説明

植栽装置とこれに使用する保水・排水基板

【課題】ある一点で潅水した水が土壌層の下で広範囲にわたり保水され終にはこの保水された水が広範囲に土壌層に浸透することにより、効率よく潅水できる機能を有する植栽装置とこれに用いる保水・排水基板を実現する。
【解決手段】下地に設けられる防水層と、植物根の防水層への侵出を防止するために前記防水層上に形成される防根層と、この防根層の上に形成される保水・排水基盤層と、この保水・排水基盤層上に敷設される土壌層とを具え、この保水・排水基盤層は、上面が開口する保水空間と下面が開口する横排水空間とが交互にそれぞれ複数配設されるとともに横排水空間と直交して複数の縦排水空間が配設されてなり、前記横排水空間の上面に形成されて保水空間の上面より高い頂面を有する島部と、前記島部の頂面に設けられて前記土壌層と前記横および縦排水空間との間の通気(エアレーション)をなすための通気孔を具えた植栽装置を提供して、上記従来の課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、屋上その他の緑化装置としての植栽装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、建造物の屋上やその他の空間に大規模に植物を植栽し、都市部における無機的な空間の緑化を図る試みが盛んになされるようになっている。
このような時、多くの場合は、建造物等のスラブ面の防水層上に押えのコンクリート層を形成し、この上に、植栽層として、砂、砂利等からなる砂利層と、客土層を順次積層して植物を植栽するようにしている。
【0003】
しかしながら、植物にとって十分な保水性、排水性を得るためには、防水層にかなりの土砂を導入する必要があり、しかもコンクリート層はかなりの重量を有するため、これらの重量が建造物に悪影響を及ぼすという問題がある。そこで、本出願人は、先に保水性、排水性に優れた軽量の植栽装置を開示している(例えば特許2531542号公報参照)。
【0004】
この植栽装置は、建造物の屋上等に形成されているスラブ面に防水層を固定するとともに、この防水層の上面に、不織布等を有する保水材と、凹部及び凸部2を有するドレイン板等とからなる保水給排水手段を設け、さらにこの保水給排水手段の上方に砂利層および客土層からなる植栽層を積層したものとなっており、前記保水給排水手段等によって適正な保水性、排水性を得られるものとなっている。
【0005】
ところで、植栽装置が設置される建造物の屋上、屋根にはいわゆる水勾配が設定されていて頂部から排水部に向けて傾斜面となっている。 このため、上記従来技術では潅水による水は水勾配に沿って流下するが水勾配と直交する方向には流れない。
【0006】
例えば所定位置でいわゆる点滴潅水をなした場合、潅水箇所の近傍では土壌に水が浸透して残余の水は保水され、その後、保水部をオーバーフローした水は水勾配に沿って下流側に移動して土壌に浸透したり、下流側の保水部に貯留される。 すなわち、点滴潅水による水は水勾配に沿って下流に流れるが水勾配に直交する方向に流れることがない。 したがって、点滴潅水により土壌全体に水を満遍なく行き渡らせたり、土壌層の下面の保水部全体に水を貯留するには大量の水を潅水したり、あるいは点滴潅水点を多数設ける必要がある。また、広域スプリンクラー装置を使用すれば水を全体に浸透させかつ広い範囲で保水できるが、コスト高を避け得ない。
なお、本願発明に関する文献としてつぎのようなものが存在する。
【特許文献1】特開平11−318210号公報
【特許文献2】特開平11−318205号公報
【特許文献3】特開2001−8546号公報
【特許文献4】特開2004−298146号公報
【特許文献5】特開2005−118104号公報
【特許文献6】特開平11−32578号公報
【特許文献7】特開2007−49957号公報
【特許文献8】特開2007−20464号公報
【特許文献9】特開2007−6798号公報
【特許文献10】特開2006−230355号公報
【特許文献11】特開2006−204190号公報
【特許文献12】特開2006−180746号公報
【特許文献13】特開2006−161484号公報
【特許文献14】特開2005−58178号公報
【特許文献15】特開2002−335762号公報
【特許文献16】特開2001−178269号公報
