説明

植物プロトプラストにおける標的化遺伝子改変の効率を増大させるための二本鎖RNAの使用

植物MMRのmRNAを好ましくは標的化するdsRNA、および変異原性核酸塩基を用いてプロトプラストを一時的にトランスフェクトするステップを含む、植物細胞のプロトプラストにおける標的化遺伝子改変のための方法。トランスフェクションは、同時または連続的なものであり得、遺伝子は、ミスマッチ修復系において機能的ないかなる遺伝子でもあり得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオテクノロジー、特に植物バイオテクノロジーに関する。本発明は、より具体的には、dsRNA分子の存在下で変異原性核酸塩基を用いる、プロトプラストにおける植物遺伝子の標的化遺伝子改変のための方法に関する。本発明はさらに、標的化遺伝子改変の効率の増大、およびこの技術を用いた遺伝子改変の適用に関する。
【背景技術】
【0002】
遺伝子改変は、生存細胞の、またはその細胞により一部が形成される生物の、またはその細胞によって再生され得る生物の、1つまたは複数の遺伝的にコードされた生物学的特性を改変する目的で、生存細胞の遺伝物質における変化を意図的に生じさせるプロセスである。これらの変化は、遺伝物質の一部の欠失、外因性遺伝物質の付加、または遺伝物質の既存のヌクレオチド配列における変化という形を取り得る。真核生物の遺伝子改変のための方法は、20年以上にわたり知られており、農業、ヒトの健康、食料品質、および環境保護の分野における向上のための、植物細胞、ヒト細胞、動物細胞、および微生物における広い適用を見出している。遺伝子改変の共通の方法は、外因性DNA断片を細胞のゲノムに付加することからなり、これは、その結果、該細胞またはその生物に、既に存在している遺伝子によってコードされている特性に加えて、新たな特性を付与する(それによって既存の遺伝子の発現が抑制される適用を含む)。多くのこのような例が、所望の特性の獲得において効果的であるが、それにもかかわらず、これらの方法はあまり正確なものではなく、それは、外因性DNA断片が挿入されるゲノム位置が制御されない(したがって、発現の最終的なレベルが制御されない)ためであり、また、所望の効果が、元のおよび均衡の取れたゲノムによってコードされる天然の特性を上回って現れなくてはならないためである。逆に、所定のゲノム座におけるヌクレオチドの付加、欠失、または変換をもたらす遺伝子改変の方法は、既存の遺伝子の正確な改変を可能にする。
【0003】
変異原性の核酸塩基指向的な標的化遺伝子改変(TGA)は、合成変異原性核酸塩基(ワトソン・クリック塩基対合特性がDNAに類似しているが、DNAとは化学的に異なり得る、短いヌクレオチド様部分からなる分子)を真核細胞の核内に送達することに基づいた方法である(AlexeevおよびYoon、Nature Biotechnol. 16: 1343頁、1998; Rice、Nature Biotechnol. 19: 321頁、2001; Kmiec, J. Clin. Invest. 112: 632頁、2003)。変異原性核酸塩基の相同配列においてミスマッチヌクレオチドを意図的に設計することによって、ミスマッチヌクレオチドが、ゲノムDNA配列内にコピーされ得る。この方法によって、既存の遺伝子座における単一のまたは最大で数個のヌクレオチドの変換が可能になるが、しかし、この方法は、既存の遺伝子において停止コドンを生じさせてそれらの機能を破壊するために、またはコドンの変化を生じさせて、改変したアミノ酸組成を有するタンパク質をコードする遺伝子を得るため(タンパク質工学)に適用され得る。
【0004】
TGAは、植物細胞、動物細胞、および酵母細胞において記載されている。キメラDNA:RNA型(キメラ)または一本鎖型という2つの異なるクラスの合成変異原性核酸塩基が、これらの研究において用いられている。
【0005】
キメラは、25bpのDNAのみの領域と、細胞内におけるキメラの安定性を助けると考えられている10bpの2’-O-メチル化RNAが両側に位置する、DNAの5bpのコア領域で構成される25bpの相補的配列とからなる自己相補的分子である。5bpのコア領域は、その中心に、ゲノム標的DNA配列において改変されるヌクレオチドを有する、操作されたミスマッチを含む。これらの領域の両方は、4bpのチミジンヘアピンによって連結されている。細胞内に導入されると、キメラは、その標的配列と二重のDループを形成すると考えられ、ミスマッチがキメラと標的ヌクレオチドとの間で形成される。このミスマッチはその後、内因性細胞DNA修復タンパク質によって、ゲノムヌクレオチドの変換によって解消される。キメラを用いたTGAの第1の例は動物細胞から来ており(Igouchevaら、2001 Gene Therapy 8、391〜399頁において概説されている)、その後また、植物細胞におけるTGAを達成するために用いられた(Beethamら、1999 Proc. Natl. Acad. Sci. USA 96: 8774〜8778頁; Zhuら、1999 Proc. Natl. Acad. Sci. USA 96、8768〜8773頁; Zhuら、2000 Nature Biotech. 18、555〜558頁; Kochevenkoら、2003 Plant Phys. 132: 174〜184頁; Okuzakiら、2004 Plant Cell Rep. 22: 509〜512頁)。ヒト細胞とは異なり、TGAの事象が生じた植物細胞は完全な植物に再生され得、TGA突然変異は次の世代へ移るため、TGAは、重要な食用作物の調査と商業的な遺伝子操作との両方にとって理想的なツールである。しかし、多くの研究所による広範な調査により、キメラを用いるTGAの頻度は極めて低く変化しやすいものであるか、または検出不可能ですらあり(Ruiterら、2003 Plant Mol. Biol. 53、715〜729頁、Van der Steegeら(2001) Nature Biotech. 19: 305〜306頁)、合成することが困難な、標的の転写状態、細胞周期における細胞の位置、標的の配列、およびキメラの質などの要素に依存することが示されている。TGAの頻度が比較的低いため、TGAの事象は、単一ヌクレオチドの改変が優性の選択可能な表現型をもたらす場合にのみ検出され得る。植物細胞において、特定の点突然変異が、分岐鎖アミノ酸であるロイシン、イソロイシン、およびバリンの合成に共通の最初のステップを触媒するアセト乳酸合成酵素(ALS、トウモロコシにおいてはAHAS)遺伝子のオープンリーディングフレーム内に導入された。タバコにおいては、単一ヌクレオチドの改変は、コドン変換P194QまたはW571Lを生じさせるために十分である。これらのコドン変換のいずれかの後に生産されるALSタンパク質は、スルホニル尿素クラスの除草剤による阻害に対して感受性ではなく、したがって、染色体座での単一ヌクレオチドの変換についての選択方法をもたらす。
【0006】
キメラを用いる作業の困難性のため、より信頼性のある、代替的なオリゴヌクレオチド設計が探求されている。いくつかの研究所が、一本鎖(ss)変異原性核酸塩基の、TGAを行う能力を調べている。これらは、より再現可能な結果をもたらすこと、合成が簡単であること、および細胞における変異原性核酸塩基の性能を向上させるための修飾ヌクレオチドも含み得ることが明らかにされている(Liuら、2002 Nuc. Acids Res. 30: 2742〜2750頁; 概説、Parekh-Olmedoら、2005 Gene Therapy 12: 639〜646頁; Dongら、2006 Plant Cell Rep. 25: 457〜65頁; De Piedoueら、2007 Oligonucleotides 27: 258〜263頁)。
【0007】
TGAは、Kmiecの様々な特許出願において、特にWO0173002、WO03/027265、WO01/87914、WO99/58702、WO97/48714、WO02/10364において記載されている。WO01/73002において、未修飾DNAオリゴヌクレオチドを用いて得られた遺伝子改変の効率が低いことは、反応混合物内または標的細胞内に存在するヌクレアーゼによるドナーオリゴヌクレオチドの分解の結果であると強く考えられることが検討されている。この問題を解決するために、得られる変異原性核酸塩基をヌクレアーゼに対して耐性なものにする、修飾ヌクレオチドを組み込むことが提案されている。典型的な例には、ホスホロチオエート連結または2’-O-メチル類似体を有するヌクレオチドが含まれる。これらの修飾は、好ましくは、変異原性核酸塩基の末端に位置し、中央のDNAドメインは標的化塩基を囲んだままである。これを裏付けるものとして、特許出願WO02/26967は、変異原性核酸塩基の細胞内寿命を増大させる、ある修飾ヌクレオチドが、インビトロでの試験系において、およびまた哺乳動物染色体標的で、TGAの効率を増強させることを示す。ヌクレアーゼ耐性だけではなく、その相補的な標的DNAに対する変異原性核酸塩基の結合親和性もまた、TGAの頻度を劇的に増強させる可能性を有する。その結合親和性を増強させる修飾ヌクレオチドを含有する、一本鎖変異原性核酸塩基は、複合ゲノムにおけるその相補的な標的をより効率的に見出し、かつ/またはその標的にさらに長く結合し続け、DNAの転写および複製を調節するタンパク質により除去されにくいことが可能である。インビトロでのTGAアッセイは、多くの修飾ヌクレオチドを試験してTGAプロセスの効率を向上させるために用いられている。ロック核酸(LNA)およびC5-プロピンピリミジンはそれぞれ、二本鎖の形成を安定化させ、二本鎖の融解温度を上昇させる、糖部分および塩基の修飾を有する。これらの修飾ヌクレオチドが変異原性核酸塩基に組み込まれると、それらは、TGAの効率を、同一配列の未修飾の変異原性核酸塩基を用いて得られるものの最大13倍に増強させる。この点において、WO2007073166およびWO2007073170を参照されたい。
【0008】
動物細胞および酵母細胞における研究は、細胞のミスマッチ修復(MMR)系に属するタンパク質がTGAプロセスにおいて重要であることを示している。DNA複製の間、たまに、DNA依存性のDNAポリメラーゼが、新たに合成される(娘)DNA鎖に、誤ったヌクレオチドを組み込むことがある。この結果、DNA二本鎖においてヌクレオチドのミスマッチ(例えば、G:A、T:C、G:Gなど)が生じ、これは、細胞の遺伝的完全性を維持するためには修正されなくてはならない。大腸菌(E.coli)におけるMMR複合体は、MutSタンパク質、MutLタンパク質、およびMutHタンパク質という3つのクラスのサブユニットからなる。ヘテロ二量体として機能し、DNA二本鎖におけるミスマッチに結合し得る、いくつかのMutSタンパク質が存在する。これらのMutSヘテロ二量体は、様々なミスマッチに対する親和性において異なる。ミスマッチに結合すると、MutSヘテロ二量体は、MutLヘテロ二量体をミスマッチに動員し、次にMutLヘテロ二量体はMutHタンパク質を動員する。MutHは、新たに合成されたDNA鎖の、ミスマッチの近辺かつ片側に、ニックを形成し得る。その後、エキソヌクレアーゼは、ミスマッチしたヌクレオチドを含む、新たに合成されたDNAの分解を、ニックから開始し得る。そして、ミスマッチの修復は、娘鎖の再合成によって完了する。MMR系は遍在性であり、MutSタンパク質およびMutLタンパク質のオーソログは、動物および植物のゲノムを含む、原核生物および真核生物のゲノムの両方において見出されている(概説については、Kolodner & Marsishky 1999、Curr. Opin. Genet. Dev. 9: 89〜96頁を参照されたい)。植物においては、4つのMutSオーソログ(MSH2、MSH3、MHS6、およびMSH7)ならびに4つのMutLオーソログ(MLH1、MLH2、MLH3、およびPMS1)が存在する。塩基間ミスペアの、または単一のらせん外ヌクレオチドチのミスマッチの認識は、MutSα(MSH2::MSH6ヘテロ二量体)によって達成されるが、より大きならせん外ループアウトはMutSβ(MSH2::MSH3ヘテロ二量体)によって認識される。MSH7遺伝子は植物において同定されているが、動物においてはまだ同定されていない。MSH7は、MSH6に最も類似しており、また、MSH2とヘテロ二量体(MutSγ)を形成する(Culligan & Hays、2000、Plant Cell 12: 991〜1002頁)。しかし、MutSαおよびMutSγは、ミスマッチの範囲に対してある程度異なる親和性を示す。MSH2を欠く細胞は、DNAミスマッチを認識できず、ミューテーターの表現型を示す。MSH2を欠くシロイヌナズナ(Arabidopsis)系統では、突然変異は、植物が生存能力を失う時点(T6世代)まで、世代ごとに蓄積する(Hoffmanら、2004 Genes & Dev. 18: 2676〜2685頁)。Physcomitrellaという苔では、MSH2が失われると、即座に有害な表現型となり、これはおそらく、この植物が半数体の性質であるためである(Trouillerら、2006 Nuc. Acids Res. 34: 232〜242頁)。シロイヌナズナのMSH2突然変異体における遺伝的損傷はまた、ゲノムの高度に突然変異可能な領域であるマイクロサテライトにおいても検出されている(Leonardら、2003 Plant Phys. 133: 328〜338頁; Depeigesら、2005 Plant Sci. 168: 939〜947頁)。さらに、MSH2突然変異体は、相違する配列間での体細胞性および減数分裂性の相同組換えの増大を示し(Emmanuelら、2005 EMBO Rep. 7: 100〜105頁; Liら、2006 Plant J. 45: 908〜916頁)、このことは、同一でない配列間の組換えがMMR系によって阻害されることを示す。
【0009】
MutLオーソログは、MutLα(MLH1::PMS1)、MutLβ(MLH1::MLH3)、およびMutLγ(MLH1::MLH2)というヘテロ二量体を形成し、各ヘテロ二量体は、異なるDNA損傷の修復に関与する。MLH1は、全てのヘテロ二量体に関与するため、非常に重要であることが明らかであるが、PMS1もまた、主要なMutLαへテロ二量体の一部として、単一のミスペアを有する塩基の修復に関与するため、重要な役割を有する。シロイヌナズナのPMS1遺伝子は、最近同定された(Alouら、2004 Plant Sci. 167: 447〜456頁)。全てのMMR遺伝子と同様に、PMS1の発現は、成熟した植物組織においては非常に低いが、DNA複製のエラーの修復におけるその役割から期待されるように、分裂中の細胞培養物においては大きく上方調節される。PMS1を欠く植物は、MSH2を欠く植物と同一の、マイクロサテライトの不安定性を示し、このことは、MutLα機能の喪失が、ミューテーターの表現型をもたらすために十分であることを示す(Alouら、2004 Plant Mol. Biol. 56: 339-349頁)。
【0010】
MMR系が動物細胞においてTGAプロセスを阻害することが明らかに実証されている。Dekkerら(2003 Nuc.Acids Res. 31 : e27)は、マウス胚性幹(ES)細胞においてTGAの実験を行い、単一ヌクレオチド置換が、MSH2を欠くES系統においてのみ得られ得ることを示した。Dekkerら(2006 Gene Therapy 13: 686-694頁)はまた、MSH3を欠くES系統においても類似の結果を見出した。さらに、Igouchevaら(2008 Oligonucleotides 18: 111〜122頁)は、肝細胞において、単一ヌクレオチド置換による、染色体に組み込まれたGFPレポーター遺伝子の回復が、RNAiを用いてMSH2発現が抑制された系統において、30倍効果的であったことを実証した。RNAiを用いたMMR系の一時的な抑制はまた、TGAの効率を向上させることが示されている。Maguireら(2007 Gene 386: 107〜114頁)は、欠損GFP遺伝子を有するプラスミド、この突然変異を修正するように設計された変異原性核酸塩基、およびMHS2転写産物に標的化されたsiRNAを共形質転換した。MHS2の下方調節のレベルは限られたものであったが(対照発現のわずか62%)、TGA頻度において3倍の向上が観察された。また、MutLヘテロ二量体における突然変異もまたTGAの効率を増大させることも報告されている。Yinら(2005 Biochem. J. 390: 253-261頁)は、内因性β-グロビン遺伝子でのTGA頻度が、MLH1活性を欠くヒト結腸癌系統において5倍増大したことを報告した。MSH2と同様に、MLH1は全てのMutLヘテロ二量体に存在する。MMR欠損動物細胞系統において見られるTGAの効率の増大についての最も単純な説明は、変異原性核酸塩基とその標的との間で形成されるミスマッチが機能的MMR系によって検出され、TGAプロセスが中断されるということである。これらの研究において用いられた広範な細胞型を考慮すると、MMR系によるTGAの阻害は、特定の細胞型に限定されるわけではないと考えられる。したがって、MMR系を欠く植物細胞もまた、TGAの効率の増大を示す。しかし、MMR系を永続的に下方調節しながら植物系統を用いることは、前記植物系統が、DNA複製に関連するエラーを蓄積し続け、結果的に生存能力を失うため、望ましくないことは明らかである。したがって、植物細胞においてMMR系を一時的に下方調節する方法が望ましい。しかし、このような系は、当技術分野においてはいまだ利用不可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】WO0173002
【特許文献2】WO03/027265
【特許文献3】WO01/87914
【特許文献4】WO99/58702
【特許文献5】WO97/48714
【特許文献6】WO02/10364
【特許文献7】WO02/26967
【特許文献8】WO2007073166
【特許文献9】WO2007073170
【特許文献10】WO2007073149
【特許文献11】WO2007073154
【特許文献12】WO99/14226
【特許文献13】WO00/56748
【特許文献14】WO00/66604
【特許文献15】WO98/39352
【特許文献16】米国特許第6, 043, 060号
【特許文献17】米国特許第6, 268, 490号
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】AlexeevおよびYoon、Nature Biotechnol. 16: 1343頁、1998
【非特許文献2】Rice、Nature Biotechnol. 19: 321頁、2001
【非特許文献3】Kmiec, J. Clin. Invest. 112: 632頁、2003
【非特許文献4】Igouchevaら、2001 Gene Therapy 8、391〜399頁
【非特許文献5】Beethamら、1999 Proc. Natl. Acad. Sci. USA 96: 8774〜8778頁
【非特許文献6】Zhuら、1999 Proc. Natl. Acad. Sci. USA 96、8768〜8773頁
【非特許文献7】Zhuら、2000 Nature Biotech. 18、555〜558頁
【非特許文献8】Kochevenkoら、2003 Plant Phys. 132: 174〜184頁
【非特許文献9】Okuzakiら、2004 Plant Cell Rep. 22: 509〜512頁
【非特許文献10】Ruiterら、2003 Plant Mol. Biol. 53、715〜729頁
【非特許文献11】Van der Steegeら(2001) Nature Biotech. 19: 305〜306頁
【非特許文献12】Liuら、2002 Nuc. Acids Res. 30: 2742〜2750頁
【非特許文献13】Parekh-Olmedoら、2005 Gene Therapy 12: 639〜646頁
【非特許文献14】Dongら、2006 Plant Cell Rep. 25: 457〜65頁
【非特許文献15】De Piedoueら、2007 Oligonucleotides 27: 258〜263頁
【非特許文献16】Kolodner & Marsishky 1999、Curr. Opin. Genet. Dev. 9: 89〜96頁
【非特許文献17】Culligan & Hays、2000、Plant Cell 12: 991〜1002頁
【非特許文献18】Hoffmanら、2004 Genes & Dev. 18: 2676〜2685頁
【非特許文献19】Trouillerら、2006 Nuc. Acids Res. 34: 232〜242頁
【非特許文献20】Leonardら、2003 Plant Phys. 133: 328〜338頁
【非特許文献21】Depeigesら、2005 Plant Sci. 168: 939〜947頁
【非特許文献22】Emmanuelら、2005 EMBO Rep. 7: 100〜105頁
【非特許文献23】Liら、2006 Plant J. 45: 908〜916頁
【非特許文献24】Alouら、2004 Plant Sci. 167: 447〜456頁
【非特許文献25】Alouら、2004 Plant Mol. Biol. 56: 339-349頁
【非特許文献26】Dekkerら、2003 Nuc.Acids Res. 31 : e27
【非特許文献27】Dekkerら、2006 Gene Therapy 13: 686-694頁
【非特許文献28】Igouchevaら、2008 Oligonucleotides 18: 111〜122頁
【非特許文献29】Maguireら、2007 Gene 386: 107〜114頁
【非特許文献30】Yinら、2005 Biochem. J. 390: 253-261頁
【非特許文献31】Akashiら、2001 Antisense & Nucl. Acid Drug Dev. 11: 359〜367頁
【非特許文献32】Anら、2003 Biosci. Biotechnol. Biochem. 67: 2674〜2677頁
【非特許文献33】Anら、2005 Biosci. Biotechnol. Biochem. 69: 415〜418頁
【非特許文献34】Dubouzetら、2005 Biosci. Biotechnol. Biochem. 69: 63〜70頁
【非特許文献35】Vanitharaniら、2003 Proc. Natl. Acad. Sci. USA 100: 9632〜9636頁
【非特許文献36】Bartら、2006 Plant Methods 2: 13頁
