説明

植物の生育段階判定方法及びシステム

【課題】植物の生育段階を正確に判定可能とする。
【解決手段】立方体状の箱体の鉛直方向の一面のみを開口させた黒色の遮光枠2と、その遮光枠2内に、受光面を遮光枠2の開口に向けた姿勢で設置されるシリコンフォトダイオード3とからなる散乱光センサ1を、植物群落P内と植物群落P外との二箇所に、夫々受光面を北方向に向けた状態で1つずつ設置して、測定手段7で両散乱光センサ1,1の出力差ΔPを測定し、測定結果に基づいて植物の生育段階を判定するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物の生育段階を正確に判定するための生育段階判定方法と、当該判定方法を用いて植物に水や養液を供給するための給液制御方法及び給液制御システムとに関する。
【背景技術】
【0002】
トマト等の養液栽培では、定められた培養液処方に基づいて電気伝導度(EC)を指標として総肥料濃度を一定に調節するEC管理が従来からよく行われていた。しかし、このEC管理法では、栽培環境や生育ステージ等によって植物による肥料成分の吸収量が変動した場合に肥料成分の調節ができないため、変動を抑えるために植物の吸収量以上の肥料成分を供給し、余剰の培養液は廃棄されていた。よって、植物の贅沢吸収を助長し、過繁茂の発生による減収や品質低下に繋がる上、肥料流出による環境負荷の原因ともなっている。
【0003】
そこで、肥料成分を植物の吸収状況に応じて供給しようとする培養液管理法が新たに採用されている。この管理法では、必要な肥料成分を必要なタイミングで供給できるため、過剰な肥料成分の供給を抑制可能となり、品質の向上が期待できると共に、余剰な肥料流出を抑えて環境負荷も低減される。
但し、当該管理法の実施のためには、植物による肥料成分の吸収状況を正確に判定する必要がある。そこで、例えば特許文献1には、日射エネルギー量を電圧に変換してさらに周波数に変換し、該周波数を分周して、分周値が所定の積算値に達すると所定量の水又は養液を自動供給する養液供給制御方法が、特許文献2には、植物一個体当たりに供給する培養液の給液量を、所定の積算日射量当たりに供給する量で調節して、培養液の廃液率を調整する給液制御養液栽培方法が夫々開示されている。また、特許文献3には、種を蒔いてからの経過時間によって現在の植物の生長ステージを判断する一方、植物への日射量を積算し、各生長ステージにおいて、日射量の積算値がその生長ステージに予め設定された閾値に達すると、当該生長ステージに対して定められた量の施肥を行う施肥管理方法が開示されている。
【0004】
【特許文献1】特開平7−67485号公報
【特許文献2】特開2004−8067号公報
【特許文献3】特開2005−253377号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1,2の方法は、日射量の積算値を間接的に植物による肥料成分の吸収状況と擬制して養液管理を行うものであるため、実際の植物の生育段階を正確に把握できるとは限らない。特に、植物群落では、太陽高度や繁茂状態によって受光する光量が異なるし、温室内では骨材の陰になったりする部分もあることで、センサの位置によるデータの変動は大きく、日射量の積算値と生育ステージ、さらには肥料成分の吸収状況とは必ずしもリンクしていない。これは特許文献3の方法においても同様で、特にここでは、生育ステージを考慮してはいるものの、生育に伴う吸収状況の増加を栽培者が設定した閾値に依存しているため、閾値の設定を誤るとやはり肥料成分に過不足が生じ、目標とする生育が得られない可能性があった。
【0006】
そこで、本発明は、植物の生育段階を正確に判定可能となる生育段階判定方法と、その生育段階判定方法を用いて肥料成分を植物の生育段階に応じて適切に給液できる給液制御方法及び給液制御システムとを提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、植物の生育段階判定方法であって、受光面の前方側を除いて周囲を遮光した散乱光センサを、植物群落内と植物群落外とに、夫々受光面を北方向に向けた状態で少なくとも1つずつ設置し、植物群落内外での散乱光センサの出力差に基づいて植物の生育段階を判定することを特徴とするものである。
請求項2に記載の発明は、請求項1の目的に加えて、植物の肥料成分の吸収状況の推定精度の向上を図るために、散乱光センサの出力差の積算値を求めて、その積算値に基づいて生育段階を判定することを特徴とするものである。
