植物の栽培方法
【課題】赤、青、黄色の光の要素に注目し、効率の良い日照不足の改善や日照時間の延長、及び、茎や根の生長を促す植物の栽培方法を提供すること。
【解決の手段】本発明の植物栽培方法は、植物8に照射する補助光源3、4と植物8の上方に設けられ太陽を取り入れる太陽光の取り入れ窓1とで構成され、補助光源3、4はは多数個の赤色LED3と青色LED4であり、天気が晴れの時は太陽光を植物に当て、曇りの時は赤色LED3を照射し、雨の時は赤色LED3と青色LED4を照射するものである。
【解決の手段】本発明の植物栽培方法は、植物8に照射する補助光源3、4と植物8の上方に設けられ太陽を取り入れる太陽光の取り入れ窓1とで構成され、補助光源3、4はは多数個の赤色LED3と青色LED4であり、天気が晴れの時は太陽光を植物に当て、曇りの時は赤色LED3を照射し、雨の時は赤色LED3と青色LED4を照射するものである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物の生長を促す栽培方法に関し、日照不足の改善や日照時間の延長、及び、茎や根の生育を促す最適な栽培方法の提供に関するものである。
【背景技術】
【0002】
青色発光ダイオード(青色LED)が実用化され、植物の栽培に赤、青、黄色の光の要素を考慮に入れた方法が提案され始めている。また、農業の工場生産化も一部始められており、その実用化のために活発な研究がなされている。その結果、赤色の光は植物の光合成に大きく作用し、青色の光は花芽の形成や光合成を促進させ、黄色い光は植物の生長にほとんど寄与しない事が知られている。しかし、現実にはまだ研究は始まったばかりであり、これからの研究が期待されている分野である。
【特許文献1】特開2002‐247919号公報
【特許文献2】特開2002‐272272号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記特許文献1,2の植物の栽培方法では、赤い光、青い光に対する研究と出願は不十分であるといえる。例えば、特開2002‐247919号公報では、一年を通じての赤色や青色の光が植物の生育に及ぼす影響について調べているが、一日の曇りや雨の影響については触れられておらず、その時の赤色や青色の光の影響は何ら考慮されていない。また、梅雨や秋雨時の赤や青い光の変化や、その変化が植物の生長に及ぼす影響については何ら触れていない。
また、特開2002‐272272号公報では、赤い光や青い光が植物の光合成に関係することや花芽の生育に影響することについては触れられているが、青い光が植物の茎や根の生長については何ら記載されていない。
また、工場におけるレタス栽培が始められているが、一日中赤色LEDによる照明のみである。昼間の太陽光は全く利用されていないため、エネルギーの利用効率が悪い。
【0004】
本発明は、赤、青、黄色の光の要素に注目し、効率の良い日照不足の改善や日照時間の延長、及び、茎や根の生長を促す植物の栽培方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
曇ったり、雨が降ったりしている時は、太陽が陰り日の光が弱くなる。その時の光量の変化を近くに設置してある光量センサで検出することが好ましい。ここで光量は全光量を検出しても良いし、赤色と青色の光量を検出しても良い。この時不足した光量を天井の近くに設置された赤と青のLEDが多数並んだ補助光源を制御して不足分を補う。通常、雲が出ている時は赤い光の割合が20%ほど減るので(図1参照)、この不足分を補うように赤色LEDを発光させる。また、雲が厚く雨が降ったりしている時は赤い光ばかりでなく青い光までも弱まる。その時は赤色LEDと青色LEDも発光させても良い。
【0006】
青い光は主に根と茎の生長を促す。従って、大根や人参、ごぼうなど根菜類の野菜を育てる時やアスパラガスなどの茎を主とする野菜を育てる時は、青い光が重要であることが分かる。そこで、この発明の構成にある様に、補助光源の青色LEDを制御して、例えば10%から20%ぐらい青色の光を増やすことにより根や茎の生育を促すことが出来る。また、青い光は花芽の生長を促進させる。種子植物の場合発芽後、本葉が出る時期以降に青色LEDを発光させても良い。
【発明の効果】
【0007】
曇りや雨の日の日照不足を効率よく補い、朝夕の時間帯や夜間で効率の良い照明を提供する事が出来るため、消費電力を低減し、植物の栽培コストを低く抑える事が出来る。
【0008】
