植物の水分充足度判定用マーカー及びそれを用いた水分充足度判定方法

【課題】環境要因等に影響されることなく、植物における水分の充足・不足状態を反映する水分充足度判定用マーカーを開発し、提供する。また、その水分充足度判定用マーカーを用いることで、植物における水分の充足・不足状態を判定する方法を提供する。
【解決手段】植物における水分の充足度に依存して量的に変化する代謝産物を水分充足度判定用マーカーとし、植物におけるそのマーカーの蓄積量に基づいて、植物における水分の充足度を正確に判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物における水分の充足度を判定するためのマーカー及びそれを用いた水分充足度判定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
農林業において目的の植物を短期間で効率よく生長させるためには、必要時に必要な栄養素を過不足なく与えるだけでなく、適切な水分量を与えることが極めて重要である。
【0003】
年間を通じて比較的多雨な地域や、日本のように灌漑設備の整った地域では、植物への水分付与はさほど大きな問題とはならない。しかし、乾燥地のような少雨地域や雨季乾季のみられる地域では、植物の水分充足度を的確に管理することが、農林産物の効率的な生産上、絶対不可欠となっている。
【0004】
また、在来の原野や山林を植栽地として開拓する場合、その土地が植栽すべき対象植物種の生育に必要な栄養素と水分を過不足なく包含していることが生産量上、重要な問題となってくる。もっとも、栄養素であれば、開拓後に不足が判明しても施肥によって比較的容易に改善が可能である。しかし、水分の場合には、近隣に十分量の水源がない限り、大規模な灌漑設備が必要になり、不足の改善には莫大なコストを要することになる。したがって、新たな植栽地の選定において、事前に候補地の土中水分充足度を正確に判定することが非常に重要となってくる。
【0005】
従来、農林業分野での水分充足度管理や植栽地選定のための土中水分量の判定は、土壌の含水率測定(非特許文献1)によって行われてきた。しかし、この方法で測定される含水率は、土壌表面からせいぜい十数センチの表層部分の値であり、木本類が主に活用している地表からおおよそ50cm〜2m下の深層土壌の含水率は、通常の方法では測定が困難である。それ故、土壌表層域の水分含水率が一過的な降雨や潅水によって測定値上適当な値を示していても、土壌深層域にまでは十分に浸水していないことがしばしば起こり得る。このような場合、実際は植物が水分不足状態に陥っているにもかかわらず、生産者は、土壌表層域の測定値から水分充足度が足りていると誤判断し、潅水等の適切な措置を行わない問題が生じ得る。したがって、前記方法は、木本類のような土壌深層域にまで根を張る植物には不適といえる。また、従来の方法は、いずれも土壌の含水率に基づく間接的な検査方法である。すなわち、土中の水分量が十分であれば、そこで生育している植物の水分充足度も足りていると判断する方法であって、植物の実質的な水分充足度を直接的に測定したものではない。それ故、普遍的に使用できる方法とは言い難い。
【0006】
しかし、従来、植物の実質的な水分充足度を直接的、かつ客観的に測定又は判断する方法は、知られていなかった。植物における水分充足度を評価できる技術があれば、植物の生長性をより正確に予測することが可能になる。そのためには、植物の水分充足状態を正確に把握し、その結果に応じて適切な潅水を行う必要がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】財団法人 日本土壌協会 土壌機能モニタリング調査のための土壌、水質及び植物体分析法
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、環境要因等に影響されることなく、植物における水分の充足・不足状態を反映する水分充足度判定用マーカーを開発し、提供することである。
【0009】
また、前記水分充足度判定用マーカーを用いて、植物における水分の充足・不足状態を判定する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明者らは、植物の代謝産物に着目し、植物における水分の充足度に依存して量的に変化する代謝産物を見出した。また、その代謝産物の植物における蓄積量に基づいて、植物における水分の充足・不足状態を正確に判定できることが明らかとなった。本発明は、当該知見に基づくものであり、すなわち以下を提供する。
【0011】
(1)植物の代謝産物であって、高速液体クロマトグラフタンデム質量分析において、液体クロマトグラフィーでのアセトニトリルの時間的な連続濃度勾配を0分3%〜5分56%で形成させたときに下記表1で示す保持時間で分離され、かつ質量分析におけるプリカーサーイオン及びプロダクトイオンの質量電荷比が下記表1で示す値で特定されるマーカーNo.1〜5で示されるいずれか一の植物の水分充足度判定用マーカー。
【表1】

(2)前記植物が木本類である、(1)に記載のマーカー。
(3)前記木本類がユーカリプタス属である、(2)に記載のマーカー。
(4)植物における水分の充足度を判定する方法であって、被検植物の全部又は一部から代謝産物を含む抽出物を抽出する抽出工程、前記抽出工程で得られた抽出物中に含まれる(1)に記載の少なくとも一の水分充足度判定用マーカーの蓄積量を測定する測定工程、前記測定工程で得られた水分充足度判定用マーカーの蓄積量に基づいて、前記被検植物における水分の充足度を判定する判定工程
を含む、前記方法。
(5)前記判定工程において、水分の充足度を被検植物と対照植物のそれぞれから得られる水分充足度判定用マーカーの蓄積量の比較によって判定する、(4)に記載の判定方法。
(6)前記対象植物が水分不足状態にある、(5)に記載の判定方法。
(7)水分充足度判定用マーカーが表1におけるマーカーNo. 1〜3、6、8及び9の場合、当該マーカーの被検植物における蓄積量が対照植物における蓄積量よりも統計学的に有意に小さいときに被検植物における水分が充足状態にあると判定する、(6)に記載の判定方法。
(8)水分充足度判定用マーカーが表1におけるマーカーNo. 4、5、7、10及び11の場合、当該マーカーの被検植物における蓄積量が対照植物における蓄積量よりも統計学的に有意に大きいときに被検植物における水分が充足状態にあると判定する、(6)に記載の判定方法。
(9)前記対象植物が水分充足状態にある、(5)に記載の判定方法。
(10)水分充足度判定用マーカーが表1におけるマーカーNo. 1〜3、6、8及び9の場合、当該マーカーの被検植物における蓄積量が対照植物における蓄積量よりも統計学的に有意に大きいときに被検植物における水分が不足状態にあると判定する、(9)に記載の判定方法。
(11)水分充足度判定用マーカーが表1におけるマーカーNo. 4、5、7、10及び11の場合、当該マーカーの被検植物における蓄積量が対照植物における蓄積量よりも統計学的に有意に小さいときに被検植物における水分が不足状態にあると判定する、(9)に記載の判定方法。
(12)前記植物が木本類である、(5)〜(11)のいずれかに記載の判定方法。
(13)前記木本類がユーカリプタス属である、(12)に記載の判定方法。
(14)(4)〜(13)のいずれかに記載の判定方法を用いて、被検地における土中水分量を推定する土中水分量推定方法。
(15)(14)で土中水分量推定方法を用いて、対象植物の植栽候補地を選定する植栽候補地選定方法。
(16)同一植物において、(4)〜(13)のいずれかに記載の水分充足度判定方法によって得られた水分の充足度に関する経時的な二以上の判定結果に基づいて、その植物における生長状態を判定する、植物の生長状態判定方法。
