説明

椅子

【課題】椅子の配置効率を高めることができ、しかもクッション性や後席からの耐衝撃性を高めることができる椅子を提供する。
【解決手段】椅子は、表面が袋状の張り材24によって覆われると共に、張り材24の張力によって着席者の荷重を受け止める背凭れ部16を有し、前後に並んで配置される。背凭れ部16は、上下方向に延び、少なくとも上部が左右方向に延びた上部フレーム32によって互いに連結される左右一対の側部フレーム30、30と、一対の側部フレーム30、30と共に張り材24が張り掛けられ、正面視で一対の側部フレーム30、30間に位置し、且つ、側面視で一対の側部フレーム30、30よりも後方に位置した保護部材42とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面を覆う袋状の張り材の張力によって着席荷重を受け止める背凭れ部を有する椅子に関する。
【背景技術】
【0002】
劇場やプラネタリウム、映画館、スタジアム等に設置される椅子は、通常、複数脚が前後に並んで配置される。このため、後席の着席者が足をずらしたり足を組み替えたりすると、膝やつま先が前席の背凭れ部の後面にぶつかることがあり、その衝撃によって前席の着席者が不快感を受けることがある。特に、特許文献1に記載されているようなプラネタリウム用の椅子のように、背凭れ部を深くリクライニングさせて使用するものでは、後席から前席への蹴り上げが生じ易いという問題がある。
【0003】
また、劇場やプラネタリウム等では、床面積に対する椅子の設置効率を高め、多くの観客を収容することを可能とするため、背凭れ部の前後方向厚みを可及的に抑えることが望まれる一方、長時間快適に着席できるクッション性も求められる。
【0004】
すなわち、この種の椅子では、前後方向厚みを抑えて劇場内での椅子の配置効率を向上させつつ、クッション性や後席からの耐衝撃性を向上させることができる背凭れ部を備えることが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実公平3−25635号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記従来技術の課題を考慮してなされたものであり、椅子の配置効率を高めることができ、しかもクッション性や後席からの耐衝撃性を高めることができる椅子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る椅子は、表面が袋状の張り材によって覆われると共に、前記張り材の張力によって着席者の荷重を受け止める背凭れ部を有し、前後に並んで配置される椅子であって、前記背凭れ部は、上下方向に延び、少なくとも上部が左右方向に延びた上部フレームによって互いに連結される左右一対の側部フレームと、前記一対の側部フレームと共に前記張り材が張り掛けられ、正面視で前記一対の側部フレーム間に位置し且つ側面視で前記一対の側部フレームよりも後方に位置した保護部材とを備えることを特徴とする。
【0008】
このような構成によれば、袋状の張り材の張力によって着席者の荷重を受け止める背凭れ部を有し、張り材を側部フレームとこれよりも後方の保護部材とに張り掛けたことにより、クッション材等を別途配設することなく、張り材の撓みをクッション材として利用することができる。また、一対の側部フレーム間に位置し該側部フレームよりも後方に位置する保護部材を備えるため、保護部材自体による防御効果によって、前席の着席者の背中が直接的に後席側から蹴り上げられることが防止される。さらに、背凭れ部の後面側では、保護部材が配置されたことにより、フレームに対する張り材の張り掛け距離が狭くなるため、張り材の後面側での撓み量を減らすことができ、着席者に対する衝撃を該張り材によって受け止めることができ、着席者の不快感を一層少なくすることができる。また、保護部材によって横方向のフレーム間距離を狭くし、張り材の撓み量を減らすことにより、十分なクッション性を確保しつつ背凭れ部の前後方向厚みが抑えられるため、劇場内での椅子の配置効率を向上させることができる。
【0009】
