説明

植栽器

【課題】内部に充填した土壌の表面周縁部が降雨の後に沈下し難く、土壌の表面にメッシュを敷設して使用した場合に、土壌表面とメッシュとの間に形成される空隙を可及的に小さくすることができ、風による土壌の飛散を抑制することができる植栽器、及び同植栽器の製造方法を提供する。
【解決手段】上面開放箱形の容器の底面を、その周縁に沿って所定幅を残して切除して本体上部を形成する工程と、前記容器と同形状の容器からなる本体下部上に、前記本体上部を載置接着することにより、内側壁から内側方向へ略水平に張出した張出部を有する容器本体を形成する工程とを有する製造方法により、内部に土壌を充填して植物を植栽する植栽器を製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植栽器及び植栽器の製造方法に関するものであり、特に、ビルの屋上緑化を目的として使用する植栽器及び同植栽器の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
地球温暖化現象や、都心部におけるヒートアイランド現象の発生を抑制するために、近年、ビルなどの建造物の屋上に土壌を敷設して草木を植栽する屋上緑化が盛んに行われている。
【0003】
屋上緑化においては、条例などにより、単位面積あたりに敷設する屋上緑化設備の重量に制限が定められている。そのため、屋上に敷設する土壌としては、比較的重量の軽い人工土壌が用いられている。
【0004】
この人工土壌は、重量が軽いという利点がある反面、その軽さゆえ風により飛散しやすいという問題も併せ持っていた。特に、建造物の屋上は、強風にさらされることが多く、人工土壌が風により飛散しやすい環境である。
【0005】
このように、屋上に敷設した人工土壌が風により飛散してしまうと、植栽した草木を良好に生育させることができなくなるおそれがあるだけでなく、飛散した人工土壌が地上に降り注いで、周辺環境に悪影響を及ぼすおそれもあった。
【0006】
かかる問題を解決することを目的として、図7(a)に示すように、プランタ101に詰め込んだ人工土壌102の表面に、人工土壌102の飛散を防止する飛散防止材として、防錆メッシュ103を張設した屋上緑化用の植栽器100が考案されている。(たとえば、特許文献1参照。)
【特許文献1】特開2001−231352号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、上記従来の植栽器100では、プランタ101に詰め込んだ人工土壌102表面中央部からの人工土壌102の飛散は防止可能であるが、人工土壌102表面周縁部からの人工土壌102の飛散を防止することは困難であった。
【0008】
すなわち、従来の植栽器100では、人工土壌102をプランタ101の上面一杯まで詰め込んで、その表面に防錆メッシュ103を張設した後に、図7(b)に示すように、人工土壌102に雨水104が降り注いだ場合、内部に多くの空気を含むことで軽量化を図っている人工土壌102では、内部に雨水104が浸み込む一方、内部の空気が人工土壌102の表面側へ移動した後、大気中に放出される。
【0009】
このとき、人工土壌102の表面は、内部を上方へ移動する空気の力と、そのときに作用する表面張力とによりドーム状に隆起する。
【0010】
その後、人工土壌102は、表面側から徐々に乾燥してゆき粘性を失うと、自重によって沈下する。このとき、人工土壌102の表面は、ドーム状の形状を保ったまま沈下するため、図7(c)に示すように、人工土壌102の表面周縁部では、人工土壌102の表面と防錆メッシュ103との間に比較的大きな隙間105が形成されてしまう。
【0011】
また、この隙間105は、人工土壌102を詰め込んだ状態でプランタ101を運搬する過程においても生じることがある。
【0012】
このように隙間105が形成されると、図7(d)に示すように、風が吹いた際、この隙間105内に風が吹き込み人工土壌102の飛散が発生する。
【0013】
さらに、人工土壌102の表面と防錆メッシュ103との間に比較的大きな隙間105が形成されると、植栽した植物が、たとえば、イワダレソウ科の植物のように、枝分かれした茎を地表に張り巡らし、根を伸ばすのに好適な所を見つけて根を張ることにより群落を形成するような植物であった場合には、上記隙間105が形成された領域では根を張ることができずに、群落を形成することができず、結果として、人工土壌102の表面中央領域だけが緑化され、その周縁部を良好に緑化することができないおそれがあった。