根菜類の野菜や茎を主とする野菜、及び、鉢花や観葉植物などの栽培をする時に茎や根の生長を促す照明を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
まず最初に、本発明に至った一日における赤、青、黄色の光の成分について調べた結果を実験1により説明する。
(実験1)
【0010】
赤色、青色、黄色の光成分の割合が天候によってどのように変化するか、つまり晴れ、曇り、雨の時の赤、青、黄色の相対光強度を調べた。例えば、2003年8月4日における一日の時刻にわたり相対光強度を調べたものが図1である。この日はほぼ一日中晴れていたが、11時から12時30分ごろ雲が出て日が陰った。この曇りの時間帯以外は赤、青、黄色の光強度の割合はほぼ一定だったが、雲が出た時間帯は赤色の光の割合が晴れている時に比べて約15%減り、その分黄色の光の割合が増えた。また、青色の光の割合は晴れても曇っても一日中ほとんど変わらなかった。この現象は次のように説明できる。赤色の光は波長が長いために雲の水分により吸収される量が増える。したがって、雲が出ると地上に届く赤い光の割合が減る。一方、青い光は波長が短いために雲により散乱する量が増えるので雲が出ると地上に到達する青い光も少し減るが、大きくは変化しない。それに対して、黄色の光は波長が赤と青の中間にあるために吸収も散乱もされにくいので、地上に到達する光の量は晴れても曇ってもほとんど変わらない。つまり、赤色の光が減少し、黄色の光の量が変わらなかったので黄色の光の割合が増えたのである。
また、夕方になると、太陽の光は斜めに入射するために、大気中を通る長さが長くなるために青い光だけではなく、黄色の光も散乱されて少なくなる。このために夕方には赤い光の割合が増える。この現象が夕焼けである。図1からも分かるように、18時ごろ黄色の光が少なくなっているのはこのためである。
一方、図は省略するが雨が降った場合も同様の結果が得られている。雨が降り雲が厚くなった場合、地上に届く赤い光の割合は晴れた時に比べて20%程度減る。
【0011】
実験1の結果より次の事が分かる。
1)積雲程度の雲が出て日が陰ると赤い光の全光量に対する割合は、図1から分かるように雲が出る(11時から12時半)と晴れている時(例えば、8時〜11時)に比べておよそ15〜20%程度減る。
2)黄色い光は、雲が出ると晴れている時に比べて15%程度割合が増える。
3)夕方、8月は18時頃になると、日中晴れている時に比べて黄色い光の割合が減る。
また、同様に雨が降ったときについても調べた。その結果、次の事が分かった。
4)晴れ、曇り、雨の日では赤い光の割合が変わり、晴れ>曇り>雨の順で赤い光は減る。
5)青い光の割合は、晴れでも曇りでも雨でも一日中ほとんど変わらない。
【0012】
次に、赤、青、黄色の光が植物の生長に及ぼす影響について調べた結果を実験2により説明する。
(実験2)
【0013】
カイワレダイコンの発芽と生長過程と光の関係について、茎と根の長さと重さを比較、観察した。容器に土を入れ、その土が被さるくらいに水入れ、その上からカイワレダイコンの種をまいたものに自然光、赤、青、黄色の光を当てた状態と光を当てない状態で一週間育てたものの発芽と生長について観察した。そのうち、発育の悪いものについては削除した。その結果を図2から図9に示した。図2は自然光を当てて育てたものの観察結果である。図中の番号は、カイワレダイコンの個体の番号である。
【0014】
図3は光を当てない状態で育てたものの観察結果である。茎の長さの平均値を見て分かるように光を当てないで育てると、自然光を当てて育てたもの(図2参照)よりも茎が約2倍長かった。一方、全体の重さの平均値は同じだったが、茎の重さは自然光の約2倍であり、葉は小さく重さは自然光の半分であった。
【0015】
図4は、赤い光の透過率はそのままで、青と黄色の光の透過率を4分1くらいに落として育てたものの観察結果である。茎の長さの平均値を見て分かるようにこの条件で育てると、自然光を当てて育てたもの(図2)よりも茎の長さが約1.5倍になった。
【0016】
図5は、青と黄色の光をほとんど通さなくして育てたものの観察結果である。茎の長さと茎の重さの平均値を見て分かるようにこの条件で育てると、自然光を当てて育てたもの(図2)よりも茎の長さが約1.5倍であり、茎の重さは2倍になった。つまり、自然光で育てたものよりも茎が太い事が分かる。
【0017】
図6は青い光の透過率はそのままで、赤と黄色の透過率を3分の1くらいに落として育てたものの観察結果である。根の長さと根の重さの平均値を見て分かるようにこの条件で育てると、自然光を当てて育てたもの(図2)と比べて、根の長さはほぼ同じであるが、根の重さが1.3倍になった。つまり、この条件で育てると自然光を当てて育てた時よりも根が1.3倍太くなる事が分かる。
