説明

植物の生長を促進する方法

【課題】植物の生長促進方法を提供すること。
【解決手段】下記式(1)で示される化合物からなる群から選ばれる少なくとも一の化合物を、植物に処理すること。
式(1)


〔式中、X1は、メチル基、ジフルオロメチル基またはエチル基を表し、X2は、メトキシ基またはメチルアミノ基を表し、X3は、フェニル基、2−メチルフェニル基または2,5−ジメチルフェニル基を表す。〕

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物の生長を促進する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
化学物質の中には、植物に処理することによって植物の生長を促進する効果を示すものが知られている。(例えば、非特許文献1参照)
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】" Biosynthesis, biotechnological production and applications of 5-aminolevulinic acid" K. Sasaki et al., (2002) Applied Microbial Biotechnology 58: pp. 23-29.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、植物の生長を促進する優れた方法等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、鋭意検討した結果、特定の化合物を植物に処理することによってその植物の生長が促進されることを見出し、本発明に到達した。
【0006】
即ち、本発明は次の通りである。
[1] 下記式(1)で示される化合物からなる群から選ばれる少なくとも一の化合物(以下、「本化合物」と記すことがある。)を、植物に処理することを特徴とする植物の生長促進方法。
式(1)

〔式中、X1はメチル基、ジフルオロメチル基、またはエチル基を表し、X2はメトキシ基、またはメチルアミノ基を表し、X3はフェニル基、2−メチルフェニル基、または2,5−ジメチルフェニル基を表す。〕
[2] 植物が、非生物的ストレスに暴露された又は暴露されるであろう植物である[1]記載の植物の生長促進方法。
[3] 本化合物が、下記化合物群Aから選ばれる化合物である[1]又は[2]記載の方法。
<化合物群A>
(1)N−メチル−2−[2-(2,5−ジメチルフェノキシ)メチル]フェニル−2−メトキシアセトアミド
(2)N−メチル−2−[2-(2,5−ジメチルフェノキシ)メチル]フェニル−(2R)−2−メトキシアセトアミド
[4] 植物への処理が、散布処理、土壌灌注処理、種子処理又は水耕処理である[1]〜[3]記載の方法。
[5] 植物への処理が、種子処理である[1]〜[3]記載の方法。
[6] 種子処理が、種子100キログラムあたり本化合物を10グラム以上50グラム以下を処理する種子処理である[5]記載の方法。
[7] 植物がイネ、トウモロコシ、セイヨウアブラナ、コムギ、バジル、ダイズ、ソルガム又はインゲンマメである[1]〜[6]記載の方法。
[8] 植物が遺伝子組換え植物である[1]〜[7]記載の方法。
[9] 非生物的ストレスが高温ストレスである[2]〜[8]記載の方法。
[10] 非生物的ストレスが低温ストレスである[2]〜[8]記載の方法。
(以下、[1]〜[10]の方法をまとめて「本発明方法」と記すことがある。)
[11] 植物の成長を促進するための、本化合物の使用。
【発明の効果】
【0007】
本発明方法によって、優れた植物生長促進方法を提供することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明において、植物の生長を促進する(以下、「生長促進」と記すことがある。)とは、苗立ち率向上、健全葉数増加、草丈増、植物体重量増加、葉面積増加、種子又は果実の数又は重量の増加、着花数又は着果数の増加をいう。
【0009】
生長促進は、以下にあげるパラメーターを用いて定量化が可能である。
(1)苗立ち率
植物の種子を、例えば土壌中、ろ紙上、寒天培地上、砂上などに播種し、一定期間栽培する。栽培の全ての期間中あるいは一部の期間中に温度ストレスを負荷した後、生き残った幼植物の割合を調査する。
(2)健全葉数(又は、率)
各植物について健全な葉の枚数を数え、総健全葉数を調査する。あるいは植物の全ての葉数に対する健全葉数の割合を調査する。
(3)草丈
各植物について地上部分の茎の根元から先端の枝葉までの長さを測定する。
(4)植物体重量
各植物の地上部を切り取り、重量を測定して、植物新鮮重量を求める、あるいは切り取ったサンプルを乾燥させた後に重量を測定して、植物乾燥重量を求める。
(5)葉面積
植物をデジタルカメラで撮影し、写真の緑色の部分の面積を画像解析ソフト例えばWin ROOF(三谷商事社製)で定量することにより、植物の葉面積を求める。
(6)葉色
植物の葉をサンプリングし、葉緑素計(例えばSPAD−502、コニカミノルタ製)を用いて葉緑素量を測定することにより、葉色を求める。また、植物をデジタルカメラで撮影し、写真の緑色の部分の面積を画像解析ソフト例えばWin ROOF(三谷商事社製)で色抽出を行い定量することにより、植物の葉の緑色部分の面積を求める。
(7)種子あるいは果実の数又は重量
植物を種子あるいは果実が結実あるいは登熟するまで栽培した後、植物当りの果実数を計測あるいは植物当りの総果実重量を測定する。また、種子が登熟するまで栽培した後、例えば穂数、登熟歩合、千粒重などの収量構成要素を調査する。
(8) 着花率・着果率・結実率・種子充填率
植物を着果するまで栽培した後、着花数と着果数を数え着果率%(着果数/着花数×100)を求める。種子登熟後に結実数と種子充填数を数え結実率(結実数/着花数×100)、種子充填率%(種子充填数/結実数×100)を求める。
【0010】
本発明方法において本化合物を植物に処理する場合、当該植物の全体であっても一部分(茎葉、芽、花、果実、穂、種子、球根、塊茎、根等)であっても良く、又当該植物の種々の生育ステージ(播種時前、播種時、播種後出芽前後などの発芽期、育苗時、苗移植時、挿し木又は挿し苗時、定植後の生育時などの栄養生長期、開花前、開花中、開花後、出穂直前又は出穂期などの生殖生長期、収穫予定前、成熟予定前、果実の着色開始期などの収穫期)であって良い。ここで球根とは、鱗茎、球茎、根茎、塊根、および担根体を意味する。また、苗としては、挿し木、種黍等を含むものとする。
【0011】
本発明方法において使用される本化合物は、
下記式(1)

で示される化合物からなる群から選ばれる少なくとも一の化合物である。
式(1)で示される化合物の態様としては、例えば以下の化合物が挙げられる。
【0012】
式(1)において、X1が、メチル基、ジフルオロメチル基、またはエチル基である化合物;
式(1)において、X1が、メチル基である化合物;
式(1)において、X2が、メトキシ基、またはメチルアミノ基である化合物;
式(1)において、X1が、メチル基であり、X2が、メトキシ基である化合物;
式(1)において、X1が、メチル基であり、X2が、メチルアミノ基である化合物;
式(1)において、X3が、フェニル基、2−メチルフェニル基、または2,5−ジメチルフェニル基である化合物;
式(1)において、X3が、フェニル基、または2,5−ジメチルフェニル基である化合物;
式(1)において、X1が、メチル基であり、X2が、メトキシ基であり、X3が2,5−ジメチルフェニル基である化合物;
式(1)において、X1が、メチル基であり、X2が、メチルアミノ基であり、X3が、フェニル基である化合物;
式(1)において、X1が、メチル基であり、X2が、メチルアミノ基であり、X3が、2,5−ジメチルフェニル基である化合物。
【0013】
次に、式(1)で示される化合物の具体例を示す。
式(1)で示される化合物において、X1,X2,X3は、〔表1〕に示される置換基の組み合わせのうちの一つである。
【0014】
【表1】