【課題を解決するための手段】
【0014】
そこで、請求項1に係る本発明では、上面開放箱形の容器本体内側壁から内側方向へ張出し、収容する土壌を下方から支持する張出部を有する植栽器を提供することとした。
【0015】
また、請求項2に係る本発明では、請求項1に記載の植栽器において、前記容器本体内に充填された土壌表面における周縁部を所定幅で全周にわたり被覆する内側メッシュと、前記内側メッシュよりも網目が大きく、前記内側メッシュを含めて、前記容器本体上面開口を被覆するように配設した外側メッシュとを有することを特徴とする。
【0016】
また、請求項3に係る本発明では、請求項2に記載の植栽器において、前記外側メッシュにより、前記内側メッシュを含めて、前記容器本体の外周全面が包装されていることを特徴とする。
【0017】
また、請求項4に係る本発明では、請求項2又は請求項3に記載の植栽器において、前記外側メッシュは、種苗を植付けるためのスリットを有し、前記スリットの縁に樹脂加工が施されていることを特徴とする。
【0018】
また、請求項5に係る本発明では、請求項2〜4のいずれか1項に記載の植栽器において、前記外側メッシュ及び内側メッシュを貫通して取付けられ、前記容器本体同士を連結する連結具を備え、当該連結具により、隣接する容器本体同士を各容器本体の外側壁上部側で連結可能としたことを特徴とする。
【0019】
また、請求項6に係る本発明では、上面開放箱形の容器の底面を、その周縁から、少なくとも所定幅を残して切除して本体上部を形成する工程と、前記容器と同形状の容器からなる本体下部上に、前記本体上部を載置することにより、内側壁から内側方向へ略水平に張出した張出部を有する容器本体を形成する工程と、前記容器本体内に土壌を充填する工程と、所定の熱収縮率を有し、前記容器本体の上端縁から内側へ折曲して前記土壌の周縁部を被覆可能な寸法に形成した内側メッシュにより前記容器本体の外側壁を筒状に包む工程と、前記内側メッシュよりも熱収縮率が高く網目が大きい外側メッシュにより、前記内側メッシュを含めて、前記容器本体を包装する工程と、前記外側メッシュ及び前記内側メッシュを加熱して熱収縮させることにより、前記外側メッシュを前記容器本体に密着させる工程と、前記外側メッシュに種苗を植付けるためのスリットを形成する工程とを有する植栽器の製造方法を提供することとした。
【0020】
また、請求項7に係る本発明では、上面開放箱形の容器の底面を、その周縁から、少なくとも所定幅を残して切除して本体上部を形成する工程と、前記容器と同形状の容器からなる本体下部上に、前記本体上部を載置接着することにより、内側壁から内側方向へ略水平に張出した張出部を有する植栽器の容器本体を形成する工程とを有する植栽器の製造方法を提供することとした。
【0021】
また、請求項8に係る本発明では、上面開放箱形の容器本体内に土壌を充填する工程と、所定の熱収縮率を有し、前記容器本体の上端縁から内側へ折曲して前記土壌の周縁部を被覆可能な寸法に形成した内側メッシュにより前記容器本体の外側壁を筒状に包む工程と、前記内側メッシュよりも熱収縮率が高く網目が大きい外側メッシュにより、前記内側メッシュを含めて、前記容器本体を包装する工程と、前記外側メッシュ及び前記内側メッシュを加熱して熱収縮させることにより、前記外側メッシュを前記容器本体に密着させる工程とを有する植栽器の製造方法を提供することとした。
【0022】
また、請求項9に係る本発明では、請求項6又は請求項8に記載の植栽器の製造方法において、前記外側メッシュに形成する種苗を植付けるためのスリットと略同形状の樹脂フィルムを形成する工程と、前記樹脂フィルムを前記外側メッシュに貼着する工程と、前記樹脂フィルムの上から前記外側メッシュに切り込みを入れることにより、周縁に樹脂加工が施された前記スリットを形成する工程とを有することを特徴とする。
【0023】
また、請求項10に係る本発明では、請求項6又は請求項8に記載の植栽器の製造方法において、前記外側メッシュに形成する種苗を植付けるためのスリットの形成予定位置に、前記スリットと略同形状に樹脂材を貼着する工程と、前記樹脂材の上から前記外側メッシュに切り込みを入れることにより、周縁に樹脂加工が施された前記スリットを形成する工程とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、内部に充填した土壌の表面周縁部が降雨の後に沈下し難くいので、土壌の表面にメッシュを敷設して使用した場合に、土壌表面とメッシュとの間に形成される空隙を可及的に小さくすることができ、風による土壌の飛散を抑制することができる植栽器を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明に係る植栽器の一実施形態について、図面を参照して具体的に説明する。