前記背凭れ部は、左右方向に延びて前記一対の側部フレームの下部同士を連結する下部フレームを有し、前記上部フレームと前記下部フレームとが、前記保護部材によって互いに連結されると、保護部材の設置が容易であると共に、当該保護部材によって背凭れ部を構成するフレーム全体の剛性を高めることができ、背凭れ部をより薄型化しつつ、十分な張力を持って張り材を張り掛けることができる。
【0010】
前記保護部材は、前後方向に扁平な板状部材であると、該板状部材によって後方からの衝撃を受け止めることができる。
【0011】
前記保護部材は、前記上部フレームと前記下部フレームとを連結する左右一対の支持フレームを有し、前記板状部材は、前記一対の支持フレーム間に設けられると、板状部材を薄い金属板等で形成した場合であっても十分な強度で設置することができる。
【0012】
前記保護部材は、前記上部フレームと前記下部フレームとを連結する複数本のパイプ部材であってもよい。この場合にも、背凭れ部の後面側での張り材の撓み量を低減することができるため、着席者に対する衝撃を張り材の最小限の撓みによって円滑に低減でき、着席者の不快感を少なくすることができる。
【0013】
前記張り材は、少なくとも一部に外側から内側を視認可能な透過部を有し、前記保護部材の前記透過部に対応する位置に、所定の情報を表示する表示部を設けてもよい。そうすると、椅子の前方や後方から、表示部を容易に確認することができ、また保護部材に表示部を設けることで、より大きな表示部を容易に設置することができる。しかも、表示部を設けた保護部材が背凭れ部の上部まで延在している場合には、表示部を背凭れ部の上部に容易に配置でき、跳ね上げた座部によって当該表示部が隠れることを回避できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、一対の側部フレーム間に位置し該側部フレームよりも後方に位置する保護部材を備えるため、保護部材自体による防御効果によって、前席の着席者の背中が直接的に後席側から蹴り上げられることが防止される。さらに、背凭れ部の後面側では、保護部材が配置されたことにより、フレームに対する張り材の張り掛け距離が狭くなるため、張り材の後面側での撓み量を減らすことができ、着席者に対する衝撃を該張り材によって受け止めることができ、着席者の不快感を一層少なくすることができる。しかも、保護部材によって横方向のフレーム間距離を狭くし、張り材の撓み量を減らすことにより、十分なクッション性を確保しつつ背凭れ部の前後方向厚みが抑えられるため、劇場内での椅子の配置効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係る椅子の側面図である。
【図2】図2は、図1に示す椅子をリクライニングさせた状態での側面図である。
【図3】図3は、図1に示す椅子の正面図である。
【図4】図4は、背凭れ部の前方側からの斜視図である。
【図5】図5は、背凭れ部の後方側からの斜視図である。
【図6】図6は、背凭れ部の三面図であり、図6(A)は、背凭れ部の平面図を示し、図6(B)は、背凭れ部の正面図を示し、図6(C)は、背凭れ部の側面図を示す。
【図7】図7は、図6(B)中のVII−VII線に沿う断面図である。
【図8】図8は、保護部材の第1変形例を示す断面図である。
【図9】図9は、保護部材の第2変形例を示す断面図である。
【図10】図10は、保護部材の第3変形例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る椅子について好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
【0017】
図1は、本発明の一実施形態に係る椅子10の側面図であり、図2は、椅子10をリクライニングさせた状態での側面図である。図1及び図2は、前後方向に多数配列された椅子10のうち、所定の前席10F及び後席10Rを図示したものである。また、図3は、椅子10の正面図であり、左右方向に3脚1組として椅子10を並べて設置した状態を示している。
【0018】