【0015】
式(1)で示される化合物には、不斉炭素原子に基づく光学異性体等の立体異性体、互変異性体等の異性体が存在することもあるが、本発明においては、任意の異性体を単独または任意の異性体比で含有して使用することができる。
式(1)で示される化合物には、溶媒和物(例えば、水和物等)の形態をとることもあるが、本発明においては、溶媒和物の形態で使用することができる。
式(1)で示される化合物には、結晶形態及び/または非晶形態の形態をとることもあるが、本発明においては、任意の形態で使用することができる。
式(1)で示される化合物は、国際公開第95/27693号パンフレットに記載された化合物である。これらの化合物は、例えば、当該パンフレットに記載された方法によって合成することができる。
【0016】
化合物(1)として、具体的には、(1a)および(1b)を挙げることができ、当該化合物は、処理された植物の生長を効果的に促進しうる点から好ましい。
【0017】
化合物(1a)は、式(1)で示される化合物のうち、X1がメチル基、X2がメチルアミノ基、X3が2,5−ジメチルフェニル基である N−メチル−2−[2-(2,5−ジメチルフェノキシ)メチル]フェニル−(2R)−2−メトキシアセトアミド(CAS登録番号394657-24-0)であり、下記式(1a)で表される。

【0018】
化合物(1b)は、式(1)で示される化合物のうち、X1がメチル基、X2がメチルアミノ基、X3が2,5−ジメチルフェニル基である化合物のラセミ体 N−メチル−2−[2-(2,5−ジメチルフェノキシ)メチル]フェニル−2−メトキシアセトアミド(CAS登録番号173662-97-0)であり、下記式(1b)で表される。

