説明

植物のストレスを低減する方法

植物遺伝子を調節する方法が提供される。この方法は、植物の乾燥ストレスまたは塩分ストレスの改善を提供する。この方法は、植物の一部またはその部位を、組成が明らかな天然有機物の化合物の農業上許容可能な混合物を含む組成物を用いて処理するステップを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物においてストレス耐性を改善するための組成物に関する。具体的には、本方法は、植物の一部またはその部位を、部分的に腐植化されている天然有機物を特徴とする溶存有機物の農業上許容可能な複合混合物を含む組成物と接触させることを含む。
【背景技術】
【0002】
肥料添加物として、有機化合物の様々な混合物が当技術分野で提案されている。具体的には、フミン酸組成物、Bio−Liquid複合体(商標)が、土壌から植物への微量栄養素、より詳しくは、陽イオン栄養素の移動を補助すると、Bio Ag Technologies International(1999)www.phelpstek.com/portfolio/humic_acid.pdfによって記載されている。
【0003】
American Agritech製のTriFlex(商標)Bloom Formula栄養組成物は、「リン酸、リン酸カリウム、硫酸マグネシウム、硫酸カリウム、ケイ酸カリウム(および)ケイ酸ナトリウム」を含有すると記載されている。American Agritech製のTriFlex(商標)Grow Formula2−4−1栄養組成物は、「硝酸カリウム、硝酸マグネシウム、硝酸アンモニウム、リン酸カリウム、硫酸カリウム、硫酸マグネシウム、ケイ酸カリウム、およびケイ酸ナトリウム」を含有すると記載されている。両組成物とも、「選択されたビタミン、植物組織培養成分、必須アミノ酸、海藻、フミン酸、フルボ酸および炭水化物で強化されている」といわれている。www.horticulturesource.com/product_info.php/products_id/82参照のこと。これらの製品は、主に、果実作物および花卉作物の「土壌を用いないハイドロガーデニング」(すなわち、水耕栽培)のために処方されているといわれているが、コンテナ土壌ガーデンにおける従来の化学肥料よりも優れるともいわれている。水耕成長培地または土壌成長培地への適用とは対照的に、葉面適用に対するその適合性または不適合性が記載されていない。www.americanagritech.com/product/product_detail.asp?ID= I &pro _id_pk=4−0参照のこと。
【0004】
Actagro,LLCによって所有されている商標Monarch(商標)は、天然有機物由来の植物の栄養にならない有機組成物を3%含む2−20−15の主要植物栄養素を含有する肥料組成物である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
植物全般は、例えば、乾燥、塩分、弱光、湛水、病気、有害生物および温度を含む様々な環境ストレスに対して感受性である。従来の栄養的な植物の処理は、概して、環境ストレスに対して耐性を有する植物を提供できないか、提供する能力が無く、したがって、他の健康な植物またはよく育つ植物に利益を提供することに限定される。しかし、商業的な農学的プロセスは、植物のストレスを低減するための、または一般的な環境ストレスに抵抗する植物の能力および/もしくはこのようなストレスから迅速に回復する植物の能力を増強するためのさらなる植物の処理を必要とする。一般的な環境ストレスの代表的な例として、水のない連続期間(乾燥)、塩水に対する暴露、洪水、長い暗期および温度変動/霜が挙げられる。このようなストレスに対する暴露の結果、一般に、収量が不十分であったり、なくなったりするが、根の成長の低減ならびに/または葉の成長もしくは葉の数の低減ならびに/または茎の重量および/強度の低減ならびに/または果実の大きさおよび/もしくは重量および/もしくは栄養価の低減を示す場合もある。植物は、このようなストレスに対していくつかの自然防御を有し得るが、農学的生産を最大にすることを可能にするために、このようなストレスに応答し、および/または回復する増強された能力を植物に提供する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
環境ストレスに応答し、および/または回復して、農学的生産を最大にすることを可能にするように、植物に増強されたストレス抵抗能を提供する組成物(以下、「CP」ともいう。CAS登録番号1175006−56−0)。開示される組成物は、一般的な環境ストレスに対する植物の応答を改善および/または増強する植物における遺伝子調節を提供する。この遺伝子調節は、その他の機序の中でも、転写因子の調節を含む。ストレス条件に先立つ、ストレス条件の間の、またはストレス条件のすぐ後の植物へのCPの適用は、ストレスに抵抗し、および/またはストレスから農学的に回復する植物の能力を、CPを用いて処理されていない類似の状態にある植物と比較して改善する。
【0007】
温室および野外の実験によって、CPが植物の成長および発達を促進して、作物収量を増大し得ることが実証されている。生理学的研究によって、本明細書に開示される組成物は、栄養素の利用能および植物内での移動性の改善を提供することが示される。さらに、CPは、植物ホルモンの合成もしくは利用能を増強し、および/またはCPは、これらの植物ホルモンのうちの一部との相乗作用を有する。分子レベルでは、植物成長活性および発達活性は、遺伝子および遺伝子発現によって制御され、かつ/または影響を受ける。CPは、植物の成長、発達、ストレス抵抗性および/または病気耐性に関与する重要な遺伝子の発現を誘発または変更することによって作用すると思われる。
【発明の効果】
【0008】
植物遺伝子発現に対する上記の組成物の強力な効果は、農業、園芸および造園におけるこれらの製品の広範な適用を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】アラビドプシス(Arabidopsis)の根形成に対するCP組成物適用の効果を、対照と対比して表す写真である。
【図2】アラビドプシスの成長に対するCP組成物適用の効果を、通常条件下の対照と対比して表す写真である。
【図3】アラビドプシスの成長および発達に対する塩分ストレス後のCP組成物適用の効果を、対照と対比して表す写真である。
【図4】アラビドプシスの成長に対する塩分ストレス前のCP組成物適用の効果を、対照と対比して表す写真である。
【図5】アラビドプシス乾燥抵抗性に対するCP組成物適用の効果を、対照と対比して表す写真である。
【図6】BioAnalyzerによって決定されるRNA調製物の品質を示す図である。
【図7】対照と対比した、CP適用後のアラビドプシスのゲノム規模での発現プロフィールを示す図である。
【図8】対照と対比して、CP適用後、p値≦0.01で、発現レベルが1.5倍以上変化したアラビドプシス遺伝子の遺伝子発現プロフィールを示す図である。
【図9】対照と対比して、CP適用後、p値≦0.01で、発現レベルが1.5倍以上変化したアラビドプシス遺伝子のボルケーノプロットを示す図である。
【図10】対照と比較した、CP調節されたアラビドプシス遺伝子のヒートマップを示す図である。
【図11】対照と対比して、CP1000適用後、p値≦0.01で、発現レベルが1.5倍以上変化したアラビドプシス遺伝子の遺伝子発現プロフィールを示す図である。
【図12】対照と対比して、CP1000適用後、p値≦0.01で、発現レベルが1.5倍以上変化したアラビドプシス遺伝子のボルケーノプロットを示す図である。
【図13】対照と比較した、CP1000で調節されたアラビドプシス遺伝子のヒートマップを示す図である。
【図14】対照と対比した、アラビドプシスの乾燥耐性に対するCP組成物適用の効果のグラフである。
【図15】対照と対比した、アラビドプシスの塩分耐性に対するCP組成物適用の効果のグラフである。
【図16】対照と対比した、アラビドプシスの萎れ乾燥耐性(wilting drought tolerance)に対するCP組成物適用の効果のグラフおよび写真である。
【図17】対照と対比した、CP組成物処理後のアラビドプシス遺伝子分析の概略図である。
【図18】CP組成物によりアップレギュレートされた共通のアラビドプシス遺伝子の概略図である。
【図19】CP組成物によりダウンレギュレートされた共通のアラビドプシス遺伝子の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[物質および方法]
本明細書に開示される組成物は、天然有機物が豊富な供給源から水溶液中に単離および抽出された有機分子の混合物を含む。天然有機物は、主として、土壌環境において経時的に様々な程度に改変されている植物物質に由来する。植物物質の中には、最近、環境中に堆積されたものもある。天然有機物の少なくとも一部は、腐植化の部分的プロセスを通過して、部分的に腐植化されている天然有機物となっている。腐植化は、微生物、真菌、および/もしくは環境(熱、圧力、日光、電光、炎など)による天然有機物の分解ならびに/または酸化を含む。最も好ましくは、CPは、大きく腐植化を受けなかった天然有機物(部分的に腐植化されている天然有機物)を含有する。一態様では、天然有機物は、通常、5ppm、10ppm、15ppm、20ppm、25ppm、30ppm、35ppm、40ppm、45ppm、50ppm、55ppm、60ppm、65ppm、70ppm、75ppm、80ppm、85ppm、90ppm、95ppm、100ppmまたは500ppmまでの溶存有機物(DOM)を含有または提供する環境から得られる。その他の態様では、天然有機物は、通常、約500ppm、1000ppm、1500ppm、2000ppm、2500ppm、3000ppm以上のDOMを含有または提供する環境から得られる。
【0011】
天然有機物は、極めて複雑であり、一般に、供給源および供給源について多く見られる環境条件に応じて、数千の化合物が存在する。フルボ酸(CAS番号479−66−3)およびフミン酸(CAS番号1415−93−6)などの腐植物質が、天然有機物に由来する有機複合体の例であるが、以下に詳述するように、CPは、フルボ酸およびフミン酸とは化学的および生物学的に異なる独特なものである。
【0012】
CPは、溶存有機物を含有し、有機物は、上記のように、腐植化のプロセス、例えば、微生物、殺真菌、および/または環境(熱、圧力、日光、電光、炎など)による分解プロセスの際に形成される。その他の天然または合成の天然有機物分解プロセスが関与し得るか、または使用され得る。一態様では、CPは、大きく腐植化を受けなかった天然有機物(例えば、部分的に腐植化されている天然有機物)を主に含有する。腐植化の量は、既知の方法を使用して、例えば、13C NMRによって決定し、特性決定してよい。
【0013】
一態様では、CPは、その元の供給源に対して約10倍、25倍、50倍、100倍、200倍、300倍、400倍、500倍、600倍、700倍、800倍、900倍、1000倍、1500倍、2000倍、2500倍、3000倍、3500倍、4000倍、4500倍または約5000倍の溶存有機物(DOM)濃度レベルを有するCP組成物を提供するように、その供給源から天然有機物を取り出すこと、場合により、加工することおよび/または濃縮することによって得られる。別の態様では、溶存有機物(DOM)濃度レベルのCP濃度は、約7500倍、10,000倍、15,000倍、20,000倍、25,000倍および最大約50,000倍であり得る。CP組成物を、DOMの濃度が約10ppm〜約700,000ppmの間であるよう調整してもよい。好ましくは、CP組成物を、DOMの濃度が約1000ppm〜約500,000ppmの間であるよう調整してもよい。CP組成物を、水溶液中、500ppmずつ増加した任意のppm値(例えば、10,500ppm、11,000ppm、11,500ppm、12,000ppmなど)を含む、1000ppmと50,000ppmの間の任意のppm値によって表されるDOM値に調整してもよい。その他のDOM濃度を使用してもよく、例えば、約75,000ppmと約750,000ppmの間の極めて濃縮された組成物を調製してもよい。例えば、元の供給源の約30,000倍の濃縮物は、約550,000ppmのDOMを含有し得る。特定の態様では、CP組成物は、およそ約91%〜約99%の間の水であり、残りの有機物は、主に、微量のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩および遷移金属塩を含むDOMである。さらにその他の態様では、CP組成物のDOMは、水溶液を用いる再構成に適した形態に、乾燥または凍結乾燥されている。
【0014】
CP組成物は、物質の複合混合物、典型的には、単一の構造式では事足りない、化合物の不均一な混合物を含有する。詳細な化学的および生化学的検査によって、CPは、フミン酸およびフルボ酸と比較して、植物に対するその生物学的効果およびその化学組成の両方で独特な組成物であることが示されている。以下にさらに論じられるように、CP物質の元素的特性決定および分光学的特性決定によって、フミン酸およびフルボ酸などの、ほとんどのその他の腐植質をベースとする有機複合体とは区別される。物質の一貫性を提供し、天然由来物質の正常変動を補うために、CP組成物のブレンドを実施してもよい。
【0015】
CP組成物は、種子、葉に、または植物の任意のその他の部分もしくはその部位に適用してもよい。CPの適用割合は、土壌に適用され、または植物の葉もしくは部位への葉面適用として、約0.01グラム/ヘクタール〜約10.0グラム/ヘクタール乾重量の間、約0.2グラム/ヘクタール〜約2.0グラム/ヘクタール乾重量の間、0.3グラム/ヘクタール〜約1.5グラム/ヘクタール乾重量の間または約0.4グラム/ヘクタール〜約1.0グラム/ヘクタール乾重量の間であり得る。
【0016】
[特性決定方法]
CPを構成する有機化合物は、様々な方法で(例えば、分子量、種々の官能基間の炭素の分布、相対元素組成、アミノ酸含量、炭水化物含量などによって)特性決定できる。一態様では、CPを、腐植質をベースとする物質の既知標準に対して特性決定した。
【0017】
種々の官能基間の炭素分布の特性決定を目的として、適した技術として、13C−NMR、元素分析、フーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴質量分析(FTICR−MS)およびフーリエ変換赤外分光法(FTIR)が挙げられるが、これらに限定されない。CPおよび腐植物質標準の化学特性決定を、Huffman Laboratories,Inc.およびワシントン大学(The University of Washington)によって実施された、エレクトロスプレーイオン化フーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴質量分析(ESI−FTICR−MS)、フーリエ変換赤外分光法(FTIR)およびICP−AESを使用する金属の元素分析を使用して実施した。
【0018】
CPの元素的、分子量的および分光学的な特性決定は、主に、リグニン化合物およびタンニン化合物(ならびに縮合型タンニンおよび非縮合型タンニンの混合物)、縮合芳香族化合物ならびに微量の脂質および無機物からなる有機複合体と一致する。数千の化合物が存在し、225〜700ダルトンの範囲の分子量を有し、化合物の大部分は、分子あたり約10〜約39個の間の炭素原子を有する。CP組成物は、一般に、炭素、酸素および水素ならびに少量の窒素および硫黄から構成される。CP組成物はまた、カリウムおよび鉄も5%を上回るレベルで含有する。
【0019】
通常、CP組成物中に存在する溶解固体の元素組成を、表Aに示す。有機化合物が、無機元素から分離されている場合には、元素の内訳は、Cが55%、Hが4%、Oが38%、Nが1.8%およびSが2.2%である。
【0020】
【表1】