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【非特許文献38】BIOCOMPUTING: INFORMATICS AND GENOME PROJECTS、Smith, D. W.編、Academic Press、New York、1993
【非特許文献39】COMPUTER ANALYSIS OF SEQUENCE DATA, PART I、Griffin, A. M.およびGriffin, H. G.編、Humana Press、New Jersey、1994
【非特許文献40】SEQUENCE ANALYSIS IN MOLECULAR BIOLOGY、von Heinje, G.、Academic Press、1987
【非特許文献41】SEQUENCE ANALYSIS PRIMER; Gribskov, M.およびDevereux, J.編、M Stockton Press、New York、1991
【非特許文献42】Carillo, H.およびLipton, D.、SIAM J. Applied Math (1988) 48: 1073頁
【非特許文献43】GUIDE TO HUGE COMPUTERS、Martin J. Bishop編、Academic Press、San Diego、1994
【非特許文献44】Devereux, J.ら、Nucleic Acids Research (1984) 12(1): 387頁
【非特許文献45】Atschul, S. F.ら、J. Molec. Biol. (1990) 215: 403頁
【非特許文献46】He & Seela、2002 Nucleic Acids Res. 30: 5485〜5496頁
【非特許文献47】Froehlerら、1993 Tetrahedron Letters 34: 1003〜6頁
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【非特許文献49】Ahmadianら、1998 Nucleic Acids Res. 26: 3127〜3135頁
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【非特許文献51】Murashige, T.およびSkoog, F.、Physiologia Plantarum、15: 473〜497頁、1962
【非特許文献52】Heller, R.、Ann Sci Nat Bot Biol Veg 14: 1〜223頁、1953
【非特許文献53】Morel, G.およびR.H. Wetmore、Amer. J. Bot. 38: 138〜40頁、1951
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【非特許文献55】Tanら、1987 Theor. Appl. Genet. 75: 105〜108頁
【非特許文献56】Tanら、1987 Plant Cell Rep. 6: 172〜175頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
したがって、植物プロトプラストにおけるMMR系の一時的な抑制におけるdsRNAの使用は、これまで記載も示唆も試みもされていない。TGAの効率を増大させるための、植物プロトプラストにおけるMMR系の一時的な抑制におけるdsRNAの使用はまた、当技術分野において、開示も示唆もされていない。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、植物細胞における変異原性核酸塩基でのTGAの効率が、植物プロトプラストにおけるMMR系の一時的な抑制によって顕著に向上することを明らかにした。したがって、本発明は、好ましくはインビトロで合成された、植物MMRのmRNAを標的化するdsRNAを、変異原性核酸塩基と組み合わせてトランスフェクトして、植物ゲノムにおける所望のヌクレオチド改変を生じさせることを伴う。dsRNAによる転写産物レベルの下方調節は一時的なものであるため、MMR系は、一定時間にわたり、好ましくは約48〜72時間にわたり、不活化されるのみである。変異原性核酸塩基は植物プロトプラストにおいて迅速に分解され、典型的には約72時間後に除去され、したがって、TGAプロセスは、好ましくは変異原性核酸塩基の導入後72時間以内に生じるため、この時間枠は通常は十分である。この期間の後、MMR転写産物はその正常レベルに戻り、したがって、複製に関連する突然変異の蓄積が妨げられる。この方法は、広範な植物種に適用可能であり、かつ、共に時間および費用のかかる、ヘアピンRNAi構築物を発現するトランスジェニック系統の生成および所望の下方調節についてのスクリーニングをする必要がないため、非常に柔軟性がある。実際、多くの植物種のMMR系の構成要素をコードするESTが知られており(Table 1(表8))、これらのEST配列が所望のdsRNAのインビトロでの生産のための鋳型として役立ち得ることが明らかにされている。
【発明を実施するための形態】
【0015】
したがって、本発明は、
- 植物MMRのmRNAを標的化するdsRNA、および
- 変異原性核酸塩基
を用いてプロトプラストをトランスフェクトするステップを含む、植物細胞プロトプラストにおける標的化遺伝子改変のための方法に関する。
【0016】
本明細書において以下に論じられるように、植物プロトプラストにおける特定の遺伝子転写産物の一時的な下方調節はこれまでに記載されているが、TGAに関するMMR転写産物に関しては記載されていない。最初の研究は、Akashiら(2001 Antisense & Nucl. Acid Drug Dev. 11: 359〜367頁)によって行われた。彼らは、逆反復としてクローニングされ、短い非特異的DNA配列によって分離された、標的遺伝子の同一の相補的領域からなる、いわゆるヘアピンRNAi構築物(プラスミド)を利用した。転写すると、標的遺伝子のこれらの相補的領域は、ループ構造を形成している非特異的DNAとアニーリングして、二本鎖RNA領域を形成する。この二本鎖RNA領域は、その後、DICERによって低分子干渉RNA(siRNA)にプロセシングされ、これは次に、RISC複合体に組み込まれて、標的mRNAの分解を生じさせる。著者は、GFPのmRNAを標的化するヘアピンRNAiを発現するプラスミドが、タバコBY-2細胞における一時的なGFPの発現を抑制し得ることを実証した。したがって、特定のmRNAを下方調節するために、ヘアピンRNAi構築物を植物ゲノム内に必ずしも最初に組み込む必要はない。しかし、ヘアピンRNAi構築物を含有するプラスミドの構築は困難であり、時間がかかるため、dsRNAを阻害する他の形態のmRNAを試験した。類似の実験において、Anら(2003 Biosci. Biotechnol. Biochem. 67: 2674〜2677頁)は、ルシフェラーゼのmRNAを標的化するインビトロでの転写によって、長い二本鎖RNA(dsRNA)を調製した。これは次に、ルシフェラーゼを発現スルプラスミドと共に、シロイヌナズナのプロトプラスト内に共形質転換され、一時的なルシフェラーゼ活性を抑制することが示された。この抑制は、用いられるdsRNAの長さ(50bp、100bp、250bp、または500bp)には関係なく、プロトプラストの形質転換の最大14日後に、ルシフェラーゼ発現の90%の阻害が観察された。したがって、インビトロで調製され細胞内にトランスフェクトされたdsRNAの領域は、特定のmRNAの一時的な下方調節をもたらすことが示されたが、ここでも、TGAとMMRに関連するmRNAとについては示されていない。実際の適用では、インビトロで調製されたdsRNAが、一時的なGFPおよびルシフェラーゼの発現と比較して比較的低いレベルで発現される内因性植物遺伝子を下方調節し得ることを実証することが必須である。このことは、2つの異なる植物種において実証されている。まず、Anら(2005 Biosci. Biotechnol. Biochem. 69: 415〜418頁)は、dsRNAが3日間にわたり、2つの内因性シロイヌナズナ遺伝子のmRNAを80%下方調節し得、その時点で、mRNAレベルが、おそらくdsRNA分子の分解のために、対照レベルに戻ることを示した。第2に、Dubouzetら(2005 Biosci. Biotechnol. Biochem. 69: 63〜70頁)は、Coptis japonicaのプロトプラストのベルベリン生合成経路に関与するmRNAを抑制するためにdsRNAを用いた場合に、類似の結果を示した。
【0017】
植物細胞において、dsRNAは、内因性遺伝子転写産物の一時的な抑制のために、動物の研究においてより日常的に用いられる他のタイプのRNA分子(siRNA)よりも適していると考えられ、したがって、他のタイプのRNAより好ましい。siRNAは、インビトロで合成され、その後、動物細胞にトランスフェクトされる、短い(〜21nt)一本鎖RNA分子であり、該動物細胞において、siRNAは、RISC複合体に直接組み込まれ、それらの標的mRNAの配列特異的な切断を指示する。siRNAは動物細胞において効果的に機能するが、内因性植物遺伝子に由来する転写産物を抑制するための、植物細胞におけるそれらの使用は、いまだ記載も示唆もされていない。siRNAの発現は、培養植物細胞における植物ウイルスの蓄積を阻害するため(Vanitharaniら、2003 Proc. Natl. Acad. Sci. USA 100: 9632〜9636頁)、または外部から加えられたGUSもしくはルシフェラーゼ遺伝子の一時的な発現を低減させるため(Bartら、2006 Plant Methods 2: 13頁)に十分であるが、siRNAが内因性植物遺伝子のmRNAを一時的に抑制し得ることは報告されていない。このことは、内因性植物mRNAが、長いdsRNAを用いる場合にのみ効率的に分解され得ることを示唆する。動物細胞において、dsRNAは、内因性哺乳動物遺伝子転写産物の抑制に適していない。哺乳動物細胞において、dsRNAは、ウイルス感染に対する防御系として重要でありウイルスのdsRNAによって引き起こされるインターフェロン経路を介して、全てのmRNA種の非特異的な抑制および分解を生じさせる。したがって、動物細胞へのdsRNAのトランスフェクションは、この経路およびアポトーシスの活性化をもたらす。dsRNAのトランスフェクションは、プロトプラストの生存に対する何らかの悪影響を有することが報告されていないため、この経路は、植物細胞においては存在しないと考えられる。したがって、植物プロトプラストのトランスフェクションにおけるdsRNAの使用が、ある特定の遺伝子に対して機能することが実証されていても、MMR系が、MMRに関連するmRNAを標的化するdsRNAの使用によって影響されることは、指摘も教示もされていない。さらに、上記で引用した全ての研究は、dsRNAによる植物mRNAの下方調節が、プロトプラストが植物細胞懸濁液(未分化細胞の、インビトロで成長した植物細胞培養物)に由来する場合に生じることを実証している。このような培養物は、使用が簡単であり、植物細胞のほぼ無限の源を提供する。しかし、このような細胞は、成熟植物から得られる細胞と比較することができない。例えば、葉の葉肉細胞に由来するプロトプラストとは異なり、タバコBY-2懸濁液の細胞は非常に早く分裂し、成熟植物へ再生することができない。したがって、この研究の開始時には、dsRNAが、成熟植物の最終的な再生を可能にするためにTGAプロセスに用いられなくてはならない葉肉細胞に由来するプロトプラストにおいて内因性植物遺伝子転写産物を下方調節し得ることについての指摘はなかった。
【0018】
dsRNAでのトランスフェクションは同時に行うことができ、すなわち、dsRNAおよび変異原性核酸塩基が1つのトランスフェクションステップで加えられ、これは、効率の理由で好ましい。しかし、特定の実施形態において、プロトプラストをまずdsRNAでトランスフェクトし、その後、ある時間内に変異原性核酸塩基でトランスフェクトすることが有利であり得、またその逆、すなわち、最初に変異原性核酸塩基を導入し、後にdsRNAを導入することも有利であり得る。特定の実施形態において、この期間は、好ましくは、48時間を超えない。特定の実施形態において、dsRNAおよび変異原性核酸塩基(またはその逆)でのトランスフェクションは、最大1、2、3、4、5、6、7、8、10、12、18、24、36、48時間の間隔をあけられる。MMR遺伝子を標的化するためには、dsRNAをまず導入することが有利であり得、MMR系が十分に下方調節される場合には、変異原性核酸塩基をまず導入することが有利であり得る。MMR系が変異原性核酸塩基によって達成されるまでにはある程度時間がかかり得、TGAの成功のための枠は延長され得るため、変異原性核酸塩基をまず導入して、その後、dsRNAを導入することも有利であり得る。
【0019】
dsRNAは、典型的には、30から5000bpの長さを有し得る。好ましい長さは、100から500bpの範囲である。
【0020】
標的化され得るMMR遺伝子は、原則的に、いかなるMMR関連遺伝子でもあり得る。しかし、MutSおよび/またはMutL MMR遺伝子などのMMR系の既知の標的遺伝子、より好ましくはMSH2、MSH3、MSH6、MSH7、MLH1、MLH2、MLH3、およびPMS1が好ましい。特定の実施形態において、データベースの分析、分類による遺伝子の同定、またはMMRに関連する同一性によって、関連する遺伝子を決定することができ、活性についてdsRNAを試験することができる。特定の実施形態において、dsRNAは、Table 1(表8)に列挙されているような、MMR関連遺伝子に近い同一性パーセントを有する遺伝子および遺伝子断片に基づいて設計され得る。「同一性」は、ヌクレオチド配列またはアミノ酸配列の同一性の尺度である。通常、配列は、最高次の適合が得られるようにアラインされる。「同一性」自体は、当分野で認められている意味を有し、公開されている技術を用いて計算され得る。例えば、(COMPUTATIONAL MOLECULAR BIOLOGY、Lesk, A. M.編、Oxford University Press、New York、1988; BIOCOMPUTING: INFORMATICS AND GENOME PROJECTS、Smith, D. W.編、Academic Press、New York、1993; COMPUTER ANALYSIS OF SEQUENCE DATA, PART I、Griffin, A. M.およびGriffin, H. G.編、Humana Press、New Jersey、1994; SEQUENCE ANALYSIS IN MOLECULAR BIOLOGY、von Heinje, G.、Academic Press、1987;ならびにSEQUENCE ANALYSIS PRIMER; Gribskov, M.およびDevereux, J.編、M Stockton Press、New York、1991)を参照されたい。2つのポリヌクレオチド配列またはポリペプチド配列の間の同一性を測定する多くの方法が存在するが、「同一性」という用語は、当業者に周知である(Carillo, H.、およびLipton, D.、SIAM J. Applied Math (1988) 48: 1073頁)。2つの配列間の同一性または類似性を決定するために一般に採用される方法には、限定はしないが、GUIDE TO HUGE COMPUTERS、Martin J. Bishop編、Academic Press、San Diego、1994、ならびにCarillo, H.およびLipton, D.、SIAM J. Applied Math (1988) 48: 1073頁において開示されているものが含まれる。同一性および類似性を決定する方法は、コンピュータプログラムにおいて体系化される。2つの配列間の同一性および類似性を決定するための好ましいコンピュータプログラム法には、限定はしないが、GCSプログラムパッケージ(Devereux, J.ら、Nucleic Acids Research (1984) 12(1): 387頁)、BLASTP、BLASTN、FASTA(Atschul, S. F.ら、J. Molec. Biol. (1990) 215: 403頁)が含まれる。
【0021】
例示として、ある配列のポリペプチドをコードする参照ヌクレオチド配列に少なくとも例えば95%の「同一性」を有するヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチドとは、ポリヌクレオチド配列が参照ポリペプチド配列のそれぞれ100個のヌクレオチド当たり最大5個の点突然変異を含み得ることを除いて、ポリヌクレオチドのヌクレオチド配列が、参照配列に同一であることを意図する。言い換えると、参照ヌクレオチド配列に少なくとも95%同一なヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチドを得るためには、参照配列内のヌクレオチドの最大5%が欠失し、かつ/または別のヌクレオチドで置換されることが可能であり、かつ/または参照配列内の全ヌクレオチドの最大5%の多くのヌクレオチドが参照配列内に挿入されることが可能である。参照配列のこれらの突然変異は、参照ヌクレオチド配列の5’末端位置もしくは3’末端位置で生じ得るか、あるいは、参照配列内のヌクレオチドの間に個別に散在するか、または参照配列内の1つもしくは複数の連続したグループ内に散在して、前記末端位置間のあらゆるところで生じ得る。本発明の方法は、変異原性核酸塩基を用いてTGAを行うことを可能にするために十分な、好ましくは植物細胞プロトプラストにおける、少なくとも1つまたは複数のMMR遺伝子の下方調節をもたらす。好ましくは、下方調節は特異的であり、すなわち、他のmRNAは、植物細胞プロトプラストを操作する他の生物系が十分に影響される程度までには、すなわち、その正常な機能性と比較して、すなわちdsRNAの不存在下と比較して最大5%、10%、15%、または25%破壊されるまでには、下方調節されない。
【0022】
植物は、いかなる植物でもあり得、単子葉植物または双子葉植物のなかから好ましくは選択され得る。好ましい植物は、ウリ科(Cucurbitaceae)、イネ科(Gramineae)、ナス科(Solanaceae)、またはキク科(Asteraceae)(Compositae)、トウモロコシ(Zea種)、コムギ(Triticum種)、オオムギ(例えば、Hordeum vulgare)、オーツムギ(例えば、Avena sativa)、モロコシ(Sorghum bicolor)、ライムギ(Secale cereale)、ダイズ(Glycine spp.、例えば、G. max)、ワタ(Gossypium種、例えば、G. hirsutum、G. barbadense)、アブラナ属(Brassica spp.)(例えば、B. napus、B. juncea、B. oleracea、B. rapaなど)、ヒマワリ(Helianthus annus)、ベニバナ、ヤムイモ、キャッサバ、アルファルファ(Medicago sativa)、コメ(Oryza種、例えば、オリザ・サティバ(O. sativa)のインディカ品種群またはジャポニカ品種群)、飼料草、トウジンビエ(Pennisetum spp.、例えば、P. glaucum)、樹種(マツ属(Pinus)、ポプラ、モミ、オオバコなど)、茶、コフィア属(coffea)、アブラヤシ、ココナッツ、野菜の種、例えば、エンドウマメ、ズッキーニ、マメ(例えば、Phaseolus種)、トウガラシ、キュウリ、チョウセンアザミ、アスパラガス、ナス、ブロッコリー、ニンニク、ネギ、レタス、玉ねぎ、ラディッシュ、カブ、トマト、ジャガイモ、芽キャベツ、ニンジン、カリフラワー、チコリー、セロリ、ホウレンソウ、エンダイブ、フェンネル、ビーツ、多肉果を結実する植物(ブドウ、モモ、プラム、イチゴ、マンゴー、リンゴ、プラム、サクランボ、あんず、バナナ、ブラックベリー、ブルーベリー、シトラス、キウイ、イチジク、レモン、ライム、ネクタリン、ラズベリー、スイカ、オレンジ、グレープフルーツなど)、観葉植物の種(例えば、バラ(Rose)、ペチュニア(Petunia)、キク属(Chrysanthemum)、ユリ、ガーベラ(Gerbera)の種)、ハーブ(ミント、パセリ、バジル、タイムなど)、樹木(例えば、ヤマナラシ属(Populus)、ヤナギ属(Salix)、コナラ属(Quercus)、ユーカリ属(Eucalyptus)の種)、繊維種、例えば、亜麻(Linum usitatissimum)および麻(Cannabis sativa)、および他のものである。
【0023】
最も好ましいものは、タバコ、トマトなどのナス科である。レタスおよび/またはアブラナもまた好ましい。
【0024】
変異原性核酸塩基は、出願人の出願WO2007073149、WO2007073154、およびWO2007073170において開示されているもののような、当技術分野において記載されている、いかなる変異原性核酸塩基でもあり得る。
【0025】
したがって、変異原性核酸塩基は、
a. 好ましくは変異原性核酸塩基の一方もしくは両方の末端の付近または該末端にある、ホスホロチオエート修飾、
b. 好ましくは変異原性核酸塩基の一方もしくは両方の末端の付近または該末端にない、プロピン置換、
c. 好ましくは変異原性核酸塩基の一方もしくは両方の末端の付近または該末端にない、LNA置換
の1つまたは複数を含み得る。
【0026】
ホスホロチオエート修飾は、プロトプラスト系において存在するヌクレアーゼから核酸塩基を保護するために役立ち得る。
【0027】
好ましくは変異原性核酸塩基の一方もしくは両方の末端の付近または該末端にない、プロピン置換は、TGAによって改変される標的配列との結合親和性を増強させ得る。好ましくは変異原性核酸塩基の一方もしくは両方の末端の付近または該末端にない、LNA置換もまた、TGAによって改変される配列との結合親和性を増強させ得る。LNAまたはプロピン修飾オリゴヌクレオチドの使用により、TGAの効率が増大し得る。
【0028】
用いられ得る修飾変異原性核酸塩基は、本明細書において、以下に、より詳細に記載される。
【0029】
LNA修飾された変異原性核酸塩基:
特定の実施形態において、変異原性核酸塩基は、少なくとも1つの、好ましくは少なくとも2つの、より好ましくは少なくとも3つのLNA修飾ヌクレオチドを含む。特定の実施形態において、変異原性核酸塩基は、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、または10個のLNA修飾ヌクレオチドを含有し得る。特定の実施形態において、変異原性核酸塩基は、最大1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、または10個のLNA修飾ヌクレオチドを含有し得る。特定の実施形態において、変異原性核酸塩基は、上記の上限および下限からなり得るLNAの範囲を含み得る。
