説明

植物ストレス耐性遺伝子およびその使用

植物ストレス、例えば、害虫侵襲、病害、乾燥、冠水、および過度の温度は、年間収穫量のかなりの損失をもたらしうる。かかるストレスによる損傷または損失を受けにくい新規な植物変種の開発に対する要求が続いている。本発明は、一般にROB5と呼ばれる全く新しいクラスの植物遺伝子の単離、特徴付けおよび使用を提供する。ROB5を発現するトランスジェニック植物は様々なストレス状況に対する耐性能力において顕著な改善を示しうる。さらに、ROB5発現は植物成長速度および植物活発性において顕著な改善をもたらしうる。本発明は、かかるROB5遺伝子およびそれによってコードされるペプチド、対応するROB5コンストラクトを発現する植物、ならびにその植物産物をすべて含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は植物ストレス耐性の分野に関し、例えば、乾燥、熱、寒冷、害虫感染、病害等に対する植物抵抗性を改善するための植物代謝の変更を意味する。本発明はさらにストレス耐性の向上を示す改変植物の作成方法、かかる方法により作成された植物、ならびにその産物に関する。
【背景技術】
【0002】
害虫侵襲、病害、および有害な環境条件によって、収穫がひどく損なわれるかまたは失われる。西洋においては、作物の荒廃により、農産業に関わるものが破綻しうる。世界の多くの他の地域ではその結果はより劇的であり得、例えば、広範な低栄養状態および飢饉が起こりうる。植物ストレスに対してより高い抵抗性を示し、したがって有害な条件における収穫量が増加し、作物不足の危険を緩和できる植物および作物の開発が長く望まれている。例えば、乾燥、熱および高塩条件に対する耐性の高い植物は、農業を以前は行うことが出来なかった半砂漠気候における農業の可能性を拓きうる。逆に、寒冷または凍結といった低温に対する耐性が上昇した新規作物の開発により、寒冷気候の地域における栽培期間をかなり長くすることが可能である。
【0003】
多数の植物遺伝子が植物がストレスに曝された際に発現レベルの上昇を示すことが知られている。かかる例としては、アブシジン酸により影響を受ける代謝経路に関わる遺伝子;様々な植物の機能、例えば、葉の老化、頂芽優性、および種子または芽の休眠を促進しうる天然の植物「成長ホルモン」が挙げられる。アブシジン酸のレベルはストレス下にある植物において上昇することが知られている。さらに、アブシジン酸の植物への外的施用は非生物的ストレス、例えば、凍結、寒冷、熱、塩および脱水に対する耐性を上昇させることが知られている(Guy (1990) Annu. Rev. Plant Physiol. Plant Mol. Biol. 41: 187-223.)。
【0004】
以前に、本発明者らは、コスズメノチャヒキ(Bromus inermis)の懸濁細胞培養に対する75μMのアブシジン酸の施用により、凍結耐性が上昇し、それとともに未知のタンパク質の特定の一群が相応して上昇し、および新規合成されたことを示した(Robertson et al. 1987 Plant Physiol. 84: 1331-1337; Robertson et al. 1988 Plant Physiol. 86: 344-347)。さらなる研究により、アブシジン酸処理したスズメノチャキヒ(bromegrass)細胞では耐熱性(Robertson et al. 1994 Plant Physiol. 105: 181-190)および耐塩性(Ishikawa et al. 1995 Plant Science 107: 83-93)が上昇していることが示された。
【0005】
比較2次元ゲル電気泳動を用いた研究により、多数の未知のタンパク質がストレスに応答して上方制御されうることが示された(Robertson et al. 1994)。20-30kDaのサイズ範囲におけるかかるタンパク質のなかには抗-デヒドリン抗体および寒冷応答性秋まきコムギタンパク質に対する抗体(Wcs120)と交差反応性を示すものもある。43-45 kDaの範囲の別の群のタンパク質は、20-30 kDa範囲のものと異なり、Wcs120と交差反応性を示さず、抗-デヒドリン抗体との交差反応性は弱かった。さらに43-45 kDaの範囲のタンパク質の中には、マイクロシークエンシングにより、最初のアミノ末端アミノ酸においてある程度の相同性を有するものが見いだされた。
【0006】
ストレス耐性が上昇した遺伝子改変作物を作成するかなりの試みにもかかわらず、今日までかかる作物はほとんどまたは全く市販されていない。Performance Plants Inc.は、乾燥条件下でコントロールと比較して収量が10%増加する気孔の機能を改変した耐乾性アブラナ植物を報告している。塩分含量が上昇したトランスジェニックトマト植物(Zhang、H-X and Blumwald、E. 2001. Nature Biotech、19: 765-768)は液胞 Na+/H+ 逆輸送タンパク質の過剰発現により産生された。非気候順化および寒冷気候順化アブラナ実生の凍結耐性はCBF (C-リピート/脱水応答要素結合因子)の過剰発現により増強しうる(Jaglo et al. 2001. Plant Physiol、103(4): 1047-1053)。この研究は、CBF遺伝子を構成的に発現するシロイヌナズナ(Arabidopsis)実生に凍結耐性のわずかな上昇が起こるという観察に基づくものであった(Gilmour、S.J. et al. 1998. Plant J.、16: 433-442.)。塩ストレスと乾燥ストレスの両方に対する上昇した耐性が液胞 H+-ピロフォスターゼを過剰発現するトランスジェニックシロイヌナズナ植物において確認された(Gaxiola、R.A. et al. 2001. Proc. Natl. Acad. Sci. USA、25: 11444-11449)。ほとんどの非生物的ストレスに関するトランスジェニック植物研究は、経済性のないモデル植物系であるシロイヌナズナ(Alabidopsis thaliana)を用いて行われてきた。
【0007】
外界からの刺激への耐性能力の高い新規植物の作成のこれからの見通しは、重要なストレス耐性制御遺伝子の入手可能性、およびその機能制御特性についての知識に依存するであろう。本出願の発明者らは、関与する生化学的経路の理解の進歩を目的として植物ストレス耐性の機構解明のため鋭意検討した。にもかかわらず、植物ストレス応答に関与する遺伝子およびタンパク質の特徴付けには多数の重要な問題があった。
【0008】
対応する方法が植物に有益な性質を付与するよう開発されるように植物ストレス応答のさらなる理解の進展が必要とされている。この必要性は、侵襲および病害の両方による損傷に対する耐性能力が上昇した作物の産生に拡張される。さらに、悪気候条件、例えば、過度の温度、乾燥、冠水、栄養欠乏、または毒素過多による損傷に抵抗性を示す作物の開発がいまだに要求されている。植物ストレス耐性の成長利益でさえ、穀物、アブラナおよび園芸の質と供給の安定化においてかなりの経済的インパクトを有しうる。発芽、成長および開花の促進が生育期間が短いかまたは生育が困難である領域において非常に重要である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
(発明の概要)
本発明の目的は少なくとも好適な形態において、植物において外因的に発現した際に、植物のストレス耐性および/または植物の成長が非改変植物と比較して上昇するヌクレオチド配列を提供することである。
【0010】
本発明の別の目的は少なくとも好適な形態において、非改変植物と比較してストレス耐性の変化および/または成長の変化を示すトランスジェニック植物を提供することである。
【0011】
本発明のさらなる目的は、ストレス耐性および/または植物成長能力を変化させるための、植物の改変方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らはアブシジン酸の存在に応答して上方制御される植物遺伝子の単離と特徴付けに成功した。さらに、本発明者らは、植物における該遺伝子の外因性発現により、広範なストレス条件に対するストレス耐性の予期せぬ劇的な上昇がもたらされることを見いだした。さらに予期しなかったことは、植物成長および活発性に対する外因性発現の効果であり、これは非改変植物と比較してかなり上昇していた。本発明者らはさらに対応する遺伝子が多数の植物種において発現していることを確認した。
【0013】
第一の態様において、本発明は、配列がROB5タンパク質をコードすることを特徴とする単離ヌクレオチド配列、またはその断片を提供する。
【0014】
別の態様において、本発明は配列が以下から選択されることを特徴とする単離ヌクレオチド配列を提供する:
a)配列番号1に示すROB5遺伝子、またはその相補鎖;
b) a)のヌクレオチド配列によってコードされるペプチドに対し、少なくとも50%の同一性を有するペプチドをコードするヌクレオチド配列、またはその相補鎖;
ここで、ヌクレオチド配列またはその相補鎖は、ヌクレオチド配列を外因的に発現するトランスジェニック植物のストレス応答および/または成長能力を非改変植物と比較して変化させるタンパク質またはその一部をコードする。
【0015】
好ましくは、ヌクレオチド配列は少なくとも 70 %、より好ましくは少なくとも 90%、さらに好ましくは少なくとも 95%、もっとも好ましくは少なくとも 99% の配列番号1に示すROB5遺伝子またはその相補鎖に対する同一性を有する。
【0016】
さらなる態様において、単離ヌクレオチド配列が以下から選択されることを特徴とする単離ヌクレオチド配列を提供する:
a)配列番号1によるROB5遺伝子、またはその相補鎖;
b) a)のヌクレオチド配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズするヌクレオチド配列、またはその相補鎖;
ここでヌクレオチド配列またはその相補鎖は、ヌクレオチド配列を外因的に発現するトランスジェニック植物のストレス応答および/または成長能力を非改変植物と比較して変化させるタンパク質またはその一部をコードする。
【0017】
好ましくは、ヌクレオチド配列の発現は以下からなる群から選択されるストレス応答の変化をトランスジェニック植物に付与する:耐熱性の上昇、耐寒性の上昇;耐凍性の上昇、耐乾性の上昇、冠水耐性の上昇、害虫に対する抵抗性の上昇、病害に対する抵抗性の上昇。
【0018】
あるいは、ヌクレオチド配列の発現はトランスジェニック植物に、以下からなる群から選択される成長能力の変化を付与する:成長速度の上昇、成長速度の低下、バイオマスの上昇、およびバイオマスの低下。
【0019】
より好ましくは、植物におけるヌクレオチド配列の発現は非改変植物と比較して植物の悪条件における生存率を上昇させる。
【0020】
本発明はまた、単離および精製ペプチドが本明細書に記載のヌクレオチド配列またはその相補鎖によってコードされることを特徴とする単離および精製ペプチドを含む。さらに、プロモーターに作動可能に連結した本発明のヌクレオチド配列を含むDNA 発現カセットを提供する。
【0021】
さらなる態様において、本発明は、ベクターおよび本明細書に記載するヌクレオチド配列または発現カセットを含むコンストラクトを提供する。好ましくは、コンストラクトは以下からなる群から選択されるプロモーターを含む:構成的プロモーター、誘導可能プロモーター、器官特異的プロモーター、組織特異的プロモーター、強いプロモーター、弱いプモーター、およびストレス誘導性プロモーター。
【0022】
別の態様において、本発明は、植物細胞または植物がコンストラクトで形質転換されていることを特徴とする植物細胞または植物を提供する。
【0023】
さらに別の態様において、本発明は以下の工程を含むことを特徴とする植物を遺伝的に改変する方法を提供する:
(a)形質転換され、全植物体に再生されうる植物細胞に、植物における形質転換と選抜に必要なDNA配列に加えて、プロモーターに作動可能に連結した本明細書に記載するヌクレオチド配列を含むコンストラクトを導入する工程;および、
(b)ヌクレオチド配列を含む植物を回収する工程。
【0024】
好ましくは、植物は非改変植物と比較してストレス耐性の変化および/または成長能力の変化を示す。より好ましくは、植物は以下からなる群から選択されるストレス応答の変化を示す:耐熱性の上昇、耐寒性の上昇;耐凍性の上昇、耐乾性の上昇、冠水耐性の上昇、害虫に対する抵抗性の上昇、病害に対する抵抗性の上昇。好ましくは、植物は以下からなる群から選択される成長能力の変化を示す:成長速度の上昇、成長速度の低下、バイオマスの上昇、およびバイオマスの低下。
【0025】
別の態様において、本発明は、本明細書に記載するヌクレオチド配列に実質的に相同的なDNA配列の同定および単離方法を含み、該方法は以下の工程を含むことを特徴とする:
ROB5 ヌクレオチド配列にストリンジェントな条件下でハイブリダイズできるディジェネレートオリゴヌクレオチドプライマーを合成する工程;
ディジェネレートオリゴヌクレオチドプライマーを標識する工程;および、
実質的に相同的なDNA配列についてDNAライブラリーをスクリーニングするためのプローブとして標識化ディジェネレートオリゴヌクレオチドプライマーを使用し、実質的に相同的なDNA配列をライブラリーから単離する工程。
【0026】
さらに別の態様において、本発明は本明細書に記載するヌクレオチド配列のうち選択された部分へハイブリダイズすることを特徴とする、ポリメラーゼ連鎖反応によりプライマーの間のDNA領域を増幅させるためのプライマー対に関する。
【0027】
さらなる態様において、本発明は本明細書に記載する単離ヌクレオチド配列の、非改変植物と比較してストレス応答の変化を示すトランスジェニック植物の作成のためであることを特徴とする使用を提供する。本発明はまた、本明細書に記載する単離ヌクレオチド配列の、非改変植物と比較して成長能力が変化したトランスジェニック植物の作成のためであることを特徴とする使用を提供する。
【0028】
別の態様において、本発明は、以下の工程を含むことを特徴とするストレス応答および/または成長能力が改変されたトランスジェニック植物の生産方法を提供する:
(a)形質転換され、全植物体に再生されうる植物細胞に、植物における形質転換および選抜に必要であるDNA配列に加えて、プロモーターに作動可能に連結したROB5遺伝子に由来するヌクレオチド配列を含むコンストラクトを導入する工程;および、
(b)該ヌクレオチド配列を含み、非改変植物と比較して、ストレス応答および/または成長能力が改変された植物を回収する工程。
【0029】
好ましくは、該方法は配列番号1に示すペプチドと少なくとも50%の同一性、より好ましくは少なくとも 70%の同一性、さらに好ましくは少なくとも 90%の同一性、さらに好ましくは少なくとも 95% の同一性、もっとも好ましくは少なくとも99%の同一性を有するペプチドをコードするヌクレオチド配列、またはその一部、またはその相補鎖を伴う。
【0030】
あるいは該方法は、配列番号1に示すヌクレオチド配列、またはその一部、またはその相補鎖、あるいは配列番号1に示すヌクレオチド配列にストリンジェントな条件下で結合するヌクレオチド配列、またはその一部、またはその相補鎖を伴う。
【0031】
ROB5 発現のための様々なセンス/アンチセンス方向および発現の組み合わせが、本発明のコンストラクト、植物および方法に含まれる。
【0032】
さらなる態様において、本発明はさらに以下の工程を含むことを特徴とするコンストラクトでの形質転換が成功した植物の同定方法を含む:
(a)形質転換され、全植物体へと再生されうる植物細胞に、植物における形質転換および選抜に必要なDNA配列に加えて、プロモーターに作動可能に連結した、ROB5遺伝子由来であって少なくともROB5遺伝子産物の一部をコードするヌクレオチド配列を含むコンストラクトを導入する工程;
(b)植物細胞を全植物体へと再生させる工程;および、
(c)植物を調べて、コンストラクトでの形質転換が成功し、ヌクレオチド配列を発現する植物を判定する工程。
【0033】
別の態様において、本発明はバイシストロン性ベクターを提供し、該バイシストロン性ベクターは、第一の組織特異的プロモーターに作動可能に連結した第一のROB5 ヌクレオチド配列、および第二の組織特異的プロモーターに作動可能に連結した第二のROB5 ヌクレオチド配列を含むことを特徴とする。好ましくは、トランスジェニック植物におけるベクターの発現は、第一および第二のヌクレオチド配列および作動可能に連結した第一および第二のプロモーターにより、植物の異なる組織において代替的なストレス耐性および成長能力特性をもたらす。あるいは、第一のヌクレオチド配列は第一のプロモーターに対してセンス方向であり、第二のヌクレオチド配列は第二のプロモーターに対してアンチセンス方向である。好ましくは、第一のヌクレオチド配列はROB5タンパク質またはその一部の生理活性形態をコードし、第二のヌクレオチド配列はROB5タンパク質またはその一部の生理不活性形態をコードする。
【0034】
さらなる態様において、本発明は本明細書に記載するバイシストロン性またはマルチシストロン性ベクターで形質転換されたトランスジェニック植物を含む。
【0035】
図面の簡単な説明
図1はスズメノチャヒキから単離したROB5遺伝子のcDNAおよび対応するペプチド配列を示す。
【0036】
図2は、35S プロモーターおよびROB5遺伝子を含む形質転換用ベクター pBIN19の模式図を示す。
【0037】
図3は、COR78 プロモーターおよびROB5遺伝子を含む形質転換用ベクター pSH737の模式図を示す。
【0038】
図4は、35S プロモーターおよびROB5遺伝子、そしてCOR15 プロモーターおよびPPA遺伝子を含む形質転換用ベクター pSH737の模式図を示す。
【0039】
図5は、耐凍性を評価するためのアブラナにおけるROB5遺伝子発現の効果を示す。植物を2日間、2℃(明条件)および0℃(暗条件)で16時間光周期でインキュベートし、-9℃のインキュベーション温度で2周期2日間試験した。(a)はコントロールアブラナ植物とCOR78:ROB5コンストラクトで形質転換された様々な系統とから収穫された種子の総重量(W)をグラムにおいて比較するグラフであり、(b)は凍結に曝した後のコントロールとCOR78:ROB5形質転換系統 13915の比較写真であり、そして(c)はコントロール植物と COR78:ROB5形質転換系統 13516から収穫された全種子の比較写真である。
【0040】
図6は、耐熱性の評価のためのアブラナにおけるROB5遺伝子発現の効果を示す。植物を開花時期に、42℃16時間、2周期2日間インキュベートした。(a)は熱ストレスの後の、コントロールアブラナ植物と様々なCOR78:ROB5コンストラクトによる形質転換系統から収穫された種子の総重量(W)をグラムにおいて比較したグラフであり、(b)は熱に曝した後のコントロールとCOR78:ROB5形質転換系統 13513の比較写真である。
【0041】
図7は耐乾性の評価のための、アブラナにおけるROB5遺伝子発現の効果を示す。水分損失を15日間の乾燥(水無し)条件下で評価した。(a)は15日間水分を与えなかったコントロールアブラナおよびCOR78:ROB5形質転換系統 13513についてのパーセンテージ水分損失(%M)を示し、(b)はコントロールと2つのCOR78:ROB5形質転換系統(13911および13915)についての播種後1〜20日間からのパーセンテージ実生出芽 (%E)を示し、(c)は、長期の乾燥条件の後のコントロールとCOR78:ROB5形質転換実生(形質転換系統 13514)の比較写真を示し、(d)はコントロールとCOR78:ROB5形質転換植物(形質転換系統 13911)の長期の乾燥条件後での比較写真を示す。
【0042】
図8は、実生の出芽および活発性(vigor)の評価のための、アブラナにおけるROB5遺伝子発現の効果を示す。実生発芽条件は22℃24時間、または8℃長期とし、コントロールとCOR78:ROB5形質転換植物とを含めた。(a)は22℃で24時間後のコントロールと形質転換系統(13513、13911、および13915)の種子のパーセンテージ発芽(%G)を示し、(b)は種蒔き(圃場試験)の数日後のコントロールおよび形質転換植物(系統13909、13911、および13912)についてのメートル当たりの実生出芽 (E)を示し、(c)は8℃での種蒔きの数日後のコントロールおよび形質転換植物(系統13516、13911、および13915)のパーセンテージ発芽(%G)を示す。
【0043】
図9は、開花までの日数および総収率の評価のためのアブラナにおけるROB5遺伝子発現の効果を示す。植物を屋外で4lのポットで栽培し、コントロールとCOR78:ROB5形質転換植物を含めた。(a)は、コントロールと形質転換系統の開花までの日数の比較を示し、(b)はコントロールと形質転換系統についての2.00mmより大きい直径の種子のパーセンテージ(%S)を示し、(c)は、種蒔きの69日後のコントロールと形質転換系統のインチにおける高さ(H)を示し、(d)はコントロールと形質転換植物から収穫した1000 穀粒の平均重量 W (グラム)を示し、そして(e)は種蒔きの69日後のコントロールと形質転換系統 13514の比較写真を示す。
【0044】
図10は耐凍性の評価のためのアマにおけるROB5遺伝子発現の効果を示す。植物を2℃(明条件)および0℃(暗条件)で16時間の光周期で2日間インキュベートし、-9℃のインキュベーション温度で開花時期において2周期2日間試験した。(a)はコントロールアマ植物とCOR78:ROB5コンストラクトで形質転換された様々な系統から収穫した種子の総重量 (W)をグラムにおいて比較するグラフであり、(b)は、様々な温度に曝したコントロールとCOR78:ROB5形質転換系統の比較写真を示す。
【0045】
図11は、耐熱性の評価のための、アマにおけるROB5遺伝子発現の効果を示す。植物を42℃で16時間、開花時期において2周期2日間インキュベートした。(a)はコントロールアマ植物とCOR78:ROB5コンストラクトで形質転換された様々な系統の、熱ストレス後に収穫された種子の総重量 (W)をグラムにおいて比較するグラフであり、(b)は熱に曝した後のコントロールとCOR78:ROB5形質転換系統 13467の比較写真を示す。
【0046】
図12は耐乾性の評価のためのアマにおけるROB5遺伝子発現の効果の効果を示す。水分損失を15日間、乾燥(水無し)条件で評価した。(a)はコントロールアマおよびCOR78:ROB5形質転換系統についての植物重量(W)を示し、(b)はコントロールおよび2つのCOR78:ROB5形質転換系統についての1〜17日間の実生についてのパーセンテージ水分損失(%M)を示し、(c)は延長した乾燥条件後のコントロールとCOR78:ROB5形質転換植物(形質転換系統 13818)の比較写真を示す。
【0047】
図13は実生の出芽と発芽の評価のための、アマにおけるROB5遺伝子発現を示す。実生発芽条件は22℃24時間、または8℃3日間とし、コントロールとCOR78:ROB5形質転換植物とを含めた。(a)は8℃で3日間後の種子のコントロールおよび形質転換系統のパーセンテージ 発芽(%G)を示し、(b)は種蒔きの12-28日後のコントロールと形質転換系統についてのメートル当たりの実生出芽(E)を示し(圃場試験)、(c)は22℃での24時間の発芽時間の後のコントロールおよび形質転換植物についてのパーセンテージ発芽(%G)を示す。
【0048】
図14は開花までの日数および総収率の評価のための、アマにおけるROB5遺伝子発現の効果を示す。植物を屋外で4lのポットで栽培し、コントロールとCOR78:ROB5形質転換植物とを含めた。(a)は、コントロールおよび形質転換系統が開花するまでの、種蒔き後の日数の比較を示し、(b)は種蒔きの48日後のコントロールと形質転換系統とのmm における高さ (H)を示し、(c)はコントロールと形質転換植物から収穫した1000の穀粒の平均重量(グラム)を示し、(d)は、コントロールアマ植物と形質転換アマ植物系統13850の種蒔きの48日後の比較写真を示す。
【0049】
図15は、耐凍性の評価のためのジャガイモにおけるROB5遺伝子発現の効果を示す。植物を2℃(明条件)および0℃(暗条件)にて16時間の光周期で2日間インキュベートし、それらを-6℃のインキュベーション温度で開花時期において2周期2日間試験した。(a)は、コントロールジャガイモ植物とCOR78:ROB5コンストラクトで形質転換された様々な系統についてのパーセンテージイオン漏出(%I)を比較するグラフを示し、(b)はコントロールジャガイモ植物と様々な形質転換細胞系統についてのパーセンテージイオン漏出(%I)を比較するグラフを示し、(c)はコントロールおよび様々な形質転換植物の-4℃での植物生存率 (V)の目視評価の比較を示し、(d)は凍結に曝した後のコントロールと35S:ROB5::COR15:PPA 形質転換系統 13716の比較写真を示し、(e)は凍結に曝した後のコントロールとCOR78:ROB5形質転換系統 13669の比較写真を示す。
【0050】
図16は、耐熱性の評価のためのジャガイモにおけるROB5遺伝子発現の効果を示す。植物を開花時期において42℃で16時間、2周期2日間インキュベートした。(a)はコントロール と35S:ROB5またはCOR78:ROB5コンストラクトのいずれかで形質転換された様々な植物系統の凍結による損傷の程度の目視比較を示し、ここで、C=コントロール、P=凍結による損傷の程度の目視観察、0=損傷無し、+=中程度の損傷(50% イオン漏出)、および++=重度の損傷(>50% イオン漏出)であり、(b)は熱に曝した後のコントロールおよび35S:ROB5形質転換植物 13637、およびCOR78:ROB5形質転換植物 13650の比較写真を示す。
【0051】
図17は耐乾性の評価のためのジャガイモにおけるROB5遺伝子発現の効果を示す。水分損失を15日間乾燥(水無し)条件で評価した。(a)はコントロールジャガイモおよび35S:ROB5形質転換系統についての塊茎収量(T)を示し、(b)はコントロールジャガイモおよびCOR78:ROB5形質転換系統についての塊茎収量(T)を示し、(c)はコントロールジャガイモおよび35S:ROB5::COR15:PPA 形質転換系統についての塊茎収量(T)を示す。
【0052】
図18は出芽の評価のための、ジャガイモにおけるROB5遺伝子発現の効果を示す。(a)はコントロールと形質転換系統の、種蒔きの40日後に圃場に現れたパーセンテージ隆起(%D)を示し、(b)は圃場における種蒔きの40日後のコントロール とCOR78:ROB5形質転換植物の比較写真を示す。
【0053】
図19は成熟までの日数および総収率の評価のためのジャガイモにおけるROB5遺伝子発現の効果を示す。(a)は種蒔きの51日後の、コントロールと形質転換植物の高さ(H)(mm)の比較を示し、(b)は種蒔きの51日後のコントロールと形質転換ジャガイモ植物の収穫した塊茎の総重量(W)(kg)を示す。
【0054】
図20は、ROB5タンパク質 (41-43 kDa)を発現するコントロールおよびジャガイモトランスジェニック系統のウェスタンブロット分析を示す。(a)は35S:ROB5で形質転換された系統を示し、(b)はCOR78:ROB5で形質転換された系統を示し、(c)は35S:ROB5::COR15:PPAで形質転換された系統を示す。各系統から単離した総可溶性タンパク質画分の(60,000x g 上清)アリコットを一次元SDS-PAGEにかけた後、エレクトロブロッティングし、ROB5タンパク質に対するポリクローナル抗体でプロービングした。ジャガイモ植物を生育チャンバで栽培した後、タンパク質単離のために葉を収穫した。COR78およびCOR15を8℃、16時間光周期で4日間寒冷気候順化させた。
【0055】
図21は、ROB5またはその免疫反応性ホモログの発現のアッセイのための、(a)、春アブラナ(spring canola) cv. Quest、(b) 冬アブラナ(winter canola) cv. Expressおよび(c) 春まきコムギ(spring wheat)cv. Katepwaのウェスタンブロット分析を示す。
【0056】
図22はスズメノチャヒキ以外の種におけるROB5ホモログの証拠を示すための2D SDS-PAGEおよびエレクトロブロッティング実験を示す。ブロットは様々な以下を含む植物由来であった(a) アマ (Linum usitatissimum) cv. Norwin、(b) オオムギ (Hordeum vulgare) cv. Harrington、(c) タバコ (Nicotiana tabacum)、(d) トマト (Lycopersicon lycopersicum)、(e) キュウリ (Cucumis sativus)、および(f) スズメノチャヒキ(Bromus inermus) cv. Leyss。
【0057】
図23は「非ストレス」部位におけるコントロール植物と比較してCOR78:ROB5形質転換アブラナ植物の出芽が促進されていることを示す。(a)グラフは MacGregor、MBにおける種を播いた地面のメートル当たりの出芽した実生の平均数(E)を示し、 (b) グラフはPortage la Prairieにおける種を播いた地面のメートル当たりの出芽した実生の平均数(E)を示す。
【0058】
図24は「非ストレス」部位における出芽の3週間後のコントロール植物と比較してのCOR78:ROB5形質転換アブラナ植物の成長と発達の促進を示す。(a)グラフは MacGregor、MBにおける試験についての実生の平均高さH (cm)を示し、(b)グラフはPortage la Prairieにおける試験についての実生の平均高さH (cm)を示す。
【0059】
図25は「非ストレス」部位におけるコントロール植物と比較してのCOR78:ROB5形質転換アブラナ植物の成熟の促進および開花までの日数の減少を示す。(a) グラフはMacGregor、MBにおける試験についての開花までの平均時間(F) (種蒔き後日数)を示し、(b)グラフはPortage la Prairie における試験についての開花までの時間(F) (種蒔き後日数)を示す。
【0060】
図26は「ストレス」部位におけるコントロール植物と比較してのCOR78:ROB5形質転換アブラナ植物の成熟の促進および開花までの日数の減少を示す。(a)グラフはWakaw、SKにおける試験についての開花までの平均時間(F) (種蒔き後日数)を示し、(b) グラフは Aberdeen、SKにおける試験についての開花までの時間(F) (種蒔き後日数)を示し、(c) グラフはSaskatoon、SKにおける試験についての開花までの平均時間(F) (種蒔き後日数)を示し、 (d)は(c)についての植物成長の比較写真であり、コントロール植物は左の列に示し、トランスジェニック(13513)植物は右の列に示す(小花はこの実験については「袋に入れなかった」(not bagged)ことに注意)。
【0061】
図27は「非ストレス」部位におけるコントロール植物と比較してのCOR78:ROB5形質転換アブラナ植物の収穫期における成熟の促進を示す。(a) グラフはMacGregor、MBにおける試験についての平均パーセンテージ成熟(%M)を示し、(b)グラフはPortage la Prairie、MBにおける試験についての平均パーセンテージ成熟(%M)を示す。