図1及び図2に示すように、椅子10(前席10F及び後席10R)は、使用者が座るための座部14と、座部14への着席者が背中で寄り掛かる部分である背凭れ部16と、着席者が肘を掛けるための肘掛部20とを備える。
【0019】
以下、本実施形態では、椅子10として、図3に示すように左右方向に並んだ3脚の椅子10が一対の脚部22によって床面上に一体的に固定されると共に、この左右方向で3脚の組が、図1及び図2に示すように前後方向に後ろ上がりの階段状に並んで複数列配置されたプラネタリウム用の椅子を例示して説明する。なお、椅子10は、前後方向に2脚以上が配列されるものであれば、前後方向に平面状や後ろ上がりの斜面状に配置されてもよく、左右方向には1脚が単独で用いられ又は2脚以上が並んで用いられてもよい。勿論、椅子10は、プラネタリウム用以外の用途に用いることもできる。
【0020】
図1に示すように、座部14は、その基端(後端)側を回動軸として跳ね上げ可能な構成であり、非着席時には上方に跳ね上がって前席10F及び後席10R間に通路として空間を確保することができる。座部14を跳ね上げた状態は、図1中に2点鎖線で示す。勿論、座部14は固定式のものでもよい。肘掛部20は、椅子10の各外側部に設置されると共に、左右に隣接する椅子10同士の中間部に両席共用となる1個が設置される(図3参照)。
【0021】
図4は、背凭れ部16の前方側からの斜視図であり、袋状の張り材24を背凭れ部16に被せる前の状態での分解斜視図である。図5は、背凭れ部16の後方側からの斜視図である。図6は、背凭れ部16の三面図であり、図6(A)は、背凭れ部16の平面図を示し、図6(B)は、背凭れ部16の正面図を示し、図6(C)は、背凭れ部16の側面図を示す。
【0022】
図1〜図6に示すように、背凭れ部16は、その骨格となる枠状の背フレーム(枠フレーム)26の表面が袋状の張り材(張り地)24によって覆われており、この張り材24の張力(テンション)によって着席者からの荷重を受け止めることができる。さらに、背フレーム26の上部には、着席者が頭部を凭れるヘッドレストフレーム28が該背フレーム26と一体的に設けられている。本実施形態に係る椅子10は、プラネタリウム用の椅子のため、背凭れ部16の上部にヘッドレストフレーム28によってヘッドレストを形成しているが、該ヘッドレスト(ヘッドレストフレーム28)は椅子10の用途によっては省略してもよい。
【0023】
図4及び図5に示すように、背フレーム26は、上下方向に延びた左右一対の側部フレーム30、30と、左右方向に延びて各側部フレーム30の上部同士を連結する上部フレーム32と、左右方向に延びて各側部フレーム30の下部同士を連結する下部フレーム34とを備え、図6(B)に示す正面視で矩形枠状に形成されている。
【0024】
上部フレーム32及び下部フレーム34は、着席者の背中を包み込むように、左右側部から中央部に向かって後方に湾曲しており、側部フレーム30は、上部フレーム32との連結部から下方に向けて、一端後方に窪んだ後、前方に膨らんだ曲線形状となっている。
【0025】
ヘッドレストフレーム28は、各側部フレーム30の上端を上方に延長し、側面視で中間部が上下部よりも前方に位置するように湾曲させた左右一対の延長フレーム36、36と、左右方向に延びて各延長フレーム36の上端同士を連結する頂部フレーム38とを備え、図6(B)に示す正面視で高さ方向に扁平な矩形枠状に形成されている。
【0026】
側部フレーム30、延長フレーム36及び頂部フレーム38は、長尺なパイプ部材(パイプフレーム)の両端側を曲げ加工でアーチ状(門状)に成形することで一体的に形成されている。各側部フレーム30の下端前面側には、背凭れ部16を当該椅子10の座部14等が設けられる図示しないフレームに固定するための取付部40がそれぞれ設けられている。
【0027】
このような背フレーム26やヘッドレストフレーム28を構成する各フレームは、金属製のパイプ部材によって十分な剛性と強度を持って形成されており、背凭れ部16に着席者が背中で寄りかかった程度の荷重では実質的に撓まない構造、つまり着席荷重程度では全く撓まない又は僅かに撓む程度の構造となっている。
【0028】