【0021】
分析によって、CP中に存在する有機化合物のクラスの中でも、概して、リグニンおよびタンニン(縮合型および非縮合型の混合物)、縮合芳香族化合物、未同定物質ならびに一部の脂質が存在することが明らかにされている。一態様では、CP組成物は、CP組成物中に存在する化合物の全割合の少なくとも10%がタンニンおよび/または縮合型タンニンであることを特徴とする。別の態様では、CP組成物は、CP組成物中に存在する化合物の全割合の少なくとも15%がタンニンおよび/または縮合型タンニンであることを特徴とする。別の態様では、CP組成物は、CP組成物中に存在する化合物の全割合の少なくとも20%がタンニンおよび/または縮合型タンニンであることを特徴とする。これらのクラスの化合物の各々は、かなり狭いMw範囲および炭素数/分子によって、さらに特性決定される。CPの代表的なサンプリングについて、様々な化合物クラスの各々の数およびパーセンテージの内訳、そのMWおよび炭素原子/分子(炭素範囲)を、表B1に示す。
【0022】
【表2】

【0023】
組成物の3種の異なる製造バッチの平均に基づく、第2の代表的なサンプリングの様々な化合物クラスの各々の数およびパーセンテージの内訳、そのMWおよび炭素原子/分子(炭素範囲)を、表B2に示す。
【0024】
【表3】

【0025】
表Cは上記のクラスの定義において使用される酸素対炭素(O/C)および水素対炭素(H/C)比を要約する。一態様では、CP組成物は、質量分析による測定で、溶存有機物のO/C比が、約0.4を超えることを特徴とする。一態様では、CP組成物は、質量分析による測定で溶存有機物のH/C比が、約0.8を超えることを特徴とする。別の態様では、CP組成物は、質量分析による測定で、溶存有機物のH/C比が、約0.85を超えることを特徴とする。
【0026】
【表4】

【0027】
[CPと腐植物質標準との比較]
腐植物質対CPの、元素的および構造的な比較特性決定を実施した。国際腐植物質学会から得た3種の腐植物質標準、すなわちレオナルダイトフミン酸(LHA)、パホキーピート(Pahokee Peat)フミン酸(PPHA)およびスワニーリバー(Suwannee River)フルボ酸II(SRFA)を使用した。各腐植物質標準および各CPサンプルを、FTIRおよびESI−FTICR−MSによって分析した。ESI−FTICR−MS分析のためには、各腐植物質標準の一部をNHOH/水に溶解した。陽イオン交換樹脂(AG MP−50、Bio−Rad Laboratories、Hercules、CA)を用いる分析のために、CPの3種のサンプル(CP60番、CP75番およびCP99番)を調製した。陽イオン交換樹脂(AG MP−50、Bio−Rad Laboratories、Hercules、CA)を用いる分析のために、組成物の3種のサンプル(CP1番、CP2番およびCP3番)を調製した。腐植物質標準および組成物の各サンプルの比較を表Dに示す。
【0028】
【表5】

【0029】
表Dは、腐植物質標準とCPサンプルの間には大きな相違があることを示す。例えば、O/C比は、腐植物質のすべてにおいて0.4未満であるが、CPサンプルについては0.5を上回る。サンプルのDBEはまた、フミン酸標準のものよりも大幅に低く、平均MWはより大きい。
【0030】
質量スペクトル分析に基づくと、CPサンプル中に、腐植物質標準においては実質的に存在しないか、大幅に低減しているいくつかの化合物が存在する。特に、CPの少なくとも1種の構成要素は、1種または複数のタンニン化合物と対応し得る。比較によって、腐植物質標準中には、%のタンニン化合物が少量で存在する。例えば、表Eに示されるように、フルボ酸標準およびフミン酸標準では、両標準は、CPサンプルにおいて見られるタンニン%よりも少なくとも3倍〜4倍少ない。
【0031】
【表6】