【0019】
本発明方法において本化合物を使用する場合、本化合物のみで使用してもよいが、後述するとおり種々の不活性成分を用いて製剤化して使用することができる。
【0020】
製剤化の際に用いられる固体担体としては、例えばカオリンクレー、アッタパルジャイトクレー、ベントナイト、モンモリロナイト、酸性白土、パイロフィライト、タルク、珪藻土、方解石等の鉱物、トウモロコシ穂軸粉、クルミ殻粉等の天然有機物、尿素等の合成有機物、炭酸カルシウム、硫酸アンモニウム等の塩類、合成含水酸化珪素等の合成無機物等からなる微粉末又は粒状物等が挙げられ、液体担体としては、例えばキシレン、アルキルベンゼン、メチルナフタレン等の芳香族炭化水素類、2−プロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、エチレングリコールモノエチルエーテル等のアルコール類、アセトン、シクロヘキサノン、イソホロン等のケトン類、ダイズ油、綿実油等の植物油、石油系脂肪族炭化水素類、エステル類、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル、及び水が挙げられる。
【0021】
界面活性剤としては、例えばアルキル硫酸エステル塩、アルキルアリールスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテルリン酸エステル塩、リグニンスルホン酸塩、ナフタレンスルホネートホルモアルデヒド重縮合物等の陰イオン界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、ポリオキシエチレンアルキルポリオキシプロピレンブロックコポリマー、ソルビタン脂肪酸エステル等の非イオン界面活性剤、及びアルキルトリメチルアンモニウム塩等の陽イオン界面活性剤が挙げられる。
【0022】
その他の製剤用補助剤としては、例えばポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン等の水溶性高分子、アラビアガム、アルギン酸及びその塩、CMC(カルボキシメチルセルロース)、ザンサンガム等の多糖類、アルミニウムマグネシウムシリケート、アルミナゾル等の無機物、防腐剤、着色剤、及びPAP(酸性リン酸イソプロピル)、BHT等の安定化剤が挙げられる。
【0023】
本発明方法において、本化合物を植物に処理する場合、本化合物の有効量を植物又はその栽培地に処理することにより行われる。植物又は植物の栽培地に処理する場合は、本化合物は1回もしくは複数回処理する。
本発明方法における処理方法としては、具体的には、例えば、茎葉散布等の植物の茎葉、花器又は穂への処理、植物を植えつける前または植えつけた後の土壌(栽培地)への処理、種子消毒・種子浸漬・種子コート等の種子への処理、苗への処理、球根への処理等が挙げられる。
【0024】
本発明方法における植物の茎葉、花器又は穂への処理としては、具体的には、例えば、茎葉散布、樹幹散布等の植物の表面に処理する方法が挙げられる。また、開花前、開花中、開花後を含む開花時期における花器あるいは植物全体に散布処理する方法が挙げられる。また、穀物等おいては出穂時期の穂あるいは植物全体に散布する方法が挙げられる。
【0025】
本発明方法における土壌処理方法としては、例えば、土壌への散布、土壌混和、土壌への薬液潅注(薬液潅水、土壌注入、薬液ドリップ)が挙げられ、処理する場所としては例えば、植穴、作条、植穴付近、作条付近、栽培地の全面、植物地際部、株間、樹幹下、主幹畦、培土、育苗箱、育苗トレイ、苗床等が挙げられ、処理時期としては播種前、播種時、播種直後、育苗期、定植前、定植時、及び定植後の生育期等が挙げられる。また、上記土壌処理において、本化合物を含有するペースト肥料等の固形肥料を土壌へ処理してもよい。また、本化合物を潅水液に混合してもよく、例えば、潅水設備(潅水チューブ、潅水パイプ、スプリンクラー等)への注入、条間湛水液への混入、水耕液へ混入等が挙げられる。また、あらかじめ潅水液と本化合物を混合し、例えば、上記潅水方法やそれ以外の散水、湛水等のしかるべき潅水方法を用いて処理することができる。
【0026】
本発明方法における種子への処理としては、対象とする植物の種子、球根等に本化合物を処理する方法であって、具体的には、例えば、本化合物の懸濁液を霧状にして種子表面もしくは球根表面に吹きつける吹きつけ処理、本化合物の水和剤、乳剤、またはフロアブル剤等に少量の水を加えるか、またはそのままで種子もしくは球根に塗付する塗沫処理、本化合物の溶液に一定時間種子を浸漬する浸漬処理、フィルムコート処理、ペレットコート処理が挙げられる。
【0027】
本発明方法における苗への処理としては、例えば、本化合物を水で適当な有効成分濃度に希釈調製した希釈液を苗全体に散布する散布処理、その希釈液に苗を浸漬する浸漬処理、粉剤に調製した本化合物を苗全体に付着させる塗布処理が挙げられる。また、苗を植えつける前または植えつけた後の土壌への処理としては、例えば、本化合物を水で適当な有効成分濃度に希釈調製した希釈液を、苗を植えつけた後に苗及び周辺土壌に散布する方法、粒剤または粒剤等の固形剤に調製した本化合物を、苗を植えつけた後周辺土壌に散布する方法が挙げられる。
また、本化合物は水耕栽培における水耕液に混合して用いてもよく、また組織培養における培地成分の1つとして用いてもよい。水耕栽培に使用する場合は、通常用いられる園試等の水耕栽培用の培地に培地中濃度として3ppm〜30ppmの範囲で溶解又は懸濁して用いることができる。また組織培養や細胞培養時に使用する場合は、通常用いられるMS培地等の植物組織培養用の培地に、培地中濃度として3ppm〜30ppmの範囲で溶解又は懸濁して用いることができる。この場合、定法に従い、炭素源としての糖類、各種植物ホルモン等を適宜加えることができる
本化合物を、植物または植物の生育場所に処理する場合、その処理量は、処理する植物の種類、製剤形態、処理時期、気象条件等によって変化させ得るが、10,000m2あたり有効成分量として、通常0.1〜1,000g、好ましくは100〜250gの範囲である。土壌に全面混和する場合は、その処理量は、10,000m2あたり有効成分量として、通常0.1〜1,000g、好ましくは100〜250gである。
乳剤、水和剤、フロアブル剤、マイクロカプセル剤等は、通常水で希釈して散布することにより処理する。この場合、有効成分の濃度は、通常0.01〜10,000ppm、好ましくは10〜100ppmの範囲である。粉剤、粒剤等は通常希釈することなくそのまま処理する。
種子への処理においては、種子100kgに対する本化合物の処理量としては、通常5〜1000g、好ましくは10〜50gの範囲であり、例えば、トウモロコシ種子1粒に対する本化合物の処理量としては、好ましくは25〜125μgの範囲である。
【0028】
本発明方法が適用可能な植物としては、下記の植物が挙げられる。
農作物:トウモロコシ、イネ、コムギ、オオムギ、ライムギ、エンバク、ソルガム、ワタ、ダイズ、ラッカセイ、ソバ、テンサイ、セイヨウアブラナ、ヒマワリ、サトウキビ、タバコ、ホップ等。
【0029】
野菜:ナス科野菜(ナス、トマト、ジャガイモ、トウガラシ、ピーマン等)、ウリ科野菜(キュウリ、カボチャ、ズッキーニ、スイカ、メロン、マクワウリ等)、アブラナ科野菜(ダイコン、カブ、セイヨウワサビ、コールラビ、ハクサイ、キャベツ、カラシナ、ブロッコリー、カリフラワー等)、キク科野菜(ゴボウ、シュンギク、アーティチョーク、レタス等)、ユリ科野菜(ネギ、タマネギ、ニンニク、アスパラガス等)、セリ科野菜(ニンジン、パセリ、セロリ、アメリカボウフウ等)、アカザ科野菜(ホウレンソウ、フダンソウ等)、シソ科野菜(シソ、ミント、バジル等)、マメ科作物(エンドウ、インゲンマメ、アズキ、ソラマメ、ヒヨコマメ等)、イチゴ、サツマイモ、ヤマノイモ、サトイモ、コンニャク、ショウガ、オクラ等。
【0030】
果樹:仁果類(リンゴ、ナシ、セイヨウナシ、カリン、マルメロ等)、核果類(モモ、スモモ、ネクタリン、ウメ、オウトウ、アンズ、プルーン等)、カンキツ類(ウンシュウミカン、オレンジ、レモン、ライム、グレープフルーツ等)、堅果類(クリ、クルミ、ハシバミ、アーモンド、ピスタチオ、カシューナッツ、マカダミアナッツ等)、液果類(ブルーベリー、クランベリー、ブラックベリー、ラズベリー等)、ブドウ、カキ、オリーブ、ビワ、バナナ、コーヒー、ナツメヤシ、ココヤシ、アブラヤシ等。
【0031】
果樹以外の樹木:チャ、クワ、花木類(サツキ、ツバキ、アジサイ、サザンカ、シキミ、サクラ、ユリノキ、サルスベリ、キンモクセイ等)、街路樹(トネリコ、カバノキ、ハナミズキ、ユーカリ、イチョウ、ライラック、カエデ、カシ、ポプラ、ハナズオウ、フウ、プラタナス、ケヤキ、クロベ、モミノキ、ツガ、ネズ、マツ、トウヒ、イチイ、ニレ、トチノキ等)、サンゴジュ、イヌマキ、スギ、ヒノキ、クロトン、マサキ、カナメモチ、等。
【0032】
芝生:シバ類(ノシバ、コウライシバ等)、バミューダグラス類(ギョウギシバ等)、ベントグラス類(コヌカグサ、ハイコヌカグサ、イトコヌカグサ等)、ブルーグラス類(ナガハグサ、オオスズメノカタビラ等)、フェスク類(オニウシノケグサ、イトウシノケグサ、ハイウシノケグサ等)、ライグラス類(ネズミムギ、 ホソムギ等)、カモガヤ、オオアワガエリ等。
その他:花卉類(バラ、カーネーション、キク、トルコギキョウ、カスミソウ、ガーベラ、マリーゴールド、サルビア、ペチュニア、バーベナ、チューリップ、アスター、リンドウ、ユリ、パンジー、シクラメン、ラン、スズラン、ラベンダー、ストック、ハボタン、プリムラ、ポインセチア、グラジオラス、カトレア、デージー、シンビジューム、ベゴニア等)、バイオ燃料植物(ヤトロファ、ベニバナ、アマナズナ類、スイッチグラス、ミスカンサス、クサヨシ、ダンチク、ケナフ、キャッサバ、ヤナギ等)、観葉植物等。
【0033】
本発明に適用可能な植物として、好ましくは、チャ、リンゴ、ナシ、ブドウ、オウトウ、モモ、ネクタリン、カキ、ウメ、スモモ、ダイズ、レタス、キャベツ、トマト、ナス、キュウリ、スイカ、メロン、インゲンマメ、エンドウ、アズキ、シバ、セイヨウアブラナ、イチゴ、アーモンド、トウモロコシ、ソルガム、ソラマメ、ハクサイ、ジャガイモ、ラッカセイ、イネ、コムギ、サトイモ、コンニャク、ヤマノイモ、ダイコン、カブ、パセリ、マクワウリ、オクラ、ショウガ、レモン、オレンジ、グレープフルーツ、ライム、ブルーベリー、クリ、ホップ、バジルが挙げられ、より好ましくはイネ、トウモロコシ、セイヨウアブラナ、コムギ、バジル、ダイズ、ソルガム、インゲンマメなどが挙げられる。
【0034】
上記「植物」とは、イソキサフルトール等の4−ヒドロキシフェニルピルビン酸ジオキシゲナーゼ阻害剤、イマゼタピル、チフェンスルフロンメチル等のアセト乳酸合成酵素(以後ALSと略する)阻害剤、グリホサート等の5−エノールピルビルシキミ酸−3−リン酸シンターゼ(以後EPSPSと略する)阻害剤、グルホシネート等のグルタミン合成酵素阻害剤、セトキシジム等のアセチルCoAカルボキシラーゼ阻害剤、フルミオキサジン等のプロトポルフィリノーゲンオキシダーゼ阻害剤、ジカンバ、2,4−D等のオーキシン系除草剤,ブロモキシニル等の除草剤に対する耐性が古典的な育種法、もしくは遺伝子組換え技術により付与された植物も含まれる。
【0035】
古典的な育種法により耐性を付与された「植物」の例として、イマゼタピル等のイミダゾリノン系ALS阻害型除草剤に耐性のセイヨウアブラナ、コムギ、ヒマワリ、イネがありClearfield(登録商標)の商品名で既に販売されている。同様に古典的な育種法によるチフェンスルフロンメチル等のスルホニルウレア系ALS阻害型除草剤に耐性のダイズがあり、STSダイズの商品名で既に販売されている。同様に古典的な育種法によりトリオンオキシム系、アリールオキシフェノキシプロピオン酸系除草剤等のアセチルCoAカルボキシラーゼ阻害剤に耐性が付与された植物の例としてSRコーン等がある。アセチルCoAカルボキシラーゼ阻害剤に耐性が付与された植物は、プロシーディングズ・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシーズ・オブ・ザ・ユナイテッド・ステーツ・オブ・アメリカ(Proc. Natl. Acad. Sci. USA)、1990年、87巻、p.7175−7179等に記載されている。
【0036】
また、遺伝子組換え技術により耐性を付与された「植物」の例としては、EPSPS阻害剤に耐性のEPSPS遺伝子を持ったグリホサート耐性のトウモロコシ、ダイズ、ワタ、セイヨウアブラナ、テンサイ品種があり、RoundupReady<登録商標>、Agrisure<登録商標>GT、Gly−Tol等の商品名で既に販売されている。同様に遺伝子組換え技術によるグルホシネート耐性のトウモロコシ、ダイズ、ワタ、セイヨウアブラナ品種があり、LibertyLink(登録商標)等の商品名で既に販売されている。同様に遺伝子組換え技術によるブロモキシニル耐性のワタはBXNの商品名で既に販売されている。同様にグリホサートおよびALS阻害剤の両方に耐性であるトウモロコシ、ダイズの品種があり、Optimum<登録商標>GAT<登録商標>の商品名が公開されている。また、遺伝子組換え技術によるイマザピル耐性のダイズ品種のカルティバンス(Cultivance<登録商標>)の商品名が公開されている。
また、アセチルCoAカルボキシラーゼ阻害剤に耐性の変異アセチルCoAカルボキシラーゼがWeed Science、53巻、728〜746頁(2005年)等に報告されており、こうした変異アセチルCoAカルボキシラーゼ遺伝子を遺伝子組換え技術により植物に導入するかもしくは抵抗性付与に関わる変異を作物アセチルCoAカルボキシラーゼに導入する事により、アセチルCoAカルボキシラーゼ阻害剤に耐性の植物を作出することができる。さらに、キメラプラスティ技術(Gura T. 1999.Repairing the
Genome’s Spelling Mistakes. Science 285:316−318.)に代表される塩基置換変異導入核酸を植物細胞内に導入して植物のアセチルCoAカルボキシラーゼ遺伝子やALS遺伝子に部位特異的アミノ酸置換変異を導入することにより、アセチルCoAカルボキシラーゼ阻害剤やALS阻害剤に耐性の植物を作出することができる。
また、シュードモナス・マルトフィリア(Pseudomonas maltophilia)より単離されたジカンバモノオキシゲナーゼ(dicamba monooxygenase)を含むジカンバの分解酵素をコードする遺伝子を導入し、ジカンバに耐性のダイズ等の作物を作出することができる(Behrens et al.2007. Dicamba Resistance: Enlarging and Preserving Biotechnology−Based Weed Management Strategies. Science 316:1185−1188)。
【0037】
アリールオキシアルカノエートジオキシゲナーゼ(aryloxyalkanoate dioxygenase)をコードする遺伝子を導入し、2,4−D、MCPA、ジクロプロップ、メコプロップのようなフェノキシ系除草剤、フルロキシピル、トリクロピルのようなピリジンオキシ酢酸系と、キザロホップ−P−エチル、ハロキシホップ−P−メチル、フルアジホップ−P−ブチル、ジクロホロップ、フェノキサプロップ−P−エチル、メタミホップ、シハロホップ−ブチル、クロジナホップ−プロパルギルのようなアリールオキシフェノキシプロピオン酸系除草剤の、両方の除草剤系統に対して耐性となる作物を作出することができ(WO2005/107437、WO2007/053482、WO2008/141154)、DHT作物と呼ばれている。
【0038】
さらに、HPPD阻害剤に対して抵抗性を示すHPPDをコードする遺伝子を導入し、HPPD阻害剤に耐性の植物を作出することができる(US2004/0058427)。HPPD阻害剤によりHPPDが阻害されても、別の代謝経路でHPPDの生成物であるホモゲンチジン酸を合成できるような遺伝子を導入し、結果としてHPPD阻害剤に対して耐性を示す植物を作出することができる(WO02/036787)。HPPDを過剰に発現させる遺伝子を導入し、HPPD阻害剤の存在下においても、植物の生育に影響が出ないまでの量のHPPDを生産させ、結果としてHPPD阻害剤に対して耐性を示す植物を作出することができる(WO96/38567)。前出のHPPDを過剰に発現させる遺伝子の導入に加え、さらに、HPPDの基質であるp−ヒドロキシフェニルピルビン酸の生成量を増加させるためにプレフェナレートデヒドロゲナーゼをコードする遺伝子を導入し、HPPD阻害剤に対して耐性を示す植物を作出できる(Rippert P et.al. 2004. Engineering plant shikimate pathway for production of tocotrienol and improving herbicide resistance. Plant Physiol. 134:92‐100)。
上記「植物」には、古典的な育種法によりセンチュウやアブラムシに対して耐性を付与した植物も含まれる。例として、アブラムシに耐性を付与するRAG1(Resistance Aphid Gene 1)遺伝子を導入したダイズが挙げられる。
【0039】
上記「植物」には、遺伝子組換え技術を用いて、例えば、バチルス属で知られている選択的毒素等を合成することが可能となった植物も含まれる。
【0040】
この様な遺伝子組換え植物で発現される毒素として、バチルス・セレウスやバチルス・ポピリエ由来の殺虫性タンパク;バチルス・チューリンゲンシス由来のCry1Ab、Cry1Ac、Cry1F、Cry1Fa2、Cry2Ab、Cry3A、Cry3Bb1またはCry9C等のδ−エンドトキシン、VIP1、VIP2、VIP3またはVIP3A等の殺虫タンパク;線虫由来の殺虫タンパク;さそり毒素、クモ毒素、ハチ毒素または昆虫特異的神経毒素等動物によって産生される毒素;糸状菌類毒素;植物レクチン;アグルチニン;トリプシン阻害剤、セリンプロテアーゼ阻害剤、パタチン、シスタチン、パパイン阻害剤等のプロテアーゼ阻害剤;リシン、トウモロコシ−RIP、アブリン、ルフィン、サポリン、ブリオジン等のリボゾーム不活性化タンパク(RIP);3−ヒドロキシステロイドオキシダーゼ、エクジステロイド−UDP−グルコシルトランスフェラーゼ、コレステロールオキシダーゼ等のステロイド代謝酵素;エクダイソン阻害剤;HMG−CoAリダクターゼ;ナトリウムチャネル、カルシウムチャネル阻害剤等のイオンチャネル阻害剤;幼若ホルモンエステラーゼ;利尿ホルモン受容体;スチルベンシンターゼ;ビベンジルシンターゼ;キチナーゼ;グルカナーゼ等が挙げられる。
【0041】
また、この様な遺伝子組換え植物で発現される毒素として、Cry1Ab、Cry1Ac、Cry1F、Cry1Fa2、Cry2Ab、Cry3A、Cry3Bb1、Cry9C、Cry34AbまたはCry35Ab等のδ−エンドトキシンタンパク、VIP1、VIP2、VIP3またはVIP3A等の殺虫タンパクのハイブリッド毒素、一部を欠損した毒素、修飾された毒素も含まれる。ハイブリッド毒素は組換え技術を用いて、これらタンパクの異なるドメインの新しい組み合わせによって作り出される。一部を欠損した毒素としては、アミノ酸配列の一部を欠損したCry1Abが知られている。修飾された毒素としては、天然型の毒素のアミノ酸の1つまたは複数が置換されている。
これら毒素の例、及びこれら毒素を合成することができる組換え植物は、EP−A−0374753、WO93/07278、WO95/34656、EP−A−0427529、EP−A−451878、WO03/052073等に記載されている。
【0042】
これらの組換え植物に含まれる毒素は、特に、甲虫目害虫、半翅目害虫、双翅目害虫、鱗翅目害虫、線虫類への耐性を植物へ付与する。
【0043】
また、1つもしくは複数の殺虫性の害虫抵抗性遺伝子を含み、1つまたは複数の毒素を発現する遺伝子組換え植物は既に知られており、いくつかのものは市販されている。これら遺伝子組換え植物の例として、YieldGard(登録商標)(Cry1Ab毒素を発現するトウモロコシ品種)、YieldGard Rootworm(登録商標)(Cry3Bb1毒素を発現するトウモロコシ品種)、YieldGard Plus(登録商標)(Cry1Ab毒素とCry3Bb1毒素とを発現するトウモロコシ品種)、Herculex I(登録商標)(Cry1Fa2毒素と、グルホシネートへの耐性を付与する為にホスフィノトリシン N−アセチルトランスフェラーゼ(PAT)とを発現するトウモロコシ品種)、NuCOTN33B(登録商標)(Cry1Ac毒素を発現するワタ品種)、Bollgard I(登録商標)(Cry1Ac毒素を発現するワタ品種)、Bollgard II(登録商標)(Cry1Ac毒素とCry2Ab毒素とを発現するワタ品種)、VIPCOT(登録商標)(VIP毒素を発現するワタ品種)、NewLeaf(登録商標)(Cry3A毒素を発現するジャガイモ品種)、NatureGard(登録商標)Agrisure(登録商標)GT Advantage(GA21 グリホサート耐性形質)、Agrisure(登録商標)CB Advantage(Bt11コーンボーラー(CB)形質)、Protecta(登録商標)等が挙げられる。
【0044】
上記「植物」とは、遺伝子組換え技術を用いて、選択的な作用を有する抗病原性物質を産生する能力を付与されたものも含まれる。
【0045】
抗病原性物質の例として、PRタンパク等が知られている(PRPs、EP−A−0392225)。このような抗病原性物質とそれを産生する遺伝子組換え植物は、EP−A−0392225、WO95/33818、EP−A−0353191等に記載されている。
【0046】
こうした遺伝子組換え植物で発現される抗病原性物質の例として、例えば、ナトリウムチャネル阻害剤、カルシウムチャネル阻害剤(ウイルスが産生するKP1、KP4、KP6毒素等が知られている。)等のイオンチャネル阻害剤;スチルベンシンターゼ;ビベンジルシンターゼ;キチナーゼ;グルカナーゼ;PRタンパク;ペプチド抗生物質、ヘテロ環を有する抗生物質、植物病害抵抗性に関与するタンパク因子(植物病害抵抗性遺伝子と呼ばれ、WO03/000906に記載されている。)等の微生物が産生する抗病原性物質等が挙げられる。このような抗病原性物質とそれを産生する遺伝子組換え植物は、EP−A−0392225、WO95/33818、EP−A−0353191等に記載されている。また、パパイアリングスポットウイルス(PRSV)の外被タンパク質遺伝子を導入した組換えパパイア品種があり、Rainbow Papaya(登録商標)の商品名で既に販売されている。
【0047】
上記「植物」とは、遺伝子組換え技術を用いて、油糧成分改質やアミノ酸含量増強形質等の有用形質を付与した植物も含まれる。例として、VISTIVE(登録商標)(リノレン含量を低減させた低リノレン大豆)又はhigh−lysine(high−oil)corn(リジン又はオイル含有量を増量したコーン)等が挙げられる。
【0048】
さらに、上記の古典的な除草剤耐性形質又は除草剤耐性遺伝子、殺虫性害虫抵抗性遺伝子、抗病原性物質産生遺伝子、油糧成分改質やアミノ酸含量増強形質等の有用形質について、これらを複数組み合わせたスタック品種も含まれる。
【0049】
また、本発明方法では、本化合物の処理される植物が、非生物的ストレスに暴露された又は暴露されるであろう植物であっても、当該処理された植物に優れた成長促進をもたらすことが可能である。ここで、「非生物的ストレス」とは、植物がストレス要因に暴露された場合に、その細胞の生理機能が低下を来たし、当該植物の生理状態が悪化して生育が阻害されるようなストレス、と定義される。そして、下記式で表される「ストレスの強さ」によって定量化することができ、その値としては、105〜200、好ましくは110〜180、より好ましくは120〜160を挙げることができる。
【0050】
式(I):「ストレスの強さ」=100×「非生物的ストレス要因に暴露されていない植物におけるいずれか一つの植物表現型」/「非生物的ストレス要因に暴露された植物における当該いずれか一つの植物表現型」
【0051】
非生物的ストレスとしては、高温ストレス又は低温ストレスである温度ストレス、塩ストレス、乾燥ストレス又は過湿ストレスである水分ストレス等の非生物的ストレスを挙げることができる。高温ストレスとは、植物の生育適温又は発芽適温よりも高い温度に暴露された場合に受けるストレスをいい、具体的には、植物が栽培されている環境における平均栽培温度が25℃以上、より厳しくは30℃以上、更に厳しくは35℃以上である条件を挙げることができる。 低温ストレスとは、植物の生育適温又は発芽適温よりも低い温度に暴露された場合に受けるストレスをいい、具体的には、植物が栽培されている環境における平均栽培温度が15℃以下、より厳しくは10℃以下、更により厳しくは5℃以下である条件を挙げることができる。 また、乾燥ストレスとは、植物は降雨量や灌水量の減少により土壌中の水分含量が減少し、吸水が阻害され植物の生育が阻害されるような水分環境に暴露された場合に受けるストレスをいい、具体的には、土壌の種類により値は異なることがあるが、植物が栽培されている土壌含水率が15重量%以下、より厳しくは10重量%以下、更に厳しくは、7.5重量%以下が水分ストレスのある条件、または、植物が栽培されている土壌のpF値が、2.3以上、厳しくは2.7以上、更に厳しくは3.0以上の条件を挙げることができる。過湿ストレスとは土壌中の水分含量が過剰になり植物の生育が阻害されるような水分環境に暴露された場合に受けるストレスをいい、具体的には、土壌の種類により値は異なることがあるが、植物が栽培されている土壌含水率が30重量%以上、厳しくは40重量%以上、更に厳しくは50重量%以上の、または、植物が栽培されている土壌のpF値が1.7以下、厳しくは1.0以下、更に厳しくは0.3以下である。 なお、土壌のpF値は、「土壌・植物栄養・環境事典」(大洋社、1994年、松坂ら)の61〜62頁の「pF値測定法」に記述されている原理に従い、測定することができる。 また、塩ストレスとは、植物が栽培されている土壌あるいは水耕液中の塩類の蓄積により浸透圧が上昇し植物の吸水が阻害される結果、生育が阻害されるような環境に暴露された場合に受けるストレスをいい、具体的には、土壌あるいは水耕液中の塩による浸透圧ポテンシャルが0.2Mpa(NaCl濃度では2,400ppm)以上、厳しくは0.25MPa以上、さらに厳しくは0.30MPaである条件である。土壌における浸透圧は、土壌を水で希釈して上澄み液の塩濃度を分析することによって、以下のラウールの式に基づいて求めることができる。
【0052】
ラウールの式 π(atm)=cRT
R=0.082(L・atm/mol・K)
T=絶対温度(K)
c=イオンモル濃度(mol/L)
1atm=0.1MPa
【実施例】
【0053】
以下、本発明を製剤例、種子処理例、及び試験例にてさらに詳しく説明するが、本発明は以下の例のみに限定されるものではない。なお、以下の例において、部は特にことわりの無い限り重量部を示す。
【0054】
製剤例1
化合物(1b)を3.75部、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエ−テル14部、ドデシルベンゼンスルホン酸カルシウム6部、及びキシレン76.25部をよく混合することにより、乳剤を得る。
【0055】
製剤例2
化合物(1b)を75部、プロピレングリコールを15部(ナカライテスク製)、Soprophor FLKを15部(ローディア日華製)、アンチフォームCエマルションを0.6部(ダウコーニング社製)、及びイオン交換水を120部の割合で混合後、当該スラリーを湿式粉砕し、湿式粉砕スラリーを得る。ケルザンS(ケルコ社製)0.3部、Veegum granules (R.T. Vanderbilt社製) 0.6部、プロキセルGXL(アーチケミカルズ製)0.6部をイオン交換水72.9部に添加混合し、増粘剤水溶液を得る。得られた湿式粉砕スラリー75.2部と増粘剤水溶液24.8部を加え混合し、フロアブル製剤を得る。
【0056】
製剤例3
化合物(1b)を15部、ソルビタントリオレエ−ト1.5部、及びポリビニルアルコ−ル2部を含む水溶液28.5部を混合し、湿式粉砕法で微粉砕した後、この中にキサンタンガム0.05部及びアルミニウムマグネシウムシリケ−ト0.1部を含む水溶液45部を加え、さらにプロピレングリコ−ル10部を加えて攪拌混合し、フロアブル製剤を得る。
【0057】
製剤例4
化合物(1b)を45部、プロピレングリコールを5部(ナカライテスク製)、Soprophor FLKを5部(ローディア日華製)、アンチフォームCエマルションを0.2部(ダウコーニング社製)、プロキセルGXLを0.3部(アーチケミカル製)、及びイオン交換水を49.5部の割合で混合し、原体スラリーを調製する。該スラリー100部に150部のガラスビーズ(Φ=1mm)を投入し、冷却水で冷却しながら、2時間粉砕する。粉砕後、ガラスビーズをろ過により除き、フロアブル製剤を得る。
【0058】
製剤例5
化合物(1b)を50.5部、NNカオリンクレーを38.5部(竹原化学工業製)、Morwet D425を10部、Morwer EFWを1.5部(アクゾノーベル社製)の割合で混合し、AIプレミックスを得る。当プレミックスをジェットミルで粉砕し、粉剤を得る。
【0059】
製剤例6
化合物(1b)を5部、合成含水酸化珪素1部、リグニンスルホン酸カルシウム2部、ベントナイト30部、及びカオリンクレー62部をよく粉砕混合し、水を加えてよく練り合せた後、造粒乾燥することにより、粒剤を得る。
【0060】
製剤例7
化合物(1b)を3部、カオリンクレー87部、及びタルク10部をよく粉砕混合することにより各粉剤を得る。
【0061】
製剤例8
化合物(1b)を22部、リグニンスルホン酸カルシウム3部、ラウリル硫酸ナトリウム2部、及び合成含水酸化珪素73部をよく粉砕混合することにより、水和剤を得る。
【0062】
種子処理例1
製剤例1に準じて作製した乳剤を、ソルガム乾燥種子10kgに対し、回転式種子処理機(シードドレッサー、Hans−Ulrich Hege GmbH製)を用いて100ml塗沫処理することにより、処理種子を得る。
【0063】
種子処理例2
製剤例2に準じて作製したフロアブル製剤を、セイヨウアブラナ乾燥種子10kgに対し、回転式種子処理機(シードドレッサー、Hans−Ulrich Hege GmbH製)を用いて5ml塗沫処理することにより、処理種子を得る。
【0064】
種子処理例3
製剤例3に準じて作製したフロアブル製剤を、トウモロコシ乾燥種子10kgに対し、回転式種子処理機(シードドレッサー、Hans−Ulrich Hege GmbH製)を用いて20ml塗沫処理することにより、処理種子を得る。
【0065】
種子処理例4
製剤例4に準じて作製したフロアブル製剤を5部、ピグメントBPD6135(Sun Chemical製)を5部、及び水を35部混和し、混和物を調製する。該混和物を、ワタ乾燥種子10kgに対し、回転式種子処理機(シードドレッサー、Hans−Ulrich Hege GmbH製)を用いて60ml塗沫処理することにより、処理種子を得る。
【0066】
種子処理例5
製剤例5に準じて作製した粉剤を、トウモロコシ乾燥種子10kgに対し、5g粉衣処理することにより、処理種子を得る。
【0067】
種子処理例6
製剤例7に準じて作製した紛剤を、イネ乾燥種子100kgに対し、400g粉衣処理することにより、処理種子を得る。
【0068】
種子処理例7
製剤例2に準じて作製したフロアブル製剤を、ダイズ乾燥種子10kgに対し、回転式種子処理機(シードドレッサー、Hans−Ulrich Hege GmbH製)を用いて5ml塗沫処理することにより、処理種子を得る。
【0069】
種子処理例8
製剤例3に準じて作製したフロアブル製剤を、コムギ乾燥種子10kgに対し、回転式種子処理機(シードドレッサー、Hans−Ulrich Hege GmbH製)を用いて20ml塗沫処理することにより、処理種子を得る。
【0070】
種子処理例9
製剤例4に準じて作製したフロアブル製剤を5部、ピグメントBPD6135(Sun Chemical製)を5部、水を35部混和し、ジャガイモ塊茎片10kgに対し、回転式種子処理機(シードドレッサー、Hans−Ulrich Hege GmbH製)を用いて70ml塗沫処理することにより、処理種子を得る。
【0071】
種子処理例10
製剤例4に準じて作製したフロアブル製剤を5部、ピグメントBPD6135(Sun Chemical製)を5部、水を35部混和し、ヒマワリ種子10kgに対し、回転式種子処理機(シードドレッサー、Hans−Ulrich Hege GmbH製)を用いて70ml塗沫処理することにより、処理種子を得る。
【0072】
種子処理例11
製剤例5に準じて作製した粉剤を、テンサイ乾燥種子10kgに対し、4g粉衣処理することにより、処理種子を得る。
【0073】
試験例1
5% (V/V) color coat red (Becker Underwood, Inc.)、5% (V/V) CF-Clear (Becker Underwood, Inc.)、0.4% Maxim XL (Syngenta社製)を含むブランクスラリー溶液を調製する。トウモロコシ種子(品種:黒もち)100kg当り10〜50gとなるように化合物1bをブランクスラリー溶液に溶解しスラリー溶液とした。50mL遠沈管(日本BD)に、トウモロコシ種子(品種;黒もち)20g当り0.48mlのスラリー溶液を入れ、スラリー溶液が乾くまで攪拌し、種子をコーティングした。対照としては、ブランクスラリー溶液を用いてコーティングした種子を無処理区用種子とした。
種子処理後のトウモロコシ種子をプラスチックポット(直径55 mm×高さ58mm)中の培土(愛菜)に2粒ずつ播種し、温度:27℃、照度:約5,000ルクス、日長16時間の条件下で18日間栽培した。その後、地上部新鮮重量を秤量した。各処理条件で4反復をとり、それらを平均して1個体あたりの平均重量を求めた。
【0074】
【表2】

