説明

植物の病気の識別方法、システムおよびその記録媒体

【課題】周知の画像識別技術により植物が病虫害に罹っているかどうかを判定する技術をさらに改善すること。
【解決手段】植物の病気の識別方法、システムおよびその記録媒体であって、該方法の手順は、植物の病気の名称およびそれに対応する病状の画像情報を保存するための植物病状データベースを提供し、画像撮影装置を介して栽培植物画像情報を取得した後、画像処理ユニットを介して第1色調処理技術により植物画像情報を取得し、第2色調処理技術により病気疑い区域の画像情報を取得し、病気疑い区域の画像情報の面積を計算し、面積が予め設けられた区域面積より大きい場合、病気疑い区域の画像情報を病気特徴区域の画像情報とし、病気特徴区域の画像情報を病状の画像情報と比較し、病気特徴区域の画像情報がいずれかの特定の病気特徴の画像情報と一致する場合、それに対応する特定の植物の病気の名称を取得することである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物の病気の識別方法、システムおよびその記録媒体に関し、特に植物画像および色調解析技術を用いて植物病状を迅速に解析する、植物の病気の識別方法、システムおよびその記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の植物病虫害自動検出技術は、主に生物の呼吸によって感知するものであり(例えば、レーザ光音響効果による感知)、しかも、このような生物の呼吸による感知技術は完全に密閉された環境でしか植物から排出された気体を感知できず、植物から排出された気体と各種の植物病虫害との間の関連性についてさらなる研究が必要とされているが、この技術のハードウェアの構築、設置コストが非常に高い。
【0003】
もう1つの周知技術は、植物の画像を撮影した後、さらに画像解析技術を用いて植物が病虫害に遭っているかどうか、植物の葉片に病状が現われているかどうかを識別するものである。例えば蘭の養殖産業の場合、周知の方法としては、撮影した蘭の葉片画像に対して、まず、画像解析および識別を行って画像中の葉片部分を探し当てるが、画像中の蘭の葉片を正確に探し当てられ、さらに葉片の画像を解析して蘭が病虫害に遭っているかどうか、病状が現われているかどうかを判断するために、人工ニューラルネットワーク解析方法に合わせ、色と縞模様との特徴値を利用しなければならない。しかし、この種の方法は、複雑度が高く、画像中の葉片部分を正確に探し当てるには、予め大量の画像データを収集する必要があり、さらに病気に罹った葉片を探し当てるためにデータトレーニングを行わなければならなく、実行効率が低く、直ちに検出結果を示すことができず、変動が大きいため、実際の応用の必要を満たすことはできない。
【0004】
上記技術は、主に、画像識別技術を用いて、植物葉片の画像を撮影し、次いで葉片の画像を解析して病状を特定し、さらにこの病状に基づいて葉片が病虫害に罹っているかどうかを判断するものである。この技術には依然として下記の未解決問題が存在する。
【0005】
(1)画像から葉片および花弁を抽出する方法は、画像中の葉片および花弁の特定の色および縞模様を特徴として識別するため、複雑度が高く、計算に必要な時間が長く、実行効率が低く、解析結果を直ちに示すことができない。
(2)葉片および花弁の画像は、しばしば植物の成長状況の違い、撮影の角度の違いなどの様々な要因により、変動が非常に大きく、葉片および花弁の色、形状および縞模様を特徴として構築するために、予め大量の葉片および花弁の画像を収集および作成してデータトレーニングを行う必要がある。したがって、構築・設置に時間がかかり、コストも高い反面、識別の正確度はあまり良好でない。
