、前記脚載せ部は、当該脚載せ部の基部から先部までの間で折れ曲がった状態と、基部から先部までを延ばした展開状態とにさせるために、当該脚載せ部を自由に曲げ延ばしさせるヒンジ部と、前記前位置にある当該脚載せ部を前記展開状態として拘束する拘束状態と、この拘束状態が解除されて当該脚載せ部が前記ヒンジ部で自由に折れ曲がることができる解除状態とに切り替わるロック機構とを有しているものである。
【0008】
この発明によれば、ヒンジ部によって脚載せ部を自由に曲げ延ばしさせることができるが、ロック機構によって前位置にある脚載せ部を展開状態として拘束することにより、脚載せ部は折れ曲がることはできない。また、前位置で展開状態にある脚載せ部の拘束を解除すれば、脚載せ部はヒンジ部で自然と折れ曲がることができ、従来のようなリンクが無くても、前位置で展開状態にあった脚載せ部を下位置で折れ曲がり状態とすることができる。
【0009】
また、脚載せ部を自由に曲げ延ばしさせることができる構成とするために、前記脚載せ部は、前記本体部の前部に回動自在として取り付けられたレッグレストと、このレッグレストに前記ヒンジ部を介して左右方向の軸心回りに回動自在として取り付けられたフットレストとを有し、前記ロック機構は、前記レッグレストに対して前記フットレストを拘束する拘束状態と、この拘束を解除する解除状態とに切り替わる構成とすればよい。
【0010】
また、この椅子は、前記脚載せ部が前記前位置で展開状態として拘束されかつ当該脚載せ部の先部が床面に当接した状態から、前記ロック機構によって前記フットレストを前記レッグレストに対して回動自在な状態として、前記脚載せ部を前記下位置へと回動させる動作制御を行なう制御部を備えているのが好ましい。
これによれば、フットレストを強制的に動かさなくても、フットレストはレッグレストに対して自然と折れ曲がることができ、脚載せ部を下位置で折れ曲がり状態とすることができる。
【0011】
また、この椅子は、前記脚載せ部が前記下位置で折れ曲がりかつ当該脚載せ部の先部が床面に当接した状態から、前記ロック機構によって前記フットレストを前記レッグレストに対して回動自在な状態として、前記脚載せ部を前記前位置へと回動させる動作制御を開始する制御部を備えているのが好ましい。
これによれば、フットレストはレッグレストに対して自然と展開状態となっていくことができ、脚載せ部を展開状態とすることができる。
【0012】
また、前記ロック機構は、前記ヒンジ部を跨いで前記脚載せ部の基部側から先部側へと延びるようにして設けられ、膨張して直線形状となるエアセルからなる構成とすることができる。
これによれば、膨張することで直線形状となるエアセルは、脚載せ部の基部から先部までを延ばした展開状態とすることができ、この膨張状態が維持されることにより脚載せ部を展開状態として拘束することができる。そして、このエアセルからエアを排出することで、エアセルは可撓性を有し、展開状態にある脚載せ部の拘束が解除され、脚載せ部は折れ曲がることができる。
【0013】
または、前記ロック機構は、前記ヒンジ部を固定して前記脚載せ部を折れ曲がり不能とする固定部材と、この固定部材を移動させ前記ヒンジ部の固定を解除するアクチュエータとからなる構成とすることができる。
これによれば、固定部材によってヒンジ部を固定し、脚載せ部を折れ曲がり不能とすることで、脚載せ部の基部から先部までを延ばした展開状態として脚載せ部を拘束することができる。そして、アクチュエータが固定部材を移動させヒンジ部の固定を解除することで、脚載せ部は折れ曲がり可能となる。
【0014】
また、前記脚載せ部は、当該脚載せ部の先部に設けられ、前記前位置にあった当該脚載せ部を前記下位置へと移動させる際及び前記下位置から当該脚載せ部を前方へ移動させる際に床面上を転がすローラを有しているのが好ましい。
これによれば、前位置にあった脚載せ部を下位置へと移動させる際、及び、下位置から脚載せ部を前方へ移動させる際に、脚載せ部の先部に設けられたローラが床面上を転がり、脚載せ部はスムーズに移動することができる。
【0015】
また、前記椅子は、前記脚載せ部を折り曲げる方向に力を付与する力付与部をさらに有しているのが好ましい。
前記ロック機構において、前位置で展開状態にある脚載せ部の拘束を解除すれば、脚載せ部はヒンジ部で自然と折れ曲がることができるが、この脚載せ部が折れ曲がる動作を、力付与部により補助することができる。
【0016】
また、前記レッグレスト及び前記フットレストはそれぞれ内部に空間部を有する箱構造からなり、前記レッグレストと前記フットレストとの間には相互の前記空間部を連通する開口部を有しているのが好ましい。
これによれば、レッグレストの内部とフットレストの内部とにわたって物品を格納することができる。物品としては、例えば、フットレストにマッサージ用のエアセルを取り付ける場合、このエアセル用の配管を、レッグレスト内の空間部から前記開口部を経てフットレスト内の空間部まで通すことができる。
【0017】
また、前記ロック機構が、ヒンジ部を跨いで脚載せ部の基部側から先部側へと延びるようにして設けられ、膨張して直線形状となるエアセルからなる場合において、この前記ロック機構としての前記エアセルは、膨張することにより、前記下位置にあって折れ曲がり状態となっている前記脚載せ部を、展開状態にさせながら前方へと回動させるアクチュエータとしての機能を有しているのが好ましい。
これによれば、前記エアセルは膨張すると直線形状となっていくため、折れ曲がり状態にあった脚載せ部を展開状態とすることができる。
【0018】
また、前記椅子は、前記下位置にあって折れ曲がり状態となっている前記脚載せ部を、前方へ回動させる回動用アクチュエータとして、前記ヒンジ部を跨いで前記脚載せ部の基部側から先部側へと延びるようにして設けられ、膨張して直線形状となるエアセルを備えているのが好ましい。
これによれば、エアセルはヒンジ部を跨いで脚載せ部の基部側から先部側へと延びるようにして設けられているので、このエアセルが膨らんでいくと、下位置にあって折れ曲がり状態となっている脚載せ部を、前方へ回動させることができる。
