説明

椅子

【課題】新規な昇降機構を有する椅子を提供する。具体的には、座部の下方に椅子本体に昇降以外の他の動作をさせる装置を配置することが容易となる椅子を提供する。
【解決手段】床面に載置されるベース部2と、少なくとも使用者が着座する座部3が設けられた椅子本体Aと、前記ベース部2と前記椅子本体Aとの間に設けられ、前記ベース部2に対して前記椅子本体Aを昇降させるラック・ピニオン方式の昇降機構7と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、床面に載置されるベース部に対して、使用者が着座する座部を有する椅子本体が昇降可能な椅子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、床面に載置されるベース部に対して、使用者が着座する座部を有する椅子本体を昇降させる椅子(例えば、理美容椅子)が知られている。このような椅子の昇降機構の一例として、ベース部と椅子本体の間に設けられる油圧シリンダ内に対して、油を供給・排出するよう構成されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−151787号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記特許文献1に開示された椅子においては、油を溜めておく油タンクや、座部が設けられた椅子本体を上昇させるべく油が供給される油圧シリンダを必要とし、昇降機構が大型化するという問題があった。また、座部の下方に、椅子本体に他の動作をさせるための装置(例えば、リクライニング装置)を配置することが困難であるという問題があった。
【0005】
そこで本発明は、このような問題を解消するためになされたものであり、特許文献1に記載の昇降機構に代わる新規な昇降機構を有する椅子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、床面に載置されるベース部と、少なくとも使用者が着座する座部が設けられた椅子本体と、前記ベース部と前記椅子本体との間に設けられ、前記ベース部に対して前記椅子本体を昇降させるラック・ピニオン方式の昇降機構と、を有することを特徴とする。
このような構成とすることにより、座部の下方に椅子本体に昇降以外の他の動作をさせる装置(例えば、背凭れ部をリクライニングさせる装置、又はフットレストを上下回動させる装置等)を配置することが容易となる。
【0007】
また、前記昇降機構は、左右で対をなすラック・ピニオンと、対をなす前記ピニオンの回転軸であるピニオン軸と、を有し、前記ラック・ピニオン及び前記ピニオン軸の組合せを前後方向に複数組有することが好ましい。
あるいは、前記昇降機構は、前後で対をなすラック・ピニオンと、対をなす前記ピニオンの回転軸であるピニオン軸と、を有し、前記ラック・ピニオン及び前記ピニオン軸の組合せを左右方向に複数組有することが好ましい。
このような構成とすることにより、椅子本体を昇降させる際に、椅子本体が前後及び左右へがたつくことを防止することができ、椅子本体を安定して昇降させることができる。
【0008】
また、前記昇降機構は、モータと、当該モータの回転動力を前記ピニオン軸に伝達する伝達部材と、を有し、前記伝達部材は、前記モータに連動連結された駆動ギヤと、複数の前記ピニオン軸に設けられ、前記駆動ギヤの回転に同期して回転する従動ギヤと、を有することが好ましい。
このような構成とすることにより、共通のモータにより複数のピニオン軸を同期して回転させることができ、昇降機構を低コストで実現することができる。
【0009】
また、前記伝達部材は、前記駆動ギヤと噛合する第1従動ギヤと、アイドルギヤを介して前記駆動ギヤに噛合し、前記第1従動ギヤと逆方向へ回転する第2従動ギヤと、を有することが好ましい。
このような構成とすることにより、第1従動ギヤと第2従動ギヤを互いに逆方向へ回転させることができるため、第1ギヤを有するピニオン軸に設けられたピニオンと、第2ギヤを有するピニオン軸に設けられたピニオンとを、歯列が互いに逆方向を向くラックに噛合させることができる。また、両ピニオン間の距離を大きくとることができる。したがって、椅子本体を、ベース部に対してがたつきを抑えて安定して昇降させることができる。
【0010】
また、前記ラックは、前記ベース部側に上下方向に延びるよう設けられ、前記ピニオンは、前記椅子本体側に前記ピニオン軸を介して回転可能に支持されていることが好ましい。
このような構成とすることにより、ピニオン(ピニオン軸)を、ベース部と椅子本体の間におけるベース部寄り(下端付近)に設けることができ、座部の下方に椅子本体に他の動作をさせる装置を配置する空間を確保することができる。仮に、ピニオン(ピニオン軸)をベース部側に設け、ラックを椅子本体側に設けた場合、ピニオン軸をベース部と椅子本体の間における椅子本体寄り(上端付近)に設ける必要があり、椅子本体に他の動作をさせる装置を配置する空間を確保することが困難となる。
