説明

植え付け機のための植え付け機器駆動

【課題】運転者が植え付け設定機構を改変して、苗間隔の選択の可能性を高めることができる植え付け機器駆動を備える植え付け機を提供すること。
【解決手段】植え付け機械のための植え付け機器駆動が設けられ、苗間隔制御機構が、機械後部など、変速機の外にある。1つの機構は、チェーンおよびスプロケットの苗間隔制御機構を駆動するために、変速機からの出力軸22を使用する。別の実施形態は、機械の走行速度に基づいて制御される駆動モータを使用する。電動モータまたは油圧モータのいずれかが使用されてよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植え付け機に関し、より詳細には、植え付け機、特に稲移植機(rice transplanter)の植え付け機器駆動に関する。
【背景技術】
【0002】
典型的な稲移植機の駆動系(drive train)が、図1に概略的に示される。移植機10は、14における変速機に駆動可能に結合される原動機12を含む。変速機は、前車軸16に接続された前輪18を有する前車軸(front axle)16を駆動し、かつ2本の後方に向けられた出力軸20および22を含む。出力軸20は、後輪28を駆動する後車軸(rear axle)26における差動装置(differential)24に接続される。変速機の出力軸22は、横軸(cross shaft)32に結合される直角の駆動部(drive)を含有する植え付け機器駆動歯車箱(gearbox)30を駆動する。横軸32は、機械の後部における植え付け機器34に動力を供給する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
再び変速機14に留意すると、変速機は、歯車箱42に結合される静油圧機器(hydrostatic unit)40を含み、歯車箱42の中では、第1、第2、中立および後進の歯車が設けられ、運転者によって選択されてよい。歯車箱42の1つの出力44が、前車軸および後車軸を駆動する。第2の出力46が、植え付け設定(planting setting)歯車箱48を駆動する。図示されない制御レバー(controller lever)が、植え付け機器34が駆動される速度を運転者が調節することを可能にし、それにより苗間隔(plant spacing)が制御される。変速機内に歯車箱48を含むことが、変速機の複雑さおよびコストを追加する。さらに、機械の運転者が、歯車箱48内に設けられている苗間隔と異なる苗間隔を生み出すために機械を改変する機能(ability)は存在しない。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本明細書で説明される植え付け機器駆動は、苗間隔制御を変速機から取り除き、苗間隔制御機構を横軸32に接続される機械後部に設ける。1つの機構は、チェーンおよびスプロケットの苗間隔設定機構を駆動するために、変速機からの出力軸22を使用する。別の実施形態は、機械の走行速度に基づいて制御される、軸32上の駆動モータ(drive motor)を使用する。
【図面の簡単な説明】
【0005】
【図1】従来技術の現在の製品である稲移植機の駆動系の概略図である。
【図2】稲移植機のための変速機歯車箱の斜視図である。
【図3】図2の歯車箱から植え付け機器駆動を操作するための電気回路を示す図である。
【図4】チェーンおよびスプロケットの苗間隔設定機構を示す平面図である。
【図5】代替の植え付け機器駆動の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0006】
図2は、第1および第2の前進駆動歯車を選択するために、ならびに中立歯車および後進歯車を選択するために使用される変速機歯車箱102を示す。歯車箱102は、静油圧機器、他など、油圧変速機出力によって駆動される入力軸104を含む。出力軸106は、移植機の前車軸を駆動するために使用される。2本の後部出力軸が設けられ、出力軸108が、移植機の後車軸に接続され、後車軸を駆動する一方で、出力軸110が、植え付け機器を駆動する。
【0007】
