植物体代謝物採取方法
【課題】植物の代謝物を従来よりも長期的に採取可能にする技術を提供する。
【解決手段】植物の木部(道管、仮道管)および篩部(師管)の少なくともいずれかに採取管を接続し、植物の代謝物を当該採取管から採取する。また、時期、時間、日照量、環境温度、湿度に応じて代謝物の採取量をコントロールする。植物体代謝物採取方法。
【解決手段】植物の木部(道管、仮道管)および篩部(師管)の少なくともいずれかに採取管を接続し、植物の代謝物を当該採取管から採取する。また、時期、時間、日照量、環境温度、湿度に応じて代謝物の採取量をコントロールする。植物体代謝物採取方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物体代謝物採取方法に関する。
【背景技術】
【0002】
植物から代謝物を採取する方法がある。例えば、ヘチマの茎を切断し、切り口から流れ出す道管液を採取することによって、ヘチマ水を採取する方法がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、茎を切断されたヘチマは、切り口を自発的に補修する。そのため、上記の方法では、切り口が補修されるまでの一時的な期間にしか代謝物を採取できない。
【0004】
本発明は、植物の代謝物を従来よりも長期的に採取可能にする技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための本願発明は、植物の木部(道管)および篩部(師管)の少なくともいずれかに採取管を接続し、植物の代謝物を当該採取管から採取する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】本発明の一実施形態が適用された植物体代謝物採取システムの概略構成図、及び、植物から代謝物(栄養素)を採取する方法について説明するための説明図である。
【図2】採取管の接続部に透過膜を設けることによる効果を説明するための図である。
【図3】果柄に採取管を接続する場合の概要を示す図である。
【図4】ツタ類の茎の切断面に採取管を接続する場合の概要を示す図である。
【図5】根に採取管を接続する場合の概要を示す図である。
【図6】枝の分かれ目に採取管を接続する場合(接ぎ木方式)の概要を示す図である。
【図7】接ぎ木方式での接続に用いる採取管の外観を示す図である。
【図8】樹木木部の表皮付近の一部に採取管を接続する場合の概要を示す図である。
【図9】樹木木部の表皮付近の一部に採取管を接続した場合における、代謝物(道管液)の流れを概念的に示す図である。
【図10】代謝物採取コントローラーの概念図である。
【図11】植物電池の概念図である。
【図12】樹木木部の表皮の一部に接続する採取管の外観を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本願発明は、植物の木部(道管、仮道管)および篩部(師管)の少なくともいずれかに採取管を接続し、植物で生成された代謝物を採取する方法についての発明である。以下、具体的に説明する。
【0008】
<概要>
植物には、植物体の全体にわたってその内部を貫く維管束を有するものがある。維管束は、物質の輸送を役割とする木部、篩部などからなる。
【0009】
木部には道管(導管)がある。道管は「節を抜いた竹」のように道管要素が管状に連なることで形成されており、水と水に溶解したイオンの輸送路となる。道管要素は、原形質膜と細胞質のほとんどを失った「死んだ細胞」である。道管要素には木部柔組織細胞が密着していて、その原形質膜を介して道管要素との間で、水と水に溶解したイオンのやり取りを行う。
【0010】
小型の道管要素は、細胞膜、核、細胞質が失われた「死んだ細胞」であるが、元は分裂組織から分化してきた細胞自身である。
【0011】
成熟した道管要素には、二次細胞壁が肥厚して多量のリグニンが沈着している(木化)。道管要素と道管要素との間の一部の細胞壁は失われ、節を抜いた竹のように、道管要素が管状に連なる。
【0012】
また、仮道管(仮導管)も導管要素と同じようなはたらきをするが、細胞同士を仕切る薄い細胞壁が残り、水溶液は、仮道管から仮道管へと細胞壁を透過して移動する。被子植物の多くは道管・仮道管の両方を持つが、シダ植物・裸子植物・少数の被子植物ではつながった仮道管のみが水溶液の上昇路となる。
【0013】
一方、篩部には師管(篩管)がある。師管は師管要素が連なることで形成されており、主に同化産物の輸送路となる。師管要素は、師管細胞と伴細胞(コンパニオンセル)よって形成されている。師管細胞同士は大形のプラスモデスム(原形質連絡)による小孔が存在する「師板」を介して連絡しており、水溶性の同化産物の輸送を行う。師管細胞は、核や細胞質の多くを失ってはいるものの生きた細胞であり、師管細胞自身の代謝に必要な物質を伴細胞に依存している。
【0014】
なお、プラスモデスムには、一次プラスモデスムと二次プラスモデスムとがあり、それぞれ通過させることのできる物質の大きさ(通過限界分子量)、構造、由来ともに異なる。
【0015】
一次プラスモデスムは、細胞分裂終期の細胞板形成の際に積極的に形成される構造体であり、通過限界分子量は組織の部位によっても異なる。
【0016】
一方、二次プラスモデスムは、細胞分裂後から積極的に細胞間に形成されるものである。二次プラスモデスムの形成の例としては、植物個体における「接ぎ木」などがある。
【0017】
二次プラスモデスムは、既存の細胞壁が酵素的に分解された結果形成されたものである。植物個体はそれ自身の「あるべき姿」を想定して酵素的に(すなわち遺伝子を発現させて)二次プラスモデスムを形成させていると考えられている。また、植物では、プラスモデスムが存在することにより、植物個体全体を「1つの多核体」としてとらえることができる。