【発明の効果】
【0019】
この発明によれば、ロック機構が、前位置にある脚載せ部を展開状態として拘束することにより、脚載せ部が折れ曲がってしまうことを防止することができる。また、脚載せ部はヒンジ部で自然と折れ曲がることができ、従来のようなリンクが無くても、前位置で展開状態にあった脚載せ部を下位置で折れ曲がり状態とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、この発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1と図2と図3はこの発明の椅子の実施の一形態を示す斜視図である。この椅子において、着座した使用者から見て前方が前であり、この使用者の右手側が右であり、左手側が左である。また、この使用者の頭部側が上であり、床面側が下である。
この椅子は、使用者が着座する座部2を上部に有する本体部1と、使用者の左右両脚を載せる脚載せ部3と、使用者の上半身を支える背凭れ部40と、左右の肘掛け部41とを有している。本体部1は、左右の支持脚43を有しており、この支持脚43が床面上に置かれる。肘掛け部41から延びているアーム41aには、使用者が操作する操作器39が設けられている。
【0021】
脚載せ部3は、本体部1の前部1aに左右方向の軸心回りに回動自在として取り付けられている。さらに説明すると、脚載せ部3は、使用者の脚のうち主に脹脛を支えるレッグレスト5と、脚のうち主に脹脛よりも脚先の部分を支えるフットレスト6とを有している。レッグレスト5は、本体部1の前部1aに左右方向の軸心回りに回動自在として取り付けられている。フットレスト6は、レッグレストレスト5にヒンジ部4を介して左右方向の軸心回りに自由に回動自在として取り付けられている。
【0022】
これにより、脚載せ部3は、本体部1の前部1aから垂れ下がった下位置(図1)と、この下位置から前方へ回動した前位置(図2と図3)との間を移動可能となっている。なお、この前位置は、脚載せ部3が下位置(図1)から前方へ回動し、図2に示しているように、脚載せ部3の先部3bのローラ10が床面に接触し、かつ、脚載せ部3の基部3aから先部3bまでが真っ直ぐに延びた状態となる傾斜位置から、図3に示しているように、脚載せ部3の先部3のローラ10が床面から離れ、かつ、脚載せ部3の基部3aから先部3bまでが真っ直ぐに延びた状態となる上位置までの位置をいう。
そして、後に説明する脚駆動機構により、この脚載せ部3は下位置と前位置との間を移動する。
【0023】
また、脚載せ部3が下位置にある状態では、当該脚載せ部3は略90°に折れ曲がった状態にあり、脚載せ部3(フットレスト6)の先部3bの左右両側に取り付けたローラ10は床面に接触した状態にある。脚載せ部3が下位置にある状態では、フットレスト6は、ローラ10でのみ床面に接触している。この状態からレッグレスト5を前方へ回動させると、ローラ10が床面上を転がってフットレスト6は前方へ移動し、脚載せ部3は前記傾斜位置となる。
【0024】
脚載せ部3の基部3aから先部3bまでの中間部にヒンジ部4が設けられている。つまり、レッグレスト5とフットレスト6との間にヒンジ部4が設けられている。このヒンジ部4により、脚載せ部3はレッグレスト5とフットレスト6との間で折れ曲がり状態となることができ、これにより、脚載せ部3は、その基部3bから先部3bまでの間で折れ曲がった状態となる。また、このヒンジ部4により、レッグレスト5とフットレスト6とを直線状態とし、脚載せ部3の基部3aから先部3bまでを真っ直ぐに延ばした展開状態とすることが可能となる。このように、ヒンジ部4は、脚載せ部3を自由に曲げ延ばしさせることができる。
【0025】
レッグレスト5にマッサージ用第1エアセル27が設けられている。この第1エアセル27は使用者の左右両脚(主に脹脛)をマッサージするように左右両側に設けられている。また、左右のそれぞれの第1エアセル27は、使用者の左右各脚を左右両側から挟むことができるように一対で一組となるエアセルから構成されている。
フットレスト6にマッサージ用第2エアセル28が設けられている。この第2エアセル28は使用者の左右両脚をマッサージするように左右両側に設けられている。また、左右のそれぞれの第2エアセル28は、使用者の左右各脚を左右両側から挟むことができるように一対で一組となるエアセルから構成されている。
【0026】
そして、本体部1(図1参照)内には、これらエアセル27,28に対してエア(空気)の給排を行なうエアユニット9が設けられている。エアユニット9がエアを供給するとエアセル27,28は膨張する。このエアユニット9とこれらエアセル27,28とはエア配管(図示せず)によって繋がっている。このように、この椅子はマッサージ機能付き椅子(椅子型マッサージ機)として構成されている。
なお、脚載せ部3は布などによるカバー部材により覆われているが、図ではこのカバー部材を省略して記載している。
【0027】
脚載せ部3が下位置にある状態で(図1)、フットレスト6は、その上面(前壁部13a)に使用者の足裏を載せることができる。したがって、前記第2エアセル28は、使用者の脚のうち、つま先からかかとまでの足部を左右両側から挟むことができる。そして、レッグレスト5は、その前面(前壁部12a)によって使用者の脹脛を後方から支えることができる。
また、脚載せ部3が傾斜位置乃至上位置にある状態(図2、図3)で、レッグレスト5は、その上面(前壁部12a)に使用者の脹脛を載せることができ、フットレスト6は、その上面(前壁部13a)に使用者の脹脛よりも脚先側の部分(かかとの背面乃至足首の背面)を載せることができる。したがって、前記第2エアセル28は、脹脛よりも脚先側の部分(かかと乃至足首)を左右両側から挟むことができる。
【0028】