(17)二以上の経時的な判定結果が、いずれも充足状態にあるという結果であった場合には、その植物における生長状態は良好であると判定し、不足から充足に移行していることを示す場合には、生長状態が改善傾向にあると判定し、充足から不足に移行していることを示す場合には、生長状態が悪化傾向にあると判定し、又はいずれも不足していることを示す場合には、生長状態が悪いと判定する、(16)に記載の判定方法。
(18)(16)又は(17)に記載の植物の生長状態判定方法による判定結果に基づいて、その植物における水分の潅水量を決定する潅水量決定方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明の植物の水分充足度判定用マーカーによれば、他要因に影響されることなく、植物の水分充足状態を直接的に、かつ正確に判定することができるマーカーを提供できる。
【0013】
本発明の植物の水分充足度判定方法によれば、本発明の植物の水分充足度判定用マーカーを用いることによって、被検植物における水分の充足状態を他要因に影響されることなく正確に判定することができる。
【0014】
本発明の土中水分量推定方法によれば、植物の水分充足度を介して、被検地における土中、特に深層土壌の水分量を推定することができ、その結果に基づいて、対象植物の植栽候補地を選定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】水分不足区及び水分充足区における植栽3ヶ月のユーカリプタス属雑種(カマルドレンシス×デグルプタ)の生長量としての樹高を示した図である。水分不足区では、水分充足区と比較して植物の成長が有意に阻害されていることがわかる。
【図2】栄養条件及び水分条件を変えて3ヶ月間栽培したユーカリプタス属雑種クローン(カマルドレンシス×デグルプタ)の生長量としての樹高を示した図である。図中の各処理区(処理区1〜4)は、表4に記載の処理区にそれぞれ対応する。すなわち、処理区1は、施肥量及び水分量共に充足状態の処理区、処理区2は、施肥量が充足しているが、水分量が不足状態の処理区、処理区3は、施肥量が不足しているが、水分量が充足状態の処理区、そして処理区4は、施肥量及び水分量共に不足している処理区である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
1.水分充足度判定用マーカー
本発明の第1の実施形態は、植物の水分充足度判定用マーカー(以下、本明細書においては、しばしば単に「マーカー」と略して表記する)である。本発明のマーカーは、植物における水分の充足度に依存して量的に変化する植物由来の代謝産物である。具体的には、上記表1においてマーカーNo.1〜11で示される物質をいう。
【0017】
本明細書において「植物」とは、コケ植物、シダ植物及び種子植物をいう。好ましくは種子植物である。種子植物の場合、裸子植物若しくは被子植物、又は草本類若しくは木本類は問わない。好ましくは深層土壌中の水分を主として利用する木本類である。より好ましくは被子植物、さらに好ましくはフトモモ科植物、一層好ましくはユーカリプタス属の植物である。例えば、ユーカリプタス・カマルドレンシス、ユーカリプタス・デグルプタ、ユーカリプタス・グランディス、ユーカリプタス・ユーロフィラ、ユーカリプタス・ペリータ、ユーカリプタス・グロブラス、ユーカリプタス・ブラシアーナ、ユーカリプタス・テレティコンティス又はそれらの雑種、例えば、ユーカリプタス・カマルドレンシスとユーカリプタス・デグルプタの雑種(以降、「カマルドレンシス×デグルプタ」とする)、ユーカリプタス・カマルドレンシスとユーカリプタス・ユーロフィラの雑種(以降、「カマルドレンシス×ユーロフィラ」とする)、ユーカリプタス・ペリータとユーカリプタス・ブラシアーナの雑種、又はユーカリプタス・ペリータとユーカリプタス・カマルドレンシスの雑種が挙げられる。本明細書で「深層土壌」とは、地表から深さ30cm〜2.5m、40cm〜2.3m又は50cm〜2.0mの範囲にある土壌をいう。
【0018】
本明細書において「植物における水分の充足度」とは、水分がその植物の生育上必要な量に達しているか否かの程度をいう。例えば、植物における水分の充足度が低い場合には、その植物における水分量が生育上必要な量に達していないこと、すなわち、その植物において水分が不足状態又は欠乏状態にあることを意味する。また、植物における水分の充足度が高い場合には、その植物における水分量が生育上必要な量に達していること、すなわち、その植物において水分が充足状態にあることを意味する。本明細書において、水分の充足度が高いか低いかの判定基準は、本発明のマーカーの蓄積量に基づいて決定される。これについては、後述する水分充足度判定方法の判定工程で詳述するため、ここではその説明を省略する。
【0019】
本明細書において「代謝産物」とは、植物において、呼吸に代表される異化代謝又は光合成に代表される同化代謝によって生じる全ての物質をいう。例えば、タンパク質(酵素を含む)、低分子化合物(植物ホルモン、ポリフェノール、糖、アミノ酸、ヌクレオチドを含む)が挙げられる。水溶性、脂溶性は、問わない。
【0020】
上記代謝産物のうち、本発明の水分充足度判定用マーカーは、高速液体クロマトグラフタンデム質量分析において、液体クロマトグラフィーでのアセトニトリルの時間的な連続濃度勾配を0分3%〜5分56%で形成させたときに表1で示す保持時間で分離され、かつ質量分析におけるプリカーサーイオン及びプロダクトイオンの質量電荷比が表1で示す値で特定されるマーカーNo.1〜11で示される物質である。より具体的には、後述する実施例2の測定条件で特定される物質である。
【0021】
「高速液体クロマトグラフタンデム質量分析」(以下「LC-MS/MS分析」と略記する)とは、液体クロマトグラフィー(LC: liquid chromatography;以下「LC」と略記する)(通常は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC:High performance liquid chromatography;以下「HPLC」と略記する)を使用する)と2つの質量分析計が直列に連結された装置を用いる質量分析法(MS:Mass Spectrometry)である(Kachlickiet al., J Mass Spectrom J Mass Spectrom. (2008) 43(5):572-586)。LC-MS/MS装置では、LCで所定の保持時間に分離された試料が、特定の質量電荷比を有するイオンのみ通過可能な1つめのMS(Q1)でプリカーサーイオンにイオン化された後、Q2で代謝産物が高電圧によって分解され、プロダクトイオンが発生する。続く2つめのMS(Q3)で特定の質量電荷比を有するプロダクトイオンのみが通過し、検出器にて検出される。それ故、化学構造が同定されていない代謝産物であっても、LCでの試料分離条件、及び分解前と分解後の通過可能なイオンの質量電荷比を予め設定しておくことで、試料中に含まれるその代謝産物を特定することができる。
【0022】
本発明における「アセトニトリルの時間的な連続濃度勾配」とは、LCの溶媒であるアセトニトリルの、所定時間内における連続的な濃度勾配をいう。具体的には、0分時の濃度が3%であり、5分時の濃度が56%であり、その間の時間に対する濃度が連続的な傾斜を形成する濃度勾配をいう。
【0023】
以上のように、本発明の各水分充足度判定用マーカーは、LC-MS/MS分析を用いて、前記時間的な連続濃度勾配を形成したアセトニトリルと共に試料をカラム内に流通させ、表1に記載のそれぞれの保持時間で分離した代謝物を、質量分析器で分析した場合、プリカーサーイオンとプロダクトイオンが表1に記載の質量電荷比を示す物質として特定し、その存在を確認し、さらに定量することができる。
【0024】
