説明

植物の窒素酸化物吸収向上剤

【課題】植物の窒素酸化物吸収向上剤を提供すること。
【解決手段】一般式(1)
21NCH2COCH2CH2COR3 (1)
[式中、R1及びR2は各々独立に、水素原子、アルキル基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリール基又はアラルキル基を示し;R3はヒドロキシ基、アルコキシ基、アシルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基又はアミノ基を示す。〕
で表される5−アミノレブリン酸、その誘導体又はそれらの塩を有効成分とする、植物の窒素酸化物吸収向上剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は植物の窒素酸化物吸収能を向上させる窒素酸化物吸収向上剤に関する。
【背景技術】
【0002】
窒素酸化物は、大気汚染物質の1つとして知られている。一酸化窒素や二酸化窒素などの窒素酸化物は、人体に有害であるとされており、中でも二酸化窒素は環境基準が定められている。したがって、大気中の二酸化窒素濃度は、全国各地で測定、監視されているが、環境基準が達成されていない地点が未だ存在している。
【0003】
植物による環境修復の技術は、ファイトレメディエーションと呼ばれており、大気汚染物質の分解除去にも利用されている。
植物により窒素酸化物を分解除去する方法としては、窒素酸化物を吸収する植物を選抜または育種する試みがある(非特許文献1,2)。
【0004】
一方、5−アミノレブリン酸、その誘導体又はそれらの塩は、植物分野において植物成長調節作用を有し肥料などに有用なことが知られている(特許文献1,2)。
【0005】
植物の成長に必要な成分の1つである窒素を、植物は、通常、土壌中に存在するものや肥料として土壌に施用されたものを、根から吸収する。
【0006】
5−アミノレブリン酸、その誘導体又はそれらの塩が、植物の根からの特定元素の吸収を向上させる作用があることは知られている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平4−338305号公報
【特許文献2】特開平7−53487号公報
【特許文献3】特開2007−238482号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】環境バイオテクノロジー学会誌,Vol.1,No.1,1−14,2001
【非特許文献2】生態工学会2008年次大会発表論文集Proceedings of 2008 SEE Conference,Page.59−60
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
前述のように、大気汚染除去の目的で窒素酸化物を吸収する植物を選抜または育種する試みが行なわれているが、多大な時間を要する、利用可能な植物種が限定される、すでに植物が植えられている場所に適用するには新たに植え替える必要がありコスト・労力を要するなどの問題点がある。
【0010】
従って、本発明の目的は、植物種を選抜するのではなく、従来から存在する植物の窒素酸化物吸収を向上させる剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、かかる現状に鑑み鋭意研究を行ったところ、植物の根からの特定元素の吸収能を向上させることは知られているが、植物の大気中に存在する物質の吸収能に対してどのように作用するのかについては全く知られていないところ、5−アミノレブリン酸、その誘導体又はその塩を、通常の大気中窒素酸化物濃度よりも高い濃度の条件下で植物に施用すれば、その植物の窒素酸化物吸収を向上させることができることを見出し、本発明を完成した。
【0012】
すなわち、本発明は下記一般式(1)
21NCH2COCH2CH2COR3 (1)
[式中、R1及びR2は各々独立に、水素原子、アルキル基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリール基又はアラルキル基を示し;R3はヒドロキシ基、アルコキシ基、アシルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基又はアミノ基を示す。]
で表される5−アミノレブリン酸、その誘導体又はそれらの塩を有効成分とすることを特徴とする、植物の窒素酸化物吸収向上剤を提供するものである。