【0030】
特定の実施形態において、少なくとも1つのLNAは、ミスマッチから最大10ヌクレオチド、好ましくは最大8ヌクレオチド、より好ましくは最大6ヌクレオチド、さらに好ましくは最大4、3、または2ヌクレオチドの距離で位置する。より好ましい実施形態において、少なくとも1個のLNAは、ミスマッチから1ヌクレオチドの距離で位置し、すなわち、1つのヌクレオチドがミスマッチとLNAとの間に位置する。2個以上のLNAを含有する変異原性核酸塩基に関連する特定の実施形態において、各LNAは、ミスマッチから少なくとも1ヌクレオチドの距離で位置する。好ましい実施形態において、LNAは、互いに隣接しては位置しないが、少なくとも1ヌクレオチド、好ましくは2または3ヌクレオチド離れて位置する。特定の実施形態において、変異原性核酸塩基の2つ以上(偶数)のLNA修飾のケースでは、修飾は、ミスマッチから(ほぼ)等しい距離離れている。言い換えると、好ましくは、LNA修飾は、ミスマッチの周りに対称的に位置する。例えば、好ましい実施形態において、2つのLNAが、ミスマッチから1ヌクレオチドの距離で、ミスマッチの周りに対称的に位置する(かつ互いに3ヌクレオチドの距離にある)。特定の実施形態において、LNAは、いずれかの末端にそれぞれ、変異原性核酸塩基の末端から4〜6ヌクレオチドにある位置から始まって位置する。
【0031】
特定の実施形態において、変異原性核酸塩基の修飾ヌクレオチドの最大50%はLNA誘導体であり、すなわち、従来のA、T、C、またはGは、そのLNA対応物によって、好ましくは最大40%、より好ましくは最大30%、さらに好ましくは最大20%、最も好ましくは最大10%、置き換えられる。ロック核酸(LNA)は、アンチセンス遺伝子療法における使用にとって非常に興味深い特性を有するDNA類似体である。LNAは、二環式および三環式のヌクレオシド類似体およびヌクレオチド類似体およびこのような類似体を含有する変異原性核酸塩基である。LNAおよび関連する類似体の基本的な構造上および機能上の特徴は、WO99/14226、WO00/56748、WO00/66604、WO98/39352、米国特許第6, 043, 060号、および米国特許第6,268,490号を含む様々な刊行物および特許において開示されており、これらの全ては、参照することにより、その全体が本明細書に組み込まれるものである。
【0032】
具体的には、それは、正確な標的と不正確な標的との間を区別する能力(高い特異性)と、非常に高い生物学的安定性(低い代謝回転)および前例のない親和性(標的への非常に高い結合強度)とを組み合わせる。実際、LNAで記録される親和性が増大しても、全てのこれまでに報告された類似体の親和性は、低度から中度の範囲のままである。
【0033】
LNAは、リボースが2’-酸素原子と4’-炭素原子との間のメチレン架橋によって構造的に制約される、RNA類似体である。この架橋は、リボフラノース環の柔軟性を制限し、構造を硬い二環式の構成に固定する。このいわゆるN型(または3’-エンド)立体構造によって、LNAを含有する二本鎖のTmが上昇し、その結果、結合親和性および結合特異性が高くなる。NMRスペクトル研究は、実際に、LNA糖の固定されたN型立体構造を実証したが、LNA単量体がそれらの修飾されていない隣接するヌクレオチドをねじってN型の立体構造にし得ることも明らかにされた。重要なこととして、LNAの有利な特徴は、核酸類似体でしばしば観察されるように、他の重要な特性を犠牲にして成り立つものではない。
【0034】
LNAは、DNA類似体全体を構成する全ての他の化学構造と自由に混合され得る。LNAの塩基は、短い全LNA配列または長めのLNA/DNAキメラとして、変異原性核酸塩基内に組み込まれ得る。LNAは、内部の3’位置または5’位置に位置し得る。しかし、それらの硬い二環式立体構造のために、LNAの残基は、時々、核酸鎖のらせんのねじれを邪魔することがある。したがって、通常は、2つ以上の隣接するLNA残基を用いて変異原性核酸塩基を設計することはあまり好ましくない。好ましくは、LNAの残基は、従来のヌクレオチド(A、C、T、またはG)などの、らせんのねじれを邪魔しない、少なくとも1個の(修飾された)ヌクレオチドによって隔てられている。
【0035】
当初開発された、好ましいLNA単量体(β-D-オキシ-LNA単量体)は、修飾されて、新たなLNA単量体となっている。新たなα-L-オキシ-LNAは、3’エンドヌクレアーゼ活性に対して優れた安定性を示し、また、効力の優れたアンチセンスオリゴヌクレオチドの設計において、β-D-オキシ-LNAよりも強力で多用途である。また、WO9914226, WO00/56748, WO00/66604において開示されているように、キシロLNAおよびL-リボLNAも用いることができる。本発明において、上記のタイプのあらゆるLNAが、β-D-LNA類似体に対する優先傾向を伴って、本発明の目的の達成において、すなわち、TGAの効率の向上の達成において効果的である。
【0036】
TGAの技術分野において、LNAの修飾は、TGAにおいて用いられるキメラ分子の代替として、考えられる変異原性核酸塩基修飾のリストの間で列挙されている。しかし、当技術分野において、今までのところ、LNA修飾された一本鎖変異原性核酸塩基が、LNAがミスマッチから少なくとも1ヌクレオチド離れて位置する場合、および/または変異原性核酸塩基が約75%(ヌクレオチドの最も近い整数に切り捨てられる)を超えるLNAを含有しない場合にこれまでに見られている程度まで、顕著にTGAの効率を増強させることを示唆する指摘はない。
【0037】
プロピニル修飾された変異原性核酸塩基:
C5位にプロピニル群を有する、ピリミジンヌクレオチドを含有する変異原性核酸塩基は、それらの対応するピリミジン誘導体よりも安定した二本鎖および三本鎖を形成する。7位に同一のプロピン置換を有するプリンは、さらに安定した二本鎖を形成し、したがって好ましい。特定の好ましい実施形態において、C5-プロピンピリミジンヌクレオチドよりもさらに優れた程度まで結合親和性を増強させる7-プロピニルプリンヌクレオチド(8-アザ-7-デアザ-2’-デオキシグアノシンおよび8-アザ-7-デアザ-2’-デオキシアデニンの7-プロピニル誘導体)の使用を介すると、効率はさらに増大した。このようなヌクレオチドは、とりわけHe & Seela、2002 Nucleic Acids Res. 30: 5485〜5496頁において開示されている。
【0038】
プロピニル基は、三重結合を有する、3つの炭素からなる鎖である。三重結合は、ピリミジンヌクレオチドのC5位およびプリンヌクレオチドの7位に位置するヌクレオチド塩基構造に共有結合している。シトシンおよびチミジンの両方は、C5-プロピニル基を有し得、その結果、それぞれC5-プロピニルシトシンおよびC5-プロピニルチミジンとなり得る。単独のC5-プロピニルシトシン残基は、Tmを2.8℃上昇させ、単独のC5-プロピニルチミジンは1.7℃上昇させる。
【0039】
(Froehlerら、1993 Tetrahedron Letters 34: 1003〜6頁; Lacroixら、1999 Biochemistry 38: 1893〜1901頁; Ahmadianら、1998 Nucleic Acids Res. 26: 3127〜3135頁; Colocciら、1994 J. Am. Chem. Soc 116: 785〜786頁)。これは、C5位の1-プロピン群の疎水性の性質が原因であり、これはまた、プロピン群が複素環塩基に対して平面的であるため、塩基のより良好な積み重ねを可能にする。特定の実施形態において、修飾核酸塩基は、プロピン修飾核酸塩基であり、最も好ましくは、C7-プロピンプリンまたはC5-プロピンピリミジンである。特定の実施形態において、プリンはアデノシンもしくはグアノシンであり、かつ/または、ピリミジンはシトシン、ウラシル、もしくはチミジンであり、より好ましくは、修飾ヌクレオチドはピリミジンであり、かつ/または、修飾ヌクレオチドはプリンである。
【0040】
特定の実施形態において、ピリミジンおよび/またはプリンの少なくとも10%は、それらのそれぞれのプロピニル化誘導体によって置き換えられており、好ましくは少なくとも50%、より好ましくは少なくとも75%、最も好ましくは少なくとも90%が置き換えられている。
【0041】
好ましくは、ミスマッチの位置のヌクレオチドは修飾されていない。1つの実施形態において、少なくとも1個の修飾ヌクレオチドは、ミスマッチに隣接して位置しておらず、好ましくは、ミスマッチの2、3、4、6、7、8、9、または10ヌクレオチド以内に位置する。
【0042】
本発明に従った変異原性核酸塩基は、ハイブリダイゼーション特徴を向上させるためにさらなる修飾を含有し得、その結果、変異原性核酸塩基は、標的DNA鎖に対する増大した親和性を示し、その結果、変異原性核酸塩基のインターカレーションがさらに容易である。変異原性核酸塩基はまた、ヌクレアーゼに対してさらに耐性となるためにさらに修飾され得、三重鎖構造または四重鎖構造を安定化させる。C5プロピン置換されたピリミジン変異原性核酸塩基の修飾は、ホスホロチオエート修飾、2-OMe置換、様々なLNA(ロック核酸)、PNA(ペプチド核酸)、リボヌクレオチド、および、変異原性核酸塩基とアクセプター鎖との間のハイブリッドの安定性を修飾する、好ましくは増強させる他の塩基の使用を含み得る。
【0043】
本発明に従った方法には、細胞の改変、野生型への回復による突然変異の修正、突然変異の誘発、コード領域の破壊による酵素の不活化、コード領域の改変による酵素の生物活性の修飾、コード領域の破壊によるタンパク質の修飾、ミスマッチの修復、遺伝子突然変異、標的化遺伝子修復、および遺伝子ノックアウトを含む、(植物の)遺伝物質の標的化改変における適用が見出されている。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】dsRNAの生産のための鋳型として用いられるタバコおよびトマトのPMS1領域の領域が、翻訳され、他のPMS1オーソログとアラインされたことを示す図である。
【図2】PMS1転写産物を標的化するdsRNAの導入後の、タバコ葉肉プロトプラストにおけるPMS1の相対的な転写レベルを示す図である。葉肉プロトプラストは、dsRNA(RNA)または水(MQ)で処理され、全RNAは、トランスフェクション後 (RNA-0、MQ-0)、24時間後(RNA-1、MQ-1)、48時間後(RNA-2、MQ-2)、72時間後(RNA-3、MQ-3)に直接、プロトプラストから単離された。
【図3A】トマトのMLH1およびMSH2のcDNAの配列を示す図である。dsRNA産物について生産されたPCR産物が示される。
【図3B】図3Aの続きである。
【図4】実施例3のqPCR分析の結果を示すグラフである。
【0045】
(実施例)
(実施例1)
タバコ葉肉プロトプラストにおけるPMS1のmRNAの一時的な抑制
dsRNAがタバコ葉肉プロトプラストにおけるPMS1のmRNAを下方調節し得ることを実証するために実験を行った。
【0046】
材料および方法
dsRNAの生成
公共のデータベースを、シロイヌナズナPMS1のタバコオーソログについてスクリーニングした。次に、RACE PCRを用いて、完全長のクローンを単離および配列決定した。プライマーを設計して、RNA合成の鋳型として役立つタバコPMS1のPCR産物を増幅した。この結果、186bpのPCR産物が得られた。PCR産物の翻訳および他のPMS1オーソログとのそのアラインメントを図1に示す。
【0047】
鋳型当たり2個のPCR産物を増幅し、これらは、配列は同一であったが、逆の鎖にT7 RNAポリメラーゼプロモーター配列を有していた。1μgの各PCR産物を、T7 RiboMAX Express RNAi Systm (Promega)を用いるインビトロでのRNA転写に用い、その結果、PCR産物の上方の鎖または下方の鎖のいずれかに対応する一本鎖RNAが生産された。製造者の指示の通りに、相補的RNA鎖を精製し、アニーリングして、dsRNAを生成した。
【0048】
タバコプロトプラストの単離および形質転換
タバコ(Nicotiana tabacum cv Petit Havana)系統SR1のインビトロでの茎頂培養を、25℃および60〜70%RHで、2000ルクスで16/8hの光周期で、背の高いガラス瓶内の0.8%Difco寒天を有するMS20培地で維持する。MS20培地は、2%(w/v)ショ糖を含有し、ホルモンおよび0.8%Difco寒天を添加していない、基礎的なMurashigeおよびSkoogの培地(Murashige, T.およびSkoog, F.、Physiologia Plantarum、15: 473〜497頁、1962)である。3〜6週齢の茎頂培養物の完全に拡がった葉を採取する。葉を1mmの厚さの切片にスライスし、これを次に、45mlのMDE基本培地を含有する大きな(100mm×100mm)ペトリ皿に移し、30分間の原形質分離前処理を行う。MDE基本培地は、全容積900mlに、0.25gのKCl、1.0gのMgSO4・7H2O、0.136gのKH2PO4、2.5gのポリビニルピロリドン(MW 10,000)、6mgのナフタレン酢酸、および2mgの6-ベンジルアミノプリンを含有していた。溶液の浸透圧は、ソルビトールで600mOsm・kg-1に調整し、pHを5.7に調整する。次に、5mLの酵素ストックSR1を添加する。酵素ストックは、100ml当たり、750mgのCellulase Onozuka R10、500mgのドリセラーゼ、および250mgのマセロザイムR10からなり、ワットマン紙で濾過され、濾過滅菌される。25℃の暗所で、一晩、消化を進行させる。消化された葉を、50μmのナイロン製の篩を介して無菌ビーカー内に濾過する。等容積の冷たいKCl洗浄培地を用いて、篩を洗浄し、プロトプラスト懸濁液と共にプールする。KCl洗浄培地は、1リットル当たり2.0gのCaCl2・2H2O、および540mOsm・kg-1の浸透圧をもたらすために十分な量のマンニトールからなる。懸濁液を10mLの試験管に移し、プロトプラストを4℃で、85×gで10分間にわたりペレット化する。上清を廃棄し、プロトプラストペレットを、通常濃度の半分の、MS培地(Murashige, T.およびSkoog, F.、Physiologia Plantarum、15: 473〜497頁、1962)の主要栄養素である、5mLの冷たいMLm洗浄培地、1リットル当たり2.2gのCaCl2・2H2O、および浸透圧を540mOsm・kg-1にするための量のマンニトールに慎重に再懸濁する。2個の試験管の内容物を組み合わせて、4℃で、85×gで10分間にわたり遠心分離する。上清を廃棄し、プロトプラストペレットを慎重に、マンニトールの代わりにショ糖を有するMLm培地である、5mLの冷たいMLs洗浄培地内に再懸濁する。
【0049】
2個の試験管の内容物をプールし、ショ糖溶液上に添加された1mLのKCl洗浄培地を、下方の相を邪魔しないように慎重に採取する。プロトプラストを、4℃で、85×gで10分間にわたり遠心分離する。生きたプロトプラストを含有する、ショ糖溶液とKCl溶液との間の相間を、慎重に回収する。等容積のKCl洗浄培地を添加し、慎重に混合する。プロトプラスト密度を、血球計で測定する。
【0050】
dsRNAの導入およびプロトプラストの再生
プロトプラスト懸濁液を、5℃で、85×gで10分間にわたり遠心分離する。上清を廃棄し、プロトプラストペレットを、KCl洗浄培地内に、106個mL-1の最終濃度まで再懸濁する。10mLの試験管内で、250μLのプロトプラスト懸濁液+/-12.5μgのdsRNAおよび250μlのPEG溶液(40%PEG4000(Fluka #81240)、0.1MのCa(NO3)2、0.4Mのマンニトール)を静かに、しかし完全に混合する。室温で20分間インキュベートした後、5mLの冷たい0.275MのCa(NO3)2を液滴で添加する。プロトプラスト懸濁液を、4℃で、85×gで10分間にわたり遠心分離し、上清を廃棄する。次に、プロトプラストペレットを2.5mL内に慎重に再懸濁した。培養培地に、50μg・mL-1のセフォタキシムおよび50μg・mL-1のバンコマイシンを補った。T0培養培地は、(1リットル当たり、pH5.7)950mgのKNO3、825mgのNH4NO3、220mgのCaCl2・2H2O、185mgのMgSO4・7H2O、85mgのKH2PO4、27.85mgのFeSO4・7H2O、37.25mgのNa2EDTA・2H2O、Hellerの培地(Heller, R.、Ann Sci Nat Bot Biol Veg 14: 1〜223頁、1953)に従った微量栄養素、MorelおよびWetmoreの培地(Morel, G.およびR.H. Wetmore、Amer. J. Bot. 38: 138〜40頁、1951)に従ったビタミン、2%(w/v)ショ糖、3mgのナフタレン酢酸、1mgの6-ベンジルアミノプリン、ならびに浸透圧を540mOsm・kg-1にするための量のマンニトールを含有し、35mmのペトリ皿に移された。
【0051】
PMS1のmRNAレベルの定量
RNAeasy Kit (Qiagen)を用いて、全RNAをプロトプラストから単離した。Quantitect RTキット(Qiagen)を用いて、cDNA合成を行った。内因性PMS1のレベルを、Light Cycler装置(Roche)、ならびに、タバコPMS1のmRNAに由来する126bpの生産物を増幅する、プライマー5’- AGCAGTTCCCTTCAGCAAAAAT[配列番号1]および5’-GAATCGGCGGTATCATCCTTAT[配列番号2]を用いて測定した。各時点で、5回の独立したプロトプラストトランスフェクションを行った。タバコPMS1の正規化のために、アクチンmRNAのレベルを各試料において測定した。
【0052】
結果
qPCR分析の結果を図1に示す。
【0053】
タバコ葉肉プロトプラストにおいて、PMS1のmRNAレベルは、dsRNAを加えることによって有意に低減し得る。結果は、dsRNAのトランスフェクションの24時間後に、PMS1のmRNAレベルが対照レベルの25%に落ちることを実証している。おそらくdsRNAの分解によって、PMS1のmRNAレベルの部分的な回復が48〜72時間後に観察されたため、PMS1のmRNAの下方調節は明らかに一時的である。このdsRNAは、PMS1の発現を正規化するために各試料において評価されるアクチンmRNAのレベルなどの、他のmRNA種の発現に対して、非特異的な影響を有さない。したがって、インビトロで合成されるdsRNAは、タバコ葉肉プロトプラストにおいて、MMRのmRNAを一時的に、かつ特異的に下方調節し得る。
【0054】
(実施例2)
PMS1に標的化されたdsRNAを用いる、タバコにおけるTGA実験
変異原性核酸塩基PB124(5’A*T*C*A*TCCTACGTTGCACTTG*A*C*C*G[配列番号3])を用いて、実験を行った。これは、アセト乳酸合成酵素(ALS)のオーソログをコードする、タバコから得られるSurB遺伝子の非転写鎖に対応する。このオリゴヌクレオチドは、SurBのプロリン191からグルタミン酸への変換をもたらして、スルホニル尿素タイプの除草剤に対する優性の耐性表現型を付与する、SurBとの単一のミスマッチ(下線)を含有する。アスタリスクは、リン酸連結における架橋していない酸素原子が硫黄原子によって置換されている、ホスホロチオエート連結を表す。このような修飾された連結は、エキソヌクレアーゼの攻撃に対して、より耐性であり、したがって、細胞における変異原性核酸塩基の寿命を延ばすことが知られている。
【0055】
タバコプロトプラストを、実施例1において記載したように調製した。12.5μgのdsRNAおよび10μgのPB124を、プロトプラストのアリコートにトランスフェクトし、それを最後に、1.25mlのT0培養培地内に再懸濁した。懸濁液を35mmのペトリ皿に移した。等容積のT0アガロース培地を添加し、静かに混合した。試料を25℃の暗所でインキュベートし、以下に記載するようにさらに培養した。
【0056】
プロトプラストの培養および再生
10日間培養した後、アガロースのスラブを6個の等しい部分に切断し、20nMのクロルスルフロンを補った22.5mLのMAP1AO培地を含有するペトリ皿に移す。この培地は、(1リットル当たり、pH5.7)950mgのKNO3、825mgのNH4NO3、220mgのCaCl2・2H2O、185mgのMgSO4・7H2O、85mgのKH2PO4、27.85mgのFeSO4・7H2O、37.25mgのNa2EDTA・2H2O、元の濃度の10分の1の、MurashigeおよびSkoogの培地(Murashige, T.およびSkoog, F.、Physiologia Plantarum、15: 473〜497頁、1962)に従った微量栄養素、MorelおよびWetmoreの培地(Morel, G.およびR.H. Wetmore、Amer. J. Bot. 38: 138〜40頁、1951)に従ったビタミン、6mgのピルビン酸塩、それぞれ12mgのリンゴ酸、フマル酸、およびクエン酸、3%(w/v)ショ糖、6%(w/v)マンニトール、0.03mgのナフタレン酢酸、ならびに0.1mgの6-ベンジルアミノプリンからなるものであった。試料を、弱い光のもとで、25℃で6〜8週間にわたりインキュベートする。次に、成長中のカルスをMAP1培地に移し、さらに2〜3週間にわたり発育させる。MAP1培地は、MAP1AO培地と同一の組成を有するが、6%の代わりに3%(w/v)のマンニトールを有し、46.2mg・l-1のヒスチジン(pH5.7)を有する。これを、0.8%(w/v)のDifco寒天で凝固させた。
【0057】
次に、無菌鉗子を用いて、カルスをRP培地に移す。RP培地は、(1リットル当たり、pH5.7)273mgのKNO3、416mgのCa(NO3)2・4H2O、392mgのMg(NO3)2・6H2O、57mgのMgSO4・7H2O、233mgの(NH4)2SO4、271mgのKH2PO4、27.85mgのFeSO4・7H2O、37.25mgのNa2EDTA・2H2O、公表されている濃度の5分の1の、MurashigeおよびSkoogの培地に従った微量栄養素、MorelおよびWetmoreの培地(Morel, G.およびR.H. Wetmore、Amer. J. Bot. 38: 138〜40頁、1951)に従ったビタミン、0.05%(w/v)ショ糖、1.8%(w/v)マンニトール、0.25mgのゼラチン、ならびに41ngMのクロルスルフロンからなるものであり、0.8%(w/v)Difco寒天で凝固される。成熟した芽を、2〜3週間後に、発根培地に移す。
【0058】
結果
TGA実験の結果をTable 3(表1)に示す。
【0059】
【表1】