【0075】
その結果、化合物(1b)処理区(100キログラム種子あたり10グラムから50グラムの処理量の範囲)では、対照区と比較して地上部新鮮重量が増加した。
【0076】
試験例2 トウモロコシ散布処理による植物の健康状態を改善効果評価試験(収量増加)
(供試植物)トウモロコシ(品種: Hughes 5813)
トウモロコシ種子を、化合物(1b)をトウモロコシ種子1粒あたり25マイクログラム、あるいは、125マイクログラムの処理量でそれぞれ処理した。種子重量1kgあたり4,000穀物粒として化合物の処理量を算出し、種子処理機 HEGE11(Hans-Ulrich Hege社製)を用いて種子にコートした。すべての種子処理にはMaxim XL(0.167オンス/100ポンド)、Thiram 42S(2.5オンス/ポンド)、Cruiser(チアメトキサムを0.25ミリグラム/種子 含む。)とCF-Clearポリマーを0.5オンス/ポンドの濃度で含むようにした。
これらの処理種子を、播種して226日間栽培し、トウモロコシを収穫し穀物粒を得た。また、化合物(1b)を含まない以外は同様に処理した種子を播種した区を無処理区とした。本試験期間中、本化合物処理区及び無処理区では収量に影響を与える病害は発生しなかった。
各処理区における穀物粒の量は、化合物(1b)を25マイクログラム処理した種子を播種した処理区では無処理区と比較して11%、化合物(1b)を125マイクログラム処理した種子を播種した処理区では無処理区と比較して9%、それぞれ、収穫された穀物粒の量が増加していた。
【0077】
試験例3
各試験濃度の1,000倍濃度の化合物(1b)のジメチルスルオキシド(DMSO)溶液を水で1,000倍希釈して各試験濃度の化合物(1b)溶液を調製した。この溶液を30ミリリットルずつ90cm径のシャーレに分注し、その中にトウモロコシ(品種:甲州)の種子を浸漬し、24℃で暗所にて16時間インキュベートした。該トウモロコシ種子(品種:甲州)をポット(直径55 mm×高さ58mm)内の培土(愛菜)に播種し、温度:27℃、照度:約5,000ルクス、日長16時間の条件下で、18日間栽培し、トウモロコシ実生を生育させた。また、対照として、0.1%DMSO水溶液を調製し、これに種子を上記の方法で、浸漬後に播種して実生を生育させ、無処理区とした。
前記で得られたトウモロコシ実生の地上部新鮮重量を秤量した。各処理濃度で1個体4反復をとり、それらを平均して1個体あたりの平均重量を求めた。
その結果、化合物(1b)3ppmの濃度の処理区で、無処理区と比較して地上部新鮮重量が増加した。
【0078】
【表3】

