説明

椅子

【課題】視認性や操作性に優れると共に、配線プラグ等の接続端子が着席者や第三者の邪魔になることを回避することができる配線差込口を有する椅子を提供する。
【解決手段】椅子10は、座部12への着席者が背中で寄り掛かる部分である背凭れ部14と、着席者が肘を掛けるための肘当て部16とを備える。この椅子10には、肘当て部16の上面であり、且つ背凭れ部14の前面よりも後方となる位置に、配線差込口28が設けられているため、当該椅子10への着席者や周囲の第三者の手足が触れにくい位置に配線差込口28が設置され、配線差込口28に接続された配線プラグが着席者や第三者の邪魔になることを防止できる。さらに、配線差込口28は、肘当て部16の上面に設けられるため、視認性や操作性に優れる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器の配線プラグ等を接続するための配線差込口を有する椅子に関する。
【背景技術】
【0002】
近時、劇場や講堂、電車やバス等に備えられる椅子では、着席者がパソコンや通信端末等の携帯型の電子機器(電気機器)等を使用するために、その電源プラグを接続するためのコンセント(プラグ受け)が設置されることがある。
【0003】
例えば、本出願人は、特許文献1において、前席の背凭れ部にコンセントを設け、後席の着席者が当該コンセントを利用することができる構成の椅子を提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−181092号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
コンセント等の配線差込口は、上記特許文献1のように背凭れ部に設けられる以外にも、例えば、椅子の側方に設けた肘当て部の先端部や側部に設置されることもある。配線差込口をこのような場所に設置することで、着席者の前方や手元付近に配線差込口が配置され、電源プラグ等の配線プラグを抜き差しする際の操作性や視認性を確保することができる。
【0006】
ところが、配線差込口が前席の背凭れ部や、肘当て部の先端部或いは側部に設けられている場合には、着席者の手足の可動域に近いため、着席者が誤って配線プラグに触れてしまう可能性がある。また、当該椅子の前方や側方を通過する第三者が、誤って配線プラグや配線コードに引っ掛かり、不用意に配線プラグが抜かれてしまう懸念もあり、特に、前席の背凭れ部に配線差込口がある場合には、この配線差込口から着席者までの距離が長いため、配線コードが椅子の周囲に渡ることになり、周囲の通行の妨げとなることもある。
【0007】
本発明は、上記従来技術の課題を考慮してなされたものであり、視認性や操作性に優れると共に、配線プラグ等の接続端子が着席者や第三者の邪魔になることを回避することができる配線差込口を有する椅子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る椅子は、背凭れ部と肘当て部とを備えた椅子であって、前記肘当て部の上面であり、且つ前記背凭れ部の前面よりも後方となる位置に、配線差込口を設けたことを特徴とする。
【0009】
このような構成によれば、肘当て部の上面であり、且つ背凭れ部の前面よりも後方となる位置に配線差込口を設けることで、当該椅子への着席者や周囲の第三者の手足が触れにくい位置に配線差込口が設置されるため、該配線差込口に接続された配線プラグ(接続端子)が着席者や第三者の邪魔になることを有効に回避することができる。しかも、配線差込口は、肘当て部の上面に設けられるため、視認性や操作性に優れ、配線プラグの抜き差しも容易となる。
【0010】
前記背凭れ部は、背板と、該背板の前面に設けられた背張りとを有し、前記配線差込口は、前記背張りの前面よりも後方であり、且つ前記背板の前方となる位置に設けられると共に、当該椅子の背面視で該配線差込口の少なくとも一部が前記背板によって隠されると、当該椅子が前後方向に複数列が配置されている場合に、前席側の配線差込口を後方(後席側)から隠すことができ、後席の着席者が前席用の配線差込口を使用することを防止でき、しかも、後席の着席者が誤って前席用の配線差込口に接続された配線プラグに触れたり不用意に抜いてしまうことを未然に防ぐことができる。
【0011】
前記肘当て部には、テーブルが備えられると、当該椅子の着席者は、例えば椅子の右側の肘当て部に設けたテーブルでパソコン等の電子機器を使用する際、その肘当て部の上面後方側に設けられた配線差込口に該電子機器の電源プラグ等を差し込むことができるため、利便性が高く、しかも電源プラグ等と電子機器との間を接続する配線コードを該肘当て部に沿って配置することができるため、配線コードが着席者や第三者の邪魔になることもない。また、例えば、前記テーブルが肘当て部の下方に収納可能な可動式テーブルの場合であっても、配線差込口が肘当て部の後方側に配置されていることで、該配線差込口を外部の電源設備等に接続するための配線を肘当て部の下方に設けられるテーブルの収納部等の後方側を通すことができ、配線の取り回しが容易であり、当該椅子の組み立て性やメンテナンス性を向上させることができる。
