説明

植物を処理するための方法

本発明は、高レベルの抗酸化物質を有する作物の生産における、(i)ストロビルリン又はストロビルリン型殺真菌剤又は(ii)トリアゾールから成る群から選択される殺真菌剤、或いは(i)アベルメクチン、(ii)有機リン酸、(iii)ベンゾイル尿素又は(iv)ネオニコチノイドからなる群から選択される殺虫剤の使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高レベルの抗酸化物質を有する作物の生産における、特定の殺真菌剤及び殺虫剤の使用に関する。本発明は、作物の抗酸化物質含有量を増大させるための方法、及び高レベルの抗酸化物質を有する作物にも関する。
【背景技術】
【0002】
抗酸化物質は、酸化反応の速度を低下させる化学物質である。具体的には、それらは細胞及び生体分子への酸化ダメージを減少させることができる。そのため、それらは、健康を目的とした栄養補助食品中の成分として広く使用されている。事実、最近の医学研究は、酸化ダメージと疾患の発生との間に高い関連性が存在することを示唆している。具体的には、抗酸化物質の消費からのヒトの健康上の利益は、抗癌作用、アンチエージング作用、尿路感染症に対する作用、抗炎症活性及び循環器疾患からの保護を含むと言われている。多くの抗酸化物質、例えばポリフェノール及びカロテノイドは、植物中に天然に見出される。ポリフェノールは、1分子あたりの1個以上のフェノール基の存在により特徴づけされる。それらは、植物光合成により産生され、顔料中の主要成分であり、特定の植物の苦味である。植物においては、ポリフェノールは植物細胞の産生と活性化に関与する。作物中のポリフェノールの例としては、茶の中に見出されるカテキン、柑橘類の果実、赤ワイン、タマネギ、ブロッコリー、レタス、甘唐辛子及びココアの中に見出されるケルセチン、ホップの中に見出されるキサントフモール(xanthofumol)、ブルーベリー、イチゴ及びナスの中に見出されるアントシアニン、及びダイズ及び乾燥豆の中に見出されるイソフラボンが挙げられる。ポリフェノールの他の起源としては、オリーブオイル、ダーク・チョコレート及びザクロが挙げられる。カロテノイドは、時々環構造で終わる大きな(35から40個の炭素原子)ポリエン鎖により特徴づけられる有機顔料である。植物中で、カロテノイドは、光合成反応中心において重要な役割を果たし、ここで、それらは、エネルギー移動過程において関与するか、又は酸化ダメージから反応中心を保護する。カロテノイドの例としては、トマトの中に見出されるリコピン、並びにニンジン及びカボチャの中に見出されるβ−カロチンが挙げられる。
【発明の開示】
【0003】
潜在的な又は理解された様々な植物の健康上の利益について社会的に認識されてきたので、その結果として、高レベルの抗酸化物質、例えばポリフェノール及びカロテノイドを含む作物に対する需要が増大している。本発明は、ストロビルリン又はストロビルリン型殺真菌剤(例えば、アゾキシストロビン又はトリフロキシストロビン)、トリアゾール殺真菌剤(例えば、ジフェノコナゾール)、アベルメクチン(例えば、エマメクチン)、有機リン酸殺虫剤(例えば、メチダチオン)、ベンゾイル尿素殺虫剤(例えば、ルフェヌロン)又はネオニコチノイド殺虫剤(例えば、チアメトキサム)を用いた作物の収穫前処理により、収穫時の作物中の抗酸化物質のレベルを増大させる方法に関する。
【0004】
従って、本発明によると、(i)ストロビルリン又はストロビルリン型殺真菌剤又は(ii)トリアゾールから成る群から選択される殺真菌剤、或いは(i)アベルメクチン、(ii)有機リン酸、(iii)ベンゾイル尿素又は(iv)ネオニコチノイドからなる群から選択される殺虫剤の、高レベルの抗酸化物質を有する作物の生産における使用が提供される。有効量の(i)ストロビルリン又はストロビルリン型殺真菌剤又は(ii)トリアゾールから成る群から選択される殺真菌剤、或いは(i)アベルメクチン、(ii)有機リン酸、(iii)ベンゾイル尿素又は(iv)ネオニコチノイドからなる群から選択される殺虫剤を、成長期において、作物の茎葉に適用することを含んで成る、高レベルの抗酸化物質を有する作物を生産するための方法も提供される。
【0005】