(3)1枚の画像を解析、識別するのに大量の時間がかかるため、大量栽培の環境(例えば、各種花苗栽培場、蘭の養殖場)、または植物の自動化装置、自動化選別システムに応用することができない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記で分かるように、周知の画像識別技術により植物が病虫害に罹っているかどうかを判定する技術をさらに改善する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、植物の病気の識別方法、システムおよびその記録媒体を提供し、植物が特定の色調を有する特性を利用して、栽培植物の特定部位の画像を迅速に探し当て、病気疑い区域および病気特徴区域を有するかどうかを判断し、次いで植物病状データベースと比較し、現在の栽培植物の特定部位に病症があるかどうかを判定し、何の病気であるかをさらに判断することができる。
【0008】
本発明は植物の病気の識別方法を提案し、該方法は以下の工程を含む。すなわち、まず、植物病状データベースを提供して少なくとも1つの植物の病気の名称および各々の植物の病気の名称に対応する少なくとも1つの病気特徴の画像情報を保存し、次いで、画像撮影装置を介して栽培植物画像情報を取得し、画像処理ユニットを介して第1色調処理技術により栽培植物画像情報を解析して植物画像情報を取得し、かつ第2色調処理技術により植物画像情報を解析して少なくとも1つの病気疑い区域の画像情報を取得し、各々の病気疑い区域の画像情報の区域面積を計算し、区域の面積が予め設けられた区域面積より大きい場合、病気疑い区域の画像情報を病気特徴区域の画像情報とし、最後に、病気特徴区域の画像情報を植物病状データベースにおける少なくとも1つの病気特徴の画像情報と比較し、病気特徴区域の画像情報が少なくとも1つの病気特徴の画像情報のうちの特定の病気特徴の画像情報と一致する場合、特定の病気特徴の画像情報に対応する特定の植物の病気の名称を取得する。
【0009】
本発明は、植物の病気の識別システムを提供し、該システムは植物病状データベース、画像撮影ユニットおよび画像処理ユニットを含む。植物病状データベースには、少なくとも1つの植物の病気の名称および各々の植物の病気の名称に対応する病気の特徴が保存され、画像撮影ユニットは栽培植物画像情報を取得する。画像処理ユニットは、第1色調処理技術により栽培植物画像情報を解析して植物画像情報を取得し、かつ第2色調処理技術により植物画像情報を解析して少なくとも1つの病気疑い区域の画像情報を取得し、さらに各々の病気疑い区域の画像情報の区域面積を計算し、病気疑い区域の面積が予め設けられた区域面積より大きい場合、病気疑い区域の画像情報を病気特徴区域の画像情報とし、植物病状データベースにおける少なくとも1つの病気特徴の画像情報と比較し、病気特徴区域の画像情報が前述の少なくとも1つの病気特徴の画像情報のうちの特定の病気特徴の画像情報と一致する場合、特定の病気特徴の画像情報に対応する特定の植物の病気の名称を取得する。
【0010】
上記システムおよび方法において、さらに、上記の画像処理ユニットが第1色調技術により栽培植物画像情報を解析して植物画像情報を取得する工程として、輝度解析技術により、まず、栽培植物画像情報を栽培植物前景画像情報および栽培植物背景画像情報に分け、次いで第1色調処理技術により栽培植物前景画像情報を解析して植物画像情報を取得するものであり、ここで、輝度解析技術は、栽培植物画像情報に基づいてそれに対応する三原色データを取得し、栽培植物画像情報の三原色データに基づいて栽培植物画像情報をグレースケール栽培植物の画像に変換し、グレースケール栽培植物の画像に基づいて二値化画像演算処理を行って栽培植物画像情報の栽培植物前景画像情報および栽培植物背景画像情報を取得する。
【0011】
上記システムおよび方法において、さらに、上記の画像処理ユニットが植物画像情報を取得した後、さらに植物画像情報のノイズを除去してから、第2色調処理技術によりノイズが既に除去された植物画像情報を解析して少なくとも1つの病気疑い区域の画像情報を取得する。
【0012】
上記システムおよび方法において、さらに、上記植物の病気識別システムは、植物画像情報の複数の連結グラフを計算し、面積が域値より小さいブロックをノイズと見なして植物画像情報から除去するための連結グラフ技術をさらに含む。
【0013】
上記システムおよび方法において、さらに、上記の第1色調処理技術と第2色調処理技術は同じまたは異なる色調処理技術である。