【0079】
試験例4
トウモロコシ種子(品種:DeKalb 61-69)を、1エーカーあたり33,684粒の種子を播種して栽培した。圃場の処理区の各プロットは10フィート幅で15.5フィート長とし、Randomized Complete Block Design法を使用して設定し、各薬剤散布処理区あたりのプロット数を8反復とした。また、化合物(1b)を含まない製剤を同様に散布処理した区を無処理区とし、これ以外の条件は本化合物処理区と同様に栽培した。播種111日後、トウモロコシの生育ステージR3の時期に、製剤例2に従って調製されたフロアブル製剤を茎葉散布した。
播種143日後、トウモロコシのR6生育ステージの時期に、それぞれの薬剤散布区のトウモロコシの一番下の穂のより上の葉の中での緑色の葉の割合(%))を測定した。その結果、無処理区では、平均23.8%であったのに対して、1ヘクタール当たり100グラムの化合物(1b)を散布した処理区では平均41.3%に、1ヘクタール当たり300グラムの化合物(1b)を散布した処理区では平均45.6%であった。
【0080】
試験例5
セイヨウアブラナ(Brasicca napus)種子を播種し栽培した。播種253日後のBBCHスケールでの生育ステージ65の時期に、製剤例2に従って調製された化合物(1b)を含むフロアブル剤を1ヘクタール当たり250グラムの処理量で散布した。処理区の1プロットの大きさは6メートル×10メートルとした。これを本化合物処理区とした。また、化合物(1b)を処理しなかった以外は同様の条件で栽培した試験区を無処理区とした。
個体の大多数がBBCHスケールでの生育ステージ85の時期となった播種323日後に、本化合物処理区および無処理区の植物体の鞘の中で、緑色状態を保っている鞘の割合を調査し評価した。
その結果、無処理区では緑色の鞘の割合が12.75%であったのに対して、本化合物処理区では緑色の鞘の割合が22.25%であった。
【0081】
試験例6
5% (V/V) color coat red (Becker Underwood, Inc.)、5% (V/V) CF-Clear (Becker Underwood, Inc.)、0.4% Maxim XL (Syngenta社製)を含むブランクスラリー溶液を調製した。トウモロコシ種子(品種:黒もち)100kg当り10〜50gとなるように化合物(1b)をブランクスラリー溶液に溶解しスラリー溶液とした。50mL遠沈管(日本BD)に、トウモロコシ種子(品種;黒もち)20g当り0.48mlのスラリー溶液を入れ、スラリー溶液が乾くまで攪拌し、種子をコーティングした。対照としては、ブランクスラリー溶液を用いてコーティングした種子を無処理区用種子とした。
種子処理後のトウモロコシ種子をプラスチックポット(直径55 mm×高さ58mm)中の培土(愛菜)に2粒ずつ播種し、温度:27℃、照度:約5,000ルクス、日長16時間の条件下で4日間栽培し、実験に供試した。
下記の条件に設定した人工気象器に、播種後4日目のポットを入れ、7日間低温ストレスに暴露した。
条件:「温度:3±2℃、日長16時間、照度:約5,000ルクス、湿度:35〜80%」
そしてさらに、温度:27℃、湿度:50-75%、照度:約5,000ルクス、日長16時間の条件下で、7日間栽培した後、地上部新鮮重量を秤量した。各処理条件で4反復をとり、それらを平均して1個体あたりの平均重量を求めた。
その結果、化合物(1b)処理区(100キログラム種子あたり10グラムから50グラムの処理量の範囲)では、低温ストレスに暴露された植物においても、対照区と比較して地上部新鮮重量の増加が見られた。
【0082】
【表4】