【0018】
図7は青い光の透過率はそのままで赤と黄色の光の透過率を6分の1くらいに落として育てたものの観察結果である。根の長さと根の重さの平均値を見て分かるように、この条件で育てると自然光を当てて育てたもの(図2)と比べて、根の長さはほぼ同じであるが、根の重さが1.5倍になった。つまり、この条件で育てると自然光を当てて育てた時よりも根が2倍になる事が分かる。
【0019】
図8は黄色い光の透過率はそのままで赤と青の光の透過率を6分の1くらいに落として育てたものの観察結果である。茎の長さと重さ、根の長さと重さ、葉の重さの平均値を見て分かるように、この条件で育てると自然光を当てて育てたもの(図2)と比べると、どの長さも重さもほとんど同じである。
【0020】
図9は赤と青の光をほとんど通さなくして育てたものの観察結果である。葉の重さの平均値を見て分かるようにこの条件で育てると、自然光を当てて育てたもの(図2)よりも葉の重さが約0.6倍になった。また、茎や根の長さと重さはほとんど変わらない。
【0021】
その結果をまとめると図10のようになった。
暗室に入れて育てると茎が長くなる。また青い光を当てて育てると根と茎の長さの比率は自然光を当てて育てたものと同じくらいの割合になる。それに対し、暗室で育てたもの、赤や黄色の光を当てて育てたものの根と茎の長さの比率は自然光で育てたものの半分くらいの割合である。つまり、根の生長を促すのは青い光である事が分かる。自然光を当てて育てたものは他の条件よりも茎の長さが短い。つまり、光のバランスを変えると茎が長くなることが分かる。次は重さに関して調べてみた。青い光を当てて育てると茎の単位長さあたりの重さが自然光で育てたものの約1.5倍である。また、青い光を当てて育てると根の単位長さあたりの重さが他の条件で育てたものの約2倍である。つまり、青い光は茎と根を生長させ、太くする作用がある。赤い光を当てて育てると葉が重くなる。これは赤い光が葉の生長を促し、葉緑素に作用するからである。
【0022】
実験2の結果をまとめると以下のようになる。
1)赤い光は葉と茎を生長させ、葉緑素を作り光合成に作用する。
2)青い光は根と茎を太くする。特に根を太くさせ、側根を増やす。
3)黄色の光は植物の生長には作用しない。
4)自然光の色のバランスを変えると、茎が長くなる。
【0023】
赤い光を当てて育てると茎と葉の生長が促されるので、レタスなどの葉物類の野菜に当てて育てると良い。赤と青い光を当てて育てると根と茎が太くなるので、大根や人参などの根菜類やアスパラガスなど主として茎を食べる野菜に当てると良い。また、鉢花や観葉植物などの生育には根や茎の生長も重要であるために赤い光と青い光を当てることは大切な条件となる。
【0024】
次は具体的な実施例について説明する。図11は農業工場における本発明の実施例である。農業工場(ビニールハウスも同様)の天井2には、太陽光7を取り入れる窓1があり、天井の近くには多数のLED3,4が並べられている補助光源が配置されている。前記多数のLEDは、赤色LED3、及び、青色LED4の二種類のLEDで構成されている。さらに生育される植物8が植えられており、その近くには光量を検出する光量センサ6が設けられている。光量センサ6の出力に応じて各LED3,4の光量が変化できるようにLED発光制御回路5によりLED3,4の発光強度を制御する。
【0025】
空が曇っていたり雨が降った時は、赤色の光が減るので、光量センサ6により全光量、または、赤色と青色の光量を検出する。光量センサの出力に応じて赤色LED 3、及び、青色LED4の光量を制御する。また、日中は太陽光7を取り入れ夕方から夜間は各LED3,4を点灯させる事により植物の生育期間を早め、早く収穫でき、少電力化を測る事ができる。
また、前記太陽光7を取り入れる窓1は、太陽光7を直接取り入れる窓1、または、太陽光7を光ファイバにより導かれた構成では光ファイバの端面、または、ミラーにより太陽光7を導く構成では最後に配置されたミラーであってもよい。これにより、多層階の工場にも対応する事ができる。
【産業上の利用可能性】
【0026】
農業工場やビニールハウスで、大根や人参などの根菜類の野菜やアスパラガスなどの茎を主とする野菜、鉢花や観葉植物などを栽培する時に用いる。曇りや雨が多い日の補助光源や、夕方や夜間にわたり日照時間を長くして野菜の早期収穫をする時に利用する植物の栽培方法である。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】一日の時刻における赤、青、黄色の相対光強度を示すグラフである。