【0026】
本実施形態の植栽器は、主にビルなどの建造物の屋上に複数個密接して敷設し、植物を植栽することによって、建造物の屋上緑化を行うために用いるものであるが、その用途は、屋上緑化に限定されるものではなく、たとえば、マンションのベランダや、海岸付近の住宅の庭など、強風にさらされやすく、土壌が飛散しやすい任意の場所を緑化するために用いることができるものである。
【0027】
図1に示すように、この植栽器1は、本体上部2aと本体下部2bとからなる容器本体2と、容器本体2の底面に敷設した防根シート3と、この防根シート3上に敷設した排水性と保水性とを備えた排水保水材4と、この排水保水材4上に敷設して容器本体2内に充填した人工土壌(以下、単に、「土壌5」という。)と、この容器本体2内に充填した土壌5表面における周縁部を所定幅で全周にわたり被覆する内側メッシュ6と、この内側メッシュ6よりも網目が大きく、内側メッシュ6を含めて、容器本体2上面開口を被覆するように配設した外側メッシュ7とを備えている。なお、図1中の符号8は、当該植栽器1に植栽した植物であり、符号9は、当該植栽器1に種苗を植付けるために外側メッシュ7に形成したスリットであり、符号10は、スリット9の周縁部に設けた樹脂材である。
【0028】
特に、この植栽器1が備える容器本体2は、図2に示すように、上面を開放した箱形状をしており、その内側壁略中段部分から内側方向へ張出し、収容した土壌5の表面側周縁部を下方から支持する張出部11を備えている。なお、図2中の符号12は、本体上部2aの底面、及び、張出部11に複数形成された水抜き孔である。
【0029】
本実施形態では、この容器本体2をポリプロピレンなどの対候性に優れた樹脂により形成しており、容器本体2の平面視における寸法を60cm×30cmとし、深さを略10cmとしている。なお、容器本体2の寸法は適宜変更してもよい。
【0030】
このように、容器本体2は、内側壁中段に、内側へ張出したベランダ状の張出部11を平面視環状に形成しているため、土壌5へ雨水が降り注いで土壌5の表面がドーム状に隆起した後、その表面が沈下する際、土壌5の周縁部分(容器本体2の内側壁近傍)においては、張出部11の上側にある土壌5の重量が、張出部11の下方にある土壌5にかかることがない。
【0031】
これにより、土壌5の表面が沈下するときに、土壌5表面の周縁部は、土壌5表面の中央部ほど沈下しなくなり、その結果、土壌5表面の周縁部において、外側メッシュ7及び内側メッシュ6と土壌5表面との間に隙間が出来難くなり、この部分からの土壌5の飛散が抑制される。
【0032】
また、この容器本体2底面に敷設する防根シート3は、排水性を有すると共に、植物8の根が当該防根シート3を破って貫通することを防止可能な防根特性を備えたフィルムにより構成している。
【0033】
この防根シート3上に敷設する排水保水材4は、軽石により構成しており、本実施形態では、1〜1.5cmの深さ(断面視における厚さ)で敷設している。軽石は、多孔質なため軽量且つ保水性及び排水性が高く、屋上緑化に適している。
【0034】
このように、容器本体2の底面側に軽石を敷設しておくことによって、水やりの回数を低減できると共に、根腐れの発生も防止することができる。なお、本実施形態では、排水保水材4として、軽石を用いたが、排水保水材4はこれに限定するものではなく、軽量で且つ保水性及び排水性が高い部材であれば、他の任意の部材を用いることができ、例えば、コーラル(石灰化した珊瑚)などを用いてもよい。
【0035】
また、この排水保水材4上に敷設する土壌5は、有機培養土に繊維などを混合した人工土により構成している。この土壌5を容器本体2に充填する場合には、容器本体2の上面一杯、若しくは、容器本体2の上面から土壌5が若干突出するまで土壌5を入れる。なお、本実施形態では、土壌5の深さ(断面視における厚さ)を、8cm〜10cmとなるようにしている。
【0036】