【0060】
タバコPMS1の下方調節は、TGAの効率を少なくとも30倍増大させる。芽は、変異原性核酸塩基およびdsRNAで処理した20個のカルスから再生し、遺伝子型決定された。DNAをこれらの植物から単離し、P191を含むSurBのPCR産物を増幅し、配列決定した。全ての植物は予想されたP191Qの突然変異を示し、したがって、本発明者らは、TGAがこれらの系統において実際に生じたと結論付けた。
【0061】
PMS1に標的化されたdsRNAを用いた、トマトにおけるTGA実験
これらの実験を、Table 4(表2)において列挙する変異原性核酸塩基を用いて行った。トマトにおいて、ALSは多コピー遺伝子であり、2つの完全長ESTがPlant Transcript Database(http://planta.tigr.org)に存在する。本発明者らの研究において、本発明者らは、転写産物TA37274_4081をALS1と定義し、転写産物TA37275_4081をALS2と定義した。ALS1は、659AAのタンパク質をコードするが、ALS2は657AAのタンパク質をコードする。ALS1およびALS2は、DNAレベルおよびタンパク質レベルでそれぞれ93%および96%の同一性を示す。2つのタンパク質は、葉緑体の標的化に関与するタンパク質のシグナルペプチド領域において主に異なる。これらの差にもかかわらず、ALS1タンパク質およびALS2タンパク質の両方は、共に、葉緑体に標的化されることが予測される。以前の研究によって、ALSの保存された残基でのいくつかのアミノ酸の変化が、スルホニル尿素クラスの除草剤に対する不完全優性の耐性を付与するために十分であることが示されている。これらの1つは、P184Qの変化である。本発明者らは、これまでに、C5-プロピンおよびLNA(ロック核酸)の修飾が変異原性核酸塩基に含まれる場合に、トマトプロトプラストにおけるTGAの効率が8倍増強することを明らかにしている。したがって、この研究において、本発明者らは、正常なDNA変異原性核酸塩基、またはP184Qの改変を生じさせるように設計されたC5-プロピンおよびLNAが修飾された変異原性核酸塩基を、ALS2内に導入し、同時に、dsRNA(205bp)標的化トマトPMS1をトマトの葉のプロトプラストに導入した。
【0062】
【表2】