【図2】カイワレダイコンの発芽と生長における、自然光を当てて育てた時の茎と根の長さと重さを比較した結果を示した図である。
【図3】カイワレダイコンの発芽と生長における、光を当てない状態で育てた時の茎と根の長さと重さを比較した結果を示した図である。
【図4】カイワレダイコンの発芽と生長における、赤い光の透過率はそのままで、青と黄色の光の透過率を4分1くらいに落として育てた時の茎と根の長さと重さを比較した結果を示した図である。
【図5】カイワレダイコンの発芽と生長における、青と黄色の光をほとんど通さなくして育てた時の茎と根の長さと重さを比較した結果を示した図である。
【図6】カイワレダイコンの発芽と生長における、青い光の透過率はそのままで、赤と黄色の透過率を3分の1くらいに落として育てた時の茎と根の長さと重さを比較した結果を示した図である。
【図7】カイワレダイコンの発芽と生長における、青い光の透過率はそのままで赤と黄色の光の透過率を6分の1くらいに落として育てた時の茎と根の長さと重さを比較した結果を示した図である。
【図8】カイワレダイコンの発芽と生長における、黄色い光の透過率はそのままで赤と青の光の透過率を6分の1くらいに落として育てた時の茎と根の長さと重さを比較した結果を示した図である。
【図9】カイワレダイコンの発芽と生長における、赤と青の光をほとんど通さなくして育てた時の茎と根の長さと重さを比較した結果を示した図である。
【図10】カイワレダイコンの発芽と生長過程において、自然光、赤、青、黄色の光をそれぞれ当てたもの、暗室に入れて育てたものについて、茎と根の長さと重さを比較した結果をまとめた表である。
【図11】農業工場における本発明の実施例である。
【符号の説明】
【0028】
1.太陽光取り入れ窓
2.天井
3.赤色LED
4.青色LED
5.LED発光制御回路
6.光量センサ
7.太陽光
8.植物
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物の生長を促す栽培方法に関し、日照不足の改善や日照時間の延長、及び、茎や根の生育を促す最適な栽培方法の提供に関するものである。
【背景技術】
【0002】
青色発光ダイオード(青色LED)が実用化され、植物の栽培に赤、青、黄色の光の要素を考慮に入れた方法が提案され始めている。また、農業の工場生産化も一部始められており、その実用化のために活発な研究がなされている。その結果、赤色の光は植物の光合成に大きく作用し、青色の光は花芽の形成や光合成を促進させ、黄色い光は植物の生長にほとんど寄与しない事が知られている。しかし、現実にはまだ研究は始まったばかりであり、これからの研究が期待されている分野である。
【特許文献1】特開2002‐247919号公報
【特許文献2】特開2002‐272272号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記特許文献1,2の植物の栽培方法では、赤い光、青い光に対する研究と出願は不十分であるといえる。例えば、特開2002‐247919号公報では、一年を通じての赤色や青色の光が植物の生育に及ぼす影響について調べているが、一日の曇りや雨の影響については触れられておらず、その時の赤色や青色の光の影響は何ら考慮されていない。また、梅雨や秋雨時の赤や青い光の変化や、その変化が植物の生長に及ぼす影響については何ら触れていない。
また、特開2002‐272272号公報では、赤い光や青い光が植物の光合成に関係することや花芽の生育に影響することについては触れられているが、青い光が植物の茎や根の生長については何ら記載されていない。
また、工場におけるレタス栽培が始められているが、一日中赤色LEDによる照明のみである。昼間の太陽光は全く利用されていないため、エネルギーの利用効率が悪い。
【0004】
本発明は、赤、青、黄色の光の要素に注目し、効率の良い日照不足の改善や日照時間の延長、及び、茎や根の生長を促す植物の栽培方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
曇ったり、雨が降ったりしている時は、太陽が陰り日の光が弱くなる。その時の光量の変化を近くに設置してある光量センサで検出することが好ましい。ここで光量は全光量を検出しても良いし、赤色と青色の光量を検出しても良い。この時不足した光量を天井の近くに設置された赤と青のLEDが多数並んだ補助光源を制御して不足分を補う。通常、雲が出ている時は赤い光の割合が20%ほど減るので(図1参照)、この不足分を補うように赤色LEDを発光させる。また、雲が厚く雨が降ったりしている時は赤い光ばかりでなく青い光までも弱まる。その時は赤色LEDと青色LEDも発光させても良い。
