説明

植栽用構造体、敷設体、敷設体を用いて緑化する方法

【課題】収納されている植物材を外力から保護すると同時に歩行者の安全を確保しうる植栽用構造体、敷設体、敷設体を用いて緑化する方法を提供し、さらに敷設体の施工効率を向上する。
【解決手段】植栽用構造体1の本体部材10は、有底箱状であって、底部11と、開口部12と、内部空間101と、柱部14を有している。開口部12は、底部11に向かい合い、内部空間101に連通している。柱部14は、先端面141を有する先細り形状であって、底部11と一体的に成形され、底部11にマトリックス状に突設されている。防護部材30は、貫通孔33を有し、開口部12を覆い、柱部14の先端部分によって支持されている。貫通孔33は婦人靴の踵部の先端が通過不能な孔形を有している。植物材41、42は、開口部12から葉先を露出可能な向きで内部空間101に収納された状態で防護部材30によって覆われている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物材、典型的には芝草を収納するために用いられる植栽用構造体、及び、敷設体に関し、さらに敷設体を用いて建物の敷地や屋上、公園、駐車場などを緑化する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、都市部のヒートアイランド現象対策、及び、緑豊かな生活環境を形成する施策として、建物の敷地や屋上、公園、駐車場などの緑化が推進されている。
【0003】
この種の緑化技術としては、幅寸法が300mm、長手寸法が350mm程度のマット状に成形された芝生材を地表面に敷設する工法が広く知られている。例えば、特許文献1記載の発明は、縦横に連続配置した芝生材に打ち込んで、地表面に直接固定するために用いられる串に関するものである。なお、公園や運動場など敷設面積が広くなると、芝生材として反物状に巻かれた巻き芝が用いられる。
【0004】
また、駐車場の緑化技術については、ヒートアイランド現象対策、生活環境施策という意義の他に、もう一つ、法律上の規制をクリアするという意義を有している。例えば、広大な工業用敷地を有している会社には、工場立地法により敷地面積に対して一定の割合で緑地面積を確保すべき旨の規制が加えられている。
【0005】
工場立地法上の緑地規制によると、多数の運送トラックを保有し、且、敷地内に運送トラックのための駐車場を有する運送会社などは、施設拡張の必要性が生じたとしても、緑地面積を確保することができない場合には、計画を断念せざるを得ない。そこで、近年、上述した緑地面積を確保する手段としても駐車場の緑化技術に対する市場の要請が高まっている。
【0006】
駐車場の緑化を実現するにあたって解決すべき特有の問題として、自動車の上載荷重によって芝生材が押し固められてしまう問題、及び、回転するタイヤから受ける摩擦によって芝生材が地面から剥がされてしまう問題がある。
【0007】
上述した問題に対し、特許文献1では、自動車の上載荷重や回転するタイヤの摩擦から芝生材を保護することができない。また、特許文献1では、広大な敷地面積となる駐車場を緑化しようとすると、巻き芝の配置作業や、巻き芝への串打ち作業など現場作業工程数が多くなり、工期の長期化、施工コスト高を招く。
【0008】
他方、駐車場の緑化に特有の問題解決を図る従来技術として、例えば、特許文献2及び3などがある。特許文献2には、踏圧抵抗突起を設けた格子状の樹脂製の植物生育保護盤が開示されており、この植物生育保護盤を芝生材上に配し、踏圧抵抗突起で歩行者の踏圧や自動車の上載荷重などから芝生材を保護するものである。
【0009】
特許文献3には、多数の筒をネット状に連結し、各筒の内部に客土と芝草を収納する芝生収納部を設けてなる芝生保護パレットが開示されており、上述した各筒内で芝草を育成し、又は、各筒内に小さく切った芝生片を配置する。
【0010】
しかし、上述した特許文献2及び3に記載された発明でも、特許文献1と同様に、駐車場の緑化に特有の問題を十分に解決しているとはいえない。特許文献2に示された植物生育保護盤の構造では、トラックなどの大型車両の上載荷重に耐えうるだけの機械的強度を確保することができない。さらに、植物生育保護盤を配置する工程に先立って、地表面に芝生材や巻き芝を敷設する工程が必要となるから、現場作業工程数が多くなり、工期の長期化、施工コスト高を招く。
【0011】
また、特許文献3に記載された芝生保護パレットでは、芝草の育成工程や、芝生材の切断作業が面倒である。特に、広大な敷地面積となる駐車場を緑化しようとすると、工期の長期化、施工コスト高を招く。
【0012】
ところで、緑化技術の普及が進むに従って、この種の植栽用構造体、及び、植栽用構造体に芝草が収納されてなる敷設体には、現実の使用に則して解決しなければならない新たな問題が生じている。即ち、歩行者が、パンプスやハイヒールなど細長い踵部を有する婦人靴を履いて敷設体上を歩いた場合、靴の爪先側が敷設体の踏み面によって支えられる一方、踵部だけが芝草を外部に露出するための開口部に没入することとなる。その結果、芝生上を直接歩いた場合よりも、敷設体の厚みの分だけ踵部先端の没入距離が拡大され、大きくバランスを崩し、思わぬ転倒事故が生じる。
【0013】
また、一旦、開口部に没入した踵部は、踏み面に対して垂直方向に引き上げない限り、開口部の内面に突き当たることとなる。即ち、歩行中に踵部が開口部に没入すると、靴全体が没入場所に固定されることとなり、思わぬ転倒事故が生じる。
【0014】
しかも、開口部に嵌り込んだ踵部が芝草に突き刺さることにより、芝草が傷つけられる不具合が生じる。
【0015】
上述した婦人靴のヒール対策が完全に実現された緑化技術は、いまだ見出されていない。現状では、公園などの芝生地においては立ち入り禁止の看板を設置し、駐車場などの芝生地においては歩行者に転倒への注意を促す看板を設置するにとどまっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特開平08−089081号公報
【特許文献2】特開平08−130993号公報
【特許文献3】特開2002−017175号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明の課題は、収納されている植物材を外力から保護すると同時に歩行者の安全を確保しうる植栽用構造体、敷設体、敷設体を用いて緑化する方法を提供することで、敷設体の施工効率を向上することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明は、植栽用構造体を構成する本体部材の具体的構成に応じて、第1の態様と、第2の態様とを含む。以下、それぞれ説明する。
【0019】
1.本発明の第1の態様
本発明の第1の態様に係る植栽用構造体は、本体部材と、防護部材とを含む。本体部材は、有底箱状であって、開口部と、底部と、内部空間と、複数の柱部を有している。開口部は、底部に向かい合い、内部空間に連通している。複数の柱部は、それぞれ先端部分に平らな先端面を有する先細り形状であって、底部と一体的に成形され、底部にマトリックス状に突設されている。
【0020】
防護部材は、面内に複数の貫通孔を有し、開口部を覆い、開口部を覆った状態で、柱部の先端部分によって支持されている。貫通孔は、婦人靴の踵部の先端が通過不能な孔形を有している。
【0021】
上述した植栽用構造体は、植物材と組み合わされて敷設体を構成する。植物材は、シート状またはマット状であって、本体部材の開口部から葉先を露出可能な向きで、本体部材の内部空間に収納され、収納された状態で、植物材の表面が防護部材によって覆われている。
【0022】
本発明の第1の態様に係る敷設体を用いて緑化するに当たり、複数の敷設体を施工対象領域に配置し、隣接する敷設体を結合する。
【0023】
本発明の第1の態様によると、植栽用構造体を構成する本体部材は、有底箱状であって、開口部が、底部に向かい合い、内部空間に連通している。この構造によると、開口部を通じて内部空間に植物材を案内し、底部に植物材を載置することができる。従って、敷設体は、植物材を本体部材に収納した状態で一体に持ち運ぶことが可能となり、組立現場から施工現場までの運搬作業、施工現場における施工対象領域への敷設作業などの施工効率が向上する。また、施工後においても敷設体の並べ替えが自在であるから、現場作業工程数を削減し、工期の効率化、施工コストの低減が図られる。
【0024】
植物材は、シート状またはマット状であって、開口部から葉先を露出可能な向きで、内部空間に収納されている。この構造によると、開口部を通じて植物材の葉先を外部に露出することで、緑化された景観が演出される。
【0025】
本体部材の開口部を通じて、本体部材の内部空間に収納された植物材の葉先を外部に露出することにより緑化された景観を演出する敷設体の構造では、敷設体上を歩行する人や駐車場の利用者の安全対策として、靴の踵部や爪先が開口部に引っかかりにくくして、歩行者の安全を確保する必要がある。特に、この種の敷設体では、パンプスやハイヒールなど細長い踵部を有する婦人靴を履いて歩行する場合が最も危険であるとされている。
【0026】
上述した要請に応えるため、本発明の第1の態様に係る植栽用構造体は、防護部材を含み、防護部材は、本体部材の開口部を覆っている。この構造によると、歩行者が、敷設体上を歩いた場合でも、靴の踵部や爪先が開口部に引っかかりにくくなる。
【0027】
さらに、防護部材は、面内に複数の貫通孔を有している。貫通孔は、婦人靴の踵部の先端が通過不能な孔形を有しているから、歩行者が、パンプスやハイヒールなど細長い踵部を有する婦人靴を履いて敷設体上を歩いた場合でも、踵部が植栽用構造体の内部に没入する不具合を回避することができる。従って、植物材を婦人靴の踵部から保護するとともに、踵部が植栽用構造体の内部に没入することにより生じる転倒事故を防止し、歩行者の安全を確保することができる。
【0028】
植物材は、本体部材の内部空間に収納された状態で、植物材の表面が防護部材によって覆われている。防護部材は、面内に複数の貫通孔を有しているから、この貫通孔を通じて植物材の葉先を外部に露出することで、緑化された景観が演出される。
【0029】