なお、表1のマーカーNo. 4、5、7、10及び11で示す本実施形態のマーカーは、後述する実施例1で示すように、いずれも植物中の蓄積量が水分量の増加に伴って増加する、すなわち、水分充足状態のときに、被検植物内での発現、合成、又は分泌若しくは放出の量が増加する、性質を有する代謝産物である。
【0025】
一方、表1のマーカーNo. 1〜3、6、8及び9で示す本実施形態のマーカーは、後述する実施例1で示すように、いずれも植物中の蓄積量が水分量の減少に伴って増加する、すなわち、水分の不足又は欠乏によって、被検植物内での発現、合成、又は分泌若しくは放出の量が増加する、性質を有する代謝産物である。
【0026】
2.水分充足度判定方法
本発明の第2の実施形態は、植物における水分充足度判定方法である。本発明の方法は、抽出工程、測定工程、及び判定工程を必須の工程として含むことを特徴とする。以下、各工程について、具体的に説明をする。
【0027】
2−1.抽出工程
「抽出工程」とは、被検植物の全部又は一部から代謝産物を含む抽出物を抽出する工程である。
【0028】
本明細書において「被検植物」とは、水分の充足度を判定するために本発明の水分充足度判定方法に供される植物であって、任意の環境下で生育した、又は育成された植物である。
【0029】
本明細書において「被検植物の全部」とは、被検植物の植物体を構成する全ての部分をいう。また、「被検植物の一部」とは、被検植物の植物体を構成する器官(例えば、根部、茎部、葉部、花部、又は胞子若しくは種子等)、前記器官を構成する形態的及び/若しくは機能的に分化した細胞群である組織、又は前記組織を構成する細胞をいう。当該一部は、被検植物のいずれの部位を用いてもよいが、好ましくは葉部である。これは、入手が容易であり、被検植物に与える負荷が比較的小さく、植物体の中でも代謝産物を最も多く含有していることから、第1実施形態の水分充足度判定用マーカーを包含している可能性が高いためである。なお、本明細書においては、被検植物のより正確な水分充足度を判定するために、野外の植栽された被検植物のサンプリングには、少なくとも降雨中、又は降雨直後は避けることが望ましい。
【0030】
本明細書において「抽出物」とは、複数の代謝産物を包含する植物抽出物、通常は、植物抽出液をいう。前述のように、本発明の代謝産物は、水溶性及び脂溶性を問わないことから、抽出物の抽出に用いる溶媒は、水溶液又は有機溶媒(例えば、低級アルコール、エーテル、クロロホルム、酢酸エチルエステル、キシレン等)のいずれであってもよい。
【0031】
被検植物から抽出物を抽出する方法は、被検植物から代謝産物を抽出できる方法であれば特に限定しない。例えば、水溶性の代謝産物を得る場合には、植物体を必要に応じて粉砕等した後、加水し、所定の期間浸漬及び/又は圧搾した後、ろ過してろ液を回収するか又は遠心分離後の上清を回収すればよい。また脂溶性の代謝産物を得る場合には、植物体を必要に応じて粉砕等した後、メタノール等の有機溶媒に所定の期間浸漬した後、ろ過してろ液を回収するか又は遠心分離後の上清を回収すればよい。これらの抽出方法の詳細については、当該分野で公知の技術を用いることができる。例えば、文献名(Iijima et al., The Plant Journal (2008)54,949-962, Suzuki et al., Phytochemistry (2008) 69, 99-111)に記載の方法を参照すればよい。
【0032】
なお、本発明の水分充足度判定方法において、後述する判定工程において、水分の充足度を被検植物と対照植物のそれぞれから得られるマーカーの蓄積量の比較によって判定する場合には、本工程において、被検植物と共に対照植物からも抽出物を抽出しておくことが望ましい。この場合、対照植物は、被検植物と同一種又は同一雑種であって、水分を不足した不足状態、又は水分を欠いた欠乏状態にあることを前提とする。本発明のマーカーは、水分量以外の他の諸条件、例えば、生育気象条件(例えば、気温、日照時間、湿度)、土壌条件、時間的条件(例えば、生育期間、生育時期)及びその植物の健康状態による影響を受けないか、ほとんど影響されないことから、これらの諸条件は、被検植物と対照植物と必ずしも同一である必要はないが、より正確性の高い結果を得るためには、水分量以外の各条件が可能な限り同一であることが好ましい。また、個体の一部から抽出物を抽出する場合、その一部は、被検植物と対照植物間で同一部分を用いることが好ましい。例えば、抽出物を被検植物の葉から抽出する場合、対照植物の抽出物も同様に葉から抽出することが好ましい。
【0033】
2−2.測定工程
「測定工程」とは、前記抽出工程で得られた抽出物中に含まれるマーカーの蓄積量を測定する工程である。
【0034】
本工程で測定するマーカーは、前記第1実施形態に記載した11個のマーカーの少なくとも一つである。使用するマーカーは、前記11個からいずれか一以上を任意に選択すればよい。2以上11以下の複数のマーカーの使用は、本発明の判定方法における判定結果の信頼性を高める上でも好ましい。
【0035】
本明細書において「蓄積量」とは、抽出工程で得られた抽出物中における、選択した特定のマーカーの量である。この量は、濃度、イオン強度、吸光度又は蛍光強度のような相対量であってもよく、また所定量の抽出物中に包含されるマーカーの重量又は容量のような絶対量であってもよい。
【0036】
本実施形態の方法で使用する第1実施形態に記載のマーカーは、その化学構造が未同定であるが、第1実施形態に記載のようにLC-MS/MS分析によって特定できることから、抽出物中に含まれるその蓄積量は、少なくともLC-MS/MS分析を用いることで測定可能である。例えば、抽出物中に含まれるマーカーNo.1の蓄積量を測定するには、LCにおいてアセトニトリルを、0分時の濃度が3%であり、5分時の濃度が56%であり、その間の時間に対して連続的な濃度勾配を形成するようにカラム内に抽出物と共に流入し、0.43分で分離された物質を、Q1におけるプリカーサーイオンの質量電荷比を175.2に、Q3におけるプロダクトイオンの質量電荷比を116.0に、それぞれ設定したタンデム質量分析器に通すことによって、抽出物中にマーカーNo.1が存在していれば、検出器でそれを特異的に検出、定量することができる。
【0037】
ただし、抽出物中に含まれるマーカーの蓄積量を測定する方法は、上記方法以外にも抽出物から特定の代謝産物を検出及び定量できる方法であれば特に限定はしない。例えば、質量分析法、抗原抗体反応を応用した方法及び電気泳動法等を用いて検出及び定量することができる。
【0038】
質量分析法は、上述のLC-MS/MS分析法の他、高速液体クロマトグラフ質量分析法(LC-MS)、ガスクロマトグラフ質量分析法(GC-MS)、ガスクロマトグラフタンデム質量分析法(GC-MS/MS)、キャピラリー電気泳動質量分析法(CE-MS)及びICP質量分析法(ICP-MS)を含む。
【0039】
抗原抗体反応を応用した方法は、それぞれのマーカーを特異的に認識する抗体を用いて、ELISA(Enzyme-Linked ImmunoSorbent Assay)法、表面プラズモン共鳴(SPR)法、又は水晶振動子マイクロバランス(QCM)法を利用することができる。
【0040】
また、分析する代謝産物がタンパク質である場合、電気泳動法として、例えば、二次元電気泳動法を利用することができる。
【0041】
上記分析法は、いずれも当該分野に公知の技術であって、それらの方法に準じて行えばよい。例えば、文献名(Yoko Iijima et al., The Plant Journal (2008)54,949-962, Masami Hirai et al. Proc Natl Acad Sci USA(2004) 101(27) 10205-10210, Shigeru Sato et al., The Plant Journal (2004) 40(1)151-163, Motoyuki Shimizu et al., Proteomics (2005) 5,3919-3931)を参照すればよい。