【0006】
青い光は主に根と茎の生長を促す。従って、大根や人参、ごぼうなど根菜類の野菜を育てる時やアスパラガスなどの茎を主とする野菜を育てる時は、青い光が重要であることが分かる。そこで、この発明の構成にある様に、補助光源の青色LEDを制御して、例えば10%から20%ぐらい青色の光を増やすことにより根や茎の生育を促すことが出来る。また、青い光は花芽の生長を促進させる。種子植物の場合発芽後、本葉が出る時期以降に青色LEDを発光させても良い。
【発明の効果】
【0007】
曇りや雨の日の日照不足を効率よく補い、朝夕の時間帯や夜間で効率の良い照明を提供する事が出来るため、消費電力を低減し、植物の栽培コストを低く抑える事が出来る。
【0008】
根菜類の野菜や茎を主とする野菜、及び、鉢花や観葉植物などの栽培をする時に茎や根の生長を促す照明を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
まず最初に、本発明に至った一日における赤、青、黄色の光の成分について調べた結果を実験1により説明する。
(実験1)
【0010】
赤色、青色、黄色の光成分の割合が天候によってどのように変化するか、つまり晴れ、曇り、雨の時の赤、青、黄色の相対光強度を調べた。例えば、2003年8月4日における一日の時刻にわたり相対光強度を調べたものが図1である。この日はほぼ一日中晴れていたが、11時から12時30分ごろ雲が出て日が陰った。この曇りの時間帯以外は赤、青、黄色の光強度の割合はほぼ一定だったが、雲が出た時間帯は赤色の光の割合が晴れている時に比べて約15%減り、その分黄色の光の割合が増えた。また、青色の光の割合は晴れても曇っても一日中ほとんど変わらなかった。この現象は次のように説明できる。赤色の光は波長が長いために雲の水分により吸収される量が増える。したがって、雲が出ると地上に届く赤い光の割合が減る。一方、青い光は波長が短いために雲により散乱する量が増えるので雲が出ると地上に到達する青い光も少し減るが、大きくは変化しない。それに対して、黄色の光は波長が赤と青の中間にあるために吸収も散乱もされにくいので、地上に到達する光の量は晴れても曇ってもほとんど変わらない。つまり、赤色の光が減少し、黄色の光の量が変わらなかったので黄色の光の割合が増えたのである。
また、夕方になると、太陽の光は斜めに入射するために、大気中を通る長さが長くなるために青い光だけではなく、黄色の光も散乱されて少なくなる。このために夕方には赤い光の割合が増える。この現象が夕焼けである。図1からも分かるように、18時ごろ黄色の光が少なくなっているのはこのためである。
一方、図は省略するが雨が降った場合も同様の結果が得られている。雨が降り雲が厚くなった場合、地上に届く赤い光の割合は晴れた時に比べて20%程度減る。
【0011】
実験1の結果より次の事が分かる。
1)積雲程度の雲が出て日が陰ると赤い光の全光量に対する割合は、図1から分かるように雲が出る(11時から12時半)と晴れている時(例えば、8時〜11時)に比べておよそ15〜20%程度減る。
2)黄色い光は、雲が出ると晴れている時に比べて15%程度割合が増える。
3)夕方、8月は18時頃になると、日中晴れている時に比べて黄色い光の割合が減る。
また、同様に雨が降ったときについても調べた。その結果、次の事が分かった。
4)晴れ、曇り、雨の日では赤い光の割合が変わり、晴れ>曇り>雨の順で赤い光は減る。
5)青い光の割合は、晴れでも曇りでも雨でも一日中ほとんど変わらない。
【0012】
次に、赤、青、黄色の光が植物の生長に及ぼす影響について調べた結果を実験2により説明する。
(実験2)
【0013】
カイワレダイコンの発芽と生長過程と光の関係について、茎と根の長さと重さを比較、観察した。容器に土を入れ、その土が被さるくらいに水入れ、その上からカイワレダイコンの種をまいたものに自然光、赤、青、黄色の光を当てた状態と光を当てない状態で一週間育てたものの発芽と生長について観察した。そのうち、発育の悪いものについては削除した。その結果を図2から図9に示した。図2は自然光を当てて育てたものの観察結果である。図中の番号は、カイワレダイコンの個体の番号である。
【0014】