背凭れ部40は、本体部1の後部に回動自在として取り付けられており、本体部1と背凭れ部40との間には伸縮アクチュエータ(図示せず)が設けられている。この伸縮アクチュエータが伸縮動作することによって、背凭れ部40はリクライニング動作を行なうことができる。また、背凭れ部40の内部には、マッサージユニット42が設けられている。マッサージユニット42は施療子42a及びこの施療子42を動作させるモータを含む駆動部(図示せず)等を有している。このマッサージユニット42は、背凭れ部40内を昇降可能となっている。
【0029】
本体部1には制御部7が設けられている。制御部7はマイコンよりなり、この椅子において駆動する各部分の動作制御等のための処理を行う。制御部7は、前記操作器39からの信号に基づいて各駆動部の動作を制御することができる。例えば、制御部7は、前記マッサージユニット42を昇降させたり、施療子42aにマッサージ動作を行なわせたり、脚載せ部3を回動させたり、エアユニット9を動作させマッサージ用のエアセル27,28を膨縮させたりする制御を行なう。
【0030】
脚載せ部3についてさらに説明する。図4と図5と図6は、脚載せ部3の斜視図である。これら図では、脚載せ部3の前壁の一部を切り欠いて脚載せ部3の内部を示している。図4は脚載せ部3が下位置にある状態、図5は脚載せ部3が傾斜位置(前位置)にある状態、図6は脚載せ部3が上位置(前位置)にある状態である。また、図7は脚載せ部3を模式的に表した断面斜視図であり、図8は折れ曲がり状態にある脚載せ部3を模式的に表した断面図であり、図9は展開状態にある脚載せ部3を模式的に表した断面図である。
【0031】
図7において、レッグレスト5及びフットレスト6はそれぞれ内部に空間部31,32を有する箱構造からなる。レッグレスト5は、使用者の脚側となる前壁部12a、その反対側である背面側の後壁部12b、左右の側壁部12c、脚載せ部3の基部3a側となる上壁部12dとを有しており、フットレスト6側は壁がなく開口した開口部33aを有している。フットレスト6は、使用者の脚側となる前壁部13a、その反対側である背面側の後壁部13b、左右の側壁部13c、脚載せ部3の先部3b側となる下壁部13dとを有しており、レッグレスト5側は壁がなく開口した開口部33bを有している。
【0032】
レッグレスト5は厚さの薄い直方体形状である。フットレスト6はレッグレスト5よりも厚さの薄い(略半分の厚さである)直方体形状であるボディ部14と、このボディ部14のレッグレスト5側にある連結部15とを有している。連結部15は、左右方向を中心線としている円弧面を有する円弧壁15aから構成されており、この円弧壁15aに前記開口部33bが形成されている。円弧壁15aは、フットレスト6の左右幅方向の全長にわたって形成されている。円弧壁15aの半径は、レッグレスト5の厚さの略半分に等しいか、僅かに小さい。
【0033】
レッグレスト5の空間部31とフットレスト6の空間部32とは、脚載せ部3が折れ曲がり状態(図8)及び展開状態(図9)のいずれの状態でも、開口部33a,33bを介して、連通している。つまり、レッグレスト5とフットレスト6との間には相互の空間部31,32を連通する開口部33が設けられている。
そして、連結部15に前記ヒンジ部4が形成されており、ヒンジ部4の回動中心が、円弧壁15aの中心と一致している。
【0034】
図4と図8と図9において、ヒンジ部4は、円弧壁15a内に設けられた取付板(取付部材)16と、この取付板16に取り付けられた軸17とを有している。取付板16はフットレスト6に固定されている。また、図4のように、取付板16は、フットレスト6の左右両側のそれぞれにおいて、対となって設けられている。軸17は対の取付板16に跨って取り付けられており、軸17の軸心を円弧壁15aの中心線と一致させている。
そして、レッグレスト5がこの軸17に、当該軸17の軸心回りに回動自在となって取り付けられている。これにより、レッグレスト5に対してフットレスト6は軸17の軸心回りに自由に回動することができる。なお、図例の取付板16は、フットレスト6の左右両側に固定されたアーム(型鋼)20の端部に形成されている。また、図8と図9とにおいて、レッグレスト5に対してフットレスト6が回動する際、レッグレスト5の開口部33a側の前端部は、円弧壁15aの円弧面に沿って移動する。この円弧壁15aにより、脚載せ部3の前面において、レッグレスト5とフットレスト6との間に隙間が生じることを防止している。
【0035】
脚載せ部3を下位置(図4)と傾斜位置(図5)との間を移動させる脚駆動機構として、脚載せ部3の内部に設けられた動作用エアセル8を有している。そして、本体部1(図1参照)内には、この動作用エアセル8にエア(空気)の給排を行なうエアユニット9が設けられている。エアユニット9は、動作用エアセル8にエアを供給して膨張させる動力源部であり、図示しないが、ポンプ及び各種バルブ等を有している。エアユニット9は前記制御部7によって動作が制御される。また、エアユニット9と動作用エアセル8とはエア配管(図示せず)によって繋がっている。このエアユニット9は、マッサージ用の前記第1と第2エアセル27,28に対してもエアを給排することができるものである。
【0036】
動作用エアセル8は、収縮状態で可撓性を有しているが、膨張すると直線板形状となるものである。この動作用エアセル8は、ヒンジ部4を跨いで脚載せ部3の基部3a側から先部3b側へと延びるようにして設けられている。すなわち、図8と図9とにおいて、動作用エアセル8は、レッグレスト5の空間部31から前記開口部33を介してフットレスト6の空間部32へと延びるようにして、脚載せ部3内に格納された状態にある。また、この動作用エアセル8は、脚載せ部3の左右方向の中央部に一つ設けられている。