【0014】
上記システムおよび方法において、さらに、上記の第2色調処理技術は、少なくとも1つの病気色調区間を定義し、その後に植物画像情報から少なくとも1つの病気色調区間に一致する部分を少なくとも1つの病気疑い区域の画像情報として抽出する。
【0015】
本発明は、さらに、上記植物の病気の識別方法を実行する電子装置に供する記録媒体を開示し、その方法の工程の流れは上記説明の通りであり、ここでは再度説明しない。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施例のシステム要素のブロック概略図である。
【図2】本発明の実施例の工程のフローチャートである。
【図3】輝度解析技術の実施工程のフローチャートである。
【図4A】栽培植物画像撮影の概略図である。
【図4B】図4A中の栽培植物画像の前景画像の概略図である。
【図4C】図4B中の前景画像の植物画像の概略図である。
【図4D】図4C中の植物画像の植物画像輪郭範囲の概略図である。
【図4E】図4D中の植物画像輪郭範囲に病気疑い区域があることを示す概略図である。
【図4F】図4D中の植物の病気疑い区域の概略図である。
【図5】病状データベース構築工程のフローチャートである。
【図6】図5中の病状データベースシステムのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の上記特徴および長所をより明確に分かりやすくするために、以下、実施例を挙げ、添付図面と合わせて、詳細に説明する。
【実施例】
【0018】
図1は本発明の実施例のシステム要素のブロック概略図である。図1中の植物の病気の識別システム100は、画像撮影ユニット110、画像処理ユニット120および植物病状データベース130を備える。植物病状データベース130には、少なくとも1つの植物の病気の名称および各々の植物の病気の名称に対応する病気の特徴が保存される。画像撮影ユニット110は、栽培植物の画像情報を取得し、画像処理ユニット120は、第1色調処理技術によって取得した栽培植物画像情報を解析して植物画像情報(例えば、1つまたは複数の葉片、花弁の画像)を取得し、その後に第2色調処理技術によって取得した植物画像情報(例えば葉片、花弁)を解析し、植物画像情報に病気疑い区域(例えば、その色および葉片色/花弁色が明らかに異なる区域は病状である可能性がある)がある場合、病気疑い区域の画像情報を抽出する。次いで、画像処理ユニット120は各々の病気疑い区域の画像情報の区域面積を計算することができ、病気疑い区域の面積が予め設けられた区域面積より大きい場合、この病気疑い区域の画像情報を病気特徴区域の画像情報とする。この予め設けられた区域面積の値は、一般的な周知技術または一般的な常識に基づいて定めても、植物病状データベース130における病気の特徴に基づいて定めてもよく、病気疑い区域の面積が上述した予め設けられた区域面積より大きくない場合、画像中のノイズと見なすことができる。その後に画像処理ユニット120は、植物病状データベース130における病気特徴の画像情報と比較し、病気特徴区域の画像情報が植物病状データベース130におけるある特定の病気特徴の画像情報と一致する場合、病気の識別結果として対応する特定の植物の病気の名称を取得することができる。
【0019】
図2は本発明の実施例の工程のフローチャートであり、図1のシステムを介して実施することができ、主な工程は下記の通りである。
【0020】
工程S210:植物病状データベースを提供して少なくとも1つの植物の病気の名称および各々の植物の病気の名称に対応する少なくとも1つの病気特徴の画像情報を保存する。
【0021】
本実施例において、植物病状データベースは市販されて入手可能なデータベースであっても、周知技術によって構築されたデータベースであってもよく、後述の図5および図6に記載された技術によって構築されたデータベースであってもよい。
【0022】
工程S220:画像撮影装置を介して栽培植物画像情報を取得する。
【0023】