図3は光を当てない状態で育てたものの観察結果である。茎の長さの平均値を見て分かるように光を当てないで育てると、自然光を当てて育てたもの(図2参照)よりも茎が約2倍長かった。一方、全体の重さの平均値は同じだったが、茎の重さは自然光の約2倍であり、葉は小さく重さは自然光の半分であった。
【0015】
図4は、赤い光の透過率はそのままで、青と黄色の光の透過率を4分1くらいに落として育てたものの観察結果である。茎の長さの平均値を見て分かるようにこの条件で育てると、自然光を当てて育てたもの(図2)よりも茎の長さが約1.5倍になった。
【0016】
図5は、青と黄色の光をほとんど通さなくして育てたものの観察結果である。茎の長さと茎の重さの平均値を見て分かるようにこの条件で育てると、自然光を当てて育てたもの(図2)よりも茎の長さが約1.5倍であり、茎の重さは2倍になった。つまり、自然光で育てたものよりも茎が太い事が分かる。
【0017】
図6は青い光の透過率はそのままで、赤と黄色の透過率を3分の1くらいに落として育てたものの観察結果である。根の長さと根の重さの平均値を見て分かるようにこの条件で育てると、自然光を当てて育てたもの(図2)と比べて、根の長さはほぼ同じであるが、根の重さが1.3倍になった。つまり、この条件で育てると自然光を当てて育てた時よりも根が1.3倍太くなる事が分かる。
【0018】
図7は青い光の透過率はそのままで赤と黄色の光の透過率を6分の1くらいに落として育てたものの観察結果である。根の長さと根の重さの平均値を見て分かるように、この条件で育てると自然光を当てて育てたもの(図2)と比べて、根の長さはほぼ同じであるが、根の重さが1.5倍になった。つまり、この条件で育てると自然光を当てて育てた時よりも根が2倍になる事が分かる。
【0019】
図8は黄色い光の透過率はそのままで赤と青の光の透過率を6分の1くらいに落として育てたものの観察結果である。茎の長さと重さ、根の長さと重さ、葉の重さの平均値を見て分かるように、この条件で育てると自然光を当てて育てたもの(図2)と比べると、どの長さも重さもほとんど同じである。
【0020】
図9は赤と青の光をほとんど通さなくして育てたものの観察結果である。葉の重さの平均値を見て分かるようにこの条件で育てると、自然光を当てて育てたもの(図2)よりも葉の重さが約0.6倍になった。また、茎や根の長さと重さはほとんど変わらない。
【0021】
その結果をまとめると図10のようになった。
暗室に入れて育てると茎が長くなる。また青い光を当てて育てると根と茎の長さの比率は自然光を当てて育てたものと同じくらいの割合になる。それに対し、暗室で育てたもの、赤や黄色の光を当てて育てたものの根と茎の長さの比率は自然光で育てたものの半分くらいの割合である。つまり、根の生長を促すのは青い光である事が分かる。自然光を当てて育てたものは他の条件よりも茎の長さが短い。つまり、光のバランスを変えると茎が長くなることが分かる。次は重さに関して調べてみた。青い光を当てて育てると茎の単位長さあたりの重さが自然光で育てたものの約1.5倍である。また、青い光を当てて育てると根の単位長さあたりの重さが他の条件で育てたものの約2倍である。つまり、青い光は茎と根を生長させ、太くする作用がある。赤い光を当てて育てると葉が重くなる。これは赤い光が葉の生長を促し、葉緑素に作用するからである。
【0022】
実験2の結果をまとめると以下のようになる。
1)赤い光は葉と茎を生長させ、葉緑素を作り光合成に作用する。
2)青い光は根と茎を太くする。特に根を太くさせ、側根を増やす。
3)黄色の光は植物の生長には作用しない。
4)自然光の色のバランスを変えると、茎が長くなる。
【0023】
赤い光を当てて育てると茎と葉の生長が促されるので、レタスなどの葉物類の野菜に当てて育てると良い。赤と青い光を当てて育てると根と茎が太くなるので、大根や人参などの根菜類やアスパラガスなど主として茎を食べる野菜に当てると良い。また、鉢花や観葉植物などの生育には根や茎の生長も重要であるために赤い光と青い光を当てることは大切な条件となる。
【0024】
次は具体的な実施例について説明する。図11は農業工場における本発明の実施例である。農業工場(ビニールハウスも同様)の天井2には、太陽光7を取り入れる窓1があり、天井の近くには多数のLED3,4が並べられている補助光源が配置されている。前記多数のLEDは、赤色LED3、及び、青色LED4の二種類のLEDで構成されている。さらに生育される植物8が植えられており、その近くには光量を検出する光量センサ6が設けられている。光量センサ6の出力に応じて各LED3,4の光量が変化できるようにLED発光制御回路5によりLED3,4の発光強度を制御する。