【0011】
また、前記椅子本体は、使用者が凭れる背凭れ部と、前記座部の下方かつ前記ピニオン軸の上方に位置し、前記背凭れ部を前記座部に対してリクライニングさせるリクライニング機構と、を有することが好ましい。
このような構成とすることにより、昇降機構に干渉することなくリクライニング機構を設けることができる。
【0012】
また、前記ベース部と前記椅子本体の間に介在し、当該椅子本体を上昇させる方向に付勢する付勢部材を有していることが好ましい。
このような構成とすることにより、椅子本体を上昇させるために必要な駆動力を付勢部材により補うことができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ベース部と椅子本体の間に、椅子本体に昇降以外の他の動作をさせる装置を配置することが容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1実施形態に係る椅子の斜視図である。
【図2】非連動状態の椅子の側面図であり、椅子本体が下位置であって、背凭れ部が起立しフットレストが下降した状態である。
【図3】非連動状態の椅子の側面図であり、椅子本体が下位置であって、背凭れ部が傾倒しフットレストが上昇した状態である。
【図4】非連動状態の椅子の側面図であり、椅子本体が上位置であって、背凭れ部が起立しフットレストが下降した状態である。
【図5】昇降ベースの斜視図である。
【図6】非連動状態の椅子における本体フレームの斜視図である。
【図7】フットレストリンクの斜視図である。
【図8】昇降機構の要部を示す斜視図である。
【図9】昇降機構の要部を示す側面図である。
【図10】連動状態の椅子の側面図であり、椅子本体が下位置であって、背凭れ部が起立しフットレストが下降した状態である。
【図11】連動状態の椅子の側面図であり、椅子本体が下位置であって、背凭れ部が傾倒しフットレストが上昇した状態である。
【図12】連動状態の椅子における本体フレームの斜視図である。
【図13】回転ベースの斜視図である。
【図14】本発明の第2実施形態に係る椅子の側面図であり、椅子本体が下位置であって、背凭れ部が傾倒しフットレストが上昇した状態である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[全体構成]
以下、本発明の第1実施形態に係る椅子1の全体構成について説明する。
図1は本発明の第1実施形態に係る椅子1の斜視図である。図2は非連動状態の椅子1の側面図であり、椅子本体Aが下位置であって、背凭れ部4が起立しフットレスト5が下降した状態である。図3は非連動状態の椅子1の側面図であり、椅子本体Aが下位置であって、背凭れ部4が傾倒しフットレスト5が上昇した状態である。図4は非連動状態の椅子1の側面図であり、椅子本体Aが上位置であって、背凭れ部4が起立しフットレスト5が下降した状態である。
図1〜図4に示すとおり、椅子1は、床面に載置されるベース部2、使用者が着座する座部3、使用者が凭れる背凭れ部4、使用者の脚を支持するフットレスト5、及び使用者の腕を支持する左右対の肘掛け部6と、により主として構成されている。そして、座部3、背凭れ部4、フットレスト5、及び肘掛け部6と、により構成される椅子本体Aが、後述する昇降機構7によってベース部2に対して昇降可能に設けられている。
なお、本明細書における方向の概念は、図1に示す椅子1に着座した使用者が正面を向いて、その前方が「前」であり、後方が「後」であり、左手側が「左」であり、右手側が「右」であり、頭部側が「上」であり、腰部側が「下」であり、その他の場合は適宜説明することとする。
【0016】
[ベース部の構成]
以下、ベース部2の構成について説明する。
図5は昇降ベース8の斜視図である。
図1に示すとおり、ベース部2は、椅子本体Aを昇降可能に支持する板状の昇降ベース8と、床面に載置され昇降ベース8を床面に対して水平に回転可能に支持する板状の回転ベース9と、により構成されている。したがって、椅子本体Aは、ベース部2に対して昇降可能であるとともに回転可能である。なお、この椅子1が有する昇降ベース8を回転ベース9に対して回転させる回転機構50については後述する。
【0017】
[椅子本体の構成]
以下、椅子本体Aの構成について説明する。
図6は非連動状態の椅子1における本体フレーム10の斜視図である。図7はフットレストリンク13の斜視図である。