本発明との関連において、「作物」は任意の植物を含み、その部分又は全てが、ヒトによって消費されることができるか、又はそれからヒトによって消費されることのできる抽出物が作製され得る。「抽出物」としては、水性又は溶媒抽出により作られるもの、例えばハーブティーを含むお茶、或いは発酵により作られるもの、例えばワイン又はビールが挙げられる。「部分」は、葉、根、茎及びジュースを含む。その部分又は全てがヒトにより消費されることのできる作物の例としては、柑橘類果実の木、例えばオレンジ又はライム、オリーブの木、ナツメヤシの木、マメ、例えばダイズ及び乾燥豆、食用青葉を産生する野菜、例えば芽キャベツ、ブロッコリー、キャベツ、セロリ、チャード(例えば、スイス・チャード)、チコリ、コラード、調理用ハーブ、タンポポ、エンダイブ、キクヂシャ、ガーデンクレス、ケール、レタス、カラシ、ニュージーランドホウレンソウ、チンゲン菜、パセリ、赤チコリ、ホウレンソウ及びクレソン、ブロッコリー、灌木になる実、例えばブルーベリー、ブラックベリー、ラズベリー、クロフサスグリ、アカフサスグリ及びグレープ、根菜類、例えばタマネギ及び他の作物、例えばイチゴ、ナス、甘唐辛子、ニンジン、カボチャ及びトマトが挙げられる。ヒトにより消費されることのできる抽出物が作製され得る作物の例としては、茶が作られ得る茶植物、ビールが作られ得るホップ植物、及びワインが作られ得るグレープが挙げられる。
【0006】
本発明は、特定の植物、例えばオリーブの木、グレープ、ダイズ、乾燥豆、ブロッコリー、ココア、柑橘類の木、ブルーベリー、イチゴ、トマト、ニンジン及び茶植物に適用された場合に特に有用である。作物は、チャ、トマト、ニンジン、ダイズ又はイチゴ植物が適切であり、茶植物が最も適切である。本発明は、茶植物、例えばカメリア・シネンシス(Camellia sinensis)、又はカメリア・アッサミカ(Camellia assamica)に適用した場合に最も特に有用である。好ましい実施態様において、作物はホップ植物ではない。
【0007】
抗酸化物質は、ポリフェノール又はカロテノイドが適切である。より適切には、ポリフェノールは、カテキン、イソフラボン又はアントシアニンであり、カロテノイドは、リコピン又はβ−カロチンである。最も適切には、ポリフェノールはカテキンであり、カロテノイドはリコピンである。
【0008】
ストロビルリン及びストロビルリン型殺真菌剤は、ユビキノール酸化部位でシトクロムb及びシトクロムC1の間の電子移動をブロックすることによりミトコンドリア呼吸を阻害することによって作用する周知のクラスの殺真菌剤である。それらは、メトキシアクリレートストロビルリン、例えばアゾキシストロビン及びピコキシストロビン、オキシイミノアセテートストロビルリン、例えばクレソキシムメチル及びトリフロキシストロビン、オキシイミノアセトアミドストロビルリン、例えばジモキシストロビン、メトミノストロビン、オリサストロビン(BAS 520)及び以下の式のストロビルリン:
【化1】

ジヒドロジオキサジンストロビルリン、例えばフルオキサストロビン、メトキシカルバメートストロビルリン、例えばピラクロストロビン、以下の式のストロビルリン:
【化2】

イミダゾリノンストロビルリン型、例えばフェナミドン、オキサゾリジンジオンストロビルリン型、例えばフェモキサドンを含む。本発明は、アゾキシストロビン及びトリフロキシストロビン、特にアゾキシストロビンに特に関心がある。
【0009】
トリアゾールは、ステロール生合成を阻害することにより作用する周知のクラスの殺真菌剤である。それらは、アザコナゾール、ビテルタノール、ブロムコナゾール、シプロコナゾール、ジフェノコナゾール、ジニコナゾール、エポキシコナゾール、フェンブコナゾール、フルキンコナゾール、フルシラゾール、フルトリアホル、ヘキサコナゾール、イミベンコナゾール、イプコナゾール、メトコナゾール、ミクロブタニル、ペンコナゾール、プロピコナゾール、プロチオコナゾール、シメコナゾール、テブコナゾール、テトラコナゾール、トリアジメホン、トリアジメノール及びトリチコナゾールを含む。本発明は、細胞膜エルゴステロール生合成を阻害し、真菌の発達を止めるジフェノコナゾールが特に関心がある。
【0010】
アベルメクチン殺虫剤は、塩素チャネルを活性化することにより作用する周知のクラスの殺虫剤である。それらは、アバメクチン及びエマメクチン(その安息香酸塩として最も一般的に使用される)を含み、それらは両方とも7−アミノ酪酸の放出を刺激することにより作用する抑制性神経伝達物質であり、従って、麻痺を生じさせ、その後標的昆虫の死をもたらす。本発明は、エマメクチンに特に関心がある。