【0032】
IHSS標準およびCPサンプルのフーリエ変換赤外(FTIR)スペクトルを比較すると、主に、1600〜1800cm−1の領域において類似性がある。両サンプルセットにおいて、本発明者らは、カルボキシル官能基に由来する1700cm−1辺りでのC=Oストレッチによる極めて強いピークおよびアルケンまたは芳香族化合物に由来するC=C結合と一致する、1590〜1630領域におけるピークを見出す。しかし、700〜1450cm−1の領域における大幅な相違が観察される。すべてのスペクトルにおいて1160〜1210でのピークは存在し、これは、アルコール、エーテル、エステルおよび酸のC−O結合に起因する。最大の相違は、CPサンプル中の870cm−1でのピークであり、これは、IHSS標準中には存在しない。このピークは、アルケンおよび芳香族化合物のC−H結合によるものであり得る。
【0033】
上記の化学的、元素的および構造的な特性決定に基づくと、CPは、フミン酸およびフルボ酸またはそれらの組合せとは化学的および生化学的に異なる独特なものである。さらに、植物の健康、乾燥および塩ストレス耐性の改善に関する、CPの遺伝子調節の性質および程度ならびに全体的な効果の結果として、CPは、このようなストレス抵抗性活性および遺伝子調節特性が、質および量において一般的に欠けている既知のフミン酸組成物および/またはフルボ酸組成物およびその処理のものに対して独特である。CPのその他の有益な植物機能特質は、存在し得るか、処理方法および/もしくはCPから得られる遺伝子調節に起因し得る。
【0034】
特性決定データに基づいて、CPは、比較的小さい分子または約300〜約18,000ダルトンの分子量分布を有する超分子凝集物を含有し得る。有機分子の混合物から分画される有機物中に含まれるものとして、様々な腐植物質、有機酸および微生物の浸出物がある。この混合物は、脂肪族および芳香族の特徴の両方を有することが示されている。例示的に、炭素分布は、カルボニル基およびカルボキシル基に約35%、芳香族基に約30%、脂肪族基に約18%、アセタール基に約7%、また、その他のヘテロ脂肪族基に約12%を示す。
【0035】
いくつかの実施形態では、CP中の化合物の混合物は、約300〜約30,000ダルトン、例えば、約300〜約25,000ダルトン、約300〜約20,000ダルトンまたは約300〜約18,000ダルトンの分子量分布を有する有機分子または超分子凝集物を含む。
【0036】
種々の官能基間の炭素分布を特性決定する際に、使用可能な適した技術として、13C−NMR、元素分析、フーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴質量分析(FTICR−MS)およびフーリエ変換赤外分光法(FTIR)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0037】
一態様では、カルボキシ基およびカルボニル基は、CPの有機化合物の混合物中の炭素原子の約25%〜約40%、例えば、約30%〜約37%を、例示的には、約35%を合計して占める。
【0038】
別の態様では、芳香族基は、CPの有機化合物の混合物中の炭素原子の約20%〜約45%、例えば、約25%〜約40%または約27%〜約35%、例示的には、約30%を占める。
【0039】
別の態様では、脂肪族基は、CPの有機化合物の混合物中の炭素原子の約10%〜約30%、例えば、約13%〜約26%または約15%〜約22%、例示的には、約18%を占める。
【0040】
別の態様では、アセタールおよびその他のヘテロ脂肪族基は、CPの有機化合物の混合物中の炭素原子の約10%〜約30%、例えば、約13%〜約26%または約15%〜約22%、例示的には、約19%を占める。
【0041】
別の態様では、芳香族対脂肪族炭素の比は、CPでは、約2:3〜約4:1、例えば、約1:1〜約3:1または約3:2〜約2:1である。
【0042】
特定の例示的態様では、CPの有機化合物の混合物中の炭素分布は、以下のとおりである。カルボキシ基およびカルボニル基が約35%、芳香族基が約30%、脂肪族基が約18%、アセタール基が約7%、およびその他のヘテロ脂肪族基が約12%である。
【0043】
CPの有機化合物の元素組成は、一連の実施形態においては、独立に以下のとおりである。重量で、Cが約28%〜約55%、例示的に約38%;Hが約3%〜約5%、例示的に約4%;Oが約30%〜約50%、例示的に約40%;Nが約0.2%〜約3%、例示的に約1.5%;Sが約0.2%〜約4%、例示的に約2%である。CPの有機化合物の元素組成は、別の一連の実施形態では、独立に以下のとおりである。重量で、Cが約45%〜約55%、例示的に約50%;Hが約3%〜約5%、例示的に約4%、Oが約40%〜約50%、例示的に約45%;Nが約0.2%〜約1%、例示的に約0.5%;Sが約0.2%〜約0.7%、例示的に約0.4%である。
【0044】
特定の例示的態様では、元素分布は、重量で、Cが約38%;Hが約4%;Oが約40%;Nが約1.5%およびSが約2%である。残余は、主に、CP中の無機イオン、主として、カリウムおよび鉄からなる。別の特定の例示的態様では、元素分布は、重量で、CP中、Cが約50%;Hが約4%;Oが約45%;Nが約0.5%およびSが約0.4%である。
【0045】
様々な態様において、CP中に存在し得る有機化合物のクラスの中には、アミノ酸、炭水化物(単糖類、二糖類および多糖類)、糖アルコール、カルボニル化合物、ポリアミン、脂質およびそれらの混合物がある。これらの特定の化合物は、通常、微量、例えば、化合物の全割合の5%未満で存在する。存在し得るアミノ酸の例として、アルギニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、セリン、トレオニン、チロシンおよびバリンが挙げられる。存在し得る単糖および二糖の例として、限定するものではないが、グルコース、ガラクトース、マンノース、フルクトース、アラビノース、リボースおよびキシロースが挙げられるが、これらに限定されない。
【0046】
上記の化学的、元素的および構造的な特性決定に基づくと、CPは、フミン酸およびフルボ酸またはそれらの組合せとは化学的および生物学的に異なる独特なものである。さらに、植物の健康、乾燥および塩分ストレス耐性の改善に関するCPの遺伝子調節の性質および程度ならびに全体的な効果の結果として、概して、CPは、このような活性および特性が質および量において一般に欠けている既知のフミン酸組成物および/またはフルボ酸組成物および処理に対して独特であると考えられる。CPのその他の有益な植物機能特質は、存在し得るか、処理方法および/もしくはCPから得られる遺伝子調節に起因し得る。
【0047】
有機化合物の適した混合物は、例えば、多くの構成要素の1種として、Floratine Biosciences,Inc.(FBS)のCarbon Boost−S土壌溶液およびKAFE(商標)−F葉面溶液として市販されている製品中に見ることができる。これらの製品に関する情報は、www.fbsciences.comで入手できる。したがって、本明細書に開示され、記載される態様の例示的組成物は、適した容積の水に、CPとしてCarbon Boost(商標)−S葉面溶液またはKAFE(商標)−F葉面溶液、第2の構成要素として少なくとも1種の駆除剤を加えることによって調製できる。一態様では、有効成分は、CAS登録番号1175006−56−0であり、例として、CPに対応する。
【0048】
ストレス耐性および/または遺伝子調節を提供する組成物中に存在するべきであるCPの量は、使用される特定の有機混合物に応じて変わる。量は、例えば、組成物における混合物の溶解度の限界を超えることによって、またはその他の必須構成要素を溶液から出してしまうことによって、物理的に不安定な組成物をもたらすほど多くするべきではない。他方、量は、標的植物種に適用される場合に、ストレス耐性の増強または遺伝子調節を提供できないほど少なくするべきではない。任意の特定の有機混合物には、当業者ならば、ルーチンの製剤安定性および生物学的効率の試験によって、任意の特定の使用のために組成物中の有機混合物の量を最適化できる。
【0049】
特に、例えば、Carbon Boost(商標)−SおよびKAFE(商標)−Fの商標名のもとで販売される市販の製剤において見られるように、有機化合物の混合物が使用される場合、栄養組成物において必要とされるCPの量は、著しく少ないと分かることが多い。例えば、いくつかの状況では、そのような混合物のわずか1重量部(水を除く)が、約1000重量部まで、またはそれを超える第2の構成要素の、植物の沈着部位への葉面送達を補助し得る。その他の状況では、ルーチンの試験に基づいて、より多量の有機混合物を加えることが有益であると分かる場合もある。通常、CP対第2の構成要素の適した比は、約1:2000〜約1:5、例えば、約1:1000〜約1:10または約1:500〜約1:20、例示的には、約1:100である。有機化合物の供給源としてCarbon Boost(商標)−S溶液またはKAFE(商標)−F溶液を使用する場合には、このような溶液の、本明細書において第2の構成要素の濃縮組成物中に含まれるのに適した量は、濃縮組成物の約5〜約25、例えば、約8〜約18、例示的には、約12重量部中、約1重量部のCarbon Boost(商標)−S溶液またはKAFE(商標)−F溶液である。
【0050】
場合により、本発明の組成物中にさらなる構成要素が存在してもよい。例えば、組成物は、第2の構成要素をさらに含んでもよい。第2の構成要素は、CP以外の植物栄養素の少なくとも1種の農業上許容可能な供給源のものであり得る。第2の構成要素はまた、駆除剤であってもよく、本明細書において、用語「駆除剤」は、少なくとも1種の除草剤、殺虫剤、殺真菌薬、殺菌剤、抗ウイルス剤、抗線虫薬またはそれらの組合せを指す。
【0051】
植物の環境ストレスに対する感受性を低減させるための植物および/または種子の処理のための、本明細書に記載される組成物の使用方法がさらに開示される。組成物を、単一の植物(例えば、室内用鉢植え植物または庭園用観賞植物)に、または一定区域を占める植物の集まりに適用してもよい。いくつかの実施形態では、組成物を、農作物または園芸作物に、特に食用作物に適用する。本明細書において「食用作物」とは、主に、人間の食用のために成長させた作物を意味する。本発明の方法は、野外使用に対して、および保護された栽培、例えば、温室使用においての両方に適している。
【0052】
本方法は、トウモロコシ、コムギ、オオムギ、エンバクおよびコメを含む穀類などのイネ科(イネ科に属する)作物にとって有益であり得るが、それらはまた、野菜作物、果実作物、大豆などの広葉の農作物、種子作物、または種子を生産するために特別に生育される任意の種の作物を含む非イネ科作物にも非常に適している。本明細書において、用語「果実」および「野菜」は、農業的意味または料理的意味で使用され、厳密な植物学的意味では使用されない。例えば、トマト、キュウリおよびズッキーニは、本目的上野菜と考えられるが、植物学的にいえば、消費されるのはこれらの作物の果実である。