【特許文献17】特開平11−32578号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本願発明は、ある一点で潅水した水が土壌層の下で広範囲にわたり保水され終にはこの保水された水が広範囲に土壌層に浸透することにより、効率よく潅水できる機能を有する植栽装置とこれに用いる保水・排水基板を提供して上記従来の課題を解決しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願発明は、建造物の屋上、屋根等に形成される植栽装置であって、下地に設けられる防水層と、植物根の防水層への侵出を防止するために前記防水層上に形成される防根層と、この防根層の上に形成される保水・排水基盤層と、この保水・排水基盤層上に敷設される土壌層とを具え、この保水・排水基盤層は、上面が開口する保水空間と下面が開口する横排水空間とが交互にそれぞれ複数配設されるとともに横排水空間と直交して複数の縦排水空間が配設されてなり、前記横排水空間の上面に形成されて保水空間の上面より高い頂面を有する島部と、前記島部の頂面に設けられて前記土壌層と前記横および縦排水空間との間の通気(エアレーション)をなすための通気孔を具えた植栽装置を提供して、上記従来の課題を解決する。
【0009】
上記段落0008の植栽装置において、前記保水空間と排水空間は屋上、屋根等の水勾配と直交するように設定することがある。
【0010】
また、段落0008又は0009の植栽装置において、前記保水・排水基盤層の固定をなすとともに土壌層の土壌の揺動防止、防風ネット等の係止、植物の根張り促進等のために防根層に固定される多機能突起体とを具えこの多機能突起体は保水・排水基盤層に形成した係合穴に嵌合するように構成することがある。
【0011】
さらに、段落0008ないし0010いずれかの植栽装置において、前記保水・排水基盤層は所定単位面積の方形状をなす単数又は複数の板状保水・排水基板を敷設してなり、複数の板状保水・排水基板はそれぞれの端縁に形成されるタブを重ね合わせて連設するように構成することがある。
【0012】
またさらに、段落00008ないし0011いずれかの植栽装置において、建造物の屋上、屋根の水勾配最上流部において潅水口を設置する構成となすことがある。
【0013】
本願発明は又、上面が開口する保水空間と下面が開口する横排水空間とが交互にそれぞれ複数配設されるとともに前記保水空間ならびに横排水空間と直交して複数の縦排水空間が形成されてなり、前記横排水空間の上面に形成されて保水空間の上面より高い頂面を有する島部と、前記島部の頂面に設けられて上面に積層される土壌層と前記横および縦排水空間との間の通気(エアレーション)をなすための通気孔を具えてなる保水・排水基板を提供して、上記従来の課題を解決しようとするものである。
【0014】
また、段落0013の保水・排水基板において、端縁にはタブを形成して隣り合って敷設される保水・排水基板にあって水勾配上流側の保水・排水基板タブの下に下流側の保水・排水基板タブを挿し込めるようにして水漏れを防止するように構成することがある。
【0015】
さらにまた、段落0013又は0014の保水・排水基板において、保水・排水基板を樹脂材で形成するとともに前記島部の頂面に十字形状のカッター誘導溝を形成して任意箇所でのカッターによる切断を迅速容易になし得るように構成することがある。
【発明の効果】
【0016】
本願発明は、以上説明したような構成により、植栽装置の土壌層の所定点で潅水した場合、水は保水空間で横方向すなわち水勾配と直交する方向に広がり、この保水空間が満たされると水はオーバーフローして勾配方向次段の保水空間に流れるので、水が効率よく縦横広い範囲で保水され保水された水は順次土壌の広い範囲で浸透可能になるので少数の潅水点で最小の潅水量で水を無駄なく土壌層に供給できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本願発明に係る植栽装置は、下地に設けられる防水層と、植物根の防水層への侵出を防止するために前記防水層上に形成される防根層と、この防根層の上に形成される保水・排水基盤層と、この保水・排水基盤層上に敷設される土壌層とを具え、この保水・排水基盤層は、上面が開口する保水空間と下面が開口する横排水空間とが交互にそれぞれ複数、水勾配と直交するように配設されるとともに、前記保水空間ならびに横排水空間に直行する縦排水空間が形成されていて、排水空間の上面に形成されて保水空間の上面より高い頂面を有する島部と、前記島部の頂面に設けられて前記土壌層と前記横と縦の排水空間との間の通気(エアレーション)をなすための通気孔を具える構成を有するが、防根層と保水・排水基盤層との間に保水・保護シートを介装するのが望ましい。
【0018】
保水・保護シートは、防根層と土壌層との間にあって防根層の保護機能のみでなく緩衝層としての機能をも有する意味で、繊維、ゴム、アスファルトルーフィング等を使用できるが、保水の見地からは繊維、不織布、アスファルトルーフィング材等が好ましい。
【0019】
また、この植栽装置には前記保水・排水基盤層の固定をなすとともに土壌層の土壌の揺動防止、防風ネット等の係止、植物の根張り促進等のために防根層に固定される多機能突起体を設け、この多機能突起体は保水・排水基盤層に形成した係合穴に嵌合させるようにする。