軸110は、歯車箱102が、第1の歯車、第2の歯車、または中立の位置にあるときにのみ、駆動される。軸110は、歯車箱102が後進の位置にあるときは、駆動されない。歯車箱102は、図3の電気回路120に示されるように、出力軸110を駆動するように、または駆動しないように制御される電気クラッチ112を含む。回路120は、運転者スイッチ122を含み、運転者スイッチを介して、運転者が、植え付け機器の駆動を制御する。植え付け位置において、クラッチ112は、後進スイッチ124が開かれない限り、軸を駆動するためにエネルギーを与えられる。スイッチ124は、歯車箱102が後進歯車の位置にあるときに開かれる。後進スイッチ124を開くことによって、移植機が後進位置にある間の植え付け機器の動作が阻止される。運転者スイッチ122がオフ位置(off position)にあるとき、スイッチ122が開かれ、クラッチ112はエネルギーを与えられず、それにより、軸110が駆動されること、および植え付け機器が動作することが阻止される。クラッチ112が歯車箱102内にあり、歯車箱の入力軸104を植え付け機器駆動の出力軸110と結合させるように説明されるが、クラッチが、植え付け機器の動作を可能にするかまたは阻止するために、歯車箱102と植え付け機器との間の植え付け機器駆動における任意の場所に配置されてよいことが理解されよう。
【0008】
稲移植機は、典型的に、植え付け機器による使用のための苗マット(seedling mat)を保持する苗床(seedling bed)を、機械後部に有する。苗床は、植え付け機器の爪(needle)の回転毎に新しい苗「木(tree)」を供給するために、左右に移動させられる。苗マットが、最初に苗床の上に載せられるとき、苗床は、その横運動距離(lateral travel)の最左端位置または最右端位置のいずれかに位置決めされることが望まれる。このことが、植え付けが、苗マットの中間のいずれかの位置からではなく、苗マットの隅部から始まることを可能にする。苗床を最左端または最右端の位置まで動かすことを簡単にするために、運転者スイッチ122は、「割り出し(Indexing)」位置と呼ばれる第3の位置を含む。この位置にあるとき、回路は閉じられ、クラッチ122にエネルギーを与えて軸110を回転させ、植え付け機器を動作させる。苗床が、最左端または最右端の位置に到達すると、接点スイッチ126または128の一方が開き、それにより、クラッチ122にエネルギーを与えなくなり、軸110の回転および植え付け機器の動作を止める。
【0009】
歯車箱102は、苗の間隔を変えるために、出力軸108に対して出力軸110の速度を可変に選択するための歯車を持たない。苗間隔の調節は、機械後部の苗間隔制御機構130によって遂行される。機構130は、出力軸110を植え付け機器駆動の横軸132に接続する。横軸132は、機械後部で横方向に区切られた植え付け機器を駆動するために、機械の端から端まで横方向に延びる。苗間隔制御機構130は、歯車箱102の出力軸110に結合される入力軸136を有する、直角歯車箱(right angle gear box)134を介して駆動される。歯車箱134の出力軸138は、様々な寸法の5つのスプロケット142(a〜e)を有するスプロケットセット(sprocket set)140を駆動する。横軸132は、同様に様々な寸法のスプロケット146(a〜e)を有する第2のスプロケットセット144によって駆動される。チェーン150が、スプロケット142(a〜e)のうちの1つおよびスプロケット146(a〜e)のうちの1つの周りに巻き付けられる。チェーン150が巻き付けられるスプロケットの寸法が、軸138に対する横軸の速度比を決定する。軸138は、移植機を推進する出力軸108に対して一定の比率で駆動される。チェーン150を、異なるスプロケット142と146との対に置き換えることで、出力軸138に対する横軸の速度比が変化する。このことで、今度は、植え付け機器によって植え付けられる苗の間隔が変化する。軸152および154が、チェーン150が同様に巻き付けられる、図示されない遊動スプロケット(idler sprocket)を支持する。
【0010】
移植機の運転者が、2つのスプロケットセット140および144で提供される苗間隔と異なる苗間隔を望むならば、これらのスプロケットセットは、異なる苗間隔をもたらす他のスプロケットセットに置き換えられてよい。したがって、苗間隔制御機構130は、可能性のある苗間隔において、変速機歯車箱の内部に苗間隔制御機構がある機械によってもたらされるよりも大きな柔軟性を提供する。図4に示されるチェーンとスプロケットとのセットに代えて他の駆動機構が使用されてよく、例えば、無段変速機(infinitely variable transmission)が使用されてよい。
【0011】