【0063】
トマトプロトプラスト実験
トマトプロトプラストの単離および精製
トマトの葉のプロトプラストの単離および再生は、これまでに記載されており(Shahin、1985 Theor. Appl. Genet. 69: 235〜240頁; Tanら、1987 Theor. Appl. Genet. 75: 105〜108頁; Tanら、1987 Plant Cell Rep. 6: 172〜175頁)、必要な溶液は、これらの文献において見ることができる。簡潔に述べると、ソラヌム・リコペルシクム(Solanum lycopersicum)の種子を、0.1%次亜塩素酸で滅菌し、25℃および50〜70%の相対湿度で、2000ルクスで16/8時間の光周期で、無菌MS20培地においてインビトロで成長させた。1gの新たに採取した葉を、5mlのCPW9Mが入った皿に置き、メスの刃を用いて、主要な葉柄に垂直に、1mmごとに切断した。これらを25mlの酵素溶液(2%セルロースonozuka RS、0.4%マセロザイムonozuka R10、2,4,-D(2mg/ml)、NAA(2mg/ml)、BAP(2mg/ml)を含有するCPW9M、pH5.8)が入った新たなプレートに移し、25℃の暗所で一晩、消化を進行させた。次に、プロトプラストを、1時間にわたりオービタルシェーカー(40〜50rpm)上に置くことによって遊離させた。プロトプラストを、50μmの篩を通すことによって細胞残屑から分離し、篩をCPW9Mで2回洗浄した。プロトプラストを85gで遠心分離し、上清を廃棄し、次に、半分の容積のCPW9M内に溶解した。プロトプラストを、最後に、3mlのCPW9M内に溶解し、次に、3mlのCPW18Sを、2つの溶液が混合しないように慎重に添加した。プロトプラストを、85gで10分間にわたり回転させ、相間層に浮遊している生存プロトプラストを、長いパスツールピペットを用いて回収した。プロトプラストの容積は、CPW9Mを添加することによって10mlまで増大し、回収されたプロトプラストの数を、血球系で決定した。プロトプラスト懸濁液を、5℃で、85×gで10分間にわたり遠心分離する。上清を廃棄し、プロトプラストペレットを、CPW9M洗浄培地内に、106個mL-1の最終濃度まで再懸濁する。10mLの試験管内で、250μLのプロトプラスト懸濁液+/-12.5μgのdsRNAおよび250μlのPEG溶液(40%PEG4000(Fluka #81240)、0.1MのCa(NO3)2、0.4Mのマンニトール)を静かに、しかし完全に混合する。室温で20分間インキュベートした後、5mLの冷たい0.275MのCa(NO3)2を液滴で添加する。プロトプラスト懸濁液を、4℃で、85×gで10分間にわたり遠心分離し、上清を廃棄する。
【0064】
トマトプロトプラストを、除草剤耐性のカルスの再生および選択のために、アルギン酸溶液内に組み入れた。2mlのアルギン酸溶液を添加し(マンニトール90g/l、CaCl2・2H2O 140mg/l、アルギン酸ナトリウム20g/l(Sigma A0602))、反転することにより完全に混合した。これの1mlを、Ca寒天プレート(72.5g/lのマンニトール、7.35g/lのCaCl2・2H2O、8g/lの寒天)上に平らな層状とし、ポリマー化させた。次に、アルギン酸塩のディスクを、4mlのK8p培養培地を含有する4cmのペトリ皿に移し、除草剤の選択を行わずに、30℃の暗所で7日間にわたりインキュベートした。次に、ディスクを5mmの幅の切片に切断し、20nMのクロルスルフロンを含有するTM-DBカルス誘導培地上に層状にした。除草剤耐性のカルスは、30℃で4〜5週間のインキュベーションの後に現れ、次に、さらなる成長のために、個体を、20nMのクロルスルフロンを含有するGM-ZG発芽培地に移した。
【0065】
結果
PMS1のmRNAレベルを下方調節するための、dsRNAを用いたTGA実験の結果を、Table 5(表3)に示す。
【0066】
【表3】