【0020】
そして、前記保水・排水基盤層は上面が開口する保水空間と下面が開口する横排水空間とが交互にそれぞれ複数配設されて、さらに保水空間ならびに横排水空間と直交する縦排水空間を有してなり、排水空間の上面に形成されて保水空間の上面より高い頂面を有する島部と、前記島部の頂面に設けられて上面に積層される土壌層と前記横および縦排水空間との間の通気(エアレーション)をなすための通気孔を具えて樹脂材で一体に形成された保水・排水基板で構成するのが好ましい。
【0021】
なお、建造物の屋上、屋根の水勾配最上流部において潅水口を任意箇所に設置し、潅水により供給された水は土壌層を通過してまず、最上段の保水空間に達する。 この保水空間に達した水は空間内で横手方向すなわち水勾配と直交する方向に流れる。そして、この保水空間が満たされると、水はオーバーフローして土壌層の下部を通過して次段の保水空間に達して、前記と同様に空間内で横手方向すなわち水勾配と直交する方向に流れ、この保水空間が満たされると、水はオーバーフローして土壌層の下部を通過して3段目の保水空間に達する。そして、この水の移動が順次繰り返されて、最終的に最下段のこの保水空間が満たされると、水は最下段の保水空間の長手方向すなわち水勾配と直行する方向の側壁から溢れて適宜排水される。なお、各保水空間の長手方向すなわち水勾配と直行する方向の端部には側壁が設けられている。
【0022】
前記のように、水が最下段の保水空間に達するまでに土壌層の下面全般に水が浸透し、かつ全部の保水空間に水が貯留されているから保水空間に接する土壌層下部から水は常時土壌層に浸透し、結果として適量の潅水により適正な水分供給が過不足なく行われることになる。
【0023】
また、保水・排水基板の端縁にはタブを形成して、隣り合って敷設される保水・排水基板にあって水勾配下流側の保水・排水基板タブの下に上流側の保水・排水基板タブを挿し込めるようにして簡単な作業で水漏れを防止するようになす。
【0024】
さらに、保水・排水基板において、前記島部の頂面に十字形状のカッター誘導溝を形成して任意箇所でのカッターによる切断を迅速容易になし得るようにして施工現場での作業効率を向上させるようにする。
【0025】
さらにまた、前述の多機能突起体は棒状体の物でも良いが、好ましくは断面が台形状を有する中空円錐台をなすものを使用する。 防根層上に固着された多機能体としての複数の円錐台は保水・保護シート、保水・排水層(板)上に突出して土壌層中に散在する状態とする。 このようにして、円錐台の上端は土壌層の上方に臨んで、その上端には例えば防風ネットが係止され、また、円錐台が土壌層中に散在することにより土壌層の土壌の動揺を防止して風による飛散を抑制するとともに植物の根張りを良好にする。 風対策としては多機能突起体を棒状のもので構成するより円錐台で構成するほうが効果的である。
【0026】
防根層としての防根シートは、各種の樹脂フィルムで形成され、裏面には粘着層を有して建造物の防水層等への貼付を強固かつ容易になし得るようになっている。 フィルムを構成する樹脂としてはポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン、塩ビ等が好適である。
【0027】
樹脂フィルムは植物根の侵出を遮断するために所定の強度を有することが不可欠であるが、施工性、運搬性、経済性等を考慮すればできるだけ薄いものが好ましい。 本願発明者らは、実験結果の分析により、前記要求性能を具備するに必要十分なフィルム厚さを見出した。 これによれば、ポリエチレンテレフタレート(PET)では、厚さ75ミクロン前後、ポリエチレンでは厚さ300ミクロン前後、ポリプロピレンでは厚さ100ミクロン前後が、好ましいことが判明した。
【0028】
防根シートは、防水層上に貼付され、この上には保護層を介して植物土壌層が形成されて植物根の防水層等への侵出を防止するようになっている。 そして、防根シートの貼付に際しては隣接する部分を重ね合わせることになるが、この重ねあわせ部分の粘着層から植物根が侵入する可能性が生じる。しかし、一般に植物根の先端部の径は40ミクロンないし50ミクロンである。 このため、樹脂フィルムの裏面の粘着材層の厚さを30ミクロン程度に設定すれば、樹脂フィルムの重ね合わせ部の粘着層からの侵入は防止できることになる。
【0029】
以下、本願発明に係る植栽装置と保水・排水基板の1実施例を図面に基づいて説明する。
図1は、当該実施例に係る植栽装置の一部断面図である。図において、Aは建造物の屋上のコンクリートスラブ面に貼着される防水層であり、この防水層Aの上面には、植物の毛根等の防水層への進出を防止するための樹脂製の防根層Bが張設されている。 また、防根層B上には保水・保護シートPが貼付されている。
【0030】