【0042】
2−3.判定工程
「判定工程」とは、前記測定工程で得られたマーカーの蓄積量に基づいて、前記被検植物における水分の充足度が高いか低いかを判定する工程である。「マーカーの蓄積量に基づいて」とは、マーカーの蓄積量を水分の充足度の判定に利用することを意味する。
【0043】
水分充足度の判定基準は、マーカーの蓄積量を利用したものであれば、特に限定はしない。例えば、第1実施形態に記載のマーカーを選択する際に設定した値又は得られた値を基準値として判定基準に用いてもよいし、対照植物におけるマーカーの蓄積量を判定基準としてもよい。
【0044】
ここで「基準値」とは、多数の代謝物から表1に示すマーカーを水分充足度判別用マーカーとして選択する際に得られた又は設定したLC-MS分析におけるイオン強度値である。
【0045】
第1実施形態に記載のマーカーは、後述の実施例1に記載するように、被検植物と同一の植物種を水分充足区と水分不足区とで栽培し、両区の個体から得られた代謝産物の蓄積量を比較した際に、実施例1の表2に示すように、水分充足区の個体における蓄積量が、イオン強度で、1.5倍以上、又は1/1.5倍以下を有する代謝産物を水分充足度判別用マーカーとして選択したものである。したがって、表1及び表2に示す11個のマーカーのそれぞれの性質に基づいて、水分不足区におけるイオン強度の1.5倍、又は1/1.5倍の値が基準値となる。それぞれのマーカーにおける、より具体的な基準値を以下に示す。
【0046】
表2に示すマーカーNo.4、5、7、10及び11は、植物におけるその蓄積量が水分量の増加に伴って増加する性質の代謝産物である。これらのマーカーの水分不足区の個体におけるその蓄積量は、表2に示すように、イオン強度で、マーカーNo.4では0.07±0.06、マーカーNo.5では0.74±0.24、マーカーNo.7では0.28±0.08、マーカーNo.10では0.47±0.16、及びマーカーNo.11では0.05±0.03であったことから、それぞれのイオン強度の1.5倍に相当する値、具体的には、マーカーNo.4では0.11±0.06、マーカーNo.5では1.11±0.24、マーカーNo.7では0.42±0.08、マーカーNo.10では0.71±0.16、及びマーカーNo.11では0.08±0.03を基準値とすることができる。したがって、マーカーNo.4、5、7、10及び11では、判定方法として、被検植物で得られたその蓄積量が、イオン強度で、上記基準値以上である場合には、その被検植物における水分の充足度は高いと判定することができ、逆に上記基準値を下回る場合には、その被検植物における水分の充足度は低いと判定することができる。
【0047】
一方、表2に示すマーカーNo.1〜3、6、8及び9は、植物におけるその蓄積量が水分量の減少に伴って増加する性質の代謝産物である。これらのマーカーの水分不足区の個体におけるその蓄積量は、表2に示すように、イオン強度で、マーカーNo.1では0.24±0.07、マーカーNo.2では0.37±0.20、マーカーNo.3では0.36±0.08、マーカーNo.6では0.34±0.06、マーカーNo.8では2.51±0.79、及びマーカーNo.9では0.67±0.08であったことから、それぞれのイオン強度の1/1.5倍に相当する値、具体的には、マーカーNo.1では0.16±0.07、マーカーNo.2では0.25±0.20、マーカーNo.3では0.24±0.08、マーカーNo.6では0.23±0.06、マーカーNo.8では1.67±0.79、及びマーカーNo.9では0.45±0.08を基準値とすることができる。したがって、マーカーNo.1〜3、6、8及び9では、判定方法として、被検植物で得られたその蓄積量が、イオン強度で、上記基準値以下である場合には、その被検植物における水分の充足度は高いと判定することができ、逆に上記基準値を上回る場合には、その被検植物における水分の充足度は低いと判定することができる。
【0048】
また、マーカーNo.4、5、7、10及び11の水分充足区の個体における蓄積量が、イオン強度で、それぞれ0.26±0.21、1.21±0.22、0.49±0.11、1.81±0.62、及び0.12±0.01であったことから、この値を、より厳密な基準値としてもよい。この場合、被検植物で得られたそのマーカーの蓄積量が、イオン強度で、上記基準値以上である場合には、その被検植物における水分の充足度は高いと判定とし、逆に上記基準値を下回る場合には、その被検植物における水分の充足度は低いと判定とすることもできる。
【0049】
マーカーNo.1〜3、6、8及び9の水分充足区の個体における蓄積量が、イオン強度で、それぞれ0.00±0.00、0.24±0.06、0.04±0.02、0.24±0.03、0.28±0.03及び0.50±0.05であったことから、この値を、より厳密な基準値としてもよい。この場合、被検植物で得られたそのマーカーの蓄積量が、イオン強度で、上記基準値以下である場合には、その被検植物における水分の充足度は高いと判定とし、逆に上記基準値を上回る場合には、その被検植物における水分の充足度は低いと判定とすることもできる。
【0050】
なお、上記基準値を判定工程に用いる場合、LC-MS分析で分析したマーカーの蓄積量の値にはサンプル間で若干の誤差を生じる可能性があるため、それぞれのマーカーの蓄積量を内部標準物質(例えば、(-)Epicatechin)の蓄積量で除算することにより標準化することが望ましい。
【0051】
さらに、対照植物におけるマーカーの蓄積量を判定基準とする場合は、本発明のマーカーに関して、被検植物の抽出物中の蓄積量と対照植物における抽出物中の蓄積量とを比較し、その結果に基づいて被検植物における水分の充足度を判定すればよい。ここでいう「対照植物」とは、被検植物と同一種又は同一雑種で、かつ同程度の生長状態を有する植物であって、水分を必要最小限量で付与した水分充足個体、又は必要最小限量を下回るように水分量を制限した水分不足個体等が挙げられる。
【0052】
対照植物におけるマーカーの蓄積量を判定基準とする場合、前記抽出工程と測定工程は、対照植物と被検植物で同時期に同一条件下で行うことが好ましい。あるいは、対照植物に対して様々な条件下で抽出工程と測定工程を行い、得られたマーカーの蓄積量を予めデータベース化して保存しておき、本工程において、水分以外の諸条件が被検植物と可能な限り合致する対照植物マーカーの蓄積量を選択して利用してもよい。
【0053】
対照植物におけるマーカーの蓄積量を判定基準として被検植物の水分充足度を判定する場合、具体的な判定方法は、制限しない。
【0054】
例えば、対照植物が水分不足個体である場合、被検植物と対照植物における当該マーカーの蓄積量に統計学的に有意な量的差異が見られるか否かを検証し、有意な差があれば被検植物における水分が充足状態にあると判定することもできる。本明細書において「統計学的に有意」とは、両者のマーカー蓄積量の差異を統計学的に処理したときに、有意な差があることをいう。統計学的処理の検定方法は、有意性の有無を判断可能な公知の検定方法を適宜使用すればよい。例えば、スチューデントt検定法、多重比較検定法を用いることができる。具体的には、例えば、危険率(有意水準)が5%、1%又は0.1%より小さい場合が挙げられる。ここで、本発明のマーカーNo.1〜3、6、8及び9は、植物におけるその蓄積量が水分量の減少に伴って増加することから、水分量と反比例関係にあり、統計学的に有意な量的差異の具体例としては、被検植物におけるマーカー蓄積量が、イオン強度で、対照植物におけるそれの1/1.5倍以下、好ましくは1/2倍以下、より好ましくは1/2.5倍以下のイオン強度を有する場合が挙げられる。また、本発明のマーカーNo. 4、5、7、10及び11は、植物におけるその蓄積量が水分量の増加に伴って増加することから、水分量と比例関係にあり、統計学的に有意な量的差異の具体例としては、被検植物におけるマーカー蓄積量が、イオン強度で、対照植物におけるそれの1.5倍以上、好ましくは2倍以上、より好ましくは2.5倍以上のイオン強度を有する場合が挙げられる。
