説明

植物の照明栽培方法、防虫用照明装置、および防虫用照明システム

【課題】キクなどの短日植物の開花遅延の回避又は開花反応の制御を行いつつ、防虫効果を得ることのできる植物の栽培管理方法および照明装置を提供する。
【解決手段】本発明は、植物の照明栽培方法であって、照明は、出射光が緑色から赤色の領域に発光ピーク波長を有する複数の光源を用いて行い、複数の光源の各光源は、所定の明期幅と、該明期幅より時間平均明るさが小さい暗期幅とを1周期とする点滅パターンで同期して又は独立して発光強度が変化するものであり、パターンは、下記式(1)で示されるデューティが50%以下であり、
デューティ(%)=明期幅/(明期幅+暗期幅)×100 (1)
複数の光源により照明される領域の少なくとも一部は、複数の光源からの照明のパターンの合成により、照明されることにより防虫効果を備える、植物の照明栽培方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物の照明栽培方法、防虫用照明装置、および防虫用照明システムに関する。
【背景技術】
【0002】
花きを食害するオオタバコガやハスモンヨトウ等の夜蛾類は、多くの殺虫剤に対して薬剤抵抗性を獲得したため、殺虫剤による防除が非常に難しい。カーネーションやバラでは、殺虫剤に代わる防除法として、産卵のために圃場に飛来する成虫に対して、高い防蛾効果がある防蛾用黄色蛍光灯による夜間照明の利用が進んでいる。
【0003】
このような防蛾用黄色蛍光灯による夜間照明に関し、たとえば特許文献1には、黄色蛍光灯に代わり黄色発光ダイオード(以下、黄色LEDと記載する)を備えた黄色LED防虫灯システムが開示されている。また、たとえば特許文献2には、黄色LEDを点滅させることにより防虫効果を高める黄色LED防虫灯システムが開示されている。
【0004】
また、たとえば特許文献3には、キク、カランコエ、シャコバサボテン、ポインセチア、リーガースベゴニア、シュッコンカスミソウ、シソ、イチゴ等の短日植物に対し、赤色LED光を照射することにより、短日植物の開花時期を遅らせる技術が開示されている。さらに、非特許文献1には、赤色LEDを用いて明期幅1秒とし、暗期幅0秒(連続)、1秒、9秒、無処理(照射なし)などの各条件で間欠照明でキクを栽培した結果、キクの到花日数がそれぞれ47、48、36、4日であったことが報告されている。
【0005】
また、たとえば特許文献4には、輝度にゆらぎ成分を与えた人工光を昆虫に照射することにより昆虫の行動を制御する方法が開示されている。特許文献4では、昆虫の誘引効果を有する青色LEDから発せられる光を、パーソナルコンピュータを用いて制御することにより、輝度にゆらぎ成分を与えている。
【0006】
また、たとえば特許文献5には、ピーク波長370nm〜480nmの青色光ないし近紫外光を発光する半導体からなる発光素子と、該光を励起光としてピーク波長560nm〜580nmの黄色光を放射する蛍光体とを組み合わせてなる害虫防除装置用LEDランプ5が開示されている。この害虫防除装置用LEDランプ5を、圃場における害虫防除の必要な被照射面の実質的に全域での照度が1lx〜10lxの範囲内に収まるように、分散して配置している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−274839号公報
【特許文献2】特開2003−284482号公報
【特許文献3】特開平8−228599号公報
【特許文献4】特開平10−56941号公報
【特許文献5】特開2008−154541号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】農業電化 60巻10号 pp42−46 2007
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述のような防蛾用照明は、短日植物に対して意図しない開花遅延(開花抑制)を生じさせる場合がある。たとえば、黄色LEDの出射光をキクに照射すると防虫効果が得られる。黄色LEDの出射光を終夜にわたってキクに照射すると、特に夜行性害虫に対して防虫効果が高くなる。一方、キクは短日植物であるため、黄色LEDの出射光(照明)によってその開花が抑制され、開花時期が遅延するという問題があった。この問題に関し、黄色LEDの照射時間が長いほど開花が遅延する度合いが高くなっていた。このように、開花遅延は、通常、防虫効果とともに生じていた。
【0010】
非特許文献1において、赤色LEDを用いた間欠照明においては、暗期幅によらずキクの到花日数が延び開花遅延が生じている(但し、無処理の場合を除く)。したがって、非特許文献1には、開花遅延を生じさせずに、間欠照明(パルス照明)によりキクを栽培できることは記載されていない。
【0011】
つまり、開花遅延を回避しつつ、防虫効果を得ることができれば、減農薬・省エネルギーの農業が実現できる。本願発明者らは、そのような栽培管理方法の研究を行っている。
【0012】
本発明の課題は、キクなどの短日植物の開花遅延の回避又は開花反応の制御を行いつつ、防虫効果を得ることのできる植物の栽培管理方法および照明装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、植物の照明栽培方法であって、照明は、出射光が緑色から赤色の領域に発光ピーク波長を有する複数の光源を用いて行い、複数の光源の各光源は、所定の明期幅と、該明期幅より時間平均明るさが小さい暗期幅とを1周期とする点滅パターンで同期して発光強度が変化するものであり、パターンは、下記式(1)で示されるデューティが50%以下であり、
デューティ(%)=明期幅/(明期幅+暗期幅)×100 (1)
複数の光源により照明される領域の少なくとも一部は、複数の光源からの照明のパターンの合成により、同期して照明されることにより防虫効果を備える、植物の照明栽培方法である。
【0014】
本発明は、植物の照明栽培方法であって、照明は、出射光が緑色から赤色の領域に発光ピーク波長を有する複数の光源を用いて行い、複数の光源の各光源は、所定の明期幅と、明期幅より時間平均明るさが小さい暗期幅とを1周期とするパターンで独立して発光強度が変化するものであり、パターンは、下記式(1)で示されるデューティが50%以下であり、
デューティ(%)=明期幅/(明期幅+暗期幅)×100 (1)
複数の光源により照明される領域の少なくとも一部は、複数の光源からの照明のパターンの合成により、時間的に一定でないパターンで照明されることにより防虫効果を備える、植物の照明栽培方法である。
【0015】
本発明に係る植物の照明栽培方法において好ましくは、複数の光源間における1周期の偏差は1×10-5以上20%以下である。
【0016】
本発明に係る植物の照明栽培方法において好ましくは、暗期幅が16ms以上5000ms以下である。
【0017】
本発明に係る植物の照明栽培方法において好ましくは、明期幅が4ms以上1000ms以下である。
【0018】
発明に係る植物の照明栽培方法において好ましくは、複数の光源の各光源からの出射光が、黄色に発光ピーク波長を有する。
【0019】
本発明に係る植物の照明栽培方法において好ましくは、デューティが25%以下である。
【0020】
本発明に係る植物の照明栽培方法において好ましくは、照明栽培される植物は、前記の植物の照明栽培方法によっても開花遅延が実用上生じない短日植物である。
【0021】
本発明に係る植物の照明栽培方法において好ましくは、植物の成長点における明期幅内における放射照度が5mW/m2以上50mW/m2以下である。
【0022】
本発明は、キクの照明栽培方法であって、照明は、出射光が黄色の領域に発光ピーク波長を有する複数の光源を用いて行い、複数の光源の各光源は、所定の明期幅と、該明期幅より時間平均明るさが小さい暗期幅とを1周期とするパターンで同期して又は独立して発光強度が変化するものであり、点滅パターンは、下記式(1)で示されるデューティが50%以下であり、
デューティ(%)=明期幅/(明期幅+暗期幅)×100 (1)
キクの成長点における明期幅内における放射照度が5mW/m2以上50mW/m2以下であることにより、開花遅延が実用上生じず、複数の光源により照明される領域の少なくとも一部は、複数の光源からの照明のパターンの合成により、同期して又は独立して照明されることにより防蛾効果を備える、キクの照明栽培方法である。
【0023】
本発明は、複数の光源からなる照明装置であって、複数の光源の各光源は、出射光が緑色から赤色の領域に発光ピーク波長を有し、各光源は、所定の明期幅と、該明期幅より時間平均明るさが小さい暗期幅を1周期とする点滅パターンで同期して発光強度が変化するものであり、点滅パターンは、下記式(1)で示されるデューティが50%以下であり、
デューティ(%)=明期幅/(明期幅+暗期幅)×100 (1)
照明装置に照明される領域の少なくとも一部は、複数の光源からの照明の点滅パターンの合成により、同期して照明されることにより防虫効果を備える、防虫用照明装置である。
【0024】
本発明に係る防虫用照明装置において好ましくは、各光源は、外部から供給される同期信号に同期して点滅し、外部から供給される同期信号は、有線・無線・光信号又は電源線に重畳のいずれかの同期信号伝達手段によって伝達される。
【0025】
本発明は、複数の光源からなる照明装置であって、複数の光源の各光源は、出射光が緑色から赤色の領域に発光ピーク波長を有し、各光源は、パルス発生回路及び発光素子を備え、各光源のパルス発生回路は、独立して所定の明期幅と、該明期幅より時間平均明るさが小さい暗期幅を1周期とするパターンを生成し、発光素子はパルス発生回路が生成するパターンにより発光強度が変化するものであり、パターンは、下記式(1)で示されるデューティが50%以下であり、
デューティ(%)=明期幅/(明期幅+暗期幅)×100 (1)
照明装置により照明される領域の少なくとも一部は、複数の光源からの照明のパターンの合成により、時間的に一定でないパターンで照明されることにより防虫効果を備える、防虫用照明装置である。
【0026】
本発明に係る防虫用照明装置において好ましくは、複数の光源の1周期の偏差は1×10‐5以上20%以下である。
【0027】
本発明に係る防虫用照明装置において好ましくは、暗期幅が20ms以上400ms以下である。
【0028】
本発明に係る防虫用照明装置において好ましくは、明期幅が10ms以上30ms以下である。
【0029】
本発明に係る防虫用照明装置において好ましくは、複数の光源の各光源からの出射光が、黄色の領域に発光ピーク波長を有する。
【0030】
本発明に係る防虫用照明装置において好ましくは、デューティが25%以下である。
本発明に係る防虫用照明装置において好ましくは、照明装置は短日植物の栽培用である。
【0031】
本発明に係る防虫用照明装置において好ましくは、植物の成長点における明期幅内における放射照度が5mW/m2以上50mW/m2以下である。
【0032】
本発明は、複数の第1の光源および1または2以上の第2の光源を用いる照明システムであって、複数の第1の光源は、出射光が緑色から赤色の領域に発光ピーク波長を有し、防虫効果を備える周波数で光強度が変化することにより第1の領域を照射し、1または2以上の第2の光源は、人間が連続点灯と認識できる状態で点灯して第1の領域に隣接し人間が存在することのある領域を照射することにより、第1の領域における防虫効果を備える、防虫用照明システムである。
【0033】
本発明は、複数の光源およびセンサを備える照明システムであって、複数の光源は、出射光が緑色から赤色の領域に発光ピーク波長を有し、防虫効果を備える周波数で点滅して第1の領域を照射し、センサは、第1の領域または第1の領域に隣接する領域のいずれか一方もしくは両方における人間を検知して、複数の光源を消灯あるいは人間が連続点灯と認識できる状態で点灯させて、第1の領域における防虫効果を備える、防虫用照明システムである。
【0034】