また、レッグレスト5(前壁部12a)に取り付け具29が設けられており、この取り付け具29に動作用エアセル8の一部(上端部)が固定されている。さらに、フットレスト6(前壁部13a)に取り付け具30が設けられており、この取り付け具30に動作用エアセル8の他部(下端部)が固定されている。なお、図例では動作用エアセル8は、ビスによって取り付け具29,30に固定されている。このように、動作用エアセル8の上部及び下部がレッグレスト5及びフットレスト6に固定されているため、動作用エアセル8が厚さ方向に膨張した際に、長手方向(上下方向)に収縮したり(短くなったり)、長手方向に位置ずれしたりすることを防止することができる。動作用エアセル8が長手方向に収縮・位置ずれすると、再び動作用エアセル8を膨張させても、脚載せ部3をうまく駆動させることができなくなるおそれがあるが、この構成により脚載せ部3を確実に駆動させることができる。
【0037】
図8において、脚載せ部3が折れ曲がり状態にある場合、動作用エアセル8は収縮しており、動作用エアセル8は脚載せ部3の形状に沿った折れ曲がり形状となっている。この状態から、図9のように、エアユニット9がエアを供給し動作用エアセル8が膨張すると、当該動作用エアセル8は剛性を高めながら直線形状となることにより、脚載せ部3は展開状態へと変化することができる。
【0038】
脚載せ部3(レッグレスト5)の基部3aは、本体部1に回動自在として取り付けられているため、図4のように、脚載せ部3が下位置で折れ曲がり状態にあって、先部3bに設けられたローラ10が床面に接触している状態から、収縮状態にある動作用エアセル8が膨張を続けることにより、この動作用エアセル8は、下位置にあって折れ曲がり状態となっている脚載せ部3を、展開状態にさせながら前記傾斜位置となるまで前位置へと回動させることができる(図5)。
【0039】
この動作用エアセル8は、脚載せ部3を下位置から傾斜位置とするまで前方へ回動させるアクチュエータとしての機能を有している他に、この傾斜位置(前位置)にある脚載せ部3を展開状態として拘束する拘束状態と、この拘束状態が解除されて脚載せ部3がヒンジ部4で自由に折れ曲がることができる解除状態とに切り替わるロック機構としての機能も有している。なお、脚載せ部3が図6の上位置にある状態でも、この動作用エアセル8はロック機構としての機能を有している。
【0040】
動作用エアセル8のロック機構としての機能について説明する。前記ヒンジ部4により脚載せ部3は自由に曲げ延ばし動作をすることができるが、動作用エアセル8の膨張状態が保たれることにより、脚載せ部3を展開状態として拘束することができる。つまり、膨張した動作用エアセル8は、レッグレスト5に対して展開状態となったフットレスト6を拘束している。これにより、脚載せ部3は折れ曲がることはできない。
さらに、この動作用エアセル8をロック機構として機能させるために、動作用エアセル8内の内圧を高い状態に維持する必要がある。このために、脚載せ部3が人力等によって折れ曲がらない剛性を動作用エアセル8が有する程度に、エアユニット9は動作用エアセル8内の内圧を高い状態に維持している。
【0041】
このように、動作用エアセル8の膨張状態が保たれることにより、前位置で脚載せ部3を展開状態として拘束することができる。そして、動作用エアセル8は、この脚載せ部3をヒンジ部4で自由に折れ曲がることができる状態、つまり、この拘束を解除する解除状態とすることができる。このためには、動作用エアセル8のエアを排気すればよい。この排気は前記エアユニット9において行なうことができる。これにより動作用エアセル8は折れ曲がり可能な状態となり、レッグレスト5に対するフットレスト6の拘束を解除することができる。
【0042】
以上より、図5のように傾斜位置で展開状態にある脚載せ部3の拘束を解除すれば、脚載せ部3はその自重によってヒンジ部4で自然と折れ曲がることができ、脚載せ部3を下位置まで回動させることができる。つまり、従来のようなリンクが無くても、展開状態で傾斜位置にあった脚載せ部3を下位置で折れ曲がり状態とすることができる。
このように、動作用エアセル8が収縮し脚載せ部3の拘束を解除すれば、脚載せ部3はヒンジ部4で自然と折れ曲がることができるが、脚載せ部3を、本体部1の前面に沿った位置である下位置へと迅速に戻すためには、脚載せ部3を折り曲げる方向に力を付与する力付与部を有しているのが好ましい。
【0043】
図8と図9において、この実施形態における力付与部は、脚載せ部3内に設けられた弾性部材21である。この弾性部材21はレッグレスト5とフットレスト6との間に設けられたコイルばねであり、展開状態にある脚載せ部3を折れ曲がり状態とする方向に付勢している。これにより、前位置で展開状態にある脚載せ部3の拘束を解除し、脚載せ部3がヒンジ部4で自然と折れ曲がることができる状態となると、この弾性部材21によって、レッグレスト5に対してフットレスト6が折れ曲がる動作が行なわれる。
【0044】
さらに、脚載せ部3はその自重によってもヒンジ部4で自然と折れ曲がることができ、脚載せ部3は下位置まで自重によって回動することができるが、この動作を、前記弾性部材21により補助することができる。これにより、動作用エアセル8が収縮状態(収縮可能状態)となると、脚載せ部3は下位置へと迅速に戻ることができる。
また、この弾性部材21によって脚載せ部3を下位置へ迅速に戻すことで、収縮可能状態となった動作用エアセル8の排気を補助することもできる。なお、前記動作用エアセル8は、膨張することによりこの弾性部材21の弾性力に抗して脚載せ部3を展開状態とすることができる。
【0045】
また、脚載せ部3は、ヒンジ部4における回動範囲を制限するための第1ストッパと第2ストッパとを有している。図9において、第1ストッパはフットレスト6の後壁部13bに設けられた突起部24であり、脚載せ部3が展開状態となると、つまりレッグレスト5とフットレスト6との折れ角度が180°になっている状態で、レッグレスト5の後壁部12bの端部が突起部24に接触し、フットレスト6がこれ以上レッグレスト5に対して展開方向へ回動しないように規制している。第2ストッパは、フットレスト6の連結部15の前記ボディ部14における付け根部25であり、図8のように、脚載せ部3が折れ曲がり状態となると、つまりレッグレスト5とフットレスト6との折れ角度が90°になると、前記付け根部25にレッグレスト5の前壁部12aの端部が接触し、フットレスト6がこれ以上レッグレスト5に対して折れ曲がり方向へ回動しないように規制している。これにより、第1ストッパは、折れ曲がり状態から展開状態となった脚載せ部3がさらに展開方向へ回動するのを防止することができる。また、第2ストッパ25は、折れ曲がり状態にある脚載せ部3の折れ角度が、これ以上小さくなることを防止することができる。