工程S230:画像処理ユニットを介して第1色調処理技術により栽培植物画像情報を解析して植物画像情報を取得する。
【0024】
工程S230において、第1色調処理技術は、主に、栽培植物画像情報の三原色データ(RGB)を色調に変換し、抽出したい植物画像の色調区間を予め定義し、その後に栽培植物画像情報から植物画像の色調区間に一致する部分を植物画像情報として抽出するものである。植物の画像自体(例えば葉片や花弁)は通常極めて特定の色を有し、色調に変換された後、特定の色調区間に集中する特性があるため、本発明はこの特性を利用して植物の画像を抽出する。このような方式ではデータトレーニングを必要とせず、植物の画像を探し当てるために栽培植物画像中の色、形状、および縞模様を比較する必要もなく、植物画像を抽出する速度を大幅に高めることができる。
【0025】
色調は、一般業者が常用する定義、例えばYUV色調値を用いることができ、それは一般業者が取り決め、使用する式を用いてRGB値をYUV色調値(明度、色度、彩度)に変換したものである。本発明において、色調は、植物データの特性に応じて1次元以上の色調値(例えば、明度、色度、彩度、グレースケール、色差、輝度およびコントラストなど)およびそれらとRGB値との変換式を自分で定義してもよい。一般的には、次元数が高ければ高いほど精確度が高いが、変換に必要な時間も多く、次元数が低ければ低いほど精確度が低いが、変換に必要な時間も少ない。幾つかの実施例において、色調の次元は2〜3次元であることが好ましい。
【0026】
さらに、栽培植物画像情報に煩雑な背景があることおよび植物画像自体が区別できないことを避けるために、画像処理ユニットが第1色調処理技術により栽培植物画像情報を解析して該植物画像情報を取得する工程は、まず、輝度解析技術により栽培植物画像情報を栽培植物前景画像情報および栽培植物背景画像情報に分けてから、第1色調処理技術により栽培植物前景画像情報を解析して植物画像情報を取得することができる。その中で、輝度解析技術とは、栽培植物画像情報に基づいてそれに対応する三原色データ(RGB)を取得し、栽培植物画像情報の三原色データに基づいて栽培植物画像情報をグレースケール栽培植物の画像に変換し、グレースケール栽培植物の画像に基づいて二値化画像演算処理を行って栽培植物画像情報の栽培植物前景画像情報および栽培植物背景画像情報を取得するというものである。
【0027】
上記実施形態において、二値化画像処理方法により栽培植物前景画像および栽培植物背景画像を分離することができる。二値化画像処理方法はグレースケール閾値(Threshold)画像処理方法ともいい、主に、グレースケール値を設定するものであり、画像自体のグレースケールが該設定したグレースケール値より大きいものであれば、それを明点とし、グレースケール値が該設定値より低いものであれば、それを暗点とし、これで2次元の画像が得られる。
【0028】
工程S240:第2色調処理技術により、植物画像情報を解析して少なくとも1つの病気疑い区域の画像情報を取得する。
【0029】
この工程において、第2色調処理技術は、少なくとも1つの病気色調区間を定義し、その後に植物画像情報から少なくとも1つの病気色調区間に一致する部分を少なくとも1つの病気疑い区域の画像情報として抽出するものである。第2色調処理技術の原理は前述した第1色調処理技術に類似している。植物画像中の病気画像はしばしば特定の色調区間または植物画像の色調区間と顕著な差異を有するため、本発明は、この特性を利用して、植物の画像から病気疑い区域を探す。第2色調処理技術は、1つ以上の病気色調区間を定義し、その後に植物画像情報から病気色調区間に一致する画像を病気疑い区域の画像情報として抽出することができる。病気疑い区域の画像情報は1つまたは複数である可能性がある。異なる病気は同じまたは異なる病気色調区間を有する可能性があり、第2色調処理技術は特定の病気色調区間に対して特定の病気色調区間に一致する画像を探すことができる。別の実施形態において、第2色調処理技術は植物画像色調区間以外の色調区間すべてを病気色調区間としてもよい。
【0030】