また、この植栽器1が備える外側メッシュ7は、ポリエステルにより形成した芯線の周りに、軟質性(発砲性など)の塩化ビニルを被覆して形成した糸を編んでネット状にしたものであり、熱溶着性を有し、加熱することによって所定の熱収縮率で収縮するように構成している。
【0037】
本実施形態では、この弾力性を有する軟質性の外側メッシュ7により、内側メッシュ6を含めて、容器本体2の外周全面を包装することによって、当該植栽器1を屋上などに敷設した際に、外側メッシュ7の容器本体2底面を被覆している部分が、滑り止めとして機能し、植栽器1の位置ずれを防止することができる。
【0038】
また、植栽器1を複数個密接させて屋上などに敷設する場合には、外側メッシュ7の容器本体2外側壁を被覆している部分が、隣接する植栽器1の側面と当接して、隣接する植栽器1同士の位置ずれを防止する。
【0039】
また、本実施形態では、外側メッシュ7の熱収縮率を内側メッシュ6の熱収縮率よりも大きく設計しており、外側メッシュ7の網目の大きさを、植物8の茎や根が通る大きさであって、内部の土壌5が飛散し難い大きさ(たとえば、5mm角)としている。
【0040】
さらに、この外側メッシュ7は、容器本体2の上面開口部(土壌5表面)を被覆する領域に、種苗を植付けるための十文字形状のスリット9を複数備えている。このスリット9の内周縁には、スリット9の破れと捲れ上がりを防止するために、樹脂材10からなる樹脂加工を施している。なお、ここでは、スリット9の形状を十文字形状としているが、これは一例にすぎず、種苗を植付け可能な大きさ形状であれば、任意の大きさ形状に変更することができる。
【0041】
そして、この植栽器1を使用する場合には、各スリットから土壌5に植物8の種や苗を植付けて植栽する。本実施形態では、植栽する植物として、イワダレソウ科の植物8であるヒメイワダレソウの苗を植付けるようにしている。
【0042】
このヒメイワダレソウは、多年生の植物で繊密性が高く、さらに、踏みつけに強く、栄養繁殖のみで増やすことが出来き、屋上緑化に適した植物8である。
【0043】
そして、この植栽器1に植付けられたヒメイワダレソウ(植物8)は、枝分かれをしながら外側メッシュ7の表面に沿って茎を伸ばし、土壌5表面の水分を含んだ所から、外側メッシュ7の網目を通して土壌5内に根を張り、徐々に群落を広げながら成長する。
【0044】
その後、植物8が土壌5の表面を覆うほどに成長すると、植物8の葉に遮られて、風が土壌5の表面に直接当たり難くなり、しかも、植物8の根が土壌5を留める働きをするため、風による土壌5の飛散がより一層抑制される。
【0045】
さらに、この植栽器1では、上記のように、容器本体2の上部開口だけでなく、容器本体2の外周全面を外側メッシュ7で被覆包装しているため、植物8が根を張った状態において、強風が吹いた場合に、植物8が外側メッシュ7と共に根こそぎ吹き飛ばされることがない。
【0046】
また、本実施形態の植栽器1では、前述のように、土壌5の表面中央部だけでなく、土壌5の表面周縁部においても、土壌5表面と外側メッシュ7との間にほとんど隙間が生じないので、植物8が広範囲に広がる前であっても、風による土壌5の飛散が起こりにくい。
【0047】
しかも、土壌5の表面全体において、外側メッシュ7と土壌5表面との間に隙間ができにくいので、植物8が外側メッシュ7を通して、土壌5表面の任意の場所へ根を張り易い環境を作ることが出来き、土壌5の表面全体を良好に緑化することができる。
【0048】
また、この植栽器1が備える内側メッシュ6は、外側メッシュ7と同様に、ポリエステルにより形成した芯線の周りに、軟質性(発砲性など)の塩化ビニルを被覆して形成した糸を編んでネット状にしたものである。
【0049】
特に、この内側メッシュ6は、網目の大きさを、外側メッシュ7の網目よりも小さく(たとえば、2mm角に)設計すると共に、前述のように、容器本体2内に充填した土壌5表面における周縁部を所定幅で全周にわたり被覆するように配設している(図1参照)。
【0050】
このように内側メッシュ6を配設することによって、短時間に多くの雨が降った際、植栽器1の底面側からだけでは排水できなくなった雨水が容器本体2の上端周縁から外部へ排水されることとなるが、このとき、比較的網目の小さい内側メッシュ6がフィルタとして機能して、容器本体2上端縁からの土壌5の流出を抑制することができる。
【0051】
また、この内側メッシュ6は、外側メッシュ7と同様に熱溶着性を有し、加熱することによって熱収縮するように構成しているが、熱収縮率を外側メッシュ7の熱収縮率よりも低くなるように設計している。