本発明は、光量が変化する光源を備える防虫用照明装置であって、光源は、出射光が緑色から赤色の領域に発光ピーク波長を有し、光源の光量は、明期及び時間平均明るさが明期より相対的に暗い相対的暗期の繰り返しによる主パルスと、明期内または相対的暗期内における副パルスとによって周期的に変化し、副パルスの周波数は、前記主パルスの周波数の4倍以上の防虫用照明装置である。
【0035】
本発明に係る防虫用照明装置において好ましくは、主パルスの周波数が10Hz以下であり、副パルスの周波数が60Hz以下である。
【0036】
本発明は、第1の周波数で光量が周期的に変化する第1の光源と、第2の周波数で光量が周期的に変化する第2の光源を備える防虫用照明システムであって、第1の光源及び第2の光源は、いずれも出射光が緑色から赤色の領域に発光ピーク波長を有し、第1の周波数は第2の周波数の4倍以上であり、第1の光源及び第2の光源の両方で照射される領域を備える、防虫用照明システムである。
【発明の効果】
【0037】
本発明によれば、キクなどの短日植物の開花遅延の回避又は開花反応の制御を行いつつ、防虫効果を得ることのできる植物の栽培管理方法および照明装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の一実施の形態における、照明栽培の概念図である。
【図2】本発明の一実施の形態において用いる、LED光源の出射光のパルス波形を示す図である。
【図3】本発明の一実施の形態において用いる、照明装置を構成する回路の概略図である。
【図4】本発明の一実施の形態において用いる、LED素子の断面図である。
【図5】本発明の一実施の形態において用いる、LED素子のスペクトル分布図である。
【図6】黄色蛍光LEDを用いた終夜のパルス点灯時における放射照度と暗期幅が輪ギク‘神馬’の到花日数に及ぼす影響を示すグラフである。
【図7】黄色蛍光LEDを用いた明期20msのパルス光の放射照度と暗期が季咲き作型での輪ギク‘神馬’の発蕾所要日数および到花日数に及ぼす影響を示すグラフである。
【図8】オオタバコガ成虫(オス)の代表的なERG信号波形(放射照度:1.23[mW/m2]を示すグラフである。
【図9】ハスモンヨトウ成虫(メス)の代表的なERG信号波形(放射照度:1.2[mW/m2]を示すグラフである。
【図10】本発明の一実施の形態において用いる、アクトグラフの概要を示す図である。
【図11】実験5の各処理区における、オオタバコガ成虫の5日間のセンサー遮断回数を示す図である。
【図12】実験6の各処理区における、オオタバコガ成虫(オス)による平均遮断回数を示す図である。
【図13】終夜のパルス点灯が輪ギクおよびスプレーギクの被害蕾数分布に及ぼす影響を示すグラフである。
【図14】オオタバコガ(オス)の日齢による暗期飛翔活性変化を示す図である。
【図15】圃場内に縦横にLED光源を配置した状態を上空から見た模式図である。
【図16】本発明の一実施の形態における、LED光源の正面図および断面の内部構成を示す図である。
【図17】本発明の一実施の形態における、照明装置を構成する複数のLED光源の回路と電源の接続状態を示す図である。
【図18】図15に示す圃場のQ地点に2つのLED光源A、Bの光が照射される場合の照度変化を計算した結果を示すグラフである。
【図19】図15に示す圃場のR地点において、主として4つのパルス光源A、B、C、Dによって照明される場合の照度変化を計算した結果を示すグラフである。
【図20】非同期照明区及び無処理区で栽培されたキクの被害茎率(%)の変化を示すグラフである。
【図21】同期照明区及び無処理区で栽培されたキクの被害茎率(%)の変化を示すグラフである。
【図22】非同期照明区及び無処理区で栽培されたキクの被害茎率(%)の変化を示すグラフである。
【図23】光強度が1.2mW/m2であり、パルスパターンの明期8msで、暗期32ms(周波数25Hz)の光源を用いたときのERG信号波形を示すグラフである。
【図24】光強度が1.2mW/m2であり、パルスパターンの明期が4msで、暗期が16ms(周波数50Hz)の光源を用いたときのERG信号波形を示すグラフである。
【図25】光強度が20mW/m2であり、パルスパターンの明期8msで、暗期32ms(周波数25Hz)の光源を用いたときのERG信号波形を示すグラフである。
【図26】光強度が20mW/m2であり、パルスパターンの明期が4msで、暗期が16ms(周波数50Hz)の光源を用いたときのERG信号波形を示すグラフである。
【図27】オオタバコガ(オス)の飛翔による平均遮断回数を示すグラフである。
【図28】オオタバコガ(メス)の飛翔による平均遮断回数を示すグラフである。
【図29】連続5日間におけるオオタバコガ(オス)20頭の平均遮断回数の変化を示すグラフである。
【図30】人の視覚に対する刺激が抑えられる光源の光強度変化(波形)を示すグラフである。
【図31】人の視覚に対する刺激が抑えられる光源の光強度変化(波形)を示すグラフである。
【図32】人の視覚に対する刺激が抑えられる光源の光強度変化(波形)を示すグラフである。
【図33】人の視覚に対する刺激が抑えられる光源の光強度変化(波形)を示すグラフである。
【図34】人の視覚に対する刺激が抑えられる光源の光強度変化(波形)を示すグラフである。
【図35】人の視覚に対する刺激が抑えられる光源の光強度変化(波形)を示すグラフである。
【図36】圃場とその周辺の斜視図である。
【図37】ポイントAおよびBで光源の光強度を観察したときの時間変化を示すグラフである。
【図38】ポイントAおよびBで光源の光強度を観察したときの時間変化を示すグラフである。
【図39】圃場とその周辺を示す斜視図である。
【図40】大規模農場において植物を栽培するときの防虫用照明システムを示す模式的な斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
[実施の形態1]
(照明栽培の概念)
図1は、本発明の実施の形態1における照明栽培の概念図である。
【0040】
図1を参照して、たとえばキク60(秋ギク)などの植物が圃場(植物栽培領域)に定植されている。キク60は成長点61を含んでいる。圃場の上にはLED光源100が複数個配置された照明装置が設置されている。これらのLED光源100は、夜間にパルス点灯する。LED光源100のパルス点灯により照明領域110が照らされる。照明領域110では、夜蛾類成虫130が光を視認し、夜蛾類成虫130の行動が抑制される。その結果、産卵もしくは交尾のために夜蛾類成虫130が圃場へ飛来することが抑制され、夜蛾類成虫130の産卵または交尾行動などが抑制される。その結果、キク60に対する被害が低減される。なお、LED光源100の個数としては、実用化時においては圃場に縦横に多数個を配置することを想定しているが、本発明に必要な効果を実証するための各実験においては1個、あるいは2m間隔で6個配置した光源を用いている場合がある。
【0041】
なお、本実施の形態においては主として植物上にLEDを照射する(照明する)場合について示されている。しかし、夜蛾類成虫が外部から圃場に進入することを防止するために、圃場を取り囲むように(圃場の境界から例えば3mから7mの圃場周辺領域にバリア状に)LEDを照射することも好ましい。また、夜蛾類成虫が上空から飛来するのを防止するために、圃場の上空領域に向けてLED光を照射することも好ましい。
【0042】
(LED光源)
図2は、本発明の一実施の形態において用いる、LED光源の出射光のパルス波形を示す図である。
【0043】
図2を参照して、LED光源の出射光は駆動電流に追従して、明期幅と、該明期幅より時間平均明るさが小さい暗期幅とからなる矩形波で点滅する。デューティは、明期幅/(明期幅+暗期幅)で表わされる。
【0044】
図3は、本発明の一実施の形態において用いる照明装置を構成する回路の概略図である。図3で示す回路は、後述する栽培実験においても使用されている。
【0045】
図3を参照して、この照明装置を構成する回路は、電力(ACまたはDC)を供給するための2本の電線(POWERおよびGND)と、信号線(SIG)と、複数のLED光源100と、同期信号発生部124とを含んでいる。
【0046】
たとえば6個のLED光源100(図3では3個のみが示されている)が、たとえば2m間隔で電気的に接続されている。6個のLED光源100は、線状の畝の上に配置することを想定して、たとえば縦6個×横1列で線状に配置されてもよいし、たとえば縦3個×横2列で面状に配置されてもよい。LED光源100を面状に配置する場合、LED光源100の各々は、長方形の頂点の位置に配置されてもよいし、三角形の頂点の位置に配置されてもよい。LED光源100の各々が、たとえば畝面から1mの高さの位置に配置されている場合、全ての栽培領域において、複数のLED光源100の光を照射する(照明する)ことができる。LED光源100の各々が、たとえば畝面から1mの高さよりも低い位置に配置されている場合、あるいは2mよりも広い間隔で配置された場合であっても、少なくとも各LED光源100の直下を除く部分においては、複数のLED光源100の光を照射することができる。
【0047】
LED光源100の各々は、通常の連続点灯する光源とは異なり、電力(ACまたはDC)を供給するための2本の電線(POWERおよびGND)と、信号線(SIG)とに電気的に接続されている。LED光源100は、駆動回路123とLED素子115とを含んでいる。駆動回路123は信号線の信号に同期した出力(DRV)を発生し、それによりLED素子115が点滅発光する。同期信号発生部124は、例えば圃場の外に設置される。LED光源100のLED素子115の各々は、外部から供給される共通の同期信号によって同期して発光する。
【0048】
なお、同期信号の伝達方法としては、図3に示すような有線の同期信号伝達手段であるSIG線を用いない方法もある。このような方法としては、(i)電線(電源線)であるPOWER線に同期信号を重畳させる方法がある。また、(ii)無線信号を用い、各LED光源において受信する方法、(iii)赤外線などの光信号を発信し、各LED光源において受信する方法がある。また、(iv)AC電源の周期を利用し、各LED光源にてAC電流を加工して生成するという方法がある。これらの方法によっても、各LED光源100を同期して点滅させることができる。上記の無線信号としては、たとえば電波時計用の信号など外部の信号を用いることができる。またAC電源の周期を利用する場合、発電所が供給するAC波形を同期信号として用いることができる。
【0049】
図4は、本発明の一実施の形態において用いる、LED素子の断面図である。図4を参照して、LED素子115は、基板111と、配線パターン112と、ワイヤ113と、LEDチップ116と、封止樹脂117と、蛍光体118とを含んでいる。基板111上には配線パターン112が形成されており、青色光を出射する窒化物半導体よりなる複数のLEDチップ116が配置されている。複数のLEDチップ116の各々はワイヤ113を介して配線パターン112と電気的に接続されている。1個のLED素子115には、12行×3列(12並列×3直列)で36個のLEDチップ116が搭載されている。配線パターン112、ワイヤ113およびLEDチップ116の各々は、封止樹脂117により封止されている。封止樹脂117中にはBOSE(Ba、O、Sr、Si、Eu)よりなる蛍光体118が分散されている。
【0050】
なお、蛍光体118としてはBOSEの他、SOSE(Sr、Ba、Si、O、Eu)、YAG(Ce賦活イットリウム・アルミニウム・ガーネット)、αサイアロン((Ca)、Si、Al、O、N、Eu)などを好適に用いることができる。また、LEDチップ116として、青色光を出射するものの代わりに、たとえば発光ピーク波長が390nmから420nmの紫外(近紫外)光を出射するものが使用されてもよい。この場合には、さらなる発光効率の向上を図ることができる。
【0051】
図5は、本発明の一実施の形態において用いる、LED光源100(図1)のスペクトル分布図である。
【0052】