上記目的を達成するために、請求項3に記載の発明は、植物への給液制御方法であって、受光面の前方側を除いて周囲を遮光した散乱光センサを、植物群落内と植物群落外とに、夫々受光面を北方向に向けた状態で少なくとも1つずつ設置して、植物群落内外での散乱光センサの出力差を測定し、得られる測定結果に基づいて植物群落への水又は養液の供給を行うことを特徴とするものである。
請求項4に記載の発明は、請求項3の目的に加えて、植物の肥料成分の吸収状況の推定精度の向上を図るために、散乱光センサの出力差を積算し、その積算値が所定値に達すると植物群落への水又は養液の供給を行うことを特徴とするものである。
上記目的を達成するために、請求項5に記載の発明は、植物への給液制御システムであって、受光面の前方側を除いて周囲が遮光され、植物群落内と植物群落外とに夫々受光面を北方向に向けた状態で少なくとも1つずつ設置される散乱光センサと、植物群落内外での散乱光センサの出力差を測定する測定手段と、その測定手段により得られる測定結果に基づいて植物群落への水又は養液の供給を行う給液手段とを備えることを特徴とするものである。
請求項6に記載の発明は、請求項5の目的に加えて、植物の肥料成分の吸収状況の推定精度の向上を図るために、測定手段は、散乱光センサの出力差を積算し、給液手段は、出力差の積算値が所定値に達すると植物群落への水又は養液の供給を行うことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の生育段階判定方法によれば、天候に基づく日射量と植物群落の繁茂程度との両要因を考慮した受光環境をリアルタイムでモニタリングすることができ、植物群落の受光環境から生育段階、さらには肥料成分の吸収状況を正確に判定可能となる。
そして、本発明の給液制御方法及び給液制御システムによれば、当該生育段階判定方法に基づく構成であるため、植物の実際の肥料成分の吸収状況に応じた過不足のない適切な給液制御が可能となり、収量と品質の向上が期待できるのは勿論、余剰肥料の流出が抑制されて環境負荷も低減可能となる。特に散乱光センサは簡単な構成であるので、採用に伴うコストアップは少なく、システムも低コストで構築可能となる。
一方、各方法及びシステムにおいて散乱光センサの出力差の積算値を採用すれば、植物群落の受光環境を適正に評価でき、肥料成分の吸収状況の判定精度の向上に繋がる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の生育段階判定方法に用いる散乱光センサの説明図、図2はその散乱光センサを用いた給液制御システムの説明図である。ここでの散乱光センサ1は、鉛直方向の一面のみを開口させた立方体状の黒色の箱体である遮光枠2と、その遮光枠2内に収容されたシリコンフォトダイオード3とからなり、シリコンフォトダイオード3は、遮光枠2における開口2aに相対する鉛直方向の対向面2bの中央に、受光面を開口2aに向けた姿勢で設置されている。すなわち、受光面の前方側を除いて周囲が遮光された状態となっている。4はリード線である。
【0010】
この散乱光センサ1を2個用いて、図2に示すように、一方を養液栽培用の温室5内で植物群落Pの上方(P)に、他方を植物群落P内で、図示しない光反射防止用の黒色シートで覆った栽培ベッド6上(P)に、夫々開口2aを北向きにして設置する。これにより、太陽の直達光の入光を防ぎ、温室4の骨材等の影響を受けることなく植物群落Pの内外で散乱光量を測定することができる。なお、栽培ベッド6には、給液手段となる図示しない給液タンク及び給液ポンプから養液が供給可能となっている。
【0011】
また、散乱光センサ1,1を測定手段7に接続し、両散乱光センサ1,1による出力電圧差(mV)を測定して散乱光量の光量差(ΔP)を得るようにしている。この測定手段7としては、各散乱光センサ1の(−)出力同士を接続し、(+)出力をデータロガー等に直接続したり、或いは減算器を用いたりすることで構成できる。こうして得られたΔPは、温室5内の日射量と生育に伴う繁茂程度(葉面積等)を総合的に反映した受光量の指標となる。すなわち、植物群落Pの繁茂程度が等しい場合には日射量が大きいほど、また、日射量が等しい場合には植物群落Pの繁茂程度が大きいほど大きい値を示す。
【0012】