【0013】
また、本発明は、上記一般式(1)で表される5−アミノレブリン酸、その誘導体又はそれらの塩を植物に施用する、大気中の窒素酸化物濃度の低減方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、植物の大気中からの窒素酸化物吸収を向上することができる。従って、本発明によれば大気中の窒素酸化物濃度の低減が可能であり、大気汚染を軽減することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の植物の窒素酸化物吸収向上剤の有効成分は、5−アミノレブリン酸、その誘導体(前記一般式(1))又はそれらの塩である。
一般式(1)中、R1及びR2で示されるアルキル基としては、炭素数1〜24の直鎖又は分岐鎖のアルキル基が好ましく、より好ましくは炭素数1〜18のアルキル基、特に炭素数1〜6のアルキル基が好ましい。炭素数1〜6のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基等が挙げられる。
1及びR2で示されるアシル基としては、炭素数1〜24、好ましくは炭素数1〜12の直鎖又は分岐鎖のアルカノイル基、アルケニルカルボニル基、アロイル基又はアリールオキシカルボニル基が好ましく、特に炭素数1〜6のアルカノイル基が好ましい。当該アシル基としては、ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、n−ペンタノイル基、n−ヘキサノイル基、n−ノナノイル基、ベンジルオキシカルボニル基等が挙げられる。
1及びR2で示されるアルコキシカルボニル基としては、総炭素数2〜13のアルコキシカルボニル基が好ましく、特に炭素数2〜7のアルコキシカルボニル基が好ましい。当該アルコキシカルボニル基としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n−プロポキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基等が挙げられる。
1及びR2で示されるアリール基としては、炭素数6〜16のアリール基が好ましく、例えば、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。
1及びR2で示されるアラルキル基としては、炭素数6〜16のアリール基と上記炭素数1〜6のアルキル基とからなる基が好ましく、例えば、ベンジル基等が挙げられる。
【0016】
3で示されるアルコキシ基としては、炭素数1〜24の直鎖又は分岐鎖のアルコキシ基が好ましく、より好ましくは炭素数1〜16のアルコキシ基、特に炭素数1〜12のアルコキシ基が好ましい。当該アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、デシルオキシ基、ドデシルオキシ基等が挙げられる。
3で示されるアシルオキシ基としては、炭素数1〜12の直鎖又は分岐鎖のアルカノイルオキシ基が好ましく、特に炭素数1〜6のアルカノイルオキシ基が好ましい。当該アシルオキシ基としては、アセトキシ基、プロピオニルオキシ基、ブチリルオキシ基等が挙げられる。
3で示されるアルコキシカルボニルオキシ基としては、総炭素数2〜13のアルコキシカルボニルオキシ基が好ましく、特に総炭素数2〜7のアルコキシカルボニルオキシ基が好ましい。当該アルコキシカルボニルオキシ基としては、メトキシカルボニルオキシ基、エトキシカルボニルオキシ基、n−プロポキシカルボニルオキシ基、イソプロポキシカルボニルオキシ基等が挙げられる。
3で示されるアリールオキシ基としては、炭素数6〜16のアリールオキシ基が好ましく、例えば、フェノキシ基、ナフチルオキシ基等が挙げられる。アラルキルオキシ基としては、前記アラルキル基を有するものが好ましく、例えば、ベンジルオキシ基等が挙げられる。
【0017】
一般式(1)中、R1及びR2としては水素原子が好ましい。R3としてはヒドロキシ基、アルコキシ基又はアラルキルオキシ基が好ましく、より好ましくはヒドロキシ基又は炭素数1〜12、特に炭素数1〜6のアルコキシ基、特にメトキシ基又はヘキシルオキシ基が好ましい。
【0018】
5−アミノレブリン酸誘導体としては、5−アミノレブリン酸メチルエステル、5−アミノレブリン酸エチルエステル、5−アミノレブリン酸プロピルエステル、5−アミノレブリン酸ブチルエステル、5−アミノレブリン酸ペンチルエステル、5−アミノレブリン酸ヘキシルエステル等が挙げられ、特に5−アミノレブリン酸メチルエステル又は5−アミノレブリン酸ヘキシルエステルが好ましい。