図6に示すとおり、椅子本体Aは、左右方向に延びる前部材10aと、前部材10aの左右両端部から後方に延びる側部材10bと、両側部材10bを連結する左右方向に延びる前後の第1連結部材10cと、後側の第1連結部材10cの下面から下方に延びる左右対の縦部材10dと、両縦部材10dを連結する第2連結部材10eと、前部材10aと前側の第1連結部材10cを連結する第3連結部材10fと、により構成される本体フレーム10を有しており、この本体フレーム10に座部3、背凭れ部4、フットレスト5、及び肘掛け部6が組み付けられるよう構成されている。具体的には、本体フレーム10の上部にクッション性を有する座部3が設けられ、本体フレーム10の後部(側部材10bの後端部)に背凭れ部4が左右方向の軸心C1回りにリクライニング可能に設けられ、本体フレーム10の前部にフットレスト5が左右方向の軸心回りに上下回動可能に設けられ(図2及び図3参照)、本体フレーム10の左右両側部(左右の側部材10b)に肘掛け部6が設けられている。図2及び図3に示すとおり、フットレスト5は、本体フレーム10の前部材10aに対して左右方向の軸心C2回りに上下回動可能に設けられたフットレストベース11と、フットレストベース11に対して脚の長さ方向にスライド可能に設けられたフットレスト本体12と、本体フレーム10の第3連結部材10fに対して左右方向の軸心C3及びC4回りに上下回動可能に設けられ、フットレストベース11に後方から当接してフットレストベース11及びフットレスト本体12を上下回動させるフットレストリンク13と、により構成されている。
【0018】
図1に示すとおり、座部3、背凭れ部4、及びフットレスト5には、エアの給排気により膨張収縮して被施療部に対して押圧するマッサージ部としてのエアセル14が複数設けられている。これらのエアセル14へのエアの給排気は、ポンプ15a及びバルブ15bで構成されるエアユニット15により行われ、このポンプ15aはベース部2側である昇降ベース8に設けられ(図4及び図5参照)、このバルブ15bは椅子本体A側である本体フレーム10における縦部材10dの内側部に設けられている(図6参照)。
【0019】
図2〜図4,及び図6に示すとおり、椅子本体Aは、背凭れ部4を前後方向にリクライニング動作させる背凭れ部用アクチュエータ16と、フットレスト5を上下方向に回動させるフットレスト用アクチュエータ17と、を有している。すなわち、図2〜図4,及び図6に示した椅子1の状態は、背凭れ部4のリクライニングとフットレスト5の上下回動が個別に行われる非連動状態である。この背凭れ部用アクチュエータ16とフットレスト用アクチュエータ17は、モータ駆動により伸縮する直動式アクチュエータで構成されている。背凭れ部用アクチュエータ16は、その前端部が本体フレーム10の第1連結部10cに設けられた背凭れ部用アクチュエータ第1取付部18に取り付けられ、その後端部が背凭れ部4の下端部に設けられた背凭れ部用アクチュエータ第2取付部19に取り付けられている。フットレスト用アクチュエータ17は、その後端部が本体フレーム10の第2連結部10eに設けられたフットレスト用アクチュエータ第1取付部20に取り付けられ、その前端部がフットレスト5(フットレストリンク13)に設けられたフットレスト用アクチュエータ第2取付部21に取り付けられている(図7も参照)。なお、詳細は後述するが、このフットレスト用アクチュエータ17は、椅子本体Aに対して着脱可能とされている。
【0020】
図7に示すとおり、フットレストリンク13は、その上端部が本体フレーム10の第3連結部材10fに回動可能に連結されており、フットレストベース11の軸心C2よりも後方に位置する軸心C3及びC4回りに上下回動可能に構成されている。以下、フットレストリンク13の構造を具体的に説明する。フットレストリンク13は、上端部が第3連結部10fにおいて軸心C3回りに回動可能に軸支され、かつ上下方向中途部に設けられたフットレスト用アクチュエータ第2取付部21にフットレスト用アクチュエータ17の先端が取り付けられた第1リンク13aと、第3連結部10fにおいて軸心C3よりも上方に位置する軸心C4回りに回動可能に軸支された第2リンク13bと、第1リンク13aの下端部において軸心C5回りに回動可能に軸支され、かつ上下方向中途部が第2リンク13bの下端部において軸心C6回りに回動可能に軸支された第3リンク13cと、により構成されている。第3リンク13cの上端部には、フットレストベース11に後方から当接して上下方向に転動するローラ13dが設けられている。
【0021】
第3リンク13cにおいて、第1リンク13aが軸支されている軸心C5よりも第2リンク13bが軸支されている軸心C6の方が上方に位置しており、かつ第1リンク13aの回動支点である軸心C3よりも第2リンク13bの回動支点である軸心C4の方が上方に位置しているため、フットレスト用アクチュエータ17を伸長させて第1リンク13aを上方に回動させていくと、図3に示すとおり、第3リンク13cはその上端部が前方へ立ち上がっていく。したがって、第1リンク13aの回動角度よりもフットレスト本体12及びフットレストベース11の回動角度の方が大きくなり、効率よくフットレスト5を上下回動させることができる。