さらにここでの測定手段7は、積算機能付きメータリレー8を備えており、ΔPの出力値を当該メータリレー8に入力して、その積算値ΣΔPを連続的に求めるようにしている。このΣΔPが予め設定した給液設定値に達すると、メータリレー8のリレー接点がONし、給液ポンプの駆動回路に設けたスイッチ9がONして栽培ベッド6への養液の供給が開始され、所定時間経過するとリレー接点がOFFしてスイッチ9もOFFし、養液の供給が停止される。この給液開始時点でΣΔPはリセットされ、ΔPの積算が改めて行われる。この給液動作を給液時間帯内に繰り返し行う。
【0013】
ここで、積算値ΣΔPを給液のタイミングの指標にしたのは、日射量は天候により変動するため、ΔPにおけるある時点からの積算値であるΣΔPを求めることで、植物群落の受光環境を適正に評価するためである。特にこのΣΔPは、草丈、茎葉面積被覆率、葉面積指数(LAI)等の生育指標や養水分の吸収状況を表す蒸発散量とも密接な関係があることから、ΣΔPを指標とすることにより、肥料成分の吸収状況の判定精度の向上に繋がる。
従って、植物群落Pが図1右側のように成長すると、ΔPが大きくなってΣΔPの給液設定値への到達頻度が多くなり、給液回数が増加することになる。
【0014】
このように、上記形態の生育段階判定方法によれば、受光面の前方側を除いて周囲を遮光した散乱光センサ1を、植物群落P内と植物群落P外とに、夫々受光面を北方向に向けた状態で1つずつ設置し、植物群落P内外での散乱光センサ1,1の出力差ΔPに基づいて植物の生育段階を判定するようにしたことで、天候に基づく温室5内の日射量と植物群落Pの繁茂程度との両要因を考慮した受光環境をリアルタイムでモニタリングすることができ、植物群落Pの受光環境から生育段階、さらには肥料成分の吸収状況を正確に判定可能となる。
従って、この生育段階判定方法に基づく給液制御方法及び給液制御システムによれば、植物の実際の肥料成分の吸収状況に応じた過不足のない適切な自動給液制御が可能となり、収量と品質の向上が期待できるのは勿論、余剰肥料の流出が抑制されて環境負荷も低減可能となる。特に散乱光センサは簡単な構成であるので、採用に伴うコストアップは少なく、システムが低コストで構築可能となる。
【実施例】
【0015】
(1)散乱光センサの検証
シリコンフォトダイオード(浜松フォトニクス製S1133、可視光域用、負荷抵抗560Ω、以下「SPD」と略記する。)を、厚さ2mmの黒色アクリル板で製作した四辺が100mmの遮光枠内に設置し、2個の散乱光センサを得た。この散乱光センサの一方を、光反射防止用の黒色シートで覆った栽培ベッドの上面と、栽培ベッド上120cmの高さとの二箇所に夫々受光面を北向きにして設置し、両センサの(−)出力同士を接続し、(+)出力を夫々データロガーに接続して、出力電圧差(mV)を測定してΔPを得る。但し、ここでは植物が繁茂した状態を想定して、下方の散乱光センサのみを黒色シート(遮光率94%)で覆い、温室内で夫々ΔPを連続測定する。
一方、比較の対象として、遮光枠を用いず受光面を上に向けた光合成有効光量子束密度センサ(以下「PPFDセンサ」という。)を同様に上下二箇所に設置してΔPの連続測定を行った。夫々のΔPの変化を図3に示す。なお、同図において、上は温室外日射量のグラフで、中がPPFDセンサのΔPの変化を、下が散乱光センサのΔPの変化を夫々示している。
【0016】
ここで明らかなように、PPFDセンサのΔPは、温室骨材等の影響を受けて日中の変動が大きくなるのに対し、散乱光センサのΔPは、温室外の日射量と略同様の変化を示して、温室骨材等の影響を殆ど受けていないことがわかる。すなわち、散乱光センサによるΔPと温室外の日射量との間には、極めて密接な関係が見られる。
【0017】
(2)トマトの生育段階判定
先に作成した2個の散乱光センサを、光反射防止用の黒色シートで覆った栽培ベッドの上面と、栽培ベッド上120cmの高さとに夫々受光面を北向きにして設置した。以下、栽培ベッド上面の散乱光センサを「下方センサ」、ベッド上方の散乱光センサを「上方センサ」と称し、夫々「Pl」「Pu」と示す。
この上方センサ及び下方センサの出力を減算器(エム・システム技研製KSBS)に接続し、データロガーによって電圧差(ΔP:mV)を測定して、両データから7時〜17時の積算値であるΣPu、ΣPl、ΣΔP、そしてΣΔP/ΣPuを算出した。
【0018】
一方、ΔPの測定と同時に、ストレス培養液の補給量等から株当たり蒸発散量を測定した(蒸発散量=ストレス培養液タンクへの水補給量+基本培養液の給液量)
また、草丈、草高(栽培ベッドからのトマト群落の高さ)等の生育調査を行うと共に、トマト群落をデジタルカメラにより斜め上方から定期的に撮影し、全画像面積に対する茎葉面積の百分率を被覆率(%)として算出した。