【0012】
当該椅子は、左右方向に複数並列されると共に、前記肘当て部が左右に隣接する椅子同士の間に設けられており、前記左右に隣接する椅子の前記背凭れ部に設けられた背板同士は、互いの側面が当接又は近接して配置され、前記配線差込口は、前記隣接する椅子の背板の前面に設けられた背張り同士の互いに対向する側面間であり、且つ後方が前記隣接する椅子の背板によって閉塞された位置に配置されるとよい。そうすると、配線差込口を左右の椅子の背張り間であって、後方が背板によって完全に閉塞された空間に配置することができるため、配線差込口に接続された配線プラグが着席者や第三者の邪魔になること、及び、後席の着席者が誤って前席用の配線差込口を使用すること等を一層確実に防止することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、肘当て部の上面であり、且つ背凭れ部の前面よりも後方となる位置に配線差込口を設けることで、当該椅子への着席者や周囲の第三者の手足が触れにくい位置に配線差込口が設置される。このため、配線差込口に接続された配線プラグが着席者や第三者の邪魔になることを有効に回避することができる。しかも、配線差込口は、肘当て部の上面に設けられるため、視認性や操作性に優れ、配線プラグの抜き差しも容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係る椅子の側面図である。
【図2】図2は、図1に示す椅子の平面図である。
【図3】図3は、図1に示す椅子の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る椅子について好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
【0016】
図1は、本発明の一実施形態に係る椅子10の側面図であり、劇場や講堂等において前後方向に多数配列された椅子10のうち、所定の2列を図示したものである。また、図2は、図1に示す椅子10の平面図であり、図3は、図1に示す椅子10の正面図である。図2及び図3に示すように、本実施形態に係る椅子10は、左右方向に並列された左席10L、中席10M、右席10Rが3脚1組として一体的に連結されて床面上に設置される。
【0017】
図1〜図3に示すように、椅子10は、使用者が座るための座部12と、座部12への着席者が背中で寄り掛かる部分である背凭れ部(背、背部)14と、着席者が肘を掛けるための肘当て部(肘、肘掛部)16とを備える。
【0018】
以下、本実施形態では、椅子10として、図2及び図3に示すように左右方向に並んだ3脚の椅子10である左席10L、中席10M、右席10Rが一体的に連結され、脚部18によって床面上に固定されると共に、この左右方向で3脚の組が、図1に示すように前後方向で後ろ上がりの階段状に並んで複数列配置された劇場用の椅子を例示して説明する。なお、椅子10は、前後左右に1脚のみが単独で用いられるもの、又は左右に2脚若しくは4脚以上が連結して用いられるものであってもよく、さらには、劇場用以外、例えば、事務用や電車やバス等の車両用等の用途に用いられるものであってもよい。
【0019】
座部12は、その基端(後端)側の回動軸19を中心として跳ね上げ可能な構成であり(図2及び図3中の右席10Rに2点鎖線で示す座部12参照)、非着席時には上方に跳ね上がって前席と後席との間に通路としての空間を確保することができる。勿論、座部12は固定式のものでもよい。
【0020】
肘当て部16は、左右両端の椅子10(左席10L、右席10R)の外側部にそれぞれ設置され、さらに、左右に隣接する椅子10同士の中間部(左席10Lと中席10Mとの間、中席10Mと右席10Rとの間)に、両席共用となる1個が設置される。
【0021】
肘当て部16は、各脚部18から上方に延びた基部フレーム20の上端に前後方向に延びて設けられ、例えば木板によって形成される。左右両端の左席10L及び右席10Rの外側の基部フレーム20は、その周囲が側面プレート22によって覆われ、当該椅子10の美観を向上させている。図1では、前後の椅子10のうち、前席の椅子10では側面プレート22を装着した状態を示し、後席の椅子10では側面プレート22を取り外した状態を示している。
【0022】