【0018】
ところで、植物の木部(道管)や篩部(師管)に採取管を接続する場合には、その採取管を植物体の一部として植物に認識させるように接続(以下では「癒合接続」とよぶ)するのが好ましい。
【0019】
木部(道管)は、上述したように原形質膜と細胞質のほとんどを失った「死んだ細胞(木化状態)」であるため、木部に採取管を癒合接続する場合には、液漏れや乾燥さえ対処すれば接続可能である。
【0020】
一方、篩部(師管)は、上述したように師管細胞同士が「師板」を介して連絡しており、生きた細胞であるため、篩部に採取管を癒合接続する場合には、師板に相当する透過膜、又は、吸収管を、篩管と採取管の間に設ける必要性がある。仮に、この透過膜や吸収管を設けずに採取管を篩管に接続すると、植物による拒否反応の起因となり得る。
【0021】
ところで、2つの植物(穂木と台木)の切断面を接着して1つの個体とする接ぎ木の技術を用いれば、遺伝的に異なる部分から構成されている1つの個体を作ることができる。例えば、カボチャとキュウリの接ぎ木、スイカとカボチャの接ぎ木など、さまざまな種類の植物同士を、同化させて接着することができる。
【0022】
そのため、このような接ぎ木の技術を用いれば、採取管を植物に癒合接続することもできる。例えば、採取管と植物の接続面(少なくとも採取管の先端部分)に、植物がもつ植物性ホルモン(タンパク質、ペプチド、等)を混入することにより、採取管と植物の癒合(同化)を促進させることができる。また、採取管の周囲に植物性ホルモンを塗布して、または、接着材として、癒合(同化)を促進させてもよい。
【0023】
なお、動物の体内などにおいては、独立性の高い動物細胞同士が接着して、組織、個体を形成している。動物細胞の細胞接着では、デスモソーム(desmosome)、ヘミデスモソーム(hemidesmosome)など、細胞接着のための構造体が介在する。
【0024】
これに対して植物では、もともと個体の全ての細胞が連続性のある細胞壁によってつながれており、細胞接着のための構造体は存在しない。また、上述したように、植物では、細胞膜を貫通する原形質連絡(プラスモデムス)という構造によって細胞同士の原形質が一部共有されている。このような点からも、植物体全体が1つの巨大な多核体としての性質をもっているといえる。
【0025】
しかし、植物の遊離単細胞が集塊を形成する場合には、動物細胞における細胞接着のように、何らかの方法で細胞同士が結合しているはずである。
【0026】
例えば、プラスモデスムは、隣り合う細胞相互間における架橋構造を提供し、細胞分裂により両細胞が同化するように隙間を埋める(細胞同士を結合させる)働きをしていると考えられる。
【0027】
また、維管束系をなす道管要素間に存在する二次プラスモデスムは、既存の細胞壁が酵素的に分解を受けたことによって生成された構造体である。しかし、上述したように、道管要素は、原形質膜、核、細胞質のほとんどを失った「死んだ細胞」であるはずで、自らセルラーゼあるいはペクチナーゼの生合成は不可能である。従って、道管要素の細胞壁の一部を分解し、二次プラスモデスムを形成させた酵素群は、別の細胞に由来したものと考えられている。
【0028】
このようなことからも、植物における酵素の役割は重要であるといえる。例えば、酵素のコントロールは、細胞接着や植物の成長促進につながる。また、代謝物を採取する対象の植物の健康状態、代謝物(二次代謝物を含む)の生産量、代謝物の成分などの調整を行うことも、細胞接着や植物の成長促進につながる。
【0029】
ところで、植物は太陽の光を受け、光化学反応により光合成を行っている。光合成によって生成された糖は、いわば太陽エネルギーが化学エネルギーに転換された形といえる。糖はさらに高分子の多糖類、脂質、その他物質の合成のための原料となる。また、これと同時に酸化されて、そのエネルギーは生物に利用可能なアデノシン三リン酸(ATP)という形に変えられる。このような過程(化学反応)が分子状の酸素を用いて効率よく行われる場合、「呼吸」とよばれる。また、このような有機化合物の合成と分解の過程(化学反応)を「代謝」とよび、酸素によって触媒される。
【0030】
光合成によって生成されたグルコースは、部分的には細胞によって分解され、再び水と二酸化炭素になる。このとき得られるATPのエネルギーは、グルコースを原料とした原形質成分、細胞壁成分、脂質などの貯蔵物質の合成に用いられる。呼吸によって生じたエネルギーは、このような合成的な仕事のほか、浸透的な仕事(物質の呼吸など)にも用いられる。こうして、生物特有の遺伝情報の保持、発現などが可能となる。
【0031】
なお、上述したATPは、植物細胞、あるいは生物の細胞一般における代謝でのエネルギー転換において重要な役割を果たす物質である。ATPは加水分解すると大量のエネルギーを放出する高エネルギーリン酸化合物の1つである。ATPは、細胞内でいろいろな生化学的な反応に関与して加水分解するため、エネルギー熱として放出されず、それらの生化学的な反応の遂行に利用される。従って、ATPは、生体反応において利用可能な化学エネルギーであるといえる。
【0032】
また、呼吸の過程では、「グルコース→ピルビン酸→水+二酸化炭素」となる。「グルコース→ピルビン酸」の過程では酸素を必要とせず、この化学反応を「無気呼吸」または「嫌気呼吸」または「解糖」とよぶ。また、「ピルビン酸→水+二酸化酸素」の過程では、分子状の酸素を必要とし、この化学反応を「好気呼吸」などとよぶ。また、この化学反応は、<1>クエン酸回路(TCA回路)の反応、<2>電子伝達、<3>ATP生成、の3段階に分けられる。ところで、発芽初期など、植物細胞では酸素を消費しないでグルコースを分解する反応(解糖と同じ反応)もあり、特に「発酵」とよばれる。発酵の際には、乳酸のほかエタノールも生産される。