図4および図5を参照して、本実施の形態で使用されるLED光源100は、通常の白色LEDに比べて蛍光体118を多く含有している。これにより、LED光源100の出射光は、黄緑色成分(波長560nm近傍)が増加し、青色成分(波長450nm近傍)が減少しており、「レモンイエロー」と称される色を呈している。このようなLED光源を、以下「黄色蛍光LED光源」と称する。ピーク波長である560nm程度の黄緑色の光は誘虫性の低い色である。一方、図5における約500nm以下の波長の青色光成分は、夜蛾類の種類によっては誘引効果を生じる場合がある。この誘引効果を除くため、対象となる虫に応じて、青色光成分(たとえば500nm以下の波長の光)の透過を抑制するフィルタが、LED光源100と夜蛾類成虫130(図1)との間に設けられることが好ましい。なお、LED光源100に用いるLED素子115と蛍光体118に代えて、AlGaInP系黄色LED素子を用いることもできる。AlGaInP系黄色LED素子は蛍光体を用いずに直接黄色の光を得ることができ、また青色成分がないため、LED光源100として好適である。「黄色蛍光LED(光源)」や「AlGaInP系黄色LED(光源)」のように黄色に発光ピーク波長を有するLEDを「黄色LED(光源)」と称することとする。なお、光源の色としては、防虫効果及び開花反応制御の点で、黄色の他、緑色から赤色の領域に発光ピークを有する光源が好ましい。
【0053】
(パルス照明栽培と開花遅延との関係)
防蛾に必要とされる照明時間帯(日光の十分当らない時間である日の入り直後の薄暮期および日の出前の薄明期を含む終夜)を変えることなく、キクに開花遅延させない照明技術を開発するために、本願発明者らは、連続光と比べて総照明時間が短い時間構造である、パルス光に対する開花反応特性を調べた。
【0054】
実験1:キクのうち切り花ギクである輪ギク、小ギクおよびスプレーギクの各々に対して、黄色蛍光LED光源を用いて終夜照明(日の出前の薄明期および日の入り直後の薄暮期を含む)を行い、到花日数の変化を調べた。輪ギク‘神馬’における結果を図6に示す。図6の縦軸は定植日から開花日までの日数である到花日数、横軸は照明条件である。照明条件において、「無処理」は照明のない場合であり、それ以外は明期幅が10msに設定され、暗期幅がそれぞれ0ms(連続点灯)、10ms(デューティ50%)、50ms(デューティ16.7%)、100ms(デューティ9.1%)に設定された。成長点61(図1)における放射照度(この場合の放射照度は明期幅内における値である)は、それぞれ5mW/m2、9mW/m2、19mW/m2に設定された。なお、本明細書において、成長点61における放射照度とは、成長点61から0.1m以内の距離における放射照度を意味する。
【0055】
実験1の結果、放射照度が5〜9mW/m2の場合には、明期幅が10ms、暗期幅が10ms〜100msのパルス条件とすることで、定植日からの到花日数は無処理の場合の到花日数とほぼ同等となり、実用上開花遅延を回避することができた。また、放射照度が19mW/m2の場合には、明期幅が10ms、暗期幅が50ms〜100msのパルス条件とすることで、定植日からの到花日数は無処理の場合の到花日数とほぼ同等となり、実用上開花遅延を回避することができた。さらに、図示されていないが、放射照度が約40mW/m2に高められた場合には、パルス条件の暗期幅を拡げ、明期幅が10ms、暗期幅が100msのパルス条件とすることで、定植日からの到花日数は無処理の場合の到花日数とほぼ同等となり、実用上開花遅延を回避することができた。
【0056】
ここで、「到花日数」とは「基準となる日(例えば定植日)から開花(所定の大きさまで蕾がふくらみ、収穫適期となる)までに要する日数」であり、「開花遅延」とは、開花(所定の大きさまで蕾がふくらみ、収穫適期となる)までに要する日数(到花日数)が、基準となる日数(無処理の日数)と比較して増大することを意味する。到花日数の遅延は主に「発蕾所要日数(蕾が視認できるまでに要する日数)」の遅延によって生じる。厳密には、発蕾から開花までに要する日数(到花日数−発蕾所要日数)も照明の影響を受けて増大するが、発蕾所要日数の増大程度と比較すると、その程度は非常に小さい。なお、通常の栽培によっても5日程度の開花時期のばらつきを生じるので、実用上問題とならない開花遅延とは、たとえば無処理に対して7日以内の開花遅延である。
【0057】
なお、本データより得られた開花遅延を生じない条件で栽培を行ってもよいが、意図的に開花反応を制御し、適度な開花遅延を生じさせる栽培を行うことも可能である。
【0058】
実験2:全国的には、夜蛾類の被害が問題となる時期に、形状と開花反応がそれぞれ異なる切り花ギクである輪ギク、小ギクおよびスプレーギクという3種類が栽培されている。そこで、輪ギク、小ギクおよびスプレーギクの各々に対して、LED光源を用いて終夜照明(日の出前の薄明期および日の入り直後の薄暮期を含む)を行い、発蕾所要日数および到花日数の変化を調べた。LED光源には黄色蛍光LEDを使用した。輪ギク‘神馬’における結果を図7に示す。図7の縦軸は定植日からの日数であり、棒グラフの灰色部分は、定植日から発蕾日までの所要日数(発蕾所要日数)を示し、白色部分は発蕾日から開花日までの所要日数を示す。横軸は照明条件であり、「無処理」は照明のない場合、それ以外は明期幅が20msに設定され、暗期幅がそれぞれ0ms(連続)、100ms(デューティ17%)、120ms(デューティ14%)、160ms(デューティ11%)、240ms(デューティ7.7%)に設定された。成長点61(図1)における放射照度(この場合の放射照度は明期幅内における値である)は、それぞれ20mW/m2、35mW/m2、50mW/m2に設定された。
【0059】
実験2の結果、放射照度が20mW/m2および35mW/m2の場合には、明期幅が20ms、暗期幅が100ms〜240msのパルス条件とすることで、定植日から開花日までの所要日数(到花日数)は無処理の場合の到花日数とほぼ同等となり(小ギクおよびスプレーギクのデータもほぼ同様であった)、実用上開花遅延を回避することができた。連続光では開花が遅延する放射照度である放射照度が50mW/m2の場合においても、明期幅が20ms、暗期幅が100ms〜240msのパルス条件とすることで、定植日からの到花日数は無処理の場合の到花日数とほぼ同等となり、実用上開花遅延を回避することができた。
【0060】
(夜蛾類の照明に対する視覚特性の解明)
次に本願発明者らは、夜蛾類に対するパルス照明の影響に関する基礎実験を行った。
【0061】
夜蛾類の照明に対する視覚特性を解明して、持続的な防蛾効果を発揮するLEDの点滅パターンを決定するために、黄色蛍光LEDを用い、時間構造の異なるパルス光に対する夜蛾の網膜電位(ERG信号)応答特性を調べた。ここで、網膜電位とは、生きた昆虫の複眼の網膜に端子(電極)を刺して測定した電位である。
【0062】
実験3:黄色蛍光LEDを光源とするパルス光の明期幅を10msで固定し、暗期幅を10ms、40ms、100ms、200ms、500ms、1000ms、5000msの間で変化させて、ERG信号の応答特性を計測した。この結果の一部のデータを図8に示す。図8の結果は、照射照度が1.23mW/m2であり、明期幅が10ms、暗期幅が図8(a)、(b)、(c)、(d)のそれぞれについて10ms、40ms、100ms、1000msのパルス条件である場合のオオタバゴガ成虫(オス)の代表的なERG信号波形を示すものである。
【0063】
図8を参照して、少なくとも10msより大きい暗期幅、好ましくは40ms以上の暗期幅を確保すれば、光刺激が持続可能のERG信号波形が発生している。この結果から、上述のパルス光の照射条件が、オオタバコガ成虫にとって視認可能な時間構造であることが分かり、この時間構造が照明に対する「慣れ」を防止する上で有効であることが分かった。また、図8の結果には示されていないが、オオタバゴガ性差による視覚特性には、特記すべき差異が見られず、10ルクス(lx)に相当する約20mW/m2の放射照度では刺激力が大きいことが分かった。
【0064】
実験4:黄色蛍光LEDを光源とするパルス光をオオタバコガおよびハスモンヨトウに照射してERG信号の応答特性を計測した。ハスモンヨトウについては、供試固体をこれまでの購入虫から、野外での捕獲虫に変更することで、ERG信号の計測に成功した。この結果を図9に示す。図9中左側の結果は、照射照度が1.2mW/m2であり、明期幅が10ms、暗期幅が10msのパルス条件である場合のハスモンヨトウ成虫(メス)の代表的なERG信号波形を示すものである。一方、図9中右側の結果は、照射照度が1.2mW/m2であり、明期幅が20ms、暗期幅が40msのパルス条件である場合のハスモンヨトウ成虫(メス)の代表的なERG信号波形を示すものである。
【0065】
図9を参照して、明期幅は20msが適切であり、当該2種の夜蛾類はともに光を視認するまでに約20ms以上の遅延特性を持っていることが分かった。また、暗期幅が10msのパルス光においては、当該2種の夜蛾類は光照射による追従性を失う傾向があり、LED光源の光を点滅光として視認していない可能性が高いことが分かった。さらに、40ms以上の暗期幅であれば、当該2種の夜蛾類はパルス光の点滅をほぼ視認していることが分かった。
【0066】
(夜蛾類の照明に対する行動特性の解明)
次に本願発明者らは、夜蛾類の照明に対する行動特性を解明した。
【0067】
実験5:図10に示すアクトグラフを用いて夜蛾類の行動特性を解明した。円筒形の容器510内に夜蛾類成虫を放ち、天井部のLED光源540から所定の方法で夜間照明した。照明による行動抑制効果が高い場合、成虫は飛翔行動をあまり示さず、容器内上部のセンサー530による感知回数(遮断回数)は低く抑えられる。これとは逆に、照明による効果が低い場合は、成虫は活発に飛翔する。夜蛾類成虫の遮断回数はパソコン550に記録された。これが図10に示すアクトグラフの原理であり、このアクトグラフと、それを用いた解析手法を駆使して、照明方法による夜蛾類の行動抑制効果を検証した。
【0068】
黄色蛍光LED光源を光源とし、明期幅が10ms、暗期幅が10msのパルス条件に設定され、放射照度が18mW/m2〜100mW/m2に設定された。この条件で、オオタバコガ成虫の飛翔活性について図10に示すアクトグラフを用いて検討した。この結果を図11に示す。図11は、各処理区におけるオオタバコガ成虫の5日間のセンサー遮断回数を示す図である。図11の縦軸は飛翔活性の指標となるセンサー遮断回数を示す。図11の下部にはそれぞれの結果の明期幅、暗期幅、および放射照度が記されている。なお、無処理は光を照射しない場合である。
【0069】
図11を参照して、個体差が少なく、持続的な行動抑制効果を発揮する(遮断回数を低く抑える)条件として、放射照度が100mW/m2であり、明期幅が10ms、暗期幅が100msというパルス条件の有効性が明らかになった。
【0070】
実験6:実験対象をオオタバコガおよびハスモンヨトウとして、実験5と同様の実験を行った。黄色蛍光LED光源を光源とし、図10に示すアクトグラフを用い、飛翔に伴うセンサーの遮断回数を、無照明下(無処理)と比較することにより、飛翔行動の日周性を解析した。パルス光の明期幅を概ね10〜20msに設定し、この明期幅の範囲を基準として、暗期幅をパラメータとして変化させ、行動抑制効果を検証した。羽化後の日齢毎のデータを収集・比較し、さらに、性別による行動の違いを明らかにした。これにより、室内、半野外および野外の各々の環境において、個体差が少なく、かつ「慣れ」を防止できるパルス光の放射照度およびパルス光の点滅パターン(時間構造、パルス条件)を決定した。
【0071】
続いて、放射照度が20mW/m2〜100mW/m2の範囲で継続検討した。加えて、明期幅が20msであることが適切であるとの判断に基づき、明期幅を20msで固定し、暗期幅をパラメータとしてオオタバコガおよびハスモンヨトウの飛翔活性を検討した。この結果を図12に示す。図12は、オオタバコガ成虫(オス)による平均遮断回数を示す図である。ただしエラーバーは標準偏差(SE=Standard Error)を示す。図12の下部にはそれぞれの結果の明期幅、暗期幅、および放射照度が記されている。