【0046】
以上のように構成した椅子の脚載せ部3の動作について説明する。
この椅子が備えている前記制御部7は、エアユニット9の動作を制御し、脚載せ部3を下位置(図1)にある状態から傾斜位置(図2)まで移動させることができる。つまり、動作用エアセル8を収縮状態としてフットレスト6をレッグレスト5に対して自由に回動自在な状態として、脚載せ部3が下位置で折れ曲がり状態でかつ先部3bのローラ10が床面に当接した状態から、動作用エアセル8を膨張させ、脚載せ部3を傾斜位置まで前位置へと回動させる動作制御を制御部7は開始する。すなわち、制御部7によってエアユニット9が、収縮状態にある動作用エアセル8を膨張させ始める。
【0047】
動作用エアセル8の膨張に伴い、ローラ10が床面を転がりながらフットレスト6が前方へ移動し始め、本体部1に対して自由に回動自在となっているレッグレスト5は前方へ回動を始める。この際、ローラ10が床面を転がりながらフットレスト6とレッグレスト5とは直線状に延びる展開状態へと移行する。この結果、フットレスト6とレッグレスト5とが直線状に延びながら、脚載せ部3は傾斜位置まで回動することができる。すなわち、フットレスト6はレッグレスト5に対して自然と展開状態となっていくことができ、脚載せ部3を展開状態とすることができる。
【0048】
そして、動作用エアセル8の膨張状態が維持されることにより、動作用エアセル8は、傾斜位置にあるレッグレスト5及びフットレスト6を展開状態として拘束し、レッグレスト5に対してフットレスト6は前後どちらの方向にも回動することができない。
【0049】
さらに、制御部7はエアユニット9を制御し、傾斜位置にある脚載せ部3を下位置へと移動させることができる。すなわち、動作用エアセル8によって脚載せ部3が傾斜位置で展開状態として拘束され、かつ、脚載せ部3の先部3bのローラ10が床面に当接した状態から、当該動作用エアセル8を収縮させてフットレスト6をレッグレスト5に対して自由に回動自在な状態として、脚載せ部3を下位置へと回動させる動作制御を制御部7は行なう。すなわち、制御部7によってエアユニット9が動作用エアセル8のエアの排気を開始させる。
【0050】
これにより、ローラ10が床面を転がりながらフットレスト6が本体部1側へ移動し始め、本体部1に対して自由に回動自在となっているレッグレスト5も本体部1側へ向かって回動を始める。この際、ローラ10が床面を転がりながらフットレスト6とレッグレスト5とは折れ曲がり状態へと移行する。この結果、レッグレスト5とフットレスト6とが折れ曲がりながら、脚載せ部3は下位置へと回動することができる。すなわち、フットレスト6を強制的に動かさなくても、フットレスト6はレッグレスト5に対して自然と折れ曲がることができ、脚載せ部3を折れ曲がり状態とすることができる。
【0051】
また、前記のように、下位置から脚載せ部3を前方へ移動させる際、及び、前位置にあった脚載せ部3を下位置へと移動させる際に、床面上を転がすローラ10が脚載せ部3(フットレスト6)の先部3bに設けられているため、脚載せ部3はスムーズに移動することができる。
【0052】
また、この椅子において、脚載せ部3を前方へ回動させるための脚駆動機構として、回動用アクチュエータをさらに備えたものとすることができる。図2と図3に示しているように、回動用アクチュエータはレッグレスト5の背面と本体部1の前面との間に設けられた回動用エアセル11とすることができる。この回動用エアセル11は、複数(図例では3つ)のエアセルが重ねられて形成されたものであり、回動用エアセル11は収縮状態で薄くレッグレスト5と本体部1とを接近させることができるが(図1参照)、扇型となるようにして膨らむことにより、本体部1に対してレッグレスト5を前方かつ上方へ押し出すことができる。なお、この回動用エアセル11についても前記エアユニット9によりエアの給排が行なわれ、このエアユニット9は制御部7によって制御される。
【0053】
この回動用エアセル11によれば、図2の傾斜位置であって展開状態にある脚載せ部3をさらに上方へ回動させ、脚載せ部3を上位置(図3)とすることができる。なお、傾斜位置と上位置との間を脚載せ部3が昇降する際、及び、脚載せ部3が上位置に存在している状態では、前記動作用エアセル8は膨張したままであり、展開状態となっている脚載せ部3が折れ曲がることがない。そして、動作用エアセル8によって脚載せ部3が折れ曲がることを防止している状態のまま、エアユニット9において回動用エアセル11の排気を行なうと、上位置に存在していた脚載せ部3は傾斜位置まで降りることができる。なお、動作用エアセル8が膨張状態であるため、脚載せ部3は傾斜位置のまま維持される。そして、この状態から動作用エアセル8の排気が行なわれると、脚載せ部3は折れ曲がりながら下位置へと戻ることができる。
また、制御部7によって、回動用エアセル11の排気を行い、脚載せ部3を上位置から下位置まで回動させる際に、脚載せ部3が傾斜位置になったことを検知すると、動作用エアセル8の収縮を開始するように制御してもよい。この制御を実現するためには、例えば、脚載せ部3の回動角度を検出する角度センサを設けたり、脚載せ部3の先部3bにあるローラ10が床面に接触したことを検出するスイッチ(センサ)等を、ローラ10乃至その近傍部(ローラ10の取付部)に設けたりすればよい。この制御を行なうことにより、上位置にあった脚載せ部3が傾斜位置となると、これに引き続いて、動作用エアセル8の収縮動作を確実に開始させることができる。すなわち、回動用エアセル11が脚載せ部3を下位置とさせるだけ充分に収縮していても、動作用エアセル8が膨張状態のままとなってしまうことを防止し、脚載せ部3が傾斜位置のままで止まってしまうことを防止することができる。