本体部材の柱部は、先端部分に平らな先端面を有する先細り形状であって、底部と一体的に成形され、複数が底部にマトリックス状に突設されている。防護部材は、開口部を覆った状態で、柱部の先端部分によって支持されている。即ち、本体部材の柱部は、内部空間に収納された植物材を貫通し、植物材の表面に露出する先端部分によって、防護部材を底部側から支持している。この構成によると、柱部の先端面と、植物材の表面との間に高低差が生じ、この高低差に応じた空間が確保される。従って、歩行者の踏圧や、自動車の上載荷重、回転するタイヤから受ける摩擦などの外力を柱部の先端面で支持し、植物材の表面を外力から保護することができる。
【0030】
柱部は、本体部材の底部と一体的に成形されているから、外力に対して優れた機械的強度を有している。さらに、柱部は、複数が底部にマトリックス状に突設されているから、外力を各柱部の先端面で分散して支持することができる。従って、植物材を、外力から確実に保護することができる
柱部は、複数が底部にマトリックス状に突設されているから、植物材の根は本体部材の内部空間を自由に育成し、雨水等は柱部を避けて本体部材の内部空間を自由に移動する。従って、敷設体を敷設した後の植物材の育成コスト、維持管理コストを低減することができる。
【0031】
2.本発明の第2の態様
本発明の第2の態様に係る植栽用構造体は、本体部材と、防護部材とを含む。本体部材は、第1の本体部材と、第2の本体部材とを有している。
【0032】
第1の本体部材は、複数の開口部と、第1の基板部と、複数の柱部と、内部空間とを有している。複数の開口部は、それぞれ第1の基板部の一面から他面に貫通し、第1の基板部にマトリックス状に配置されている。複数の柱部は、それぞれ先端部分に平らな先端面を有する先細り形状であって、第1の基板部と一体的に成形され、第1の基板部の他面にマトリックス状に突設されている。
【0033】
第2の本体部材は、第2の基板部と、複数の排水部と、複数の凹部とを有している。複数の排水部は、第2の基板部の一面から他面に落ち込み、第2の基板部の一面にマトリックス状に配置されている。複数の凹部は、それぞれ有底孔であって柱部の先端部分の周面、及び、先端面に適合する形状を有し、第2の基板部の一面にマトリックス状に配置されている。
【0034】
第1の本体部材と、第2の本体部材とは、第1の基板部の他面と、第2の基板部の一面とが向かい合わせに配置され、配置された状態で柱部の先端部分が、第2の本体部材の凹部に嵌合されている。内部空間は、第1の基板部の他面と、第2の基板部の一面との向かい合わせ面間に形成されている。
【0035】
防護部材は、面内に複数の貫通孔を有し、開口部を覆っている。貫通孔は、婦人靴の踵部の先端が通過不能な孔形を有している。
【0036】
上述した植栽用構造体は、植物材と組み合わされて敷設体を構成する。植物材は、シート状またはマット状であって、本体部材(第1の本体部材)の開口部から葉先を露出可能な向きで、本体部材の内部空間に収納され、収納された状態で、植物材の表面が防護部材によって覆われている。
【0037】
本発明の第2の態様に係る敷設体を用いて緑化するに当たり、複数の敷設体を施工対象領域に配置し、隣接する敷設体を結合する。
【0038】
本発明の第2の態様は、植物材の葉先を露出するための開口部が防護部材で覆われている点で、本発明の第1の態様と共通する特徴的構成を有し、この特徴的構成により、本発明の第1の態様と同様の作用効果を奏することができる。例えば、植物材は、本体部材の開口部から葉先を露出可能な向きで、内部空間に収納され、収納された状態で、植物材の表面が防護部材によって覆われている。この構造によると、本体部材の開口部、及び、防護部材の貫通孔を通じて植物材の葉先を外部に露出し、緑化された景観を演出することができる。
【0039】
防護部材は、本体部材の開口部を覆っているから、歩行者が、敷設体上を歩いた場合でも、靴の踵部や爪先が開口部に引っかかりにくくなる。しかも、防護部材の貫通孔は、婦人靴の踵部の先端が通過不能な孔形を有しているから、歩行者が、細長い踵部を有する婦人靴を履いて敷設体上を歩いた場合でも、踵部が植栽用構造体の内部に没入する不具合は回避される。従って、植物材を婦人靴の踵部から保護するとともに、踵部が植栽用構造体の内部に没入することにより生じる転倒事故を防止し、歩行者の安全を確保することができる。
【0040】
さらに、本発明の第2の態様に係る植栽用構造体において、本体部材を構成する第1、第2の本体部材は、第1の基板部の他面と、第2の基板部の一面とが向かい合わせに配置され、第1の本体部材の柱部の先端部分が、第2の部材の凹部に嵌合されている。この構造によると、第1、第2の本体部材の相対向面間には、柱部の高さ寸法に応じた間隔をもつ内部空間が形成される。従って、この内部空間に植物材を収納することで、第1、第2の本体部材とにより植物材を挟持することができる。
【0041】
第1、第2の本体部材の間隔は、柱部の高さ寸法に応じて規制されるから、柱部の高さ寸法を予め調節することにより、様々な厚み寸法を有する植物材を、第1、第2の本体部材の間で挟持することが可能となる。
【0042】
第1の本体部材の柱部は、先端部分に平らな先端面を有する先細り形状であって、第1の基板部と一体的に成形され、複数が、第1の基板部の他面にマトリックス状に突設されているから、仮に、第1の基板部の一面に歩行者の踏圧や、自動車の上載荷重、回転するタイヤから受ける摩擦などの外力が加えられたとしても、この外力を柱部によって支持することができる。違う言葉で表現すれば、第1の基板部の一面に外力が加えられたとしても、第1、第2の本体部材の間隔が一定に保たれることとなり、外力によって植物材が押し固められてしまう問題は生じない。
【0043】
植物材は、開口部から外部に露出している部分の全周が第1の基板部の一面によって囲まれているから、外力が第1の基板部の一面によって受けられ、植物材の表面が外力から保護される。
【0044】
第1の本体部材の開口部は、複数が、第1の基板部の一面および他面に、マトリックス状に配置されている。通常、開口部の開口面積を小さくすれば、植物材を外力から保護することができる。しかし、開口部の開口面積を小さくすれば、その分だけ植物材の露出面積が減少し、緑化された景観を演出することができなくなる。そこで、本発明では、複数の開口部をマトリックス状に配置することにより、各開口部の開口面積を小さくするとともに、全体的な開口面積を最大限確保している。従って、植物材を外力から保護することと、緑化された景観の実現という、相反する要請を同時に達成することができる。
【0045】
本体部材は、柱部によって、第1の基板部と植物材とが一体化されているから、第1の基板部に回転するタイヤの摩擦が加えられたとしても、本体部材には、植物材の重量を付加した制動力が働く。このため、本体部材が植物材を置き去りにして横移動してしまうなどの不正移動が抑制され、植物材を保護し続けることが可能になる。
【発明の効果】
【0046】
以上述べたように、本発明によれば、収納されている植物材を外力から保護すると同時に歩行者の安全を確保しうる植栽用構造体、敷設体、敷設体を用いて緑化する方法を提供することができ、さらに敷設体の施工効率を向上することができる。
【0047】
本発明の他の目的、構成及び利点については、添付図面を参照し、更に詳しく説明する。添付図面は、単に、例示に過ぎない。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の一実施形態に係る植栽用構造体の斜視図である。
【図2】図1の植栽用構造体を分解して内部構造を示す斜視図である。
【図3】図2の本体部材について別の方向から見た斜視図である。
【図4】図1の植栽用構造体の平面図である。
【図5】図4の5−5線に沿った断面図である。
【図6】図4の6−6線に沿った断面図である。
【図7】図6の一部を拡大して示す断面図である。
【図8】図4の一部を拡大して示す平面図である。
【図9】本発明の一実施形態に係る敷設体の斜視図である。
【図10】図9の敷設体の正面断面図である。
【図11】本発明の一実施形態に係る緑化方法を示す図である。
【図12】図11に示した工程のあとの工程を示す図である。
【図13】図12に示した工程のあとの工程を示す図である。
【図14】本発明の一実施形態に係る敷設体の使用状態について一部を切断して示す正面図である。
【図15】本発明の一実施形態に係る敷設体の使用状態について一部を切断して示す正面図である。
【図16】本発明のもう一つの実施形態に係る植栽用構造体の斜視図である。
【図17】図16の植栽用構造体を分解して本体部材の内部構造を示す斜視図である。
【図18】図17の第1の本体部材について別の方向から見た平面図である。
【図19】図17の第2の本体部材の平面図である。
【図20】図16の植栽用構造体を構成する防護部材の斜視図である。
【図21】図16の植栽用構造体の平面図である。
【図22】図21の22−22線に沿った断面図である。
【図23】図21の23−23線に沿った断面図である。
【図24】図21の24−24線に沿った断面図である。
【図25】図24の一部を拡大して示す断面図である。
【図26】本発明のもう一つの実施形態に係る敷設体の斜視図である。
【図27】図26の敷設体の正面断面図である。
【図28】本発明のもう一つの実施形態に係る緑化方法を示す図である。
【図29】図28に示した工程のあとの状態を示す図である。
【図30】図29に示した状態を示す平面図である。
【図31】図29及び図30に示した工程のあとの工程を示す図である。
【図32】図31に示した工程のあとの工程を示す図である。
【図33】本発明のもう一つの実施形態に係る敷設体の使用状態について一部を切断して示す正面図である。
【図34】本発明のもう一つの実施形態に係る敷設体の使用状態について一部を切断して示す正面図である。
【図35】本発明の更にもう一つの実施形態に係る緑化方法を示す図である。
【図36】本発明の緑化方法に用いられる防護部材について別の実施形態を示す斜視図である。
【図37】図36の防護部材の平面図である。
【図38】本発明の更にもう一つの実施形態に係る植栽用構造体の斜視図である。