【0011】
有機リン酸は、昆虫のアセチルコリンエステラーゼを阻害することにより作用する周知のクラスの殺虫剤である。それらは、アセフェート、アザメチホス、アジンホス−エチル又はメチル、カズサホス、クロルエトキシホス、クロルフェンビンホス、クロルメホス、クロルピリホス、クロルピリホス−メチル、クマホス、シアノホス、デメトン−S−メチル、ジアジノン、ジクロルボス、ジクロトホス、ジメトエート、ジメチルビンホス、ジスルホトン、EPN、エチオン、エトプロホス、ファムフール、フェナミホス、フェニトロチオン、フェンチオン、ホスチアゼート、ヘプテノホス、イソフェンホス−メチル、イソプロピル O −(メトキシアミノチオホスホリル)サリチル酸塩、イソキサチオン、マラチオン、メカルバム、メタミドホス、メチダチオン、メビンホス、モノクロトホス、ナレド、オメトエート、オキシデメトン−メチル、パラチオン、パラチオン−メチル、フェントエート、ホレート、ホサロン、ホスメット、ホスファミドン、ホキシム、ピリミホス−メチル、ポロフェノホス、プロペタンホス、プロチオホス、ピラクロホス、ピリダフェンチオン、キナルホス、スルホテップ、テブピリムホス、テメホス、テルブホス、テトラクロルビンホス、チオメトン、トリアゾホス、トリクロルホン、バミドチオンを含む。本発明は、メチダチオンが特に関心がある。
【0012】
ベンゾイル尿素は、キチン生合成を阻害(これは、標的昆虫幼虫が脱皮できず、摂食を中断することもできないことを意味する)することにより作用する周知のクラスの殺虫剤である。それらは、ビストリフルロン、クロルフルアズロン、ジフルベンズロン、フルアズロン、フルシクロクスロン、フルフェノクスロン、ヘキサフルムロン、ルフェヌロン、ノバルロン、ノビフルムロン、テフルベンズロン及びトリフルムロンを含む。本発明は、ルフェヌロンに特に関心がある。
【0013】
ネオニコチノイドは、昆虫の中枢神経系のシナプスに影響を与えるニコチン性アセチルコリン受容体のアゴニスト/アンタゴニストである周知のクラスの殺虫剤である。それらは、アセタムプリド、クトチアニジン、ジノテフラン、イミダクロプリド、ニテンピラム、チアクロプリド及びチアメトキサムを含む。本発明は、特にチアメトキサムに関心がある。
【0014】
1つの実施態様において、殺真菌剤は、本発明の使用及び方法において使用される。更なる実施態様において、殺真菌剤は、ストロビルリン、特にアゾキシストロビン又はトリフロキシストロビンである。最も適切には、ストロビルリンはアゾキシストロビンである。更なる実施態様においては、殺真菌剤はトリアゾールである。最も適切には、トリアゾールはジフェノコナゾールである。
【0015】
1つの実施態様においては、殺虫剤は、本発明の使用及び方法において使用される。更なる実施態様においては、殺虫剤は、アベルメクチン、特にエマメクチン又はその安息香酸塩である。更なる実施態様においては、殺虫剤は、有機リン酸、特にメチダチオンである。更なる実施態様においては、殺虫剤は、ベンゾイル尿素、特にルフェヌロンである。更なる実施態様においては、殺虫剤は、ネオニコチノイド、特にチアメトキサムである。好ましくは、ルフェヌロン及びチアメトキサムが使用される場合、それらは一緒に使用される。
【0016】
本発明の殺真菌剤又は殺虫剤は、作物の成長期の間に、作物に対して1回以上適用することができる。例えば、茶に対して適用する場合、ストロビルリン又はストロビルリン型殺真菌剤は、典型的には、成長期の間に1〜3回適用される。これらの適用は、典型的には、植え付けの後にそれぞれ1〜3週間行われる。本発明の殺真菌剤及び殺虫剤は、真菌病又は昆虫侵入を防除し、抗酸化物質レベルを増大させるために植物に適用することができる。或いは、それらは、着目の作物において抗酸化物質レベルを上昇させるために、真菌又は殺虫剤圧力の不在下で適用することができる。任意に、本発明の殺真菌剤又は殺虫剤は、植物の真菌侵入に対抗するために使用することのできる1つ以上の他の殺真菌剤に加えて、又は植物の昆虫侵入に対抗するために使用することのできる1つ以上の殺虫剤に加えて、適用することができる。