【0022】
[昇降機構の構成]
以下、昇降機構7の構成について説明する。
図8は昇降機構7の要部を示す斜視図である。図9は昇降機構7の要部を示す側面図である。
図5,図8,及び図9に示すとおり、昇降機構7は、ベース部2(昇降ベース8)に設けられ上方に延びるラック22と、椅子本体A(本体フレーム10)に設けられラック22と噛合するピニオン23と、により主として構成されている。すなわち、本実施形態における昇降機構7は、ラック・ピニオン方式が採用されている。
【0023】
図5に示すとおり、上方に延びるガイドレール24及びラック22が昇降ベース8の上面に設けられており、このガイドレール24及びラック22は、左右で対をなしている。そして、この左右対のガイドレール24及びラック22が前後方向に複数組(本実施形態では2組ずつ)設けられている。ガイドレール24は、後述するピニオン23が有するガイドローラ25が転動する転動面24aを前後に有し、かつ転動面24aの内側端部から前後方向に延設されたラック22を取り付ける取り付け面24bを有し、全体として左右内側が開放された平面視略コの字状に構成されている。前側のラック22と後側のラック22は、その歯列が互いに前後方向において逆を向いており、具体的には、前側のラック22の歯列は前方を向き後側のラック22の歯列は後方を向いている。また、転動面24aの反対側の面には、本体フレーム10の縦部材10dに前後方向から当接し、本体フレーム10の昇降動作をガイドするガイド部材26が設けられている。また、昇降ベース8には、その上部であって前後のガイドレール24の間に椅子本体Aの上下位置を検出する昇降センサ27が設けられている。この昇降センサ27は、本体フレーム10の縦部材10dに設けられた磁石よりなる検出体28の位置を検出することによって本体フレーム10の上下位置を検出する。具体的には、図2及び図4に示すとおり、検出体28は縦部材10dの上下両端部に設けられ、昇降センサ27によって椅子本体Aの下位置(図2の状態)及び上位置(図4の状態)が検出される。
【0024】
図8及び図9に示すとおり、ピニオン23は、左右方向に延びるピニオン軸29の軸両端部に設けられて左右で対をなし、本体フレーム10に連結されるピニオン支持部材30に回転可能に支持されている。具体的には、ピニオン支持部材30の左右外側面が縦部材10dの左右内側面に取り付けられている。そして、この左右対のピニオン23が前後方向に複数組(本実施形態では2組)設けられ、左右対のピニオン23が前述した左右対のラック22にそれぞれ噛合している。また、ピニオン23の左右外側面には、ガイドレール24の転動面24aに当接し、ピニオン23の回転に伴って転動面24aを転動するガイドローラ25が設けられている。前後のガイドローラ25は、それぞれ対応するガイドレール24に互いに前後逆方向に圧接されており、具体的には、前側の左右対のガイドローラ25は、前側のガイドレール24における後側の転動面24aに圧接され、後側の左右対のガイドローラ25は、後側のガイドレール24における前側の転動面24aに圧接されている。
【0025】
図9に示すとおり、ピニオン23(ピニオン軸29)は、本体フレーム10の上部に設けられた座部3に対して所定距離を有して下方に設けられている。すなわち、ピニオン軸29と座部3との間には空間Sが形成されており、この空間Sに背凭れ部用アクチュエータ16、フットレスト用アクチュエータ17、又は後述する背凭れ部4とフットレスト5を連結するリンク部材38が収容されている。このように、本実施形態における昇降機構7はラック・ピニオン方式が採用されているため、座部3の下方に椅子本体Aに昇降以外の他の動作をさせる装置(本実施形態では、背凭れ部用アクチュエータ16、フットレスト用アクチュエータ17、及びリンク部材38)を配置することが容易となっている。
【0026】
図9に示すとおり、ピニオン支持部材30には、モータ31と、モータ31にプーリを介して連結されたウォーム32と、ウォーム32に噛合するウォームホイール33と、ウォームホイール33の回転軸と同軸に設けられウォームホイールとともに回転する駆動ギヤ34と、前後のピニオン軸29に対して回転不能に設けられ駆動ギヤ34の回転に同期して回転する前後の従動ギヤ35と、駆動ギヤ34と従動ギヤ35の間に位置してそれぞれに噛合するアイドルギヤ36と、が設けられている。