【0054】
このように、動作用エアセル8を、脚載せ部3を下位置と傾斜位置との間を移動させる脚駆動機構とし、回動用エアセル11を、脚載せ部3を傾斜位置と上位置との間を移動させる脚駆動機構とすることができる。
【0055】
また、この回動用エアセル11は、傾斜位置にある脚載せ部3を上位置まで移動させることができるのみならず、下位置にある脚載せ部3を上位置まで移動させることもできる。つまり、脚載せ部3が下位置にある状態で、レッグレスト5及びフットレスト6は自由に回動することができる状態にある。この状態から回動用エアセル11を膨張させると、回動用エアセル11はレッグレスト5を前方へ押しながら上方へ回動させる。これに伴い、(動作用エアセル8を膨張させなくても)ローラ10が床面を転がりながらフットレスト6は前方へ移動し、レッグレスト5及びフットレスト6は傾斜位置で展開状態となる。この状態で、制御部7の制御によって前記ロック機構により(動作用エアセル8を膨張させ)脚載せ部3を展開状態として拘束する。そして、回動用エアセル11の膨張を進め、脚載せ部3を上位置へと移動させることができる。
【0056】
そして、回動用エアセル11の排気をエアユニット9が行なうことにより、上位置にあった脚載せ部3は展開状態のまま傾斜位置へと降りる。傾斜位置となった脚載せ部3において前記ロック機構(動作用エアセル8を収縮させ)により前記拘束を解除し、回動用エアセル11の排気を続けると、ローラ10が床面を転がりながらフットレスト6が本体部1側へ移動し始め、レッグレスト5も本体部1側へ向かって回動する。この際、ローラ10が床面を転がりながらフットレスト6とレッグレスト5とは折れ曲がり状態へと移行する。この結果、脚載せ部3は下位置へと戻ることができる。
【0057】
なお、回動用アクチュエータを、回動用エアセル11により構成した場合を説明したが、これ以外として、図示しないが、本体部1とレッグレスト5の背面部との間に設けた伸縮シリンダとすることができる。
この場合、図示しないが、伸縮シリンダのシリンダヘッドが、レッグレスト5の背面側に回動自在として取り付けられ、伸縮シリンダのシリンダ本体が、本体部1のフレームに回動自在として取り付けられる。これにより、伸縮シリンダを伸長させると、下位置にあったレッグレスト5は前方へ回動し、これに伴って、前記実施形態と同様に、フットレスト6は前方へ移動する。また、伸縮シリンダを短縮させると、レッグレスト5を本体部1側へ引き込むようにようにして移動させ、これに伴って、前記実施形態と同様に、フットレスト6をレッグレスト5に対して折り曲げることができる。この場合、伸縮シリンダは、脚載せ部3を折り曲げる方向に力を付与する力付与部としての機能を有している。
【0058】
前記のように回動用アクチュエータとして回動用エアセル11を設けた場合、動作用エアセル8をロック機構として機能させればよく、脚載せ部3を前方へ回動させるための脚駆動機構として機能させる必要がない。または、回動用アクチュエータ(回動用エアセル11)を設け、動作用エアセル8を省略して他のロック機構を採用することができる。
図10は他のロック機構を有している脚載せ部3のヒンジ部4における断面図である。ヒンジ部4の構成は前記説明したとおりであり、対の取付板(取付部材)16と、この取付板16に取り付けられた軸17とを有している。取付板16はフットレスト6に固定されている。
【0059】
このロック機構は、ヒンジ部4に設けられたロックピン(固定部材)18と、このロックピン18を進退させるアクチュエータ19とを有する構成である。アクチュエータ19は、例えばソレノイド式のものとすることができ、その本体がレッグレスト5に固定されており、制御部7の制御によって進退動作する動作部16aを有している。この動作部16aとロックピン18とは連結部材22によって連結固定されており、ロックピン18はヒンジ部4の軸17と平行に設けられている。そして、ロックピン18はこの軸17の軸心に平行な方向に沿って進退移動することができる。
【0060】
取付板16には孔(第1孔)23が形成されており、前記アクチュエータ19によってロックピン18はこの孔23を挿通した状態と非挿通の状態とに切り替わることができる。孔23が形成されている位置は、脚載せ部3が展開状態となっている位置で、ロックピン18が挿通できる位置である。この孔23にロックピン18が挿通し嵌合した状態となると、ヒンジ部4が固定された状態となる。つまり、このロック機構により、脚載せ部3を展開状態として拘束することができる。そして、アクチュエータ19によりロックピン18が孔23から離反すると、前記拘束が解除されて脚載せ部3がヒンジ部4で自由に折れ曲がることができる状態に切り替わる。
【0061】
図11はヒンジ部4における側面断面図である。前記取付板16には前記第1孔23以外に第2孔26が形成されている。この第2孔26が形成されている位置は、脚載せ部3が下位置にあって折れ曲がり状態となっている位置で、前記ロックピン18が挿通できる位置である。この第2孔26にロックピン18が挿通し嵌合した状態となると、ヒンジ部4が固定された状態となる。つまり、このロック機構により、脚載せ部3を折れ曲がり状態として拘束することができる。そして、アクチュエータ19によってロックピン18が第2孔26から離反すると、この拘束が解除されて脚載せ部3がヒンジ部で自由に折れ曲がることができる解除状態に切り替わる。
【0062】
このように、ロックピン18によってヒンジ部4を固定して脚載せ部3を折れ曲がり不能とし、アクチュエータ19によってこのロックピン18を移動させヒンジ部4の固定を解除する構成とすることができる。このロック機構によれば、下位置において脚載せ部3を折れ曲がり状態として拘束したり、この拘束を解除したりすることができる。