【0062】
図28はコントロール植物と比較しての(「ストレス」部位における)COR78:ROB5形質転換アブラナ植物についての収穫期の成熟の促進を示す。(a)は8月8日のコントロールと形質転換植物(系統 13513)の比較写真を示し、(b)は2003年9月26日のコントロールと形質転換植物(系統 13513)の比較写真を示す。形質転換植物についての活発性とさやの発達の上昇に注目されたい。
【0063】
図29は「非ストレス」部位におけるコントロールアブラナ植物と比較してのCOR78:ROB5形質転換植物のさや充填量の上昇を示す。(a)グラフはMacGregor、MBにおける試験についての平均パーセンテージ・さや充填量(%P)を示し、(b) グラフはPortage la Prairie、MBにおける試験についての平均さや充填量 (%P)を示す。
【0064】
図30は「ストレス」または「強度ストレス」部位におけるコントロールアブラナ植物と比較してのCOR78:ROB5形質転換植物のさや充填量の上昇を示す。(a) グラフはAberdeen、SK (ストレス)における試験についての平均パーセンテージ・さや充填量(%P)を示し、(b) グラフはNisku、AB (強度ストレス)における試験についての平均さや充填量(%P)を示す。
【0065】
図31はCOR78:ROB5形質転換アブラナ植物における成熟および根の発達の促進を示す。(a)はWakaw、SK (ストレス)における圃場についてのコントロール植物 (左)と比較してのアブラナ形質転換系統 13516 (右) の成熟の促進を示す比較写真であり、(b)はWakaw、SKにおけるコントロール植物 (左)と比較してのアブラナ形質転換系統 13513 (右)の根の発達を示す比較写真である。
【0066】
図32は「非ストレス」部位 (Portage la Prairie、MB)におけるコントロール植物と比較してのCOR78:ROB5形質転換アブラナ植物の植物当たりの種子の総収量および質 (T、グラム)を示すグラフである。
【0067】
図33は「ストレス」部位におけるコントロール植物と比較してのCOR78:ROB5形質転換アブラナ植物の種子の総収量および質を示す。(a) グラフはAberdeen、SKにおけるコントロールと形質転換植物についての種子の総収量(T、グラム)を示し、(b)グラフはWakaw、SKにおけるコントロールと形質転換植物についての種子の総収量(T、グラム)を示す。
【0068】
図34は「非ストレス」部位 (MacGregor、MB)におけるコントロール植物と比較してのCOR78:ROB5形質転換アブラナ植物についての直径2.22mmを超える種子の数のパーセンテージ(%S)を示す。
【0069】
図35は「ストレス」部位におけるコントロール植物と比較してのCOR78:ROB5形質転換アブラナ植物についてのあらかじめ定められた直径より大きい種子の数のパーセンテージ(%S)を示す。(a)グラフはWakaw、SK部位における植物から収穫した直径2.22mmを超える種子の総パーセンテージを示し、(b) グラフはSaskatoon、SK部位における植物から収穫した直径2.00mmを超える種子の総パーセンテージを示す。
【0070】
図36はストレス部位 (Saskatoon、SK)において栽培したコントロールとCOR78:ROB5植物から収穫した種子の比較を示す。(a) グラフはコントロールと形質転換アブラナ植物から収穫した種子の1000 穀粒重量 W (g)を示し、(b)はコントロール (左)とCOR78:ROB5形質転換植物(右)由来の種子の比較写真を示す。トランスジェニック植物由来の種子における種子の質と成熟の改善に注目されたい。
【0071】
図37は、非塩ストレスおよび塩ストレス条件下でのコントロール植物と比較してのCOR78:ROB5形質転換アブラナ植物の発芽および種子の質の上昇を示す。(a)グラフは非塩ストレス条件下(ddH2O、24℃で施用)でのストレス部位における8日間のコントロールおよび形質転換植物(平均4プレート)のパーセンテージ発芽(%G)を示し、(b)グラフは塩ストレス(80mM塩、24℃で施用)条件下でのストレス部位における7日間のコントロールおよび形質転換植物(平均4プレート)のパーセンテージ発芽(%G)を示す。
【0072】
定義
単数形を表す「ある」、「その」といった語は、特に明示しない場合複数形の意味も含む。
【0073】
「コード配列」または「コード領域」は、タンパク質のアミノ酸配列または機能的RNA、例えば、tRNAまたはrRNAをコードする遺伝子の部分である。コード配列は典型的にはタンパク質の最終的なアミノ酸配列または構造核酸の最終的な配列を表す。コード配列は遺伝子において介在配列によって分断されていてもよく、典型的には介在配列は成熟コード配列にはみられない。
【0074】
特に明示しない場合、本明細書および図面において示される「C」は「コントロール」を意味する。コントロール植物または種子はROB5形質転換ベクターによる修飾を経ていない(空のベクターを含んでいてもよい)実質的に野生型植物をいう。
【0075】
「外因性」遺伝子発現は、細胞内、または生物体の細胞内の遺伝子配列の発現をいい、ここで遺伝子配列は(例えば、形質転換/形質移入により)細胞または生物体に人工的に導入されたものである。外因性遺伝子発現は細胞の野生型ゲノム内から起こる「内因性」遺伝子発現と対照的である。外因性遺伝子配列の存在は、対応する非改変細胞または生物体に存在しない特性を改変された細胞または生物体に付与しうる。遺伝子は、発現コンストラクトの一部を形成する遺伝子カセットから外因的に発現するものであってもよい。さらに、発現コンストラクトは、細胞の内因性 DNAから独立して保持され得、あるいは細胞のゲノム内により安定に組み込まれうる。
【0076】
「バイシストロン性」ベクターまたは「バイシストロン性」コンストラクトは少なくとも2つのプロモーター配列を有する形質転換可能なDNA配列を含む。バイシストロン性コンストラクトの場合、各プロモーター配列はコード配列に作動可能に連結して遺伝子カセットを形成し、各遺伝子カセットの発現により対応するリボ核酸が産生される。「バイシストロン性」の語は、「マルチシストロン性」も含み、マルチシストロン性コンストラクトは多数の遺伝子カセットを含んでいてもよい。
【0077】
「アミノ酸配列をコードするポリヌクレオチド」は、成熟タンパク質配列の少なくとも一部、典型的にはペプチド結合を介して結合する典型的には連続するアミノ酸列の遺伝コードをコードする核酸配列をいう。「アミノ酸配列」は典型的には特定の順序における2以上のアミノ酸残基、より典型的には10以上のアミノ酸である。
【0078】
「相補鎖」または「相補的配列」は、Watson-Crick 塩基対合則にしたがって別のヌクレオチド配列と水素結合二本鎖を形成するヌクレオチドの配列である。例えば、5'-AGCT-3'の相補的塩基配列は3'-TCGA-5'である。
【0079】
「発現」は、構造RNA (rRNA、tRNA)またはメッセンジャーRNA (mRNA)への遺伝子の転写、mRNAの場合は次いでタンパク質への翻訳をいう。
【0080】
ポリヌクレオチドは実質的に同じ生理機能を果たす場合「機能的に同等」である。実質的に同じ生理機能とは、類似のタンパク質活性またはタンパク質機能がmRNAポリヌクレオチドによってコードされるか、構造ポリヌクレオチドが類似の構造および生理活性を有することをいう。
【0081】
ポリヌクレオチドは同じ生物体において同じ配列にて天然に共に存在しない場合、互いに「異種」である。ポリヌクレオチドは、その生物体において特定の形態および配列で天然に存在しない場合、生物体にとって異種である。
【0082】
2つの配列におけるヌクレオチドまたはアミノ酸残基の配列がそれぞれ本明細書に記載する至適対応するようアラインされた際に同一である場合、ポリヌクレオチドまたはポリペプチドは「相同的」または「同一」配列を有する。2以上のポリヌクレオチドまたはポリペプチド間の配列比較は、一般に2つの配列の一部を局所領域を同定および比較するために配列の一部にわたって比較することにより行われる。比較部分は一般に約20〜約200の連続ヌクレオチドまたは連続アミノ酸残基またはそれ以上である。ポリヌクレオチドおよびポリペプチドについての「配列同一性のパーセンテージ」または「配列相同性のパーセンテージ」、例えば、 50、60、70、80、90、95、98、99または100パーセントの配列同一性は、比較領域にわたって至適アラインメントについてギャップを含んでいてもいなくてもよい、2つの至適アラインメントされた配列を比較することによって決定でき、ここで、比較するポリヌクレオチドまたはポリペプチド配列の部分は2つの配列の至適アラインメントのために参照配列(これは付加または欠失を含まない)と比較して付加または欠失(即ちギャップ)を含んでいてもよい。
【0083】
相同性または類似性のパーセンテージは以下によって計算すればよい:
(a)両方の配列に起こる同一核酸塩基またはアミノ酸残基の位置数を測定して、一致位置の数を得る;
(b)一致位置数を比較枠における総位置数で割る;および、
(c)結果に100を掛け、配列同一性のパーセンテージを得る。
【0084】
比較のための配列の至適アラインメントは、公知アルゴリズムのコンピュータによる実行、または検査により行うことが出来る。容易に入手可能な配列比較および複数配列アラインメントアルゴリズムはそれぞれ、Basic Local Alignment Search Tool (BLAST) (Altschul、S.F. et al1990. J. Mol. Biol. 215:403; Altschul、S.F. et al1997. Nucleic Acids Res. 25: 3389-3402)および ClustalWプログラムである。BLAST はインターネット上でhttp://www.ncbi.nlm.nih.govから入手可能でありClustalWのあるバージョンはhttp://www2.ebi.ac.ukから入手できる。その他の好適なプログラムとしては、GAP、BESTFIT、FASTA、および TFASTA 、Wisconsin Genetics Software Package (Genetics Computer Group (GCG)、575 Science Dr.、Madison、WI)が挙げられる。さらに正確には本明細書および請求の範囲において用いる、アミノ酸配列の「配列同一性のパーセンテージ」または「配列相同性のパーセンテージ」は、上記のように入手できるBLASTX プログラムのデフォールト値に従って決定された至適配列アラインメントに基づいて決定されたものである。
【0085】
配列同一性は典型的には同一残基を順に有する配列をいい、一方、配列類似性は類似または機能的に関連した残基を順に有する配列をいう。例えば同一ポリヌクレオチド配列は異なるポリヌクレオチド配列においてみられるように特定のヌクレオチド配列において同一ヌクレオチド塩基を有するであろう。配列類似性は特徴において類似の配列を含む。例えばプリンおよびピリミジンが特定の様式で配置しているといった特徴である。アミノ酸配列の場合、配列同一性は特定の順の同一アミノ酸残基をいい、配列類似性では特定の順で位置する類似の化学的特性(例えば、塩基性アミノ酸または疎水性アミノ酸)を有するアミノ酸も許容される。
【0086】
「ストリンジェントな条件」または「ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件」の語は、プローブがそのその他の配列と比較して検出可能に大きい程度にて標的配列にハイブリダイズする条件をいう(例えば、バックグラウンドに対して少なくとも2倍)。ストリンジェントな条件は配列に依存し、状況に応じて異なる。より長い配列はより高い温度で特異的にハイブリダイズする。一般に、ストリンジェントな条件は特定のイオン強度とpHにおいて特異的配列についての熱融解点 (Tm)より約5℃低いよう選択される。Tmは(特定のイオン強度およびpHで)相補的標的配列の50%が完全に一致するプローブとハイブリダイズする温度である。典型的には、ストリンジェントな条件は、pH 7.0 〜8.3にて塩濃度が約 1.0 M Na イオン未満、典型的には約 0.01〜1.0 M Naイオン濃度(またはその他の塩)であり、温度は短いプローブについては (例えば10〜50 ヌクレオチド)少なくとも 約 30℃、そして長いプローブ(例えば50ヌクレオチドより長い)については少なくとも約 60℃の条件である。ストリンジェントな条件は、不安定化剤、例えば、ホルムアミドの添加によっても達成されうる。低ストリンジェンシー条件の例としては、30% ホルムアミド、1 M NaCl、1% SDSのバッファー溶液での37℃でのハイブリダイゼーション、そして2X SSC、50℃での洗浄が含まれる。高ストリンジェンシー条件の例としては、50% ホルムアミド、1 M NaCl、1% SDS中での37℃でのハイブリダイゼーション、そして0.1X SSCでの、60℃の洗浄が挙げられる。ハイブリダイゼーション手順は当該技術分野で周知であり、Ausubel et al.,(Ausubel F.M.、et al.,1994、Current Protocols in Molecular Biology、John Wiley & Sons Inc.)に記載されている。
【0087】
「単離」とは以下のような物質をいう:
(1)その天然環境にてみられる、それと通常ともにあるか相互作用する成分を実質的にまたは本質的に含まない;または、
(2)その天然環境にあると、物質が天然ではなく組成物に変わっていた、および/または、その環境でみられる物質に自然ではない細胞の部位に位置していた。
【0088】
単離物質は、その天然環境におけるその物質と共にはみられない物質を所望により含んでいてもよい。例えば、天然の核酸は、それが由来する細胞内で行われる非天然、合成方法により、それが変化するかあるいは変化したDNAから転写されると単離核酸となる。
【0089】
2つのDNA配列は、その連結により2つの配列が互いにその通常の機能を行うようになっている場合、「作動可能に連結」している。例えば、プロモーター領域はプロモーターがコード配列の転写を引き起こすことが出来、該コード配列がプロモーターの活性に応答して発現することを意図された産物をコードする場合、コード配列に作動可能に連結している。
【0090】
「ポリヌクレオチド」は2以上のデオキシリボヌクレオチド(DNAの場合)またはリボヌクレオチド(RNAの場合)の配列である。
【0091】
「DNA コンストラクト」は天然の遺伝子から単離された、即ち核酸のセグメントを含むよう改変された核酸分子であって、そのセグメントは天然には通常存在しないように組み合わされて並置されたものである。
【0092】
「ポリペプチド」は2以上のアミノ酸の配列である。
【0093】
「プロモーター」即ち転写制御領域はシス作用性DNA配列であり、一般に遺伝子の開始部位の上流に位置し、それに対してRNA ポリメラーゼが結合して正しい転写を開始しうるものである。
【0094】
「組換え」ポリヌクレオチド、例えば組換えDNA分子は、2以上の非相同的DNA分子のライゲーションにより形成された新規核酸配列である(例えば、組換えプラスミドはその中にクローニングされた外来DNAの1以上のインサートを含む)。
【0095】