【0033】
なお、上記のような呼吸におけるエネルギー変換効率は、{(36分子×7.3kcal)/686kcal}×100=38%であり、熱機関を用いたエネルギー変換効率よりもはるかに効率がよい。
【0034】
ところで、植物は空気中ではアルコールや乳酸を蓄積しない。しかし、ピルビン酸は嫌気呼吸でも好気呼吸でも合成されるため、嫌気呼吸と好気呼吸のはじめの段階は同じである。すなわち、好気呼吸と同じく、嫌気呼吸の生成物も植物では二酸化炭素である。また、リン酸化は嫌気呼吸、好気呼吸のいずれの場合にもおこる。
【0035】
また、クエン酸回路の反応で遊離した水素はイオン化し、電子はチトクローム系を経て酸素に渡される。このような酸化還元反応においては、電子圧の低い物質(すなわち陰性の物質)から電子圧の高い物質(すなわち陽性の物質)へと電子が流れる。ここで、電子圧の低い物質は、電子供与体とよばれ、いわば還元剤である。また、電子圧の高い物質は、電子受容体とよばれ、いわば酸化剤である。また、電子供与体には固有の電子圧があり、電子受容体には固有の電子親和力がある。これらの電子圧や電子親和力は、起電力(すなわち電位)で測定できる。なお、それぞれの物質について標準状態で測定されたときの電位を標準還元単位とよぶ。
【0036】
また、好気呼吸をする植物など真核生物の細胞は、ミトコンドリアを有している。そして、ミトコンドリアによって、クエン酸回路と呼吸鎖の反応、酸化的リン酸化が行われる。ミトコンドリアは、長さ0.4〜5μm、厚さ約0.3〜0.8μmの楕円形に近い形をしている。1つの細胞には、数個から数千個のミトコンドリアが存在する。ミトコンドリアは、クエン酸回路や電子伝達系の酵素を含み、また、前核生物型のDNA及びリボソームを備え、自己増殖的な性質をもつと考えられている。
【0037】
植物細胞における呼吸速度は、原形質の状態、呼吸酸素の活性、呼吸基質の供給などに依存しているが、これらの内的要因は、外的要因によって著しく影響される。外的要因としては、温度(30〜40℃で最大)、酸素分圧(0.2気圧:ただし20〜25%の酸素濃度)などがある。
【0038】
ところで、植物における呼吸によって放出される二酸化炭素の容積と、吸収される酸素の容積の比(すなわち「二酸化炭素の容積/酸素の容積」)を、呼吸商(RQ値)とよぶ。種子が発芽するとき、種子の種類や発芽後の時間によって呼吸基質が異なるため、呼吸商は著しく変動する。
【0039】
また、光合成産物であるグルコースは、スクロースの形に変わって転流する。グルコースを原料とする植物の重要な貯蔵多糖類はデンプンであり、構造多糖類は細胞壁多糖類である。これは糖のリン酸化によって変換される。
【0040】
糖の変換における重要な代謝経路の1つにペントースリン酸経路(PPP)があり、これは多くの点で光合成の暗反応に似ている。ペントースリン酸経路は、葉緑体の外側、すなわち細胞質中におこり、酵素も細胞質中に可溶な形で存在している。
【0041】
ところで、上記の光化学反応では、光エネルギーによる電子の励起およびそれに伴う電子伝達によってATP生成が行われる。光合成反応は植物および一部の細菌(光合成細菌:シアノバクテリア、紅色硫黄細菌など)のみが有する。酸素発生型光合成の場合には、水が電子供与体として使用される。また、酸素非発生型光合成の場合には、硫化水素、水素をはじめいくつかの有機化合物(プロパノールなど)が電子供与体として利用される。
【0042】
カルビン回路(カルビン−ベンソン回路)は、光合成反応における代表的な炭酸固定反応である。ほぼ全ての緑色植物と光合成細菌がこの回路を所持している。
【0043】
光化学反応により生じたNADPHおよびATPが駆動力となって回路が回転し、最終的にフルクトース−6−リン酸から糖新生経路に入り、多糖(デンプン)となる。この回路の中核である炭酸固定反応を担うリブロースビスリン酸カルボキシラーゼ(RubisCO)は地球上に存在するもっとも量の多い酵素であると言われている。
【0044】
また、反応自体は光がなくても進行するため、光が不可欠な光化学反応(明反応)と対比して暗反応ともよばれる。ただし、反応にかかわる酵素のうち、RuBPカルボキシラーゼ等やホスファターゼ等の複数の酵素は光によって間接的に活性化されるため、暗くなると数分のうちに活性を失う。
【0045】
電子伝達が起こっているのは明反応である。光合成の明反応では、光によって励起された電子が光化学系を伝達されていくときに、水素イオンをチラコイド内腔へ輸送するとともに、NADP+を還元してNADPHをつくる。光のエネルギーを利用して水から電子を引き抜き、その結果、酸素が発生する。
【0046】
一方、ミトコンドリア内膜ではNADHの酸化に引き続き、電子伝達が起こる。電子伝達(連続的な酸化還元反応)によるエネルギーを利用して、水素イオンをミトコンドリアの基質から内膜の外側に輸送する。その結果、ミトコンドリア内の膜の内外には水素イオンの濃度勾配ができる。水素イオンは電荷を持っているので電位差も同時に生じる。電子伝達が起こるので、この一連の反応(あるいは反応を担う酵素群)を「電子伝達系」とよぶ。電子の最終的な受取手は酸素であり、その結果、水ができる。
【0047】
上述したATPは、DNAの構成要素であるアデノシンにリン酸を2つ余計に取り付けたもので、ADPとリン酸が酵素の働きで結合したものとも言える。