【0067】
タバコにおけるように、トマトにおけるdsRNAによるPMS1の一時的な下方調節は、TGAの頻度をおよそ30倍増強させる。P184コドンを含有するALS2遺伝子の領域の分析は、除草剤耐性のカルスが、予想されたP184Qの改変を実際に有していたことを実証した。
【0068】
(実施例3)
dsRNAによるトマト葉肉プロトプラストにおけるMMRのmRNAの抑制
dsRNAがトマト葉肉プロトプラストにおいてMLH1のmRNAを下方調節し得ることを実証するために、実験を行った。
【0069】
トマトMLH1のdsRNAの生成
公共のトマトゲノムデータベースを、シロイヌナズナのMLH1およびMSH2のトマトオーソログについてスクリーニングした。プライマーを設計して、RNA合成の鋳型として役立つこれらの遺伝子の断片を増幅した。トマトcDNAを鋳型として用いて、PCR産物を生産した。トマトのMLH1およびMSH2の配列、ならびにdsRNA合成に用いられる領域を、図3に示す(下線)。
【0070】
鋳型当たり2個のPCR産物を増幅し、これらは、配列は同一であったが、逆の鎖にT7 RNAポリメラーゼプロモーター配列を有していた。1μgの各PCR産物を、T7 RiboMAX Express RNAi Systm (Promega)を用いるインビトロでのRNA転写に用い、その結果、PCR産物の上方の鎖または下方の鎖のいずれかに対応する一本鎖RNAが生産された。製造者の指示の通りに、相補的RNA鎖を精製し、アニーリングして、dsRNAを生成した。さらに、本発明者らはまた、同一の長さであるがランダムなDNA配列からなるdsRNA分子(非特異的dsRNA)を生産した。これは、dsRNAが非特異的な様式でmRNAの量に影響するかどうかを明らかにするための、追加の対照として、実験に含めた。
【0071】
トマトプロトプラスト
トマトプロトプラストの単離および精製
トマトの葉のプロトプラストの単離および再生は、これまでに記載されており(Shahin、1985 Theor. Appl. Genet. 69: 235〜240頁; Tanら、1987 Theor. Appl. Genet. 75: 105〜108頁; Tanら、1987 Plant Cell Rep. 6: 172〜175頁)、必要な溶液は、これらの文献において見ることができる。簡潔に述べると、ソラヌム・リコペルシクムの種子を、0.1%次亜塩素酸で滅菌し、25℃および50〜70%の相対湿度で、2000ルクスで16/8時間の光周期で、無菌MS20培地においてインビトロで成長させた。1gの新たに採取した葉を、5mlのCPW9Mが入った皿に置き、メスの刃を用いて、主要な葉柄に垂直に、1mmごとに切断した。これらを25mlの酵素溶液(2%セルロースonozuka RS、0.4%マセロザイムonozuka R10、2,4,-D(2mg/ml)、NAA(2mg/ml)、BAP(2mg/ml)を含有するCPW9M、pH5.8)が入った新たなプレートに移し、25℃の暗所で一晩、消化を進行させた。次に、プロトプラストを、1時間にわたりオービタルシェーカー(40〜50rpm)上に置くことによって遊離させた。プロトプラストを、50μmの篩を通すことによって細胞残屑から分離し、篩をCPW9Mで2回洗浄した。プロトプラストを85gで遠心分離し、上清を廃棄し、次に、半分の容積のCPW9M内に溶解した。プロトプラストを、最後に、3mlのCPW9M内に溶解し、次に、3mlのCPW18Sを、2つの溶液が混合しないように慎重に添加した。プロトプラストを、85gで10分間にわたり回転させ、相間層に浮遊している生存プロトプラストを、長いパスツールピペットを用いて回収した。プロトプラストの容積は、CPW9Mを添加することによって10mlまで増大し、回収されたプロトプラストの数を、血球系で決定した。プロトプラスト懸濁液を、5℃で、85×gで10分間にわたり遠心分離する。上清を廃棄し、プロトプラストペレットを、CPW9M洗浄培地内に、106個mL-1の最終濃度まで再懸濁する。10mLの試験管内で、250μLのプロトプラスト懸濁液+/-12.5μgのdsRNAおよび250μlのPEG溶液(40%PEG4000(Fluka #81240)、0.1MのCa(NO3)2、0.4Mのマンニトール)を静かに、しかし完全に混合する。室温で20分間インキュベートした後、5mLの冷たい0.275MのCa(NO3)2を液滴で添加する。プロトプラスト懸濁液を、4℃で、85×gで10分間にわたり遠心分離し、上清を廃棄する。
【0072】
トマトプロトプラストを、除草剤耐性のカルスの再生および選択のために、アルギン酸溶液内に組み入れた。2mlのアルギン酸溶液を添加し(マンニトール90g/l、CaCl2・2H2O 140mg/l、アルギン酸ナトリウム20g/l(Sigma A0602))、反転することにより完全に混合した。これの1mlを、Ca寒天プレート(72.5g/lのマンニトール、7.35g/lのCaCl2・2H2O、8g/lの寒天)上に平らな層状とし、ポリマー化させた。次に、アルギン酸塩のディスクを、4mlのK8p培養培地を含有する4cmのペトリ皿に移した。ディスクをクエン酸ナトリウム溶液内でインキュベートすることにより、プロトプラストをアルギン酸塩から遊離させ、その後、採取した。
【0073】
MLH1のmRNAレベルの定量
RNAeasy Kit (Qiagen)を用いて、全RNAをプロトプラストから単離した。Quantitect RTキット(Qiagen)を用いて、cDNA合成を行った。内因性MLH1のレベルを、Light Cycler装置(Roche)、ならびに、トマトMLH1のmRNAに由来する302bpの生産物を増幅する、プライマー5’-CCTGGTCTATTGGATATTGTTAG[配列番号7]および5’-GCTTGAGCAGTTCTGTATTC[配列番号8]を用いて測定した。各時点で、3回の独立したプロトプラストトランスフェクションを行い、qPCR反応を3重に行った。トマトMLH1レベルの正規化のために、トマトGAPDHのmRNAレベルを、5’-GCAATCAAGGAGGAATCAGAGG[配列番号9]および5’-CCAGCAGCATCAATCAAGCC[配列番号10]というプライマーを用いて、各試料において測定した。
【0074】
結果
qPCR分析の結果を図4に示す。トマト葉肉プロトプラストにおいて、MLH1のmRNAレベルは、dsRNAを加えることによって有意に低減し得る。MLH1のmRNAレベルは、対照試料において、プロトプラストの単離の後に迅速に上昇したが、これは、MLH1のdsRNAで処理したプロトプラストのケースでは当てはまらず、この場合は、レベルの上昇は観察されない。dsRNA種のいずれも、MLH1の発現を正規化するために各試料において評価されるGAPDHのmRNAレベルなどの、他のmRNA種の発現に対する影響を有さない。したがって、インビトロで合成されるdsRNAは、トマト葉肉プロトプラストにおいて、MMRのmRNAを一時的に、かつ特異的に下方調節し得る。本発明者らは、プロトプラストをMSH2のdsRNAでトランスフェクトした際に、トマトMSH2のmRNAに対する類似の効果を観察した。
【0075】
(実施例4)
MLH1およびMSH2に標的化されたdsRNAを用いる、タバコプロトプラスト細胞におけるTGA実験
変異原性核酸塩基PB124(5’A*T*C*A*TCCTACGTTGCACTTG*A*C*C*G[配列番号3])を用いて、実験を行った。これは、アセト乳酸合成酵素(ALS)のオーソログをコードする、タバコから得られるSurB遺伝子の非転写鎖に対応する。このオリゴヌクレオチドは、SurBのプロリン191からグルタミン酸への変換をもたらして、スルホニル尿素タイプの除草剤に対する優性の耐性表現型を付与する、SurBとの単一のミスマッチ(下線)を含有する。アスタリスクは、リン酸連結における架橋していない酸素原子が硫黄原子によって置換されている、ホスホロチオエート連結を表す。このような修飾された連結は、エキソヌクレアーゼの攻撃に対して、より耐性であり、したがって、細胞における変異原性核酸塩基の寿命を延ばすことが知られている。
【0076】
タバコプロトプラストを、実施例3において記載したように調製した。12.5μgのdsRNAおよび10μgのPB124を、プロトプラストのアリコートにトランスフェクトし、それを最後に、1.25mlのT0培養培地内に再懸濁した。懸濁液を35mmのペトリ皿に移した。等容積のT0アガロース培地を添加し、静かに混合した。試料を25℃の暗所でインキュベートし、以下に記載するようにさらに培養した。
【0077】
タバコプロトプラストの単離および形質転換
タバコ(Nicotiana tabacum cv Petit Havana)系統SR1のインビトロでの茎頂培養を、25℃および60〜70%RHで、2000ルクスで16/8hの光周期で、背の高いガラス瓶内の0.8%Difco寒天を有するMS20培地で維持する。MS20培地は、2%(w/v)ショ糖を含有し、ホルモンおよび0.8%Difco寒天を添加していない、基礎的なMurashige およびSkoogの培地(Murashige, T.およびSkoog, F.、Physiologia Plantarum、15: 473〜497頁、1962)である。3〜6週齢の茎頂培養物の完全に拡がった葉を採取する。葉を1mmの厚さの切片にスライスし、これを次に、45mlのMDE基本培地を含有する大きな(100mm×100mm)ペトリ皿に移し、30分間の原形質分離前処理を行う。MDE基本培地は、全容積900mlに、0.25gのKCl、1.0gのMgSO4・7H2O、0.136gのKH2PO4、2.5gのポリビニルピロリドン(MW 10,000)、6mgのナフタレン酢酸、および2mgの6-ベンジルアミノプリンを含有していた。溶液の浸透圧は、ソルビトールで600mOsm・kg-1に調整し、pHを5.7に調整する。次に、5mLの酵素ストックSR1を添加する。酵素ストックは、100ml当たり、750mgのCellulase Onozuka R10、500mgのドリセラーゼ、および250mgのマセロザイムR10からなり、ワットマン紙で濾過され、濾過滅菌される。25℃の暗所で、一晩、消化を進行させる。消化された葉を、50μmのナイロン製の篩を介して無菌ビーカー内に濾過する。等容積の冷たいKCl洗浄培地を用いて、篩を洗浄し、プロトプラスト懸濁液と共にプールする。KCl洗浄培地は、1リットル当たり2.0gのCaCl2・2H2O、および540mOsm・kg-1の浸透圧をもたらすために十分な量のマンニトールからなる。懸濁液を10mLの試験管に移し、プロトプラストを4℃で、85×gで10分間にわたりペレット化する。上清を廃棄し、プロトプラストペレットを、通常濃度の半分の、MS培地(Murashige, T.およびSkoog, F.、Physiologia Plantarum、15: 473〜497頁、1962)の主要栄養素である、5mLの冷たいMLm洗浄培地、1リットル当たり2.2gのCaCl2・2H2O、および浸透圧を540mOsm・kg-1にするための量のマンニトールに慎重に再懸濁する。2個の試験管の内容物を組み合わせて、4℃で、85×gで10分間にわたり遠心分離する。上清を廃棄し、プロトプラストペレットを慎重に、マンニトールの代わりにショ糖を有するMLm培地である、5mLの冷たいMLs洗浄培地内に再懸濁する。
【0078】
2個の試験管の内容物をプールし、ショ糖溶液上に添加された1mLのKCl洗浄培地を、下方の相を邪魔しないように慎重に採取する。プロトプラストを、4℃で、85×gで10分間にわたり遠心分離する。生きたプロトプラストを含有する、ショ糖溶液とKCl溶液との間の相間を、慎重に回収する。等容積のKCl洗浄培地を添加し、慎重に混合する。プロトプラスト密度を、血球計で測定する。
【0079】
dsRNAの導入およびプロトプラストの再生
プロトプラスト懸濁液を、5℃で、85×gで10分間にわたり遠心分離する。上清を廃棄し、プロトプラストペレットを、KCl洗浄培地内に、106個mL-1の最終濃度まで再懸濁する。10mLの試験管内で、250μLのプロトプラスト懸濁液+/-12.5μgのdsRNAおよび250μlのPEG溶液(40%PEG4000(Fluka #81240)、0.1MのCa(NO3)2、0.4Mのマンニトール)を静かに、しかし完全に混合する。室温で20分間インキュベートした後、5mLの冷たい0.275MのCa(NO3)2を液滴で添加する。プロトプラスト懸濁液を、4℃で、85×gで10分間にわたり遠心分離し、上清を廃棄する。次に、プロトプラストペレットを2.5mL内に慎重に再懸濁した。培養培地に、50μg・mL-1のセフォタキシムおよび50μg・mL-1のバンコマイシンを補った。T0培養培地は、(1リットル当たり、pH5.7)950mgのKNO3、825mgのNH4NO3、220mgのCaCl2・2H2O、185mgのMgSO4・7H2O、85mgのKH2PO4、27.85mgのFeSO4・7H2O、37.25mgのNa2EDTA・2H2O、Hellerの培地(Heller, R.、Ann Sci Nat Bot Biol Veg 14: 1〜223頁、1953)に従った微量栄養素、MorelおよびWetmoreの培地(Morel, G.およびR.H. Wetmore、Amer. J. Bot. 38: 138〜40頁、1951)に従ったビタミン、2%(w/v)ショ糖、3mgのナフタレン酢酸、1mgの6-ベンジルアミノプリン、ならびに浸透圧を540mOsm・kg-1にするための量のマンニトールを含有し、35mmのペトリ皿に移された。
【0080】
プロトプラストの培養および再生
10日間培養した後、アガロースのスラブを6個の等しい部分に切断し、20nMのクロルスルフロンを補った22.5mLのMAP1AO培地を含有するペトリ皿に移す。この培地は、(1リットル当たり、pH5.7)950mgのKNO3、825mgのNH4NO3、220mgのCaCl2・2H2O、185mgのMgSO4・7H2O、85mgのKH2PO4、27.85mgのFeSO4・7H2O、37.25mgのNa2EDTA・2H2O、元の濃度の10分の1の、MurashigeおよびSkoogの培地(Murashige, T.およびSkoog, F.、Physiologia Plantarum、15: 473〜497頁、1962)に従った微量栄養素、MorelおよびWetmoreの培地(Morel, G.およびR.H. Wetmore、Amer. J. Bot. 38: 138〜40頁、1951)に従ったビタミン、6mgのピルビン酸塩、それぞれ12mgのリンゴ酸、フマル酸、およびクエン酸、3%(w/v)ショ糖、6%(w/v)マンニトール、0.03mgのナフタレン酢酸、ならびに0.1mgの6-ベンジルアミノプリンからなるものであった。試料を、弱い光のもとで、25℃で6〜8週間にわたりインキュベートする。次に、成長中のカルスをMAP1培地に移し、さらに2〜3週間にわたり発育させる。MAP1培地は、MAP1AO培地と同一の組成を有するが、6%の代わりに3%(w/v)のマンニトールを有し、46.2mg・l-1のヒスチジン(pH5.7)を有する。これを、0.8%(w/v)のDifco寒天で凝固させた。
【0081】
次に、無菌鉗子を用いて、カルスをRP培地に移す。RP培地は、(1リットル当たり、pH5.7)273mgのKNO3、416mgのCa(NO3)2・4H2O、392mgのMg(NO3)2・6H2O、57mgのMgSO4・7H2O、233mgの(NH4)2SO4、271mgのKH2PO4、27.85mgのFeSO4・7H2O、37.25mgのNa2EDTA・2H2O、公表されている濃度の5分の1の、MurashigeおよびSkoogの培地に従った微量栄養素、MorelおよびWetmoreの培地(Morel, G.およびR.H. Wetmore、Amer. J. Bot. 38: 138〜40頁、1951)に従ったビタミン、0.05%(w/v)ショ糖、1.8%(w/v)マンニトール、0.25mgのゼラチン、ならびに41ngMのクロルスルフロンからなるものであり、0.8%(w/v)Difco寒天で凝固される。成熟した芽を、2〜3週間後に、発根培地に移す。
【0082】
結果
TGA実験の結果をTable 6(表4)に示す。
【0083】
【表4】