【0019】
5−アミノレブリン酸又はその誘導体の塩としては、例えば塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、リン酸塩、メチルリン酸、エチルリン酸、亜リン酸塩、次亜リン酸塩、硝酸塩、硫酸塩、酢酸塩、プロピオン酸塩、トルエンスルホン酸塩、コハク酸塩、シュウ酸塩、乳酸塩、酒石酸塩、グリコール酸塩、メタンスルホン酸塩、酪酸塩、吉草酸塩、クエン酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、リンゴ酸塩等の酸付加塩、及びナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩等の金属塩、アンモニウム塩、アルキルアンモニウム塩等が挙げられる。なお、これらの塩は使用時において水溶液又は粉体として用いられる。
以上詳述した5−アミノレブリン酸、その誘導体又はそれらの塩は、水和物又は溶媒和物を形成していてもよく、またいずれかを単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
【0020】
5−アミノレブリン酸、その誘導体又はそれらの塩は、化学合成、微生物による生産、酵素による生産のいずれの方法によっても製造することができ、具体的には、特開昭48−92328号公報、特開昭62−111954号公報、特開平2−76841号公報、特開平6−172281号公報、特開平7−188133号公報、特開平11−42083号公報等に記載の方法に準じて製造することができる。上記のようにして製造された5−アミノレブリン酸類、それらの精製前の化学反応溶液や発酵液は、有害な物質を含まない限り、分離精製することなくそのまま用いることができる。また市販品なども使用することができる。
【0021】
本発明の植物の窒素酸化物吸収向上剤の適用対象となる植物としては、特に限定されないが、それ自体窒素酸化物吸収能の高い植物が好ましく、例えばマツ科、スギ科、バラ科、ブナ科、カエデ科、キョウチクトウ科、ニレ科、ツバキ科、エゴノキ科、モクレン科、ヤマモモ科、カバノキ科、イチョウ科、ミズキ科、クスノキ科、マンサク科、スズ力ケノキ科、モチノキ科、トウダイグサ科、マメ科、ツツジ科、スイカズラ科、ウコギ科、ツゲ科、オトギリソウ科、トベラ科、アカネ科、ヒノキ科、モクセイ科、ブドウ科、グミ科、ニシキギ科等の樹木;アブラナ科、アカザ科、キク科、ナス科、ウリ科、ユリ科、セリ科、マメ科、イネ科、アヤメ科、ヒルガオ科、キンポウゲ科、ヒガンバナ科、ツリフネソウ科、ナデシコ科、シソ科、リンドウ科、スミレ科、サクラソウ科、シュウカイドウ科、ラン科、リュウゼツラン科、バラ科、イソマツ科、サトイモ科、アジサイ科、アオイ科、クワ科等の草花及び野菜が挙げられる。これらのうち、アブラナ科、ツツジ科が好ましく、アブラナ科のストック、ツツジ科のツツジが好適であり、特にツツジが好適である。
【0022】
本発明において、窒素酸化物吸収向上剤は、5−アミノレブリン酸、その誘導体又はそれらの塩が含まれておればよいが、これら以外に、必要により植物成長調節剤、糖類、含窒素化合物、酸類、アルコール類、ビタミン類、微量要素、金属塩、キレート剤、防腐剤、防黴剤等を配合することができる。
【0023】
ここで用いられる植物成長調節剤としては、例えば、エピブラシノライド等のブラシノライド類、塩化コリン、硝酸コリン等のコリン剤、インドール酪酸、インドール酢酸、エチクロゼート剤、1−ナフチルアセトアミド剤、イソプロチオラン剤、ニコチン酸アミド剤、ヒドロキシイソキサゾール剤、過酸化カルシウム剤、ベンジルアミノプリン剤、メタスルホカンブ剤、オキシエチレンドコサノール剤、エテホン剤、クロキンホナック剤、ジベレリン、ストレプトマイシン剤、ダミノジット剤、ベンジルアミノプリン剤、4−CPA剤、アンシミドール剤、イナペンフィド剤、ウニコナゾール剤、クロルメコート剤、ジケブラック剤、メフルイジド剤、炭酸カルシウム剤、ピペロニルブトキシド剤等を挙げることができる。
【0024】
糖類としては、例えばグルコース、シュクロース、キシリトール、ソルビトール、ガラクトース、キシロース、マンノース、アラビノース、マジュロース、スクロース、リボース、ラムノース、フラクトース、マルトース、ラクトース、マルトトリオースなどが挙げられる。