本実施例において、工程S230および工程S240中の第1色調処理技術と第2色調処理技術は同じまたは異なる色調処理技術である。第1色調処理技術と第2色調処理技術が同じ色調処理技術に属する場合、植物画像の色調区間と複数の病気色調区間を別々に定義してもよい。
【0031】
別の実施例において、画像処理ユニットが植物画像情報を取得した後、さらに植物画像情報のノイズを除去してから、第2色調処理技術によりノイズが除去された前述の植物画像情報を解析して病気疑い区域の画像情報を取得する。その中で、植物画像情報のノイズは、連結グラフ技術により植物画像情報の複数の連結ブロックを計算し、面積が域値より小さいブロックをノイズと見なして除去することができる。連結グラフ技術の概念とは、画像中の任意の両点の上下左右の間に連続画像点があると、これらの点の相互間は連結と見なされ、逆に、両点の間に連続画像点がないと、これらの点の相互間は非連結と見なされることを意味する。連結グラフ(植物画像中の連続点)により可能なブロックを探し当て、その後にその面積を計算し、一般的に面積が小さすぎるブロックは多くの場合にノイズである。
【0032】
工程S250:各々の病気疑い区域の画像情報の区域面積を計算し、区域面積が予め設けられた区域面積より大きい場合、病気疑い区域の画像情報を病気特徴区域の画像情報とする。
【0033】
工程S260:病気特徴区域の画像情報を植物病状データベースにおける少なくとも1つの病気特徴の画像情報と比較し、病気特徴区域の画像情報が少なくとも1つの病気特徴の画像情報のうちの特定の病気特徴の画像情報と一致する場合、特定の病気特徴の画像情報に対応する特定の植物の病気の名称を取得する。
【0034】
本実施例において、植物の各部位が通常同一色調を有する特性から、色調の異なることにより画像から植物自身および病気疑い区域を迅速に識別することに適している。植物の各部位の一部の区域に異常な変化が現われた場合、その色調も明らかに変化することになるため、本発明の技術を利用して病気疑い区域として異常区域を迅速に探し当てることができる。病気疑い区域を探し当ててそれが病気特徴区域であることが確認された場合、さらにこの病気特徴区域の画像情報を植物病状データベースにおける病気データと比較し、植物の病気の名称を迅速に断定する目的を達成する。
【0035】
本実施例において、植物画像情報、少なくとも1つの病気疑い区域の画像情報、病気特徴区域の画像情報、および少なくとも1つの病気特徴の画像情報は、いずれも色調技術によって処理された画像色調データである。
【0036】
次に、図3を参照されたい。図3は輝度解析技術の実施工程のフローチャートであり、主な工程は下記の通りである。
【0037】
工程S310:栽培植物画像情報に基づいてそれに対応する三原色データを取得する。
【0038】
工程S320:栽培植物画像情報の三原色データに基づいて栽培植物画像情報をグレースケール栽培植物の画像に変換する。
【0039】
工程S330:グレースケール栽培植物の画像に基づいて二値化画像演算処理を行って栽培植物画像情報の栽培植物前景画像情報および栽培植物背景画像情報を取得する。
【0040】
次いで、図4A〜図4Fを参照されたい。図4Aは栽培植物画像撮影の概略図である。図4Bは図4A中の栽培植物画像の前景画像の概略図である。図4Cは図4B中の前景画像の植物画像の概略図である。図4Dは図4C中の植物画像の植物画像輪郭範囲の概略図である。図4Eは図4D中の植物画像輪郭範囲に病気疑い区域があることを示す概略図である。図4Fは図4D中の植物の病気疑い区域の概略図である。
【0041】
もう1つの実施例において、画像撮影ユニット110が栽培植物画像情報500を取得した場合、画像処理ユニット120は、輝度解析技術により栽培植物画像情報500からそれに対応する三原色データ(RGB)を先に取得してから、三原色データ(RGB)に基づいて栽培植物画像情報500をグレースケール栽培植物の画像に変換することが可能である。さらに、グレースケール栽培植物の画像に基づいて二値化画像演算処理を行って栽培植物画像情報500の栽培植物背景画像情報410および栽培植物前景画像情報420を取得する(図4Bに示す)。