【0084】
タバコMLH1およびMSH2の下方調節は、TGAの効率を少なくとも30倍増大させる。芽は、変異原性核酸塩基およびdsRNAで処理した20個のカルスから再生し、遺伝子型決定された。DNAをこれらの植物から単離し、P191を含むSurBのPCR産物を増幅し、配列決定した。全ての植物は予想されたP191Qの突然変異を示し、したがって、本発明者らは、TGAがこれらの系統において実際に生じたと結論付けた。
【0085】
MLH1のdsRNAを用いた、トマトにおけるTGA実験
これらの実験を、Table 7(表5)において列挙する変異原性核酸塩基を用いて行った。トマトにおいて、ALSは多コピー遺伝子であり、2つの完全長ESTがPlant Transcript Database(http://planta.tigr.org)に存在する。本発明者らの研究において、本発明者らは、転写産物TA37274_4081をALS1と定義し、転写産物TA37275_4081をALS2と定義した。ALS1は、659AAのタンパク質をコードするが、ALS2は657AAのタンパク質をコードする。ALS1およびALS2は、DNAレベルおよびタンパク質レベルでそれぞれ93%および96%の同一性を示す。2つのタンパク質は、葉緑体の標的化に関与するタンパク質のシグナルペプチド領域において主に異なる。これらの差にもかかわらず、ALS1タンパク質およびALS2タンパク質の両方は、共に、葉緑体に標的化されることが予測される。以前の研究によって、ALSの保存された残基でのいくつかのアミノ酸の変化が、スルホニル尿素クラスの除草剤に対する不完全優性の耐性を付与するために十分であることが示されている。これらの1つは、P184Qの変化である。本発明者らは、これまでに、C5-プロピンおよびLNA(ロック核酸)の修飾が変異原性核酸塩基に含まれる場合に、トマトプロトプラストにおけるTGAの効率が8倍増強することを明らかにしている。したがって、この研究において、本発明者らは、正常なDNA変異原性核酸塩基、またはP184Qの改変を生じさせるように設計されたC5-プロピンおよびLNAが修飾された変異原性核酸塩基を、ALS2内に導入し、同時に、dsRNA標的化トマトMLH1およびMSH2をトマトの葉のプロトプラストに導入した。
【0086】
【表5】