【0055】
一方、対照植物が水分充足個体である場合、被検植物と対照植物における当該マーカーの蓄積量に統計学的に有意な量的差異が見られるか否かを検証し、有意な差があれば被検植物における水分が不足状態にあると判定することもできる。本発明のマーカーNo.1〜3、6、8及び9は、水分量と反比例関係にあることから、統計学的に有意な量的差異の具体例としては、被検植物におけるマーカー蓄積量が、イオン強度で、対照植物におけるそれの1/1.5倍以上、好ましくは1/2倍以上、より好ましくは1/2.5倍以上のイオン強度を有する場合が挙げられる。また、本発明のマーカーNo. 4、5、7、10及び11は、水分量と比例関係にあることから、統計学的に有意な量的差異の具体例としては、被検植物におけるマーカー蓄積量が、イオン強度で、対照植物におけるそれの1.5倍以下、好ましくは2倍以下、より好ましくは2.5倍以下のイオン強度を有する場合が挙げられる。
【0056】
本方法によれば、被検植物における水分充足度を、他要因に影響されることなく正確に判定することができる。
【0057】
本方法によれば、植物の水分充足度から、その植物を植栽している植栽地における水分の、植物が実質的に利用可能な量を知ることができる。
【0058】
3.土中水分量推定方法
本発明の第3の実施形態は、土中水分量推定方法である。本方法は、前記第2実施形態の水分充足度判定方法を用いて、その判定結果より被検地における土中水分量を推定する方法である。
【0059】
第2実施形態の水分充足度判定方法は、植物における実質的な水分充足度を判定する方法であるが、当該方法により得られた結果を利用することで、間接的にその被検植物が生えている又は生えていた被検地の土中水分量の多寡を推定することが可能となる。
【0060】
本明細書で「被検地」とは、本発明の土中水分量推定方法の対象となる土地をいう。圃場、植林地、放牧地のような人手によって植物が植栽及び/又は管理されている植栽地又は森林若しくは原野のように人手の全く又はほとんど入っていない土地のいずれであってもよい。
【0061】
本明細書で「土中水分量」とは地表下の土壌中に含まれる水分量又は土壌含水率をいう。ただし、本方法では、被検植物が生育する上で必要となる水分を土壌が含んでいるか否か、その多寡を推定するに過ぎず、容量や重量のような絶対値としての水分量や含水率のような相対値を測定又は算出するものではない。
【0062】
本方法で使用する被検植物は、被検地に生えている植物であれば限定はしないが、木本類、特に根を地表から深さ30cm〜2.5m、好ましくは40cm〜2.3m、より好ましくは50cm〜2.0mの範囲に張る中高木が好ましい。これは、従来の方法では測定が困難であった深層域の土壌含水率を推定できるという本発明の有効性がより発揮されるからである。また、同じ深層域に根を張る植物種であっても、水分吸収性の高い、換言すれば水分要求性の高い植物種である方が好ましい。これは、水分要求性の高い植物種の需要に足る水分量が土中に存在するか否かをより正確に推定できるからである。
【0063】
本方法は、抽出工程、測定工程、判定工程及び推定工程を含む。このうち抽出工程、測定工程及び判定工程については、第2実施形態の水分充足度判定方法と同一であることから、ここではその説明を省略する。
【0064】
「推定工程」は、判定工程の結果、すなわち第2実施形態の水分充足度判定方法の結果に基づいて、当該方法に供した被検植物の生えていた被検地の土中水分量を推定する工程である。その推定方法は、判定工程での判定が、被検植物の水分充足度が充足状態にあるという結果であった場合には、その被検植物の生えていた被検地の土中水分量は多いと推定できる。特に草丈や樹高からその被検植物の根が主に張っている土中の深さが推測できるのであれば、本工程で推定される土中水分量は、その土中の深さの土中水分量と推定できる。一般的にユーカリ属であれば、ほぼ同じ形態をとるが、例えば、カマルドレンシス×デグルプタは、樹高20m時には、地下30cm〜2mの範囲に主として根を張ることが知られている。したがって、所定の植林地に植栽している前記樹高時のカマルドレンシス×デグルプタの一部から水分充足度を判定した結果、水分量が充足状態であると判定された場合には、そのカマルドレンシス×デグルプタが植栽されていた植林地の地下30cm〜2mの土中水分量は十分に多いと推定し、逆に水分量が不足状態であると判定された場合には、土中水分量は少ないと推定することができる。
【0065】
本方法によれば、従来困難であった土中深層域の水分量をその土地に生えている植物の水分充足度に基づいて間接的に推測することが可能となる。
【0066】
4.植栽候補地選定方法
本発明の第4の実施形態は、植栽候補地選定方法である。本方法は、前記第3実施形態の土中水分量推定方法を用いて、対象植物の植栽地を選定する方法である。
【0067】
在来の原野や山林を植栽地として開拓する場合、その土地が対象植物の植栽に適した土地であるか否かを予め把握しておくことは、植栽候補地を選定する上で、重要な要素となる。しかし、前述のように、仮に植栽候補地決定後にその土地が対象植物の植栽には不適なことが判明しても、その不適な原因が栄養素の不足等であれば、施肥等を行い土壌改良することによって、好適な土地に改善することが可能である。しかし、不適な原因が水分の場合、近隣に十分量の水源がない場合、植栽候補地決定後の改善には莫大なコストを要することから、植栽候補地を決定する前の選定段階で適切性を把握できることが好ましい。
【0068】
本方法では、第3実施形態の土中水分量推定方法の結果から、植栽候補地が対象植物の植栽に水分量の面で適するか否かを判断し、適切な候補地を選定する方法である。
【0069】
本明細書において「植栽候補地」とは、原野や森林において、条件を満たせば将来的に植栽地となり得る候補地をいう。また本明細書において「対象植物」とは、植栽地に栽培を目的として植栽する植物をいう。草本類、木本類は問わないが、前記土中水分量推定方法と同様の理由から木本類の、特に中高木が好ましい。
【0070】
本方法は、植栽候補地に自生する、又は対象植物以前に既に植栽候補地に植栽されていた植物であって、対象植物と同程度の樹高を有し、好ましくは同科、より好ましくは同亜科、さらに好ましくは同属、一層好ましくは同種の植物を被検植物として用いる。前記第3実施形態の土中水分量推定方法を実施し、その推定結果から被検植物が生えていた植栽候補地の土中水分量が少ないと推測された場合、その植栽候補地は植栽地不適地として、候補から除外する。一方、植栽候補地の土中水分量が多いと推測された場合、その植栽候補地は植栽適地として選定する。
【0071】
本発明の植栽候補地選定方法によれば、植栽地として選定する前に、その候補地が対象植物の植栽に土中水分量の面で適しているか否かを判断することが可能となる。それによって、植栽候補地の選定段階で植栽不適地の選択や購入回避が可能となり、無駄な投資がなくなり、コスト削減につながる。
【0072】
5.植物の生長状態判定方法
本発明の第5の実施形態は、植物の生長状態判定方法である。
後述する実施例1に記載のように、水分充足区及び水分不足区で栽培した同種植物は、栄養状態等が同一であっても潅水量に応じて生長に明確な違いが現れる。すなわち、植物における水分の充足度は、その植物の生長に大きく影響する。本方法は、前記第2実施形態の水分充足度判定方法の経時的な複数の結果に基づいて、同一植物の生長状態を判定し、またその判定結果から前記植物の将来の生長性を予測する方法である。具体的には、第2実施形態の水分充足度判定方法により、同一植物から経時的に得られた水分充足度に関する二以上の判定結果に基づいて、その植物における生長状態を判定することを特徴とする。