【0042】
一般的には、栽培植物の多くは植鉢に栽培されており、植物自身の画像を正確に抽出するために、画像処理ユニット120は、さらに図4Bに示す栽培植物前景画像情報420中の栽培植物の部分と植鉢の部分を分離し、植物画像情報430を解析する(図4Cに示す)。このときに、栽培植物の部分に一部の画像ノイズ440があれば、画像処理ユニット120は、連結グラフ技術により、面積が比較的小さいブロックをノイズと見なして除去し、ノイズが除去された植物の画像輪郭情報を取得することもできる(図4Dに示す)。
【0043】
次いで、第2色調処理技術によりノイズが除去された植物の画像輪郭情報510に病気疑い区域があるかどうかを判断し、病気疑い区域の画像情報520があると判断した場合(図4Eに示す)、病気疑い区域の画像情報520の面積が予め設けられた区域面積より大きいかどうかを判断する(図4Fに示す)。この病気疑い区域の画像情報520の面積が予め設けられた区域面積より大きい場合、病気疑い区域の画像情報520を病気特徴区域の画像情報と見なし、植物病状データベース130における病気の病状の画像情報と比較し、一致する特定の病気の病状の画像情報があれば、植物病状データベース130におけるこの特定の病気の病状の画像情報に対応する特定の植物の病気の名称を取得する。
【0044】
次いで、図5〜図6を同時に参照されたい。図5は病状データベース構築工程のフローチャートである。図6は図5中の病状データベースシステムのブロック図である。図5において、病状データベースの構築工程は下記の通りである。
【0045】
工程S510:各々の植物の病気の名称およびそれらに対応する少なくとも1つの病気区域の画像情報を取得する。
【0046】
工程S520:対応する植物の病気の名称の少なくとも1つの病気特徴の画像情報として植物病状データベースに保存するために、第2色調処理技術により少なくとも1つの病気区域の画像情報からそれぞれの少なくとも1つの病気区域の画像情報の対応する病気特徴の画像情報を取得する。
【0047】
例えば、画像撮影モジュール610により複数の植物病気区域の画像を取得し、画像識別モジュール620によりそれぞれの少なくとも1つの病気区域の画像情報の対応する病気特徴の画像情報を取得し、植物病状データベース630における褐斑病病状データベース631、葉斑病病状データベース632、および軟腐病病状データベース633などの関連植物病気データベースにそれぞれ各種の特定の病気に対応する病気区域の画像情報が保存する。
【0048】
最後に、比較した結果に基づいて、少なくとも1つの植物の病気の名称に対応する植物病状の画像を植物病状データベースに保存し、これによってより多くの同様の植物病状の可能な症状を取得することができる。
【産業上の利用可能性】
【0049】
上述したように、本発明は、高識別率、高実行効率、低計算複雑度、および低コストという長所を有し、植物の病気の識別を実行する面において迅速に識別する効果を達成できると期待される。
【0050】
本発明は、前述の実施例によって開示されているが、これらの実施例は本発明を限定するものではなく、いかなる当該業者が本発明の主旨および範囲から離脱しないでなされたいかなる変更、修正などの等価な代替案も本発明の特許の保護範囲内に属する。
【符号の説明】
【0051】
100 植物の病気の識別システム
110 画像撮影ユニット
120 画像処理ユニット
130 植物病状データベース
S210〜S260 工程の流れ
S310〜S330 工程の流れ
410 栽培植物背景画像情報
420 栽培植物前景画像情報
430 植物画像情報
440 画像ノイズ
500 植物画像情報
510 植物画像輪郭情報
520 病気疑い区域の画像情報
S510〜S520 工程の流れ
610 画像撮影モジュール
620 画像識別モジュール
630 植物病状データベース
631 褐斑病病状データベース
632 葉斑病病状データベース
633 軟腐病病状データベース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物の病気の識別方法であって、