【0048】
炭水化物、タンパク質、脂肪を摂取した体内で消化吸収された分子は三つの段階(解糖、クエン酸回路、電子伝達)を経てエネルギー源となるATPがつくられる。三つの段階のうち、解糖は細胞質の液状の部分(細胞質基質、マトリックス)で行われ、クエン酸回路は細胞内のミトコンドリアのマトリックスで行われる。また、電子伝達は、ミトコンドリアの内膜で行われる。
【0049】
ATPを作り出す前駆体の電子伝達系タンパク質にはいくつかのタンパク質複合体がある。エネルギー源となるATPを作り出す最大の原資は炭水化物が分解されたグルコース(ブドウ糖)である。グルコースは分解されてピルビン酸となり、アセチルCoAを経てクエン酸回路に入る。ピルビン酸は酸素なしで二分子のATPを作り出す。呼吸鎖と連結したトリカルボン酸回路の反応で、ピルビン酸は完全に酸化され、二酸化炭素、水ができるとともに、強力なATP化を促進する。
【0050】
栄養素は段階を経るほどエネルギー生産効率が高くなるが、橋渡しする物質なくしては、その原資もすべての段階を経由できるとは限らない。ATP生産には電子伝達が重要であり、電子伝達で活躍する電子のメッセンジャーといわれるユビキノン(補酵素Q10)がある。
【0051】
細胞壁の主成分はセルロースで、若い細胞では、細胞壁の25%から35%を占め、木材では、約50%に達する。なお、セルロースは、光合成でできたグルコースが鎖状につながった高分子である。また、細胞壁は、セルロースの他に、分解されやすいヘミセルロースやペクチンなどを含んでいる。新しい細胞は、セルロースとヘミセルロースの繊維からなる1次壁によって包まれている。セルロースを分解して消化するためには、セルラーゼと言う酵素が必要である。草食動物はセルロースを分解するが、自分自身でセルラーゼを合成しているのでは無く腸内にいる微生物がセルラーゼをもっており、これが分解している。植物自体にもセルラーゼがあり、必要な場合にはセルロースを分解する。例えば落ち葉のために基部に離層を作るときに使われるので、この時期は生成が多くなると考えられる。
【0052】
DNAの複製をするときは、その二重らせんをほどいてそれぞれの配列を鋳型にして、もう一本の塩基配列を作る。末端のプライマー付着の余裕を持たせ、DNAの末端部には無意味なテロメア配列が繰り返される。
【0053】
テロメアは分裂と共に短くなる。しかし、それでは生物はいずれ絶滅してしまう。そこで、テロメアを再生するために生物にはテロメラーゼという酵素がある。植物の染色体でも末端にテロメアがある。そして花粉を作る組織以外の分裂細胞でもテロメラーゼが発見されているが、花粉を付ける開花時期にはテロメナーゼの生成が多くなると考えられる。
【0054】
一方で、例えば、ある植物がほかの植物の陰に生えてしまい、その陰からどうしても抜け出せないときには、植物は成長を早めの切り上げて、花を咲かせ、種子をつくって次の世代に可能性をつなぐ、という戦略をとる。これはFT遺伝子が働くことを抑制していた「枷」を外すことにより早咲きできる。
【0055】
これらのことより、本発明は、植物の光合成に生成される多糖(デンプン)やグルコース(ブドウ糖)を、採取管から採取する。そして、呼吸系で行われるミトコンドリアの役割を採取コントローラ装置内行う。また、採取コントーラー装置は、装置内で生成された生成物を植物に戻すことにより、植物のシンク器官として機能する。
【0056】
そればかりでなく、本発明は、セルロースを分解するセルラーゼやテロメラーゼ、植物ホルモンとして、ジベレリン、サイトカイニン等の酵素の採取、及び植物に戻すことも可能である。また、採りだしたグルコースをもとに植物電池として、クエン酸回路の一部や、クエン酸回路の一部の組み合わせにより電力を得る。さらに、アルコール発酵、乳酸発酵を起こしアルコールや乳酸を得る。
【0057】
<実施形態の例>
以下、本発明の実施形態の一例を図面を参照して説明する。
【0058】
動物の世界において、乳牛(ホルスタイン)は分娩後から牛乳が出る。その後、乳牛は、牛乳を搾り続けることにより、牛乳を出し続ける。これは、本来、子供に与える牛乳を、人間が搾り続ける行為により、乳牛の身体は、子供に必要とされているとみなして牛乳を出し続ける。
【0059】
実際には、1回の分娩後、牛乳を搾り続けることができる期間は、10ヶ月位が限度であるが、次の分娩で再度繰り返される。一方、子牛は2ヶ月程度で離乳される。
【0060】
植物の世界では、植物に果実を付ける植物が多くある。果実は、植物の根や葉の光合成によって作られた栄養分をもとに成長する。
【0061】
果実を実らせる際、成熟前の果実を果柄から外し、本来果実に与えられる栄養分(代謝物質)を採取し続け、あたかも果実が要求しているかのごとく振る舞うことにより、植物本体は果実に栄養分を送り続けることになる。ただし、その期間や量には限度があり、経済的効果を考慮して植物の種類や品種を選別し、より有効性の高い植物を対象とすることが必要とされる。
【0062】
また、春に芽吹く植物において、新芽が延びる際に、新芽に対して栄養分(代謝物質)が葉や根などから送られ続ける。新芽が成長を続ける間はこの栄養分が送られ続けることになる。
【0063】
図1は、本発明の一実施形態が適用された植物体代謝物採取システム10の概略構成図、及び、植物から代謝物(栄養素)を採取する方法について説明するための説明図である。
【0064】