【0052】
このように、本実施形態では、外側メッシュ7の熱収縮率を比較的大きく、内側メッシュ6の熱収縮率を比較的小さく設計すると共に、上記のように内側メッシュ6を配設することによって、外側メッシュ7を張設したときに、外側メッシュ7の土壌5表面を被覆している領域に撓みが発生することを防止できるよう構成している。この撓み防止のしくみについては、後述する植栽器1の製造方法の説明において、詳述する。
【0053】
次に、図3及び図4を参照して、本実施形態に係る植栽器1の製造方法について、具体的に説明する。
【0054】
この植栽器1を製造する際には、まず、図3(a)に示すように、上面が開放された箱形の容器2cを2個用意する。特に、本実施形態では、これら同形状の2個の容器として、使用済みの育苗箱を用いている。容器2cとして使用する育苗箱としては、底面からの排水を可能とする複数の水抜き孔12が形成されているものが好ましいが、水抜き孔12が形成されていない場合には、少なくとも、防根シートを敷設する前に、水抜き孔12を形成してもよい。
【0055】
次に、図3(b)に示すように、2個の容器2cのうち一方の容器2cの底面を、その周縁から、少なくとも所定幅を残して切除して本体上部2aを形成する。このとき、底面を切断しない他方の容器2cが本体下部2bとなる。
【0056】
次に、図3(c)に示すように、本体下部2b上に、本体上部2aを載置する。このとき、本体下部2bの側壁上端と、本体上部2aの側壁下端とを位置合わせして、本体下部2b上に本体上部2aを載置する。こうして、内側壁から内側方向へ略水平に張出した張出部11を有する容器本体を形成する。なお、この工程において、本体下部2bと本体上部2aとを接着固定してもよいが、本実施形態は、本体下部2bの側壁上端と、本体上部2aの側壁下端の切欠部とを単純に嵌合するだけにしている。
【0057】
このように、本実施形態では、廃棄処分となる使用済みの同形状の育苗箱(容器2c)2個をリユースして、植栽器1の容器本体2を形成することができるので、資源の有効利用と産業廃棄物の減少とを促進することができる。なお、本実施形態では、同形状の2個の容器2cを用いて容器本体2を形成したが、図2に示した容器本体2を樹脂成型により一体形成してもよい。
【0058】
次に、容器本体2の底面(本体下部2bの底面)に防根シート3を敷設した後、防根シート3上に排水保水材4を所定の厚さ(深さ)で敷設し、その後、排水保水材4上に土壌5を容器本体2の上面開口から若干突出するまで投入することによって、容器本体2内に土壌5を充填する。
【0059】
次に、図3(e)に示すように、所定の熱収縮率を有し、容器本体2の上端縁から内側へ折曲して土壌5の表面周縁部を被覆可能な寸法に形成した内側メッシュ6により容器本体2の外側壁を筒状に包む。その後、内側メッシュ6が重なり合う部分を熱溶着する。
【0060】
次に、内側メッシュ6よりも熱収縮率が高く網目が大きい外側メッシュ7により、図4(f)に示すように、内側メッシュ6を含めて、容器本体2を包装する。その後、これら全体を加熱処理することによって、図4(g)に示すように、外側メッシュ7及び内側メッシュ6を熱収縮させて、外側メッシュ7を容器本体2に密着させる。
【0061】
このとき、図4(h)に示すように、容器本体2の側壁上端部近傍において、外側メッシュ7は、熱収縮して内側メッシュ6の上端部分を土壌5表面側へ押し曲げようとする。その一方で、内側メッシュ6は、上記のように、外側メッシュよりも熱収縮率が低いので、熱による変形度合いが小さく、元の形状を維持しようとして、外側メッシュ7から加えられる力の向きとは逆向きの力で、外側メッシュ7を押し戻そうとする。
【0062】
その結果、外側メッシュ7の土壌5表面を被覆している部分は、容器本体2上部開口の周縁方向に引張られることとなり、撓みの発生を防止することができる。
【0063】
本実施形態の植栽器1では、このように外側メッシュ7の土壌5表面を被覆している部分に撓みが発生することを防止することができるので、風による土壌5の飛散をより一層抑制することができるのである。
【0064】
ここで、土壌表面を被覆したメッシュに撓みが発生した場合に、土壌が飛散する仕組みについて説明する。図5は、土壌5を充填したプランター20の表面を、一枚のメッシュ70で単純に被覆しただけの植栽器を示す断面視による説明図である。