「ストレス耐性」は、植物が耐えなければならないあらゆるタイプのストレスに関し、かかる植物がそのストレスに耐えうる能力である。ストレスにはこれらに限定されないが以下を含む群から選択される:熱、寒冷、凍結、乾燥、冠水、強風等。ストレスはその他の外部因子、例えば、害虫侵襲および植物病害により誘発されうる。それゆえ「ストレス」の語はさらにかかる侵襲を含む。ストレス耐性は過剰な損傷および/または死をともなうことなくかかるストレスに立ち向かう植物の能力である。
【0096】
「成長能力」は成長または活発性の上昇を示す植物の現在または将来の能力をいう。かかる成長は植物の全バイオマスに関する場合もあるが、特定の器官の成長に関する場合もある。成長または活発性の上昇は、特定の植物または植物器官がその重量を変化させる速度に関する。典型的にはかかる重量変化は重量の増加であるが、状況によっては重量の減少が望ましい場合もある。
【0097】
「形質転換」は、異なる遺伝子型の別の細胞からの組換えDNA の外部からの付与による細胞のゲノムの指向性改変を意味し、それによって組換えDNA が取り込まれ、対象細胞のゲノムに組み込まれる。
【0098】
「トランスジェニック植物」は有性または無性生殖した、外来DNAを担持し続けるすべての子孫、雑種およびその交雑種を含む。
【0099】
好適な態様の詳細な説明
本発明は遺伝子の単離および特徴付け、そしてそれによってコードされるタンパク質を記載し、それらを「ROB5」と総称する。本発明者らはROB5の単離に成功しただけでなく、トランスジェニック植物におけるROB5の発現が植物のストレス耐性に対して予期せぬ強力な効果を有しうることをみいだした。さらに予期せぬことに、植物の成長能力に対するROB5 発現の劇的な効果を見いだした。この点について、外因性ROB5 発現は、植物活発性および植物バイオマスをあらかじめ定めた期間にわたり非改変植物と比較して有意に向上させる。
【0100】
本発明はそれゆえ、その近いホモログの存在が知られていない一群の遺伝子を規定する。いくつかのアラインメントプログラムを用いて、本発明者らはROB5遺伝子およびタンパク質配列が公知の植物遺伝子およびタンパク質配列に対して独特であることを見いだした。表1はROB5タンパク質が当該技術分野で公知のその他のタンパク質に対して100%相違し、一般に約 30%以下の配列同一性しか有さないことを示す。このデータはROB5が完全に新規なセットの遺伝子およびタンパク質を含み、そして特殊な細胞機能を有するであろうことを示している。ROB5 は様々な植物ストレスに応答して上方制御されることから、ROB5はおそらく植物の細胞および組織内の細胞またはゲノム損傷を防止するための代謝経路の調節に関与していると考えられる。いずれにせよ、ROB5が該タンパク質を外因的に発現するトランスジェニック植物に有利な特性を付与する能力を有することは予期せぬことであった。
【0101】
本発明はそれゆえ、ROB5遺伝子配列、またはその断片、あるいはそのホモログを含むヌクレオチド配列を包含する。かかるヌクレオチド配列には、それに限定されないが、図1に示す遺伝子配列およびその断片が含まれる。好ましくは、本発明のヌクレオチド配列は、植物におけるROB5の外因性発現が、非改変植物と比較して1以上の性質の変化を示すように植物を誘導するように、植物代謝を変化させる能力を有し、各性質はこれらに限定されないが以下を含む群から選択される:熱、寒冷、乾燥、冠水、凍結に対する耐性の上昇、低栄養耐性、高い毒素耐性、害虫抵抗性、病害抵抗性。本発明の配列はさらに図1に示す配列由来のヌクレオチドおよびペプチド配列を含む。
【0102】
本発明の目的のために、配列番号1によってコードされるタンパク質に対して実質的に50%以上の相同性を有するタンパク質であって、少なくとも植物ストレス耐性および/または植物成長能力を変化させる能力を有するタンパク質をコードする核酸配列を本明細書において「ROB5」タンパク質をコードする「ROB5」コード配列という。したがって「ROB5遺伝子」は配列番号1に示される遺伝子によってコードされるタンパク質と、アミノ酸配列と生理機能の両方に関して実質的に類似のタンパク質をコードする。
【0103】
本発明は、ROB5遺伝子、およびその部分、その相補鎖、ならびにそのホモログの、ストレス応答および/または成長特性が変化したトランスジェニック植物の作成のための使用を含む。本発明はまたROB5遺伝子によってコードされるペプチドに対して少なくとも50%の同一性、好ましくは70%の同一性、好ましくは90%の同一性、より好ましくは95%の同一性、もっとも好ましくは99%の同一性を有するペプチドをコードする核酸配列の使用も含む。この点で、少なくとも50%または70%の推定アミノ酸配列同一性を有する相同的タンパク質は本発明によって定義される活性を有するタンパク質を含むと考えられ、ここで相同的タンパク質の発現の破壊または過剰発現により、本願に記載の変化した成長能力を有する植物が作られると予想される。かかるタンパク質は、類似の種または関連のない種の植物由来のいずれのものであってもよい。
【0104】
本発明はまたROB5遺伝子によってコードされるペプチドに対して少なくとも90%、95%または99%の配列同一性を有するペプチドをコードするポリヌクレオチド配列も含む。このクラスの関連するタンパク質は、非常に類似または同一の触媒またはその他の生理活性を有する密接な遺伝子ファミリーメンバーを含むと意図される。さらに、90%〜99%のアミノ酸配列同一性を有するペプチドも類似の植物種の機能性ホモログ由来であり得、あるいは本願において開示した配列に対する突然変異誘発に由来であり得る。
【0105】
本発明において提供する核酸配列を用いて例えば、本明細書に記載する配列番号1およびその他の相同的配列の異種発現によって植物の特性および形態を変化させることが出来る。
【0106】
本発明のポリヌクレオチド配列は植物に遺伝物質を移入する前に好適なベクター中にライゲーションしなければならない。この目的のために、当該技術分野で周知の標準的ライゲーション技術を用いることが出来る。かかる技術は分子生物学のプロトコールに関する標準的書籍から容易に得ることが出来、好適なリガーゼ酵素は市販されている。
【0107】
本発明の別の態様において、ROB5に対する核酸配列、またはそのコード領域を、植物ストレス応答および/または成長能力の改変に用いることが出来る。それは該配列を用いて、配列番号1によってコードされるタンパク質に対して少なくとも50%相同的なタンパク質をコードする相同的核酸を単離し、該相同的核酸を宿主植物種における組換えDNAコンストラクトの一部として発現させることによる。そのようにして発現させる組換えDNAコンストラクトを操作して、野生型タンパク質の変化した形態を発現させてもよいし、あるいは操作して野生型遺伝子の発現を減少させてもよい。相同的DNA配列の同定と単離の方法は当該技術分野において周知であり、例えばSambrook et al.、Molecular Cloning: A Laboratory Manual、Cold Spring Harbour Press、Cole Spring Harbour、N.Y.(1989)に記載のものが含まれる。例えば、配列番号1に示すヌクレオチド配列を用いてオリゴヌクレオチドプローブを設計することが出来る。プローブを標識(例えば、放射標識)してスズメノチャヒキおよびその他の植物のcDNAまたはゲノムDNAライブラリーをROB5に対して相同的なDNA配列についてスクリーニングすることが出来る。当該技術分野において周知であるように、DNAライブラリースクリーニングのハイブリダイゼーション条件は、相同的配列アニーリングおよび認識の特異性の程度を決定することが出来る。例えば、高いストリンジェンシーの条件では、ROB5により密接に関連したDNA配列のみが同定されるのに対し、より低いストリンジェンシーの条件ではROB5に対する相同性の低いDNA配列がさらに同定される。
【0108】
本発明の別の態様において、配列番号1に示すヌクレオチド配列を用いて、当該技術分野において周知の比較技術によって公共のデータベースに登録された関連する相同的配列を同定することが出来、DNA配列情報が未知である植物種を含む様々な種からの関連するcDNAまたはゲノムDNA配列を同定することが出来る。特に、記載されたかかる配列は同様の活性を有するペプチドをコードする植物遺伝子の単離に用いることが出来ることが考えられる。
【0109】
さらに、当業者にとって、配列番号1および2のポリヌクレオチドおよびアミノ酸配列を用いて様々なその他の植物種から関連遺伝子を単離することが出来ることが明白である。2つのポリペプチドまたはポリヌクレオチド配列の類似性または同一性は配列の比較によって決定できる。当該技術分野において、これは典型的には、アミノ酸またはヌクレオチド配列のアラインメント、そして一致する残基の列の観察によって達成される。配列の同一性または類似性は以下を含むがこれらに限定されない公知手段によって計算できる:Computational Molecular Biology、Lesk A.M.、ed.、Oxford University Press、New York、1988、Biocomputing: Informatics and Genome Projects、Smith、D.W.、ed.、Academic Press、New York、1993.、Computer Analysis of Sequence Data、Part I、Griffin、A.M. and Griffin、H.G.、eds.、Humana Press、New Jersey、1994に記載のものおよびその他の当業者に知られたプロトコール。さらに、関連性または同一性を決定するためのプログラムは公共のプログラムにおいて体系化されている。もっとも一般的なプログラムの1つは一連のBLASTプログラムであり、3つは核酸配列のために設計されたものであり(BLASTN、BLASTXおよびTBLASTX)、2つはタンパク質配列のために設計されたものである(BLASTPおよびTBLASTN) (Coulson、Trends in Biotechnology、12:76-80、1994)。BLASTXプログラムはNCBI及びその他のソース、例えば、 BLAST Manual、Altschul、S.、et al.、NCBI NLM NIH Bethesda Maryland 20984から公表されている。また、http://www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/blast_help.html)はオンラインヘルプを提供し、さらにBLASTおよび関連するタンパク質分析方法としては、Altschul、S.、et al.、J. Mol. Biol 215:403-410、1990が参照できる。
【0110】
単離ポリヌクレオチドを配列決定し、DNA配列をさらに、DNA配列の集合のスクリーニングに用いてその他の種からの関連配列を同定することが出来る。DNA配列の集合は、EST配列、ゲノム配列または全長cDNA配列を含みうる。
【0111】
部位特異的突然変異誘発技術もまた、本発明のポリヌクレオチド配列に容易に適用することが出来、形態学的に改変されたトランスジェニック植物の作成での利用に適した配列を作ることが出来る。関連技術は当該技術分野において周知であり、例えば、Sambrook et al.、Molecular Cloning: A Laboratory Manual、Cold Spring Harbour Press、Cold Spring Harbour、N.Y.(1989)に記載されている。この点に関して、本発明はROB5遺伝子由来のヌクレオチド配列の使用を教示する。しかし、本発明はこれらの特定の配列に限定されない。様々な特異的突然変異誘発技術により、情報に通じていない技術者がヌクレオチド配列における1以上の残基を変化させることが可能となり、したがって、その結果発現するポリペプチド配列を変化させることが可能となる。さらに市販の「キット」は、特異的突然変異誘発の実施を可能とする多数の会社から入手できる(例えば、Promega およびBioradから入手可能)。これらには例えば、所望の突然変異を作成するための抗生物質抵抗性が変化したプラスミドの使用、ウラシル取り込みおよびPCR技術が含まれる。作成される突然変異には、点突然変異、挿入、欠失および所望により切形が含まれうる。本発明はそれゆえ本願の教示に従ってcDNAとゲノムDNA配列の両方に関する、ROB5遺伝子の対応する突然変異体を含む。
【0112】
本発明の別の態様において、ROB5遺伝子配列、およびその部分、相補鎖、ならびにホモログを用いて植物ストレス応答および/または成長能力が改変され、これはROB5コード領域、例えば、異種または野生型/相同的プロモーターの制御下で図1に示す核酸領域を含む植物形質転換ベクターによる植物細胞の形質転換によって行われる。
【0113】
本発明のさらなる態様において、配列番号1に示す核酸配列によってコードされるタンパク質の少なくとも10アミノ酸の1以上の部分が宿主植物において発現し、該発現により植物ストレス応答および/または成長能力の変化がもたらされる。
【0114】
本発明のさらなる態様において、配列番号1に示す核酸配列、またはその部分あるいはそのホモログが植物ストレス応答および/または成長能力の改変に用いられる。これは通常ROB5遺伝子配列と連関しているプロモーターの制御下で該ポリヌクレオチドのコード領域を含む植物形質転換ベクターによる植物細胞の形質転換によって行われる。別の態様において、ROB5遺伝子またはその誘導体は構成的プロモーターの制御下でコンストラクトに挿入され、そして遺伝子がトランスジェニック植物の全植物組織において低〜高レベルにて発現する。このようにして、植物ストレス耐性および/または成長能力の改変が全植物体に付与される。さらに別の態様において、ROB5遺伝子またはその部分あるいはホモログは組織特異的プロモーターの制御下で植物形質転換用のコンストラクトに挿入されうる。このようにして、植物ストレス応答および/または成長能力の改変は植物の選択された組織および器官にのみ付与される。あるいは、プロモーターはストレス応答性であってもよく、特定の条件が合致した場合にのみROB5の外因性発現が活性化される。かかる条件としては、これらに限定されないが、侵襲、病害、または環境条件、例えば、熱、寒冷、凍結、乾燥、冠水等が挙げられる。多くのかかるプロモーターは当業者に周知であり、そのROB5と組み合わせての使用は本発明の範囲内である。
【0115】
本発明の1つの態様において、配列番号1に示す核酸配列またはその部分あるいはそのホモログは、スズメノチャヒキ、アブラナ、アマ、またはジャガイモ植物の表現型の改変に用いられ、これはヌクレオチド配列またはその部分をかかる植物に導入し、非改変植物と比較してストレス耐性および/または成長能力が変化したトランスジェニック植物を回収することにより行われる。
【0116】
本発明のさらなる態様において、配列番号2に示すタンパク質配列に対して少なくとも50%の同一性を有するタンパク質をコードする核酸は本明細書に記載するように常套技術によって単離され、そして該核酸はそれらが由来する植物種のストレス耐性および/または成長能力の改変に用いられ、それは該核酸またはその部分の、該植物種の細胞への導入および、核酸配列またはその部分の植物種への導入の結果として植物の表現型が変化した植物を回収することによって行われる。
【0117】
本発明のさらなる態様において、配列番号1に示されるヌクレオチド配列によってコードされるタンパク質と少なくとも50%の同一性を有するタンパク質をコードする該核酸は植物のストレス耐性および/または成長能力の改変に用いられる。これは該核酸配列が由来する植物種に対して異種の植物種に該核酸を導入することによる。