【0053】
本方法が有用であると見出され得る野菜作物として、限定されるものではないが、
葉物野菜およびサラダ用野菜、例えば、アマランス、ビート葉、ビターリーフ、チンゲンサイ、芽キャベツ、キャベツ、ブタナ、セルタス、チョクウィー(choukwee)、ツルムラサキ、チコリー、フユアオイ、キクの葉、ノヂシャ、クレス、タンポポ、エンダイブ、アリタソウ、シロザ、ゼンマイ、フルーテッド・パンプキン(fluted pumpkin)、ゴールデン・サンファイア、グッド・キング・ヘンリー、オオベンケイソウ、ジャンブー、カイラン、ケール、小松菜、クカ(kuka)、ラゴス・ボロギ(Lagos bologi)、ランドクレス、レタス、アメリカハンゲショウ、モロヘイヤ、ミズナ、カラシナ、白菜、ツルナ、オラーチェ、エンドウ葉、ポルク(polk)、赤チコリー、ロケット(アルガラ)、サムファイア、ハマフダンソウ、ハマナ、シエラ・レオネ・ボロギ(Sierra Leone bologi)、ソコ(soko)、スイパ、ホウレンソウ、スベリヒユ、フダンソウ、タアサイ、カブの葉、オランダガラシ、ヨウサイ、冬スベリヒユおよび油菜など、
花の咲く野菜および果実のなる野菜、例えば、エイコーン・スクワッシュ、アルメニアン・キューカンバー(Armenian cucumber)、アボカド、ピーマン、ニガウリ、バターナッツ・スクワッシュ、カイグア、ケープ・グーズベリー、カイエンペッパー、ハヤトウリ、チリペッパー、キュウリ、ナス(オーベルジーヌ)、アーティチョーク、ヘチマ、マラバル・ゴード(Malabar gourd)、パルワル、ペポカボチャ、多年生キュウリ、カボチャ、カラスウリ、スクワッシュ(マロー)、スイートコーン、スイートペッパー、ティンダ、トマト、トマティロ、冬瓜、ウエスト・インディアン・ガーキン(West Indian gherkin)およびズッキーニ(コルゲット)など、
マメ科の野菜(マメ科植物)、例えば、アメリカホドイモ、小豆、黒豆、ササゲ、ヒヨコマメ(ガルバンゾ・ビーン)、ドラムスティック、フジマメ、ソラマメ(ブロード・ビーン)、サヤインゲン、グアー、インゲンマメ(haricot bean)、ホースグラム、インディアン・ピー(Indian pea)、インゲンマメ(kidney bean)、レンズマメ、ライマメ、モスビーン、緑豆、白インゲンマメ、オクラ、エンドウマメ、ピーナッツ(落花生)、キマメ、インゲンマメ(pinto bean)、ツルアズキ、ベニバナインゲン(runner bean)、大豆、タルウィ、テパリービーン、ウラドマメ、ハッショウマメ、シカクマメおよびジュウロクササゲなど、
鱗茎菜および茎菜、例えば、アスパラガス、カルドン、セルリアック、セロリ、エレファントガーリック、ウイキョウ、ニンニク、コールラビ、クラト、リーキ、レンコン、ノパル、タマネギ、プロイセンアスパラガス、エシャロット、ネギおよび行者ニンニクなど、
塊根野菜および塊茎野菜、例えば、アヒパ、アラカチャ、タケノコ、ビートルート、ブラッククミン、ゴボウ、ブロードリーフ・アローヘッド(broadleaf arrowhead)、カマス、カンナ、ニンジン、キャッサバ、チョロギ、大根、落花生エンドウ、ゾウコンニャク、エンセーテ、生姜、ゴボウ(gobo)、ハンブルグパセリ、セイヨウワサビ、キクイモ、ヒカマ、パースニップ、ヒッコリー、プレクトランサス、ジャガイモ、プレイリー・ターナップ、ラディッシュ、ルタバガ(スイード)、サルシフィ、スコルツォネラ、ムカゴニンジン、サツマイモ、タロイモ、ティー(ti)、タイガーナッツ、ターナップ、ウルコ(ulluco)、ワサビ、ウォーターチェスナット、ヤーコンおよびヤムなど、ならびに
ハーブ、例えば、アンジェリカ、アニス、バジル、ベルガモット、キャラウェー、カルダモン、カモミール、チャイブ、シラントロ、コリアンダー、ディル、フェンネル、チョウセンニンジン、ジャスミン、ラベンダー、レモンバーム、レモンバジル、レモングラス、マジョラム、ミント、オレガノ、パセリ、ポピー、サフラン、セージ、スターアニス、タラゴン、タイム、ターメリックおよびバニラなどが挙げられる。
【0054】
本方法が有用であると見出され得る果実作物として、リンゴ、アプリコット、バナナ、ブラックベリー、クロフサスグリ、ブルーベリー、ボイセンベリー、カンタロープ、サクラ、シトロン、クレメンタイン、クランベリー、ダムスン、ドラゴンフルーツ、イチジク、ブドウ、グレープフルーツ、セイヨウスモモ、セイヨウスグリ、グアバ、ハニーデュー、ジャックフルーツ、キーライム、キウィフルーツ、キンカン、レモン、ライム、ローガンベリー、リュウガン、ビワ、マンダリン、マンゴー、マンゴスチン、メロン、マスクメロン、オレンジ、パパイヤ、モモ、セイヨウナシ、カキ、パイナップル、オオバコ、プラム、ザボン、ウチワサボテン、マルメロ、ラズベリー、アカフサスグリ、スターフルーツ、ストロベリー、タンジェロ、タンジェリン、タイベリー、アグリフルーツおよびスイカが挙げられるが、これらに限定されない。
【0055】
本方法が有用であると見出され得る種子作物として、任意の植物種の種子を生産するために使用される特殊な作物が挙げられ、それについて本方法が有用であると見出され得るものとして、穀類(例えば、オオムギ、トウモロコシ(メイズ)、キビ、エンバク、コメ、ライムギ、ソルガム(ミロ)およびコムギ)に加えて、ソバ、綿、亜麻仁(リンシード)、カラシ、ケシ、菜種(キャノーラを含む)、サフラワー、ゴマおよびヒマワリなどの非イネ科種子作物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0056】
本方法が有用であると見出され得る、上記のカテゴリーのいずれにも適合しないその他の作物として、サトウダイコン、サトウキビ、ホップおよびタバコが挙げられるが、これらに限定されない。
【0057】
上記で列挙される作物の各々は、その独自の特定のストレス保護の必要性を有する。特定の作物のための本明細書に記載される組成物のさらなる最適化は、過度の実験を行うことなく、本開示内容に基づいて当業者によって容易に行うことができる。
【0058】
本明細書に開示され、記載される組成物を使用する方法は、種子に、植物の葉表面に、もしくは植物または種子の部位に、本明細書に記載されるような組成物を適用することを含む。
【0059】
本明細書において物質または組成物に適用される用語「農業上許容可能な」とは、植物またはその環境にとって、許容されないほど有害ではないか、毒性でないこと、かつ、本明細書に記載されるように使用される場合に物質に暴露され得る使用者または他者にとって安全でないものではないことを意味する。
【0060】
本明細書において「葉表面」は、通常、葉の表面であるが、葉柄、托葉、茎、苞葉、花芽などを含めた植物のその他の緑色部分は、活性成分の吸収を可能にし得る表面を有し、本発明では、「葉表面」は、このような緑色部分の表面を含むと理解される。
【0061】
本明細書において使用される「部位」とは、葉表面を含み、また、植物に近接した区域または複数の種子が植え付けられているか、植え付けることができる区域も含む。
【0062】
本明細書において使用される「種子処理」とは、概して、種子を、少なくとも1種の有効成分(a.i.またはAI)を含有するかまたは含む化合物または組成物と接触させることを指す。化合物または組成物は、種子に適した任意の形態、例えば、液体、ゲル、エマルジョン、懸濁液、ディスパージョン、噴霧液または粉末であり得る。種子処理は、種子コーティングおよび種子ドレッシングを含む。好ましい実施形態では、A.I.はCPである。
【0063】
本明細書において使用される「種子コーティング」または「種子ドレッシング」とは、概して、種子の少なくとも一部上に形成されたコーティングまたはマトリックスを指し、コーティングまたはマトリックスは、少なくとも1種のAIを含有するかまたは含む。種子コーティングプロセスもしくはコーティングからの少なくとも1種のAIの分解/放出を容易にするために、または過剰のダストオフ(dust-off)を防ぐために、または処理された種子に色を加えるために、種子コーティング中に任意選択の化合物または薬剤を含めてもよい。
【0064】
本明細書において使用される用語「種子」とは、任意の特定の種類の種子に限定されず、単一の植物種に由来する種子、複数の植物種に由来する種子の混合物または植物種内の様々な系統に由来する種子のブレンドを指し得る。開示され、記載される組成物を利用して、裸子植物種子、双子葉被子植物種子および単子葉被子植物種子を処理できる。
【0065】
本明細書において使用される用語「農学的回復」とは、ストレスが低減または中断した後の植物の生物学的応答の相対的再開に関連する。農学的回復は、任意の特定の種類の生物学的に関連する植物回復に限定されるのではなく、例えば、重量、果実生産、収量、生存、色、外観、芳香などの一部またはすべての回復を含むことができる。一例では、農学的回復は、本明細書に開示される組成物を用いて処理されていない同様の植物と比較した、乾燥の中断後の植物重量、葉数および茎の重量の改善のうち1つまたは複数を含む。
【0066】
本明細書に開示され、記載される組成物は、種子または葉の表面または部位に液体または固体を適用するための任意の従来の系を使用して適用できる。通常、散布による適用が最も好都合であると見出されるが、必要に応じてタンブリング、ブラシまたはロープウィックによる適用を含むその他の技術を使用してもよい。散布では、任意の従来の噴霧法を使用して、流体ノズルおよび回転円盤噴霧装置を含む散布液滴を生成することができる。組成物の散水システムへの導入も使用できる。
【0067】
葉表面または部位適用のためには、組成物の適用速度は、約0.01グラム/ヘクタール〜約10.0グラム/ヘクタール乾重量の間、約0.2グラム/ヘクタール〜約2.0グラム/ヘクタール乾重量の間、0.3グラム/ヘクタール〜約1.5グラム/ヘクタール乾重量の間または約0.4グラム/ヘクタール〜約1.0グラム/ヘクタール乾重量の間とすることができ、土壌中または植物の葉もしくは部位への葉面適用として適用される。
【0068】
本明細書に開示され、記載される組成物は、種子、植物または部位への適用の前の水でのさらなる希釈および/または混合に適した、濃縮形態(例えば、液体、ゲルまたは再構成可能な粉末形態)で提供されてもよい。あるいは、それらは、直接適用のために、そのまますぐに使える溶液として提供されてもよい。本明細書に開示され、記載される組成物は、その他の肥料溶液および/または駆除剤溶液と組み合わされる場合があるので、このようなその他の溶液と混合することによって、希釈および/または再構成され得る。