【0065】
図5(a)に示す植栽器は、土壌5を充填したプランター20の上面開口に、一枚のメッシュ70を単純に張設しただけであり、本実施形態の植栽器1のように、外側メッシュ7と内側メッシュ6との熱収縮率の違いを利用して、外側メッシュ7を容器本体2上部開口の周縁方向に引張る構成となっていないため、メッシュ70の土壌5表面を被覆する部分に撓みが発生する。
【0066】
このように、メッシュ70に撓みが発生すると、図5(b)に示すように、メッシュ70と土壌5表面との間に隙間が生じてしまい、風が吹いた際、この隙間に風が入り込み土壌5を飛散させてしまう。
【0067】
これに対し、本実施形態の植栽器1では、上記のように、外側メッシュ7の土壌5表面を被覆している部分に撓みが発生し難いため、外側メッシュ7と土壌5の表面との間に隙間ができ難く、風による土壌5の飛散をより一層抑制することができるのである。
【0068】
そして、最後に、外側メッシュ7の土壌5表面を被覆している領域に、種苗を植付けるためのスリット9を形成して、植栽器1が完成する。
【0069】
また、スリット9を形成する場合には、外側メッシュ7に形成するスリット9と略同形状に予め成形した熱溶着性を有する樹脂フィルムを形成しておく。そして、外側メッシュ7の土壌5表面を被覆している領域の所定位置に、この樹脂フィルムを熱溶着により貼着する。
【0070】
その後、樹脂フィルムの上から外側メッシュ7に切り込みを入れることにより、周縁に樹脂材10による破れ及び捲れ上がり防止の樹脂加工が施されたスリット9(図1参照)を形成する。なお、このスリット9の形成方法は一例に過ぎず、外側メッシュ7に所定形状のスリット9を形成可能な方法であれば、任意の方法によりスリット9を形成してもよい。
【0071】
たとえば、外側メッシュ7におけるスリット9の形成予定位置に、予めスリット9と略同形状となるように樹脂材10を熱溶着により貼着しておき、その後、樹脂材10の上から外側メッシュ7に切り込みを入れることにより、周縁に樹脂材10による破れ防止加工(樹脂加工)が施されたスリット9(図1参照)を形成することもできる。
【0072】
このようにして製造した植栽器1を建造物の屋上緑化設備として敷設する場合には、屋上の緑化したい領域に、植栽器1を隙間なく密接させて配置して、植栽器群を形成し、この植栽器群の周縁を任意の方法で屋上の床面に固定し、その後、隣接する植栽器1同士を連結する。
【0073】
特に、本実施形態の植栽器1は、外側メッシュ7及び内側メッシュ6を貫通して取付けられ、容器本体2同士を連結するための連結具(図示略)を備えており、この連結具により、隣接する容器本体2同士を各容器本体2の外側壁上部側で連結するように、構成している。
【0074】
この連結具としては、たとえば、金属製のC字形状の線材を用いることができる。そして、この金属製のC字形状の線材を植栽器1に取付ける場合には、まず、C字形状の線材を外側メッシュ7及び内側メッシュ6に貫通させ、その後、このC字形状の線材を内周方向へ向けて押し曲げて、2巻きコイル形状とする。なお、この2巻きコイル形状とした連結具は、植栽器1の上端部における長辺に等間隔で2箇所、短辺の略中間位置に1箇所取り付ける。
【0075】
そして、植栽器1同士を連結する際には、隣接する植栽器1に取付けられた2巻きコイル形状の連結具同士を、前述のC字形状の線材と同形状の線材で連結した後、同様に内周方向へ向けて押し曲げて、2巻きコイル形状とすることにより連結する。
【0076】
このように、本実施形態の植栽器1では、植栽器群として敷設する場合に、植栽器群の周縁部を屋上に固定すると共に、各植栽器1同士を連結する際には、隣接する容器本体2同士を各容器本体2の外側壁上部側で連結具により連結するため、強風が吹きつけても、植栽器群が周縁部からめくれ上がることがなく、仮に、植栽器群の底面と屋上の床面との間に強風が吹き込んだとしても、その強風により植栽器群が波打つことがない。
【0077】
しかも、前述のように、各植栽器1は、その外周全面を弾力性のある外側メッシュ7で被覆しているため、強風が吹いても植栽器1の底面と屋上の床面との間の摩擦力により、植栽器1が位置ずれを起こし難く、隣接する植栽器1の側面同士の接合面にも摩擦力が生じるので、植栽器1同士の位置ずれも発生し難い。
【0078】
その上、この植栽器1では、容器本体2の外周全面を外側メッシュ7で被覆包装しているため、植物8が根を張った状態において、強風が吹いても、植物8が外側メッシュ7と共に根こそぎ吹き飛ばされることがない。