【0118】
本発明のさらに別の態様において、配列番号1に示される核酸配列は植物形質転換についての可視マーカーとして用いられ、該マーカーを産生する植物はそれによって形質転換されていない植物と比較して改変されたストレス応答および/または成長能力を示す。このようにして、植物には、例えば、寒冷温度に抵抗する強い能力が付与されうる。この新しい特徴を用いて、コンストラクトによる形質転換が成功した植物のみを選抜することが出来る。本発明にはまた、ROB5由来配列、および植物にさらなる改変を付与する1または複数のさらなる配列の両方を含むバイシストロン性ベクターも含まれる。かかる植物の「寒冷-選抜」によってバイシストロン性ベクターにおける第二の発現配列の存在が、適切に形質転換植物が同定され、選抜された後に分析されうる。本発明は、ROB5遺伝子、またはその部分、またはそのホモログを利用するすべてのこういった関連のある植物選抜技術を含む。トランスジェニック植物の作成のための、抗生物質/除草剤抵抗性マーカー遺伝子を含まない選抜系の使用の利点はよく認識されている。ROB5発現は野生型植物と容易に識別可能な1以上の表現型を生み出すために、現在入手可能な選抜系にとってかわる新規かつ非常に有効な選抜系を提供する、抗生物質または除草剤選抜マーカーを含まないROB5遺伝子に基づく形質転換ベクターの開発が可能である。
【0119】
本発明のさらに別の態様において、内因性ROB5遺伝子配列の発現は、外因性ROB5コード配列の存在によって改変される。外因性ROB5コード配列は、該植物種において通常みられる内因性ROB5コード領域の変化形態、即ち、異なる植物種由来のROB5機能性ホモログであり得る。外因性ROB5タンパク質の発現は、野生型ROB5タンパク質の活性を変化させると予測され、即ち外因的に産生されたROB5タンパク質は表現型の相違を与える活性をコードしうる。
【0120】
本発明のさらなる態様において、以下の工程を含む植物種におけるROB5遺伝子配列またはその誘導体を発現させる方法が提供される:
a) 第一のDNA発現カセットを含む遺伝子コンストラクトを形質転換可能な植物細胞に導入させる工程、ここで第一のDNA発現カセットは、該細胞における形質転換および選抜に必要なDNA配列に加えて、好適な転写制御領域と作動可能に連結しているROB5遺伝子由来のDNA配列、例えば、ROB5によってコードされるペプチドに対して少なくとも50%の相同性を有するペプチドをコードする配列を含んでおり、
b)該DNA配列を含む植物を回収する工程。
【0121】
好適な転写制御領域はROB5遺伝子またはROB5コード配列に通常結合している制御領域でもよいし、異種転写制御領域でもよい。
【0122】
本発明のさらなる態様において、本方法は、以下の工程を含む植物のストレス耐性および/または成長能力を改変する方法を含む:
(a)第一のDNA発現カセットを含む遺伝子コンストラクトを形質転換可能で全植物体に再生しうる植物細胞に導入する工程、ここで、第一のDNA発現カセットは植物細胞における形質転換および選抜細胞に必要なDNA配列に加えて、好適な転写制御領域に作動可能に連結しているROB5遺伝子またはその一部をコードするポリヌクレオチド領域を含むDNA配列を含む、そして、
(b)該組換えDNAを含む植物を回収する工程。
【0123】
遺伝子阻害技術、例えば、アンチセンスRNAまたはコサプレッションあるいは二本鎖RNA干渉の使用も本発明の範囲に含まれる。これらアプローチにおいて、単離遺伝子配列は好適な制御要素に作動可能に連結している。
【0124】
したがって、本発明の1つの態様において、本方法は以下の工程を含む植物のストレス応答または成長能力を改変する方法を含む:
a.) 第一のDNA発現カセットを含む遺伝子コンストラクトを形質転換可能な植物細胞に導入する工程、ここで第一のDNA発現カセットは、該細胞における形質転換および選抜に必要とされるDNA配列に加えて、好適な転写制御領域に作動可能に連結している、配列番号1の配列によってコードされるタンパク質に対して少なくとも50%の配列同一性を有するタンパク質またはその部分をコードするROB5コード配列をコードするDNA配列を、少なくとも該DNA配列の一部を転写制御領域の正常の提示に対してアンチセンス方向にて含み、それによって、該組換えDNAコンストラクトがアンチセンスRNAまたはアンチセンスRNAの一部を発現する、そして、
b.)該DNA配列を含む植物を回収する工程。
【0125】
ROB5配列をコードするポリヌクレオチドは、転写制御領域に対してアンチセンス方向でもよいし(アンチセンスRNAによる阻害のため)、センス方向でもよい(コサプレッションによる阻害のため)。あるいはセンスおよびアンチセンスRNA発現の組み合わせを用いて二本鎖RNA干渉を誘導してもよい(Chuang and Meyerowitz、PNAS 97: 4985-4990、2000、Smith et al.、Nature 407: 319 320、2000)。
【0126】
本発明は例えば植物の成長能力を低下させるための、植物におけるROB5のレベルを減少させるアンチセンス発現の使用も含む。(ROB5アンチセンス発現に起因する)ストレス耐性の低下または成長および活発性の低下は、例えば風害の低減のためにそれ自体植物にかなりの利益をもたらしうる。この概念は植物の全体構造を改変するための、器官特異的および/または組織特異的プロモーターの使用および/またはバイシストロン性/マルチシストロン性ベクターの使用に拡張しうる。1つの例において、茎特異的プロモーターをアンチセンス方向のROB5とともに用いて茎成長速度を減少させうる。逆に、種子特異的プロモーターをセンス方向のROB5とともに用いて、種子発達速度を上昇させうる。好ましくは、これら2つの遺伝子カセットをともに単一のバイシストロン性ベクターに組み込むとよい。かかるベクターを有するトランスジェニック植物は、風害抵抗性を上昇させるよう短い茎を示しつつ大きい種子を作るため、生産性が向上しうる。様々な器官または発現の組み合わせの特異的プロモーターを有するROB5センス/アンチセンス発現のより多くの例を設計することが出来、そのすべては本発明の範囲に含まれる。
【0127】
これら方法およびそれによって作成されたトランスジェニック植物は、ROB5 (またはその部分またはホモログ)をコードする遺伝子またはコンストラクトを植物細胞に導入する形質転換技術の使用に依存する。植物細胞の形質転換は様々な手段で達成しうる。一般に有用な方法としては、A. tumifaciensおよびA. rhyzogenies のバイナリーおよび/または共挿入プラスミドを使用するアグロバクテリウムに基づく系(例えば、米国特許第4940838号、第5464763号)、遺伝子銃アプローチ(例えば、米国特許第4945050号、第5015580号、第5149655号)、マイクロインジェクション、(例えば、米国特許第4743548号)、プロトプラストによる直接DNA取り込み、(例えば、米国特許第5231019号、第5453367号)または針状結晶(例えば、米国特許第5302523号)が挙げられる。植物細胞の外来DNAの導入および/または遺伝形質転換のあらゆる方法が本発明に使用できる。
【0128】
以下の実施例は本方法を例示するものであり、本発明の有用性を限定するものではない。
【実施例1】
【0129】
マイクロシークエンシングデータ由来のディジェネレートオリゴヌクレオチドプローブを用いるスズメノチャヒキからのストレス応答遺伝子の単離と特徴付けの試み
本発明者らの植物ストレス応答タンパク質の単離の最初の試みは失敗した。アブシジン酸応答性熱安定タンパク質(43-45 kDaポリペプチドについて濃縮)をRobertson et al. (1994)に記載されているように、熱処理(90℃、30分)、(NH4)2 S04 沈殿およびセファデックス G-50 クロマトグラフィーによって単離した。これらタンパク質フラクションを保護アッセイに用いたところ、熱およびpH誘導性変性に対して温度感受性タンパク質をインビトロで保護した。熱安定性アブシジン酸応答性タンパク質と組み合わせてスクロースを添加すると変性に対する最大の保護が示された。
【0130】
熱分画およびセファデックスクロマトグラフィーの後、約43-45 kDaのサイズ範囲のポリペプチドをさらに1および2次元SDS-PAGEで精製し、次いでN-末端配列決定および抗体産生に供した。N-末端配列決定により43-45 kDaのタンパク質の実体が確認された。配列は ETTLDD/E AEVAPGKEE(配列番号3)であった。このN-末端配列を用いてcDNAおよびゲノムスズメノチャヒキライブラリーのスクリーニングのためのディジェネレートヌクレオチドプローブを合成した。ディジェネレートプローブを用いたEMBL3 Cosにおけるスズメノチャヒキゲノムライブラリーの大規模なスクリーニングによっては45 kDa タンパク質をコードするヌクレオチド配列を回収することはできなかった。
【実施例2】
【0131】
ポリクローナル抗体産生、抗体精製、およびDNAライブラリースクリーニングによりROB5が単離された
43-45 kDaポリペプチドを分取SDS-PAGEゲルから切り出し、リン酸緩衝食塩水で洗浄し、液体窒素に注ぎ、フロイント完全および不完全アジュバントを用いる2匹のウサギへの注射の用意をした。抗体産生は標準手順およびELISA試験プロトコールにしたがった(current protocols In Immunology 1994、Eds. Colgian et al. John Wiley and Sons、Inc. Vols. 1 〜 3)。
【0132】
43〜45kDaストレスタンパク質に対して調製したポリクローナル抗体をファージ(λZAP)および宿主タンパク質画分に対する交差免疫沈降によってさらに精製した。これらの抗体を用いてλZAPにて調製したcDNAライブラリーをスクリーニングした。これにはアブシジン酸(ABA)-処理スズメノチャヒキ細胞から単離したmRNAを用いた。そしてイムノスクリーニングはStratageneから市販されているキットを用いて行った。スズメノチャヒキ細胞から2つの独立のcDNA ライブラリーを構築し、ディジェネレートプローブおよび43-45 kDa タンパク質に対するポリクローナル抗体を用いてスクリーニングした。コントロール培養物および5日間ABA-処理(75 μM)したスズメノチャヒキ懸濁培養物から抽出した mRNAを用いたディファレンシャルスクリーニングも行った。最初、すべての方法は、43-45 kDa タンパク質をコードする推定クローンの単離に失敗した。別の研究室におけるABA応答性配列のディファレンシャルスクリーニングでも43-45 kDa タンパク質をコードするcDNAを単離することはできなかった(Lee、S.P. and T.H.H. Chen. 1993. Plant Physiol. 101:1086-1096)。さらなるポリクローナル抗体の精製およびより高い力価のcDNAライブラリーのスクリーニングによりポジティブな結果が得られた。一次スクリーニングにより23の陽性クローンが同定され、そのうち3つを精製し配列決定した。配列決定により、そのクローンの1つが43〜45kDaタンパク質の1つをコードすることが確認された。というのは、翻訳された配列の一部が43〜45kDaタンパク質のN-末端配列決定データと一致したからである。
【実施例3】
【0133】
ROB5配列分析
図1は、ROB5遺伝子のヌクレオチド配列、および対応する得られたROB5タンパク質であり、cDNAは先に記載した43〜45kDaタンパク質の1つをコードする(配列番号1および2も参照)。cDNAは1419 塩基対の長さであり、翻訳されるリーディングフレームは1158塩基対である。75塩基対の3'-非翻訳領域が推定27 アミノ酸リーダーまたはシグナル配列の前にある。スズメノチャヒキ細胞から精製されたタンパク質から得られたN-末端配列はアミノ酸残基28にて始まる。シグナル配列は疎水性であり(アラニン、バリンおよびロイシンに富む)、おそらく膜と結合する。終止コドンの後、186 塩基対の5'非翻訳配列がある。配列においてカルボキシ末端に向かって4つの明らかなリピート(KAAAAK:配列番号4))がある。計算分子量は39,586.59 ダルトンであり計算等電点は8.359である。配列は29.88%がA+T 、70.03%がC+Gであり、融点は93.18℃である。
【0134】
いくつかの配列アラインメントプログラムを用いてその他の植物タンパク質とのROB5の関係を調べた。表1はROB5タンパク質が100%相違し、ダイズ(Glycine max.)PROに対して30.6%、ワタ(cotton.)PRO に対して29.5%、およびクワ(Morus bombycix.)PRO group III LEA (Late Embryogenesis Abundant) タンパク質に対して26.1%の同一性を示すことを示す。
【実施例4】
【0135】
スズメノチャヒキ実生における植物ストレスに応答してのROB5発現
ノザンおよびウェスタンブロット分析により、スズメノチャヒキ懸濁培養物から単離されたROB5遺伝子はスズメノチャヒキ実生において、ABA-応答性であるだけでなく、乾燥および寒冷によって誘導可能であることが示された。ROB5発現はスズメノチャヒキ実生において熱ショックまたは塩ストレスには応答しなかった。しかし、ABA処理したスズメノチャヒキ懸濁培養物は、43 kDa タンパク質が発現した際に、耐熱性、耐凍性(Robertson et al. 1994. Plant Physiol. 105:181-190)、そして耐塩性(Ishikawa et al. 1995. Plant Science 107:83-93)の上昇を示した。
【実施例5】
【0136】
ROB5植物発現ベクターの構築
3つの形質転換ベクターを表2に詳細に示すように、植物におけるROB5の外因性発現のために構築した。その結果得られたコンストラクト地図を図2、3、および4に示す。これらベクターを用いてアブラナ (Brassica napus) cv. DH-12075、AAC、Saskatoon、SK、ジャガイモ (Solanum tuberosum) cv Desiree、およびアマ(Linum usitatissimum) cv. CDC Normandyを形質転換した。
【0137】
本研究におけるプロモーターおよび形質転換ベクターは公に入手できる。例えば、35SプロモーターはMonsantoから入手でき、COR78およびCOR15 プロモーターは以前に報告されている(Thomashow、M.F. 1999. Ann. Rev. of Plant Physiology and Plamt Molecular Biology Vol. 50:571-599)。
【実施例6】
【0138】
ROB5を発現するトランスジェニックアブラナ植物はコントロール植物と比較して耐凍性の上昇を示す
図5aは、7つの選択されたCOR78:ROB5で形質転換されたアブラナ系統とコントロール植物の凍結ストレス試験後の生産性を比較するグラフである。耐凍性は研究室における制御凍結試験または圃場における自然の凍結の評価によって測定した。凍結による損傷を電解質漏出または再生によって評価した。植物を16時間の光周期で2日間、2℃(明条件)および0℃(暗条件)でインキュベートし、次いで、インキュベーション温度-9℃で2日間2周期試験した。図5aに示す結果は、コントロールアブラナ植物から収穫された種子の総重量(W)(グラム)が、COR78:ROB5コンストラクトで形質転換された様々な系統のいずれよりも有意に低かったことを示す。図5bに示す比較写真は凍結に曝した後のコントロール植物における凍結による損傷の程度およびCOR78:ROB5形質転換系統 13915における比較的少ない凍結による損傷を示す。図5cの比較写真は凍結に曝した後、コントロール植物から収穫した全種子がCOR78:ROB5形質転換系統 13516から収穫したものよりも有意に少なかったことを示す。コントロールおよび1つのCOR78:ROB5トランスジェニック系統の写真は、凍結融解サイクル後、かつ、コントロールおよびトランスジェニック植物から種子を収穫した後のものである。要約すると、トランスジェニックアブラナにおけるROB5の発現の結果、凍結による損傷に対してかなり保護され、凍結感受性コントロールと比較して種子の最終的な生産量がかなり上昇する。