まず、図1(a)から図1(b)に示すように、成熟前の果実11の果柄12を痛めないように、果実(例えば、ミカンの実)11が取り外される。次に、図1(c)に示すように採取管100が果柄12の先端に取り付けられる。このとき、果柄12に採取管100が確実に取り付けられることにより、接続部の乾燥を防ぐことができる。また、接着細胞を促すために、タンパク質を含有または合成した部材(例えば、成長ホルモンや酵素)が接続部に使用(例えば、塗布)されてもよい。また、果柄12と採取管100を確実に取り付けるために、接続部の外側に柔軟性のある保護テープ等が巻かれてもよい。
【0065】
採取管100の方端(先端の反対端)には、採取タンク110が設けられる。採取タンク110は、植物から採取した採取液を貯蔵する。また、採取タンク110には、貯蔵された採取液を抽出するための蛇口115が設けられる。なお、道管、師管のそれぞれから採取した採取液を分離して貯蔵するために、道管から採取した採取液を貯蔵する道管用の採取タンク110aと、師管から採取した採取液を貯蔵する師管用の採取タンク110bと、が別個に設けられてもよい。ただし、本発明は、これに限定されず、少なくとも道管及び師管のいずれかから代謝物(栄養素)を採取すればよい。
【0066】
採取管100の先端には、師管細胞20の師管にある師板22や師域23に相当する透過膜(半透膜、逆透過膜を含む)120が設けられる。この透過膜120には、透過小孔が設けられ、背後(採取タンク110側)には、海面状の海綿体170などで隙間が埋められる。これにより、浸透効果を損わない接続が可能となる。
【0067】
図2は、採取管100の接続部に透過膜120を設けることによる効果を説明するための図である。図2(a)に示す例では、一列の上下の師管細胞20と伴細胞21、師板22、師域23を示している。また、図2(b)に示ように、師管を切断すると、師管や伴細胞21の切断面には師板22が存在しない。そのため、師管や伴細胞21の切断面に採取管(細管)100を、直接、接合すると、代謝物の浸透がうまくできなくなる可能性がある。そこで、本発明では、図2(c)に示すように、師管や伴細胞21の切断面と採取管(細管)100との間に、浸透膜120を挿入し、本来持つ師管の浸透効果を損なわないようにしている。
【0068】
図1に戻り説明する。図示するように、採取管100の内部には、貯蔵タンク110に
代謝物を導くために、複数の細管を組み合わせた構造や、複数のファイバーを束ねた構造が設けられる。これにより、代謝物や液の浸透や毛管現象を促進することができる。また、採取管100には、代謝物の採取量を調節するための電動弁(電磁弁や逆止弁でもよい)190を設けてもよい。また、採取管100には、時期や時間帯や気候などに応じて代謝物を植物(道管、師管など)に戻すための吸引、逆送モーターを設けてもよい。
【0069】
また、植物は、根圧以外に、蒸散による水分子同士がくっつき合う凝集力により水を運ぶ。この蒸散による凝集力を利用し、採取管100の一方に蒸散機能を設け、途中分岐点から代謝物を採取してもよい。
【0070】
図示していないが、採取管100は、風や雨等で植物(道管、師管など)から外れにくくするために、バンドやテープ等で固定される。
【0071】
図3は、大型の樹木(椰子、パパイヤ等)の果柄12に採取管100を接続する場合の概要を示す図である。図3(a)から図3(c)に示するように、果実11の果柄12を痛めないように、果実11が取り外され、果柄12に採取管100が接続される。また、図3(d)に示すように、採取管100は、内部に植物(ソース器官)から代謝物などを抜き取るための管(以下では「吸収管101」とよぶ)と、採取タンク(シンク器官)110から植物に代謝物などを戻す管(以下では「送入管102」とよぶ)と、の2本の管を備える。もちろん、道管、師管のそれぞれに同様の採取管(道管用の採取管100a、師管用の採取管100b)100を接続し、計4本の管を植物1(果柄12)に接続するようにしてもよい。
【0072】
図4は、カボチャ、ヘチマ、葛などのツタ類の茎30の切断面に採取管100を接続する場合の概要を示す図である。図4(a)から図4(b)に示すように、植物1の茎30が切断され、その切断面に採取管100が接続される。図4(c)に示すように、採取管100の内部は、管が二重化された構造となる。すなわち、道管用の採取管100aの中に、師管用の採取管100bが挿入された構造となる。もちろん、ツタ類の茎30に採取管100を接続する場合に限らず、果柄12などに採取管100を接続する場合にも、同様の構造を有する採取管100を用いてもよい。
【0073】
図5は、根(例えば、葛、サツマイモ、レンコン、ジャガイモ)31に採取管100を接続する場合の概要を示す図である。図5(a)から図5(c)に示すように、地下茎や根31は、芯部32を残すように表皮が剥かれ、採取管100が接続される。また、接続部は、風や雨等で採取管100が移動しないように、地面に埋められる。また、地下茎や根31が地中で成長(伸び)しても採取管100が外れないようにするために、地面中に空間33を持たせ、根31と採取管100が一緒に移動可能にするとよい。
【0074】
図6は、枝の分かれ目34に採取管100を接続する場合(接ぎ木方式)の概要を示す図である。図6(a)、図6(b)に示すように、採取管100は、若芽に接ぎ木をするように、枝または葉の分かれ目34に割って接続される。また、図6(c)に示すように、採取管100の先端104の接続部は、楔状とし、成長による肥大化に対処するため(図には、成長した植物1aを示している)、柔軟性を有する素材(延びる素材)で構成される(104a)。また、細管103も延びる素材で構成し、各細管103の間隔も広がる構造としてもよい。なお、その接続部は、テープなどで固定されるとよい。
【0075】