【0079】
このように、本実施形態の植栽器1、及び、この植栽器1を複数個密接させて形成した植栽器群は、強風に強く、また、強風による土壌5の飛散を抑制することができ、植物8が根こそぎ吹き飛ばされることもないので、頻繁に台風が上陸する地域の建造物の屋上に設置した場合であっても、当該屋上を良好に緑化することができる。
【0080】
また、この植栽器1によれば、当該植栽器1を設置した建造物の補修工事を行う際などには、容易に一時撤去、及び再設置を行うことができる。
【0081】
上記した実施形態では、内側壁に張出部11を有する容器本体2(図2参照)に土壌5を充填し、その外側面を内側メッシュ6で包むと共に、その外周を外側メッシュ7で包装後、加熱処理して(図1参照)、植栽器1を製造したが、外側メッシュの撓みだけを解消したい場合には、図2に示した形状の容器本体2を用いる必要はなく、たとえば、上部が開放された箱型形状の一般的なプランタに土壌5を充填し、その後、図3(e)〜図4(f)、図4(g)に示した製造工程と同様の工程により、プランタの外側面を内側メッシュ6で包むと共に、その外周を外側メッシュ7で包装後、加熱処理して植栽器を製造してもよい。
【0082】
さらに、土壌5表面の凹みだけを解消したい場合には、上記実施形態のように容器本体2を内側メッシュ6と外側メッシュ7とで二重に包む必要はなく、内側壁に張出部11を有する容器本体2(図2参照)に土壌5を充填して植栽器を製造するか、若しくは、こうして製造した植栽器の容器本体2における少なくとも上部開口を被覆するように、外側メッシュ7を張設して植栽器を製造してもよい。
【0083】
また、上記実施形態では、容器本体2として、内側壁から内側方向へ略水平なベランダ状に張出し、収容する土壌5を下方から支持する張出部11を有する容器を例に挙げて説明したが、容器本体2に形成する張出部11の形状は、これに限定するものではなく、少なくとも土壌5の周縁部を下方から支持可能な構造であれば、他の形状としてもよく、容器本体2として、たとえば、図6に示すものを用いてもよい。
【0084】
図6は、植栽器1の容器本体2の変形例を示す一部断面を含む斜視図である。図6に示すように、この変形例に係る容器本体2は、図2に示した容器本体2の本体下部2bと同一形状をした容器2cからなる本体下部2b上に、この本体下部2bと同一形状の容器2cの底面を部分的に切除することによって、容器2cの底面に所定形状(ここでは、円形)の穴13を複数個(ここでは、8個)形成した本体上部2Aを載置して構成している。なお、図6中の符号12は、容器2cの底面に予め形成されている水抜き孔12である。
【0085】
このような容器本体2を形成する場合、特に、容器2cの底面に各穴13を形成する際には、少なくとも容器2c底面の周縁部を所定幅残し、各穴13を容器2cの底面に均等に分散させて設けると共に、穴13形成前の容器2cの底面積に対する穴13形成後の底面積の百分率が40〜60%となるように、穴13の大きさを調整する。
【0086】
こうして形成した容器本体2に、防根シート3、排水保水材4、土壌5を順次収容した場合、本体上部2A底面の穴13が形成されていない部分が、その上部に積載された土壌5を下方から支持することとなるので、土壌5表面の周縁部の凹みを防止できるだけでなく、下層側の土壌5が上層側の土壌5の重量により圧縮されにくく、植物8が根を張るのに良好な土壌5環境を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】本実施形態に係る植栽器の使用形態を示す一部断面を含む斜視図である。
【図2】本実施形態に係る植栽器の容器本体を示す一部断面を含む斜視図である。
【図3】本実施形態の植栽器の製造工程を示す断面視による説明図である。
【図4】本実施形態の植栽器の製造工程を示す断面視による説明図である。
【図5】メッシュが撓んでいた場合の問題を示す断面視による説明図である。
【図6】本実施形態に係る植栽器の容器本体の変形例を示す一部断面を含む斜視図である。
【図7】従来の植栽器を示す断面視による説明図である。
【符号の説明】
【0088】
1 植栽器
2 容器本体
2a、2A 本体上部
2b 本体下部
3 防根シート
4 排水保水材
5 人工土壌
6 内側メッシュ
7 外側メッシュ
8 植物
9 スリット
10 樹脂材
11 張出部