図4に示すように、背フレーム26の中央部には、保護部材42が上下方向に延びて設置されている。保護部材42は、図3及び図6(B)に示す正面視で一対の側部フレーム30、30間に位置すると共に、図1及び図6(C)に示す側面視で各側部フレーム30よりも後方に位置し、その外面に張設される張り材24と共に、後方からの衝撃を受け止めるプロテクタとして機能するものである。
【0029】
図4〜図6に示すように、保護部材42は、上下方向に延び、上部フレーム32と下部フレーム34との間を連結する左右一対の支持フレーム44、44と、各支持フレーム44間に設けられるプレート部材(板状部材)46とから構成されている。
【0030】
支持フレーム44は、背フレーム26を構成する側部フレーム30等よりも小径のパイプ部材(パイプフレーム)であり、図1等から諒解されるように、側面視で側部フレーム30と略同様な曲線形状に成形されている。各支持フレーム44は、各側部フレーム30間の後方側に張り掛けられる張り材24を略3等分する位置に配置されている(図7参照)。
【0031】
プレート部材46は、各支持フレーム44間に固定されて前後方向に扁平な板状部材(板金)であり、その左右方向の中心が背凭れ部16の左右方向の中心に略一致している(図7参照)。図1等から諒解されるように、プレート部材46は、側面視で側部フレーム30や支持フレーム44と略同様な曲線形状に成形されている。
【0032】
保護部材42を構成する支持フレーム44やプレート部材46は、それぞれ金属製のパイプ部材や金属製の板状部材によって十分な剛性と強度を持って形成されており、背フレーム26を構成する各フレーム等と同様、背凭れ部16に着席者が背中で寄りかかった程度の荷重では実質的に撓まない構造となっている。また、支持フレーム44の下部であって、下部フレーム34より上方の両側部は、側部フレーム30の下部との間でプレート状の連結フレーム47、47によって連結されており(図4及び図5参照)、より高い剛性が付与されている。
【0033】
図3、図4及び図6に示すように、張り材24は、ヘッドレストフレーム28を覆うヘッドレストカバー部48と、背フレーム26を覆う背カバー部50とを一体的に袋状に形成したものである。本実施形態の場合、ヘッドレストカバー部48にはレザー材を用い、背カバー部50には透過性を有するメッシュ材を用いている。なお、図面の簡単のため、図3以外の図面では、ヘッドレストカバー部48と背カバー部50とを同様な模様で図示している。勿論、張り材24の材質は、当該椅子10の用途等に応じて適宜変更可能であるが、少なくとも背カバー部50をメッシュ材で構成すると、背凭れ部16の通気性を確保できるため、特にプラネタリウム用の椅子のように、リクライニングを深く倒して長時間座るような用途に最適である。また、背カバー部50にメッシュ材を用いることで、後述するように、大きな表示部52を設けることもできる。
【0034】
図4に示すように、張り材24は、下端に開口部を設けて袋状に形成されており、この袋状の張り材24を、下端の開口部を介してヘッドレストフレーム28の上部から被せることで、ヘッドレストフレーム28及び背フレーム26の全体が張り材24によって覆われる。この際、図6及び図7から諒解されるように、張り材24の袋は、ヘッドレストフレーム28及び背フレーム26からなる背凭れ部16の骨格よりも多少小さめに形成されており、ヘッドレストフレーム28及び背フレーム26に張り材24を引っ張りながら被せることにより、十分な張力(テンション)を持って張設される。張り材24の下端開口部は、下部フレーム34等に対してファスナやホック等の結合手段によって固定すればよい。
【0035】
より具体的には、図7に示すように、背フレーム26を覆う背カバー部50は、2本の側部フレーム30、30と、2本の支持フレーム44、44と、プレート部材46とによって、背凭れ部16の前後左右方向に十分な張力を持って張り掛けられる。これにより、着席者の荷重が背カバー部50の前面50aにかかった場合であっても、この前面50aは、図7中に2点鎖線で示すように距離L1程度の範囲で撓んで十分なクッション性を発揮し、快適な座り心地を得ることができる。
【0036】