【図39】図38の敷設体の正面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0049】
図1は本発明の一実施形態に係る植栽用構造体の斜視図、図2は図1の植栽用構造体を分解して内部構造を示す斜視図、図3は図2の本体部材について別の方向から見た斜視図である。また、図4は図1の植栽用構造体の平面図、図5は図4の5−5線に沿った断面図、図6は図4の6−6線に沿った断面図、図7は図6の一部を拡大して示す断面図、図8は図4の一部を拡大して示す平面図である。
【0050】
図1の植栽用構造体は、植物材と組み合わされて敷設体を構成し、歩行者の踏圧や、自動車の上載荷重、回転するタイヤから受ける摩擦などの外力から植物材を保護するために用いられる。
【0051】
[本体部材10]
まず、図1乃至図8の植栽用構造体を構成する本体部材10について説明する。本体部材10は、有底箱状であって、好ましくはポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、塩化ビニル樹脂(PVC)等の熱可塑性樹脂材料を主成分とする成型体である。さらに、本体部材10は、内部空間101と、第1の基板部11と、第1の開口部12と、第2の開口部13と、柱部14と、側壁部15とを有している。
【0052】
第1の基板部11は、有底箱形状の底部分であって、長手方向Lで向かい合う短辺と、長手方向Lに直交する幅方向Wに向かい合う長辺とを有し、平面からみて長方形形状となっている。第1の基板部11は、板厚方向(高さ方向)Tに一面111と、他面112とが向い合っている。
【0053】
第1の開口部12は、有底箱形状の開口部分であって、他面112と高さ方向Tに向い合っている。
【0054】
第2の開口部13は、第1の基板部11において略正方形形状に開口し、高さ方向Tに沿って、一面111から他面112に貫通している。第2の開口部13は、複数であって、第1の基板部11の板面において、長手方向L、及び、幅方向Wに沿ってマトリックス状に配置されている。
第1の基板部11の一面111において、第2の開口部13が設けられていない部分114は、長手方向L、及び、幅方向Wに沿って交差し、格子状、又は、リブ状になっている。さらに、第1の基板部11は、第2の開口部13が設けられていない部分114の交点に突出部113を有している。
【0055】
柱部14は、他面112から高さ方向Tに向かうに従って、徐々に先細りとなる形状であって、好ましくは先端部分に平らな先端面141を有する截頭多角錐形状である。先端面141は、外力を支持する面(踏み面)となる。
【0056】
柱部14は、先端部分の周面140に、高さ方向Tに沿って伸びる4つのリブを有している。4つのリブは、周面140において、互いに直交する関係で十字状に等配されており、高さ方向Tに沿って伸びている。先端面141は、柱部本体の先端面と、柱部本体の先端面から径方向に突出するリブの先端面とにより、平面からみて歯車様の面形状となっている。
【0057】
複数の柱部14は、他面112にマトリックス状に突設されている。柱部14は、他面112において、第2の開口部13の設けられている部分を避けて突設されており、好ましくは格子状の交点において、他面112に対して垂直に立ち上がっている。柱部14は、機械的強度の確保、及び、製造コストの効率化の観点から、第1の基板部11と一体的に成形されることが好ましい。
【0058】
柱部14は、好ましくは同一の高さ寸法(突出寸法)T14を有している。図1乃至図8の柱部14は、先端面141が第1の開口部12から外部に突出している。
【0059】
側壁部15は、他面112の周縁から、高さ方向Tに立ち上がり、立ち上がり端が第1の開口部12の開口端縁を形成している。側壁部15は、他面112の端縁部分において隣接する柱部14の間を塞ぐように配置され、全体として有底箱形状の側壁部分を構成している。側壁部15は、機械的強度の確保、及び、製造コストの効率化の観点から、第1の基板部11と一体的に成形されることが好ましい。
【0060】
内部空間101は、第1の基板部11の他面112と、側壁部15の内面とによって画定され、第1の開口部12と、第2の開口部13とによって外部に通じている。
【0061】
本体部材10は、雄形連結部16と、雌形連結部17とを有する。雄形連結部16は、側壁部15の外面から長手方向Lまたは幅方向Wに向かって、V字状に広がる突出形状を有し、側壁部15の外面を高さ方向Tに沿って伸びている。他方、雌形連結部17は、雄形連結部16に凹凸嵌合可能な凹形状を有し、側壁部15の外面を高さ方向Tに沿って伸びている。
【0062】
[防護部材30]
次に、図1乃至図8の植栽用構造体を構成する防護部材30について説明する。防護部材30は、面内に複数の貫通孔33を有し、第1の開口部12を覆っている。より具体的に説明すると、防護部材30は、網目状であって、素材的強度、耐摩耗性、防錆性、耐候性等の耐久性を確保する観点からステンレス、アルミ等の金属材料を主成分としている。防護部材30としては、好ましくはパンチングメタル、より好ましくはエキスパンドメタルを用いることができる。
【0063】
本明細書において、パンチングメタルとは、金属材料を主成分とする板材をプレスによって孔開け加工したものをいい、エキスパンドメタルとは、金属材料を主成分とする板材に切れ目を入れ、引き伸ばして網目状に加工したものをいう。これらは市販品の中から適したものを適宜選択して使用することが好ましい。
【0064】
防護部材30は、金属材料を基材とし、基材表面がポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、塩化ビニル樹脂(PVC)等の熱可塑性樹脂材料で被覆されたものを使用することもできる。この構成によると、耐久性を向上させることができる。また、エキスパンドメタルの各網目の開口端縁の角が熱可塑性樹脂材料で被覆され、幼児などが指を差し入れたとしても、開口端縁の角で切り傷を負う危険を回避しうる。
【0065】
さらに、防護部材30は、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、塩化ビニル樹脂(PVC)等の熱可塑性樹脂材料を主成分として構成することもできる。防護部材30が上述した熱可塑性樹脂材料を主成分として構成されている場合、耐久性を確保する観点から、3重量%を上限として炭素繊維やガラス繊維などの強化材を含むものを使用することができる。
【0066】
貫通孔33は、一面31から他面32に貫通しており、婦人靴の踵部の先端が通過不能な開孔形状、及び、差し渡し寸法を有している。図1乃至図8の貫通孔33は、最小差し渡し孔径D33が10mm以下である。最小差し渡し孔径D33は、貫通孔33の内寸法の最小値であり、違う言葉で表現すれば、貫通孔33の開口端縁において向かい合う2点間、又は、2辺間に現れる差し渡し寸法のうち、最小となる差し渡し寸法をいう。例えば、防護部材30がエキスパンドメタルであって、各網目を構成する貫通孔33の開口端縁がひし形形状である場合、少なくとも長目方向に交差する短目方向の中心間距離が10mm以下であれば、婦人靴の踵部先端の通過を阻止できる。
【0067】
防護部材30を構成するエキスパンドメタルには、各網目を構成する貫通孔33の開口端縁が六角形形状となるものを用いることができる。貫通孔33の開口端縁が六角形形状の場合、最小差し渡し孔径(D33)は、向かい合う2辺間に現れる。
【0068】
[柱部14と、防護部材30との結合構造]
防護部材30は、第1の開口部12を覆った状態で、柱部14の先端部分によって支持されている。柱部14と、防護部材30との結合構造について、図4及び図8を参照して説明する。
【0069】
防護部材30は、他面32が、他面112と向かい合わせに配置されている。柱部14は、先端部分の周面140に径寸法減少部142を有している。柱部14の先端部分は、径寸法減少部142を境として径寸法が段階的に減少しており、減少している部分が凹段面143となっている。凹段面143は、好ましくは、先端面141と平行する。
【0070】
防護部材30は、面内に第3の開口部34を複数有している。第3の開口部34の開口端縁は、凹段面143に適合する形状を有している。防護部材30は、第3の開口部34が、先端面141と向かい合う関係で配置され、柱部14の先端部分が第3の開口部34に案内され、第3の開口部34の開口端縁が凹段面143に掛け止められる。柱部14と、防護部材30との掛止構造は、着脱自在であってもよいし、例えば、接着剤や熱溶着、結束具など用いることにより、両者が着脱不能に掛止られていてもよい。
【0071】
図4乃至図8の防護部材30は、第1の開口部12の内部に配置され、配置された状態で、防護部材30の一面31が、柱部14の先端面141より低く、更に第1の開口部12の開口端縁より低い位置にある。防護部材30の一面31と、柱部14の先端面141との間には、高低差が生じており、この高低差に応じた空間g1が形成されている。
【0072】
第1の基体部11と、防護部材30との相対向面間の空間g2は、本体部材10と防護部材30との結合関係により一定に規制され、具体的には径寸法減少部142の高さ位置T142に応じて一定に規制されている。そして、空間g2により本体部材10と防護部材30との相対向面間に形成される空間的な広がりが、植物材を収納するための内部空間101として用いられる。従って、径寸法減少部142は、防護部材30の支持機能を有するとともに、空間g2を規制する機能を有することにより、植物材を収納するための内部空間101の容積を決定している。
【0073】
また、防護部材30は、柱部14の先端面141より被冠され、柱部14の凹段面143に係合して所定位置に保持され、しかもステンレスやアルミ等の金属材料から構成されているために、特定の柱部14に何らかの原因により、設計荷重以上の曲げ荷重やせん断荷重が加わったとしても、敷設体内の柱部14全体に荷重を分散することが可能になり、結果的に柱部14の強度を高める効果を有する。
【0074】
図9は本発明の一実施形態に係る敷設体の斜視図、図10は図9の敷設体の正面断面図である。図9及び図10において、図1乃至図8に示した構成部分と同一の構成部分には、同一の参照符号を付す。