【0072】
図12を参照して、オオタバコガでは雌雄成虫ともに放射照度が20mW/m2、明期幅が20ms、暗期幅が0ms(連続点灯)及び80ms、160ms、400msというパルス条件の下でいずれも飛翔活性が無処理に比べて低く抑えられることが分かった。また、例えば暗期幅が80msの条件下では行動に個体差が少なく、「慣れ」も生じにくいことが分かった。以上より、ハスモンヨトウについてはパルス光の有効性を確認することができた。
【0073】
(パルス照明栽培による防蛾効果)
本願発明者らは、上記の基礎実験に基づいて、以下の実証実験を行った。
【0074】
キクのうち切り花ギクである輪ギク(品種:夢志光)およびスプレーギク(品種:ティナ)の栽培において、6個のLED光源100を2m間隔に接続した光源を用いて、畝面からの高さが1mの位置での放射照度を約20mW/m2に設定し、パルス光の時間構造として、明期幅を20msに設定し、暗期幅を160msに設定して終夜照明した。この結果を図13に示す。図13は、終夜のパルス点灯が輪ギクおよびスプレーギクの被害蕾数分布に及ぼす影響を示す図である。
【0075】
図13を参照して、被害が集中した箇所が点灯区の一部でみられたものの、点灯区での夜蛾類幼虫による被害蕾数は無処理区と比較して少なく、パルス光が防蛾効果を有することが分かった。また、連続照明した場合に問題となる開花遅延および切り花品質の低下は、今回のパルス条件の下では見られなかった。その結果、本実施の形態の露地ギク圃場における適用性が検証された。
【0076】
(以上の実験から得られた知見)
本願発明者らは、上記の実験より、以下の知見(確からしい仮説)を得るに至った。
【0077】
第1の知見は、暗期幅を増大させ平均照度を低減させることにほぼ比例して開花遅延が回避される事実より「短日植物の開花遅延は、LEDの時間平均照度にほぼ比例する」というものである。なお、この傾向は非特許文献1の結果とは異なるものである。
【0078】
第2の知見は、暗期幅を増大させても夜蛾類の行動抑制が認められることから、「夜蛾類の被害を抑制する照明の要因としては、LEDの時間平均照度よりもむしろLEDのパルス点灯時放射照度(明期幅内)が支配的である。」というものである。
【0079】
第1の知見および第2の知見より、パルス点灯が、明期幅に比べて暗期幅の長い(たとえば明期幅が20ms、暗期幅が80ms)条件であれば、時間平均照度を抑えることができるため、開花遅延を回避できる。また、パルス点灯時放射照度自体は大きいため、防蛾効果を保つことができる。その結果、開花遅延の回避と防蛾効果との両立を図ることができる。このようなパルス照明は、時間平均照度が同じ連続照明に比べて、防虫効果がかなり高いと推定される。このため、現時点で蛍光灯に匹敵するエネルギー効率が得られるLED光源を、たとえばデューティ50%以下で点滅させることにより、従来と比較して大幅にエネルギー消費が少なく、かつ高い防虫効果を有する照明栽培方法・照明装置が可能であると考えられる。
【0080】
さらに、同期する複数の光源を用いた実証実験によって、防蛾の効果が得られているが、実際に現場を見たところ、1個の光源がパルス点灯する場合に比べて、照明領域は複数の光源からの照明の合成により同期して点滅する照明となるため、光による不快感が増大しているように感じられる。この点滅は虫だけでなく人間にとっても不快なものであるが、複数のLED光源が同期して点滅するのが視野に入るためその不快感が増大する。虫に対してこの効果があるかどうかは実験では十分確認されていないが、虫は複眼を有し視野が人間に比べて広く、複数の光源を同時に視認していると推定されるため、このように複数のLED光源を同期点滅させることによって、防蛾、さらには防虫の効果がより増大している可能性がある。また、後述する「非同期」型照明と比べて、照明栽培領域の外側から見ても点滅が明確に識別可能なため、照明栽培領域の外側から蛾などが飛来するのを防止する効果が高いと思われる。
【0081】
[実施の形態2]
実施の形態1においては、LEDのパルス点灯により、防蛾効果がありキクの開花遅延を回避できることが示された。一方、単調なパルス点灯の場合には、パルス点灯に夜蛾類が慣れることにより、その行動抑制が弱まることもある。本実施の形態においては、まずこの点について説明する。
【0082】
(夜蛾の慣れを示すデータ)
オオタバコガのオス16頭について、1個の黄色蛍光LED光源を用いた図10に示すアクトグラフを用いて、放射照度を50mW/m2に設定し、明期幅が20ms、暗期幅が80msのパルス条件の下で照明を夜間に行い、飛翔に伴うセンサーの遮断回数を調査した。その結果を図14に示す。図14は、日齢による暗期飛翔活性変化を示す図であり、縦軸はセンサー遮断回数、横軸のD1からD5は日齢である。
【0083】
図14を参照して、上記の条件でのパルス光の照射により、飛翔活性が低く抑えられるものの、5日間(D1〜D5)の中で、日数経過とともに徐々に飛翔活性が増大する場合があることが分かる。これは、照明による防蛾効果が日数経過と共に薄れる「慣れ」の発生と考えられる。
【0084】
この知見に基づいて、本願発明者らは、開花遅延を生じないパルス点灯であって、夜蛾類に対して慣れを生じさせない複雑な照明パターンを有するものを実現できないかということを議論した。その結果、大規模な圃場においては複数の光源が用いられることに着目して、それぞれの光源を、近似する周期で独立して発光するパルス光源(パルス点灯)とすることを着想した。この構成は、複雑なパルス照明パターンが自発的に実現できる好適な構成である。この構成では、複数のパルス光源の各々が独立して発光するため、点滅開始直後などにおいては点滅が同期する場合があるが、同期を保つ手段を用いないため基本的には非同期のパルス点灯となる。以下、非同期のパルス点灯の具体例について説明する。
【0085】
(非同期の複数光源を用いた照明栽培の実施形態)
図15に、圃場内に縦横にLED光源200を配置した状態を上空から見た模式図を示す。
【0086】
図15を参照して、丸印で表される照明が、横の間隔X(Xはたとえば3m)、縦の間隔Y(Yはたとえば3m)で、圃場の高さH(Hはたとえば植物の成長点から1.7m)の位置に配置されている。たとえば図中P地点は光源Aの直下であるため、この光源Aからの光が支配的であり、他の光源の影響は少なく、概ね規則的なパルス照明がなされる。ただし、昆虫は植物と異なり移動することができるため、常にP地点に留まっているわけではない。Q地点においては、主として2つのパルス光源AおよびBの光が照射され、その他の光源の影響は少なくなっている。さらにR地点においては、主として4つのパルス光源A、B、C、Dによって照明されている。
【0087】
図16は、本実施の形態におけるLED光源200の正面図である。なお図16においては、LED光源200の正面図に断面の内部構成が重ねて示されている。波長などの基本的な特性は実施の形態1におけるLED光源100と同じである。
【0088】
図16を参照して、圃場内に配置される複数のLED光源200の各々は、連続点灯するタイプのLED光源とは異なっている。すなわち、複数のLED光源の各々は、2本の電線から供給されるAC電源を供給すると、LED光源200が内蔵するパルス回路によって、独立してパルス点灯(点滅)する。LED光源200の各々が独立してパルス点灯する結果、複数の光源は全体としてほぼ非同期で点滅し、時間的に一定でない照明パターンが得られる。
【0089】
LED光源200は、回路213(パルス発生回路兼駆動回路)と、LED素子215と、拡散板220と、基板222と、放熱フィン224と、ソケット225とを含んでいる。放熱フィン224の下部には拡散板220が設けられており、放熱フィン224の上部にはソケット225が設けられている。放熱フィン224および拡散板220内部には、回路213、LED素子215、および基板222が設けられている。基板222は放熱フィン224に機械的につながっており基板222の熱は外部に放射される。基板222の上面には回路213が設けられており、基板222の下面にはLED素子215が設けられている。
【0090】
ソケット225から供給されたAC電源は、回路213によって所定の明期幅および暗期幅を有するパルス状の駆動信号に変換され、LED素子215に供給される。LED素子215から発生された光は、拡散板220によって拡散され、周囲に照射される。拡散板220の内部に複数のLED素子215あるいはLED素子215を構成する複数のLEDチップがあったとしても、それぞれの点滅を別々に識別することはできず、LED光源200は全体として1つの光源として点滅する。仮に拡散板220がなくても、光源から離れた照射領域にいる虫からは1個の光源として識別される。なお、LED光源200へ供給される電源はACでなくてもよく、たとえば太陽電池から供給されるDC電源を好適に使用できる。DC電源を用いる場合は回路213中において整流回路213A(図17)を省略することができる。また、LED光源の形状は、上述の「電球型」の他に、蛍光灯のような線状光源であってもよい。
【0091】
図17は、照明装置を構成する複数のLED光源の回路と電源の接続状態を示す図である。
【0092】
図17を参照して、回路213は、整流回路213A、パルス発生回路213BおよびLED駆動回路213Cを含んでいる。LED光源200の各々は、パルス発生回路213Bを含んでいるため、複数のLED光源200がそれぞれ独立してパルス光を発生する。AC電源からの交流電流は整流回路213Aに入力され、そこでDC電流(たとえば+15V)に変換される。DC電流の一つはパルス発生回路213Bに入力され、パルス発生回路213Bによって、予め決められた明期幅、暗期幅のパルス信号PがLED駆動回路213Cに送られる。DC電流のもう一方はLED駆動回路213Cに入力され、パルス信号Pに同期したLED駆動信号DRVが発生され、LED素子215をパルス点灯(点滅)させる。パルス発生回路213Bの明期幅および暗期幅は固定されてもよいし、設定値が可変抵抗などで調整可能であってもよい。
【0093】
(同期点滅及び適度な非同期点滅を実現するための周期偏差)
上述のように各LED光源は独立にパルス点灯(点滅)するため、最初に同期していても点滅のタイミングがずれ、時間的に一定でない照明となる。ここで、表1に基づいて、同期点滅および適度な非同期のパルス発光を実現するための2つの光源周期のばらつきについて考察する。
【0094】
【表1】

【0095】
表1を参照して、LED光源の基準周期Tは100ms=0.1秒に設定される。偏差Δをパラメータとして、光源1の周波数および光源2の周波数は、それぞれ1/T(1+Δ)および1/T(1−Δ)となり、2つの光源のうなり周波数は2Δ/T(1−Δ2)あるいは2Δ/Tとなる(通常Δ2は無視できる)。従って、Δが0.1、0.01・・・と大きくなるにつれ、うなり周期T/2Δは0.5秒、5秒・・・と増大していく。ここでうなり周期とは、2つの光源が同期、非同期となり再び同期に戻るまでの期間である。
【0096】
表1より、一般的な夜間照明時間である12時間の間に同期したパルス点灯を維持するためには、うなり周期としてその6倍程度の72時間以上、偏差を2.31×10-7程度以内とすることが必要であることが分かる。一方、表1より、夜間照明時間内に非同期のパルス点灯を維持するためには、偏差を1×10-5以上とすればうなり周期が5000秒となり、うなり周期の1/2である約42分で2つの光源の点滅タイミングが逆転するため好ましいことが分かる。より積極的に非同期のパルス点灯(点滅)状態を実現するためには、偏差を1×10-4以上とすれば約4分で2つの光源の点滅タイミングが逆転し、より好ましいことが分かる。実際には、パルス点灯(点滅)回路を構成する部品の通常のばらつきを考慮して、偏差を1×10-3以上とすることがより好ましい。ここで、多数のLED光源を使用する場合には、「偏差」を「光源間の周期ばらつきの標準偏差」と置き換えてよい。
【0097】
(2つの非同期光源による照射パターン)