Cは、保水・排水基盤層を構成する樹脂または金属製の保水・排水基板で、全面にわたり保水空間1と横排水空間2とが複数一体に形成されている。 なお、これら保水空間1と横排水空間2とそれぞれは屋上、屋根等の水勾配と直交するように設定されている。
保水・排水基板Cの上部には種々の植物等が植立される客土層Dがその表面に防風ネットEを有して積層設置されている。
【0031】
防根層B上にはアスファルトルーフィング材による保水・保護シートPならびに保水・排水基板Cを貫通して中空の円錐台形状の多機能突起体3が固着されている。この円錐台形状の多機能突起体3は、土壌D中に複数散在して設置され、その上端面は土壌表面に露出していて、そこに防風ネットEが係止されるようになっている。保水・保護シートP(アスファルトルーフィング材)は、円錐台形状の多機能突起体3の防根層B表面への固着後に張設されるが、その際、アスファルトルーフィング材Pはその所定位置に形成されたスリット部分を通して多機能突起体3を上方に突出させるようにして張設することになる。
【0032】
図2は、所定単位面積の方形状をなす複数の板状保水・排水基板Cの敷設により形成される保水・排水基盤層の一部を示す斜視図であり、複数の板状保水・排水基板4,5はそれぞれの端縁に形成されるタブT4、T5を重ね合わせて矢符Mに示す水勾配方向に沿って連設されている。 すなわち、水勾配上流側の保水・排水基板4のタブT4の下に下流側の保水・排水基板のタブT5を挿し込むようにして水漏れを防止している。
また、水勾配に直交する各保水空間1は上面開口する溝部で構成されてその両端部は壁で閉塞されている(図示の関係上、左方の壁は省略してある)。また、各保水空間1と交互に形成される各横排水空間2は下面が開口する溝で構成されこの溝の両端は通水のために開口している。 さらに、保水空間1ならびに横排水空間2と直交するように複数の縦排水空間が形成されている(図3参照)。
そして、各保水空間1には複数の堰1a,1a....が設けられていて、このため溝内には複数の貯水部が形成されることになる。 なお、前記堰1aの高さは溝である保水空間1の深さより低くなっており、水は堰1aを超えて貯水部から貯水部へと移動するようになっている。なお、この実施例では、縦排水空間が各保水空間1を構成する溝を貫通することによりその保水空間1としての溝の底部に複数の突起部が形成されこの突起部により各堰1aが構成されている。
【0033】
図3は、保水空間1、横排水空間2および縦排水空間の関連構成を示す一部切欠斜視図である。図において、1は前述した保水空間、2は横排水空間であり、これらと直行するように下面開口する縦排水空間6が形成されている。前述のように縦排水空間6を構成する下面開口の溝部は、保水空間1としての溝部を貫通するが、この貫通により前記溝部には複数の突起部すなわち縦排水空間6の底部および側壁部による突起部が堰1a,1aとして形成されることになる。 そして、複数の堰1aにより保水空間1としての溝部は複数に区画されて前述のように複数の貯水部が形成されることになる。
【0034】
また、図3において、7は横排水空間2の上面、換言すれば横排水空間2としての溝部の底部外側に突出形成された島部であり、この島部7の頂面には土壌層と各排水空間2,6との間の通気(エアレーション)をなすための通気孔7aが形成されている。 そして、図示のように島部7には十字状のスリットによりカッター誘導溝7bが形成されていて、施工時に保水・排水基板を任意箇所でのカッターによる切断が迅速容易になし得るようになっている。
【0035】
なお、本願に係る植栽装置は潅水パイを土壌層中又は土壌層表面に有してスポット潅水(点滴潅水)を行うようになっている。 パイプの潅水口は土壌層において任意点に設置すればよいが、好ましくは建造物の屋上、屋根の水勾配最上流部において潅水口を設置する。これにより、水が上下左右に満遍なく行き渡り土壌層を潤すことになる。
【0036】
次に、本願植栽装置における潅水による水の挙動について、図2を中心に説明する。潅水パイプの潅水口から供給された水は土壌層に浸透して、例えば図2における保水・排水基板4の左端の保水空間1に滴下する。 滴下した水は堰1a、1aによる貯水部のいずれかに貯留され、やがては堰1aをオーバーフローして隣接する貯水部に流入し、これが順次繰り返されて左端の保水空間1は満水になる。 満水状態を超えると、水は水勾配に沿って矢符M方向に流れ出し前記保水空間1の下流側(図2で右隣)の横排水空間2の頂部に形成される島部7,7の間においてオーバーフローして次段の保水空間1に至り、水の供給が継続すればこの保水空間1をも満水にし、前記同様の挙動が繰り返されて水は順次、全保水空間を満たすことになる。
【0037】