なお、前記動作用エアセル8を第1のロック機構として備えさせた前記実施形態に、第2のロック機構として、第2孔26、ロックピン18及びアクチュエータ19を有する構成を付加してもよい。
また、図示しないが、ロック機構用としての前記孔を、軸17の周りとなる配置として取付板16に多数設けてもよい。この場合、孔を例えば3つ以上で6つ以下の数について設けることができる。このようなロック機構によれば、フットレスト6をレッグレスト5に対して任意の角度(多段階の角度)で拘束することができる。
【0063】
図12は、脚載せ部3におけるエア配管を説明する説明図である。なお、この図では、脚載せ部3の前壁部を取り除いた状態として示しており、また、マッサージ用の第1エアセル27及び第2エアセル28を二点鎖線で示している。
脚載せ部3内に、第1エアセル27に繋がっている第1配管35と、第2エアセル28に繋がっている第2配管36と、動作用エアセル8に繋がっている第3配管37とが収納された状態にある。なお、これら配管35,36,37のそれぞれは、可撓性のあるチューブを有し継手部によって接続されており、レッグレスト5の背面側に設けた開口部38から外部へと延び、本体部1内のエアユニット9(図1参照)と繋がっている。
【0064】
第1配管35及び第3配管37はレッグレスト5の空間部31内に存在している。第2配管36は、レッグレスト5の空間部31から前記開口部33(図8参照)を介してフットレスト6の空間部32へと延びるようにして、脚載せ部3内に収容された状態にある。第2配管36のうち、ヒンジ部4を通過している部分は可撓性を有していることから、第2配管36は脚載せ部3の折れ曲がり動作に追従することができる。
【0065】
このように、レッグレスト5及びフットレスト6はそれぞれ内部に空間部31,32を有する箱構造からなるため、レッグレスト5とフットレスト6とにわたってエア配管などの物品を格納した状態として設けることができる。また、レッグレスト5とフットレス6トとの間には相互の空間部31,32を連通する開口部33を有しているので、エア配管を、レッグレスト5内の空間部31から開口部33を経てフットレスト6内の空間部32まで通すことができる。
【0066】
また、レッグレスト5及びフットレスト6は箱構造からなるため剛性を有するものとなり、薄く構成することができる。また、図9のように、展開状態において、フットレスト6の上面(前壁部13a)は、レッグレスト5の上面(前壁部12a)よりも背面側へ低くなっている。これにより、展開状態にある脚載せ部3に使用者が脚を載せた際に、かかと部分が、レッグレスト5よりも低くなっているフットレスト6上に載せられる。このように、脹脛部分よりもかかとが脚の背面側へ出ているという脚の形状に、脚載せ部3の形状を対応させることができ、自然な状態で脚を載せることができる。
【0067】
以上の前記各実施形態によれば、制御部7は、動作用エアセル8を膨張させる等することで、脚載せ部3を前位置として展開状態とすることができる。脚載せ部3が展開状態となれば、制御部7はロック機構によって当該脚載せ部3をその展開状態として拘束する。これにより、フットレスト6が、何らかの原因によって上向きに持ち上がることがなく、安全である。
【0068】
そして、この脚載せ部3を下位置へと降ろす際には、制御部7はロック機能による前記拘束を解除して、脚載せ部3のヒンジ部4における回動を自由とする。これにより、脚載せ部3の自重を利用して、当該脚載せ部3は自然とL字形の折り畳み状態に戻ることができる。下位置において脚載せ部3が折り畳み状態となり、前記ロックピン18等を有するロック機構(図11参照)がこの状態を拘束すれば、フットレスト6が、何らかの原因によって上向きに持ち上がることがなく、安全である。
【0069】
また、ロック機構を動作用エアセル8とした場合、この動作用エアセル8は、脚載せ部3を傾斜位置(図2参照)まで回動させる脚駆動機構としても機能することができる。したがって、脚載せ部3を上位置(図3参照)まで上げる必要のない椅子とする場合には、この動作用エアセル8によって、脚駆動機構及びロック機構の双方の機構が得られる。また、この動作用エアセル8は、図2に示した回動用エアセル11よりも小型のものとすることができる。
一方、ロック機構をロックピン18及びアクチュエータ19とした場合、安価にロック機構を得ることができる。
【0070】
そして、脚載せ部3を前位置とした図3の状態から、背凭れ部40を後方へ略水平状に倒すと、椅子をベッドとして利用することもできる。この場合、脚載せ部3(レッグレスト5及びフットレスト6)の長さは、大人の使用者が寝た状態で、足先が脚載せ部3の先部3bからはみ出ない十分な長さを有している。
脚載せ部3が下位置にある状態で、レッグレスト5は、本体部1の前部11aから床面近くまでの長さを有している。フットレスト6はレッグレスト5の長さと略同じとして構成されている。これにより、展開状態にある脚載せ部3を長くすることができる。
【0071】
また、図8と図9とにおいて、脚載せ部3の回動中心(軸17の中心)は、脚載せ部3の前面部材を構成する前壁と背面部材を構成する後壁との間に配置された構成となっている。具体的には、脚載せ部3の回動中心(軸17の中心)は、レッグレスト5の脚の背面が当接する前壁部12aと当該レッグレスト5の背面部材を構成する後壁部12bとの間に配置された構成となっている。これにより、脚載せ部3の展開状態において、レッグレスト5及びフットレスト6のそれぞれの長さを有効に利用することができ、展開状態にある脚載せ部3を長くすることができる。なお、脚載せ部3の回動中心は、フットレスト6の脚の背面が当接する前壁部13aと当該フットレスト6の背面部材を構成する後壁部13bとの間に配置された構成としてもよい。
【0072】