【0075】
[敷設体]
図9及び図10の敷設体は、図1乃至図8を参照して説明した植栽用構造体1と、植物材41、42と、客土51と、スペーサ52と、不織布53とを含む。
【0076】
植物材41、42は、シート状またはマット状であって、周知の芝生マットを用いることができる。なお、植物材41、42を構成する植物は、典型的には芝草であるが、必ずしも芝草に限られず、芝草に類する低背性の植物や、いわゆる苔などであってもよい。
【0077】
植物材41、42は、第1の開口部12から葉先を露出可能な向きで、植栽用構造体1の内部空間(101)に収納され、内部空間(101)に収納された状態で、植物材41、42の表面が防護部材30によって覆われている。
【0078】
植物材41、42が所謂芝生マットである場合、芝生マットは、全国でほぼ共通の流通規格として長方形形状となっており、長手寸法360mm、幅寸法300mmのものと、長手寸法350mm、幅寸法250mmのものとがある。具体的に図9を参照すると、植栽用構造体1の幅寸法W1を予め植物材41、42の長手寸法L4に一致(例えば、350mm)させ、植栽用構造体1の長手寸法L1を植物材41、42の幅寸法W4の2倍(例えば、500mm)とすることにより、2つの植物材41、42を一組として一体的に保持することができる。
【0079】
客土51は、植物材41、42の根を安定して根付かせる目的で内部空間(101)に充填される培養土である。
【0080】
スペーサ52は、透水性、及び、弾力性を有する多孔質構造(スポンジ構造)のウレタン樹脂を薄板状、シート状、又は、マット状に成形したものであって、客土51と、不織布53との間に配置されている。スペーサ52は、客土51の体積が湿度や気温によって膨張、収縮を繰り返すことを想定し、その膨張、収縮によって客土51と、不織布53との間に隙間が生じる不具合を回避するため、底上げに用いられるものである。
【0081】
不織布53は、第1の基板部11の他面112と、スペーサ52との間に配置されており、余分な雨水等を第2の開口部13を通じて内部空間(101)から排出する際や、敷設体を持ち運びする際などに、客土51が第2の開口部13から不正漏出する不具合を防止する。なお、スペーサ52が透水性を有する場合、スペーサ52の厚み寸法を調節することにより、不織布53を省略することもできる。
柱部14は、植物材41、42が植物材を収納するための内部空間(101)された状態で、不織布53と、スペーサ52と、客土51と、植物材41、42とを上述した順序で高さ方向Tに貫通し、柱部14の先端部分が植物材41、42の表面上に露出している。
【0082】
図11乃至図13は、本発明の一実施形態に係る緑化方法を示す図である。図11乃至図13において、図1乃至図10に示した構成部分と同一の構成部分には、同一の参照符号を付す。
【0083】
[敷設体の組立方法および緑化方法]
図9及び図10に示した敷設体の利点について、組み立て方法の観点から説明する。まず、図11に示す工程を参照すると、本体部材10を、第1の開口部12が上になるように工作台や地表面上に配置し、本体部材10の内部空間(101)に対して、不織布53と、スペーサ52と、客土51とを上述した順序で投入し、さらに植物材41、42を、第1の開口部12から葉先を露出可能な向きで内部空間(101)に案内し、柱部14を植物材41、42の高さ方向Tに貫通させる。複数の柱部14のそれぞれは先細り形状となっており、植物材41、42を容易に貫通する。柱部14は、不織布53と、スペーサ52と、客土51、植物材41、42を高さ方向Tに貫通し、植物材41、42の表面上に先端面141が露出する。これにより、植物材41、42が本体部材10に固定される。
【0084】
図12の工程は、図11に示した工程のあとの工程であって、防護部材30を第1の開口部12に配置し、柱部14の先端部分を第3の開口部34に挿通させることにより、第3の開口部34の開口端縁が凹段面143によって支持される。防護部材30は、第1の開口部12の内部に配置された状態で、防護部材30の一面31が、柱部14の先端面141より低い位置にあり、より好ましくは第1の開口部12の開口端縁より低い位置に載置される。植物材41、42は、植物(例えば芝草)の育成段階に応じて、葉先が第1の開口部12、及び、貫通孔33を通じて外部に導き出される。
【0085】
図13の工程は、図12に示した工程のあとの工程であって、図11〜図12を参照して説明した敷設体の組み立て方法により、好ましくは組立工場などで施工対象領域S2に対して必要枚数分の敷設体100a〜dを製造した後、施工現場へ搬送し、敷設体100a〜dを施工対象領域S2に沿って、縦横に連続配置する。図13の工程では、隣接する敷設体100b、cの雄形連結部16および雌形連結部17に対して、敷設体100dを位置決めし、雄形連結部16および雌形連結部17を高さ方向Tから落とし込むなどして、敷設体100a〜d相互に結合させる。
【0086】
[図1乃至図13の植栽用構造体、敷設体、敷設体を用いた緑化方法の効果]
図1乃至図8を参照して説明した植栽用構造体の構造、図9及び図10を参照して説明した敷設体の構造、及び、図11乃至図13を参照して説明した緑化方法によると、以下の効果を奏することができる。
【0087】
植栽用構造体1は、有底箱状の本体部材10を有しているから、第1の開口部12を通じて内部空間101に植物材41、42を収納することができる。従って、敷設体(100a〜d)は、植物材41、42を植栽用構造体1に収納した状態で一体に持ち運ぶことが可能となる。しかも、植栽用構造体1の側面は、側壁部15で覆われているから、内部空間101内の土砂などが外部に不正漏出することはなく、製造工場から施工現場までの敷設体100の運搬作業、施工現場における敷設作業が容易になる。
【0088】
また、植栽用構造体1の側面は、側壁部15で覆われているから、植栽用構造体1を縦横に連結して配置したとしても、隣接する植栽用構造体1内の植物材41、42の根の行き来が側壁部15によって阻害される。従って、例えば敷設工事から長期間経過した後で、植栽用構造体1内部の芝が枯死した等の理由で、一部の植栽用構造体1を交換する場合に、芝の根を傷つけることなく、容易に並べ替えを行うことができる。さらに、施工後においても敷設体(100a〜d)の並べ替えが自在であるから、現場作業工程数を削減し、工期の効率化、施工コストの低減が図られる。
【0089】
植物材41、42は、第1の開口部12から葉先を露出可能な向きで、内部空間101に収納されているから、第1の開口部12を通じて植物材41、42の葉先を外部に露出することで、緑化された景観が演出される。
【0090】
植物材41、42の表面には、柱部14の先端部分が露出している。この構成によると、柱部14の先端面141と、植物材41、42の表面との間に、高低差に応じた空間g1が確保される。従って、歩行者の踏圧や、自動車の上載荷重、回転するタイヤから受ける摩擦などの外力(F1、F2)を先端面141で支持し、植物材41、42の表面を外力から保護することができる。具体的に、図14に示すように、柱部14の先端面141に自動車のタイヤ6が接触したとしても、タイヤ6と、植物材41、42との間には空間g1が確保される。その結果、植物材41、42の表面が自動車の上載荷重によって押し固められてしまう問題は生じない。
【0091】
また、複数の柱部14は、植物材41、42の表面において、マトリックス状に分散配置され、複数の先端面141が一体的な踏み面S1を構成しているから、タイヤ6の回転力F2、違う言葉で表現すれば、回転するタイヤ6と柱部14との接触面において接線方向に生じる摩擦力F2が、先端面141、及び、踏み面S1によって受けられ、植物材41、42の表面を摩擦力F2から確実に保護することができる。
【0092】
防護部材30の一面31と、柱部14の先端面141との間には、空間g1が形成されているから、貫通孔33から外部に露出する植物材41、42の葉先が、摩擦力F2を受けたときに、貫通孔33の開口端縁に挟まれて刈り取られてしまう不都合は生じない。従って、敷設体100の一面に常に植物材41、42の葉先が露出している状態を保ち、緑化された景観を演出することができる。
【0093】
また、図15に示すように、柱部14の先端面141に歩行者の靴裏70が接触したとしても、靴裏70と、植物材41、42の表面との間に空間g1があり、歩行者の踏圧によって植物材41、42の表面が押し固められてしまう問題は生じない。
【0094】
柱部14は、第1の基板部11と一体的に成形されているから、外力(F1、F2)に対して優れた機械的強度を有している。さらに、複数の柱部14がマトリックス状に突設されているから、外力(F1、F2)を各先端面141で分散して支持することができる。従って、植物材を、外力(F1、F2)から確実に保護することができる。
【0095】
複数の柱部14は、マトリックス状に突設されているから、植物材41、42の根は柱部14を避けて内部空間101を自由に育成し、雨水等は柱部14を避けて内部空間101を自由に移動する。従って、敷設体100を敷設した後の植物材の育成コスト、維持管理コストを低減することができる。
【0096】
本発明に係る緑化方法は、上述した植栽用構造体1、及び、敷設体100の基本的機能に加え、婦人靴の踵部対策として、防護部材30を有する点に特徴の一つがある。即ち、防護部材30は、面内に複数の貫通孔33を有し、第1の開口部12を覆い、第1の開口部12を覆った状態で、柱部14の先端部分によって支持されている。この構造によると、貫通孔33を通じて植物材41、42の葉先を外部に露出し、緑化された景観を演出することができる。
【0097】
防護部材30は、柱部14の先端部分が第3の開口部34に案内され、第3の開口部34の開口端縁が凹段面143に掛け止められる。第1の基板部11と防護部材30との空間g2は、径寸法減少部142の高さ位置T142に応じて規制されるから、高さ位置T142を予め調節することにより、様々な厚み寸法を有する植物材41、42を、第1の基板部11と防護部材30との間で一体的に挟持することが可能となる。従って、植物材41、42として、市販の芝生マットを直接使用することができる。