【0069】
上記の濃縮組成物は、さらなる希釈に適している。植物の葉への適用には、濃縮組成物を、水で約600倍、または約600倍超、より通常は約100倍、または約40倍まで希釈してもよい。例示的には、濃縮製品は、約60〜約600l/ha、例えば、約80〜約400l/haまたは約100〜約200l/haの希釈後の総適用容量において、約0.1〜約30l/ha、例えば、約5〜約25l/haで適用してもよい。
【0070】
種子処理適用には、濃縮組成物を、水で約600倍、または約600倍超、より通常は約100倍、または約40倍まで希釈してもよい。例示的には、濃縮製品は、約0.1mg/Kg種子〜約100mg/Kg種子、例えば、約0.1mg/Kg種子、0.5mg/Kg種子、0.75mg/Kg種子、1.0mg/Kg種子、1.25mg/Kg種子、1.5mg/Kg種子、1.75mg/Kg種子、2.0mg/Kg種子、2.5mg/Kg種子、3.0mg/Kg種子、3.5mg/Kg種子、4.0mg/Kg種子、4.5mg/Kg種子、5.0mg/Kg種子、5.5mg/Kg種子、6.0mg/Kg種子、6.5mg/Kg種子、7.0mg/Kg種子、7.5mg/Kg種子、8.0mg/Kg種子、8.5mg/Kg種子、9.0mg/Kg種子、9.5mg/Kg種子および10.0mg/Kg種子で適用してもよい。濃縮製品はまた、約15mg/Kg、20mg/Kg、25mg/Kgおよび30mg/Kgで適用してもよい。
【0071】
上記のように濃縮組成物を希釈することによって調製された適用溶液は、本明細書に開示され、記載される組成物および方法のさらなる態様を表す。
【実施例】
【0072】
[実験に関して]
CPは、植物の遺伝子発現に影響を及ぼすことができ、アップレギュレートまたはダウンレギュレートされる遺伝子を、遺伝子マイクロアレイ技術およびモデル植物であるアラビドプシスを使用して同定した。出願人によって実施されたアラビドプシスでの予備実験では、CPの適用は、処理した植物を塩分ストレス(NaCl)に暴露した場合に、アラビドプシスの葉数の24.9%の増大、葉面積の47.0%の増大、葉新鮮重の46.9%の増大および葉乾重量の25%の増大を示した。CPの同様の適用は、乾燥ストレス下のアラビドプシス植物体で萎れ症状の出現を遅らせた。CPに暴露されたシロイヌナズナ(Arabidopisis thaliana)のDNA分析を実施して、乾燥ストレス、酸化ストレスなどの様々な種々の環境ストレスの態様との相関を有する遺伝子発現および遺伝子調節、ならびにイオン輸送およびその他の作用機序の態様との遺伝子発現および遺伝子調節の相関を同定した。
【0073】
植物物質および生育条件。シロイヌナズナ、アクセッションColombia(Col−0)を使用した。このアクセッションは、フロリダ大学の細胞科学および微生物学科(University of Florida’s Department of Cell Sciences and Microbiology)(Gainesville、FL 32611)のDr.Z.Mouから提供された。種子を、オートクレーブにかけたMetro−Mix 200鉢植え用ミックス(SunGro Horticulture)中に植え付け、滅菌蒸留水で水やりをし、低温室中で3日間春化処理した(約7℃で暗所)。種子を発芽させ、室温を24℃に、相対湿度を45%〜70%の範囲に設定した生育室中で、実生を生育させた。最初に、生育室中の光周期は16時間明および8時間暗とし、後に、10時間明および14時間暗に変更した。
【0074】
CP対対照実験。葉面適用のために、CPおよび比較例CEを脱イオン水で希釈し、アラビドプシスのロゼット葉上に、流れ落ちるまで噴霧した。CPを組織培養培地に加えるために、CP保存溶液を無菌フード下で濾過滅菌し、オートクレーブにかけて約45℃に冷却した培地に添加した。
【0075】
塩分(塩)ストレス。これは、生育培地または培養培地に塩化ナトリウム溶液(50mM〜200mM)を適用することによって誘導した。
【0076】
乾燥ストレス。生育培地を、生育室中で水やりをせずに徐々に乾燥させた。
【0077】
植物成長アッセイ。これは、ロゼット葉を計数することによって行った。実験の最後に、葉を採取し、大型フラットベッドスキャナー(Epson Expression 10000XL)およびWinfoliaソフトウェア(Regenet Instrument Inc.)を使用してその葉面積を求めた。採取直後に葉の新鮮重をとり、乾重量は、175℃で24〜48時間乾燥した後に量った。
【0078】
[遺伝子調節研究]
マイクロアレイ分析によって、CP組成物は、アラビドプシス遺伝子の大きく多様な群の発現の調節において極めて強力であることが示された。CP(本明細書において以下、「T1」とも呼ばれる)およびCP1000(本明細書において以下、「T2」と呼ばれる)と表される第2のCP製剤の葉面適用の6時間後、456種の遺伝子の発現レベルが50%(1.5倍)を超えて変化した。それらの中でも、60種の遺伝子が、発現を1.5〜3.2倍増大させ、396種の遺伝子が発現レベルを1.5〜38.4倍減少させた。比較例CEの葉面適用の6時間後、423種の遺伝子の発現レベルが50%(1.5倍)を超えて変化し、その中でも、160種の遺伝子がその発現を1.5〜4.0倍増大させ、263種の遺伝子が発現を1.5〜20.3倍減少させた。CPおよびCP1000(T1およびT2)の化学組成は、本明細書に記載される部分的に腐植化された物質の特徴を共有する。
【0079】
CPによって調節される遺伝子の一部は、オーキシン、ジベレリン酸、アブシジン酸などの植物ホルモンおよび潜在的にはその他の化学的刺激に対する応答またはその代謝に関与している可能性がある。いくつかの他の遺伝子は、イオン結合またはイオン移動性、植物防御などに関与している可能性が高い。最も注目すべきことに、CPによって調節される遺伝子の多くが転写因子である。
【0080】
上記の結果は、CPが、成長、発達およびストレス抵抗性にとって重要な多数の植物の生化学的および生理学的プロセスに対して重要な効果を発揮できることを示す。ある意味では、CPは、非伝統的な植物成長調節因子のように作用する。
【0081】
本研究は、植物の遺伝子発現を調節するCPの役割を理解するための最初の試みであったが、結果は、CPの作用様式に関するいくつかの極めて興味深い現象を示す。それでもやはり、この研究から得た知見を確認するため、また、決定的に重要な植物生理学的プロセスまたは生化学的プロセスに関与している遺伝子発現全体に対する、特に、主要な遺伝子に対するCPの効果をより理解するためのさらなる調査が進行中である。
【0082】
[マイクロアレイ調製]
全RNAを、RNease Plant Miniキット試薬(Qiagen Sciences、MA)を使用して、ロゼット葉から単離し、RNアーゼ不含水(Fisher Scientific)に溶解した。マイクロアレイ調製およびスキャニングサービスは、フロリダ大学のInterdisciplinary Center for Biotechnology Center(UF−ICBR、Gainesville、FL)によって提供された。RNA濃度は、最初、Nandrop 8000を使用して求め、次いで、Agilent 2100 Bioanalyzerによって調べた。蛍光標識されたcRNAは、Agilent Technologies Quick Amp標識キット/Two Color(Agilent p/n 5190−0444)を使用して各反応において175ngの全RNAから作製した。ダイスワップにおいて、特定の処理から得られたCy5標識されたcRNAを、対照由来の同量のCy3標識されたcRNAと、またはその逆を混合した。ハイブリダイゼーションは、Agilent TechnologiesのハイブリダイゼーションユーザーマニュアルおよびGene Expresstionハイブリダイゼーションキット(Agilent p/n 5 188−5242)に従って実施した。合計100μlの反応混合物を各Agilent Technologies 44K Arabidopsis 4マイクロアレイ(43803フィーチャー)にアプライし、65℃のハイブリダイゼーション回転オーブン中で17時間ハイブリダイズした。スライドを、最初に、室温でGene Expression Washバッファー1(Agilent p/n 5 188−5325)/0.005% Triton X−102で1分間洗浄し、次いで、室温でGene Expression Washバッファー2(Agilent p/n 5188−5326)/0.005% Triton X−102で1分間洗浄し、スライドをAgilent Stabilization and Drying溶液(Agilent p/n 5185−5979)に30秒間浸漬することによって乾燥させた。アレイをデュアルレーザーDNAマイクロアレイスキャナー(モデルG2505C、Agilent Technologies)を使用することによってスキャンした。Feature Extraction 10.1.1.1ソフトウェア(Agilent Technologies)を使用して、画像からデータを抽出し、アレイ内で正規化した。アレイ内正規化は、Lowess法に基づいていた。
【0083】
[マイクロアレイデータ分析]
GeneSpring GX 10.0.2パッケージ(Agilent Technologies)を使用して、マイクロアレイデータを分析した。スプリット−チャンネルを使用して、2色のデータ(赤および緑)を単色データ(赤または緑)としてGeneSpringにインポートした。このプロセスの際に、すべてのサンプルのパーセンタイルシフトおよび中央値へのシフトを使用してアレイ間正規化を実施した
【0084】
最初に、t検定p値(≦0.01)、次いで、変化倍数(≧1.5)に従って、差次的に発現された遺伝子のリストを同定した。さらに、R2.3ソフトウェアおよびLIMMAパッケージを使用してマイクロアレイデータを正規化し、差次的に発現された遺伝子のリストを作製した。
【0085】
[結果]
1.正常生育条件下でのアラビドプシスの成長に対するCPの効果:試験を実施して、アラビドプシス植物体の正常生育条件に対するCPの効果を決定した。これらの試験は、処理されたアラビドプシス植物体は、非処理植物体よりも密度の高い根を根鉢上に有すると思われることを示した(図1)が、葉数、葉面積および新鮮または乾燥葉重量においては処理および非処理植物体間で有意な相違は観察されなかった(表1)。
【0086】
この試験を、異なる光周期(10/14時間 昼/夜)下で反復した。葉数(処理の7、14および21日後)、葉面積および新鮮または乾燥葉重量においては、対照CP、(および比較例CE)処理された植物体間で有意な相違は観察されなかった。(表2、図2、図14)。
【0087】
【表7】