【0073】
「植物の生長状態」とは、植物の生長速度、所定期間内における植物の生長の善し悪し又は生長の推移を包含する。
【0074】
「同一植物から経時的に得られた水分充足度に関する二以上の判定結果」とは、異なる二以上の時期に同一植物から採取されたサンプルに対して行った第2実施形態の水分充足度判定方法によるそれぞれの判定結果をいう。各サンプル間の期間は、植物種類、生育環境等に応じて定めればよく、特に限定しないが、期間が短すぎる場合、正確な生長状態を判定できない可能性があることから、適当な期間、例えば、3日以上、好ましくは1週間以上、より好ましくは1ヶ月以上又は3ヶ月以上空けるのがよい。
【0075】
被検植物における水分充足度を判定する方法は、前記第2実施形態に記載の方法に準じて行えばよい。
【0076】
経時的に得られた二以上の判定結果に基づいて、その植物における生長状態を判定する方法の具体例としては、以下の方法が挙げられる。
(1)二以上の経時的な判定結果が、いずれも充足状態にあるという結果であった場合には、その植物における生長状態は良好であると判定する。この場合、その状態を維持できれば、その植物の将来の生長性は高いと予測することができる。
(2)二以上の経時的な判定結果が、不足状態から充足状態に移行している場合には、その植物の生長状態が改善傾向にあると判定する。この場合、改善された状態を維持できれば、その植物の将来の生長性は高いと予測することができる。
(3)二以上の経時的な判定結果が、充足状態から不足状態に移行している場合には、生長状態が悪化傾向にあると判定する。この場合、その場合、潅水を行う等の適切な措置を施さなければ、その植物は今後さらに生長が悪くなると予測することができる。
(4)二以上の経時的な判定結果が、いずれも不足状態にあるという結果であった場合には、生長状態が悪いと判定する。この場合、早急に潅水する等の適切な措置を施さなければ、その植物は今後一層生長が悪くなり、場合によっては枯化する可能性もあると予測することができる。
【0077】
どの程度潅水するかは、第2実施形態の水分充足度判定方法での判定結果に基づいて適宜行えばよい。例えば、被検植物の水分充足度が不足状態にあると判定された場合であって、既にその被検植物が植栽されている土地に潅水を行っていた場合には、その潅水量が少ないことから、より多くの量で潅水すればよい。雨水任せで、植栽されている土地にそれまで潅水を行っていなかった場合には、積極的に潅水を行うようにすればよい。
【0078】
さらに、被検植物の水分充足度が充足状態にあると判定された場合であって、既にその被検植物が植栽されている土地に潅水を行っていた場合には、その潅水量を維持して、その後も潅水を続ければよいし、雨水任せで、潅水を行っていなかった場合には、その後乾季等に移行するか、降雨のない好天日が極端に連続する等の変化がない限りは、そのまま放置していればよい。
【0079】
本方法によれば、被検植物が生育する土地に水を与えるべきか否か、及びどの程度の量で潅水すればよいかを決定することができる。また、それによって、植物の水分の欠乏又は不足状態を回避又は解消させて、植物の生長状態を維持又は改善することが可能となる。その結果、植物の生産量や生産効率を高めることもできるようになる。
【実施例】
【0080】
<実施例1:水分充足度診断用マーカーの選択>
(材料)
2つの試験区(水分充足区、及び水分不足区)ユーカリプタス属の雑種クローン(カマルドレンシス×デグルプタ)10個体を土壌量13Lのポットで、3ヶ月間温室内で栽培した。両試験区での栽培条件は、水分充足区では、毎日1L潅水し、水分不足区では、3日に1度1L潅水したことを除いて、栄養状態等は全て同一としている。
【0081】
両試験区では、図1に示すように潅水量に応じた生長の違いが明確に認められた。そこで、これら2つの試験区の個体を水分充足度診断用マーカー選択のための材料とした。
【0082】
(方法)
1.葉のサンプリング
上記の水分充足区、水分不足区の各ユーカリプタス個体について、ハサミで葉柄部分から葉を切り取った。採取した葉の主脈部分を取り除き、残りを50℃で一晩乾燥させた。
【0083】
2.抽出物の抽出
乾燥重量で約30mgの前記各個体をセフロックチューブに入れた。直径5mmのジルコニアボール(東ソー)をチューブに加え、Tissue Lyser II(キアゲン)で葉サンプルを25Hzにて30秒間振動させて粉砕した。続いて、チューブに抽出液(水:メタノール:クロロホルム=1:2.5:1(v:v:v)、5 mg/mL (-)Epicatechinを内部標準物質として含む)を1mL加え、Tissue Lyser IIを用いて25 Hzで120秒間振動させて抽出した。得られた抽出液を12000×gで10分間遠心分離した後、上清約0.9mLに水0.4mLを加えて、12000×gで10分間遠心分離し、上層(水メタノール層)と下層(クロロホルム層)に分離した。続いて、上層をMillex-LG(ミリポア)を用いてろ過し、ろ液を回収した。
【0084】
3.LC-MS分析
得られたろ液のうち10μLを以下の条件でLC-MS分析に供した。具体的な分析方法については、各使用機器に添付の使用説明書に従った。
【0085】
3−1.液体クロマトグラフィー(LC)条件
・使用機器:UFLC (島津製作所)
・溶離液A:0.1%ギ酸(和光)入り 水クロマトグラフィー用リクロゾルブ(メルク)
・溶離液B: 0.1%ギ酸(和光)入り アセトニトリルLC/MS用ハイパーグレードリクロゾルブ(メルク)
・カラム:TSKgel ODS-100V 3.0x 750mm 粒子3μm(東ソー)
・ガードカラム:TSKguardgel ODS-100V, 粒子5μm(東ソー)
・カラム温度:40℃
・流速:0.5mL/min
・時間連続濃度勾配(タイムスケジュールグラジュエント)B%
0分:3%〜10分:97%
【0086】
3−2.MS条件
・使用機器:3200QTRAP
・Mass range: 100-1000
・スキャンモード:Enhanced Mass Scan
・イオン化方法:ESI-Positive
・スキャン速度:4000 amu/sec
・解析ソフトウェア:Analyst 1.4.2
【0087】
3−3.MSMS条件
・使用機器:3200QTRAP
・Mass range: 50-1000
・スキャンモード:Enhanced Product Ion Scan
・イオン化方法:ESI-Positive
・スキャン速度:4000 amu/sec
・解析ソフトウェア:Analyst 1.4.2
【0088】
3−4.アライメント条件
・代謝産物データのアライメント:Marker ViewTM 1.2 Software
・溶出時間許容誤差:1分
・Mass 許容誤差:25ppm
・Intensity threshold: 10,000
【0089】
4.水分充足度判定用マーカーの選択
前記LC-MS/MS分析で得られた代謝産物の中から、GeneSpring MS(アジレントテクノロジー社)のVolcano Plotにより、蓄積量的に水分充足度を示す代謝産物を選択した。具体的には、代謝産物の蓄積量を水分充足区の個体と水分不足区の個体の間で比較した時に、充足区個体における蓄積量がイオン強度で不足区個体におけるそれの1.5倍以上の代謝産物、又は1/1.5倍以下の代謝産物を水分充足度判定用マーカーとして選択した。
【0090】
なお、いずれの代謝産物も水分量に応じて植物体内で変動する物質であるが、前者は、植物体におけるその蓄積量が水分量の増加に伴って増加する、言わば水分量と比例関係にあるマーカーであり、逆に後者は、植物体におけるその蓄積量が水分量の増加に伴って減少する、言わば水分量と反比例関係にあるマーカーといえる。