図7は、接ぎ木方式での接続に用いる採取管100の外観を示す図である。採取管100の先端(先端部)104は、図示するように、細管103がスリーブ部211でまとめられる。接ぎ木と接続部分を密着させるために、保護スリーブ212が設けられる。一部の細管103は、吸収管101に導かれ、採取タンク110に代謝物を供給する。一方、残りの細管103は、送入管102に導かれ、採取タンク110からの代謝物を植物に戻す。各細管103は、中空の管でもよいし、ファイバーを束ねたもの(ファイバー間で代謝物が行き来可能なもの)でもよいし、浸透性(吸収性のよい)繊維や不織布であってもよい。また、各細管103の先端付近を透過膜(半透過膜、逆透過膜を含む)120で覆ってもよい。また、スリーブ部211内において、細管103と吸収管101の接続部分や、細管103と送入管102の接続部分に浸透膜(透過膜120)を封入してもよい。
【0076】
図8は、樹木木部の表皮付近の一部に採取管100を接続する場合の概要を示す図である。図8(a)から図8(b)に示すように、採取管100は、管継ぎ手部130と分岐部140から構成される。樹木の幹2の表皮には、採取管100の管継ぎ手部130に対応したくり抜き部150がくり抜かれる。そして、採取管100の管継ぎ手部130がくり抜き部150にはめ込まれ、密着テープ500でとめられる。これにより、管継ぎ手部130を介して、樹木の表皮付近の道管や師管の一部を代謝物が行き来できる。
【0077】
管継ぎ手部130の移植がスムーズに快復後(管継ぎ手部130が道管や師管として機能した後)に、分岐部140から代謝物が採取される。
【0078】
管継ぎ手部130は、細管103の束が上下方向に密につながり、それぞれの細管103は、分岐部140で外管(挿入管160)に接続される。ここで、各細管103は、2系統に分岐(分類)される。例えば、各細管103は、道管、師管といった2系統に分岐(分類)されてもよいし、吸収管101、送入管102といった2系統に分岐(分類)されてもよい。また、各細管103は、1系統でまとめられてもよい。この場合には、樹木木部の複数箇所に同様の採取管100がくり抜き部150にはめ込まれ、一方の採取管100を道管用の採取管100aとし、他方の採取管100を師管用の採取管100bとする。
【0079】
図9は、樹木木部の幹2表皮付近の一部に採取管100を接続した場合における、代謝物(道管液)の流れを概念的に示す図である。図は、管継ぎ手部130が樹木表面のくり抜き部150から遊離した状態で示されている。図示するように、採取管100の先端部(管継ぎ手部130)には、細管103が縦方向に配されており、挿入管160側に海綿体170が設置される。細管103を行き来する代謝物は、海綿体170を介して、挿入管(外管)160に至る。
【0080】
細管103は、外壁に浸透性を有する小孔が設けられたパイプ状の管である。樹木の道管の樹液(代謝物を含む液)は、道管と細管管103間の流れ205を経て、管継ぎ手部130の流れ206方向(上下)に流れるとともに、樹木の伴細胞と細管103間の流れ204方向と、細管103と海綿体170の流れ207方向にも樹液が流れる。
【0081】
採取管100の先端はカバー部180で覆われており、樹木に接続された状態において接合部の乾燥や樹液漏れを防ぐ。
【0082】
また、図示していないが、採取管100を樹木に埋め込んだ後(接続後)に、カバー部180表面と樹木をテープ等で貼り付けて(接着して)もよい。
【0083】
また、細管103は、ファイバー状の管を束ねたもの、不織布、海綿体など、上下方向および左右方向に浸透性のあるものに代えてもよい。
【0084】
なお、本実施形態では、樹木の表皮部分を採取管100の接続対象としているが、樹木の芯に向かってくさび形に切り込み部を設け、切り込み部の形状に対応した採取管100をその切り込み部にはめ込むように接続してもよい。
【0085】
例えば、図12は、採取管100の先端(先端部)104を、多孔質部106とした多孔質採取管先端部104bで構成した採取管100を示す。カバー部180の内側には、多孔質材で構成した多孔質部106が設けられるとともに、多孔質部106の内部と送入管102に代謝物を行き交わせる溝として、送入液孔網107が設けられる。多孔質材はセラミックスや、金属製等の硬質のものでも、海面体、スポンジ状の軟質のものでもよく、送入管と植物間で代謝液の流れが起きるものであれば良い。送入液孔網107は、それらの流れを増長するものであり、多孔質部106に溝を張り巡らした水路の様なものである。
【0086】
椰子は、竹と同じく単子葉類で、篩部が木部とセットになった維管束が茎の中に散在(不斉中心柱)するので、散在した維管束に対応するように接続するのがよい。
【0087】
図10は、採取管100を介して植物から代謝物を採取して、採取タンク110に貯蔵する代謝物採取コントローラー300と、植物から採取した代謝物を用いて電荷を蓄積する植物電池400と、の概念図を示す。
【0088】
図10(a)から図10(c)に示すように、代謝物採取コントローラー300は、採取管100の吸収管101側から植物の代謝物(主にブドウ糖)を採取する。代謝物採取コントローラー300は、代謝物の採取量を調整するための第1の吸引ポンプ310を備える。そして、代謝物採取コントローラー300は、第1の吸引ポンプ310を用いて、時期(例えば、6月から8月)、時間(例えば、朝)、環境温度、湿度、日照量(例えば、快晴の日)に応じて、代謝物の採取量を調整する。そして、代謝物コントローラー300は、採取した糖分を、拡散・限外濾過・浸透圧等の透析技術を使用し、透析機で糖分を抽出する。図示する例では、半浸透膜320での抽出を示す。透析機で抽出された代謝物(糖分など)を含む液(代謝液)は、採取・濃縮タンク110に貯蔵される。そして、採取・濃縮タンク110に貯蔵された代謝物は、第1の送出ポンプ360を用いて、植物電池400に送られる。なお、採取・濃縮タンク100では、より糖分(ブドウ糖)の濃度を高めたり、他の成分を分離することによって、蓄電効果の高い植物電池400の燃料を作ることができる。