【実施例7】
【0139】
ROB5を発現するトランスジェニックアブラナ植物はコントロール植物と比較して耐熱性の上昇を示す
図6は、ROB5を発現するトランスジェニック植物に対する熱ストレスの効果を示す。耐熱性を全植物体および植物の部分(切り出した茎および葉)について測定した。全植物体または植物の部分を22〜42℃で12時間熱した後、42℃で等温インキュベーションした。生存度を電解質漏出、再生、種子収量および種子の質によってアッセイした。記載した熱ストレスの後、ほとんどのトランスジェニック植物は非改変植物と比較してよりより回復および高い種子収量を示した。これはその結果生じた種子の収穫数により測定した(図6a)。図6bは熱ストレスの後の、コントロールおよびCOR78:ROB5形質転換系統 13513 についての比較写真である。
【実施例8】
【0140】
ROB5を発現するトランスジェニックアブラナ植物はコントロール植物と比較して耐乾性の上昇を示す
図7はROB5を発現するトランスジェニック植物に対する乾燥ストレスの効果を示す。耐乾性はポット植えの植物(3〜5葉段階)に14日間水を与えず、次いで再び水を与えることによって評価した。植物を再生能力について評価した。圃場における耐乾性は、1000穀粒の重さ(Kernal Weight)の測定により評価した。乾燥試験において、ROB5トランスジェニックはコントロールと比較して遅い速度で水分を失った(図7a)。さらに、トランスジェニック実生出芽は乾燥条件下で、コントロール植物と比較してより早く、活発に起こった(図7b)。図7cおよび7dは乾燥条件に曝した後のコントロールと形質転換植物との比較写真である。
【実施例9】
【0141】
ROB5を発現するトランスジェニックアブラナ植物はコントロール植物と比較してより早い発芽および出芽を示す
図8はコントロールとCOR78:ROB5形質転換アブラナ植物の発芽および出芽特性を比較する。図8aは22℃で24時間後のコントロール植物と比較した形質転換植物の有意に高い発芽率を示す。より高い発芽率は8℃、6日間の観察期間での形質転換植物についても観察された(図8c)。圃場試験も行い、実生出芽はコントロール植物と比較してトランスジェニック系統、特に系統13909の方が有意に早かった(図8b)。
【実施例10】
【0142】
ROB5を発現するトランスジェニックアブラナ植物はコントロール植物と比較してより早く開花し、成熟する
図9は、コントロールとCOR78:ROB5形質転換アブラナ植物の開花および成熟特性を比較する。形質転換植物はコントロール植物よりも早く開花し(選抜された系統について7日早かった)(図9a)。ほとんどのトランスジェニック系統はコントロール植物と比較して、大きい種子(直径 >2.00mm)のパーセンテージがより高く、1000 穀粒重量もより高かった(図9bおよび9d)。さらに、形質転換植物は69日の成長期間(種蒔きから)後、コントロール植物よりも有意に背が高かった(図9c、および9e)。
【実施例11】
【0143】
ROB5を発現するトランスジェニックアマ植物はコントロール植物より上昇した耐凍性を示す
図10は、コントロールとCOR78:ROB5形質転換アマ植物の耐凍特性を比較する。図10aは7つの選択されたCOR78:ROB5形質転換アマ系統およびントロール植物の凍結ストレス試験後の生産性を比較するグラフである。耐凍性は研究室における制御凍結試験または圃場における自然の凍結の評価によって測定した。凍結による損傷は電解質漏出または再生によって評価した。植物を16時間の光周期で2日間2℃(明条件)および0℃(暗条件)でインキュベートし、2日間2周期、-9℃のインキュベーション温度で試験した。図10aに示す結果は、コントロールアブラナ植物の総重量(グラム)が様々なCOR78:ROB5コンストラクト形質転換系統の何れと比較しても有意に低かったことを示す。図10bに示す比較写真は、凍結に曝した後のコントロール植物における凍結による損傷の程度、およびCOR78:ROB5形質転換系統 13842における比較的少ない凍結による損傷を示す。要約すると、トランスジェニックアマにおけるROB5の発現は、凍結による損傷に対する有意な保護をもたらした。
【実施例12】
【0144】
ROB5を発現するトランスジェニックアマ植物はコントロール植物と比較して高い耐熱性を示す
図11は、ROB5を発現するトランスジェニックアマ植物に対する熱ストレスの効果を示す。全植物体または植物の部分を22〜42℃で12時間熱し、次いで42℃の等温インキュベーションに供した。生存度を植物重量の分析によりアッセイした。平均植物重量の測定によると(図11a)、ほとんどのトランスジェニック植物は非改変植物と比較してよりよい回復および種子収量の上昇を示した。図11bは熱ストレス後のコントロールとCOR78:ROB5形質転換系統13467の比較写真である。
【実施例13】
【0145】
ROB5を発現するトランスジェニックアマ植物はコントロール植物と比較して耐乾性の上昇を示す
図12はROB5を発現するトランスジェニックアマ植物に対する乾燥ストレスの効果を示す。耐乾性はポット植えの植物(3〜5葉段階)に15日間水を与えず、その後水を与えることによって測定した。次いで植物重量を測定した。乾燥研究において、ROB5トランスジェニックは乾燥条件の後、コントロール植物と比較して有意に重かった(図12a)。さらに、形質転換植物は、コントロールよりも遅い速度で水分を失った(図12b)。図12cは乾燥条件に曝した後のコントロールと形質転換植物の比較写真である。
【実施例14】
【0146】
ROB5を発現するトランスジェニックアマ植物はコントロール植物と比較してより早い発芽および出芽を示す
図13はコントロールとCOR78:ROB5形質転換アマ植物の発芽および出芽特性を比較する。図13aは8℃で3日間の後、コントロール植物と比較して形質転換植物が有意に高い発芽率を示したことを示す。より高い発芽率は22℃24時間における形質転換植物についても観察された(図13c)。圃場試験も行ったところ、実生出芽はコントロール植物よりもトランスジェニック系統の方が早かった(図13b)。
【実施例15】
【0147】
ROB5を発現するトランスジェニックアマ植物はコントロール植物と比較してより早く開花および成熟する
図14はコントロールとCOR78:ROB5形質転換アマ植物の開花および成熟特性を比較する。形質転換植物はコントロール植物よりも早く開花した(図14a)。69日の栽培期間の後、トランスジェニック植物はコントロール植物よりも背が高く(図14b)、圃場試験においてコントロール植物と比較してより高い1000 穀粒重量を示した(図14c)。図14dは、コントロールおよび形質転換COR78:ROB5植物(系統 13850)の比較写真である。
【実施例16】
【0148】
ROB5を発現するトランスジェニックジャガイモ植物はコントロール植物と比較して高い耐凍性を示す
以下の実施例は、Desiree ジャガイモにおける構成的および誘導可能方法の両方によるROB5発現の結果であり、凍結耐性の場合、構成的に発現するROB5およびCOR15(低温誘導可能プロモーター)を用いて誘導されるピロホスホリラーゼAを含む二重コンストラクトを用いた。特有の二重コンストラクトを設計した(PsH 737 35S:ROB5+COR15:PPA)。このコンストラクトは43 kDa タンパク質の構成的発現とスクロースの低温誘導をもたらした。このコンストラクトをジャガイモ植物を用いた実験に使用した。
【0149】
図15aは、凍結ストレス試験後のS35:ROB5で形質転換された選抜されたジャガイモ系統とコントロール植物の生産性を比較するグラフである。植物を2℃(明条件)および0℃(暗条件)にて16時間の光周期で2日間インキュベートし、次いでインキュベーション温度-9℃で2日間2周期試験した。図15aおよび15bに示す結果は、COR78:ROB5コンストラクトで形質転換された様々な系統と比較してのコントロールジャガイモ植物の電解質漏出を示す。図15cは凍結ストレス後のジャガイモ形質転換系統13716および13788の生存率の有意な上昇を示す。図15dおよび15eに示す比較写真は凍結に曝した後の、コントロール植物の凍結による損傷の程度、および形質転換系統における比較的少ない凍結による損傷を示す。要約すると、トランスジェニックアマにおけるROB5の発現の結果、凍結による損傷に対する有意な保護が起こった。
【実施例17】
【0150】
ROB5を発現するトランスジェニックジャガイモ植物はコントロール植物と比較して耐熱性の上昇を示す
図16は、ROB5を発現するトランスジェニックジャガイモ植物に対する熱ストレスの効果を示す。全植物体または植物の部分を開花時期において22〜42℃で16時間、2日間2周期熱した。生存度を熱損傷についてコントロールおよび形質転換植物の目視検査によってまずアッセイした(図16a)。図16bは熱ストレス後のコントロールおよびCOR78:ROB5または35S:ROB5形質転換系統の比較写真である。結果は、ROB5発現が形質転換植物に対して同様に熱ストレス抵抗性を付与することを示す。
【実施例18】
【0151】
ROB5を発現するトランスジェニックジャガイモ植物はコントロール植物と比較して耐乾性の上昇を示す
図17はROB5を発現するトランスジェニックジャガイモ植物に対する乾燥ストレスの効果を示す。耐乾性を、ポット植えの植物に15日間水を与えず、その後水を与えることによって評価した。次いで各植物から収穫した塊茎の数を測定した。乾燥研究において、ROB5トランスジェニックは用いた形質転換コンストラクトにかかわらず乾燥条件後にコントロール植物と比較して有意に多い塊茎を示す傾向があった(図17a、17bおよび17c)。
【実施例19】
【0152】
ROB5を発現するトランスジェニックジャガイモ植物はコントロール植物と比較してより早い発芽および出芽を示す
図18はコントロールおよび形質転換ジャガイモ植物の出芽特性を比較する。図18aは種蒔きの40日後に圃場において出現した「隆起」の数を数えることによって測定した、コントロール植物と比較した形質転換ジャガイモ植物の有意に高い出芽率を示す。図18bは、現れたCOR78:ROB5 トランスジェニック植物の比較写真である。
【実施例20】
【0153】
ROB5を発現するトランスジェニックジャガイモ植物はコントロール植物と比較してより早く成熟する
図19はコントロールと形質転換ジャガイモ植物の成熟特性を比較する。形質転換植物はコントロール植物と比べて有意に背が高く(図19a)、コントロール植物と比較してより重い重量を示した(図19b)。これらの結果は非改変植物と比較してROB5形質転換ジャガイモ植物のより早い成熟を示唆する。
【実施例21】
【0154】
トランスジェニック植物におけるROB5発現のウェスタンブロット分析
図20は様々なトランスジェニック植物系統におけるROB5の外因性発現を分析するウェスタンブロットである。トランスジェニックジャガイモ単離物(コンストラクト35S:ROB5) 13646および13637 (図20a)は43 kDa タンパク質の強い発現および耐熱性の上昇を示し、これは熱ストレスに対する耐性の上昇と相関する。トランスジェニック単離物13645(図20a)は43 kDa タンパク質の発現が非常に弱いか無く、耐熱性はコントロールと同程度であった。COR78 プロモーターによるROB5の発現(図20b)も類似の結果を示す。単離物13955 は耐熱性が弱く、発現レベルも非常に弱く、一方、単離物13650および13665はかなりのレベルの43 kDa タンパク質(図20b)および耐熱性の上昇を示した。35S:ROB5::COR15:PPAで形質転換された43 kDa タンパク質 (図20c)を発現すると共にスクロースレベルの高いトランスジェニック単離物13788および13716は高レベルの耐凍性を示した。トランスジェニック単離物13709は耐凍性を示さず、43 kDa タンパク質の検出可能な発現はなかった(図20c)。これらの観察はROB5発現と非生物的ストレス耐性の上昇を相関させ、耐凍性および耐熱性の上昇における43 kDa タンパク質の機能を確認する。
【実施例22】
【0155】
その他の種におけるROB5の発現(ウェスタンブロット)
図21に示すウェスタンブロットはROB5遺伝子ホモログが2種類の全く異なる植物種(単子葉及び双子葉を含む)において発現したことを示す。各レーンは、春アブラナ(spring canola)cv. Quest (図21a)、冬アブラナ cv. Express (図21b)、または春コムギ cv. Katepwa (図21c)の様々な寒冷順化処理から抽出したタンパク質を表し、ROB5相同的タンパク質レベルを示す。スズメノチャヒキから単離したROB5はみかけの分子量43 kDaであった。しかしラダーを可視化するために用いた色素によって、ROB5を表すバンドは 50-60 kDaの範囲であった(赤いバンドは60 kDa)。SDS濃度はゲル中で低かったので、ROB5 はダイマー形態で残っている可能性があり、それは各ゲルの上のバンドによって表される。標準的ウェスタンブロットプロトコールを用いた。タンパク質をホウ酸バッファーで抽出し(Wisniewski et al.、Planta vol:96)、4-12% ポリアクリルアミドゲルで泳動し、メンブレンにBio-Rad mini Protean II 電気泳動システムを用いてトランスファーした。ウサギ中で作ったROB5抗体をメンブレンの探索に用い、アルカリホスファターゼヤギ抗-ウサギ抗体をROB5の探索に用いた。ウシ血清アルブミン(BSA)に対して、脱脂粉乳をブロッキング溶液におけるタンパク質源として用いた。メンブレンを現像液としてNBT/BCIPを用いて現像した。
【実施例23】
【0156】
2D 電気泳動およびエレクトロブロッティング
タンパク質を様々な植物種の細胞から抽出し、サンプルを2Dタンパク質分離装置にローディングした。タンパク質をまず等電点によって分離し(各ブロットの横軸)、次いでSDS-PAGEにより分子サイズによって分離した。典型的には、タンパク質をポリビニリデンフルオリド(PVDF)メンブレンに標準的プロトコールに従ってブロットした。ブロットを合成ROB5に対して作成したウサギポリクローナル抗血清で探索し、次いでヤギ抗ウサギ抗体で探索した。抗体が結合した領域を5-ブロモ-4-クロロ-3-インドイルフォスフェート(BCIP)およびニトロテテトラゾリウムブルークロリド(NBT)を含むアルカリホスファターゼ現像液を用いて可視化した。
【0157】
図22に示すブロットは以下を含む様々な植物種からのものである。(a)アマ(Linum usitatissimum) cv. Norwin、(b)オオムギ(Hordeum vulgare) cv. Harrington、(c)タバコ(Nicotiana tabacum)、(d)トマト(Lycopersicon lycopersicum)、(e)キュウリ(Cucumis sativus)、および(f) スズメノチャヒキ(Bromus inermus) cv. Leyss。すべてのブロットは、ROB5タンパク質に対する抗体と反応する複数の「スポット」を示した。複数のスポットはROB5の様々なアイソフォームを示唆し、スズメノチャヒキ以外の種におけるROB5ホモログの強力な証拠を提供する。