【0087】
トマトプロトプラストを、実施例1において記載したように単離およびトランフェクトした。7日後、組み入れられたプロトプラストを選択培地に置いた。アルギン酸塩のディスクを5mmの幅の切片に切断し、20nMのクロルスルフロンを含有するTM-DBカルス誘導培地に層状にした。除草剤耐性のカルスは、30℃で4〜5週間のインキュベーションの後に現れ、次に、さらなる成長のために、個体を、20mMのクロルスルフロンを含有するGM-ZG発芽培地に移した。
【0088】
結果
MLH1のmRNAレベルを下方調節するための、dsRNAを用いたTGA実験の結果を、Table 8(表6)に示す。
【0089】
【表6】

【0090】
タバコにおけるように、トマトにおけるdsRNAによるMLH1の一時的な下方調節は、TGAの頻度をおよそ30倍増強させる。P184コドンを含有するALS2遺伝子の領域の分析は、除草剤耐性のカルスが、予想されたP184Qの改変を実際に有していたことを実証した。
【0091】
【表7A】

【0092】
【表7B】

【0093】
【表8A】

【0094】
【表8B】

【0095】
【表8C】

【0096】
【表8D】

【0097】
【表8E】

【0098】
【表8F】

【0099】
【表8G】

【0100】
【表8H】

【0101】
【表8I】

【0102】
【表8J】

【0103】
【表8K】

【0104】
【表8L】

【0105】
【表8M】

【0106】
【表8N】

【0107】
【表8O】

【0108】
【表8P】

【0109】
【表8Q】

【0110】
【表8R】

【0111】
【表8S】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物細胞プロトプラストにおける標的化遺伝子改変のための方法であって、
植物MMRのmRNAを好ましくは標的化するdsRNA、および
変異原性核酸塩基
を用いてプロトプラストをトランスフェクトするステップを含む方法。
【請求項2】
dsRNAおよび変異原性核酸塩基が、植物細胞プロトプラスト内に本質的に同時に導入される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
dsRNAおよび変異原性核酸塩基の導入が、最大48時間離れている、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
植物MMRのmRNAが、MutSおよび/またはMutL MMR遺伝子に関連するmRNAである、より好ましくはMSH2、MSH3、MSH6、MSH7、MLH1、MLH2、MLH3、およびPMS1からのものである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
トランスフェクションの結果、MMR遺伝子が下方調節される、好ましくは一時的に下方調節される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
dsRNAが、植物細胞プロトプラストにおいて、MMR系の下方調節に選択的である(植物細胞プロトプラストにおける他のmRNA種を有意に下方調節しない)、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
標的化遺伝子の改変の効率が、dsRNAの不存在下での遺伝子改変のための同等の方法と比較して、少なくとも10倍増大する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
植物が、単子葉植物および双子葉植物のなかから選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
植物が、ナス科、好ましくはトマトおよび/またはタバコである、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
変異原性核酸塩基が、1つまたは複数の修飾ヌクレオチドを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
修飾ヌクレオチドが、
d. 好ましくは変異原性核酸塩基の一方もしくは両方の末端の付近または前記末端にある、ホスホロチオエート修飾、
e. 好ましくは変異原性核酸塩基の一方もしくは両方の末端の付近または前記末端にない、プロピン置換、
f. 好ましくは変異原性核酸塩基の一方もしくは両方の末端の付近または前記末端にない、LNA置換
からなる群から選択される、請求項11に記載の方法。
【請求項12】
変異原性核酸塩基が、少なくとも1つのミスマッチから少なくとも1ヌクレオチドの距離に位置する、少なくとも1つの修飾LNAを含み、場合によっては、変異原性核酸塩基が、最大で約75%のLNA修飾ヌクレオチドを含有する、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
少なくとも2個、好ましくは少なくとも3個、より好ましくは少なくとも4個、さらに好ましくは少なくとも5個、最も好ましくは少なくとも6個のヌクレオチドがLNAである、請求項9に記載の方法。
【請求項14】
LNAが、ミスマッチの両端から最大10ヌクレオチド、好ましくは最大8ヌクレオチド、より好ましくは最大6ヌクレオチド、さらに好ましくは最大4、3、または2ヌクレオチドの距離にわたって、独立して分布している、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
2個、好ましくは3個、より好ましくは4個、さらに好ましくは5個、最も好ましくは6個のヌクレオチドがLNAである、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
変異原性核酸塩基の修飾ヌクレオチドの最大50%、好ましくは最大40%、より好ましくは最大30%、さらに好ましくは最大20%、最も好ましくは最大10%がLNA誘導体である、請求項12に記載の方法。
【請求項17】
少なくとも1個の修飾ヌクレオチドが、ミスマッチの5’側および/または3’側に独立して位置している、請求項10に記載の方法。
【請求項18】
ミスマッチの5’側または3’側の片側に位置する2個のLNA修飾ヌクレオチドが、少なくとも1塩基対、好ましくは少なくとも2塩基対、互いに離れている、請求項1から17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
プロピン修飾ヌクレオチドがC7-プロピンプリンまたはC5-プロピンピリミジンである、請求項9に記載の方法。
【請求項20】
プリンがアデノシンもしくはグアノシンであり、かつ/またはピリミジンがシトシン、ウラシル、もしくはチミジンである、請求項17に記載の方法。
【請求項21】
ピリミジンおよび/またはプリンの少なくとも10%が、それらのそれぞれのプロピニル化誘導体によって置き換えられており、好ましくは少なくとも50%、より好ましくは少なくとも75%、最も好ましくは少なくとも90%が置き換えられている、請求項17に記載の方法。
【請求項22】
修飾ヌクレオチドがピリミジンである、請求項17に記載の方法。
【請求項23】
修飾ヌクレオチドがプリンである、請求項17に記載の方法。
【請求項24】
ミスマッチの位置のヌクレオチドが修飾されていない、請求項1から23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
少なくとも1個の修飾ヌクレオチドが、ミスマッチに隣接して位置しておらず、好ましくは、ミスマッチの2、3、4、6、7、8、9、または10ヌクレオチド以内に位置する、請求項1から24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
細胞の改変、野生型への回復による突然変異の修正、突然変異の誘発、コード領域の破壊による酵素の不活化、コード領域の改変による酵素の生物活性の改変、コード領域の破壊によるタンパク質の改変、ミスマッチの修復、遺伝子突然変異、標的化遺伝子修復、および遺伝子ノックアウトを含む、(植物の)遺伝物質の標的化改変のための、請求項1から25のいずれか一項に記載の方法。

【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図1】
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【図4】
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【公表番号】特表2012−513199(P2012−513199A)
【公表日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−542027(P2011−542027)
【出願日】平成21年12月22日(2009.12.22)
【国際出願番号】PCT/NL2009/000270
【国際公開番号】WO2010/074562
【国際公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【出願人】(509351340)
【Fターム(参考)】