続いて本願発明者らは、図15に示す圃場のQ地点に2つのLED光源A、Bの光が照射される場合の照度変化を計算した。その結果を図18に示す。図18の結果は、基準周期が100ms、明期幅が20ms、暗期幅が80ms、周期偏差が+5%および−5%(偏差5%)という条件で計算されたものである。
【0098】
図18を参照して、照明は、2つの光源が同時に照射する場合からそれぞれ照射する場合へと時間的に変化し、時間的に一定でない点滅パターンとなることがわかる。なお、時間的に一定でないとは、1光源の明期幅+暗期幅よりなる1周期を基準に考えている。本例において、うねり周期後にもとの状態に戻るため長周期では規則的なパターンを有するが、防虫効果の上では明期幅+暗期幅を1周期とする点滅パターンが時間的に一定でない不規則なものであるという点が重要である。
【0099】
(4つの非同期光源による照射パターン)
続いて本願発明者らは、図15に示す圃場のR地点において、主として4つのパルス光源A、B、C、Dによって照明される場合の照度変化を計算した。その結果を図19に示す。図19の結果は、基準周期が100ms、明期幅が20ms、暗期幅が80ms、周期偏差が+5%、−5%、+3%および+5%(偏差5%)という条件で計算されたものである。
【0100】
図19を参照して、この場合には複雑な照度変化となることが分かる。特許文献3ではコンピュータ制御によって複雑なゆらぎ照明を実現しているのに対し、本実施の形態ではわずかに周期の異なるパルス光源を複数用いるだけで、図19に示すように時間的に一定でない点滅パターンからなる複雑な照度変化を得ることができる。本願発明者らは、このような複雑な光源の照射によって蛾の行動が抑制され、またパルス点灯に対する慣れが生じにくくなる可能性があると考えている。
【0101】
上記図18および図19に示した照度の時間変化は、各地点の照度について示すものであり、光源の方向については考慮されていない。植物に関しては光源の方向の影響はあまり受けないと考えられる。しかし昆虫は広視野を認識できる複眼を有しているため、単純に平均化した照度の影響を受けるのではなく、各光源の点滅を独立してとらえることができると考えられる。そのため、照度としては連続的な状態であっても、昆虫としてはあたかも光源が急激に動くように非静的なものとして感じられ、またその状況が刻々と変化するため、昆虫にとって不快な環境が実現できるものと考えられる。
【0102】
なお、図18および図19においては、デューティが20%(明期幅20ms、暗期幅80ms)の条件で計算が行われたが、4つの光源で照射される場合には、デューティが25%以下であれば各光源が完全に同期するときは、強度が単一光源の4倍になり、全く別々に点灯するときは、各光源からの照射の時間的重なりが全くなくなるという大幅な変化を生じる。このため、このような構成は好適である。一方デューティが著しく小さい場合には、平均照度が同じでもLED光源に大電流を流す必要があり、LEDの電流最大定格を考慮すると使用するLED素子数が増大する。従って実用上の観点から、デューティは少なくとも1%以上が好ましく、10%以上がなお好ましい。
【0103】
以上のように、独立してパルス点灯するLED光源を圃場内に複数配置した照明装置を用いることによって、各光源の照明の合成によって複雑な照明パターンが得られるため、防蛾効果の「慣れ」を弱めることができ、持続性の高い防虫効果を有する植物の照明栽培方法が実現できる。また、点滅の同期を取るための信号線などが不要である。
【0104】
[実施の形態3]
実施の形態3は、「無処理区」、「非同期照明区」、および「同期照明区」で栽培したキクの生育状況及び夜蛾による被害の状況を調べた。以下においては、「複数の非同期光源」及び「同期光源」を用いたときのキクの育成状況を観察する実験の結果を示す。
【0105】
(実験1:無処理区と非同期照明区との対比)
本実験では、黄色輪ギク‘精の旗’を、無処理区及び非同期照明区で栽培し、それぞれのキクの生育状況及び夜蛾による被害の状況を対比した。無処理区及び非同期照明区のいずれにおいても、農家慣行にしたがって殺菌剤を使用するとともに、夜蛾類に影響の少ない殺虫剤も使用したが、夜蛾類に影響のある殺ダニ剤は使用しなかった。
【0106】
そして、非同期照明区では、畝面からの高さが1.8mの位置に、距離6mを確保してLED光源200を2列×3個で合計6個設置した。このLED光源は、図5に示したスペクトルを有する黄色蛍光LEDと、パルス回路とを内蔵するものである。かかるLED光源200にAC100Vを供給すると、パルス回路によって明期20ms、暗期80msのパルス光(周期100ms、周波数=1/周期=10Hz)を発する。6個の各LED光源200の点滅は同期せずにそれぞれが独立に点滅する非同期点滅とした。LED光源200の点灯時において、非同期照明区における畝面からの高さが1mの位置の放射照度は最小でも1.27mW・m-2であり、最大36.7mW・m-2であった。上記のLED光源を用いて2010年7月1日〜10月8日の期間、毎日17〜7時まで終夜非同期照明区を照明した。一方、無処理区には照明しなかった。
【0107】
このようにして非同期照明区及び無処理区において、輪ギク‘精の旗’を栽培した。非同期照明区及び無処理区のいずれにおいても、輪ギク‘精の旗’の蕾径、草丈及び開花時期は実質的にほとんど同一であった。このようにして栽培された輪ギク‘精の旗’に対し、夜蛾類幼虫による被害株率、寄生茎率、虫数(ハスモンヨトウ、オオタバコガ、その他鱗翅目害虫およびカスミカメ類)、フェロモントラップ誘引虫数(オオタバコガおよびハスモンヨトウ)、殺虫剤の散布履歴を調査した。
【0108】
上記の被害茎率及び寄生茎率は、36株の被害茎数及び寄生茎数を7〜14日毎に調べることにより算出した。また、誘引虫数は、ファネルトラップ及び性フェロモンルアーを供試して7〜14日毎に調査した。なお、これらの調査のときに確認された幼虫および卵は除去しないようにした。被害茎率の日数変化を図20に示す。
【0109】
図20は、非同期照明区及び無処理区で栽培されたキクの被害茎率(%)の変化を示すグラフである。図20に示されるように、8月19日までは非同期照明区及び無処理区で栽培されたキクの被害茎率(%)に大差がなかった。一方、8月19日以降に無処理区では被害茎率が上昇し、9月24日の最終調査日において、非同期照明区では4.6%の被害茎率であったのに対し、無処理区では18.8%の被害茎率であった。以上の結果から、非同期照明区でキクを栽培することにより、被害茎率を大幅に減少し得ることが明らかとなった。
【0110】
(実験2:無処理区と同期照明区との対比)
実験1では、無処理区と非同期照明区とにおけるキクの栽培の被害茎率を対比したが、本実験では、無処理区と同期照明区とにおけるキクの栽培の被害茎率を対比した。すなわち、本実験では、圃場および各LED光源を同期して照明したことが異なる他は、実験1と同様の方法によって輪ギク‘精の波’を栽培した。本実験では、各LED光源として、外部同期信号に同期して駆動するように、上記の非同期照明区で用いたLED光源に外部同期信号端子を接続して改造したものを用いた。このようにして栽培したキクに対し、実験1と同様の方法によってキクの被害茎率を算出した。その結果を図21に示す。
【0111】
図21は、同期照明区及び無処理区で栽培されたキクの被害茎率(%)の変化を示すグラフである。図21に示されるように、9月16日の最終調査日において、同期照明区では9.5%程度の被害茎率であったのに対し、無処理区では40.9%の被害茎率であった。以上の結果から、同期照明区でキクを栽培することにより、被害茎率があまり変化せず、被害茎率を大幅に減少し得ることが明らかとなった。
【0112】
<まとめ>
実験1および実験2の結果から、非同期照明区および同期照明区でキクを栽培することにより、隣接する無処理区でキクを栽培する場合に比して、キクの被害茎率が約1/4に低減されることが明らかとなった。
【0113】
(実験3:無処理区と非同期照明区との対比)
本実験では、圃場・キクの品種を変更したことが異なる他は、実験1と同様の方法によって無処理区及び非同期照明区でキクを栽培し、それぞれのキクの生育状況及び夜蛾による被害の状況を対比した。すなわち、本実験では、キクとして白色小ギク‘白馬’を用いて無処理区及び非同期照明区におけるキクの生育状況及び夜蛾による被害の状況を対比した。
【0114】
上記の非同期照明区では、畝面からの高さが1.8mの位置に、距離6mないし3mを確保してLED光源200を3列×3個で合計9個設置した。9個の各LED光源200の点滅は同期していないため、それぞれが独立に点滅する非同期点滅とした。LED光源200の点灯時において、非同期照明区における畝面からの高さが1mの位置の放射照度は最小でも1.79mW・m-2であり、最大35.4mW・m-2であった。
【0115】
上記のLED光源を用いて2010年7月21日〜12月20日の期間、毎日17〜7時まで終夜非同期照明区を照明した。一方、無処理区には照明しなかった。このようにして非同期照明区及び無処理区において、小ギク‘白馬’を栽培したが、非同期照明区及び無処理区のいずれにおいても、小ギク‘白馬’の蕾径、草丈及び開花時期は実質的にほとんど同一であった。
【0116】
上記のようにして栽培した小ギク‘白馬’に対し、夜蛾類幼虫による被害茎率、虫数(ハスモンヨトウ、オオタバコガ)を調査した。被害茎率は、60株の被害茎数を7〜14日毎に調べることにより算出した。被害茎率の日数変化を図22に示す。
【0117】
図22は、非同期照明区及び無処理区で栽培されたキクの被害茎率(%)の変化を示すグラフである。図22に示されるように、9月22日以降に無処理区では被害茎率が上昇しており、10月27日の最終調査日において、非同期照明区では1.7%の被害茎率であったのに対し、無処理区では18.3%の被害茎率であった。以上の結果から、非同期照明区でキクを栽培することにより、被害茎率を大幅に減少し得ることが明らかとなった。なお、被害は主にオオタバコガによるものであった。
【0118】
[実施の形態4]
実施の形態4では、圃場における光源の点滅が圃場外に漏れたときにも周辺住民が不快に感じないようにすることを検討した。具体的には、人間が点滅を認識できない程度の高速で光源を点滅させたときの防虫効果を評価した。
【0119】
光源の点滅が明期幅=20ms、暗期幅=80ms、周期100ms、周波数10Hzであると、人間が点滅を認識できる臨界領域の周波数であるため、人によっては不快に感じる可能性がある。一方、トーキー時代の映画のフレーム周波数は18Hzであり、現在の映画のフレーム周波数は24Hzであり、テレビのフレーム周波数は25Hzであり(PAL、SECAM方式)または30Hz(NTSC方式)である。また、1フレームを2つのフィールドで構成するインターレース走査におけるフィールド周波数はそれぞれ50Hz、60Hzである。このように光源の周波数を上げるほど、人間が光源の点滅を認識しにくくなり不快感が低減される。一方、夜蛾類が1.2〜20mW/m2という光強度が小さい光の点滅を認識するかどうかは今までほとんど知られていなかった。
【0120】
そこで、上述の(夜蛾類の照明に対する視覚特性の解明)で説明した実験に対し、光源の周波数を25Hzおよび50Hzとした場合の追加実験を行った。
【0121】
図23〜図26は、ハスモンヨトウ(オス)に特定の強度およびパルスパターンの光を照射したときの網膜信号の波形を示すグラフである。図23は、光強度が1.2mW/m2であり、パルスパターンの明期8msで、暗期32ms(周波数25Hz)の光源を用いたときのERG信号波形を示すグラフである。図24は、光強度が1.2mW/m2であり、パルスパターンの明期が4msで、暗期が16ms(周波数50Hz)の光源を用いたときのERG信号波形を示すグラフである。図25は、光強度が20mW/m2であり、パルスパターンの明期8msで、暗期32ms(周波数25Hz)の光源を用いたときのERG信号波形を示すグラフである。図26は、光強度が20mW/m2であり、パルスパターンの明期が4msで、暗期が16ms(周波数50Hz)の光源を用いたときのERG信号波形を示すグラフである。