【0098】
防護部材30の貫通孔33は、婦人靴の踵部の先端が通過不能な開孔形状、及び、差し渡し寸法を有し、好ましくは最小差し渡し孔径D33が10mm以下である。通常、婦人靴の踵部71の先端部の直径は10mmよりも大きいから、歩行者が、パンプスやハイヒールなど細長い踵部71を有する婦人靴を履いて敷設体100上を歩いた場合でも、踵部71が植栽用構造体1の内部に没入する不具合は回避される。仮に、図15の実施形態において、防護部材30がないとすると、踵部71は、植物材41、42を貫通し、さらに客土51、スペーサ52、不織布53を貫通して地表面8にまで達する。すなわち、芝生上を直接ハイヒールで歩いた場合よりも、植栽用構造体1の高さ寸法分だけ踵部71の没入距離が拡大され、踵部71の没入距離が拡大された分だけ、大きくバランスを崩し、思わぬ転倒事故が生じる。
【0099】
これに対し、本願発明では、防護部材30によって第1の開口部12を覆うことにより、歩行者の靴裏70が柱部14の先端面141に支持された状態で、踵部71の先端部の没入距離が防護部材30の一面(31)までで止められる。従って、植物材41、42を婦人靴の踵部71から保護するとともに、踵部71が植栽用構造体1の内部に没入することにより生じる転倒事故を未然に防止し、歩行者の安全を確保することができる。
さらに、防護部材30は、柱部14の先端面より被冠されて、柱部14に係合して所定位置に保持され、しかもステンレスやアルミ等の金属材料から構成されているために、特定の柱部14に何らかの原因により、設計荷重以上の曲げ荷重やせん断荷重が加わったとしても、敷設体内の柱部14全体に荷重を分散することが可能になり、結果的に敷設体の柱部14の強度を高めることができる。
【0100】
図1乃至図13を参照して説明した植栽用構造体1、及び、これを用いた敷設体100とは異なり、従来の芝生マットに串を打ち込んで地表面に固定する工法(特許文献1参照)では、芝生マットの表面に対して何ら保護機能を有していないから、自動車の上載荷重F1や、摩擦力F2によって芝生が損傷するという駐車場の芝生化に特有の問題を解決することができない。また、広大な敷地表面積となる駐車場に対する施工を想定した場合、巻き芝の配置作業や、串打ち作業など現場作業工程数が多くなり、工期の長期化、施工コスト高を招く。
【0101】
また、踏圧抵抗突起を設けた格子状の樹脂製の植物生育保護盤(特許文献2参照)では、トラックなどの大型車両の大荷重に耐えうるだけの機械的強度が確保されていないうえ、植物生育保護盤を配列する工程に先立って、施工面たる地表面に芝生を育成する工程、もしくは、芝生マットを地表面に敷設する工程が必要となるから、現場作業工程数が多くなり、工期の長期化、施工コスト高を招く。
【0102】
さらに、多数の筒をネット状に連結することで各筒の内部に土と芝生を収納する芝生収納部を設けてなる芝生保護パレット(特許文献3参照)では、芝生マットを細切れに切断して、各セルに配置する作業が面倒である。特に、広大な敷地表面積となる駐車場に対する施工を想定した場合、コスト高となる。
【0103】
図16は本発明のもう一つの実施形態に係る植栽用構造体の斜視図である。また、図17は図16の植栽用構造体を分解して本体部材の内部構造を示す斜視図、図18は図17の第1の本体部材について別の方向から見た平面図、図19は図17の第2の本体部材の平面図である。さらに、図20は、図16の植栽用構造体を構成する防護部材の斜視図である。
【0104】
図16の植栽用構造体は、本発明に係る緑化方法において、植物材と組み合わされて敷設体を構成し、歩行者の踏圧や、自動車の上載荷重、回転するタイヤから受ける摩擦などの外力から植物材を保護するために用いられる。
図16乃至図20を参照すると、植栽用構造体は、本体部材(10、20)と、防護部材30とを含む。図16乃至図20に示した植栽用構造体の本体部材は、図1乃至図8を参照して説明した本体部材10を、第1の本体部材(10)とし、この第1の本体部材10を上下反転して、第2の本体部材20と組み合わせることにより構成している点に特徴の一つがある。
【0105】
[第1の本体部材10]
まず、図16乃至図20の植栽用構造体を構成する第1の本体部材10について、図1乃至図8の本体部材10との相違点を中心に説明する。第1の本体部材10は、有底箱状であって、内部空間101と、第1の基板部11と、第1の開口部12と、第2の開口部13と、柱部14と、側壁部15とを有している。
【0106】
第1の基板部11は、有底箱形状の蓋面部分である。第1の基板部11は、一面111において、第2の開口部13が設けられていない部分114に突出部113を有している。突出部113は、複数が一体的な踏み面(S1)を構成し、歩行者の踏圧や、自動車の上載荷重、回転するタイヤから受ける摩擦などの外力を支持する。
【0107】
図18を参照すると、複数の柱部14には、結合機能を有する柱部14が混在していることが分かる。結合機能を有する柱部14は、先端面141の面内に軸部(144)が突設されており、軸部(144)は先端に略球状の膨張部145を有している。図18において膨張部145は、第1の開口部12の開口端縁と相似形となる配置で一点鎖線S145にそって長方形形状に配列されている。もっとも、結合機能を有する柱部14は、必要とされる結合強度に応じて増減させ、又は、配置を適宜変更することができる。
【0108】
[第2の本体部材20]
次に、第2の本体部材20について、図16乃至図20を参照して説明する。第2の本体部材20は、平板状であって、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、塩化ビニル樹脂(PVC)等の熱可塑性樹脂材料を主成分とする成型体である。第2の本体部材20は、第2の基板部21と、複数の排水部22と、複数の嵌合用凹部23とを有している。
【0109】
第2の基板部21は、植栽用構造体の底部分であって、高さ方向Tに一面211と、他面212とが向い合っている。
【0110】
排水部22は、いわゆる有底孔であって、一面211に略正方形形状の開孔端縁を有しており、高さ方向Tに沿って、一面211から他面212に落ち込んでいる。複数の排水部22は、一面211において、長手方向L、及び、幅方向Wにマトリックス状に整列配置され、排水部22が設けられていない部分が、長手方向L、及び、幅方向Wに沿って交差し、格子状、又は、リブ状になっている。排水部22は、第2の開口部13に向かい合う位置に形成されている。
【0111】
排水部22は、内部空間101に植物材が収納された場合に、植物材を通して染み込んでくる雨水などを一時的に貯留する空間として用いられる。なお、排水部22は、高さ方向Tに沿って貫通する貫通構造であってもよい。排水部22が、貫通構造である場合、不要な雨水などを地表面に排出し、芝草の根ぐされ等を防止する通水孔として用いられる。
【0112】
嵌合用凹部23は、いわゆる有底孔であって、一面211に配置されている。嵌合用凹部23は、排水部22の設けられている部分を避け、排水部22によって板面に形成されている格子状部分が交差する部分の交点に配置されている。図19に示す嵌合用凹部23は、有底構造であるが、貫通構造であってもよい。
【0113】
嵌合用凹部23は、内部底面230と、内側面231と、嵌合穴232とを有している。嵌合用凹部23は、柱部14と組み合わされて凹凸嵌合に用いられる構成要素であって、柱部14と向かい合う位置に形成されている。内側面231は、内部底面230から立ち上がり、内部底面230とともに、柱部14の挿入空間を画定している。嵌合穴232は、内部底面230に開口し、第2の本体部材20を高さ方向Tに貫通している。
【0114】
嵌合用凹部23の内部底面230は、柱部14の先端面141に適合する形状を有し、内側面231は、柱部14の周面140に適合する形状を有している。嵌合用凹部23は、第2の基板部21の一面211にマトリックス状に配置され、柱部14の先端面141と向かい合う関係で配置されている。嵌合用凹部23の配置数、及び、配置態様は、柱部14の配置数、及び、配置態様に対応している。
【0115】
内部空間101は、第1の基板部11の他面112と、側壁部15の内面、及び、第2の基板部21の一面211とによって画定され、第2の開口部13によって外部に通じている。
【0116】
[防護部材30]
図16の植栽用構造体において、第2の開口部13には、図20の防護部材30がはめ込まれている。図20の防護部材30は、好ましくはエキスパンドメタルであって、面内に複数の貫通孔33を有し、第2の開口部13を覆っている。防護部材30は、踏み面部35と、第1、第2の脚部36、37とを有し、好ましくは断面コ字状となっている。
また、防護部材30の形状をコ字状の形状として、踏み面部35と第1の脚部36のなす角、及び、踏み面部35と第2の脚部37のなす角度は、ともに直角より僅かに大きくすることが望ましい。防護部材30の形状を、上述した形状にすることにより、第1の本体部材10の柱部14の周りに4個の防護部材30で囲うように配設して、敷設体中を埋め尽くすことができるので、第1の本体部材10の柱部14の強度を高めることができ、結果的に敷設体全体の剛性を高めることが可能になる。
踏み面部35は、第2の開口部13に適合する平面形状を有する。踏み面部35は、長手方向Lに向かい合う両辺を有し、第1、第2の脚部36、37は、踏み面部35の向かい合う両辺から垂下している。貫通孔33は、少なくとも踏み面部35を一面211から他面212に貫通している。
【0117】
図21は図16の植栽用構造体の平面図、図22は図21の22−22線に沿った断面図、図23は図21の23−23線に沿った断面図、図24は図21の24−24線に沿った断面図であり、さらに図25は図24の一部を拡大して示す断面図である。図21乃至図25において、図16乃至図20に示した構成部分と同一の構成部分には、同一の参照符号を付す。
【0118】
図16乃至図20の植栽用構造体について、さらに図21乃至図25を参照し、植栽用構造体を構成する本体部材の内部構造、及び、防護部材30の結合構造を説明する。
【0119】
[本体部材の内部構造]