【0025】
空が曇っていたり雨が降った時は、赤色の光が減るので、光量センサ6により全光量、または、赤色と青色の光量を検出する。光量センサの出力に応じて赤色LED 3、及び、青色LED4の光量を制御する。また、日中は太陽光7を取り入れ夕方から夜間は各LED3,4を点灯させる事により植物の生育期間を早め、早く収穫でき、少電力化を測る事ができる。
また、前記太陽光7を取り入れる窓1は、太陽光7を直接取り入れる窓1、または、太陽光7を光ファイバにより導かれた構成では光ファイバの端面、または、ミラーにより太陽光7を導く構成では最後に配置されたミラーであってもよい。これにより、多層階の工場にも対応する事ができる。
【産業上の利用可能性】
【0026】
農業工場やビニールハウスで、大根や人参などの根菜類の野菜やアスパラガスなどの茎を主とする野菜、鉢花や観葉植物などを栽培する時に用いる。曇りや雨が多い日の補助光源や、夕方や夜間にわたり日照時間を長くして野菜の早期収穫をする時に利用する植物の栽培方法である。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】一日の時刻における赤、青、黄色の相対光強度を示すグラフである。
【図2】カイワレダイコンの発芽と生長における、自然光を当てて育てた時の茎と根の長さと重さを比較した結果を示した図である。
【図3】カイワレダイコンの発芽と生長における、光を当てない状態で育てた時の茎と根の長さと重さを比較した結果を示した図である。
【図4】カイワレダイコンの発芽と生長における、赤い光の透過率はそのままで、青と黄色の光の透過率を4分1くらいに落として育てた時の茎と根の長さと重さを比較した結果を示した図である。
【図5】カイワレダイコンの発芽と生長における、青と黄色の光をほとんど通さなくして育てた時の茎と根の長さと重さを比較した結果を示した図である。
【図6】カイワレダイコンの発芽と生長における、青い光の透過率はそのままで、赤と黄色の透過率を3分の1くらいに落として育てた時の茎と根の長さと重さを比較した結果を示した図である。
【図7】カイワレダイコンの発芽と生長における、青い光の透過率はそのままで赤と黄色の光の透過率を6分の1くらいに落として育てた時の茎と根の長さと重さを比較した結果を示した図である。
【図8】カイワレダイコンの発芽と生長における、黄色い光の透過率はそのままで赤と青の光の透過率を6分の1くらいに落として育てた時の茎と根の長さと重さを比較した結果を示した図である。
【図9】カイワレダイコンの発芽と生長における、赤と青の光をほとんど通さなくして育てた時の茎と根の長さと重さを比較した結果を示した図である。
【図10】カイワレダイコンの発芽と生長過程において、自然光、赤、青、黄色の光をそれぞれ当てたもの、暗室に入れて育てたものについて、茎と根の長さと重さを比較した結果をまとめた表である。
【図11】農業工場における本発明の実施例である。
【符号の説明】
【0028】
1.太陽光取り入れ窓
2.天井
3.赤色LED
4.青色LED
5.LED発光制御回路
6.光量センサ
7.太陽光
8.植物
【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物に照射する補助光源と前記植物の上方に設けられ太陽を取り入れる太陽光の取り入れ窓とで構成され、前記補助光源は多数個の赤色LEDと青色LEDで構成されおり、天気が晴れの時は太陽光を前記植物に当て、曇りの時は前記赤色LEDを照射し、雨の時は前記赤色LEDと前記青色LEDを照射する事を特徴とする植物栽培方法。
【請求項2】
前記植物の近辺には、前記植物に当たる光量を計測する光量センサがあり、前記光量センサの出力に応じて前記植物に当たる光量を維持するように、前記補助光源の発光量を制御するLED発光制御回路が設けられている事を特徴とする請求項1記載の植物栽培方法。
【請求項3】
前記太陽光を取り入れる窓は、太陽光を直接取り入れる窓、又は、太陽光を光ファイバにより導かれた構成では光ファイバの端面、又は、ミラーにより太陽光を導く構成では最後に配置されたミラーであることを特徴とする請求項1、又は請求項2記載の植物栽培方法。
【請求項4】
前記植物の発芽後、本葉が出る時期以降に青色LEDを前記植物に照射することを特徴とする請求項1、又は請求項2の植物栽培方法。
【請求項5】