各椅子10の右側に設けられた肘当て部16には、可動式のテーブル24が備えられている。テーブル24は、例えば左右方向及び前後方向の2軸の回動軸を有する回動機構部26を介して基部フレーム20に連結されており、肘当て部16の下方で前後方向及び上下方向に沿った収納姿勢から、肘当て部16の前方で該肘当て部16の上面と略平行する水平状態に横臥された使用姿勢へと可変する。肘当て部16の収納姿勢は、図1中の前席の椅子10と図2及び図3とに示し、肘当て部16の使用姿勢は、図1中の後席の椅子10と図2及び図3中の左席10Lの2点鎖線とに示す。
【0023】
このようなテーブル24が設置された肘当て部16、つまり各椅子10の右側の肘当て部16には、その上面後方側に配線差込口28が設けられている。本実施形態の場合、テーブル24や配線差込口28は、各椅子10の右側の肘当て部16に設置されたものを当該椅子10の着席者が使用する構成であるが、各椅子10の左側に設けた構成としてもよい。
【0024】
配線差込口28としては、例えば、着席者がパソコンや通信端末等の携帯型の電子機器(電気機器)等の電源コード(配線コード)に設けられた図示しない電源プラグ(接続端子)を差し込むためのAC100Vのコンセント(プラグ受け)を挙げることができる。この場合、配線差込口28は、例えば基部フレーム20の内面側に沿って床面上まで延びた配線29を介して所定の電源設備に接続されている。勿論、配線差込口28は、電源用のコンセント以外であってもよく、例えば、LAN(Local Area Network)用やUSB(Universal Serial Bus)用の配線プラグ(接続端子)を差し込むための端子口等であってもよく、さらには、前記コンセントや前記接続端子を複数並設した構成であってもよい。
【0025】
背凭れ部14は、図1中の後席の椅子10に示すように、左右の基部フレーム20、20の内面後方にそれぞれ設けられた平面視L字状の支持ブラケット30、30の裏面に対し、図示しない取付ねじによって固定された木板等からなる背板32と、背板32の前面32aに張られた背張り(背クッション)34とを備える。図2及び図3に示すように、背張り34は、背板32の前面32aの周縁部を除いた広範囲に設けられており、つまり背凭れ部14では、図2に示す正面視で背張り34の周囲を背板32の前面32aが縁取るように露出している。なお、背板32の上面中央には、各椅子10の席番等を表示する表示部(表示プレート)35が設けられている。
【0026】
勿論、背凭れ部14の構成は、背板32の前面32a全体に背張り34を設けた構成や、背板32の周囲を背張り34で包み込んだ構成等であってもよく、さらには、背板32及び背張り34からなる構成以外、例えば、パイプフレーム等の周囲を張り材で覆った構成等であってもよい。
【0027】
図2及び図3に示すように、左右に並ぶ2脚の椅子10の背板32同士、つまり、左席10Lと中席10Mの背板32同士及び中席10Mと右席10Rの背板32同士は、互いに対向(隣接)する側面同士が当接又は近接して設けられており、ほとんど隙間なく略一体的に並んでいる。これにより、左右に並ぶ2脚の椅子10間の肘当て部16の後方は、各椅子10の背板32によってほとんど隙間なく閉塞されている。一方、左右両端の椅子10(左席10L、右席10R)の外側の肘当て部16の後方は、左右方向で一部(半分)が該椅子10の背板32によって閉じられている。
【0028】
従って、図1〜図3から諒解されるように、本実施形態の場合、配線差込口28は、肘当て部16の上面後方側に設置されると共に、背凭れ部14の前面、つまり背張り34の前面34aよりも後方位置で該背張り34の側面34bの側方に配置されると共に、背凭れ部14の後面、つまり背板32の後面よりも前方位置に配置されている。この際、配線差込口28は、背板32の前面32aの前方となる位置にあるため、左右に並ぶ2脚の椅子10間の肘当て部16に設けられた配線差込口28では、その後方が各背板32によって後席側から完全に隠され、左右両端の椅子10の外側の肘当て部16に設けられた配線差込口28では、その後方が背板32によって後席側から一部(半分)隠されている。
【0029】
以上のように、本実施形態に係る椅子10によれば、肘当て部16の上面であり、且つ背凭れ部14の前面である背張り34の前面34aよりも後方となる位置に、配線差込口28を設けている。これにより、椅子10への着席者や周囲の第三者の手足が触れにくい位置に配線差込口28が設置されるため、該配線差込口28に接続された配線プラグ(接続端子)が着席者や第三者の邪魔になることを有効に回避することができる。しかも、配線差込口28は、肘当て部16の上面に設けられるため、視認性や操作性に優れ、配線プラグの抜き差しも容易となる。
【0030】