特に、本発明の殺真菌剤及び殺虫剤は、(a)互いに、又は(b)クロロタノニル、シモキソニル、シプロコナゾール、ジフェノコナゾール、フェンプロピジン、フェンプロピモルフ、フルアジナム、フルジオキソニル、ホルペット、ヘキサコナゾール、メタラキシル−M、プロピコナゾール、ピロキロン、テブコナゾール、チアベンダゾール又はチラムから成る群から選択される殺真菌剤と、又は(c)カルタップ、シペルメトリン、λ−シハロトリン、ジアジノン、フィプロニル、ペルメトリン、プロフェンホス又はテフルトリンから成る群から選択される殺虫剤と、混合することができる。例えば、アゾキシストロビンは、クロロタロニル、シプロコナゾール、ジフェノコナゾール、ホルペット又はヘキサコナゾール、より具体的にはクロロタロニルと混合することができる。
【0017】
適用される殺真菌剤又は殺虫剤の量は、とりわけ、成長期の間に行われる適用の回数、使用される具体的な殺真菌剤又は殺虫剤、及びどのように殺真菌剤又は殺虫剤が製剤化されるかに依存する。当業者は、過度の実験をせずに、その量を決定することができる。典型的には、それは、およそ、殺真菌剤又は殺虫剤が、殺真菌剤又は殺虫剤として通常適用されるレベルである。例えば、アゾキシストロビンの場合(これは、懸濁濃縮物(市販製品であるAmistar(登録商標)又はOrtiva(登録商標)は、250g/lのアゾキシストロビンを含む懸濁濃縮物として売られている)の形態で売られている)、100から400g/ha、例えば200から300g/ha、典型的には250g/haが有効量である。
【0018】
殺真菌剤又は殺虫剤は、未変化形態で使用することができるが、通常は、製剤の形態で使用される。ここで、それは、担体、界面活性剤及び/又は農薬製剤技術において通常使用されるタイプの他の適用促進アジュバントと混合される。
【0019】
適切な担体及びアジュバントは、固形または液体であることができ、例えば天然又は再生鉱物、溶媒、分散剤、湿潤剤、粘着付与剤、増粘剤、結合剤又は肥料である。都合良くは、それらは、既知の方法で製剤化され、例えば乳化可能な濃縮物、被覆可能なペースト、直接的に噴霧可能な又は希釈可能な溶液、希釈エマルジョン、水和剤、可溶性粉末、粉剤、顆粒又はカプセルを、例えばポリマー物質中に封入することにより形成する。適用方法、例えばスプレー、噴霧、ダスティング、散乱、コーティング又は注入を、状況に応じて選択することができる。
【0020】
製剤は、既知の方法において、典型には、均質混合、製粉及び又は増量剤、例えば溶媒又は固形若しくは液状担体、適用可能な場合には1つ以上の界面活性化合物(界面活性剤)を用いた殺真菌剤又は殺虫剤の押し出しにより、調製することができる。
【0021】
農薬組成物は、一般的に、0.1から99%、好ましくは0.1から95%の殺真菌剤又は殺虫剤、99.9から1%、好ましくは99.9から5%の固形又は液状担体及び/又はアジュバント、及び0から25%、好ましくは0.1から25%の界面活性剤を含んで成る。
【0022】
市販製品又は湿式若しくは乾式ドレッシングが、好ましく濃縮物として製剤化される一方で、最終消費者は、植物を成長させるための希釈製剤を使用するだろう。
【0023】
粉剤及び水和剤のために典型的に使用される固形担体は、カルサイト、タルカム、カオリン、モンモリロナイト及びアタパルジャイト、高度分散ケイ酸又は吸収性ポリマーである。適切な造粒した吸着性粒状担体は、軽石、破砕レンガ、海泡石及びベントナイトであり、適切な非吸着性担体は、典型的にはカルサイト及びドロマイトである。
【0024】
製剤化される殺真菌剤又は殺虫剤の性質に依存して、適切な界面活性化合物は、優れた乳化、分散及び/又は湿潤特性を有する非イオン性、陽イオン性及び/又は陰イオン性界面活性剤である。用語「界面活性剤」は、界面活性剤の混合物も含む。
【0025】
製剤技術で通常使用される界面活性剤は、以下の文献中に見出すことができる:「McCutcheon‘s Detergents and Emulsifiers Annual」、MC Publishing Corp.,Glen Rock,N.J.,1988;及び、M.and J.Ash,「Encyclopedia of Surfactants」Vol.I−III,Chemical Publishing Co.,New York,1980-1981。
【0026】
