説明

植栽用土壌の改善剤および植栽用土壌の改善方法

【課題】植物栽培上で必要かつ有効な菌を充分に土壌中に残存し、有害な菌を積極的に除去させて土壌の活性化を図ると共に、人畜には無害な植栽用土壌の改善剤および植栽用土壌の改善方法を提供する。
【解決手段】濃度約100,000ppmの亜塩素酸ナトリウム水溶液20Lに粒度0.3μm〜0.03μmの緑色炭化珪素を2g〜0,2g混入した後、約2,000Lの水により希釈して濃度約1,000ppmの亜塩素酸ナトリウム水溶液とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、育成植物、例えばダイコン、ニンジン、ジャガイモ、トマト、ハクサイ、花類、果樹木などの育成の際に使用する植栽用土壌の改善剤および植栽用土壌の改善方法に関する。
【背景技術】
【0002】
上記育成土壌中には糸状菌、放線菌、細菌等、植物の育成に関する微生物が生息しており、糸状菌→放線菌→細菌と食物連鎖となっている。そして、糸状菌、放線菌、細菌の全てにグラム陽性菌とグラム陰性菌がおり、このグラム陰性菌が植物の育成上悪玉で、植物土壌病害細菌の大半はグラム陰性菌である。かかる悪玉の菌であっても窒素を固定するため、雑草類では何ら構わない。一方、そのグラム陰性菌を抑制して植物の病気感染を防ぐと共に窒素を固定して肥料とする細菌など、微生物が生息している。しかし従来の土壌処理に際して用いる除菌剤では除菌力が弱く有害な菌を充分に除くことができず、またこれに対して強力な除菌剤では栽培に有効な菌までも除去してしまう欠点があり、かつこれら強力な従来の各種除菌剤は刺激臭が強く、人畜にも有害なものであった。
【0003】
そこで、濃度500〜700ppmの二酸化塩素水溶液を1反当り2000〜2500Lの割合で土壌に撒布し、土壌中の微生物を選択的に除菌することで土壌を植栽用に活性化する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
しかしながら、上記活性化方法では、植栽に有害な糸状菌の残存率が0.06%と著しく減少しているが、植栽に有効な細菌の残存率は0.177%と非常に少なく、また放線菌の残存率も0,558%と半分近く減少しており、植栽に有効な菌を多量に除菌する問題があった。
【0005】
【特許文献1】特開平7−17931号(特許第2686591号)公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記従来の問題点に鑑みてなされたもので、植物栽培上で必要かつ有効な菌を充分に土壌中に残存させ、有害な菌を積極的に除去させて土壌の活性化を図ると共に、人畜には無害な植栽用土壌の改善剤および植栽用土壌の改善方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記問題点を解決するために、本発明の請求項1に係る植栽用土壌の改善剤は、濃度約100,000ppmの亜塩素酸ナトリウム水溶液1,000ccに対し、粒径0.3μm〜0.03μmの緑色炭化珪素を0.1g〜0.01gの割合で混入したことを特徴とする。
【0008】
本発明にあっては、亜塩素酸ナトリウムは容易に水に溶けやすく、使用の際に適度な濃度に希釈して土壌中に撒布することにより、細菌等の有効な菌は残存させ、グラム陰性菌等の植栽に有害な菌は壊滅させるか著しく減少させることが可能である。すなわち、亜塩素酸ナトリウムより発生する二酸化塩素ガスClOのO(活性酸素)がグラム陰性菌等の有害な菌を除菌する。また、亜塩素酸ナトリウムより生成する二酸化塩素ガスは比重1.1と水より重いガス体であるので、土壌中で自然に下に行くので、緑色炭化珪素は、植物病原性微生物の各種菌類に亜塩素酸ナトリウムより生成される二酸化塩素を菌体内に速やかに送達させ除菌力を向上させることが可能である。さらに、土中に残った緑色炭化珪素は、植栽された植物に対して栄養分(窒素、リン酸、加里)等、送達に効果があり、従来より肥料量が少なくでき、植物の樹勢を向上させて病害虫に侵され難くなる。上記緑色炭化珪素の粒径を0.3μm〜0.03μmとしたのは、菌の種類や土中に残った緑色炭化珪素が植栽された植物に対する栄養分等の送達効果の大きさを考慮したものであり、また、濃度約100,000ppmの亜塩素酸ナトリウムの水溶液1,000ccに緑色炭化珪素を0.1g〜0.01gの割合で混入したのは、1,000ppmに希釈して使用する際に、水溶液中に分散する緑色炭化珪素が0.01g〜0.001gとなり、上述の効果を有効に得られるようにしたものである。
【0009】
本発明の請求項2に係る植栽用土壌の改善剤は、請求項1において、上記改善剤は、水により濃度約1,000ppmの亜塩素酸ナトリウム水溶液に希釈して使用することを特徴とする。
【0010】
本発明にあっては、亜塩素酸ナトリウムは水に溶けやすく、亜塩素酸ナトリウムの水溶液を均一な濃度に容易に希釈可能であると共に、撒布するだけで土壌中に容易に浸透可能である。
【0011】
本発明の請求項3に係る植栽用土壌の改善方法は、濃度約100,000ppmの亜塩素酸ナトリウム水溶液1,000ccに対して粒径0.3mμ〜0.03mμの緑色炭化珪素を0.1g〜0.01gの割合で混入して得た水溶液を水により希釈して濃度約1,000ppmの亜塩素酸ナトリウムの水溶液を作り、この希釈液を土壌10アール当り約2,000〜2,500Lの割合で撒布した後、二酸化塩素ガスがほぼ消失するまで約5日乃至2週間放置し、土壌を乾燥させた後施肥し植物を栽培することを特徴とする。
【0012】