植物病状データベースを提供して少なくとも1つの植物の病気の名称および各々の該植物の病気の名称に対応する少なくとも1つの病気特徴の画像情報を保存する工程と、
画像撮影装置を介して栽培植物画像情報を取得する工程と、
画像処理ユニットを介して第1色調処理技術により前記栽培植物画像情報を解析して植物画像情報を取得し、かつ第2色調処理技術により前記植物画像情報を解析して少なくとも1つの病気疑い区域の画像情報を取得する工程と、
各々の前記病気疑い区域の画像情報の区域面積を計算し、該区域面積が予め設けられた区域面積より大きい場合、前記病気疑い区域の画像情報を病気特徴区域の画像情報とする工程と、
前記病気特徴区域の画像情報を前記植物病状データベースにおける少なくとも1つの病気特徴の画像情報と比較し、前記病気特徴区域の画像情報が前記少なくとも1つの病気特徴の画像情報のうちの特定の病気特徴の画像情報と一致する場合、該特定の病気特徴の画像情報に対応する特定の植物の病気の名称を取得する工程と
を含む植物の病気の識別方法。
【請求項2】
前記画像処理ユニットが前記第1色調処理技術により前記栽培植物画像情報を解析して該植物画像情報を取得する工程が、輝度解析技術により該栽培植物画像情報を栽培植物前景画像情報および栽培植物背景画像情報に分けてから、該第1色調処理技術により該栽培植物前景画像情報を解析して該植物画像情報を取得する、請求項1に記載の植物の病気の識別方法。
【請求項3】
前記輝度解析技術が、前記栽培植物画像情報に基づいてそれに対応する三原色データを取得すること、該栽培植物画像情報の該データに基づいて該栽培植物画像情報をグレースケール栽培植物の画像に変換すること、および該グレースケール栽培植物の画像に基づいて該二値化画像演算処理を行って該栽培植物画像情報の該栽培植物前景画像情報および該栽培植物背景画像情報を取得する、請求項2に記載の植物の病気の識別方法。
【請求項4】
前記画像処理ユニットが前記植物画像情報を取得した後、さらに該植物画像情報のノイズを除去してから、前記第2色調処理技術によりノイズが既に除去された該植物画像情報を解析して前記少なくとも1つの病気疑い区域の画像情報を取得する、請求項1に記載の植物の病気の識別方法。
【請求項5】
前記第1色調処理技術が、前記栽培植物画像情報の三原色データを色調に変換し、さらに植物画像の色調区間を定義し、その後に該栽培植物画像情報から該植物画像の色調区間に一致する部分を該植物画像情報として抽出する、請求項1に記載の植物の病気の識別方法。
【請求項6】
前記第2色調処理技術が、少なくとも1つの病気色調区間を定義し、その後に前記植物画像情報から該少なくとも1つの病気色調区間に一致する部分を前記少なくとも1つの病気疑い区域の画像情報として抽出する、請求項1に記載の植物の病気の識別方法。
【請求項7】
前記植物病状データベースが、
各々の植物の病気の名称、および各々の植物の病気の名称に対応する少なくとも1つの病気区域の画像情報を取得する工程と、
前記第2色調処理技術により前記少なくとも1つの病気区域の画像情報から各々の該少なくとも1つの病気区域の画像情報の対応する病気特徴の画像情報を取得してその対応する前記植物の病気の名称の該少なくとも1つの病気特徴の画像情報とし、前記植物病状データベースに保存する工程とにより構築される、請求項1に記載の植物の病気の識別方法。
【請求項8】
少なくとも1つの植物の病気の名称および各々の該植物の病気の名称に対応する病気特徴を保存する植物病状データベースと、
栽培植物画像情報を取得する画像撮影ユニットと、
第1色調処理技術により前記栽培植物画像情報を解析して植物画像情報を取得し、かつ第2色調処理技術により該植物画像情報を解析して少なくとも1つの病気疑い区域の画像情報を取得し、各々の該病気疑い区域の画像情報の区域面積を計算し、該病気疑い区域の面積が予め設けられた区域面積より大きい場合、該病気疑い区域の画像情報を病気特徴区域の画像情報とし、前記植物病状データベースにおける少なくとも1つの病気特徴の画像情報と比較し、該病気特徴区域の画像情報が該少なくとも1つの病気特徴の画像情報のうちの特定の病気特徴の画像情報と一致する場合、該特定の病気特徴の画像情報に対応する特定の植物の病気の名称を取得する画像処理ユニットと