油圧駆動モータを使用する別の代替配列が、図5に示される。変速機200は、歯車箱202が、出力軸207を介して前駆動車軸204および後駆動車軸206を駆動するだけであること以外は、上の歯車箱102と同様の歯車箱202を有する。歯車箱202は、機械に対する第1、第2および後進の歯車、ならびに中立位置を提供する。変速機200は、油圧流体圧力(hydraulic fluid pressure)を供給するために、油圧ポンプ208を含むかまたは外部の油圧ポンプを駆動する。植え付け機器を駆動するための、変速機からの出力軸は存在しない。そうではなく、油圧ポンプを出入りする油圧流体管路(hydraulic fluid line)210および212が、比例弁(proportional valve)214および油圧モータ216に経路設定される。モータ216が、今度は、横軸232上の歯車箱218への駆動入力となる。横軸232は、植え付け機器234に駆動可能に結合される。
【0012】
油圧モータ216に対する制御システムは、制御器236と、機械の走行速度を制御器に供給するための、駆動軸上の速度センサ238とを含む。速度センサ238は、機械の実際の車輪速度を検出可能な、変速機の下流の任意の場所にあってよい。あるいは、レーダ式対地速度センサ(radar ground speed sensor)が使用されてよく、または全地球測位システムの信号もしくは他の位置信号に基づく速度計算が使用されてよい。制御器236は、所望の苗間隔のために、所望の速度で歯車箱218を駆動するように、比例弁214を作動させる。運転者入力装置240は、運転者が制御器に、所望の苗間隔を入力することを可能にする。制御器236が、比例弁214を介して速度調節を行うことができるように、歯車箱218または横軸232における帰還エンコーダ242が、横軸232の実際の速度の制御器への帰還をもたらす。機械的なチェーンおよびスプロケットの苗間隔制御機構と同様に、油圧モータは、運転者に、変速機に基づく苗間隔制御機構よりも多くの選択肢を提供することができる。
【0013】
制御器236が、クラッチ112に代わって回路内に置かれることで、制御器236は、図3の電気回路から入力を受けることができる。回路が開かれるとき、制御器236は、植え付け機器234の動作を停止させるかまたは阻止する。このようにして、植え付け機器234の動作は、移植機が後進にあるときに阻止され、苗床の位置が最左端または最右端に達するときに、「割り出し」モードが、植え付け機器234および苗床を停止させることを可能にする。
【0014】
さらに別の代替の植え付け機器駆動機構は、上で示され説明された油圧モータ216に代わって、電動モータを使用する。当然ながら、油圧動力に代わって、電力の供給が必要となる。
【0015】
植え付け機器駆動が、乗用移植機(ride-on transplanter)に通常設けられるような、前車軸および後車軸の両方を有する植え付け機に照らして説明されてきたが、植え付け機器駆動は、歩行型の機械(walk-behind machine)にも同様に使用されてよい。また、植え付け機器駆動は、任意の植え付け機械(planting machine)に使用されてよく、または駆動変速機を有する機械の走行速度に基づく駆動を必要とする計量分配機(dispenser)を有する他の計量分配機械(dispensing machine)に使用されてよい。
【0016】
好ましい実施形態を説明したが、添付の特許請求の範囲において定義されるような、本発明の範囲を逸脱することなく、種々の改変形態が作成されうることが、明らかとなるであろう。
【符号の説明】
【0017】
10 移植機
12 原動機
14 変速機
16 前車軸
18 前輪
20 出力軸
22 出力軸
24 差動装置
26 後車軸
28 後輪
30 植え付け機器駆動歯車箱
32 横軸
34 植え付け機器
40 静油圧機器
42 歯車箱
44 第1の出力
46 第2の出力
48 植え付け設定歯車箱
102 変速機歯車箱
104 入力軸
106 出力軸
108 出力軸
110 出力軸
112 電気クラッチ
120 電気回路
122 スイッチ
124 スイッチ
126 スイッチ
128 スイッチ
130 苗間隔制御機構
132 横軸
134 直角歯車箱
136 入力軸
138 出力軸
140 第1のスプロケットセット
142a、142b、142c、142d、142e スプロケット
144 第2のスプロケットセット
146a、146b、146c、146d、146e スプロケット
150 チェーン
152 軸
154 軸
