説明

植毛幅木

【課題】 建築物の洋室などの壁面下部に帯状に設けられる幅木を、カーペットに調和しやすい植毛幅木でもって作成し、しかも非常に低コストで製品化できるという植毛幅木を開発すること。
【解決手段】 熱可塑性の合成樹脂からなり広幅で長尺な基板の片面全体に植毛してなる植毛基材を、熱溶融手段によって多数の細幅すなわち幅木として適切な幅に切断することにより作成し、切断面の少なくとも一方がアール形状の植毛面となるようにする。

【考案の詳細な説明】
【0001】
【考案の属する技術分野】
本考案は、建築物の室内、とりわけ洋室の壁面下端部すなわち床面と接する隅部分に帯状に貼付けられる幅木に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
洋室の壁面下端部に約6〜10cmの幅で帯状に設けられている幅木は、従来から長尺な木材板、または押出成形で製造された合成樹脂の長尺材などが使用されている。
しかしながら、洋室にはカーペットが敷かれることが多く、このカーペットと上記の木材調の幅木とは調和しにくく不都合であった。
【0003】
この問題を解決する手段として、例えば合成樹脂製の基板に植毛加工を施してなる幅木が、実開昭57−139543号公報などで提案されている。
この植毛幅木は、確かにカーペットと調和しやすく前記問題点を解決するものであるが、非常にコスト高となり実用化されていない現状となっている。
【0004】
上記の植毛幅木がコスト高になる理由は、幅が約6〜10cmの長尺な帯状体に植毛加工するのに大変な手間を要するからである。
例えば、その長尺帯状体の片面および上端縁となる縁端部とにスプレー等にて手作業で接着剤を塗布して植毛加工する必要があり、要望されるコストでは到底製造できないものとなっている。
【0005】
【考案が解決しようとする課題】
本考案は、上記した問題点を解決して、安価に製造できる植毛幅木を提供することを目的とするものであり、洋室のカーペットに調和しやすい植毛幅木を現実に実用化しようとするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために種々検討した結果、広幅な合成樹脂製の長尺板の片面に全面植毛を施して、これを熱溶融手段によって幅木の幅に合わせた多数の細幅長尺材に切断すれば、幅木の上縁となる部分がアール状に曲がって形成されることを見い出し、本考案に達したのである。
【0007】
すなわち本考案は、広幅で長尺な合成樹脂製基板の片面全体に植毛加工してなる植毛基材が、熱溶融手段によって多数の細幅な長尺材に切断されてなると共に、その切断面の少なくとも一方が、アール形状の植毛面になっていることを特徴とする植毛幅木、を要旨とするものである。
【0008】
【考案の実施の形態】
本考案を、図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本考案幅木の1実施例の端部を示した斜視図である。
この図の様に本考案幅木は、幅が約6〜10cmの帯状の合成樹脂製の長尺材(a)に植毛(s)が施されており、その上端縁部がアール形状の曲面を形成した植毛面となっている。
【0009】
そして本考案幅木の大きな特徴は、この幅木の上下の縁端が熱溶融手段によって切断されたものであると言うことで、広幅で長尺な合成樹脂製基板の片面全体に植毛加工を施してなる植毛基材を、多数の細幅な長尺材に溶融切断することにより作成されたものとなっているのである。
【0010】
図2は、本考案幅木の作成手段を示した部分断面説明図で、(イ)は切断前の様子、(ロ)は切断後の様子を、それぞれ示している。
この図のように、広幅の合成樹脂製基板(A)の片面全体に植毛(s)を施してから、多数の細幅つまり幅木の幅に適した長尺材(a)に溶融切断するのである。(長尺方向に平行に切断)
【0011】
この合成樹脂製基板(A)は、ポリ塩化ビニルの様な熱可塑性の合成樹脂からなり、通常、厚さ3〜7mmのシート状のもので良く、好適には発泡シートを使用することが望ましい。
【0012】
また植毛(s)のための接着剤としては、アクリル系や酢酸ビニル系のエマルジョン樹脂などが使用でき、植毛されるパイルとしては太さ1.5〜5デニールで長さ1〜3mmのナイロンパイルやレーヨンパイルなどが好適に使用できるものである。
なおこの場合、植毛パイルの融点は合成樹脂製基板(A)の軟化点よりも高いことは言うまでもない。
また、この植毛加工は常法通りの静電植毛法によることは勿論である。
【0013】
図3は、本考案幅木を作成するための溶融切断装置の1例を示した部分断面略図である。
この図のように、切断用ロール(P)には、その外周に輪状の切断刃(t)が幅木の幅に合わせた間隔で多数突設されている。
【0014】
広幅で長尺な植毛基材を、受ロール(R)と上記の切断用ロール(P)との間に挟みながら回転押圧することにより、切断刃(t)によって多数の細幅な長尺材(a)に溶融切断されるのである。
【0015】
本考案者等の実験によれば、切断刃(t)を加熱しておくよりも、植毛基材の方をその合成樹脂製基板(A)の軟化点まで加熱しておいて、これを切断用ロール(P)と受ロール(R)とで冷却しながら切断刃(t)で押し切りした方が、切断面の植毛(s)が損なわれず、好適な結果が得られたのである。
【0016】
また、切断刃(t)の形状は、両面共にアール形状を作るための刃型となっていても良いが、幅木の切断面の一方は下端部となりカーペット等で見えなくなるため、この切断面の方の刃型は直面的で切れ易い方が好ましい。
【0017】
つまり、切断面の少なくとも一方がアール形状の美しい植毛面を保持すれば良く、そのためには切断刃(t)の一面側でアール形状に植毛面を押圧しながら、切断刃(t)の他面側の直面で切り離すという溶融切断手段が好適なものとなるのである。
【0018】
【考案の効果】
本考案は以上のようなものであり、広幅な植毛基材から一度に多数の植毛幅木を作成したものであるため、効率が高くコストが低減化し、洋室に適した幅木としての実用化を可能にしたという効果を有し、更にこの幅木の上端縁部は美しいアール形状の植毛面となっているので外観上もすぐれており、また床に敷かれるカーペットにも調和しやすいなど、種々なる有用性を発揮するものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本考案幅木の1実施例の端部を示した斜視図である。
【図2】本考案幅木の作成手段を表わした部分断面説明図で、(イ)は切断前の様子、(ロ)は切断後の様子、をそれぞれ示している。
【図3】本考案幅木を作成するための溶融切断装置の1例を示した部分断面略図である。
【符号の説明】
(A) 合成樹脂製基板
(a) 細幅な長尺材
(s) 植毛
(P) 切断用ロール
(R) 受ロール
(t) 切断刃

【実用新案登録請求の範囲】
【請求項1】 広幅で長尺な合成樹脂製基板の片面全体に植毛加工してなる植毛基材が、熱溶融手段によって多数の細幅な長尺材に切断されてなると共に、その切断面の少なくとも一方が、アール形状の植毛面になっていることを特徴とする植毛幅木。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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