従動ギヤ35について詳述すると、一方側(前側)のピニオン軸29に設けられた従動ギヤ35(第1従動ギヤ35F)は、駆動ギヤ34に噛合し、他方側(後側)のピニオン軸29に設けられた従動ギヤ35(第2従動ギヤ35R)は、アイドルギヤ36に噛合しており、第1従動ギヤ35Fと第2従動ギヤ35Rは互いに逆方向に回転するよう構成されている。このウォーム32、ウォームホイール33、駆動ギヤ34、従動ギヤ35、及びアイドルギヤ36により、モータ31の回転動力をピニオン軸29に伝達する伝達部材が構成されている。
【0027】
このように、第1従動ギヤ35Fが駆動ギヤ34に噛合し、第2従動ギヤ35Rがアイドルギヤ36を介して駆動ギヤ34に噛合しているため、1基のモータ駆動により前後対のピニオン軸29を同期して回転させることができる。したがって、昇降機構7を低コストで実現することができる。また、駆動ギヤ34と第2従動ギヤ35Rの間にアイドルギヤ36を介在させることで、第1従動ギヤ35Fと第2従動ギヤ35Rを互いに逆方向へ回転させることができるため、歯列が互いに前後逆方向を向く前後のラック22に前後のピニオン23をそれぞれ噛合させることができる。しかも、前後のピニオン29,29間距離を大きくとることができる。したがって、椅子本体Aの昇降ベース8に対する前後方向へのがたつきを抑えて、椅子本体Aを安定して昇降させることができる。また、椅子本体Aの昇降動作がモータ駆動により行われるため、昇降速度の設定が容易となっている。また、左右方向に軸方向を有するピニオン軸29は、椅子本体Aに対する上下方向の相対位置を変えることなく椅子本体Aとともに昇降するため、ピニオン軸29が、座部3の下方に設けられた前後方向に長寸であって伸縮する背凭れ部用アクチュエータ16及びフットレスト用アクチュエータ17、又は前後方向に長寸のリンク部材38に干渉することを防止できる。
【0028】
図2〜図4に示すとおり、ベース部2と椅子本体Aの間には、椅子本体Aを上昇させる方向に常時付勢する付勢部材37が設けられている。この付勢部材37は、上下方向に長寸の棒状に構成された流体圧シリンダ等よりなり、その下端部が昇降ベース8に取り付けられ、その上端部が本体フレーム10における第3連結部材10fに取り付けられている(図6も参照)。したがって、椅子本体Aを上昇させるために必要な駆動力を付勢部材37により補うことができ、使用者が着座した状態であっても、椅子本体Aの上昇速度と下降速度を略一致させることができる。
【0029】
[連動状態/非連動状態の切り替え]
本発明の第1実施形態に係る椅子1は、背凭れ部4のリクライニングとフットレスト5の上下回動が連動する連動状態と、背凭れ部4のリクライニングとフットレスト5の上下回動が個別に行われる非連動状態と、に切り替え可能に構成されている。以下、連動状態と非連動状態の切り替え操作について説明する。
【0030】
前述したとおり、図2〜図4に示した椅子1は非連動状態を示している。図10は連動状態の椅子1の側面図であり、椅子本体Aが下位置であって、背凭れ部4が起立しフットレスト5が下降した状態である。図11は連動状態の椅子1の側面図であり、椅子本体Aが下位置であって、背凭れ部4が傾倒しフットレスト5が上昇した状態である。図12は連動状態の椅子1における本体フレーム10の斜視図である。なお、図10及び図11においては、視認性を考慮して、ガイドレール24等の一部の部材を省略して図示している。
図2〜図4に示すとおり、非連動状態の椅子1は、背凭れ部用アクチュエータ16とフットレスト用アクチュエータ17を有しており、それぞれのアクチュエータ16,17の伸縮動作が制御部(図示せず)により個別に制御されるよう構成されている。背凭れ部用アクチュエータ16が短縮すると背凭れ部4が軸心C1回りに後方へ傾倒し、背凭れ部用アクチュエータ16が伸長すると背凭れ部4が軸心C1回りに前方へ起立する。また、フットレスト用アクチュエータ17が伸長するとフットレスト5がフットレストリンク13を介して上方回動し、フットレスト用アクチュエータ17が短縮するとフットレストリンク13が下方回動するためフットレスト5が自重により下方回動する。
【0031】
このフットレスト用アクチュエータ17は、椅子本体Aに対して着脱可能に構成されている。以下、フットレスト用アクチュエータ17の着脱構造を具体的に説明する。前述したとおり、フットレスト用アクチュエータ17は、その後端部がフットレスト用アクチュエータ第1取付部20に取り付けられており、その前端部がフットレスト用アクチュエータ第2取付部21に取り付けられている(図6及び図7参照)。図6に示すとおり、フットレスト用アクチュエータ第1取付部20は、本体フレーム10における第2連結部10eの左右方向略中央に設けられており、左右方向において、後述するリンク第1取付部19(背凭れ部用アクチュエータ第2取付部)及びリンク第2取付部21と略一致する位置に位置している。このフットレスト用アクチュエータ第1取付部20は、左右方向に貫通する貫通孔を有する左右対の板状のブラケット39と、この左右対のブラケット39,39間にフットレスト用アクチュエータ17の後端部を位置させた状態で、貫通孔から対のブラケット39及びフットレスト用アクチュエータ17に串刺し状に挿通されるピン40と、により構成されている。