【0088】
【表8】

【0089】
2.塩ストレス抵抗性に対するCPの効果:アラビドプシス植物体で2種の試験を実施して、塩ストレスを低減することに対するCPの有効性を決定した。最初の1つでは、CP適用前に100mM NaClを用いて4日間灌水することによって植物体にストレスを加えた。1つの植物体を含む各ポット(セル)に、2009年2月3日および5日に100mM NaCl 25mLを与えた。1日後、CPまたは水(対照)を用いて植物体を処理した。処理された植物体の74パーセントが、複数のシュートを発達させた(図3)が、非処理植物体の29%しか、複数のシュートを発達させなかった(表3)。
【0090】
【表9】

【0091】
第2の試験では、アラビドプシス植物体をCPを用いて処理し、その後、それらを塩ストレスに付した。異なる結果が得られた。植物体に、2009年2月16日にCPまたは水で葉面噴霧し、CP適用後、50mM NaClを用いて4日間、次いで、100mM NaClを用いて7日間灌水した。この試験では、CP処理は、葉数(24.9%)、面積(47.0%)および新鮮重(46.9%)および乾重量(25.0%)を大幅に増大させた。(表4、図4、図15)。
【0092】
【表10】

【0093】
さらなる塩ストレス実験を実施したが、その目的は、温室中で生育させたトマト植物体(Lycopersicon es.)に対する誘導された塩ストレスの影響の軽減におけるCPの効果を決定することであった。トマトを種子から生産し、この実験のために3インチ×3インチのポットに移植した。無作為完備型ブロック計画で配置した処理あたり8の反復実験を含む、合計5種の処理を行った。すべてのポットに、それらが移植された当日および14日後の第2の適用での25mlの土壌灌注としてCPの適用を施した。未処理チェックは水のみを用いて処理し、CPを用いて処理したポットは0.3ppm CP〜2.4ppm CPの範囲の割合を有していた。第2の適用の7日後、各処理においてポットの半分に、200mM NaCl塩溶液の25mlの土壌灌注を施した。11日後、植物体を、活力、植物体の高さ、葉数ならびに植物体、根、およびシュート重量について測定した。データを表4Aおよび4Bに示す。
【0094】
【表11】

【0095】
【表12】

【0096】
この実験は、少なくとも一部は、ストレスを軽減するためのCPの最適な割合を評価するために設計した。上に明確に示されるように、塩灌注は、活力、高さ、葉数およびシュート重量によって示されるように、植物体のシュートに対してはごくわずかな効果しかなかった。しかし、塩は、UTCにおいて植物体の根重量および植物体全重量に対して、塩ストレスのないUTCにおける植物体と比較して統計的に有意な負の影響を有していた。高い割合のCP(1.2ppmおよび2.4ppmのCP)を添加することは、塩ストレスを受けた植物体およびストレスを受けていない植物体の両方について大幅な断根を引き起こしたが、低い割合は、ストレスを受けた植物体および受けていない植物体の両方について根および植物体全体の大きさを大幅に改善した。最低の割合のCPを用いて処理された植物については、ストレスを受けていない植物体およびストレスを受けた植物体間で根重量において統計的差異はなかった。表4Aおよび4Bに示される結果は、予測されないものであった。
【0097】
さらなる実験を実施したが、その目的は、温室中で生育させたトマト植物体(Lycopersicon es.)に対する誘導された塩ストレスの影響の軽減におけるCPの効果を決定することであった。トマトを種子から生産し、この実験のために3インチ×3インチのポットに移植した。無作為完備型ブロック計画で配置した処理あたり8の反復実験を含む、合計5種の処理を行った。すべてのポットに、それらが移植された当日および14日後の第2の適用での25mlの土壌灌注としてCPの適用を施した。未処理チェックは水のみを用いて処理し、CPを用いて処理したポットは0.075および0.0375ppm CPの割合を有していた。第2の適用の7日後、各処理においてポットの半分に、200mM NaCl塩溶液の25mlの土壌灌注を施した。13日後、植物体を、葉数およびシュート重量について測定した。データを表4Cおよび4Dに示す。
【0098】
【表13】