【0025】
含窒素化合物としては、例えばアミノ酸(アスパラギン、グルタミン、ヒスチジン、チロシン、グリシン、アルギニン、アラニン、トリプトファン、メチオニン、バリン、プロリン、ロイシン、リジン、グルタミン酸、アスパラギン酸、イソロイシン等)、尿素、アンモニアなどが挙げられる。
【0026】
酸類としては、例えば有機酸(ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、シュウ酸、フタル酸、安息香酸、乳酸、クエン酸、酒石酸、マロン酸、リンゴ酸、コハク酸、グリコール酸、マレイン酸、カプロン酸、カプリル酸、ミリスチン酸、ステアリン酸、パルミチン酸、ピルビン酸、α−ケトグルタル酸、レブリン酸等)、亜硫酸、硫酸、硝酸、亜リン酸、リン酸、ポリリン酸などが挙げられる。
【0027】
アルコール類としては、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、グリセロールなどが挙げられる。
【0028】
ビタミン類としては、例えばニコチン酸アミド、ビタミンB6、ビタミンB12、ビタミンB5、ビタミンC、ビタミンB13、ビタミンB1、ビタミンB3、ビタミンB2、ビタミンK3、ビタミンA、ビタミンD2、ビタミンD3、ビタミンK1、α−トコフェロール、β−トコフェロール、γ−トコフェロール、σ−トコフェロール、p−ヒドロキシ安息香酸、ビオチン、葉酸、ニコチン酸、パントテン酸、α−リポニック酸等を挙げることができる。
【0029】
微量要素としては、例えばホウ素、マンガン、亜鉛、銅、鉄、モリブデン、塩素などが挙げられる。
【0030】
金属塩としては、例えばカルシウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩などが挙げられる。
【0031】
キレート剤としては、例えば、アミノカルボン酸系キレート剤(エチレンジアミンテトラ酢酸、ニトリロトリ酢酸、ヒドロキシエチルイミノジ酢酸、ヒドロキシエチルエチレンジアミントリ酢酸、ジエチレントリアミンペンタ酢酸、トリエチレンテトラアミンヘキサ酢酸、ジカルボキシメチルグルタミン酸、ジヒドロキシエチルグリシン、1,3−プロパンジアミンテトラ酢酸、1,3−ジアミノ−2−ヒドロキシプロパンテトラ酢酸など)やホスホン酸系キレート剤(ヒドロキシエチリデンジホスホン酸、メチレンホスホン酸、ホスホノブタントリカルボン酸など)などが挙げられる。これらキレート剤は金属塩として用いても良い。
【0032】
本発明の植物の窒素酸化物吸収向上剤は、通常の大気中窒素酸化物濃度よりも高濃度条件下で施用することにより効果を奏する。非特許文献1に示されているように、育種開発された窒素酸化物吸収能力が顕著に高い植物に窒素酸化物を吸収させた場合、大気中窒素酸化物濃度0.06〜2ppmの条件下では顕著であるが、0〜0.06ppmの条件下ではその吸収は見られないことから、植物の窒素酸化物吸収を向上できるのは大気中窒素酸化物濃度が0.06〜2ppmの条件下であると考えられる。同様に、5−アミノレブリン酸を通常の大気中窒素酸化物濃度の条件下で植物に施用しても効果は発揮されないが、大気中窒素酸化物濃度よりも高い濃度の条件下で施用すると、実施例に示す通り、効果が得られる。
ここで、通常の大気中窒素酸化物濃度とは0〜0.015ppmである。
【0033】
具体的な本発明の植物の窒素酸化物吸収向上剤の植物への施用条件としては、大気中の窒素酸化物濃度が0.06〜4ppmである条件下で施用するのが好ましく、より好ましくは0.1〜3ppmの条件下、さらに好ましくは0.5〜3ppmの条件下、特に好ましくは1〜3ppmの条件下である。
【0034】
本発明の植物の窒素酸化物吸収向上剤は、茎葉散布処理、土壌潅注処理、水耕潅注処理のいずれの方法で施用しても良い。また、植物の定植前又は挿し木を行う前等に、窒素酸化物吸収向上剤を吸収処理させても良い。
【0035】
本剤を茎葉散布処理にて施用する場合、前記5−アミノレブリン酸類を0.0001〜10mM、さらに0.0005〜5mM、特に0.001〜1mMの濃度で含有せしめ、これを10アール当たり10〜1000L、特に50〜300L使用するのが好ましい。単子葉植物など葉面に薬剤が付着しにくい植物に対しては展着剤を用いることができるが、その種類及び使用量については、特に制限されない。
【0036】