【0032】
図7に示すとおり、フットレスト用アクチュエータ第2取付部21は、フットレストリンク13における第1リンク13aの上下方向中途部に設けられている。このフットレスト用アクチュエータ第2取付部21は、フットレスト用アクチュエータ第1取付部20と同様に、左右方向に貫通孔を有する左右対の板状のブラケット41と、この左右対のブラケット41,41間にフットレスト用アクチュエータ17の前端部を位置させた状態で、貫通孔から対のブラケット41及びフットレスト用アクチュエータ17に串刺し状に挿通されるピン42と、により構成されている。
【0033】
このピン40,42を抜き差しする操作によって、フットレスト用アクチュエータ17を椅子本体Aに対して着脱することができる。図2〜図4に示す非連動状態の椅子1から、ピン40,42を抜く操作を行うことによりフットレスト用アクチュエータ17を取り外し、代わりにリンク部材38を椅子本体Aに取り付けることにより、図10〜図12に示す連動状態の椅子1に切り替えることができる。
【0034】
図10〜図12に示すとおり、連動状態の椅子1は、背凭れ部用アクチュエータ16と、背凭れ部4とフットレスト5を連結するリンク部材38を有しており、背凭れ部用アクチュエータ16の伸縮動作が制御部(図示せず)により制御されるよう構成されている。背凭れ部用アクチュエータ16が短縮すると背凭れ部4が軸心C1回りに後方へ傾倒し、背凭れ部4の後方への傾倒に連動してフットレスト5がフットレストリンク13を介して上方回動する。また、背凭れ部用アクチュエータ16が伸長すると背凭れ部4が軸心C1回りに前方へ起立し、背凭れ部4の前方への起立に連動してフットレストリンク13が下方回動するためフットレスト5が自重により下方回動する。
【0035】
図10〜図12に示すとおり、このリンク部材38は、前後方向に長寸の板状であり、左右で対をなして構成されている。また、フットレスト用アクチュエータ17と同様に、椅子本体Aに対して着脱可能に構成されている。以下、リンク部材38の着脱構造を具体的に説明する。リンク部材38は、その後端部が背凭れ部4に設けられたリンク第1取付部19に取り付けられており、その前端部がフットレスト5に設けられたリンク第2取付部21に取り付けられている。なお、連動状態においては、フットレスト用アクチュエータ第1取付部20は、使用されない余剰の取付部である。
【0036】
リンク第1取付部19は、背凭れ部4における下端部であって左右方向略中央に設けられている。このリンク第1取付部19は、左右方向に貫通する貫通孔を有する左右対の板状のブラケット43と、この左右対のブラケット43,43間に背凭れ部用アクチュエータ16の後端部を位置させ、かつ左右対のブラケット43の両外側に左右対のリンク部材38,38の後端部を位置させた状態で、対のブラケット43、対のリンク部材38、及び背凭れ部用アクチュエータ16に串刺し状に挿通されるピン44と、により構成されている。本実施形態では、リンク第1取付部19と背凭れ部用アクチュエータ第2取付部19とは、同一の部材で構成され、対のリンク部材38及び背凭れ部用アクチュエータ16は、共通のピン44により背凭れ部4に支持されているため、部品点数の削減に貢献している。また、対のリンク部材38が、背凭れ部用アクチュエータ16の左右両側から挟み込むように配置される構成となっているため、安定してフットレスト5を上下回動させることができる。
【0037】
図7及び図12に示すとおり、リンク第2取付部21は、フットレストリンク13における第1リンク13aの上下方向中途部に設けられている。このリンク第2取付部21は、フットレスト用アクチュエータ第2取付部21と同一部材であり、左右方向に貫通孔を有する左右対の板状のブラケット41と、この左右対のブラケット41,41間に対のリンク部材38の前端部を位置させた状態で、貫通孔から対のブラケット41及び対のリンク部材38に串刺し状に挿通されるピン42と、により構成されている。本実施形態では、リンク第2取付部21とフットレスト用アクチュエータ第2取付部21とは、同一の部材で構成されているため、部品点数の削減に貢献している。
【0038】