すなわち、側部フレーム30や支持フレーム44、プレート部材46が、上記のように背凭れ部16に着席者が背中で寄りかかった程度の荷重では実質的に撓まない構造となっている。そして、着席者の背中が当たる張り材24(背カバー部50)の前面50aは、十分な間隔を持った2本の側部フレーム30、30間に張り渡されているため、必要十分な撓み量(距離L1)を確保することができて、快適なクッション性を発揮することができる。この際、張り材24(背カバー部50)は、側部フレーム30及び保護部材42の周囲に張り渡されているため、着席者の背中が当たる前面50aは、広い間隔の側部フレーム30間に張られて十分なクッション性を確保できると共に、後面側に設けられた保護部材42によって前面50aの撓み量である距離L1もある程度の制限を受けるため、該前面50aが過剰に撓み、後方の保護部材42に底付きしてしまうことが回避できる。
【0037】
一方、後席10Rの着席者の足が当たる可能性のある張り材24(背カバー部50)の後面側は、中央部が保護部材42によって保護されると共に、保護部材42の側部に形成される後方側面50bは、狭い間隔からなる側部フレーム30と保護部材42(支持フレーム44)との間に張り渡されているため、その撓み量は距離L1よりも十分に小さい距離L2程度まで減らされており(図7中の2点鎖線参照)、後方から力が加わってもその衝撃が着席者まで直接的に伝わることはなく、着席者に対する後方からの衝撃が低減され、不快感を少なくすることができる。換言すれば、保護部材42を背凭れ部16の後面側に配置したことにより、張り材24が張り掛けられる横方向のフレーム間距離を狭くすることができ、張り材24の撓み量を低減することができるため、背凭れ部16の前後方向厚みを厚くすることなく、張り材24を十分な張力で張設でき、背凭れ部16の厚みを一層低減することができる。
【0038】
図3に示すように、保護部材42を構成するプレート部材46の前面には、当該椅子10の席番等を表示する表示部(席番プレート)52が設けられている。この表示部52は、張り材24を構成する背カバー部50の前面にメッシュ材によって形成された透過部54に対応する位置に設けられ、少なくとも椅子10の正面から視認可能である。勿論、表示部52及び透過部54は、背凭れ部16の後面に設けられてもよく、また前面及び後面の両方に設けられてもよく、表示部52は、席番以外の所定の情報を表示するために用いられてもよい。
【0039】
以上のように、本実施形態に係る椅子10によれば、表面が袋状の張り材24によって覆われると共に、張り材24の張力によって着席者の荷重を受け止める背凭れ部16を有し、前後に並んで配置される椅子10において、背凭れ部16は、上下方向に延び、少なくとも上部が左右方向に延びた上部フレーム32によって互いに連結される左右一対の側部フレーム30、30と、一対の側部フレーム30、30と共に張り材24が張り掛けられ、図3及び図6(B)に示す正面視で一対の側部フレーム30、30間に位置し、且つ、図1及び図6(C)に示す側面視で一対の側部フレーム30、30よりも後方に位置した保護部材42とを備える。
【0040】
すなわち、椅子10では、袋状の張り材24の張力によって着席者の荷重を受け止める背凭れ部16を有し、張り材24を側部フレーム30とこれよりも後方の保護部材42とに張り掛けたことにより、クッション材等を別途配設することなく、張り材24の撓みクッション材として利用することができる(図7中の距離L1参照)。
【0041】
さらに、椅子10では、一対の側部フレーム30、30間に位置し、該側部フレーム30よりも後方に位置する保護部材42を備える。このため、後席10Rの着席者が足の位置を変更した場合等に、該着席者の足が前席10Fの背凭れ部16の後面を蹴り上げたとしても、第1に、保護部材42自体による防御効果によって前席10Fの着席者の背中が直接的に蹴り上げられることが防止される。第2に、背凭れ部16の後面側では、保護部材42によってフレームに対する張り材24の張り掛け距離が狭くなるため、張り材24(背カバー部50)の後方側面50bの撓み量を減らすことができ(図7中の距離L2参照)、着席者に対する衝撃を一層低減でき、不快感を少なくすることができる。また、保護部材42によって張り材24の撓み量を減らすことにより、十分なクッション性を確保しつつ背凭れ部16の前後方向厚みが抑えられ、プラネタリウム等の劇場内での椅子10の配置効率を向上させることができる。