【0122】
図23および図25に示されるグラフでは、パルス光に対する光追従性およびアンダーシュート時の遅延特性が見られ、パルス光に対するERG信号の遅延時間はほぼ20msである。これに対し、図24および図26では、光強度が1.2mW/m2および20mW/m2で明期4ms・暗期16msの発光パターンにおいて、パルス光に対する光追従性が減少している。これは、明期4ms・暗期16msの発光パターンの1周期(20ms)が、網膜信号の遅延時間(約20ms)とほぼ等しいことに起因して、連続光に近い光として視認していることによるものと考えられる。
【0123】
以上の結果から、50Hz(明期4ms・暗期16ms)は光の点滅による防虫効果が得られる上限に近い周波数と考えられる。なお、60Hzであってもほぼ同様の結果が得られる。一方、50Hzを大きく超えた周波数であると、ハスモンヨトウ・オオタバコガは光をほぼ連続光として認識するため、通常の連続光と同様の防虫効果に留まることが予想される。
【0124】
なお、上記のハスモンヨトウ(オス)の結果であるが、実験個体数を5頭としてもほぼ同様の結果であり、またハスモンヨトウ(メス)について実験個体数が5頭の場合でも同様の結果を得ている。また、ハスモンヨトウに限らず、オオタバコガについても同様の結果を得ている。
【0125】
[実施の形態5]
実施の形態5では、実施の形態1・実験6の飼育虫の系統を変え、サンプル数を増やして再現実験を行なった。すなわち、夜蛾としてオオタバコガ(オス)およびオオタバコガ(メス)18頭〜20頭の個体を用いて、アクトグラフによる飛翔活性測定のデータ数を増やして5日間のデータを積算した。図27は、オオタバコガ(オス)の飛翔による平均遮断回数を示すグラフであり、図28は、オオタバコガ(メス)の飛翔による平均遮断回数を示すグラフである。図27および図28の縦軸は飛翔による平均遮断回数であり、横軸は実験条件(明期幅:暗期幅)である。
【0126】
実験条件は、放射照度が20mW/m2、無処理(無点灯)、明期幅が20ms、暗期幅が0ms(連続点灯)、40ms、80ms、160ms、400ms(それぞれ周波数16.7Hz、10Hz、5.56Hz、2.38Hz)というパルス条件の下で、飛翔による平均遮断回数を測定した。図27および図28の下部にはそれぞれの結果の明期幅、暗期幅、および放射照度を記している。図27および図28中のエラーバーは標準偏差(SE=Standard Error)を示す。
【0127】
各パルス条件のいずれの暗期幅の場合においても、無照明下及び連続点灯の場合よりも飛翔活性が低下していることがわかった。例えば暗期幅が400msの場合は、平均照度が連続点灯の4.7%(=20ms/(20ms+400ms))に過ぎないにもかかわらず、連続点灯の場合よりも飛翔活性が低下しており、連続点灯に比べて飛翔活性抑制を強めることができることが明らかとなった。
【0128】
また、この実験による蛾の慣れの特性を分析するため、5日間にわたる暗期飛翔活性の変化を調べた。その結果を図29に示す。図29は、連続5日間におけるオオタバコガ(オス)20頭の平均遮断回数の変化を示すグラフであり、縦軸は、平均遮断回数を示し、横軸は、日数(D1〜D5)を示している。図29に示される結果から、連続光の条件では、4日目〜5日目で平均遮断回数が増加しているのに対し、各パルス条件下では平均遮断回数が一定の数値内に抑制されていることが明らかである。
【0129】
この知見より、光の点滅による防虫システムにおいては、たとえば明期20ms、暗期幅80ms、周波数10Hzの条件で、蛾の慣れが少なく良好な特性が得られることがわかった。また、明期幅20ms、暗期幅400msに相当する周波数約2.5Hzでも点滅による防虫効果があることがわかった。
【0130】
この傾向を外挿することにより、暗期幅2000ms程度でも連続照明と同等の効果が推定される。また、暗期幅に応じてデューティ一定となるように明期幅を広げることにより、例えば周波数0.5Hzであっても防虫効果が得られると予想される。
【0131】
以上のERG信号及びアクトグラフの実験の結果を踏まえると、防虫効果を備える周波数は、0.5Hz以上60Hz以下の周波数の範囲が好適と考えられる。このような周波数では、連続点灯と同じ時間平均照度で、連続点灯よりも高い防虫効果を得ることができると考えられる。
【0132】
[実施の形態6]
圃場が市街地に近いなど、圃場の照明を周辺住民が見る可能性のある場合には、防虫効果と共に光の点滅の周辺住民への影響を考慮する必要がある。実施の形態6は、光源の点滅による周辺住民への不快感を低減し、かつ防虫効果を発現し得る光源の光強度変化(波形)に関する。光源の点滅が単純な明期(光量1)と暗期(光量0)とを繰り返すパルス波形であると、明るさの変化が大きいため、特に低周波であると、明暗の変化が明確に認められ、人の視覚への刺激が大きくなる。
【0133】
そこで、このような光源の点滅による刺激を低減するために図30〜図35に示される波形の光強度変化の光源を用いることがより好ましい。図30〜図35は、人の視覚に対する刺激が抑えられる光源の光強度変化(波形)を示すグラフであり、縦軸は相対光強度Lであり、横軸は時間tである。以下においては、光源の光強度変化(波形)を順に説明する。
【0134】
(波形の例1)
図30に示される波形は、1周期(時間Tw)における明期(時間TL)のピーク光量を1としたときに、暗期としての働きを備える期間である相対的暗期(時間TD)の光量が明期に比べて小さく、0を超える値(例えば0.1)の光強度変化パターンである。
【0135】
図30に示される光強度変化パターンも「点滅」と言えるが、相対的暗期において光強度がゼロでないものを含む点を明確にするため「光強度変化」と呼ぶこととする。図30に示される光強度変化パターンにおいて、相対的暗期は明期に比べて光量が低下する期間として明瞭に定義することができる。
【0136】
このように暗期の光量を0を超える値とすることにより、明期と暗期との光量差が小さくなるため、人間に対する刺激を低減することができる。周期Tw、明期幅TL、暗期幅TDとして、たとえばそれぞれ1000ms、200ms、800msとするか、またはそれぞれ500ms、100ms、400msと点灯間隔を長くすることにより、人間が光強度変化に追従できるようになり、人間に対する点滅の不快感を低減することができる。
【0137】
(波形の例2)
図31に示される波形は、1周期(時間Tw)における明期(時間TL)のピーク光量を1としたときに、相対的暗期(時間TD)における光量が徐々に減少するように光強度変化パターンを設定する。このような波形は、例えばLED電球505内において、直列に配された発光ダイオード列に対し、コンデンサを並列に配することによって実現することができる。
【0138】
相対的暗期TDは、明期の光強度の0.5以下になる期間として定義することができるが、波形によっては相対的暗期の定義を変えても差し支えない。このような波形は、暗期において光量が徐々に減衰するため、人間に対する点滅の刺激を低減することができる周期TW、明期幅TL、暗期幅TDとして、たとえばそれぞれ1000ms、300ms(ただし光量1の期間は200ms)、700msとするか、またはそれぞれ500ms、150ms、350msとすることにより、人間が光強度変化に追従できるようになり、点滅による不快感を低減することができる。
【0139】
一方、暗期の終わりにおける光強度を0に近づけることにより、暗期から明期に切り替わるときの光強度との差が大きくなるため、良好な防蛾効果を得ることができると考えられる。なお、図31に示される波形のみに限られるものではなく、たとえば立ち上がり波形をコンデンサの影響を受けて徐々に変化するようにしてもよい。
【0140】
(波形の例3)
図32に示される波形は、1周期(時間TW)における明期(時間TL)のピーク光量を1としたときに、相対的暗期(図32中の時間TDを意味する)においてさらに周期TDWの副パルス(暗期中明期(時間TDL)、暗期中暗期(時間TDD))を繰り返すように光強度変化パターンを設定する。
【0141】
具体的には、たとえば1周期(TW=400ms)が、TL=88ms、TDW=40ms、TDL=8ms、TDD=32msで構成されている(TDDは8回、TDLは7回)。このように2.5Hzのパルスに加え、相対的暗期に25Hzのパルスを重畳したものとすることにより、人間には暗期(TD)における明るさが連続的に感じられ、相対的暗期が明期の約1/5の明るさの2.5Hzのパルスとして視認されるため、点滅による不快感を低減することができる。
【0142】
一方、夜蛾類は、相対的暗期(TD)の中のパルス光(時間TDL)を分離して点滅したものとして感じるため、相対的暗期(TD)により虫の活動を抑制することができる。上記では、1周期Twが400msのときの場合を例示して説明したが、これのみに限られるものではなく、1周期が500msまたは1000msであっても差し支えない。
【0143】
(波形の例4)
図33に示される波形は、1周期(時間TW)における明期(時間TL)のピーク光量を1としたときに、相対的暗期(図33中の時間TDを意味する)においてさらに周期TDWであって、ピーク光量が0.5の副パルス(暗期中明期(時間TDL)、暗期中暗期(時間TDD))を繰り返すように光強度変化パターンを設定する。
【0144】
具体的には、たとえば1周期(TW=400ms)が、TL=90ms、TDW=20ms、TDL=10ms、TDD=10msで構成されている(TDDは16回、TDLは15回)。このように2.5Hzのパルスに加え、相対的暗期に50Hzのパルスを重畳したものとすることにより、人間には暗期(TD)における明るさが連続的に感じられ、相対的暗期が明期の約1/5の明るさの2.5Hzのパルスとして視認されるため、点滅による不快感を低減することができる。
【0145】
一方、夜蛾類は、相対的暗期(TD)の中のパルス光(時間TDL)を分離して点滅したものとして感じるため、このような波形により相対的暗期(TD)においても虫の活動を抑制することができる。上記では、1周期Twが400msのときの場合を例示して説明したが、これのみに限られるものではなく、1周期が500msまたは1000msであっても差し支えない。また、暗期中明期(時間TDL)、暗期中暗期(時間TDD)をそれぞれ60Hzの周期の1/2である8.3msとしてもよいし、5ms(100Hz)、4.2msなどとしてもよい。また、供給されるACの電源周波数を用いて暗期中明期(時間TDL)および暗期中暗期(時間TDD)を設定してもよい。
【0146】
(波形の例5)
図34に示される波形は、波形の例2の波形における明期TLに10msの明期中明期および明期中暗期を重畳させるとともに、暗期TDに10msの暗期中明期および暗期中暗期を重畳させたものである。このように2.5Hzのパルスに加え、明期中明期および明期中暗期あるいは暗期中明期および暗期中暗期からなる副パルスを重畳したものとすることにより、人間には副パルスが感じられにくく、明期(TL)における明るさおよび暗期(TD)における明るさが連続的に感じられるため、点滅による不快感を低減することができる。一方、夜蛾類は、明期(TL)および暗期(TD)中の副パルスを分離して点滅したものとして感じるため、これらの副パルスにより虫の活動を抑制することができる。
【0147】
(波形の例6)
図35に示される波形は、人間にとって刺激の少ないサイン波形における明期TLに10msの明期中明期および明期中暗期を重畳させるとともに、暗期TDに10msの暗期中明期および暗期中暗期を重畳させたものである。このように明期中明期および明期中暗期あるいは暗期中明期および暗期中暗期からなる副パルスを重畳させることにより、人間には副パルスが感じられにくく、明期(TL)における明るさおよび暗期(TD)における明るさが連続的に感じられるため、点滅による不快感を低減することができる。一方、夜蛾類は、明期(TL)および相対的暗期(TD)の中の副パルスを分離して点滅したものとして感じるため、これらの副パルスにより虫の活動を抑制することができる。