まず、本体部材の内部構造について、図21乃至図23を参照すると、第1の本体部材10と、第2の本体部材20とは、第1の基板部11の他面112と、第2の基板部21の一面211とが向かい合わせに配置され、柱部14の先端部分が嵌合用凹部23に嵌合され、先端面141が内部底面230に突き当たり、周面140が内側面231によって押さえられている。
【0120】
柱部14は、先端面141が嵌合用凹部23に対して結合され、周面140が内側面231によって押さえられていることにより、第1の本体部材10の水平方向への不正移動が規制され、第1の本体部材10が第2の本体部材20へ固定される。
内部底面230は、先端面141の面形状に適合する形状を有している。柱部14は、先端面141が内部底面230に対して突き当たることにより、第1の本体部材10を第2の本体部材20上に支持する。
【0121】
さらに、図24乃至図25を参照すると、結合機能を有する柱部14は、軸部144が嵌合穴232に圧入され、好ましくは、第2の本体部材20の他面212の側で膨張部145を熱処理して変形させることにより、第1、第2の本体部材10、20を着脱不能に結合することができる。
【0122】
上述した第1、第2の本体部材10、20の結合関係により、植栽用構造体は、第1の本体部材10の他面112と、第2の本体部材20の一面211との相対向面間が、柱部14の突出寸法(T14)に応じて、空間g2が一定に規制されており、この空間g2により第1、第2の基板部11、21の相対向面間に形成される空間的な広がりが、植物材を収納するための内部空間101として用いられる。即ち、柱部14は、支持機能、及び、嵌合機能を有するとともに、空間g2を規制する機能を有することにより、内部空間101の容積を決定している。
【0123】
[防護部材30の結合構造]
次に、防護部材30の結合構造について、図21乃至図23を参照すると、防護部材30は、第2の開口部13に取り付けられている。防護部材30は、第2の開口部13内において、第2の開口部13の開口端縁よりも低い位置に踏み面部35が配置され、配置された状態で、踏み面部35が第2の開口部13を覆っており、且、第1、第2の脚部36、37が第2の基板部21の一面211に突き当たっている。この構造によると、第2の本体部材20の一面211と、防護部材30の踏み面部35との相対向面間が、第1、第2の脚部36、37の長さに応じて、一定の空間に規制され、この空間により第2の本体部材20と、防護部材30との相対向面間に形成される空間的な広がりが、植物材を収納するための内部空間101として用いられる。即ち、第1、第2の脚部36、37は踏み面部35に加えられる外力を支持する機能を有するとともに、植物材を収納するための内部空間101の容積を決定している。
【0124】
図26は本発明のもう一つの実施形態に係る敷設体100の斜視図、図27は図26の敷設体の正面断面図である。図26及び図27において、図16乃至図25に示した構成部分と同一の構成部分には、同一の参照符号を付す。
【0125】
[敷設体]
図26及び図27の敷設体は、図16乃至図25を参照して説明した植栽用構造体1と、植物材41、42と、客土51と、スペーサ52と、不織布53とを含む。
【0126】
植物材41、42は、第2の開口部13から葉先を露出可能な向きで、植栽用構造体1の内部空間(101)に収納され、内部空間(101)に収納された状態で、植物材41、42の表面が防護部材30によって覆われている。
【0127】
不織布53は、第1の基板部11の他面112と、スペーサ52との間に配置されており、余分な雨水等を第2の開口部13を通じて内部空間(101)から排出する際や、敷設体を持ち運びする際などに、客土51が不正漏出する不具合が防止される。
【0128】
柱部14は、植物材41、42が植物材を収納するための内部空間(101)された状態で、植物材41、42と、客土51と、スペーサ52と、不織布53とを上述した順序で高さ方向Tに貫通し、先端部分が嵌合用凹部23に勘合されている。
【0129】
図28乃至図32は、本発明のもう一つの実施形態に係る緑化方法を示す図である。図28及び図32において、図16乃至図27に示した構成部分と同一の構成部分には、同一の参照符号を付す。
【0130】
[敷設体の組立方法および緑化方法]
まず、図28を参照すると、第1の本体部材10を、一面112が下になるように工作台や地表面上に配置し、さらに他面112に対して、植物材41、42を上下反転して、第2の開口部13から葉先を露出可能な向きに案内し、柱部14を植物材41、42の高さ方向Tに貫通させる。複数の柱部14のそれぞれは先細り形状となっており、植物材41、42を容易に貫通する。第2の開口部13には、予め防護部材30が取り付けられ、第2の開口部13が防護部材30により覆われる。
【0131】
図29及び図30を参照すると、柱部14は、植物材41、42を高さ方向Tに貫通し、植物材41、42の根面側に先端面141が露出することにより、植物材41、42が第1の本体部材10に固定される。植物材41、42は、植物(例えば芝草)の育成段階に応じて、葉先が第2の開口部13、及び、防護部材30の貫通孔33を通じて他面(32)から一面(31)に導き出される。
【0132】
図31の工程は、図29及び図30に示した工程のあとの工程であって、植物材41、42の根面上に客土51を投入し、さらに好ましくはスペーサ52、及び、不織布53で、客土51の一面を覆った状態で、第2の本体部材20により挟持する。客土51の投入量や、スペーサ52、及び、不織布53の厚み寸法は、柱部14の突出寸法(T14)の範囲内で予め決定することができる。植物材41、42、客土51、スペーサ52、及び、不織布53を上述した順序で、第1の本体部材10に投入して、第1、第2の本体部材10、20を結合したあと、一面111が上になるように上下反転する。
【0133】
図32の工程は、図31に示した工程のあとの工程であって、図28〜図31を参照して説明した敷設体の組み立て方法により、好ましくは組立工場などで施工対象領域S2に対して必要枚数分の敷設体100a〜dを製造した後、施工現場へ搬送し、敷設体100a〜dを施工対象領域S2に沿って、縦横に連続配置する。図32の工程では、隣接する敷設体100b、cの雄形連結部16および雌形連結部17に対して、敷設体100dを位置決めし、雄形連結部16および雌形連結部17を高さ方向Tから落とし込むなどして、敷設体100a〜d相互に嵌合させる。
【0134】
[図16乃至図32の植栽用構造体、敷設体、敷設体を用いた緑化方法の効果]
図16乃至図25を参照して説明した植栽用構造体の構造、図26及び図27を参照して説明した敷設体の構造、及び、図28乃至図32を参照して説明した緑化方法によると、以下の効果を奏することができる。
【0135】
植栽用構造体1は、有底箱状の第1の本体部材10を有しているから、第1の開口部12を通じて内部空間101に植物材41、42を収納することができる。従って、敷設体(100a〜b)は、植物材41、42を植栽用構造体に収納した状態で持ち運ぶことが可能となり、組立現場から施工現場までの運搬作業、施工現場における施工対象領域S2への敷設作業など施工効率が向上する。
第1の本体部材10の第1の基板部11は、第2の開口部13を有している。植物材41、42は、第2の開口部13から葉先を露出可能な向きで、内部空間101に収納されている。この構造によると、第2の開口部13を通じて植物材41、42の葉先を外部に露出し、緑化された景観を演出することができる。
【0136】
第1の基板部11は、複数の第2の開口部13を有している。通常、第2の開口部13の開口面積を小さくすれば、植物材41、42を外力から保護することができる。しかし、第2の開口部13の開口面積を小さくすれば、その分だけ植物材41、42の露出面積が減少し、緑化された景観を演出することができなくなる。そこで、本発明では、複数の第2の開口部13を、第1の基板部11に、マトリックス状に配置することにより、各第2の開口部13の開口面積を小さくするとともに、全体的な開口面積を最大限確保している。従って、植物材41、42を外力から保護することと、緑化された景観の実現という、相反する要請を同時に達成することができる。
【0137】
第1、第2の本体部材10、20は、第1、第2の基板部11、21が向かい合わせに配置され、柱部14の先端部分が嵌合用凹部23に嵌合されている。この構造によると、第1、第2の本体部材10、20の相対向面間には、柱部14の突出寸法(T14)に応じた空間g2をもつ内部空間101が形成される。従って、この内部空間101に植物材41、42を収納することで、第1、第2の本体部材10、20により植物材41、42を挟持することができる。さらに、第1、第2の基板部11、21の板面形状を予め調節することにより、内部空間101に様々な平面形状の植物材41、42を挟持することができる。
【0138】
柱部14は、先端部分に平らな先端面141を有する先細り形状であって、第1の基板部11と一体的に成形され、複数が、他面112にマトリックス状に突設されている。従って、仮に第1の基板部11の一面111に荷重が加えられたとしても、この荷重を複数の柱部14で分散して支持し、第1、第2の本体部材10、20の間の空間g2が縮小する不具合を回避し得る。具体的に、図33に示すように、第1の基板部11の一面111に自動車の上載荷重F1が加えられたとしても、空間g2が一定に保たれることとなり、自動車の上載荷重F1によって植物材41、42が押し固められてしまう問題は生じない。
【0139】
また、第2の開口部13に露出する植物材41、42の表面は、その周りが第1の基板部11の一面111によって囲まれているから、図33に示すように、タイヤ6が主に一面111によって受けられ、植物材41、42の表面を摩擦力F2から保護することができる。
【0140】
さらに、タイヤ6と、植物材41、42の表面との間には突出部113に応じた空間g3があり、複数の突出部113が一体的な踏み面S1を構成しているから、摩擦力F2が突出部113、及び、踏み面S1によって受けられ、植物材41、42の表面を摩擦力F2から保護することができる。この構造によると、防護部材30の貫通孔33から外部に露出する植物材41、42の葉先が、摩擦力F2を受けたときに、貫通孔33の開口端縁に挟まれて刈り取られてしまう不都合は生じない。従って、敷設体100の一面に常に植物材41、42の葉先が露出している状態を保ち、緑化された景観を演出することができる。