非連動状態から連動状態への切り替え操作について前述したが、これとは逆に、連動状態から非連動状態への切り替え操作について説明する。このピン42,44を抜き差しする操作によって、リンク部材38を椅子本体Aに対して着脱することができる。図10〜図12に示す連動状態の椅子1から、ピン42,44を抜く操作を行うことによりリンク部材38を取り外し、代わりにフットレスト用アクチュエータ17を椅子本体Aに取り付けることにより、図2〜図4に示す非連動状態の椅子1に切り替えることができる。すなわち、連動状態の椅子1においては余剰の取付部であったフットレスト用アクチュエータ第1取付部20を用いて、フットレスト用アクチュエータ17を椅子本体Aに取り付けることにより、連動状態の椅子1から非連動状態の椅子1に変更することができる。しかも、フットレスト用第1取付部20と、リンク第2取付部21は左右方向において略一致する位置に位置しているため、フットレスト用アクチュエータ17として直動式のものを採用することができる。
【0039】
このように連動状態と非連動状態とが切り替え可能に構成されているため、背凭れ部4のリクライニングとフットレスト5の上下回動が連動する椅子を希望する使用者又は施設と、背凭れ部4とフットレスト5がそれぞれ個別にリクライニング及び上下回動する椅子を希望する使用者又は施設と、のそれぞれの要望に対応することができる。例えば、本発明の椅子1を受注生産により理容室や美容室等の施設に提供する場合、部品の無駄をなくして、各施設におけるスペースの状況に応じた状態(前記連動状態又は前記非連動状態)の椅子を提供することができる点で有利である。また、前記連動状態と前記非連動状態との切り替えを、リンク部材38及びフットレスト用アクチュエータ17の着脱により行うので、リンク部材38の構造を簡素化することができる。
【0040】
[回転機構の構成]
以下、回転機構50の構成について説明する。
図13は回転ベースの斜視図である。
図5及び図13に示すとおり、回転ベース9の上面と昇降ベース8下面の間には、昇降ベース8を回転ベース9に対して回転可能に連結する回転機構50が設けられている。具体的には、回転機構50は、回転ベース9の上面に固定された第1回転板51と、昇降ベース8の下面に固定され、第1回転板51に対して上下方向の軸心回りに回転可能な第2回転板52と、両回転板51,52を回転可能に連結する上下方向の回転軸C7と、により構成されている。したがって、第2回転板52が取り付けられた昇降ベース8が、第1回転板51が取り付けられた回転ベース9に対して、回転軸C7回りに回転可能とされている。
【0041】
また、この椅子1は、昇降ベース8の回転を規制するロック機構60を有している。以下、ロック機構60の構成について説明する。回転ベース9の上面には、下方に窪んだ凹部を有する被係合部61が設けられており、この被係合部61は、回転軸C7の同心円上に複数(本実施形態では3箇所)設けられている。昇降ベース8の後部には、下方に突出した凸部を有する係合部62が設けられており、この係合部62は、前述したエアユニット15からのエアの給排気によって膨張収縮するエアセルよりなる駆動部63により上下に動作可能とされている。この係合部62の被係合部61に対する係合/離脱によって、昇降ベース8の回転ベース9に対する回転のロック/ロック解除が行われる。
【0042】
以下、本発明の第2実施形態に係る椅子100の構成について説明する。
図14は本発明の第2実施形態に係る椅子100の側面図であり、椅子本体Aが下位置であって、背凭れ部4が傾倒しフットレスト5が上昇した状態である。なお、第1実施形態の椅子1と異なる構成はリンク部材70の構成のみであり、その他の構成については第1実施形態の椅子1と同一の番号を付して、その説明を省略する。また、図14においては、視認性を考慮して、ガイドレール24等の一部の部材を省略して図示している。
図14に示すとおり、第2実施形態に係る椅子100のリンク部材70は、前後方向における長さが可変である伸縮可能状態と、前後方向における長さが不変である伸縮不能状態とに切り替え可能に構成されている。このリンク部材70は、後端部が背凭れ部4側に取り付けられる第1リンク部材71と、前端部がフットレスト5側に取り付けられる第2リンク部材72とにより構成され、第1リンク部材71と第2リンク部材72とがピン等よりなる固定部材73の着脱等の操作により、伸縮可能状態と伸縮不能状態とに切り替え可能とされている。リンク部材70は、その後端部が背凭れ部4に設けられたリンク第1取付部19に取り付けられ、その前端部がフットレスト用アクチュエータ17とは異なり、フットレストベース11(又はフットレスト本体12)に取り付けられている。
【0043】
このように連動状態と非連動状態とが切り替え可能に構成されているため、第1実施形態に係る椅子1と同様に、背凭れ部4のリクライニングとフットレスト5の上下回動が連動する椅子を希望する使用者又は施設と、背凭れ部4とフットレスト5がそれぞれ個別にリクライニング及び上下回動する椅子を希望する使用者又は施設と、のそれぞれの要望に対応することができる。また、前記連動状態と前記非連動状態との切り替えを、リンク部材70の伸縮状態を切り替えることにより行うので、リンク部材70又はフットレスト用アクチュエータ17の着脱作業が不要となる。したがって、前記連動状態と前記非連動状態との切り替え操作が容易となる。