【0148】
(まとめ)
上記の波形の例3〜6においては、1つの光源が全体として主パルスと副パルスからなる波形を有するものとしたが、1つの光源に低周波パルスLED列(例えば明期幅200、暗期幅800ms)と高周波パルスLED列(例えば明期幅8ms、暗期幅32ms)とを内蔵して、その両者の合成光を照射してもよい。高周波パルスの周波数は低周波パルスの周波数の4倍以上であることが好ましい。
【0149】
また、低周波パルス光源(明期幅200ms、暗期幅800ms)と高周波パルス光源(例えば明期幅8ms、暗期幅32ms)とを例えば3mの距離に隣接して設置し、両者が照射する領域を重ねるようにしてもよい。その場合、低周波パルス光源と高周波パルス光源とは、縦方向・横方向とも互い違いに並べることが好ましい。高周波パルスの周波数は低周波パルスの周波数の4倍以上であることが好ましい。
【0150】
なお、光源の光強度変化パターン(波形)は、上記の波形の例1〜6のもののみに限られるものではなく、上述の(1)相対的暗期の光量をゼロにしないこと(2)相対的暗期における光強度を一定にしないこと、(3)相対的暗期・相対的明期あるいはその両方において副パルスを挿入するという思想を適宜組合せたバリエーションを用いてもよい。
【0151】
特に副パルスを用いる場合、副パルスの周波数は主パルスの周波数の4倍以上であることが好ましい。これにより主パルスの相対的暗期内に複数の副パルスの明期を挿入できることができるからである。また、副パルスの周波数は、18Hz以上であることが好ましく、25Hz以上であることがより好ましく、さらに好ましくは60Hz以上である。周波数を上げるほど人間は点滅を感じにくくなり、点滅による不快感を抑止することができる。また、副パルスを用いることにより、相対的暗期の時間平均明るさと明期の明るさの比を小さくすることができ、人間に対する刺激を軽減することができる。
【0152】
また、主パルス周波数は、10Hz以下であることが好ましく、3Hz以下であることがより好ましく、さらに好ましくは1Hz以下である。このような主パルス周波数は、人間が点滅を明確に識別できるため、点滅の識別の境界領域における不快感を抑制することができる。
【0153】
上記の光源の波形は時間によって変えてもよい。すなわちたとえば人間に対する影響を特に考慮すべき薄暮期〜夜10時(地域における夜間の人の動きによって夜8時から12時頃)までは、人間に対する刺激の穏やかな波形(たとえば波形の例6)または連続点灯などを用いる。夜10時以降から薄明期までは、人間に対する刺激のやや強い波形(例えば明期幅20ms、暗期幅80msの矩形波あるいはその周波数を変えた矩形波)とすることが考えられる。
【0154】
また、短日植物の開花に影響を及ぼさない照明として、人間に対する刺激を考慮すべき時間のデューティーを大きくして、人間に対する刺激をあまり考慮しなくてもよい時間はデューティーを小さくして、全体としての夜間の平均照度が50mW/m2になるようにデューティーを調整してもよい。
【0155】
[実施の形態7]
実施の形態7は、光源の点滅が目的とする照明範囲外に漏れることによって周辺住民に与える影響を低減するための照明システムに関する。図36は、防虫効果を備える照明領域である圃場とその周辺領域の斜視図である。図36に示されるように、住宅513、車道512、および歩道511がこの順に隣接している。そして、歩道511に隣接して圃場501が設けられており、圃場501に柱502が立てられている。圃場501からの高さHが1.8mとなるように柱502の間に3列の電線503を張っている。電線503には6m間隔に5個のLED電球505を配置している。LED電球505は、図16に示すLED光源200と同じものを用いている。LED電球505は独立に周期的に点滅または光強度変化しており、その周期はたとえば明期幅20ms、暗期幅80msである。なお、上記光強度変化の周波数は、0.5Hz以上60Hz以下であることが好ましい。このような範囲で防虫効果が高いからである。
【0156】
歩道511に近い柱502の近傍のLED光源は、連続点灯させている連続点灯光源507である。これは、主として歩道511を歩く歩行者515に対し、光源の点滅の影響を低減するためであり、車道512を走る車や隣接する住宅513に対する光源の点滅の影響も低減することができる。
【0157】
歩行者515の目の位置をポイントAおよびポイントBの2点に固定して、そのポイントで観察される光強度の時間変化を測定した。ポイントAは、光源507と同じ高さ、水平距離L=3mであり、ポイントBは、光源507と同じ高さ、水平距離L=6mである。その結果を図37に示す。図37は、ポイントAおよびBで光源の光強度を観察したときの時間変化を示すグラフである。
【0158】
図37に示される結果から、連続点灯成分の光強度の割合が大きく、また非同期点滅成分の光強度は、細かい時間変動があるものの、人間の目の追従時間より短い変動については時間平均して観測されるため、全体としてほぼ連続点灯に近い光強度変化となっている。
【0159】
次に、LED電球505を同期点滅させた場合におけるポイントAおよびBで観察される光強度の時間変化を測定した。その結果を図38に示す。図38は、ポイントAおよびBで光源の光強度を観察したときの時間変化を示すグラフである。
【0160】
図38に示される結果から、ポイントAにおける光強度の変化率((最大値−最小値)/最大値)として定義)は26%であり、ポイントBにおける光強度の変化率は40%程度である。このようにポイントBの方が光強度の変動率は大きいが、圃場からの距離が遠いため光強度の変動量は低下する。LED電球を同期させる場合、連続点灯光源を併用することが好ましい。連続点灯光源を併用することにより、連続点灯光源を使わない場合の光強度変化に比して、光強度の変化幅を顕著に低減することができる。
【0161】
上記において、連続点灯光源507は、圃場に用いるLED電球505と同じ明るさものを連続点灯させたが、さらに明るい光源を使用してもよい。これにより光源の点滅が周辺住民に与える影響を低減することができる。
【0162】
また、連続点灯光源507は圃場に用いるLED電球505と同じ発光色である必要はなく、例えば電球色LED光源あるいは昼白色LED光源など、別種の色の光源を用いることもできる。このような電球色LEDあるいは昼白色LED光源を用いるときは、作物の生育領域の外側に電球を配置することが好ましい。なぜなら、電球色LED光源あるいは昼白色LED光源は、図5に例示されるスペクトルを備えるLED電球505に比して、青色成分の割合が多いため、虫の誘引効果をもたらす場合があるからである。
【0163】
また、図36に示すように、連続点灯光源507の近くにトラップ520を設け、トラップ520内に入った虫が出られないようにして殺虫することがより好ましい。
【0164】
連続点灯光源507は、上述のトラップを用いるなどの目的がない場合は、圃場外へ向かう横方向の光の割合が大きくなる放射光分布を有することが好ましく、LED電球505の明期における横方向光度と同程度以上であることが好ましい。このような連続点灯光源507は、柱502に設置することのみに限定されず、人に近い歩道511の真横や住宅513の前に近い位置に設置することが好ましい。
【0165】
また、連続点灯光源507は、人間が連続点灯と認識できる程度に高い周波数、例えば100Hz以上で点滅してもよい。
【0166】
LED電球505は、ピーク波長が500nm〜650nm(緑色、黄緑色、黄色、橙色、赤色)の範囲であることが好ましく、550nm〜600nmの範囲であることがより好ましい。また、LED電球は、0.5Hz以上60Hz以下の周波数で点滅することが好ましい。
【0167】
図37においては、10Hzの周波数の光源を用いたときの光強度の変化を示しているが、この光源の周波数を20Hzに変えると、横軸の時間スケールを1/2として読み替えることができる。このように光源の周波数を上げると、図37に示す光強度の変動は人間がより認識しにくくなり、ほぼ連続光として感じられるためより好ましい。
【0168】
[実施の形態8]
実施の形態8は、光源の点滅が圃場外に漏れることによって周辺住民へ与える不快感を低減する照明システムである。図39は、防虫効果を備える照明領域である圃場とその周辺領域を示す斜視図である。図39に示されるように、歩道511に隣接して圃場501が設けられており、圃場に柱502が立てられている。柱502の間に電線503を張っており、電線503には等間隔にLED電球505(LED光源200と同じもの)を配置している。LED電球505は独立に周期的に点滅または光強度変化しており、その周期はたとえば明期幅20ms、暗期幅80msである。
【0169】
歩道511に近い柱502には人感センサ518が設置されている。人感センサ518に、歩行者515又は自転車516が近づくと、その動作を検知して、すべてのLED電球505あるいは所定の範囲のLED電球505を消灯する。人感センサ518が動作を検知しなくなると、検知センサが再び無人になったと判断して、LED電球505の点滅を再開する。
【0170】
なお、人感センサ518は、歩道を歩く歩行者515等を検知したときに、LED電球505を連続点灯させてもよい。これにより消灯の場合と同様に光源の点滅による周辺への影響をなくすことができる。また、人感センサ518は圃場501内の人間を検知してLED電球505を消灯あるいは連続点灯させてもよい。これにより圃場501内の人が作業しやすくなる。上記の人感センサ518は、柱502に設置することのみに限定されるものではなく、歩道511に近い位置に設置することが好ましい。
【0171】
人感センサ518は、赤外線式(例えば焦電型センサ)、超音波式などの市販のセンサを用いることができる。車道512を走る車517はヘッドライトを備えており、ヘッドライトは、車道やガードレールを圃場501内のLED電球505による照明よりはるかに明るく照らす。このため、必ずしも車の接近を検知してLED電球505を消灯させる必要があるとは言えないが、車の走行時の安全性を向上させるために、人感センサ518が車517を検知して、車517の接近時にLED電球505を消灯させることが好ましい。
【0172】
[実施の形態9]
実施の形態9は、大規模農場において植物を栽培するときの防虫用照明システムである。図40は、大規模農場において植物を栽培するときの防虫用照明システムを示す模式的な斜視図である。図40に示される防虫用照明システムでは、綿(コットン)の無農薬・減農薬栽培を想定しているが、このような作物のみに限られるものではない。
【0173】
図40に示されるように、高さ2〜10m(例えば6m)の柱301の上部に、1灯または2灯以上のLED電球302を設置する。各LED電球302は、同期させることなく独立して例えば明期幅200ms、暗期幅800msの点滅による照明を行う。各LED電球302が照射する領域303には互いに重なりあう照射重なり領域304がある。LED電球302は、照射の重なりも考慮して圃場内の領域303を均一に照射するように考慮される。明期における最低照度が2mW/m2(約1ルクス)、時間平均最低照度は0.4mW/m2(約0.2ルクス)となるように設計される。これにより照射重なり領域304においては「非同期」の照明を行うこととなる。
【0174】
照射領域の柱301の配置間隔Wは、50〜250mであることが好ましく、たとえば120mとすることができる。また、図40中の間隔Dは、20〜150mであることが好ましく、たとえば30mとすることができる。1つの柱の前後に2灯のLED電球302を設けることにより、照射範囲がやや細長くなっている。さらに、1つの柱に4方向を均等に照らすように4灯のLED電球302を設置して間隔Dを広げてもよい。このように比較的高い柱を用いて照明を行うことにより、柱の数を減らすことができる。また、圃場内に照明用の電線を張らなくてもよいため、大型農機具を用いて圃場で作業するときにも作業の妨げにならない。
【0175】