【0083】
試験例7
シャーレ内で、水耕栽培用スポンジ片(1cm×1cm×0.2cm)に1/2濃度のムラシゲ・スクーグ培地(MS培地:2.5mM MES、1%ショ糖、及び0.1% GamborgビタミンG1019溶液(シグマアルドリッチ社製)を含む)を浸漬し、このスポンジ片上にシロイヌナズナ種子(エコタイプ Columbia)を4〜5粒ずつ無菌播種した。低温処理(4℃、2-4日間)後、温度:23℃、湿度:45%、照度:3,500ルクス、日長16時間の条件下で、6日間栽培し、シロイヌナズナ実生を得た。
【0084】
1/2濃度のMS培地を24ウェルプレート(SUMILON MS-80240、住友ベークライト社製)に0.5mlずつ分注し、その上に、試験濃度の1,000倍濃度の化合物(1b)のDMSO溶液を5μl添加して、30ppm濃度の化合物(1b)を含む培地を調製した。上記のシロイヌナズナ実生をスポンジ当り2個体残して残りをまびいた後、24ウェルプレートの各ウェル中の化合物(1b)を含む培地にスポンジ片ごと移植して一晩生育させた。また、対照として、0.1%DMSOを添加した1/2濃度のMS培地を調製し、無処理区とした。
【0085】
次いで、上記シロイヌナズナ実生の入った24ウェルプレートのふたをパラフィルムでシールし、水浴に浸漬して45℃で60分間高温ストレスに暴露した。
さらに、温度:23℃、照度:3,500ルクス、日長16時間の条件下で、8日間栽培した。各ウェルの写真をデジタルカメラで撮影し、写真の緑色の部分の面積を画像解析ソフトWin ROOF(三谷商事社製)で測定することにより、植物体の葉面積を定量した。
また、高温ストレスに暴露した1日後に、パルス変調クロロフィル蛍光測定装置(IMAGING-PAM、WALZ社製)を用いて、各ウェルのクロロフィル蛍光値(Fv/Fm)を測定する。
【0086】
【表5】