を含む、植物の病気の識別システム。
【請求項9】
前記画像処理ユニットが前記第1色調技術により前記栽培植物画像情報を解析して該植物画像情報を取得する工程が、輝度解析技術により該栽培植物画像情報を栽培植物前景画像情報および栽培植物背景画像情報に分けてから、該第1色調処理技術により該栽培植物前景画像情報を解析して該植物画像情報を取得する、請求項8に記載の植物の病気の識別システム。
【請求項10】
前記輝度解析技術が、前記栽培植物画像情報に基づいてそれに対応する三原色データを取得すること、該栽培植物画像情報の該三原色データに基づいて該栽培植物画像情報をグレースケール栽培植物の画像に変換すること、および該グレースケール栽培植物の画像に基づいて該二値化画像演算処理を行って該栽培植物画像情報の該栽培植物前景画像情報および該栽培植物背景画像情報を取得する、請求項9に記載の植物の病気の識別システム。
【請求項11】
前記画像処理ユニットが前記植物画像情報を取得した後、さらに該植物画像情報のノイズを除去してから、前記第2色調処理技術によりノイズが既に除去された該植物画像情報を解析して前記少なくとも1つの病気疑い区域の画像情報を取得する、請求項8に記載の植物の病気の識別システム。
【請求項12】
前記第1色調処理技術が、前記栽培植物画像情報の三原色データを色調に変換し、植物画像の色調区間を定義し、その後に該栽培植物画像情報から該植物画像の色調区間に一致する部分を該植物画像情報として抽出する、請求項8に記載の植物の病気の識別システム。
【請求項13】
前記第2色調処理技術が、少なくとも1つの病気色調区間を定義し、その後に前記植物画像情報から該少なくとも1つの病気色調区間に一致する部分を該少なくとも1つの病気疑い区域の画像情報として抽出する、請求項8に記載の植物の病気の識別システム。
【請求項14】
電子装置が読み取り可能なソースコードを保存し、植物の病気の識別方法を実行するための記録媒体であって、
該植物の病気の識別方法が、
植物病状データベースを提供して少なくとも1つの植物の病気の名称および各々の該植物の病気の名称に対応する少なくとも1つの病気特徴の画像情報を保存する工程と、
画像撮影装置を介して栽培植物画像情報を取得する工程と、
画像処理ユニットを介して第1色調処理技術により前記栽培植物画像情報を解析して植物画像情報を取得し、かつ第2色調処理技術により該植物画像情報を解析して少なくとも1つの病気疑い区域の画像情報を取得する工程と、
各々の前記病気疑い区域の画像情報の区域面積を計算し、該区域面積が予め設けられた区域面積より大きい場合、該病気疑い区域の画像情報を病気特徴区域の画像情報とする工程と、
前記病気特徴区域の画像情報を前記病状データベースにおける少なくとも1つの病気特徴の画像情報と比較し、該病気特徴区域の画像情報が該少なくとも1つの病気特徴の画像情報のうちの特定の病気特徴の画像情報に一致する場合、該特定の病気特徴の画像情報に対応する特定の植物の病気の名称を取得する工程と
を含む、記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図4D】
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【図4E】
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【図4F】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−111078(P2013−111078A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−49398(P2012−49398)
【出願日】平成24年3月6日(2012.3.6)
【出願人】(599060434)財團法人資訊工業策進會 (27)