【0099】
【表14】

【0100】
この実験は、少なくとも一部は、植物の発達に対する、またストレスを軽減するためのCPの2種の異なる適用割合を評価するために設計した。上に示されるように、両割合でCPを用いて処理された植物体は、塩誘導性ストレスに暴露されたかどうかにかかわらず、シュート重量および葉数の両方において統計的に有意な差異を示した。さらに、CPおよび塩の適用を施されている植物体は、塩ストレスのない、CPを用いて処理されたものと同等またはそれよりも大きく、これらの植物体はまた、より多くの葉を有していたことが示される。普通、このレベルで適用される塩は、植物に関して大きさおよび葉数の両方を低減すると予想される。したがって、表4Cおよび4Dに示される結果は予測されないものであった。
【0101】
3.乾燥抵抗性に対するCPの効果:アラビドプシス植物体を、2009年2月23日にCPを用いて、または用いずに処理し、次いで、2009年3月9日から水やりを中断することによって乾燥条件に付した。これらの植物体を3月9日から3月30日まで、萎れ症状または植物体の死滅について観察した。このCP処理は、萎れ症状を1〜2日遅延すると思われた(図5;図16)。図5および16は、乾燥に対するアラビドプシス耐性に対するCP適用の効果を示す。図5に見られるように、左の列:CP処理;右の列:対照。水やりを停止した17日後にとった写真。
【0102】
さらなる実験を実施したが、その目的は、温室中で生育させたトマト植物体(Lycopersicon es.)に対する誘導された乾燥ストレスの影響の軽減におけるCPの効果を決定することであった。トマトを種子から生産し、この実験のために3インチ×3インチのポットに移植した。無作為完備型ブロック計画で配置した処理あたり8の反復実験を含む、合計3種の処理を行った。処理2におけるすべてのポットに、それらが移植された当日および21日後の第2の適用での25mlの土壌灌注としてCPの適用を施した。未処理チェックおよび処理3は、水のみを用いて処理した。第2の適用の7日後、処理2および3におけるすべての植物体について毎日の水やりを中断して、極度の乾燥条件を摸倣した。水やりを停止した16日後に、各処理において植物体の半分を採取して、根重量、シュート重量および総重量を測定した。次いで、水やりを再開し、9日後に乾燥ストレスからの回復を決定した。結果を表4Eに示す。示されるように、一時期、水やりが行われなかったすべての植物体は、CPを用いて処理されたか否かにかかわらず、最終的には影響を受けた。CPは、水がないという影響を最小にすることにおいて、わずかな効果を有すると思われるが、データは統計的に有意ではない場合もある。しかし、水やりを再開した後、CPを用いて処理された植物体は、表4Dに示されるように、根およびシュート重量に関してかなり改善された応答/回復を有していた。この応答データは、統計的に有意であると決定された。したがって、本明細書に開示される組成物は、ストレス低減において改善を提供し、また、組成物を用いて処理されていない同様の植物体と比較した、ストレスが低減および/または中断された後の「農学的回復」の改善も含む。表4Eに示される自己回復結果は、予測されないものであった。
【0103】
【表15】

【0104】
4.in vitroでの種子発芽に対するCPの効果 2種の試験を実施して、CPと接触させたアラビドプシス種子の種子発芽の効果を決定した。第1の試験は、以下の処理からなるものであった:
Y2 MS(Sigmaムラシゲおよびスクーグ基礎塩混合物)
Y2 MS+CP5000X
Y2 MS+125mM NaCl
Y2 MS+125mM NaCl+CP5000X
【0105】
各プレート中に200〜300個の種子を含む、各処理について1つのペトリ皿。第2の試験は、同様の処理からなるものとした:
Y2 MS
Y2 MS+CP1000X
Y2 MS+125mM NaCl
Y2 MS+125mM NaCl+CP1000X
【0106】
各処理4プレートについて4プレート、各プレート中に49個の種子を植え付けた。処理間で有意差は観察されなかった。
【0107】
5.in vitroでの根の成長に対するCPの効果:3種の試験を実施して、in vitroでのアラビドプシスの根の成長に対するCPの効果を決定した。第1の試験では、種子をV2 MS+125mM NaCl培地で発芽させ、次いで、4日齢の実生を以下の条件に付した:
V2 MS+125mM NaCl
V2 MS+125mM NaCl+CP1000X
V2 MS+125mM NaCl+CP5000X
【0108】
第2の試験では、V2 MS培地で発芽させた4日齢の実生を、以下を含有するペトリ皿に移した:
V2 MS
V2 MS+CP1000X V2 MS+CP5000X
【0109】
処理4プレート各々、各プレート中に4〜6個の実生。
【0110】
第3の試験では、実生をV2 MS中で生育させ、次いで、さらに高濃度のNaClに付した:
V2 MS
V2 MS+225mM NaCl
V2 MS+225mM NaCl+CP1000X
V2 MS+225mM NaCl+CP5000X
【0111】
各処理は4プレートからなり、各プレート中に4〜6個の実生を入れた。これらの3試験で有意差は観察されなかった。
【0112】
6.CPによって開始された遺伝子発現:図6に示されるように、アラビドプシスロゼット葉から高品質RNAを単離した。発現技術は図17に図式的に表されている。Agilent TechnologiesのアラビドプシスオリゴマイクロアレイV4は、植物の全ゲノムに及ぶ43603種の遺伝子または転写物を含有する。表5に要約されるように、ハイブリダイズされた43,603種の遺伝子または転写物(以下、簡潔さのために遺伝子と呼ばれる)のうち1,382種の遺伝子または1,115種の遺伝子が、それぞれT1(CP)または比較例CEについてp値≦0.01で有意な変化倍数を示した。図7は、T1処理対対照における、アラビドプシス遺伝子のゲノム規模での発現プロフィール(43603フィーチャー)を表す(Y軸:遺伝子発現レベル変化倍数;X軸:左側にT1および右側に対照)。
【0113】
それらの中で、T1については456種および423種の遺伝子の発現レベルが、少なくとも1.5倍または50%変化した。したがって、図8は、p値≦0.01で、その発現レベルが1.5倍以上変化したアラビドプシス遺伝子の発現プロフィールプロットを表す(Y軸:遺伝子発現レベル変化倍数、X軸:左側にT1および右側に対照)。図9は、p値≦0.01で、その発現レベルが1.5倍以上変化したアラビドプシス遺伝子のボルケーノプロットである(Y軸:p値の−log10(2=p値0.01)、X軸:遺伝子発現レベル変化倍数)。図10は、右側の対照と比較した、CP調節された遺伝子のヒートマップであり、ここで、各線は別個の遺伝子を表す。幅が広く、より黒い線は、アップ/ダウンレギュレートされた遺伝子を表す。図11は、p値≦0.01で、その発現レベルが1.5倍以上変化したアラビドプシス遺伝子の発現プロフィールプロットを表す(Y軸:遺伝子発現レベル変化倍数;X軸:左側にT2および右側に対照)。図12は、T2対対照では、p値≦0.01で、その発現レベルが1.5倍以上変化したアラビドプシス遺伝子のボルケーノプロットである(Y軸:p値の−log10(2=p値0.01)、X軸:遺伝子発現レベル変化倍数)。図13は、右側の対照と比較した、CE調節された遺伝子のヒートマップであり、ここで、各線は、別個の遺伝子を表す。CEについて、アップレギュレートされた遺伝子の数は、T1およびT2についてそれぞれ60および160であった。その発現レベル変化は、1.5(カットオフ)〜4.0倍の範囲であり、1.8〜1.9の平均変化倍数であった。
【0114】
図18および19に示されるように、CP(T1)またはCP1000(T2)適用の6時間後、かなり多数の遺伝子がダウンレギュレートされた。例えば、394種の遺伝子の発現がT1によって抑制され、その発現レベルが38.4倍ほども低下した。同様に、T2については263種の遺伝子が抑制され、その発現レベルは、20.3倍ほども低下した。
【0115】
【表16】