【0158】
実施例22および23に議論する結果は様々な植物種におけるROB5ホモログの発現を示し、かかるROB5相同的遺伝子およびタンパク質は本発明の範囲に含まれる。さらに、かかるROB5遺伝子の外因性発現により、アブラナ、アマ、およびジャガイモ以外の植物種においても同様のストレス耐性および植物成長/活発性の上昇が起こると予測される。例えば、植物における耐寒性を向上させるROB5発現の能力は、熱帯植物種をより穏やかな気候で栽培することを可能としうる。同様に、植物における耐熱性を向上させるROB5発現の能力は、より熱い、おそらく熱帯条件においての温帯植物種の栽培を可能とする。かかるROB5遺伝子およびその誘導体を発現するトランスジェニック植物はすべて本発明の範囲に含まれる。
【0159】
本発明はさらに例えば、昆虫、哺乳類および魚類を含む非植物トランスジェニック生物体も含み、ここで有利な特性が生物体に付与される。例えば、ROB5を発現するトランスジェニック魚類は悪環境条件、例えばこれらに限定されないが、高温、寒冷、または毒素に対する耐性の上昇を示すであろう。さらに、本発明はROB5を発現し、より優れた工業用途、例えばこれらに限定されないが発酵温度の上昇、アルコール濃度の上昇等を示す形質転換酵母株も含む。
【0160】
追加的実施例 -複数の圃場部位におけるトランスジェニック植物の圃場試験評価
部位の場所および試験設定
アブラナおよびアマPNT系統を2002年の栽培期間にわたり、5つの圃場試験で試験した。環境因子については、Manitoba、Canadaにある2つの部位を穏やかなストレス〜ストレス(以下、「非ストレス」部位と称する)とみなした。Saskatchewan、Canadaにある2つの別の部位を中程度〜強度ストレス(以下、「ストレス」部位と称する)とみなした。Alberta、Canadaのもうひとつの部位を「強度ストレス」とみなした。各圃場試験はRandomized Complete lock Design (RCBD)を用いて設定し、4連で行った。系統を作条において植え、作条当たり最低20植物とし、これは標準的市販の条間隔である。コントロールに加えて、空のベクターおよび市販品種を各試験に含めた。
【0161】
アブラナ PNT ROB5 系統も3連の圃場試験で2003年の栽培期間に調べた。2003年において、アブラナ PNT ROB5 系統をさらに3つの位置で調べた:その1つは非ストレスとみなされ(Manitoba、Canada)、2つはストレスとみなされた(Saskatchewan、Canada)。各圃場試験はRandomized Complete Block Design (RCBD)を用いて設定し、2連で行った。系統を4つの作条において、作条当たり最小20植物で、標準的市販条間隔で植えた。1つのコントロール(空のベクター)を各試験に含めた。このアブラナ試験における個々の小花は「袋がけされて(bagged)」いなかった。標準的種子処理をすべての種子に施した。すべての試験の圃場の場所はカナダ西部にわたる商業的アマおよびアブラナ生産領域内にあった。これらの部位のいずれも前の年にアマまたはアブラナを植えるよう選ばれなかった。
【0162】
以下の実施例は、PBO/CFIA規則にしたがっておこなった毎日および毎週の監視活動に加えて各圃場試験について回収したデータに関する。トランスジェニックと非トランスジェニック(コントロール)植物の、表現型および/または農学形質に関するあらゆる顕著な相違も記録し、可能であれば写真撮影した。すべての小花は「袋がけされて」おり、各アブラナ植物とコントロールの自家受粉が確保された。すべての種子は完全に成熟したら収穫し、各植物ごとに計量した。気候データはすべての試験場所について回収し、これらに限定されないが以下を含むものであった、種蒔きおよび出芽時の土壌温度、周囲温度、降水頻度および降水量、相対湿度など。
【実施例24】
【0163】
非ストレス部位(MacGregor、MB、and Portage la Prairie、MB)における形質転換アブラナ系統の出芽の促進
図23は、「非ストレス」部位におけるコントロール植物と比較したCOR78:ROB5形質転換植物の出芽の促進を示す。(a)グラフはMacGregor、MBにおける種を播いた地面のメートル当たりの出芽した実生の平均数(E)を示し、(b)グラフはPortage la Prairie、MBにおける種を播いた地面のメートル当たりの出芽した実生の平均数(E)を示す。非ストレス部位において2つのCOR78:ROB5形質転換系統(13513および13516)はコントロール実生と比較して実生についての出芽率の有意な上昇を示した。
【実施例25】
【0164】
非ストレス部位(MacGregor、MB、and Portage la Prairie、MB)における形質転換アブラナ系統の成長および発達の促進
図24は出芽の3週間後の「非ストレス」部位におけるコントロール植物と比較したCOR78:ROB5形質転換植物の成長および発達の促進を示す。(a)グラフはMacGregor、MBにおける試験についての実生の平均高さ(H、cm)を示し、(b)グラフはPortage la Prairie、MB における試験についての実生の平均高さ(H、cm)を示す。非ストレス部位において2つのCOR78:ROB5形質転換系統(13513および13516)は出芽の3週間後、コントロール実生と比較して、実生の高さにおいて有意な上昇を示した。
【実施例26】
【0165】
非ストレス部位 (MacGregor、MB、and Portage la Prairie、MB)における形質転換アブラナ系統のより早い開花
図25は「非ストレス」部位における、コントロール植物と比較してのCOR78:ROB5形質転換植物の成熟の促進および開花までの日数の減少を示す。(a) グラフはMacGregor、MBにおける試験についての開花までの平均期間(F)(種蒔き後日数)を示し、(b)グラフはPortage la Prairieにおける試験についての開花までの期間(F)(種蒔き後日数)を示す。3つのCOR78:ROB5形質転換系統(13513、13514、および13516)は非ストレス部位においてコントロール実生と比較して開花までのより早い進行(種蒔き後)を示した。
【実施例27】
【0166】
ストレス部位 (Wakaw、SK、and Aberdeen、SK)における形質転換アブラナ系統のより早い開花および成熟への進行
図26は「ストレス」部位におけるコントロール植物と比較してのCOR78:ROB5形質転換植物の成熟の促進と開花までの日数の減少を示す。(a)グラフはWakaw、SKにおける試験についての開花までの期間(F)(種蒔き後日数)を示し、(b) グラフはAberdeen、SKにおける試験についての開花までの平均期間(F)(種蒔き後日数)を示し、(c) グラフは Saskatoon、SKにおける試験についての開花までの平均期間(F)(種蒔き後日数)を示し、(d)は(c)についての植物成長の比較写真であり、コントロール植物は左側、トランスジェニック(13513)植物は右側に示す(この実験については小花は「袋がけされて」いなかったことに注目されたい)。3つのCOR78:ROB5形質転換系統(13513、13514、および13516)は、ストレス部位において、コントロール実生と比較して、(種蒔き後)より早い開花までの進行を示した。
【実施例28】
【0167】
非ストレス部位(MacGregor、MB、and Portage la Prairie、MB)における形質転換アブラナ系統についての収穫期における成熟の促進
図27は「非ストレス」部位におけるコントロール植物と比較してのCOR78:ROB5形質転換植物の収穫期における成熟の促進を示す。(a)グラフはMacGregor、MBにおける試験についての平均パーセンテージ成熟(%M)を示し、(b) グラフはPortage la Prairieにおける試験についての平均パーセンテージ成熟(%M)を示す。3つのすべてのCOR78:ROB5形質転換系統(13513、13514、および13516)はコントロール植物と比較して有意に高い成熟を示した。
【実施例29】
【0168】
ストレス部位 (Saskatoon、SK)における形質転換アブラナ系統についての収穫期における成熟の促進
図28は「ストレス」部位におけるコントロール植物と比較してのCOR78:ROB5形質転換植物についての収穫期における成熟の促進を示す。(a)はコントロールおよび形質転換植物(系統 13513)の8月8日の比較写真であり、(b)はコントロールおよび形質転換植物(系統 13513)の2003年9月26の比較写真である。形質転換植物についての活発性およびさやの発達の上昇に注目されたい。
【実施例30】
【0169】
非ストレス部位(MacGregor、MB、およびPortage la Prairie、MB)における形質転換アブラナ系統のさや充填量の上昇
図29は「非ストレス」部位におけるコントロール植物と比較してのCOR78:ROB5形質転換植物についての平均さや充填量を示す。(a)グラフはMacGregor、MBにおける試験についての平均パーセンテージさや充填量 (%P)を示し、(b)グラフはPortage la Prairieにおける試験についての平均さや充填量 (%P)を示す。特に、系統13516は両方の非ストレス部位において有意に高いパーセンテージさや充填量を示した。
【実施例31】
【0170】
ストレス部位 (Aberdeen、SK)および強度ストレス部位(Nisku、AB)における形質転換アブラナ系統のさや充填量の上昇
図30は、「ストレス」または「強度ストレス」部位におけるコントロール植物と比較してのCOR78:ROB5形質転換植物についての平均さや充填量を示す。(a)グラフはAberdeen、SK (ストレス)における試験についての平均パーセンテージさや充填量(%P)を示し、(b) グラフは、Nisku、AB (強度ストレス) における試験についての平均さや充填量(%P)を示す。系統 13513および13516はストレスおよび強度ストレス部位の両方において有意に高いパーセンテージさや充填量を示した。
【実施例32】
【0171】
形質転換アブラナ系統における成熟の促進および根の発達の促進
図31はCOR78:ROB5形質転換植物における成熟および根の発達の促進を示す。(a)はWakaw、SK (ストレス)での圃場におけるコントロール植物 (左)と比較してのアブラナ形質転換系統 13516 (右)の成熟促進を示す比較写真であり、(b)はWakaw、SKにおけるコントロール植物 (左)と比較してのアブラナ形質転換系統 13513 (右)の根の発達を示す比較写真である。
【実施例33】
【0172】
非ストレス部位 (Portage la Pairie、SK)における形質転換アブラナの種子収量の増加
図32は「非ストレス」部位 (Portage la Prairie)におけるコントロール植物と比較してのCOR78:ROB5形質転換植物についての植物当たりの種子の総収量および質を示すグラフである(T(グラム))。3つのすべての形質転換系統13513、13514、および13516はコントロール植物と比較して有意に高い種子の収量を示した。
【実施例34】
【0173】
ストレス部位(Aberdeen SK、and Saskatoon、SK)における形質転換アブラナについての種子収量の増加
図33は「ストレス」部位におけるコントロール植物と比較してのCOR78:ROB5形質転換植物についての種子の総収量および質を示す。(a)グラフはAberdeen、SKにおけるコントロールと形質転換植物についての種子の総収量(T(グラム))を示し、(b)グラフはWakaw、SKにおけるコントロールと形質転換植物についての種子の総収量(T(グラム))を示す。系統 13513および13516は特にコントロール植物と比較して植物当たりの総平均収量の有意な増加を示す。
【実施例35】
【0174】
非ストレス部位 (MacGregor、MB)におけるトランスジェニックアブラナ系統についての種子の質の向上および種子の大きさの上昇
図34は「非ストレス」部位 (MacGregor、MB)におけるコントロール植物と比較してのCOR78:ROB5形質転換植物についての、直径2.22mmを超える種子数のパーセンテージ(%S) を示す。3つのすべての形質転換系統13513、13514、および13516はコントロール植物と比較して有意に大きい種子を示した。
【実施例36】
【0175】
ストレス部位(Wakaw、SK、and Aberdeen、SK)におけるトランスジェニックアブラナ系統についての種子の質の向上および種子の大きさの上昇
図35は「ストレス」部位におけるコントロール植物と比較してのCOR78:ROB5形質転換植物についてのあらかじめ定められた直径より大きい種子数のパーセンテージ(%S)を示す。(a)グラフはWakaw、SK部位の植物から収穫した2.22mmより大きい直径を有する種子の総パーセンテージを示し、(b)グラフはSaskatoon、SK部位の植物から収穫した2.00mmを超える直径を有する種子の総パーセンテージを示す。3つのすべての形質転換系統13513、13514、および13516はWakaw、SK部位においてコントロール植物と比較して有意に大きい種子を示した。
【実施例37】
【0176】
ストレス部位 (Saskatoon、SK)におけるトランスジェニックアブラナ系統についての種子の質の向上および種子重量の増加
図36はストレス部位 (Saskatoon、SK)において栽培したコントロールおよびCOR78:ROB5植物から収穫した種子の比較である。(a)グラフはコントロールおよび形質転換植物から収穫した種子の1000 穀粒重量(g)を示し、(b)はコントロール (左)およびCOR78:ROB5形質転換植物(右)由来の種子の比較写真である。トランスジェニック植物由来の種子における種子の質の向上および成熟の促進に注目されたい。
【実施例38】
【0177】
非塩ストレスおよび塩ストレス条件下での形質転換アブラナ系統の発芽促進および種子の質の向上
図37は非塩ストレスおよび塩ストレス条件下でのコントロール植物と比較してのCOR78:ROB5形質転換植物の発芽の促進および種子の質の向上を示す。(a)グラフは非塩ストレス条件下(24℃でddH2Oを施用)でのストレス部位における8日間のコントロールおよび形質転換植物(平均4プレート)のパーセンテージ発芽(%G)を示し、(b)グラフは塩ストレス条件下(24℃で80mM 塩KH2PO4 / K2HPO4を施用) でのストレス部位における7日間のコントロールおよび形質転換植物(平均4プレート)のパーセンテージ発芽(%G)を示す。
【0178】
本発明をその好ましい実施態様に言及して記載したが、当業者にとって上記記載を読み、理解することによって、具体的に記載する態様以外の、ROB5遺伝子およびそれによってコードされるペプチド、対応するROB5コンストラクトを発現する植物およびその植物産物が達成でき、本発明の精神と範囲内に含まれることが明らかであろう。すべてのかかるシステムおよび方法ならびにその均等物が本発明の範囲内であることが意図される。
【0179】
表1:アラインメントの配列対距離
PAM残基重量表を用いたJ.Hein法によるアラインメントの配列対距離、MEG
2002年4月4日木曜日午後2時26分
【表1】