【0089】
図11は、植物から採取した代謝物を用いて電荷を蓄積する植物電池400の概念図を示す。
【0090】
植物電池400は、採取・濃縮タンク110から送られてきたグルコース(別名:ブドウ糖)を酵素群によりグルコノラクトン(別名:ハツミツ酸)に変換(酵素分解)する。これにより、電子伝達物質(多孔性の炭素棒等)から電子(e−)を得て、負電極を形成する。なお、ここでの酵素分解により、ATPが産出される。
【0091】
一方、植物電池400は、セパレータ410を通過した水素イオンを、対峙する酵素群を介して、配送管401(酸素供給のための配送管)から配送された酸素と結合させ、水を生成する。これとともに、電子伝達物質(多孔性の炭素棒等)を介して正電極を形成する。
【0092】
こうして、植物電池400は、正電極と負電極間に生成される電位差を電気エネルギーとして取り出す(例えば、電気として活用、電池に充電する、等)ことができる。
【0093】
また、植物電池400で生成されたグルコノラクトンは、配送管404(グルコノラクトンの配送管)により、水は、配送管402(水の配送管)により、代謝物採取コントローラー300に備わる第2の吸引ポンプ330や第3の吸引ポンプ340を用いて吸い上げられ、必要に応じた量だけ送水液タンク350に送水液210として貯蔵される。或いは、別途溶液に蓄えて、再利用される。なお、送水液タンク350には、透析機で透析された採取液200も貯蔵される。または、必要に応じた割合で混合貯蔵される。
【0094】
送水液タンク350の送水液は、第2の送出ポンプ370によって、採取管100の送入管102をへて植物に戻される。なお、植物に戻される送水液は、植物に適した成分、濃度(例えば、代謝物の濃度、酵素の濃度)や、量(例えば、代謝物の量、酵素の量)、植物体の体液(樹液)の液圧を考慮して、植物に送入される。また、送水液タンク350の送水液には、ミネラルや、タンパク、その他の栄養素を含んでいる。そして、送水液タンク350の送水液は、植物への送入ばかりでなく、他に利用してもかまわない。また、図示しないが、他で採取されたり合成された植物ホルモンやミネラルなどを混合してもかまわない。
【0095】
採取管100を介した植物からの採取量の調整、採取管100を介した植物への送入量の調整、植物電池400の起動、植物電池400からの吸引量の調整などは、各種センサーに接続されたコンピューターシステムによりコントロールされる。ここで、コンピューターシステムは、CPUと、メモリと、補助記憶装置と、入力装置と、出力装置と、通信装置と、各種センサーなどからなる。上記の各種調整などは、CPUが所定のプログラムを読み込み実行することにより構築される。そのため、記憶装置(メモリ)には、上記の各種調整などを実現するためのプログラムやデータテーブルなどが記憶されている。これにより、植物に適合した採取が可能となる(植物から効率よく代謝物を採取することができる)。
【0096】
なお、ここでは、酸素を使用した植物電池400を示したが、嫌気呼吸を利用した植物電池や、糖質だけでなく、アミノ酸や脂肪酸等エネルギーに変える方法もある。
【0097】
また、通常は、植物に採取管100を取り付ける際に、植物の切断部から樹液が出てくる。このとき、樹液が固まらない間に採取管100を植物に接合することにより、採取管100内部は、樹液で満たされる。そして、採取管100に樹液が満たされると、毛管現象、水の凝集力によって、植物と採取管100との間での代謝物のやりとりをスムーズに行えるようになる。水の凝集力を利用するには、細管103内に空気(水蒸気等を含む)が入らないようにするとともに、入った場合の対策として、起動時にポンプで吸い込む、押し出すコントロールが有用である。
【0098】
以下、本発明を、植物の種類に応じた実施例を用いて説明する。ただし、本願発明は、これらの実施例に制限されるものではない。
【0099】
<実施例1:ヘチマ水の採取方法>
従来から道管液を採取する方法として、ヘチマ水の採取方法がある。ヘチマ水(道管液)は植物の体液である。この道管の中を流れる液には、栄養となる無機塩類に加え、ホルモンやタンパク質や糖質などが含まれている。これらの有機物質は、根が作り出して道管の中へ分泌したものであり、植物体、特に地上部器官の生活に必須なものである。ヘチマ水や、カボチャ水は一本から約1リッター採れる。採取方法は茎を切り、切り口の茎を瓶などに刺し込み乾燥しないように覆いをすることにより、採取できる。1日ぐらいで出が悪くなるため、別の茎を切って瓶に切り口を刺すことをくり返す必要がある。
【0100】
このように現在のヘチマ水の採取方法は、ヘチマの茎を切断し、切り口から流れ出す道管液を取り出す方法といえる。また、この採取方法は、植物本体を痛めるとともに、切り口を植物が補修することによって道管液の流れを止めるまでの期間のみ有効とされる。そのため、一時的な採集方法と言える。
【0101】