【0091】
(結果)
選択の結果、前記表2及び3に示す11個の代謝産物(マーカーNo.1〜11)が得られた。表2は、水分不足区の個体と水分充足区の個体間での代謝産物の蓄積量の比較結果を、また表3は、得られたそれぞれのマーカーをLC-MS/MS分析で特定するためのLC保持時間、プリカーサーイオン及びプロダクトイオン強度を示している。
【0092】
【表2】

【0093】
【表3】

【0094】
この表に示すように、マーカーNo.4、5、7、10及び11は、水分充足区の個体における蓄積量がイオン強度で水分不足区の個体におけるそれの1.5倍以上に分類される代謝産物であることが明らかとなった。すなわち、本発明のマーカーNo.4、5、7、10及び11の代謝産物は、水分量と比例関係にある性質のマーカーであった。
【0095】
一方、マーカーNo.1〜3、6、8及び9は、水分充足区の個体における蓄積量がイオン強度で水分不足区の個体におけるそれの1/1.5倍以下に分類される代謝産物であることが明らかとなった。すなわち、本発明のマーカー1〜3、6、8及び9の代謝産物は、水分量と反比例関係にある性質のマーカーであった。
【0096】
<実施例2:水分充足度判定方法を用いた異なる栄養状態の被検植物における水分充足度の判定>
温室栽培個体を用いて、施肥量(すなわち、栄養状態)の異なる個体であっても、本発明の水分充足度判定方法が栄養状態に影響されずに水分充足度を判定ができるかどうかについて検証した。
【0097】
(材料)
土壌量13Lのポットで温室内にて3ヶ月間栽培したユーカリプタス属の雑種クローン(カマルドレンシス×デグルプタ)計20個体を用いた。その際、下記表4に示す4つの処理区を設けた。
【0098】
【表4】

【0099】
(方法)
1.葉のサンプリング
上記各試験区の個体について、植栽後2〜6週の期間に1週間毎、葉をハサミで葉柄部分から切り取った。したがって、サンプル数は、20個体で5回葉を採取することから計100サンプルとなる。各サンプルは、採取した葉の主脈部分を取り除き、残りを50℃で一晩乾燥させた。
【0100】
2.抽出物の抽出
実施例1に記載の方法に準じて行った。
【0101】
3.LC-MS/MS分析
得られたろ液のうち10μLを以下の分析条件にてLC-MS/MS分析に供した。具体的な分析方法については、各使用機器に添付の使用説明書に従った。
【0102】
3−1.液体クロマトグラフィー(LC)条件
・使用機器:UFLC (島津製作所)
・溶離液A:0.1%ギ酸(和光)入り 水クロマトグラフィー用リクロゾルブ
・溶離液B: 0.1%ギ酸(和光)入り アセトニトリルLC/MS用ハイパーグレードリクロゾルブ
・カラム:TSKgel ODS-100V 3.0x 750mm 粒子3μm(東ソー)
・ガードカラム:TSKguardgel ODS-100V, 粒子5μm(東ソー)
・カラム温度:40℃
・流速:1.0 ml/min
・時間連続濃度勾配(タイムスケジュールグラジュエント)B%
0分:3%〜5分:56%
【0103】
3−2.MS/MS条件
・使用機器:3200QTRAP
・スキャンモード:Multiple Reaction Monitoring
・イオン化方法:ESI-Positive
・スキャン速度:4000 amu/sec
・解析ソフトウェア:Analyst 1.4.2
・Target Mass:
No.1: Q1: m/z: 175.2, Q3: m/z: 116.0 RT =0.4
No.2: Q1: m/z: 188.0, Q3: m/z: 118.0 RT =2.0
No.3: Q1: m/z: 511.1, Q3: m/z: 511.1 RT =3.1
No.4: Q1: m/z: 769.2, Q3: m/z: 153.0 RT =2.9
No.5: Q1: m/z: 104.2, Q3: m/z: 104.2 RT =0.4
No.6: Q1: m/z: 501.1, Q3: m/z: 501.1 RT =3.8
No.7: Q1: m/z: 639.1, Q3: m/z: 639.1 RT =4.1
No.8: Q1: m/z: 291.1, Q3: m/z: 291.1 RT =0.5
No.9: Q1: m/z: 533.2, Q3: m/z: 362.2 RT =0.5
No.10: Q1: m/z: 812.3, Q3: m/z: 812.3 RT =2.0
No.11: Q1: m/z: 421.1, Q3: m/z: 259.2 RT =4.5
No.12: Q1: m/z: 291.2, Q3: m/z: 139.1 RT =2.6
ここで、No.12は、内部標準物質(-)Epicatechinである。
また、Q1及びQ3は、各マーカーの質量電荷比データ(m/z)、RTは保持時間(分)を示す。
【0104】
3−3.アライメント条件
・代謝産物データのアライメント:Marker ViewTM1.2 Software
・溶出時間許容誤差:1分
・Mass 許容誤差:25ppm
・Intensity threshold: 1,000
【0105】
3−4.データの標準化
質量分析装置の場合、マーカーの蓄積量は、同一サンプルであっても分析ごとに若干異なるため標準化が必要となる。ここでは、各種マーカーの蓄積量を内部標準物質((-)Epicatechin)の蓄積量で除算することにより標準化した。
【0106】
4.判別分析
LC-MS/MSにより取得したデータに対して、GeneSpring MS(アジレントテクノロジー社)を用いて判別分析を実施した。具体的には、実施例1の水分充足度診断用マーカーの水分充足区及び水分不足区における蓄積量データを、判別分析用のトレーニングデータセット、すなわち、ベースとなるテキストサンプルとし、被検サンプルとなる本実施例の植物(20サンプル)における対応する水分充足度診断用マーカーの蓄積量と対比させ、被検植物の蓄積量が実施例1の水分充足区及び水分不足区のどちらに近いのか判定した。判定方法は以下の条件で行った。
【0107】
・判定アルゴリズム:K近傍法
クラスのラベルが付加された訓練事例が与えられているクラス分類の場合:分類したい事例から近い方から順にk個の事例を見つける.これらk個の事例のうち、最も多数をしめるクラスに分類する手法。
・マーカー: 水分充足度判定用マーカー6種(マーカーNo.1、3、4、8、10、11)
・トレーニングデータセット:実施例1の水分不足区と水分充足区から得られたマーカーのプロファイル
・被検サンプルデータ:本実施例の4つの処理区20検体の各々から得たマーカーのプロファイル
【0108】
(結果)
結果を図2に示す。各処理区の中では、試験区1及び3、すなわち、潅水を毎日実施した処理区の方が、生長性が良好であった。この結果は、植物の生長は、肥料よりも潅水量に強く依存することを示している。
【0109】
また、本発明の水分充足判定方法で、表4に示す4つの処理区の各個体について、植栽後2〜6週ごとに水分の充足度の判定を行ったところ、表5に示すように、水分不足区(処理区2及び4)50サンプルでは、5サンプルにおいて充足区である、すなわち充足状態にある、という不一致の誤判定(表中、星印で示す)が出たものの、水分充足区(処理区1及び3)では50サンプルの全てが充足状態にあるという正しい判定結果が得られ、本発明の判定方法により、判定結果と実条件とが一致する正答率が全体で95%という非常に高い精度で実際の水分を判定することができた。なお、表5において、K近傍法での結果の信頼性が低く、充足区か不足区かを判定できなかったものについては、「−」で示している。
【0110】
【表5】



【0111】
<実施例3:植林現場&他樹種個体に対する水分の充足度診断>