前記植物が、大根や人参等、主として根を主体とする根菜類、又は、アスパラガス等茎を主体とする野菜である場合、前記赤色LEDと前記青色LEDの両方を発光させて生育させる事を特徴とする植物栽培方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物に照射する補助光源と前記植物の上方に設けられ太陽を取り入れる太陽光の取り入れ窓とで構成され、前記補助光源は多数個の赤色LEDと青色LEDで構成されおり、前記植物の発芽後から本葉が出るまでの時期には青色LEDを前記植物に常に照射し、本葉が出た後は、天気が晴れの時は太陽光のみを前記植物に当て、曇りの時は前記赤色LEDのみを照射し、雨の時は前記赤色LEDと前記青色LEDのみを照射する事を特徴とする植物栽培方法。
【請求項2】
前記植物の近辺には、前記植物に当たる光量を計測する光量センサがあり、前記光量センサの出力に応じて前記植物に当たる光量を維持するように、前記補助光源の発光量を制御するLED発光制御回路が設けられている事を特徴とする請求項1記載の植物栽培方法。
【請求項3】
前記太陽光を取り入れる窓は、太陽光を直接取り入れる窓、又は、太陽光を光ファイバにより導かれた構成では光ファイバの端面、又は、ミラーにより太陽光を導く構成では最後に配置されたミラーであることを特徴とする請求項1、又は請求項2記載の植物栽培方法。
【請求項1】
植物に照射する補助光源と前記植物の上方に設けられ太陽を取り入れる太陽光の取り入れ窓とで構成され、前記補助光源は多数個の赤色LEDと青色LEDで構成されおり、天気が晴れの時は太陽光を前記植物に当て、曇りの時は前記赤色LEDを照射し、雨の時は前記赤色LEDと前記青色LEDを照射する事を特徴とする植物栽培方法。
【請求項2】
前記植物の近辺には、前記植物に当たる光量を計測する光量センサがあり、前記光量センサの出力に応じて前記植物に当たる光量を維持するように、前記補助光源の発光量を制御するLED発光制御回路が設けられている事を特徴とする請求項1記載の植物栽培方法。
【請求項3】
前記太陽光を取り入れる窓は、太陽光を直接取り入れる窓、又は、太陽光を光ファイバにより導かれた構成では光ファイバの端面、又は、ミラーにより太陽光を導く構成では最後に配置されたミラーであることを特徴とする請求項1、又は請求項2記載の植物栽培方法。
【請求項4】
前記植物の発芽後、本葉が出る時期以降に青色LEDを前記植物に照射することを特徴とする請求項1、又は請求項2の植物栽培方法。
【請求項5】
前記植物が、大根や人参等、主として根を主体とする根菜類、又は、アスパラガス等茎を主体とする野菜である場合、前記赤色LEDと前記青色LEDの両方を発光させて生育させる事を特徴とする植物栽培方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物に照射する補助光源と前記植物の上方に設けられ太陽を取り入れる太陽光の取り入れ窓とで構成され、前記補助光源は多数個の赤色LEDと青色LEDで構成されおり、前記植物の発芽後から本葉が出るまでの時期には青色LEDを前記植物に常に照射し、本葉が出た後は、天気が晴れの時は太陽光のみを前記植物に当て、曇りの時は前記赤色LEDのみを照射し、雨の時は前記赤色LEDと前記青色LEDのみを照射する事を特徴とする植物栽培方法。
【請求項2】
前記植物の近辺には、前記植物に当たる光量を計測する光量センサがあり、前記光量センサの出力に応じて前記植物に当たる光量を維持するように、前記補助光源の発光量を制御するLED発光制御回路が設けられている事を特徴とする請求項1記載の植物栽培方法。
【請求項3】
前記太陽光を取り入れる窓は、太陽光を直接取り入れる窓、又は、太陽光を光ファイバにより導かれた構成では光ファイバの端面、又は、ミラーにより太陽光を導く構成では最後に配置されたミラーであることを特徴とする請求項1、又は請求項2記載の植物栽培方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2006−246798(P2006−246798A)
【公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−68511(P2005−68511)
【出願日】平成17年3月11日(2005.3.11)
【出願人】(305006152)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年3月11日(2005.3.11)
【出願人】(305006152)
【Fターム(参考)】
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