【0141】
さらに敷設体100において、柱部14が、植物材41、42を貫通していることにより、第1の本体部材10、及び、第1の基板部11が柱部14によって、植物材41、42と一体化される。これにより、摩擦力F2が、第1の基板部11に加えられた場合、第1の基板部11には植物材41、42の重量による制動力が働く。従って、第1の本体部材10が、植物材41、42を置き去りにして、水平移動してしまうなどの不正移動が抑制され、第1の本体部材10、及び、第1の基板部11による植物材41、42の保護状態が良好に維持される。
【0142】
内部空間101の内部には、柱部14が突設されているから、例えば植物材41、42の根は柱部14を避けて内部空間101を自由に育成し、雨水等は柱部14を避けて内部空間101を自由に移動する。従って、敷設体100を敷設した後の植物材の育成コスト、維持管理コストを低減することができる。
【0143】
植物材41、42は、第1、第2の本体部材20、20により挟持された状態で内部空間101に収納されている。ここで、第1の本体部材10は側壁部15を有し、側壁部15は、他面の周縁から柱部14の突出寸法(T14)に応じて立ち上がっているから、植栽用構造体1の側面は、側壁部15で覆われていることとなる。この構造によると、植物材41、42を植栽用構造体1と一体に持ち運ぶことが可能であり、製造工場から施工現場までの敷設体100の運搬作業、施工現場における敷設作業が容易になる。
【0144】
図16乃至図34の敷設体は、植物材41、42の葉先を露出するための第2の開口部13が防護部材30で覆われている点で、図1乃至図15の敷設体と同様の作用効果を奏することができる。例えば、植物材41、42は、シート状またはマット状であって、第2の開口部13から葉先を露出可能な向きで、内部空間101に収納され、収納された状態で、植物材41、42の表面が防護部材30によって覆われている。この構造によると、防護部材30の貫通孔33を通じて植物材41、42の葉先を外部に露出し、緑化された景観を演出することができる。
【0145】
防護部材30の貫通孔33は、婦人靴の踵部の先端が通過不能な開孔形状、及び、差し渡し寸法を有し、好ましくは最小差し渡し孔径D33が10mm以下である。通常、婦人靴の踵部71の先端部の直径は10mmよりも大きいから、歩行者が、パンプスやハイヒールなど細長い踵部71を有する婦人靴を履いて敷設体100上を歩いた場合でも、踵部71が植栽用構造体1の内部に没入する不具合は回避される。図34の実施形態において、仮に防護部材30がないとすると、踵部71は、植物材41、42を貫通し、さらに客土51、スペーサ52、不織布53を貫通して地表面8にまで達する。すなわち、芝生上を直接ハイヒールで歩いた場合よりも、植栽用構造体1の厚みの分だけ踵部71の没入距離が拡大され、踵部71の没入距離が拡大された分だけ、大きくバランスを崩し、思わぬ転倒事故が生じる。
【0146】
これに対し、本願発明では、防護部材30によって第2の開口部13を覆うことにより、歩行者の靴裏70が突出部113に支持された状態で、踵部71の先端部の没入距離が防護部材30の一面(31)まで留められる。従って、植物材41、42を婦人靴の踵部71から保護するとともに、踵部71が植栽用構造体1の内部に没入することにより生じる転倒事故を未然に防止し、歩行者の安全を確保することができる。
【0147】
防護部材30の形状をコ字状の形状として、踏み面部35と第1の脚部36のなす角、及び、踏み面部35と第2の脚部37のなす角度は、ともに直角より僅かに大きくすることが望ましい。防護部材30の形状を、上述した形状にすることにより、第1の本体部材10の柱部14の周りに4個の防護部材30で囲うように配設して、敷設体中を埋め尽くすことができるので、第1の本体部材10の柱部14の強度を高めることができ、結果的に敷設体全体の剛性を高めることが可能になる。
【0148】
図35は、本発明の更にもう一つの実施形態に係る緑化方法を示す図である。図35において、図16乃至図34に示した構成部分と同一の構成部分には、同一の参照符号を付す。
【0149】
[もう一つの実施形態に係る緑化方法]
図35に示す緑化方法は、図28乃至図32を参照して説明した緑化方法において、第1の本体部材10に、不織布53と、スペーサ52と、客土51と、植物材41、42と上述した順序で投入し、第2の本体部材20と結合して反転した後、又は、施工対象領域S2に沿って縦横に配置した後の何れかの時点で、防護部材30を第2の開口部13にはめ込むことにより、図26及び図27に示した敷設体100を構成するものである。図35の緑化方法によっても、図16乃至図34を参照して説明した緑化方法と同様の作用効果を奏することができる。
【0150】
図36は本発明の緑化方法に用いられる防護部材について別の実施形態を示す斜視図、図37は図36の防護部材30の平面図である。図36及び図37において、図16乃至図35に示した構成部分と同一の構成部分には、同一の参照符号を付す。
【0151】
図36及び図37の防護部材30は、図16乃至図32を参照して説明した緑化方法に用いられる防護部材30について、別の実施形態を示すものである。
【0152】
図16乃至図32を参照して説明したように、この種の植栽用構造体に開口部を設け、植物材の葉先を外部に露出した場合、緑化された景観を演出しうる反面、開口部に婦人靴の踵部が没入し、思わぬ転倒事故が生じる。本願発明に係る防護部材30は、上述問題を解決するものであって、植物材41、42の葉先を外部に露出するとともに、婦人靴の踵部71が没入する不具合を回避する点に特徴がある。従って、上述問題を解決しうる範囲で、様々な形態をとることができる。
【0153】
[もう一つの実施形態に係る防護部材30]
図36及び図37の防護部材30は、好ましくはパンチングメタルを用いることができる。防護部材30は、踏み面部35と、第1、第2の脚部36、37とを有し、好ましくは断面コ字状となっている。第1、第2の脚部36、37は、踏み面部35の向かい合う両辺から、踏み面部35に対して垂下している。
【0154】
踏み面部35は、長手方向Lで向かい合う2片を有し、面内に複数の貫通孔33を有している。貫通孔33は、長手方向Lに沿って伸びる長孔であって、踏み面部35から第1の脚部36の上部側面、及び、踏み面部35から第2の脚部37の上部側面において、一面31から他面32に貫通している。貫通孔33は、一面31で見た開口部分の最小差し渡し孔径D33が10mm以下である。複数の貫通孔33は、長手方向Lに向かい合う踏み面部35の両辺において、3つが幅方向Wに沿って横並びに配置されている。
防護部材30の踏み面部35は、第2の開口部(13)の開口形状に適合する形状を有し、第2の開口部(13)内において、第2の開口部(13)の開口端縁よりも低い位置に配置され、配置された状態で、踏み面部35が第2の開口部(13)を覆い、且、第1、第2の脚部36、37が、第2の基板部(21)の一面(211)に突き当たる。
【0155】
図36及び図37の防護部材30を用いても、図16乃至図32を参照して説明した緑化方法の作用効果を奏することができる。
【0156】
図38は本発明の更にもう一つの実施形態に係る植栽用構造体1の斜視図、図39は図38の敷設体の正面断面図である。図38及び図39において、図16乃至図37に示した構成部分と同一の構成部分には、同一の参照符号を付す。
【0157】
[もう一つの実施形態に係る植栽用構造体]
図38及び図39の植栽用構造体は、第1の本体部材10と、防護部材30との組み合わせに特徴の一つがある。図38の植栽用構造体において、防護部材30は、第1の本体部材11の一面111に取り付けられ、複数の第2の開口部13を一体的に覆っている。一面111と、防護部材30との結合構造について、以下、図39を参照して説明する。
【0158】
第1の基板部11は、外面において第2の開口部13が設けられていない部分114に突出部113を有している。
【0159】
防護部材30は、面内に第3の開口部(34)を複数有している。図39において、第3の開口部(34)は、突出部113に適合する開口形状及び径寸法を有している。防護部材30は、一面111と向かい合う関係で配置され、突出部113が第3の開口部34に案内され、第3の開口部34の開口端縁が、突出部113の周囲の一面111に載置される。防護部材30は、第2の開口部13を覆い、第2の開口部13を覆った状態で、突出部113が防護部材30の一面31に突出している。図38及び図39の防護部材30は、一面111に配置され、配置された状態で、防護部材30の一面31が、第2の開口部13の開口端縁より高く、突出部113の表面より低い位置にある。
【0160】
図38及び図39の植栽用構造体1によっても、植物材41、42の葉先を外部に露出するための第2の開口部13が防護部材30によって覆われているから、図16乃至図32を参照して説明した緑化方法の作用効果を奏することができる。
【0161】
さらに、防護部材30の一面31と、突出部113の表面との間には、突出部113の突出寸法に応じた高低差が生じ、この高低差に基づく空間g3が生じる。従って、第2の開口部13、及び、防護部材30の貫通孔33を通じて外部に露出された植物材41、42の葉先を、歩行者の踏圧や、自動車の上載荷重、回転するタイヤから受ける摩擦などの外力から保護することができる。
【0162】
以上、好ましい実施例を参照して本発明の内容を具体的に説明したが、本発明の基本的技術思想及び教示に基づいて、当業者であれば、種種の変形態様を採り得ることは自明である。
【符号の説明】
【0163】
100 敷設体
1 植栽用構造体
10 本体部材(第1の本体部材)
11 第1の基板部
12 第1の開口部
13 第2の開口部
14 柱部
20 第2の本体部材
30 防護部材
33 貫通孔
41、42 植物材
L 長手方向
W 幅方向
T 高さ方向
D33 最小差し渡し孔径