複雑な環境要因が影響していると考えられる植林地現場において、実施例1及び2とは異なるユーカリ樹種サンプルに対して、本発明の水分充足度判定方法を用いて、実際に正確な水分充足度の判定が可能であるかを検証した。
【0112】
(材料)
ラオス植林地にある2ヶ所の試験区(試験区A、及び試験区B)に植栽された0.8年目のユーカリプタスの雑種(カマルドレンシス×ユーロフィラ)をサンプルに用いた。
【0113】
(方法)
1.葉のサンプリング
上記両試験区において、乾季及び雨季初めの2回、上記個体の葉をハサミで葉柄部分から切り取った。それぞれを各試験区での水分不足サンプル及び水分充足サンプルとした。採取した葉の主脈部分を取り除き、残りを50℃で一晩乾燥させた。
・水分不足サンプル:乾季(月間降水量12mm)
・水分充足サンプル:雨季始め(月間降水量98mm)
【0114】
2.抽出物の抽出
実施例2に記載の方法に準じて行った。
【0115】
3.LC-MS/MS分析
実施例2に記載の方法に準じて行った。
【0116】
4.判定
試験地Aの水分不足サンプルと水分充足サンプルから得られた代謝物データを、判別分析用のトレーニングデータセット、すなわち、ベースとなるテキストサンプルとし、被検サンプルとなる試験地Bのサンプル(合計145検体)の水分の充足状態、不足状態を、表1における2つのマーカーのプロファイルに基づき判定した。判定方法は以下の条件で行った。
【0117】
・判定アルゴリズム:K最近傍法 (p-value<0.2)
・マーカー: 水分充足度判定用マーカー2種(マーカーNo.3、6)
・トレーニングデータセット:ラオス植林地内の試験地Aの水分不足サンプル(水分不足個体)及び水分充足サンプル(水分充足個体)から得られたマーカーのプロファイル
・被検サンプルデータ:ラオス植林地内の試験地Bに設定した乾季サンプル66検体、雨季始めサンプル79検体の各々から得たマーカーのプロファイル
【0118】
(結果)
結果を表6に示す。試験地Bの乾季サンプル66検体の水分充足度を判定したところ、いずれのマーカーも全検体が不足状態にあるという判定結果を示した。すなわち100%の正答が得られたことになる。一方、雨季始め79検体の判定したところ、63検体で水分が充足状態にあるという判定結果が得られた。すなわち、88.9%の正答が得られたことになる。
【0119】
以上のように、本発明のマーカーを用いた水分充足度判定方法によれば、複雑な環境要因が影響していると考えられる植林地現場サンプルに対しても、正答率90%近い高い判定精度でその土地で生育する植物の水分充足度の判定ができることが立証された。
【0120】
また、前述のように本実施例では、実施例1及び2とは実験に用いた植物種が異なる。本発明のマーカーは、実施例1に記載の植物種から分離された代謝産物であるが、本実施例において、異なる植物種にも有効であることが明らかとなり、マーカーの一般性も立証された。
【0121】
【表6】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物の代謝産物であって、高速液体クロマトグラフタンデム質量分析法において、
液体クロマトグラフィーでのアセトニトリルの時間的な連続濃度勾配を0分3%〜5分56%で形成させたときに下記表1で示す保持時間で分離され、かつ
質量分析でのプリカーサーイオン及びプロダクトイオンの質量電荷比が下記表1で示す値で特定される
マーカーNo.1〜11で示されるいずれか一の植物の水分充足度判定用マーカー。
【表1】

【請求項2】
前記植物が木本類である、請求項1に記載のマーカー。
【請求項3】
前記木本類がユーカリプタス属である、請求項2に記載のマーカー。
【請求項4】
植物における水分の充足度を判定する方法であって、
被検植物の全部又は一部から代謝産物を含む抽出物を抽出する抽出工程、
前記抽出工程で得られた抽出物中に含まれる請求項1に記載の少なくとも一の水分充足度判定用マーカーの蓄積量を測定する測定工程、
前記測定工程で得られた水分充足度判定用マーカーの蓄積量に基づいて、前記被検植物における水分の充足度を判定する判定工程
を含む、前記方法。
【請求項5】
前記判定工程において、水分の充足度を被検植物と対照植物のそれぞれから得られる水分充足度判定用マーカーの蓄積量の比較によって判定する、請求項4に記載の判定方法。
【請求項6】
前記対象植物が水分不足状態にある、請求項5に記載の判定方法。
【請求項7】
水分充足度判定用マーカーが表1におけるマーカーNo. 1〜3、6、8及び9の場合、当該マーカーの被検植物における蓄積量が対照植物における蓄積量よりも統計学的に有意に小さいときに被検植物における水分が充足状態にあると判定する、請求項6に記載の判定方法。
【請求項8】
水分充足度判定用マーカーが表1におけるマーカーNo. 4、5、7、10及び11の場合、当該マーカーの被検植物における蓄積量が対照植物における蓄積量よりも統計学的に有意に大きいときに被検植物における水分が充足状態にあると判定する、請求項6に記載の判定方法。
【請求項9】
前記対象植物が水分充足状態にある、請求項5に記載の判定方法。
【請求項10】
水分充足度判定用マーカーが表1におけるマーカーNo. 1〜3、6、8及び9の場合、当該マーカーの被検植物における蓄積量が対照植物における蓄積量よりも統計学的に有意に大きいときに被検植物における水分が不足状態にあると判定する、請求項9に記載の判定方法。
【請求項11】
水分充足度判定用マーカーが表1におけるマーカーNo. 4、5、7、10及び11の場合、当該マーカーの被検植物における蓄積量が対照植物における蓄積量よりも統計学的に有意に小さいときに被検植物における水分が不足状態にあると判定する、請求項9に記載の判定方法。
【請求項12】
前記植物が木本類である、請求項5〜11のいずれか一項に記載の判定方法。
【請求項13】
前記木本類がユーカリプタス属である、請求項12に記載の判定方法。
【請求項14】
請求項4〜13のいずれか一項に記載の判定方法を用いて、被検地における土中水分量を推定する土中水分量推定方法。
【請求項15】
請求項14に記載の土中水分量推定方法を用いて、対象植物の植栽候補地を選定する植栽候補地選定方法。
【請求項16】
同一植物において、請求項4〜13のいずれか一項に記載の水分充足度判定方法によって得られた水分の充足度に関する経時的な二以上の判定結果に基づいて、その植物における生長状態を判定する、植物の生長状態判定方法。
【請求項17】
二以上の経時的な判定結果が、いずれも充足状態にあるという結果であった場合には、その植物における生長状態は良好であると判定し、不足から充足に移行していることを示す場合には、生長状態が改善傾向にあると判定し、充足から不足に移行していることを示す場合には、生長状態が悪化傾向にあると判定し、又はいずれも不足していることを示す場合には、生長状態が悪いと判定する、請求項16記載の判定方法。
【請求項18】
請求項16又は17に記載の植物の生長状態判定方法による判定結果に基づいて、その植物における水分の潅水量を決定する潅水量決定方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−59299(P2013−59299A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−201162(P2011−201162)
【出願日】平成23年9月14日(2011.9.14)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成23年度、経済産業省、「二酸化炭素固定化・有効利用技術等対策事業費補助金(バイオ技術活用型二酸化炭素大規模固定化技術開発)」を受ける事業、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000122298)王子ホールディングス株式会社 (2,055)
【Fターム(参考)】