200 変速機
202 歯車箱
204 前車軸
206 後車軸
207 出力軸
208 油圧ポンプ
210 流体管路
212 流体管路
214 比例弁
216 油圧モータ
218 歯車箱
232 横軸
234 植え付け機器
236 制御器
238 速度センサ
240 運転者入力装置
242 帰還エンコーダ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機械が支持される車輪を有する少なくとも1つの車軸と、
前記車輪を駆動して植え付け機を推進するための、前記少なくとも1つの車軸に動作可能に結合された変速機と、
少なくとも1つの植え付け機器と、
前記変速機からの植え付け機器駆動出力軸と、
苗間隔を変えるために、前記機械の走行速度に対して前記植え付け機器の速度を変えるように動作可能な、前記変速機の外でかつ前記変速機と前記植え付け機器との間にある、苗間隔制御機構とを備える、植え付け機械。
【請求項2】
前記苗間隔制御機構が、チェーンと、前記チェーンが巻き付けられうる複数のスプロケット対とを含み、スプロケット対のそれぞれが、異なる、前記機械の走行速度に対する植え付け機器の速度の比を生み出す、請求項1に記載の植え付け機械。
【請求項3】
前記機械に対して横方向に延びる横軸をさらに備え、前記スプロケット対のうちの1つのスプロケットが前記横軸に接続される、請求項2に記載の植え付け機械。
【請求項4】
前記植え付け機器を回転駆動力に接続する、電気制御されるクラッチをさらに備え、電気回路内の前記クラッチが、前記回路が開いて前記クラッチがエネルギーを与えられないオフ位置と、前記回路が閉じて前記植え付け機器が駆動される植え付け位置と、前記変速機が後進歯車の位置にあるときに前記回路を開かせるための後進スイッチと、を有する運転者スイッチを有する、請求項1に記載の植え付け機械。
【請求項5】
前記回路の運転者スイッチが割り出し位置をさらに有し、前記回路が閉じられ、植え付け機械の苗床が最左端または最右端の移動位置にあるときに、左右の接点スイッチが前記回路を開き、それにより、前記接点スイッチのうちの1つが開かれるときに植え付け機器の動作が停止する、請求項4に記載の植え付け機械。
【請求項6】
前記クラッチが前記変速機内に収容される、請求項4に記載の植え付け機械。
【請求項7】
機械が支持される車輪を有する少なくとも1つの車軸と、
前記車輪を駆動して植え付け機械を推進するための、前記少なくとも1つの車軸に動作可能に結合された変速機と、
少なくとも1つの植え付け機器と、
前記植え付け機器を駆動するためのモータと、
前記モータを動作させるための動力源とを備える、植え付け機械。
【請求項8】
前記モータが油圧モータであり、前記モータを動作させるための前記動力源が、前記変速機で駆動される油圧ポンプである、請求項7に記載の植え付け機械。
【請求項9】
前記油圧ポンプが前記変速機の筐体内にある、請求項8に記載の植え付け機械。
【請求項10】
前記油圧モータの速度を制御するために、油圧回路内に比例弁をさらに備える、請求項8に記載の植え付け機械。
【請求項11】
前記比例弁に動作可能に結合された電子制御器を含む、前記油圧モータのための制御システムと、前記機械の走行速度を感知するための速度センサと、所望の苗間隔を入力するための運転者入力装置と、実際の植え付け機器の速度を検出し、植え付け機器の速度信号を前記制御器に供給するための帰還センサとをさらに備える、請求項10に記載の植え付け機械。
【請求項12】
モータ速度を制御するために前記モータに動作可能に結合された電子制御器を含む、前記モータのための制御システムと、前記機械の走行速度を感知するための速度センサと、所望の苗間隔を入力するための運転者入力装置と、実際の植え付け機器の速度を検出し、植え付け機器の速度信号を前記制御器に供給するための帰還センサとをさらに備える、請求項7に記載の植え付け機械。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−27389(P2013−27389A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−156488(P2012−156488)
【出願日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【出願人】(591005165)ディーア・アンド・カンパニー (109)
【氏名又は名称原語表記】DEERE AND COMPANY
【Fターム(参考)】