【0180】
表2:Rob-5を用いた形質転換ベクター構築
【表2】

【0181】
表3:多様なストレス(凍結、熱および乾燥)に対する耐性の上昇を示すRob-5を発現するアブラナ、アマおよびジャガイモのトランスジェニック系統。さらに選抜されたトランスジェニック系統は以下の特性の上昇または向上を示す:発芽、出芽(実生活発度)、植物の背丈、より早い成熟(開花までの日数)および収量(収穫した種子重量)
【表3】

【図面の簡単な説明】
【0182】
原文に記載無し
【配列表】




【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5−A】

【図5−B】

【図5−C】

【図6−A】

【図6−B】

【図7−A】

【図7−B】

【図7−C】

【図7−D】

【図8−A】

【図8−B】

【図8−C】

【図9−A】

【図9−B】

【図9−C】

【図9−D】

【図9−E】

【図10−A】

【図10−B】

【図11−A】

【図11−B】

【図12−A】

【図12−B】

【図12−C】

【図13−A】

【図13−B】

【図13−C】

【図14−A】

【図14−B】

【図14−C】

【図14−D】

【図15−A】

【図15−B】

【図15−C】

【図15−D】

【図15−E】

【図16−A】

【図16−B】

【図17−A】

【図17−B】

【図17−C】

【図18−A】

【図18−B】

【図19−A】

【図19−B】

【図20】

【図21】

【図22】

【図23−A】

【図23−B】

【図24−A】

【図24−B】

【図25−A】

【図25−B】

【図26−A】

【図26−B】

【図26−C】

【図26−D】

【図27−A】

【図27−B】

【図28−A】

【図28−B】

【図29−A】

【図29−B】

【図30−A】

【図30−B】

【図31−A】

【図31−B】

【図32】

【図33−A】

【図33−B】

【図34】

【図35−A】

【図35−B】

【図36−A】

【図36−B】

【図37−A】

【図37−B】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列がROB5タンパク質をコードすることを特徴とする単離ヌクレオチド配列、またはその断片。
【請求項2】
該単離ヌクレオチド配列が以下から選択されることを特徴とする単離ヌクレオチド配列:
a) 配列番号1に示すROB5遺伝子、またはその相補鎖;
b) a)のヌクレオチド配列によってコードされるペプチドに対して少なくとも50%の同一性を有するペプチドをコードするヌクレオチド配列、またはその相補鎖;
ここで該ヌクレオチド配列またはその相補鎖は、非改変植物と比較して該ヌクレオチド配列を外因的に発現するトランスジェニック植物のストレス応答および/または成長能力を変化させるタンパク質またはその一部をコードする。
【請求項3】
該ヌクレオチド配列またはその相補鎖が、配列番号1に示すROB5遺伝子またはその相補鎖に対して少なくとも70%の配列同一性を有するタンパク質をコードすることを特徴とする請求項2の単離ヌクレオチド配列。
【請求項4】
該ヌクレオチド配列またはその相補鎖が配列番号1に示すROB5遺伝子またはその相補鎖に対して少なくとも90%の配列同一性を有するタンパク質をコードすることを特徴とする請求項2の単離ヌクレオチド配列。
【請求項5】
該ヌクレオチド配列またはその相補鎖が配列番号1に示すROB5遺伝子またはその相補鎖に対して少なくとも95%の配列同一性を有するタンパク質をコードすることを特徴とする請求項2の単離ヌクレオチド配列。
【請求項6】
単離ヌクレオチド配列が以下からなる群から選択されることを特徴とする単離ヌクレオチド配列:
a) 配列番号1によるROB5遺伝子、またはその相補鎖;
b) a)のヌクレオチド配列にストリンジェントな条件下でハイブリダイズするヌクレオチド配列、またはその相補鎖;
ここで該ヌクレオチド配列またはその相補鎖は、非改変植物と比較して該ヌクレオチド配列を外因的に発現するトランスジェニック植物のストレス応答および/または成長能力を変化させるタンパク質またはその一部をコードする。
【請求項7】
該ヌクレオチド配列の発現が該トランスジェニック植物に以下からなる群から選択されるストレス応答の変化をもたらすことを特徴とする請求項2の単離ヌクレオチド配列:耐熱性の上昇、耐寒性の上昇;耐凍性の上昇、耐乾性の上昇、冠水耐性の上昇、害虫に対する抵抗性の上昇、病害に対する抵抗性の上昇。
【請求項8】
該ヌクレオチド配列の発現が該トランスジェニック植物に以下からなる群から選択される成長能力の変化をもたらすことを特徴とする請求項2の単離ヌクレオチド配列:成長速度の上昇、成長速度の低下、バイオマスの上昇、およびバイオマスの低下。
【請求項9】
ヌクレオチド配列がスズメノチャヒキ植物由来であることを特徴とする請求項2の単離ヌクレオチド配列。
【請求項10】
植物における該ヌクレオチド配列の発現により、該植物において、非改変植物と比較して、悪条件における生存率の上昇がみられることを特徴とする請求項2の単離ヌクレオチド配列。
【請求項11】
単離および精製ペプチドが請求項2によるヌクレオチド配列またはその相補鎖によってコードされることを特徴とする単離および精製ペプチド。
【請求項12】
DNA 発現カセットがプロモーターに作動可能に連結した請求項2のヌクレオチド配列を含むことを特徴とするDNA 発現カセット。
【請求項13】
コンストラクトが、ベクターおよび請求項2のヌクレオチド配列、または請求項12のDNA 発現カセットを含むことを特徴とするコンストラクト。
【請求項14】
該ヌクレオチド配列がプロモーターに作動可能に連結していることを特徴とする請求項13のコンストラクト。
【請求項15】
該プロモーターが以下からなる群から選択されることを特徴とする請求項14のコンストラクト:構成的プロモーター、誘導可能プロモーター、器官特異的プロモーター、強いプロモーター、弱いプモーター、およびストレス誘導性プロモーター。
【請求項16】
植物細胞が請求項13のコンストラクトで形質転換されていることを特徴とする植物細胞。
【請求項17】
トランスジェニック植物が請求項16の植物細胞の再分化に由来することを特徴とするトランスジェニック植物。
【請求項18】
トランスジェニック植物が穀物産生作物種、果物または野菜種および園芸種から選択されることを特徴とする請求項17のトランスジェニック植物。
【請求項19】
トランスジェニック植物が以下からなる群から選択される種であることを特徴とする請求項18のトランスジェニック植物: アブラナ、アマ、およびジャガイモ。
【請求項20】
以下の工程を含むことを特徴とする植物を遺伝的に改変する方法:
(a)形質転換され、全植物体に再生されうる植物細胞に、植物における形質転換および選抜に必要なDNA配列に加えて、プロモーターに作動可能に連結した請求項2のヌクレオチド配列を含むコンストラクトを導入する工程;および、
(b)該ヌクレオチド配列を含む植物を回収する工程。
【請求項21】
該植物が非改変植物と比較して変化したストレス耐性および/または変化した成長能力を示すことを特徴とする請求項20の方法。
【請求項22】
該植物が以下からなる群から選択される変化したストレス応答を示すことを特徴とする請求項21の方法:耐熱性の上昇、耐寒性の上昇;耐凍性の上昇、耐乾性の上昇、冠水耐性の上昇、害虫に対する抵抗性の上昇、病害に対する抵抗性の上昇。
【請求項23】
該植物が非改変植物と比較して変化した1以上の成長特性を示し、成長特性が以下からなる群から選択されることを特徴とする請求項20の方法:成長速度の上昇、成長速度の低下、バイオマスの上昇、およびバイオマスの低下。
【請求項24】
該ヌクレオチド配列がプロモーターに対してセンス方向であることを特徴とする請求項20の方法。
【請求項25】
該ヌクレオチド配列がプロモーターに対してアンチセンス方向であることを特徴とする請求項20の方法。
【請求項26】
以下の工程を含むことを特徴とする請求項2のヌクレオチド配列に対して実質的に相同的なDNA配列を同定および単離する方法:
ストリンジェントな条件下で請求項1または2のヌクレオチド配列とハイブリダイズできるディジェネレートオリゴヌクレオチドプライマーを合成する工程;
該ディジェネレートオリゴヌクレオチドプライマーを標識する工程;
該標識化ディジェネレートオリゴヌクレオチドプライマーをプローブとして用いて、該実質的に相同的なDNA配列についてDNAライブラリーをスクリーニングする工程;および、
ライブラリーから実質的に相同的なDNA配列を単離する工程。
【請求項27】
該単離ヌクレオチド配列が請求項26の方法によって得られることを特徴とする単離ヌクレオチド配列。
【請求項28】
プライマーがポリメラーゼ連鎖反応によるプライマーの間のDNA領域を増幅するために、請求項2のヌクレオチド配列の選択された位置にハイブリダイズすることを特徴とするプライマー対。
【請求項29】
非改変植物と比較して変化したストレス応答を示すトランスジェニック植物を作成するためのものであることを特徴とする請求項2の単離ヌクレオチド配列の使用。
【請求項30】
非改変植物と比較して変化した成長能力を示すトランスジェニック植物を作成するためのものであることを特徴とする請求項2の単離ヌクレオチド配列の使用。
【請求項31】
以下の工程を含むことを特徴とするストレス応答および/または成長能力が改変されたトランスジェニック植物の生産方法:
(a)形質転換され、全植物体に再生されうる植物細胞に、植物における形質転換および選抜に必要なDNA配列に加えて、プロモーターに作動可能に連結したROB5遺伝子由来のヌクレオチド配列を含むコンストラクトを導入する工程;および、
(b)該ヌクレオチド配列を含み、非改変植物と比較して改変されたストレス応答および/または成長能力を有する植物を回収する工程。
【請求項32】
該ヌクレオチド配列が配列番号1に示すペプチドと少なくとも50%の同一性を有するペプチドをコードするか、またはその一部、またはその相補鎖であることを特徴とする請求項31の方法。
【請求項33】
該ヌクレオチド配列が配列番号1に示すペプチドと少なくとも70%の同一性を有するペプチドをコードするか、またはその一部、またはその相補鎖であることを特徴とする請求項31の方法。
【請求項34】
該ヌクレオチド配列が配列番号1に示すペプチドと少なくとも90%の同一性を有するペプチドをコードするか、またはその一部、またはその相補鎖であることを特徴とする請求項31の方法。
【請求項35】
該ヌクレオチド配列が配列番号1に示すペプチドと少なくとも95%の同一性を有するペプチドをコードするか、またはその一部、またはその相補鎖であることを特徴とする請求項31の方法。
【請求項36】
該ヌクレオチド配列が配列番号1に示すペプチドと少なくとも99%の同一性を有するペプチドをコードするか、またはその一部、またはその相補鎖であることを特徴とする請求項31の方法。
【請求項37】
該ヌクレオチド配列が配列番号1に示すヌクレオチド配列、またはその一部、またはその相補鎖であるか、あるいは配列番号1に示すヌクレオチド配列にストリンジェントな条件下で結合するヌクレオチド配列、またはその一部、またはその相補鎖であることを特徴とする請求項31の方法。
【請求項38】
該ヌクレオチド配列が該植物において内因性ROB5遺伝子の相補的阻害のためにセンス方向に発現し、該植物が非改変植物と比較してストレス耐性の低下および/または成長能力の低下を示すことを特徴とする請求項31の方法。
【請求項39】
該ヌクレオチド配列が突然変異したROB5遺伝子であることを特徴とする請求項38の方法。
【請求項40】
該ヌクレオチド配列が該植物の内因性ROB5遺伝子のアンチセンス阻害のためにアンチセンス方向に発現し、該植物が非改変植物と比較してストレス耐性の低下および/または成長能力の低下を示すことを特徴とする請求項31の方法。
【請求項41】
該ヌクレオチド配列がセンス方向にて過剰発現され、該植物が非改変植物と比較してストレス耐性の上昇および/または成長能力の上昇を示すことを特徴とする請求項31の方法。
【請求項42】
該プロモーターが内因性ROB5遺伝子またはそのホモログと通常作動可能に連結している転写制御領域を含むことを特徴とする請求項31の方法。
【請求項43】
該プロモーターが内因性ROB5遺伝子またはそのホモログと通常作動可能に連結していない転写制御領域を含むことを特徴とする請求項31の方法。
【請求項44】
該プロモーターが以下からなる群から選択されることを特徴とする請求項31の方法:構成的プロモーター、誘導可能プロモーター、器官特異的プロモーター、強いプロモーター、弱いプモーター、および内因性ROB5プロモーター。
【請求項45】
以下の工程を含むコンストラクトによる形質転換が成功した植物を同定する方法:
(a)形質転換され、全植物体へと再生されうる植物細胞に、植物における形質転換および選抜に必要なDNA配列に加えて、プロモーターに作動可能に連結した、ROB5遺伝子由来であってROB5遺伝子産物の少なくとも一部をコードするヌクレオチド配列を含むコンストラクトを導入する工程;
(b)該植物細胞を全植物体へと再生させる工程;および、
(c)該コンストラクトでの形質転換が成功し、該ヌクレオチド配列を発現する植物を判定するために植物を調べる工程。
【請求項46】
該コンストラクトがバイシストロン性であり、さらにROB5遺伝子由来の該ヌクレオチド配列と関連のない転写産物を作る第二のDNA発現カセットを含むことを特徴とする請求項45の方法。
【請求項47】
トランスジェニック植物が請求項31〜46の何れかの方法で作成されることを特徴とするトランスジェニック植物。
【請求項48】
バイシストロン性ベクターが、第一の組織特異的プロモーターに作動可能に連結した請求項2の第一のヌクレオチド配列、および第二の組織特異的プロモーターに作動可能に連結した請求項2の第二のヌクレオチド配列を含むことを特徴とするバイシストロン性ベクター。
【請求項49】
トランスジェニック植物における該ベクターの発現が、該第一および第二のヌクレオチド配列および該作動可能に連結した第一および第二のプロモーターによって、該植物の異なる組織において異なるストレス耐性および成長能力特性を誘導することを特徴とする請求項48のバイシストロン性ベクター。
【請求項50】
該第一のヌクレオチド配列が該第一のプロモーターに対してセンス方向であり、該第二のヌクレオチド配列が該第二のプロモーターに対してアンチセンス方向であることを特徴とする請求項49のバイシストロン性ベクター。
【請求項51】
該第一のヌクレオチド配列がROB5タンパク質またはその一部の生理活性形態をコードし、該第二のヌクレオチド配列がROB5タンパク質またはその一部の生理不活性形態コードすることを特徴とする請求項49のバイシストロン性ベクター。
【請求項52】
該トランスジェニック植物が請求項48〜51のいずれかのバイシストロン性ベクターで形質転換されていることを特徴とするトランスジェニック部分。

【公表番号】特表2006−518987(P2006−518987A)
【公表日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−550589(P2004−550589)
【出願日】平成15年11月14日(2003.11.14)
【国際出願番号】PCT/CA2003/001754
【国際公開番号】WO2004/044207
【国際公開日】平成16年5月27日(2004.5.27)
【出願人】(505174356)ユニバーシティ・オブ・サスカチェワン・テクノロジーズ・インコーポレイテッド (1)
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITY OF SASKATCHEWAN TECHNOLOGIES INC.
【Fターム(参考)】