高レベルの抗酸化物質とは、抗酸化物質を、同等の条件において生育された未処理植物よりも高いレベル、例えば5%又はそれ以上、好ましくは10%又はそれ以上で検出することができることを意味する。抗酸化物質レベルは、標準的な方法を用いて検出することができる。
【0027】
本発明は、高レベルの抗酸化物質を有する作物も提供する。この作物は、(i)ストロビルリン又はストロビルリン型殺真菌剤、又は(ii)トリアゾール、或いは(i)アベルメクチン、(ii)有機リン酸、(iii)ベンゾイル尿素又は(iv)ネオニコチノイドからなる群から選択される殺虫剤で処理された作物から得られる作物である。「作物」は、消費用に、又は消費用の抽出物を調製する際の使用のために収穫された作物の部分を意味する。
【0028】
本発明によると、成長期の茶植物の茎葉に、有効量のストロビルリン又はストロビルリン型殺真菌剤を適用することを含んで成る、高レベルのポリフェノールを有する茶植物を生産する方法も提供される。適切には、ストロビルリンは、アゾキシストロビンである。
【0029】
本発明によると、成長期に有効量のストロビルリン又はストロビルリン型殺真菌剤で処理した高レベルのポリフェノールを有する茶植物も提供される。
【0030】
本発明は、以下の実施例により説明される;
【実施例】
【0031】
実施例1−アゾキシストロビン、エマメクチン、ジフェノコナゾールトリフロキシストロビン又はチアメトキサム/ルフェヌロン混合物の茶植物への適用。
茶植物(日本緑茶、Yabukita)を5m2プロットで生育し、その葉を収穫した。収穫した葉をポリフェノールに関して試験した。収穫の14日前に、茶植物に、市販の製剤であるエマメクチン安息香酸塩(Affirm(登録商標))、 ジフェノコナゾール(Score(登録商標))、メチダチオン(Supracid(登録商標))、 アゾキシストロビン(Amistar(登録商標))又はルフェヌロンとチアメトキサムの混合物を噴霧した。他の同一の組の茶植物は、未処理とした。処理植物及び未処理植物からの葉の中の様々なポリフェノールの含有量を、表1に示す:
【0032】
【表1】

【0033】
アゾキシストロビン又はトリフロキシストロビンのいずれかを使用して、実験を繰り返した。処理植物及び未処理植物からの葉の中の様々なポリフェノール含有量を、表2に示す:
【0034】
【表2】

【0035】
上記で詳細に説明した両方の試験は、秋に実施した。夏季に実施した更なる試験は、ポリフェノール含有量のそのような著しい増大を示さず、アゾキシストロビンで処理した茶葉は、対照の葉のポリフェノール含有量の99%から103%を示した。理論に拘束されることを望む訳ではないが、アゾキシストロビンは、光合成を増大させ、それによりカテキン産生を増大させる効果を有するようである(カテキンは光合成の産物であるので)。光合成が活性である場合(例えば、夏季において)、アゾキシストロビンの添加は、光合成を更に促進せず、従って、カテキンレベルを更に上昇させることができないのかもしれないと提案される。
【0036】
実施例2−アゾキシストロビンのトマト植物への適用。
トマト植物(品種:Sunroad)を生育し、従来の殺真菌剤処理及び従来の処理とアゾキシストロビンを用いて噴霧した後、トマトを収穫した。収穫したトマトを室温で保存し、試料を収穫した。2、5、9及び12日後にリコピン濃度に関して試験した(各ボックスから各試験日において無作為に3個のトマトを選んだ)。トマトのリコピン含有量を、表3に示す:
【0037】
【表3】

【0038】
アゾキシストロビンで処理したトマトが、対照のトマトと比較して、上昇したリコピン濃度を示すことは、この表から明らかである。
【0039】
この試験を同様の条件であって、より小さな規模で繰り返した場合、リコピン含有量の著しい上昇は観察されなかった(対照:11.7mgのリコピン/100gのトマト;アゾキシストロビン処理:10.7mgのリコピン/100gのトマト)。
【0040】
実施例3−アゾキシストロビンのニンジン植物への適用