なお、上述の実施の形態において、LED電球を光源として用いた場合のみを説明しているが、光源の種類は特に限定されるものではなく、例えばナトリウムランプその他の光源を用いてもよい。また、光源を連続点灯させつつ光源からの光を反射させるミラーを回転させて照射領域を断続的に照明してもよい。このような回転光源による断続照明は、点滅により劣化する光源を用いる場合に好適である。
【0176】
なお、上述の実施の形態の多くにおいては、短日植物において開花遅延させることなく防虫効果を有する照明栽培管理法について説明されたが、本発明は短日植物の照明栽培管理法に限定されるものではなく、防虫効果が求められる照明全般に適用できる。
【0177】
なお、街灯や従来用いられている連続発光する防蛾灯は、稲の開花遅延などの、栽培領域の周囲の環境への思わぬ悪影響を生じる場合があることが報告されている。これに対し上述の実施の形態に示した同期および非同期光源を用いた照明栽培方法は、防虫のために必要な平均照度を低くすることが可能なため、単に省エネルギーなだけでなく、栽培領域周辺の生物・生態系や、他の農作物などへの夜間照明による意図せぬ影響を防ぐことができる。特に非同期光源を用いた照明は、遠方から見たときにパルス発光によるちらつきが平均化されて連続光のように観察されるため、外部の生態系への影響はより少ない。
【0178】
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0179】
60 キク、61 成長点、100,200,540 LED光源、110 照明領域、111,222 基板、112 配線パターン、113 ワイヤ、115,215 LED素子、116 LEDチップ、117 封止樹脂、118 蛍光体、123 駆動回路、124 同期信号発生部、130 夜蛾類成虫、213 回路、213A 整流回路、213B パルス発生回路、213C LED駆動回路、220 拡散板、224 放熱フィン、225 ソケット、301,502 柱、302 LED電球、303,304 領域、501 圃場、503 電線、505 LED電球、507 光源、510 円筒形の容器、511 歩道、512 車道、513 住宅、515 歩行者、516 自転車、517 車、518 人感センサ、520 トラップ、530 センサー、540 光源、550 パソコン。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物の照明栽培方法であって、
前記照明は、出射光が緑色から赤色の領域に発光ピーク波長を有する複数の光源を用いて行い、
前記複数の光源の各光源は、所定の明期幅と、前記明期幅より時間平均明るさが小さい暗期幅とを1周期とするパターンで同期して発光強度が変化するものであり、
前記パターンは、下記式(1)で示されるデューティが50%以下であり、
デューティ(%)=明期幅/(明期幅+暗期幅)×100 (1)
前記複数の光源により照明される領域の少なくとも一部は、前記複数の光源からの照明のパターンの合成により、同期して照明されることにより防虫効果を備える、植物の照明栽培方法。
【請求項2】
植物の照明栽培方法であって、
前記照明は、出射光が緑色から赤色の領域に発光ピーク波長を有する複数の光源を用いて行い、
前記複数の光源の各光源は、所定の明期幅と、前記明期幅より時間平均明るさが小さい暗期幅とを1周期とするパターンで独立して発光強度が変化するものであり、
前記パターンは、下記式(1)で示されるデューティが50%以下であり、
デューティ(%)=明期幅/(明期幅+暗期幅)×100 (1)
前記複数の光源により照明される領域の少なくとも一部は、前記複数の光源からの照明のパターンの合成により、時間的に一定でないパターンで照明されることにより防虫効果を備える、植物の照明栽培方法。
【請求項3】
前記複数の光源間における前記1周期の偏差は1×10-5以上20%以下である、請求項2に記載の植物の照明栽培方法。
【請求項4】
前記暗期幅が16ms以上5000ms以下である、請求項1から3のいずれか1項に記載の植物の照明栽培方法。
【請求項5】
前記明期幅が4ms以上1000ms以下である、請求項1から4のいずれか1項に記載の植物の照明栽培方法。
【請求項6】
前記複数の光源の各光源からの出射光が、黄色に発光ピーク波長を有する、請求項1から5のいずれか1項に記載の植物の照明栽培方法。
【請求項7】
前記デューティが25%以下である、請求項1から6のいずれか1項に記載の植物の照明栽培方法。
【請求項8】
前記照明栽培される植物は、請求項1から7のいずれか1項に記載の植物の照明栽培方法によっても開花遅延が実用上生じない短日植物である、請求項1から7のいずれか1項に記載の植物の照明栽培方法。
【請求項9】
前記植物の成長点における前記明期幅内における放射照度が5mW/m2以上50mW/m2以下である、請求項8に記載の植物の照明栽培方法。
【請求項10】
キクの照明栽培方法であって、
前記照明は、出射光が黄色の領域に発光ピーク波長を有する複数の光源を用いて行い、
前記複数の光源の各光源は、所定の明期幅と、前記明期幅より時間平均明るさが小さい暗期幅とを1周期とするパターンで同期して又は独立して発光強度が変化するものであり、
前記パターンは、下記式(1)で示されるデューティが50%以下であり、
デューティ(%)=明期幅/(明期幅+暗期幅)×100 (1)
前記キクの成長点における前記明期幅内における放射照度が5mW/m2以上50mW/m2以下であることにより、開花遅延が実用上生じず、
前記複数の光源により照明される領域の少なくとも一部は、前記複数の光源からの照明のパターンの合成により、同期して又は独立して照明されることにより防蛾効果を備える、キクの照明栽培方法。
【請求項11】
複数の光源からなる照明装置であって、
前記複数の光源の各光源は、出射光が緑色から赤色の領域に発光ピーク波長を有し、
前記各光源は、所定の明期幅と、前記明期幅より時間平均明るさが小さい暗期幅とを1周期とするパターンで同期して発光強度が変化するものであり、
前記パターンは、下記式(1)で示されるデューティが50%以下であり、
デューティ(%)=明期幅/(明期幅+暗期幅)×100 (1)
前記照明装置に照明される領域の少なくとも一部は、前記複数の光源からの照明のパターンの合成により、同期して照明されることにより防虫効果を備える、防虫用照明装置。
【請求項12】
前記各光源は、外部から供給される同期信号に同期して点滅し、
前記外部から供給される同期信号は、有線、無線、光信号又は電源線に重畳のいずれかの同期信号伝達手段によって伝達される、請求項11に記載の防虫用照明装置。
【請求項13】
複数の光源からなる照明装置であって、
前記複数の光源の各光源は、出射光が緑色から赤色の領域に発光ピーク波長を有し、
前記複数の光源は、パルス発生回路及び発光素子を備え、
前記各光源のパルス発生回路は、独立して所定の明期幅と前記明期幅より時間平均明るさが小さい暗期幅を1周期とするパターンを生成し、
前記発光素子は前記パルス発生回路が生成するパターンにより発光強度が変化するものであり、
前記パターンは、下記式(1)で示されるデューティが50%以下であり、
デューティ(%)=明期幅/(明期幅+暗期幅)×100 (1)
前記照明装置により照明される領域の少なくとも一部は、前記複数の光源からの照明のパターンの合成により、時間的に一定でないパターンで照明されることにより防虫効果を備える、防虫用照明装置。
【請求項14】
前記複数の光源の1周期の偏差は1×10-5以上20%以下である、請求項13に記載の防虫用照明装置。
【請求項15】
前記暗期幅が16ms以上5000ms以下である、請求項11から14のいずれか1項に記載の防虫用照明装置。
【請求項16】
前記明期幅が4ms以上1000ms以下である、請求項11から15のいずれか1項に記載の防虫用照明装置。
【請求項17】
前記複数の光源の各光源からの出射光が、黄色の領域に発光ピーク波長を有する、請求項11から16のいずれか1項に記載の防虫用照明装置。
【請求項18】
前記デューティが25%以下である、請求項11から17のいずれか1項に記載の防虫用照明装置。
【請求項19】
前記照明装置は短日植物の栽培用である、請求項11から18のいずれか1項に記載の防虫用照明装置。
【請求項20】
前記植物の成長点における前記明期幅内における放射照度が5mW/m2以上50mW/m2以下である、請求項19に記載の防虫用照明装置。
【請求項21】
複数の第1の光源及び1または2以上の第2の光源を用いる照明システムであって、
前記複数の第1の光源は、出射光が緑色から赤色の領域に発光ピーク波長を有し、防虫効果を備える周波数で光強度が変化することにより第1の領域を照射し、
前記1または2以上の第2の光源は、人間が連続点灯と認識できる状態で点灯して前記第1の領域に隣接し人間が存在することのある領域を照射することにより、前記第1の領域における防虫効果を備える、防虫用照明システム。
【請求項22】
複数の光源及びセンサを備える照明システムであって、
前記複数の光源は、出射光が緑色から赤色の領域に発光ピーク波長を有し、防虫効果を備える周波数で点滅して第1の領域を照射し、
前記センサは、第1の領域または第1の領域に隣接する領域のいずれか一方もしくは両方における人間を検知して、前記複数の光源を消灯あるいは人間が連続点灯と認識できる状態で点灯させて、前記第1の領域における防虫効果を備える、防虫用照明システム。
【請求項23】
光量が変化する光源を備える防虫用照明装置であって、
前記光源は、出射光が緑色から赤色の領域に発光ピーク波長を有し、
前記光源の光量は、明期及び時間平均明るさが明期より相対的に暗い相対的暗期の繰り返しによる主パルスと、前記明期内または前記相対的暗期内における副パルスとによって周期的に変化し、
前記副パルスの周波数は、前記主パルスの周波数の4倍以上である、防虫用照明装置。
【請求項24】
前記主パルスの周波数は10Hz以下であり、前記副パルスの周波数は60Hz以下である、請求項23に記載の防虫用照明装置。
【請求項25】
第1の周波数で光量が周期的に変化する第1の光源と、第2の周波数で光量が周期的に変化する第2の光源を備える防虫用照明システムであって、
第1の光源及び第2の光源は、いずれも出射光が緑色から赤色の領域に発光ピーク波長を有し、
前記第1の周波数は前記第2の周波数の4倍以上であり、
前記第1の光源及び前記第2の光源の両方で照射される領域を備える、防虫用照明システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【公開番号】特開2011−212011(P2011−212011A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−55367(P2011−55367)
【出願日】平成23年3月14日(2011.3.14)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り ▲1▼平成21年9月26日 園芸学研究 第8巻 別冊2 −2009− 園芸学会平成21年度秋季大会研究発表およびシンポジウム講演要旨に発表(第334頁) ▲2▼平成21年9月26日 園芸学研究 第8巻 別冊2 −2009− 園芸学会平成21年度秋季大会研究発表およびシンポジウム講演要旨に発表(第554頁) ▲3▼平成21年10月22日 平成21年度 日本応用動物昆虫学会中国支部・日本昆虫学会中国支部合同例会の開催要綱に発表
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成21年度、農林水産省、新たな農林水産政策を推進する実用技術開発事業委託事業、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【出願人】(591079487)広島県 (101)
【出願人】(593165487)学校法人金沢工業大学 (202)
【出願人】(304021831)国立大学法人 千葉大学 (601)
【出願人】(592216384)兵庫県 (258)
【Fターム(参考)】