【0087】
試験例8
トウモロコシ(品種:パイオニア31N27)をプラスチックポット(直径55 mm×高さ58mm)中の培土(愛菜)に播種し、温度:20-25℃、湿度:50-75%、照度:約5,000ルクス、日長16時間の条件下で1週間栽培し、トウモロコシ実生を得た。
0.5mgの化合物(1b)に、ホワイトカーボンとポリオキシエチレンアルキルエーテルサルフェートアンモニウム塩との混合物(重量割合1:1)を120mg、水を300μl添加し、湿式粉砕法で微粉砕することにより、化合物(1b)のフロアブル製剤を得た。このフロアブル製剤を水50mlで希釈しこれに展着剤として、リノー(日本農薬株式会社製)を5,000倍希釈になるように添加して散布液を得た。自動散布機を用いて散布液の十分量を前記トウモロコシ実生に散布した。また、対照として、化合物(1b)を含まないフロアブル製剤を散布処理し、無処理区とした。
次いで、下記の条件に設定した人工気象器に散布液を処理した前記トウモロコシ実生を入れ、5日間低温ストレスに暴露した。
条件:「温度:2±2℃、照明時間16時間、照度:約5,000ルクス、湿度:35〜80%」
次いで、温度:25-28℃、湿度:50-75%、照度:約5,000ルクス、日長16時間の条件下でさらに4日間栽培した後、地上部新鮮重量を調査した。各処理条件で4反復をとり、それらを平均して1個体あたりの平均重量を求めた。
化合物(1b)処理区(10ppmから100ppmの濃度範囲)では、低温ストレスに曝された場合でも、無処理区と比較して地上部新鮮重量が増加した。
【0088】
【表6】

【0089】
試験例9
試験濃度の1,000倍濃度の化合物(1b)を含むジメチルスルオキシド(DMSO)溶液を、水で1,000倍希釈することにより、各試験濃度の化合物(1b)溶液を調製した。この化合物(1b)溶液を30ミリリットルずつ90cm径のシャーレに分注し、その中にトウモロコシ(品種:甲州)の種子を浸漬して、24℃で暗所にて16時間インキュベートした後、該トウモロコシ種子をポット(直径55mm×高さ58mm)中の培土(愛菜)に播種し、温度:27℃、照度:約5,000ルクス、日長16時間の条件下で4日間栽培し、トウモロコシ実生を得た。また、対照として、0.1%DMSO水溶液を調製し、これに種子を上記の方法で、種子を浸漬して実生を生育させ無処理区とした。
下記の条件に設定した人工気象器に、上記トウモロコシ実生を入れ、7日間低温ストレスに暴露した。
条件 「温度:3±2℃、日長16時間、照度:約5,000ルクス、湿度:35-80%」
その後、温度:27℃、湿度:50-75%、照度:約5,000ルクス、日長16時間の条件下で、さらに7日間栽培した後、地上部新鮮重量を秤量した。処理条件毎に1個体4反復の試験を行い、平均して1個体あたりの平均重量を求めた。
その結果、化合物(1b)3ppmから30ppmの濃度範囲の処理区で、植物が低温ストレスに暴露された場合でも、無処理区と比較して地上部新鮮重量が増加した。
【0090】
【表7】