【0116】
表6および7は、それぞれ、T1に応じて、また、T2に応じて、その発現レベルが1.5倍以上まで変化し、p≦0.01を有していた遺伝子の遺伝子名、GeneBank受託番号および説明(および潜在的機能)を含めた詳細を提供する。表6は、T1(CPが接触した)処理に応答すると分かった456種の遺伝子を列挙する。表7は、T2処理に応答する423種の遺伝子を列挙する。以下は、これらの有意に差次的に発現された遺伝子の一部の短い概説を提供する。CPとの接触によって調節される多数の遺伝子が予測されないものであった。
【0117】
T1によってアップレギュレートされる60種の遺伝子の中に以下がある。
植物調節因子産生または応答をコードする5種の遺伝子:変化倍数1.5〜1.8 オーキシン応答性ファミリータンパク質の3種、
ジベレリン20オキシダーゼ遺伝子の2種、
トランスポーター(アミノ酸、炭水化物およびプリン)をコードする3種の遺伝子:変化倍数1.5〜1.8、
酵素をコードする8種の遺伝子:変化倍数1.5〜3.2、
3種の防御関連遺伝子:変化倍数1.6〜2.6、および
転写因子または転写調節因子をコードする2種の遺伝子:変化倍数1.8〜2.2 ATPアーゼ/イオン移動をコードする1種の遺伝子:変化倍数1.5。
【0118】
T1によってダウンレギュレートされる396種の遺伝子の中に、転写因子、転写調節因子、イニシエーターをコードする34種の遺伝子がある。
【0119】
T2によってアップレギュレートされる160種の遺伝子の中に以下がある。
転写因子をコードする10種の遺伝子:変化倍数1.5〜3.5、
様々なプロテインキナーゼの12種および加水分解酵素の6種などの様々な種類の酵素をコードする39種の遺伝子ならびに多様なその他のもの。
【0120】
T1およびT2によって調節される99種の遺伝子の中に以下がある。
1種の遺伝子(AT5G2063受容体):T1およびT2によってアップレギュレートされる、
i)WRKYエレメントを含有する3種、
ii)エチレン応答性エレメントを含有する1種、
iii)ABAレプレッサーを含有する1種、
iv)塩耐性ジンクフィンガーモチーフを含有する1種、
v)強光応答性のエレメントを含有する1種
を含めた、転写因子をコードする11種の遺伝子、1.5〜6.2倍ダウン、
4種の推定上の疾患耐性遺伝子、1.5〜2.4ダウン、
推定上のキチナーゼタンパク質をコードする1種の遺伝子、1.6〜2.1ダウン、
カルシウムイオン結合タンパク質をコードする2種の遺伝子、4.7〜5.5ダウン、
亜鉛イオン結合タンパク質をコードする3種の遺伝子、2.2〜3.5ダウン、
リン酸誘導性タンパク質をコードする1種、3.2〜5.0ダウンされる、
ABC輸送体ファミリータンパク質をコードする1種の遺伝子、3.2〜3.5、
陽イオン/水素交換体(プロトン交換輸送体)をコードする1種の遺伝子、
1種の糖脂質輸送体遺伝子、3.3〜3.7ダウン、
1種のカルモジュリン関連タンパク質、3.2〜3.6ダウン;1種のプロテインキナーゼ/糖結合、
2種のプロテアーゼ阻害剤遺伝子、1.8〜3.4、
1種のペクチンエステラーゼファミリータンパク質、2.9〜8.1ダウン、
1種のオキシドレダクターゼ、2.6〜4.0ダウン、
2種の膜貫通型受容体遺伝子、1.9〜3.4ダウン、
1種の熱ショックタンパク質遺伝子、2.7〜2.8ダウン、および
1種の老化関連タンパク質、2.1〜2.6ダウン。
【0121】
表8および表9に、T1およびT2(CP誘導性)対対照に応答性の遺伝子ならびにT1によってアップレギュレートされる転写因子遺伝子ならびにT1およびT2の両方によってアップレギュレートされる遺伝子のリストがそれぞれ要約されている。CPは、アラビドプシスゲノム研究によって表されるような、多数の多様な群の植物遺伝子の発現の調節における効力を示している。CPによって調節される遺伝子の一部は、オーキシン、ジベレリン酸、アブシジン酸などの植物ホルモンおよび潜在的にはその他の化学的刺激に対する応答またはその代謝に関与している。CPによって調節される遺伝子の一部は、イオン結合または移動性、植物防御などに関与している。最も注目すべきことに、CPによって調節される遺伝子の多数が転写因子である。これは、CPが、多数の植物生化学的および生理学的プロセスに対して効果を発揮することを示す。これらの利点は、その他の植物に当てはまる。ある意味では、CPは、非伝統的植物成長調節因子のように作用する。上記の実験のさらなる結果は、CPが植物において遺伝子発現を調節し得ることを示す。この調節は、例えば、乾燥および塩分ストレスなどのストレス下で、植物の成長を改善し得る。さらに、CPは、植物の乾燥回復の改善を提供し得、乾燥ストレス下で植物での萎れ症状の出現を遅延し得る。
【0122】
【表17−1】

【表17−2】

【表17−3】

【表17−4】

【表17−5】

【表17−6】

【表17−7】

【表17−8】

【表17−9】

【表17−10】

【表17−11】

【表17−12】

【表17−13】

【表17−14】

【表17−15】

【表17−16】

【表17−17】

【表17−18】

【表17−19】

【表17−20】

【表17−21】

【表17−22】

【表17−23】

【表17−24】

【表17−25】

【表17−26】

【表17−27】

【表17−28】

【表17−29】

【表17−30】

【表17−31】

【表17−32】

【表17−33】

【表17−34】

【表17−35】

【表17−36】

【表17−37】

【表17−38】

【0123】
【表18−1】

【表18−2】

【表18−3】

【表18−4】

【表18−5】

【表18−6】

【表18−7】

【表18−8】

【表18−9】

【表18−10】

【表18−11】

【表18−12】

【表18−13】

【表18−14】

【表18−15】

【表18−16】

【表18−17】

【表18−18】

【表18−19】

【表18−20】

【表18−21】

【表18−22】

【表18−23】

【表18−24】

【表18−25】

【表18−26】

【表18−27】

【表18−28】

【表18−29】

【表18−30】

【表18−31】

【表18−32】

【表18−33】

【表18−34】

【表18−35】

【表18−36】

【0124】
【表19−1】

【表19−2】

【表19−3】

【表19−4】

【表19−5】

【表19−6】

【表19−7】

【表19−8】

【表19−9】

【表19−10】

【表19−11】

【表19−12】

【表19−13】

【表19−14】

【表19−15】

【表19−16】

【表19−17】

【表19−18】

【表19−19】

【表19−20】

【0125】
【表20−1】

【表20−2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物におけるストレス応答を改善する方法であって、種子もしくは植物の一部またはそれらの部位を、部分的に腐植化された天然有機物を特徴とする溶存有機物の農業上許容可能な複合混合物を含む組成物と接触させるステップを含む方法。
【請求項2】
前記組成物が、前記植物の受容体をアップレギュレートする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記組成物が、WRKYエレメント、エチレン応答性エレメント、ABAレプレッサー、塩耐性ジンクフィンガーモチーフ、強光応答性エレメント、推定上の疾患耐性遺伝子、推定上のキチナーゼタンパク質、カルシウムイオン結合タンパク質、亜鉛イオン結合タンパク質、リン酸誘導性タンパク質、ABC輸送体ファミリータンパク質、陽イオン/水素交換体(プロトン交換輸送体)、糖脂質輸送体遺伝子、カルモジュリン関連タンパク質、プロテインキナーゼ/糖結合、プロテアーゼ阻害剤遺伝子、ペクチンエステラーゼファミリータンパク質、オキシドレダクターゼ、膜貫通型受容体遺伝子、熱ショックタンパク質遺伝子または老化関連タンパク質から選択される少なくとも1種の植物遺伝子をダウンレギュレートする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記組成物が、植物調節因子産生もしくは応答、オーキシン応答性ファミリータンパク質、ジベレリン20オキシダーゼ遺伝子、アミノ酸トランスポーター、炭水化物トランスポーター、プリントランスポーターをコードする遺伝子、酵素をコードする遺伝子、防御関連遺伝子、転写因子もしくは転写調節因子をコードする遺伝子またはATPアーゼ/イオン移動をコードする遺伝子から選択される少なくとも1種の植物遺伝子をアップレギュレートする、請求項1または2のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記組成物が、転写因子をコードする遺伝子、酵素、プロテインキナーゼまたは加水分解酵素をコードする遺伝子から選択される少なくとも1種の植物遺伝子をアップレギュレートする、請求項1または2のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記組成物が、植物調節因子産生もしくは応答、オーキシン応答性ファミリータンパク質、ジベレリン20オキシダーゼ遺伝子、アミノ酸トランスポーター、炭水化物トランスポーター、プリントランスポーターをコードする遺伝子、酵素をコードする遺伝子、防御関連遺伝子、転写因子もしくは転写調節因子をコードする遺伝子またはATPアーゼ/イオン移動をコードする遺伝子から選択される少なくとも1種の植物遺伝子をアップレギュレートし、かつ、転写因子、転写調節因子、成長、防御、代謝またはイオン輸送から選択される少なくとも1種の植物遺伝子をダウンレギュレートする、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
植物種の少なくとも1種の遺伝子を調節する方法であって、植物の一部またはその部位を、部分的に腐植化された天然有機物を特徴とする溶存有機物の農業上許容可能な複合混合物を含む組成物と接触させるステップを含み、
前記少なくとも1種の遺伝子が、成長、防御、代謝またはイオン輸送と関連する植物の機能を調節する方法。
【請求項8】
前記少なくとも1種の遺伝子が、転写因子をコードする遺伝子、酵素、プロテインキナーゼまたは加水分解酵素をコードする遺伝子から選択される少なくとも1種の植物遺伝子を調節する、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記組成物が、
a.縮合炭化水素、リグニンおよびタンニンおよび/または縮合型タンニンの混合物、
b.約0.5を超える溶存有機物の酸素対炭素比、
c.質量分析による測定で、約0.5〜約1.4の水素対炭素比および約0.7未満の芳香族性指数を有する総数約200を超えるタンニン化合物、または
d.質量分析による測定で、約55〜60%のリグニン化合物、27〜35%のタンニン化合物および約8〜15%の縮合炭化水素である質量分布
のうち2つ以上を特徴とする、請求項1、2、6および7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記組成物が、縮合炭化水素、リグニンおよびタンニンおよび/または縮合型タンニンの混合物を含み、前記組成物の化合物の全割合の少なくとも10%が、タンニンおよび/または縮合型タンニンであることを特徴とする、請求項1または7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記組成物が、縮合炭化水素、リグニンおよびタンニンおよび/または縮合型タンニンの混合物を含み、前記組成物の化合物の全割合の少なくとも20%が、タンニンおよび/または縮合型タンニンであることを特徴とする、請求項1または7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
ストレス低減の前記改善が、前記組成物を用いて処理されていない同様の植物種と比較した、前記ストレスが低減または中断された後の前記植物の農学的回復の改善を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
前記ストレスが乾燥である、請求項12に記載の方法。

【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公表番号】特表2013−505964(P2013−505964A)
【公表日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−531113(P2012−531113)
【出願日】平成22年9月28日(2010.9.28)
【国際出願番号】PCT/US2010/050520
【国際公開番号】WO2011/038389
【国際公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(511009592)エフビーサイエンシズ・ホールディングス,インコーポレイテッド (4)
【Fターム(参考)】