この場合、配線差込口28は、背張り34の前面34aよりも後方であり、且つ背板32の前面32aの前方となる位置に設けられると共に、当該椅子10の背面視で該配線差込口28の一部(例えば、右席10R用の配線差込口28)又は全部(例えば、左席10L用、中席10M用の配線差込口28)が背板32によって隠される。従って、図1に示すように、椅子10が前後方向に複数列が配置されている場合に、前席側の配線差込口28を後方(後席側)から隠すことができ、後席の着席者が前席用の配線差込口28を使用することを防止でき、しかも、後席の着席者が誤って前席用の配線差込口28に接続された配線プラグに触れたり不用意に抜いてしまうことを未然に防ぐことができる。
【0031】
特に、図2及び図3に示す左席10Lと中席10M及び中席10Mと右席10Rのように、左右に隣接する椅子10の背板32同士では、互いに対向する側面同士が当接又は近接して設けられるため、その間の肘当て部16に設置された配線差込口28は、左右の椅子10の背張り34同士の対向する側面34b間であって、後方が左右の椅子10の背板32によって閉塞された位置(空間)に配置される。このため、配線差込口28に接続された配線プラグが着席者や第三者の邪魔になること、及び、後席の着席者が誤って前席用の配線差込口28を使用すること等を一層確実に防止することができる。
【0032】
また、椅子10では、配線差込口28を設けた肘当て部16にテーブル24を備えており、換言すれば、テーブル24付き肘当て部16の上面後方側に配線差込口28を設けている。このため、当該椅子10の着席者は、例えば右側の肘当て部16に設けたテーブル24でパソコン等の電子機器を使用する際、その肘当て部16の上面後方側に設けられた配線差込口28に該電子機器の電源プラグ等を差し込むことができ、利便性が高く、しかも電源プラグ等と電子機器との間を接続する配線コードを該肘当て部16に沿って配置することができるため、該配線コードが着席者や第三者の邪魔になることもない。
【0033】
しかも、配線差込口28が肘当て部16の後方側に配置されているため、該配線差込口28を外部の電源設備等に接続するための配線29を、図1に示すように、肘当て部16の下方(肘箱内)に設けられるテーブル24の収納部等の後方側を通すことができ、配線29の取り回しが容易であり、組み立て性やメンテナンス性が向上する。一方、上記従来技術のように、仮に、配線差込口28を肘当て部16の先端部或いはその側部に設けた場合には、肘箱内でテーブル24の収納部等を避けて配線29を取り回す必要があり、組み立て性やメンテナンス性が低下することになる。
【0034】
なお、本発明は、上記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で自由に変更できることは勿論である。
【0035】
例えば、上記実施形態では、リクライニング機能を持たない背凭れ部14を備えた椅子10を例示したが、配線差込口28は、リクライニング機能を持った椅子の肘当て部に設けても勿論よい。この場合には、少なくとも背凭れ部のリクライニング範囲の一部(例えば、背凭れ部を最も起こした状態や、通常の着席状態で使用される背凭れ部のリクライニング範囲)又は全部において、背凭れ部の前面よりも後方となる位置に配線差込口28を設けた構成とするとよい。
【符号の説明】
【0036】
10 椅子
12 座部
14 背凭れ部
16 肘当て部
24 テーブル
28 配線差込口
32 背板
34 背張り

【特許請求の範囲】
【請求項1】
背凭れ部と肘当て部とを備えた椅子であって、
前記肘当て部の上面であり、且つ前記背凭れ部の前面よりも後方となる位置に、配線差込口を設けたことを特徴とする椅子。
【請求項2】
請求項1記載の椅子において、
前記背凭れ部は、背板と、該背板の前面に設けられた背張りとを有し、
前記配線差込口は、前記背張りの前面よりも後方であり、且つ前記背板の前方となる位置に設けられると共に、当該椅子の背面視で該配線差込口の少なくとも一部が前記背板によって隠されることを特徴とする椅子。
【請求項3】
請求項1又は2記載の椅子において、
前記肘当て部には、テーブルが備えられることを特徴とする椅子。
【請求項4】
請求項1又は2記載の椅子において、
当該椅子は、左右方向に複数並列されると共に、前記肘当て部が左右に隣接する椅子同士の間に設けられており、
前記左右に隣接する椅子の前記背凭れ部に設けられた背板同士は、互いの側面が当接又は近接して配置され、
前記配線差込口は、前記隣接する椅子の背板の前面に設けられた背張り同士の互いに対向する側面間であり、且つ後方が前記隣接する椅子の背板によって閉塞された位置に配置されることを特徴とする椅子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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