また、本発明の椅子は、図示する形態に限らずこの発明の範囲内において他の形態のものであっても良い。脚駆動機構として、脚載せ部3内に設けた動作用エアセル8及び脚載せ部3と本体部1との間に設けた回動用アクチュエータ(回動用エアセル11)を備えている場合の他、動作用エアセル8及び回動用アクチュエータのうちの一方のみを有している場合であってもよい。
また、図示しないが、座部2にマッサージ用のエアセルが設けられたものであってもよい。
また、この発明の椅子を自動車用の座席に適用してもよい。つまり、前記脚載せ部3を自動車の助手席や後部座席の前部に設けてもよい。このように脚載せ部3を自動車の座席に設けた場合、自動車が走行する際に車体が振動しても、前記ロック機構(動作用エアセル8やロックピン18及びアクチュエータ19)により脚載せ部3が振動することを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】この発明の椅子の実施の一形態を示す斜視図である。
【図2】図1の椅子の脚載せ部が傾斜位置にある状態の斜視図である。
【図3】図1の椅子の脚載せ部が上位置にある状態の斜視図である。
【図4】図1に対応する脚載せ部の斜視図である。
【図5】図2に対応する脚載せ部の斜視図である。
【図6】図3に対応する脚載せ部の斜視図である。
【図7】脚載せ部を模式的に表した断面斜視図である。
【図8】折れ曲がり状態にある脚載せ部を模式的に表した断面図である。
【図9】展開状態にある脚載せ部を模式的に表した断面図である。
【図10】ロック機構を有している脚載せ部のヒンジ部における断面図である。
【図11】ヒンジ部における側面断面図である。
【図12】脚載せ部におけるエア配管を説明する説明図である。
【符号の説明】
【0074】
1 本体部
1a 前部
2 座部
3 脚載せ部
3a 基部
3b 先部
4 ヒンジ部
5 レッグレスト
6 フットレスト
7 制御部
8 動作用エアセル(ロック機構)
10 ローラ
11 回動用エアセル
18 ロックピン(固定部材)
19 アクチュエータ
31 空間部
32 空間部
33,33a,33b 開口部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
座部を有する本体部と、
この本体部の前部に回動自在として取り付けられ、当該前部から垂れ下がった下位置とこの下位置から前方へ回動した前位置との間を移動可能である脚載せ部と、
を備え、
前記脚載せ部は、
当該脚載せ部の基部から先部までの間で折れ曲がった状態と、基部から先部までを延ばした展開状態とにさせるために、当該脚載せ部を自由に曲げ延ばしさせるヒンジ部と、
前記前位置にある当該脚載せ部を前記展開状態として拘束する拘束状態と、この拘束状態が解除されて当該脚載せ部が前記ヒンジ部で自由に折れ曲がることができる解除状態とに切り替わるロック機構と、
を有していることを特徴とする椅子。
【請求項2】
前記脚載せ部は、前記本体部の前部に回動自在として取り付けられたレッグレストと、このレッグレストに前記ヒンジ部を介して左右方向の軸心回りに回動自在として取り付けられたフットレストとを有し、前記ロック機構は、前記レッグレストに対して前記フットレストを拘束する拘束状態と、この拘束を解除する解除状態とに切り替わる請求項1に記載の椅子。
【請求項3】
前記脚載せ部が前記前位置で展開状態として拘束されかつ当該脚載せ部の先部が床面に当接した状態から、前記ロック機構によって前記フットレストを前記レッグレストに対して回動自在な状態として、前記脚載せ部を前記下位置へと回動させる動作制御を行なう制御部を備えている請求項2に記載の椅子。
【請求項4】
前記脚載せ部が前記下位置で折れ曲がりかつ当該脚載せ部の先部が床面に当接した状態から、前記ロック機構によって前記フットレストを前記レッグレストに対して回動自在な状態として、前記脚載せ部を前記前位置へと回動させる動作制御を開始する制御部を備えている請求項2に記載の椅子。
【請求項5】
前記ロック機構は、前記ヒンジ部を跨いで前記脚載せ部の基部側から先部側へと延びるようにして設けられ、膨張して直線形状となるエアセルからなる請求項1〜4のいずれか一項に記載の椅子。
【請求項6】
前記ロック機構は、前記ヒンジ部を固定して前記脚載せ部を折れ曲がり不能とする固定部材と、この固定部材を移動させ前記ヒンジ部の固定を解除するアクチュエータとからなる請求項1〜4のいずれか一項に記載の椅子。
【請求項7】
前記脚載せ部は、当該脚載せ部の先部に設けられ、前記前位置にあった当該脚載せ部を前記下位置へと移動させる際及び前記下位置から当該脚載せ部を前方へ移動させる際に床面上を転がすローラを有している請求項1〜6のいずれか一項に記載の椅子。
【請求項8】
前記脚載せ部を折り曲げる方向に力を付与する力付与部をさらに有している請求項1〜7のいずれか一項に記載の椅子。
【請求項9】
前記レッグレスト及び前記フットレストはそれぞれ内部に空間部を有する箱構造からなり、前記レッグレストと前記フットレストとの間には相互の前記空間部を連通する開口部を有している請求項2に記載の椅子。
【請求項10】
前記ロック機構としての前記エアセルは、膨張することにより、前記下位置にあって折れ曲がり状態となっている前記脚載せ部を、展開状態にさせながら前方へと回動させるアクチュエータとしての機能を有している請求項5に記載の椅子。
【請求項11】
前記下位置にあって折れ曲がり状態となっている前記脚載せ部を、前方へ回動させる回動用アクチュエータとして、前記ヒンジ部を跨いで前記脚載せ部の基部側から先部側へと延びるようにして設けられ、膨張して直線形状となるエアセルを備えている請求項1に記載の椅子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2009−148357(P2009−148357A)
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−327338(P2007−327338)
【出願日】平成19年12月19日(2007.12.19)
【出願人】(000112406)ファミリー株式会社 (175)
【Fターム(参考)】