さらに、プラントキャノピーアナライザー(PCA)を用いて栽培ベッド面と群落上とをセンサで測定することにより、葉面積指数(LAI)を非破壊的に評価した。
なお、トマト栽培は、無培地循環栽培システム(2条植え)を用いて行った(品種:桃太郎ヨーク、播種:2006年7月31日、定植8月22日、摘心:3段花房上2葉(10月6日)、基本培養液(N,P,K,微量要素、EC2.5dS/m)、ストレス培養液(Ca,Mg,EC4.0dS/m)、遮光:定植〜11月7日まで晴天日に適宜外部遮光(遮光率50%))。
【0019】
図4は、定植直後の8月26日及び第3花房開花期後の10月7日における温室外日射量、上下の散乱光センサの出力、ΔPの日変化を夫々示すグラフで、ここに示すように、日中の時間帯における上方センサの出力(Pu)は、常に下方センサの出力(Pl)に比べて大きい値で推移し、ΔPはPu及びPlと同様の変化パターンで推移していることがわかる。また、Pu,Pl共に温室外日射量と同様に晴天時に大きく、曇天時に小さい値を示すと共に、温室の遮光により減少している。なお、ΔPが10月7日で8月26日に比べて大きい値を示しているのは、時間帯にかかわらず10月7日でのPlが低下したことによる。
【0020】
一方、図5は、本試験の栽培期間(8月〜11月)における温室外積算日射量、上下の散乱光センサによるΣP及びΣΔPの推移を示すグラフで、ここに示すように、温室外の積算日射量は次第に減少する傾向となっている。これに対して上方センサのΣPuは、定植後減少傾向を示しているが、温室の遮光時間が少なくなった10月下旬以降はやや増加する傾向が見られる。また、下方センサのΣPlは定植後急激に減少しているが、3段花房開花期後の10月中旬以降は殆ど変化せず、一定の値を示している。
さらに、ΣΔPは、温室外の積算日射量と同様に晴天日に大きく、曇雨天日に小さい値を示しているが、生育ステージの進行に伴って増加する傾向となっている。
ここで、温室内の光量を一定とした場合のΣΔPを表すΣΔP/ΣPuは、図6に示すように、定植期から3段花房開花期後の10月下旬まで増加したが、それ以降は収穫期(11月下旬)まで略一定の値で推移している。これに併記した草高、茎葉面積被覆率、LAIを見ると、ΣΔP/ΣPuが同様の変化パターンであることがわかる。
なお、図7は、トマトの葉面積が急激に増加する定植〜3段花房開花期後におけるΣΔPと蒸発散量との関係を示すグラフであるが、ここから、ΣΔPが蒸発散量と密接な関係を有していることも明らかである。
【0021】
このように、ΣΔPは日射量と植物群落の生育ステージに応じて変動するが、ΣΔP/ΣPuが生育ステージに応じた安定的な増加パターンを示し、而もその増加パターンが草高や葉面積といった植物群落の繁茂程度と密接にリンクしていることは明らかである。従って、ΔP及びΣΔPは、温室内の日射量と植物群落の生育ステージとを総合的に反映した受光環境を表す指標として有効と考えられる。
【0022】
(3)給液制御システムへの適用
ΔP及びΣΔPに基づく給液制御システムを構築し、トマトの栽培過程における給液状況をシミュレートする。(2)の試験と同様の散乱光センサを2個用いて温室内の上下に設置し、SPDを直接続してΔPを測定した。ΔP出力は積算機能付きメータリレー(鶴賀電機製419A−02)に入力し、ΣΔPを算出すると共に、ΣΔPが給液設定値(パネルメータ:750p)に達すると給液される設定として、一日当たりの給液回数を調査した。なお、トマトの栽培は(2)と同じ条件である。この結果を図8に示す。
【0023】
図8において、蒸発散量は天候に応じて変化しながら定植後増加したが、3段花房開花期後の10月中旬をピークにやや減少傾向を示している。一方、一日当たりの給液回数はΣΔPに応じて増減している。また、図9は、定植直後の8月23日から植物群落の繁茂程度が最大となる3段花房開花期後の10月21日における蒸発散量と給液回数との関係を示すグラフで、ここでも蒸発散量と給液回数とが密接にリンクしていることがわかる。
このように、ΔPを指標とした給液制御システムにより、葉面積が急激に増加する3段花房開花期後において蒸発散量に応じた給液制御が可能なことが明らかとなった。
【0024】
なお、上記形態や実施例では、散乱光センサの遮光枠は立方体状となっているが、受光面の前方側を除いて遮光可能な形態であれば、直方体状や円筒状、円錐状等の他の形態を採用して差し支えない。勿論遮光枠の色や材質も適宜変更可能で、さらにはシリコンフォトダイオードに限らず、先述したPPFDセンサに遮光枠を組み合わせて散乱光センサを形成することもできる。