本発明にあっては、緑色炭化珪素を含有した亜塩素酸ナトリウム水溶液の希釈液を土壌10アール当り約2,000〜2,500Lの割合で撒布することで、細菌等の有効な菌の発生を効率よく発生させることができる。上記約2,000〜2,500Lの割合は、土壌10アール当りの各種割合の度重なる実験の結果、この範疇の割合が上記有効菌の発生に最も秀れている範囲であることを見出したためである。
【0013】
また、上記緑色炭化珪素を含有した亜塩素酸ナトリウムの希釈液を土壌に撒布後、約5日乃至2週間放置することで二酸化塩素ガスがほぼ消失する。その後、土壌を乾燥させた後施肥し、植物を栽培させてその後暫く放置し、乾燥後の微生物の数を調査した結果、植物の育成に必要かつ不可欠な細菌や放線菌等の有効菌の存在が多数増殖されていることが確認されたことと共に、有害な細等はほとんど壊滅されたことが判明した。
【0014】
上記緑色炭化珪素は、黒色炭化珪素に比べ不純物が少なく、石油コークス等の炭素と珪石を主原料とし、電極間にシリカと炭材を敷き、電極間を黒鉛粉コアで繋ぎ、さらに原材料で覆ったのち通電して加熱するアチソン炉法、シリコン炭素直接反応法等で製造されている。また、特開2003−176119号公報に記載されるように、緑色炭化珪素は、籾殻炭化物などの珪素集積バイオマス炭化物や炭素粉体とシリカ粉体の配合物などを原料とし、2GHz以上の高周波電磁波を照射して製造が可能とされている。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、緑色炭化珪素を含有させた亜塩素酸ナトリウムの水溶液を土壌に撒布することにより、植物栽培に有効な細菌等を比較的多量に土壌中に残存せしめると共に、植物栽培に有害なグラム陰性菌等を壊滅させまたは著しく減少せしめて土壌の改善化を行い、作物の育成に極めて有効な結果を得ることができる効果を奏することができる。加えて、緑色炭化珪素は、植物病原性微生物の各種菌類に亜塩素酸ナトリウムより生成される二酸化塩素を菌体内に速やかに送達させ除菌力を向上させる効果を奏することができる。さらに、土中に残った緑色炭化珪素は、植栽された植物に対して栄養分(窒素、リン酸、加里)等、送達に効果があり、従来より肥料量が少なくでき、植物の樹勢を向上させて病害虫に侵され難くする効果を奏することができる。
【0016】
また亜塩素酸ナトリウムは水に非常に溶け易く、手軽に撒布するだけで土壌中に容易に浸透して除菌することができる上、水溶液であるため有害なガスの発生もなく安全に作業することができ、また水溶液であるため容易かつ正確にその濃度を調整できる等の優れた効果を奏することができる。
【0017】
さらに、植物成長中に幹や葉に種々病原菌が付着し、病気が発生するが、亜塩素酸ナトリウムを病気に対応させて濃度10ppm〜500ppmに希釈して葉面撒布を行うと、該病原菌の除去や病気の予防に効果が大きいとの効果を奏することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
植物を栽培する際に、人畜に無害で、必要かつ有効な菌を充分に土壌中に残存させ、有害な菌を積極的に除去させて土壌の活性化を図るという目的を、亜塩素酸ナトリウム水溶液に緑色炭化珪素を混入することで実現した。
【実施例1】
【0019】
先ず濃度約100,000ppmの亜塩素酸ナトリウム水溶液を作り、その20Lに粒径0.3μm〜0.03μmの緑色炭化珪素を2g〜0,2gを混入した後、約2,000Lの水により希釈し、濃度約1,000ppmの亜塩素酸ナトリウムの水溶液を作った。
【0020】
この希釈液を土壌10アール当り約2,000〜2,500Lの割合で撒布し約1週間放置したところ、上記二酸化塩素ガスがほぼ消失した。次いで土壌を乾燥させたのち施肥し、4乃至5日放置したのちトマトの苗を定植させた。然るのちこの乾燥後の土壌中の微生物の数を調査した結果、有害な菌であるグラム陰性菌などは著しく減少し、充分に土壌の改善化が行われたことが確かめられた。
【産業上の利用可能性】
【0021】
食用植物に限られず、観葉植物、草花や花木の観賞植物にも用いることができる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
濃度約100,000ppmの亜塩素酸ナトリウム水溶液1,000ccに対し、粒径0.3μm〜0.03μmの緑色炭化珪素を0.1g〜0.01gの割合で混入したことを特徴とする植栽用土壌の改善剤。
【請求項2】
上記改善剤は、水により濃度約1,000ppmの亜塩素酸ナトリウム水溶液に希釈して使用することを特徴とする請求項1記載の植栽用土壌の改善剤。
【請求項3】
濃度約100,000ppmの亜塩素酸ナトリウム水溶液1,000ccに対して粒径0.3mμ〜0.03mμの緑色炭化珪素を0.1g〜0.01gの割合で混入して得た水溶液を水により希釈して濃度約1,000ppmの亜塩素酸ナトリウムの水溶液を作り、この希釈液を土壌10アール当り約2,000〜2,500Lの割合で撒布した後、二酸化塩素ガスがほぼ消失するまで約5日乃至2週間放置し、土壌を乾燥させた後施肥し植物を栽培することを特徴とする植栽用土壌の改善方法。


【公開番号】特開2006−57022(P2006−57022A)
【公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−241435(P2004−241435)
【出願日】平成16年8月20日(2004.8.20)
【出願人】(591240342)株式会社染谷 (7)
【Fターム(参考)】