本剤を土壌潅注処理または水耕潅注処理にて施用する場合、5−アミノレブリン酸類として0.0001〜10mM、さらに0.0005〜5mM、特に0.001〜1mMの濃度で含有せしめ、圃場栽培においてはこれを10アール当たり10〜1000L、特に50〜300L用いるのが好ましく、鉢植え栽培においてはこれを1株あたり10ml〜10L、特に10ml〜1L用いるのが好ましい。
【0037】
本剤を用いて定植前又は挿し木を行う前等に吸収処理させる場合、前記5−アミノレブリン酸類をつけ込んで吸収させればよく、つけ込む液の5−アミノレブリン酸類の濃度は0.0001〜1mM、さらに0.0001〜0.5mM、特に0.0001〜0.1mMであることが望ましい。また、つけ込み時間は1秒〜1週間、特に1分〜1日間が望ましい。
【0038】
処理は1回でも十分な効果は得られるが、複数回処理することにより、更に効果を高めることもできる。この場合には、先の各方法を組合せることもできる。
【実施例】
【0039】
次に実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、これらは単に例示の目的で掲げられるものであって、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0040】
〔実施例1〕5−アミノレブリン酸塩酸塩の大気中の窒素酸化物吸収向上効果
ストック苗に5−アミノレブリン酸塩酸塩0.006mMを含む溶液を散布した。
4日後、濃度約2ppmの二酸化窒素で満たした透明の箱にストック苗2鉢を入れた。温度は25℃、照度は10,000lxとした。30分後、箱内部の二酸化窒素濃度を測定し、減少量を算出した。結果を表1に示す。
【0041】
【表1】

【0042】
表1に示した通り、二酸化窒素濃度の減少量は、対照区に比べ、5−アミノレブリン酸塩酸塩処理区の方が大きく、30分後には0.31ppmの差があり、大気中の窒素酸化物吸収向上効果が認められた。なお、本試験による窒素酸化物吸収能向上効果は、30分という短時間の効果であり、5−アミノレブリン酸の植物成長促進効果によるものでないことは明らかである。
【0043】
〔実施例2〕5−アミノレブリン酸塩酸塩の窒素酸化物吸収向上効果
ツツジ苗に5−アミノレブリン酸塩酸塩0.004mMを含む溶液を散布した。
7日後、ツツジ2鉢を入れた透明の箱を濃度約2ppmの二酸化窒素で満たした。温度は18℃、照度は10,000lxとした。30分後、箱内部の二酸化窒素濃度を測定し、減少量を算出した。結果を表2に示す。
【0044】
【表2】

【0045】
表2に示した通り、二酸化窒素濃度の減少量は、対照区に比べ、5−アミノレブリン酸塩酸塩処理区は0.31ppm大きく、窒素酸化物吸収向上効果が認められた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)
21NCH2COCH2CH2COR3 (1)
[式中、R1及びR2は各々独立に、水素原子、アルキル基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリール基又はアラルキル基を示し;R3はヒドロキシ基、アルコキシ基、アシルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基又はアミノ基を示す。〕
で表される5−アミノレブリン酸、その誘導体又はそれらの塩を有効成分とすることを特徴とする、植物の窒素酸化物吸収向上剤。
【請求項2】
大気中の窒素酸化物濃度が0.06〜4ppmの条件下で施用するためのものである、請求項1記載の植物の窒素酸化物吸収向上剤。
【請求項3】
窒素酸化物が二酸化窒素である請求項1又は2記載の植物の窒素酸化物吸収向上剤。
【請求項4】
植物が、アブラナ科及びツツジ科から選ばれるものである請求項1〜3のいずれかに記載の植物の窒素酸化物吸収向上剤。
【請求項5】
一般式(1)
21NCH2COCH2CH2COR3 (1)
[式中、R1及びR2は各々独立に、水素原子、アルキル基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリール基又はアラルキル基を示し;R3はヒドロキシ基、アルコキシ基、アシルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基又はアミノ基を示す。〕
で表される5−アミノレブリン酸、その誘導体又はそれらの塩を植物に施用する、大気中の窒素酸化物濃度の低減方法。