【0044】
本発明の椅子1,100は、図示する形態に限らずこの発明の範囲内において他の形態のものであっても良い。
例えば、ラック22・ピニオン23は前後で対をなして構成されていてもよい。この場合、軸方向が前後方向を向くピニオン軸29の前後両端部にピニオン23が設けられる。そして、このラック22・ピニオン23及びピニオン軸29の組合せが左右方向に複数組設けられる。
また、リンク部材38を取り付けるリンク第1取付部19は、背凭れ部用アクチュエータ16における可動部(伸縮動作する部分)に取り付けられていてもよい。
また、リンク第2取付部21とフットレスト用アクチュエータ第2取付部21とは、別部材としてフットレスト5(フットレストリンク13)に設けられていてもよい。この場合、フットレスト用アクチュエータ第1取付部20と、フットレスト用アクチュエータ第2取付部21とは、左右方向において略一致する位置に位置しているのが好ましい。
また、座部3、背凭れ部4、及びフットレスト5に設けるマッサージ部として、エアセル14に代えて、又は加えて、例えば、ローラ、バイブレータ、又は揉みや叩き等を行う施療子を設けてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明は、特許文献1に記載の昇降機構に代わる新規な昇降機構を有する椅子に適用することができる。
【符号の説明】
【0046】
1 椅子
2 ベース部
3 座部
4 背凭れ部
5 フットレスト
7 昇降機構
16 背凭れ部用アクチュエータ
17 フットレスト用アクチュエータ
18 背凭れ部用アクチュエータ第1取付部
19 背凭れ部用アクチュエータ第2取付部(リンク第1取付部)
20 フットレスト用アクチュエータ第1取付部
21 フットレスト用アクチュエータ第2取付部(リンク第2取付部)
22 ラック
23 ピニオン
29 ピニオン軸
31 モータ
34 駆動ギヤ
35F 従動ギヤ(第1従動ギヤ)
35R 従動ギヤ(第2従動ギヤ)
36 アイドルギヤ
37 付勢部材
38,70 リンク部材
39,41,43 ブラケット
40,42,44 ピン
A 椅子本体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
床面に載置されるベース部と、
少なくとも使用者が着座する座部が設けられた椅子本体と、
前記ベース部と前記椅子本体との間に設けられ、前記ベース部に対して前記椅子本体を昇降させるラック・ピニオン方式の昇降機構と、を有することを特徴とする椅子。
【請求項2】
前記昇降機構は、
左右で対をなすラック・ピニオンと、対をなす前記ピニオンの回転軸であるピニオン軸と、を有し、
前記ラック・ピニオン及び前記ピニオン軸の組合せを前後方向に複数組有することを特徴とする請求項1に記載の椅子。
【請求項3】
前記昇降機構は、
前後で対をなすラック・ピニオンと、対をなす前記ピニオンの回転軸であるピニオン軸と、を有し、
前記ラック・ピニオン及び前記ピニオン軸の組合せを左右方向に複数組有することを特徴とする請求項1に記載の椅子。
【請求項4】
前記昇降機構は、
モータと、当該モータの回転動力を前記ピニオン軸に伝達する伝達部材と、を有し、
前記伝達部材は、
前記モータに連動連結された駆動ギヤと、
複数の前記ピニオン軸に設けられ、前記駆動ギヤの回転に同期して回転する従動ギヤと、を有することを特徴とする請求項2又は3に記載の椅子。
【請求項5】
前記伝達部材は、
前記駆動ギヤと噛合する第1従動ギヤと、
アイドルギヤを介して前記駆動ギヤに噛合し、前記第1従動ギヤと逆方向へ回転する第2従動ギヤと、を有することを特徴とする請求項4に記載の椅子。
【請求項6】
前記ラックは、前記ベース部側に上下方向に延びるよう設けられ、
前記ピニオンは、前記椅子本体側に前記ピニオン軸を介して回転可能に支持されていることを特徴とする請求項2〜5のいずれかに記載の椅子。
【請求項7】
前記椅子本体は、
使用者が凭れる背凭れ部と、
前記座部の下方かつ前記ピニオン軸の上方に位置し、前記背凭れ部を前記座部に対してリクライニングさせるリクライニング機構と、を有することを特徴とする請求項6に記載の椅子。
【請求項8】
前記ベース部と前記椅子本体の間に介在し、当該椅子本体を上昇させる方向に付勢する付勢部材を有していることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の椅子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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