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体部材と、防護部材とを含む植栽用構造体であって、
前記本体部材は、有底箱状であって、開口部と、底部と、内部空間と、複数の柱部を有しており、
前記開口部は、前記底部に向かい合い、前記内部空間に連通しており、
前記複数の柱部は、それぞれ先端部分に平らな先端面を有する先細り形状であって、前記底部と一体的に成形され、前記底部にマトリックス状に突設されており、
前記防護部材は、面内に複数の貫通孔を有し、前記開口部を覆い、前記開口部を覆った状態で、前記柱部の前記先端部分によって支持されており、
前記貫通孔は、婦人靴の踵部の先端が通過不能な孔形を有している、
植栽用構造体。
【請求項2】
本体部材と、防護部材とを含む植栽用構造体であって、
前記本体部材は、第1の本体部材と、第2の本体部材とを有しており、
前記第1の本体部材は、複数の開口部と、第1の基板部と、複数の柱部と、内部空間とを有しており、
前記複数の開口部は、それぞれ前記第1の基板部の一面から他面に貫通し、前記第1の基板部にマトリックス状に配置されており、
前記複数の柱部は、それぞれ先端部分に平らな先端面を有する先細り形状であって、前記第1の基板部と一体的に成形され、前記第1の基板部の前記他面にマトリックス状に突設されており、
前記第2の本体部材は、第2の基板部と、複数の排水部と、複数の凹部とを有しており、
前記複数の排水部は、前記第2の基板部の一面から他面に落ち込み、前記第2の基板部の前記一面にマトリックス状に配置されており、
前記複数の凹部は、それぞれ有底孔であって前記柱部の前記先端部分の周面、及び、前記先端面に適合する形状を有し、前記第2の基板部の前記一面にマトリックス状に配置されており、
前記第1の本体部材と、前記第2の本体部材とは、前記第1の基板部の前記他面と、前記第2の基板部の前記一面とが向かい合わせに配置され、前記配置された状態で前記柱部の先端部分が、前記第2の本体部材の前記凹部に嵌合されており、
前記内部空間は、前記第1の基板部の前記他面と、前記第2の基板部の前記一面との向かい合わせ面間に形成されており、
前記防護部材は、面内に複数の貫通孔を有し、前記開口部を覆っており、
前記貫通孔は、婦人靴の踵部の先端が通過不能な孔形を有している、
植栽用構造体。
【請求項3】
請求項1又は2に記載された記載された前記植栽用構造体であって、
前記防護部材は、前記開口部の内部に配置され、前記配置された状態で、前記防護部材の一面が、前記開口部の開口端縁より低い位置にある、
植栽用構造体。
【請求項4】
請求項1乃至3に記載された植栽用構造体であって、
前記貫通孔は、最小差し渡し孔径が10mm以下である、
植栽用構造体。
【請求項5】
植栽用構造体と、植物材とを含む敷設体であって、
前記植栽用構造体は、請求項1乃至4の何れかに記載されたものでなり、
前記植物材は、シート状またはマット状であって、前記開口部から葉先を露出可能な向きで、前記内部空間に収納され、前記収納された状態で、前記植物材の表面が前記防護部材によって覆われている、
敷設体。
【請求項6】
請求項5に記載された敷設体を用いて緑化する方法であって、
複数の前記敷設体を施工対象領域に配置し、
隣接する前記敷設体を結合する、
工程を含む緑化方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate

【図24】
image rotate

【図25】
image rotate

【図26】
image rotate

【図27】
image rotate

【図28】
image rotate

【図29】
image rotate

【図30】
image rotate

【図31】
image rotate

【図32】
image rotate

【図33】
image rotate

【図34】
image rotate

【図35】
image rotate

【図36】
image rotate

【図37】
image rotate

【図38】
image rotate

【図39】
image rotate


【公開番号】特開2011−23(P2011−23A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−144578(P2009−144578)
【出願日】平成21年6月17日(2009.6.17)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【出願人】(394022794)古河総合設備株式会社 (8)
【出願人】(591084654)エバタ株式会社 (35)