【0042】
図1及び図2に示すように、椅子10の背凭れ部16は、リクライニング可能であるため、後席10Fの着席者の足が前席10Fの後面に一層当たり易くなっているが、当該椅子10では、保護部材42を設けたことにより、上記のような背凭れ部16の薄型化の効果と保護部材42による耐衝撃性向上の効果によって、図2に示すように、リクライニングを深く倒した状態であっても着席者の不快感を低減することができる。
【0043】
図4及び図5に示すように、保護部材42は、上部フレーム32と下部フレーム34とを連結するように上下方向に延びて設置されていると、保護部材42の設置が容易であると共に、当該保護部材42によって背フレーム26全体の剛性を高めることができ、背凭れ部16を薄型化しつつ、十分な張力を持って張り材24を張り掛けることができる。
【0044】
また、保護部材42として、一対の支持フレーム44、44間にプレート部材46を設けたことで、保護部材42の剛性が高まると共に、プレート部材46によって後席10Rの着席者からの足蹴り等を直接的に且つ十分に受け止めることができ、前席10Fの着席者の不快感を一層低減することができる。
【0045】
椅子10において、張り材24は、背凭れ部16の少なくとも一部に、例えばメッシュ材による透過部54を有し、保護部材42の前面の透過部54に対応する位置に、所定の情報(例えば、席番)を表示する表示部52を設けている。これにより、椅子10の前方や後方から、表示部52を容易に確認することができ、またプレート部材46に表示部52を設けることで、より大きな表示部52を容易に設置することができる。しかも、図3から諒解されるように、表示部52を設けた保護部材42は、背凭れ部16の上部まで延在しているため、表示部52を背凭れ部16の上部に配置でき、跳ね上げた座部14によって隠れることもない。
【0046】
なお、上記実施形態では、支持フレーム44及びプレート部材46を備えた保護部材42を例示したが、保護部材の構成は他の構成であっても勿論よい。
【0047】
例えば、図8に示すように、一対の支持フレーム44、44を省略し、プレート部材46のみを備えた保護部材42aとして構成しても、後方から力が加わった場合の着席者の不快感を少なくすることができる。この場合、プレート部材46の薄型化と高剛性とを確保するため、プレート部材46の両側縁部にカール成形やフランジ成形等を施してもよい。なお、図8は、図7に示す断面図と同様に、保護部材42aを背凭れ部16に適用した場合の該背凭れ部16の平面断面図であり、保護部材42aは保護部材42と同様、上部フレーム32と下部フレーム34との間を連結するように設置されており、以下の図9、図10で示す保護部材42b、42cについても同様である。
【0048】
一方、図9に示すように、プレート部材46を省略し、一対の支持フレーム44、44のみを備えた保護部材42bとして構成してもよい。この場合には、一対の支持フレーム44、44間に張られた張り材24(背カバー部50)の後面50cの撓み量も後方側面50bの撓み量と同様な距離L2程度となるため(図9中に2点鎖線で示す後方側面50b及び後面50c参照)、着席者に対する衝撃を十分に低減でき、不快感を少なくすることができる。
【0049】
保護部材42bは、図10に示すように、支持フレーム44の設置数を3本以上(図10では3本の構成を例示)にした保護部材42cとして構成してもよく、例えば、3本の支持フレーム44、44、44によって、側部フレーム30、30間を略4等分してもよい。そうすると、張り材24を構成する背カバー部50の4つの後方側面50dの撓み量をそれぞれ距離L2より小さい距離L3程度まで減らすことができ(図10中に2点鎖線で示す後方側面50d参照)、着席者に対する衝撃を一層低減でき、不快感を一層少なくすることができる。