【0091】
試験例10
バジル種子(品種:スイートバジル タキイ種苗)をプラスチックポット(直径55 mm×高さ58mm)内の培土(愛菜)に播種し、温度:27℃、湿度:50-75%、照度:約6,000ルクス、日長16時間の条件下で、播種24日間栽培し、ポットあたり1個体のバジル実生を生育させた。
化合物(1b)をジメチルスルホオキシド(DMSO)に溶解し、試験濃度の1,000倍の濃度の化合物(1b)DMSO溶液を得た。この化合物(1b)DMSO溶液を水で1,000倍希釈し、これに界面活性剤として最終濃度が0.1%になるようにトリトンX-100を添加して散布液を調製後、当該散布液をハンドスプレーを用いて十分量(3ポット当り15ml)散布した。また、対照として、化合物(1b)を含まない散布液を調製して散布し、無処理区とした。そして、さらに、温度:27℃、湿度:50-75%、照度:約6,000ルクス、日長16時間の条件下で、1日間栽培した。
ついで、下記の条件に設定した人工気象器に上記バジル実生を入れ、低温ストレスに暴露した。
【0092】
条件 「温度:3.0℃、照度:800ルクス、湿度:50〜80%」
そして、さらに温度:27℃、湿度:50-75%、照度:約6,000ルクス、日長16時間の条件下で2日間栽培した。
該バジル実生の本葉の障害を受けずに生存した部分の葉面積の割合を、葉が完全に枯死し生存した葉面積が葉全体の面積の0%の場合を0、全く障害を受けず生存した葉面積が葉全体の100%の場合を100として目視にて0から100までの1刻みでスコアリングし、3個体のスコアを平均して障害スコアを求めた。また、該バジル実生の地上部を切り取って新鮮重量を測定し、3個体の平均重量を地上部新鮮重量とした。
【0093】
【表8】

【0094】
試験例11
1ヘクタールあたり5.5キログラムのセイヨウアブラナ(Brasicca napus)種子を播種し栽培した。播種240日後のBiologische Bundesanstalt, Bundessortenamt and CHemical industry(BBCH)スケールでの生育ステージ63の時期に、製剤例2に従って調製された化合物(1b)を含むフロアブル剤を1ヘクタール当たり250グラムの処理量で散布した。処理区の1プロットの大きさは2メートル×12メートルとした。これを本化合物処理区とした。また、化合物(1b)を処理しなかった以外は同様の条件で栽培した試験区を無処理区とした。
播種334日後に収穫し、種子の収量を評価した。その結果、無処理区の収量が9%水分含量種子換算で平均4.25トン/ヘクタールであったのに対して本化合物処理区では4.55トン/ヘクタールであった。なお、本試験期間中、本化合物処理区および無処理区では収量に影響を与える病害は発生しなかった。
【0095】
試験例12
5% (V/V) color coat red (Becker Underwood, Inc.)、5% (V/V) CF-Clear (Becker Underwood, Inc.)、0.4% Maxim XL (Syngenta)を含むブランクスラリー溶液を調製する。種子(品種:Apogee)1グラム当り0.05〜0.25ミリグラムとなるように化合物(1b)をブランクスラリー溶液に溶解しスラリー溶液とする。種子処理機(HEGE11、Hans-Ulrich Hege社製)を用いて、コムギ種子50g当り、1.3mlのスラリー溶液を混和させて種子をコーティングした後、種子を乾燥させる。対照としては、ブランクスラリー溶液を用いてコーティングした種子を無処理区用種子とする。コーティングしたコムギ種子をプラスチックポット(直径55 mm×高さ58mm)内の培土(愛菜)に5粒ずつ播種し、18℃で3週間栽培し、良好に育った実生3個体を、それ以外の個体を間引きして選抜する。
【0096】
播種後3週間目の前記実生を、温度:昼36℃/夜32℃、湿度:約60-70%で、照度:約6,000ルクス、日長12時間の条件にて7日間栽培して高温ストレスに暴露した後、温度:18℃で、照度:約6,000ルクス、日長16時間の条件にて1週間栽培を行い、3株/ポットを8反復で、地上部新鮮重量を調査する。
【0097】
試験例13
トウモロコシ種子(品種:パイオニア120 31P41)をプラスチックポット(直径55 mm×高さ58mm)内の培土(愛菜)に播種し、温度:20-25℃、湿度:50-75%、照度:約5,000ルクス、日長16時間の条件下で、7日間栽培する。
各試験濃度の1,000倍濃度の化合物(1b)のDMSO溶液を調製し、蒸留水にて希釈して試験液を調製する。えられた試験液20mlを株元に土壌潅注した後、温度:27℃、湿度:50-75%、照度:約5,000ルクス、日長16時間の条件下で、2日間栽培する。これを本化合物処理区とする。化合物(1b)のDMSO溶液の代わりに0.1%DMSO水溶液20mlを土壌潅注した区を無処理区とする。
土壌潅注した植物を、人工気象器内で、温度:2-4℃、湿度:40-70%、照度:約5,000ルクス、日長16時間の条件にて5日間栽培し低温ストレスに暴露した。当該低温ストレスに暴露した後、温度:20-25℃、湿度:50-75%、照度:約5,000ルクス、日長16時間の条件下で、4日間栽培し、植物重量および本葉の長さを測定する。また、当該低温ストレスに暴露した後、温度:20-25℃、湿度:50-75%、照度:約5,000ルクス、日長16時間の条件下で、1日間栽培し、パルス変調クロロフィル蛍光測定装置(MAXI-IMAGING-PAM, WALZ)を用いて、クロロフィル蛍光値(Fv/Fm)を測定する。また、葉緑素計(SPAD−502、コニカミノルタ製)を用いて葉緑素量を測定する。
【0098】
本化合物処理区では、無処理区と比較して本葉の長さおよび植物重量が増加し、地上部の生長促進が認められる。また、本化合物処理区では、無処理区と比較してクロロフィル蛍光値の増加および葉緑素量の増加が認められる。
【産業上の利用可能性】
【0099】
本発明方法を用いることによって、効果的に植物の生長を促進することが可能となる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で示される化合物からなる群から選ばれる少なくとも一の化合物を、植物に処理することを特徴とする植物の生長促進方法。
式(1)

〔式中、X1はメチル基、ジフルオロメチル基、またはエチル基を表し、X2はメトキシ基、またはメチルアミノ基を表し、X3はフェニル基、2−メチルフェニル基、または2,5−ジメチルフェニル基を表す。〕
【請求項2】
植物が、非生物的ストレスに暴露された又は暴露されるであろう植物である請求項1記載の植物の生長促進方法。
【請求項3】
式(1)で示される化合物が、下記化合物群Aから選ばれる化合物である請求項1又は2記載の方法。
<化合物群A>
(1)N−メチル−2−[2-(2,5−ジメチルフェノキシ)メチル]フェニル−2−メトキシアセトアミド
(2)N−メチル−2−[2-(2,5−ジメチルフェノキシ)メチル]フェニル−(2R)−2−メトキシアセトアミド
【請求項4】
植物への処理が、散布処理、土壌灌注処理、種子処理又は水耕処理である請求項1〜3記載の方法。
【請求項5】
植物への処理が、種子処理である請求項1〜3記載の方法。
【請求項6】
種子処理が、種子100キログラムあたり下記式(1)で示される化合物10グラム以上50グラム以下を処理する種子処理である請求項5記載の方法。
式(1)

〔式中、X1はメチル基、ジフルオロメチル基、またはエチル基を表し、X2はメトキシ基、またはメチルアミノ基を表し、X3はフェニル基、2−メチルフェニル基、または2,5−ジメチルフェニル基を表す。〕
【請求項7】
植物がイネ、トウモロコシ、セイヨウアブラナ、コムギ、バジル、ダイズ、ソルガム又はインゲンマメである請求項1〜6記載の方法。
【請求項8】
植物が遺伝子組換え植物である請求項1〜7記載の方法。
【請求項9】
非生物的ストレスが高温ストレスである請求項1〜8記載の方法。
【請求項10】
非生物的ストレスが低温ストレスである請求項1〜8記載の方法。
【請求項11】
植物の生長を促進するための、下記式(1)で示される化合物からなる群から選ばれる少なくとも一の化合物の使用。
式(1)

〔式中、X1はメチル基、ジフルオロメチル基、またはエチル基を表し、X2はメトキシ基、またはメチルアミノ基を表し、X3はフェニル基、2−メチルフェニル基、または2,5−ジメチルフェニル基を表す。〕

【公開番号】特開2012−206990(P2012−206990A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−74570(P2011−74570)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】