また、散乱光センサは植物群落の内外に夫々一個ずつ設けているが、複数個ずつ設置してもよい。この場合、植物群落内外で夫々の出力値の平均値を採用したり、最大値と最小値を除いた中間値を採用したりすることが考えられる。また、同じ植物群落内外のエリアであっても高さや位置を変えて設置し、時間帯や季節、生育段階等に応じて判定に使用する散乱光センサを変えるようにしてもよい。
【0025】
一方、上記形態や実施例では、散乱光センサの出力差ΔPの積算値で給液制御を行っているが、積算値に限らず、例えばΔPが所定の閾値を超えたタイミングで給液を行うといった他の給液制御も可能であるし、時間帯や季節、生育段階等に応じて指標を変えて給液制御を行うことも可能である。
その他、温室内での養液栽培に限らず、例えば温室外で水又は養液を供給する場合に本発明を採用してもよい。勿論トマト以外の他の植物でも本発明は採用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】散乱光センサの説明図で、左が正面、右が右側面(一部は断面)を夫々示す。
【図2】給液制御システムの説明図である。
【図3】温室外日射量に対するPPFDセンサ及び散乱光センサのΔPの変化を示すグラフである。
【図4】トマトの栽培過程における温室外日射量、上下の散乱光センサの出力、ΔPの日変化を示すグラフである。
【図5】トマトの栽培過程における温室外積算日射量、上下の散乱光センサによるΣP及びΣΔPの推移を示すグラフである。
【図6】トマトの栽培過程におけるΣΔP/ΣPu、草高、茎葉面積被覆率、LAIの変化を示すグラフである。
【図7】トマトの栽培過程におけるΣΔPと蒸発散量との関係を示すグラフである。
【図8】トマトの栽培過程における蒸発散量と給液回数の変化を示すグラフである。
【図9】トマトの栽培過程における蒸発散量と給液回数との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
【0027】
1・・散乱光センサ、2・・遮光枠、3・・シリコンフォトダイオード、5・・温室、6・・栽培ベッド、7・・測定手段、8・・メータリレー、9・・スイッチ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
受光面の前方側を除いて周囲を遮光した散乱光センサを、植物群落内と植物群落外とに、夫々前記受光面を北方向に向けた状態で少なくとも1つずつ設置し、前記植物群落内外での前記散乱光センサの出力差に基づいて植物の生育段階を判定することを特徴とする植物の生育段階判定方法。
【請求項2】
散乱光センサの出力差の積算値を求めて、その積算値に基づいて生育段階を判定することを特徴とする請求項1に記載の植物の生育段階判定方法。
【請求項3】
受光面の前方側を除いて周囲を遮光した散乱光センサを、植物群落内と植物群落外とに、夫々前記受光面を北方向に向けた状態で少なくとも1つずつ設置して、前記植物群落内外での前記散乱光センサの出力差を測定し、得られる測定結果に基づいて前記植物群落への水又は養液の供給を行うことを特徴とする植物への給液制御方法。
【請求項4】
散乱光センサの出力差を積算し、その積算値が所定値に達すると植物群落への水又は養液の供給を行うことを特徴とする請求項3に記載の植物への給液制御方法。
【請求項5】
受光面の前方側を除いて周囲が遮光され、植物群落内と植物群落外とに夫々前記受光面を北方向に向けた状態で少なくとも1つずつ設置される散乱光センサと、前記植物群落内外での前記散乱光センサの出力差を測定する測定手段と、その測定手段により得られる測定結果に基づいて前記植物群落への水又は養液の供給を行う給液手段とを備えることを特徴とする植物への給液制御システム。
【請求項6】
測定手段は、散乱光センサの出力差を積算し、給液手段は、前記出力差の積算値が所定値に達すると植物群落への水又は養液の供給を行うことを特徴とする請求項5に記載の植物への給液制御システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−237161(P2008−237161A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−85289(P2007−85289)
【出願日】平成19年3月28日(2007.3.28)
【出願人】(590002389)静岡県 (173)
【Fターム(参考)】