ニンジン植物を生育し、従来の殺真菌剤処理(クロロタノニル、水酸化銅、イミノクタジンポリオキシン及びトルクロホス−メチル)、及び従来の処理とAmistar Opti(登録商標)(アゾキシストロビン及びクロロタロニル)を用いて2回噴霧した後に、ニンジンを収穫した。収穫したニンジンのいくつかを、収穫後直ちにβ−カロチンに関して分析し、他のものは分析前に収穫後一週間保存した。直ちに分析したものに関して、アゾキシストロビンで処理した植物は、従来の殺真菌剤レジーム(regime)で処理したものよりも高いβ−カロチン濃度を示した。しかし、一週間保存したニンジンの分析は、β−カロチン濃度の明確な増大を示した(従来の処理:6.59mgのβ−カロチン/100gのニンジン;アゾキシストロビン処理:7.48mgのβ−カロチン/100gのニンジン)。従って、アゾキシストロビンは、成熟したニンジンにおけるβ−カロチン濃度に対して明確な効果を有するようである。
【0041】
実施例4−他の作物における試験
アゾキシストロビンによる植物の処理に関して、ダイズのイソフラボン濃度、及びナスとイチゴのアントシアニン濃度を調べるため、同様の作業を実施した。アゾキシストロビン処理は、ダイズ中で8%のイソフラボン濃度の増大が見出された(対照:120mgのイソフラボン/100gのダイズ;アゾキシストロビン処理:130mgのイソフラボオン/100gのダイズ)。更に、それはイチゴのアントシアニン濃度も50%まで上昇させたが(対照:200−220mgのアントシアニン/100gのイチゴ;アゾキシストロビン処理:210−420mgのアントシアニン/100gのイチゴ)、それはナスのアントシアニン濃度に対して効果を有さないようであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高レベルの抗酸化物質を有する作物の生産における、(i)ストロビルリン又はストロビルリン型殺真菌剤又は(ii)トリアゾールから成る群から選択される殺真菌剤、或いは(i)アベルメクチン、(ii)有機リン酸、(iii)ベンゾイル尿素又は(iv)ネオニコチノイドからなる群から選択される殺虫剤の使用。
【請求項2】
作物が、茶植物、トマト植物、ニンジン植物又はイチゴ植物である、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
作物が茶植物である、請求項2に記載の使用。
【請求項4】
抗酸化物質が、ポリフェノール又はカロテノイドである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の使用。
【請求項5】
殺真菌剤が使用される、請求項1〜4のいずれか一項に記載の使用。
【請求項6】
殺真菌剤がストロビルリンである、請求項5に記載の使用。
【請求項7】
ストロビルリンがアゾキシストロビン又はトリフロキシストロビンである、請求項6に記載の使用。
【請求項8】
ストロビルリンがアゾキシストロビンである、請求項7に記載の使用。
【請求項9】
作物の成長期の間に、有効量の(i)ストロビルリン又はストロビルリン型殺真菌剤又は(ii)トリアゾールから成る群から選択される殺真菌剤、或いは(i)アベルメクチン、(ii)有機リン酸、(iii)ベンゾイル尿素又は(iv)ネオニコチノイドからなる群から選択される殺虫剤を、作物の茎葉に適用することを含んで成る、高レベルのポリフェノールを有する作物を生産するための方法。
【請求項10】
ストロビルリンが使用される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
ストロビルリンがアゾキシストロビンである、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
作物が、茶植物、トマト植物、ニンジン植物、ダイズ植物又はイチゴ植物である、請求項9〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
作物が茶植物である、請求項12に記載の方法。

【公表番号】特表2009−526769(P2009−526769A)
【公表日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−553671(P2008−553671)
【出願日】平成19年2月7日(2007.2.7)
【国際出願番号】PCT/EP2007/001020
【国際公開番号】WO2007/093308
【国際公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【出願人】(500584309)シンジェンタ パーティシペーションズ アクチェンゲゼルシャフト (352)
【Fターム(参考)】