13 穴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面開放箱形の容器本体内側壁から内側方向へ張出し、収容する土壌を下方から支持する張出部を有することを特徴とする植栽器。
【請求項2】
前記容器本体内に充填された土壌表面における周縁部を所定幅で全周にわたり被覆する内側メッシュと、
前記内側メッシュよりも網目が大きく、前記内側メッシュを含めて、前記容器本体上面開口を被覆するように配設した外側メッシュと、
を有することを特徴とする請求項1に記載の植栽器。
【請求項3】
前記外側メッシュにより、前記内側メッシュを含めて、前記容器本体の外周全面が包装されていることを特徴とする請求項2に記載の植栽器。
【請求項4】
前記外側メッシュは、種苗を植付けるためのスリットを有し、前記スリットの縁に樹脂加工が施されていることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の植栽器。
【請求項5】
前記外側メッシュ及び内側メッシュを貫通して取付けられ、前記容器本体同士を連結する連結具を備え、当該連結具により、隣接する容器本体同士を各容器本体の外側壁上部側で連結可能としたことを特徴とする請求項2〜4のいずれか1項に記載の植栽器。
【請求項6】
上面開放箱形の容器の底面を、その周縁から、少なくとも所定幅を残して切除して本体上部を形成する工程と、
前記容器と同形状の容器からなる本体下部上に、前記本体上部を載置することにより、内側壁から内側方向へ略水平に張出した張出部を有する容器本体を形成する工程と、
前記容器本体内に土壌を充填する工程と、
所定の熱収縮率を有し、前記容器本体の上端縁から内側へ折曲して前記土壌の周縁部を被覆可能な寸法に形成した内側メッシュにより前記容器本体の外側壁を筒状に包む工程と、
前記内側メッシュよりも熱収縮率が高く網目が大きい外側メッシュにより、前記内側メッシュを含めて、前記容器本体を包装する工程と、
前記外側メッシュ及び前記内側メッシュを加熱して熱収縮させることにより、前記外側メッシュを前記容器本体に密着させる工程と、
を有することを特徴とする植栽器の製造方法。
【請求項7】
上面開放箱形の容器の底面を、その周縁から、少なくとも所定幅を残して切除して本体上部を形成する工程と、
前記容器と同形状の容器からなる本体下部上に、前記本体上部を載置接着することにより、内側壁から内側方向へ略水平に張出した張出部を有する植栽器の容器本体を形成する工程と、
を有することを特徴とする植栽器の製造方法。
【請求項8】
上面開放箱形の容器本体内に土壌を充填する工程と、
所定の熱収縮率を有し、前記容器本体の上端縁から内側へ折曲して前記土壌の周縁部を被覆可能な寸法に形成した内側メッシュにより前記容器本体の外側壁を筒状に包む工程と、
前記内側メッシュよりも熱収縮率が高く網目が大きい外側メッシュにより、前記内側メッシュを含めて、前記容器本体を包装する工程と、
前記外側メッシュ及び前記内側メッシュを加熱して熱収縮させることにより、前記外側メッシュを前記容器本体に密着させる工程と、
を有することを特徴とする植栽器の製造方法。
【請求項9】
前記外側メッシュに形成する種苗を植付けるためのスリットと略同形状の樹脂フィルムを形成する工程と、
前記樹脂フィルムを前記外側メッシュに貼着する工程と、
前記樹脂フィルムの上から前記外側メッシュに切り込みを入れることにより、周縁に樹脂加工が施された前記スリットを形成する工程と、
を有することを特徴とする請求項6又は請求項8に記載の植栽器の製造方法。
【請求項10】
前記外側メッシュに形成する種苗を植付けるためのスリットの形成予定位置に、前記スリットと略同形状に樹脂材を貼着する工程と、
前記樹脂材の上から前記外側メッシュに切り込みを入れることにより、周縁に樹脂加工が施された前記スリットを形成する工程と、
を有することを特徴とする請求項6又は請求項8に記載の植栽器の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−165360(P2009−165360A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−3671(P2008−3671)
【出願日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【出願人】(596025180)株式会社福瑛舎 (3)
【Fターム(参考)】