【0050】
保護部材42b、42cのように、プレート部材46を用いない構成で表示部52を設置する場合には、例えば中央部の2本又は3本程度の支持フレーム44間にプレート状の表示部52を設置すればよい。
【0051】
なお、本発明は、上記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で自由に変更できることは勿論である。
【0052】
例えば、上記実施形態では、背凭れ部の表面を覆う袋状の張り材として、下端のみに開口部を設けて予め袋状に形成した張り材24を例示したが(図4参照)、背凭れ部を覆う袋状の張り材としては、上端及び下端に開口部を設けた筒状の張り材を背凭れ部に被せた後、上下の開口部を閉じる構成のものや、1枚のシート状の張り材によって背凭れ部を側方から包んだ後、該張り材の側部を閉じて筒状にし、その後、上下の開口部を閉じる構成のもの、さらには1枚のシート状の張り材によって背凭れ部を上方から包んだ後、該張り材の両側部を閉じて袋状にし、その後、下方の開口部を閉じる構成のもの等、各種構成を挙げることができ、要は、背凭れ部の表面を袋状に覆うことができる張り材であれば用いることができる。ここで、袋状とは、背凭れ部の上下前後左右を覆うもの(図6(C)参照)は勿論、少なくとも背凭れ部の前後左右を覆うものであればよく、椅子の用途によっては、上下の両方又は一方を覆わない構成とすることもできる。
【符号の説明】
【0053】
10 椅子
14 座部
16 背凭れ部
24 張り材
26 背フレーム
28 ヘッドレストフレーム
30 側部フレーム
32 上部フレーム
34 下部フレーム
36 延長フレーム
38 頂部フレーム
42 保護部材
44 支持フレーム
46 プレート部材
48 ヘッドレストカバー部
50 背カバー部
52 表示部
54 透過部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面が袋状の張り材によって覆われると共に、前記張り材の張力によって着席者の荷重を受け止める背凭れ部を有し、前後に並んで配置される椅子であって、
前記背凭れ部は、上下方向に延び、少なくとも上部が左右方向に延びた上部フレームによって互いに連結される左右一対の側部フレームと、
前記一対の側部フレームと共に前記張り材が張り掛けられ、正面視で前記一対の側部フレーム間に位置し且つ側面視で前記一対の側部フレームよりも後方に位置した保護部材と、
を備えることを特徴とする椅子。
【請求項2】
請求項1記載の椅子において、
前記背凭れ部は、左右方向に延びて前記一対の側部フレームの下部同士を連結する下部フレームを有し、
前記上部フレームと前記下部フレームとが、前記保護部材によって互いに連結されることを特徴とする椅子。
【請求項3】
請求項2記載の椅子において、
前記保護部材は、前後方向に扁平な板状部材であることを特徴とする椅子。
【請求項4】
請求項3記載の椅子において、
前記保護部材は、前記上部フレームと前記下部フレームとを連結する左右一対の支持フレームを有し、
前記板状部材は、前記一対の支持フレーム間に設けられることを特徴とする椅子。
【請求項5】
請求項2記載の椅子において、
前記保護部材は、前記上部フレームと前記下部フレームとを連結する複数本のパイプ部材であることを特徴とする椅子。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の椅子において、
前記張り材は、少なくとも一部に外側から内側を視認可能な透過部を有し、
前記保護部材の前記透過部に対応する位置に、所定の情報を表示する表示部を設けたことを特徴とする椅子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−59405(P2013−59405A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−198681(P2011−198681)
【出願日】平成23年9月12日(2011.9.12)
【出願人】(000000561)株式会社岡村製作所 (1,415)
【Fターム(参考)】