潅水により全保水区間に水が満たされると、水は常時保水空間に接する土壌層においてその全域にわたり必要な水分が供給されることになる。 従来は、土壌層にスポット潅水する場合、潅水点に水が偏在してしまうから、これを解消して土壌層の全域に水を行き渡らせるには大量に水を供給する必要があり、全域に行き渡るまでに供給された水の多くは潅水点近傍で土壌層から流下して排水されてしまっていた。 これに対して、本願発明にあっては前記のように水は土壌層の下面全域をカバーする保水空間に貯留されることになるから従来のように大量の水を供給してその大部分を浪費してしまうような不都合は発生しない。 適量の水で土壌層にくまなく潅水することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本願発明に係る植栽装置の一実施例を示す一部切欠断面図である。
【図2】所定単位面積の方形状をなす複数の板状保水・排水基板Cの敷設により形成される保水・排水基盤層の一部を示す斜視図である。
【図3】保水空間、横排水空間および縦排水空間の関連構成を示す一部切欠斜視図である。
【符号の説明】
【0039】
A........防水層
B........防根層
C........保水・排水基盤層
P........保水・保護シート
D........土壌層
E........防風ネット
1........保水空間
2........横排水空間
4、5......保水・排水基板
6........縦排水空間
7........島部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建造物の屋上、屋根等に形成される植栽装置であって、下地に設けられる防水層と、植物根の防水層への侵出を防止するために前記防水層上に形成される防根層と、この防根層の上に形成される保水・排水基盤層と、この保水・排水基盤層上に敷設される土壌層とを具え、この保水・排水基盤層は、上面が開口する保水空間と下面が開口する横排水空間とが交互にそれぞれ複数配設されるとともに横排水空間と直交して複数の縦排水空間が配設されてなり、前記横排水空間の上面に形成されて保水空間の上面より高い頂面を有する島部と、前記島部の頂面に設けられて前記土壌層と前記横および縦排水空間との間の通気(エアレーション)をなすための通気孔を具えたことを特徴とする植栽装置。
【請求項2】
請求項1記載の植栽装置において、前記保水空間と横排水空間は屋上、屋根等の水勾配と直交するように設定されたことを特徴とする植栽装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の植栽装置において、前記保水・排水基盤層の固定をなすとともに土壌層の土壌の揺動防止、防風ネット等の係止、植物の根張り促進等のために防根層に固定される多機能突起体とを具えこの多機能突起体は保水・排水基盤層に形成した係合穴に嵌合したことを特徴とする植栽装置。
【請求項4】
請求項1ないし3いずれか記載の植栽装置において、前記保水・排水基盤層は所定単位面積の方形状をなす単数又は複数の板状保水・排水基板を敷設してなり、複数の板状保水・排水基板はそれぞれの端縁に形成されるタブを重ね合わせて連設したことを特徴とする植栽装置。
【請求項5】
請求項1ないし4いずれか記載の植栽装置において、建造物の屋上、屋根の水勾配最上流部において潅水口を設置したことを特徴とする植栽装置。
【請求項6】
上面が開口する保水空間と下面が開口する横排水空間とが交互にそれぞれ複数配設されるとともに前記保水空間ならびに横排水空間と直交して複数の縦排水空間が形成されてなり、前記横排水空間の上面に形成されて保水空間の上面より高い頂面を有する島部と、前記島部の頂面に設けられて上面に積層される土壌層と前記排水空間との間の通気(エアレーション)をなすための通気孔を具えたことを特徴とする保水・排水基板。
【請求項7】
請求項6記載の保水・排水基板において、端縁にはタブを形成して隣り合って敷設される保水・排水基板にあって水勾配上流側の保水・排水基板タブの下に下流側の保水・排水基板タブを挿し込めるようにして水漏れを防止するようにしたことを特徴とする保水・排水基板。
【請求項8】
請求項6又は7記載の保水・排水基板において、保水・排水基板を樹脂材で形成するとともに前記島部の頂面に十字形状のカッター誘導溝を形成して任意箇所でのカッターによる切断を迅速容易になし得るようにしたことを特徴とする保水・排水基板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−110289(P2012−110289A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−263136(P2010−263136)
【出願日】平成22年11月26日(2010.11.26)
【出願人】(000217365)田島ルーフィング株式会社 (78)
【出願人】(505466826)田島緑化株式会社 (27)
【Fターム(参考)】