道管液は、植物の道管の中を、主に根から地上部器官へと流れる液体である。維管束の構成要素の一つである道管は、プログラム細胞死した管状要素細胞の殻(細胞壁)が連なった管で、維管束内の柔組織細胞に囲まれた細胞外空間である。道管液は、根において土壌から吸収された水とミネラル(無機イオン類)に加え、根の細胞で合成・分泌されたアミノ酸(グルタミンなど)、植物ホルモン(ゼアチンリボシド、アブシジン酸など)、タンパク質(レクチン、アラビノガラクタンタンパク質など)、糖質(果糖、ブドウ糖など)などの有機物質を含んでいる。日中は蒸散によって、夜間は根圧(維管束内外のミネラル濃度差を埋めるために生じる維管束内に向かう水の圧力)によって主に輸送される。
【0102】
師管液は、植物の師管中を、主に葉(ソース器官)から芽や根、果実など(シンク器官)へと流れる液体である。維管束の構成要素の一つである師管は、核を失った師要素細胞が師板を通して連なった連続した原形質からなる管である。師管液の成分は、タンパク質や高濃度のショ糖、アミノ酸(グルタミン)などを含む原形質から成り、それらは原形質連絡を通して伴細胞から供給される。同化産物(ショ糖)の師管内の部位(シンク、ソース)による濃度差によって、主にソース器官(成葉)からシンク器官(根、果実、芽)へと輸送される。
【0103】
上述したように、道管液は主にミネラルの濃度差(浸透圧の差)により根から茎部方向に移動する。このことから、本実施例では、これらの成分を採取管100を通してコントロールすることによって、道管液の採取を行う。
【0104】
また、師管液は、師管内の部位(シンク器官とソース器官)に濃度差を生じることにより移動する。このため、本実施例では、主にシンク器官(芽や根、果実など)に採取管100を設けることにより師管液を採取する。
【0105】
<実施例2:葛から代謝物を採取する方法>
葛(クズ)は、植物分類上、マメ科ソラマメ亜科アズキ族クズ属に属する。越冬した多年生茎や株から出芽し始めてから梅雨前頃までは、茎の伸長は比較的緩慢である。しかし、梅雨期に入ってからしばらくすると、急激に伸長速度を早め、7月下旬〜8月上旬にピークに達する。その後8月中旬〜下旬の猛暑下では一時期伸長を休止する。
【0106】
このことは、群落の繁茂が極に達したため、群落内部に光不足とか、風通しの悪さなどで多くの枯死葉を生じ、また、当年生茎の成長が一時的に鈍り、そのため新葉の展開がわずかになることなどに原因があると考えられる。
【0107】
葛は、9月上旬より再び伸長が旺盛となり、10月上旬頃に停止する。その間8月下旬〜9月中旬に開花する。その後、11月上旬頃より逐次葉が黄化しはじめ、それとともに茎は先端より枯れはじめる。その間強い降霜に遭うと葉は全面的に萎えたようになり、その後黒褐色に変化し枯死する。茎は、葉の黄化と平行して株の方より表面が茶褐色を帯びて硬化し、木質化しはじめる。
【0108】
葛に類する多年草植物は、貯蔵器官に炭水化物を主体とする物質を貯えている。葛は主根に多量の炭水化物を貯蔵しているばかりでなく、越年した多年生茎にも少量であるが貯蔵物質を持っている。これらの貯蔵物質は春の生育初期に成長部へ送られて、新生器官の急速な成長を支えている。
【0109】
新生器官は貯蔵期間から送られてくる物質と、葉の光合成によってつくられるが、この物質が炭水化物である場合は、乾燥重量で貯蔵期間における物質減少量の約半分の新植物体がつくられることが分かっている。これを根拠に実験した結果、7月下旬までにつくられた当年生茎葉の約67%は、貯蔵物質によってつくられたことが分かっている。このことは、猛烈な葛の成長を大いに有利にしている根源であると言える。消耗してしまった多年生茎や根部には、8月以降当年生器官から同化物質が送り込まれ、これによって貯蔵器官の比重が急速に大きくなる。このようにして夏から秋にかけて貯蔵した物質を再び次の生育器官の形成に活用するという循環を繰り返す。
【0110】
葛の茎(つる)には当年生茎と多年生茎がある。葛の葉面積については、繁茂地での1個体の葉面積が10月時で約5〜8m2にもなる。
【0111】
葛の根系は株から地中深く発根している主根と、茎の節から発根している節根とがある。
【0112】
主根は地中深く貫通しているので、その形は中程の肥大した紡錘形をし、塊根ともいわれる。この紡錘体は株から1〜2本地中に進入し、さらにその紡錘体からやや細めの紡錘体をいくつか分岐して発根している。これらの主根は養分を多量に貯蔵しており、昔からこれを秋に掘り採って澱粉を製造する(いわゆる貯蔵根)。
【0113】
節根は主根のように大きくはないが、葛は葉数が多く蒸散の激しい植物であるので、水分を補給するため主根とともに葛の生育にとって重要な役割を果たしているものと考えられる。
【0114】
このようなことから、8月中旬〜下旬の猛暑下では一時期伸長を休止している期間は、養分をシンク器官が必要としていないと言うことができる。逆にこの間はシンク器官に接続した師管採取管からより多くの養分を採取できる期間とすることができる。
【0115】
また、8月以降当年生器官から同化物質が送り込まれることにより、主根に設けた採取管に依り、より多くの採取が可能となる期間となる。
【0116】
なお、葛でん粉は古くから葛から製造されている。それ以外にでんぷん粉は日本ではカラスウリ、ワラビ、カタクリ、ユリ、ヒガンバナなどからでん粉を取り出している。
【0117】
<実施例3:メープルシロップの採取方法>
メープルシロップは、極寒地に育つサトウカエデが冬、寒さを乗り切るために樹液の糖度を高め、甘くなっているところを、冬の終わり頃から春の初めにかけての6〜8週間のあいだに採取される。日中の気温が0度を超えるようになると気温の変動により樹木内で樹液の流れが作り出されるのでその時期に採取される。樹液の流れはその日のうちに止まってしまうが、夜になると今度は根から水分を吸収する。翌日気温が上がればまた樹液が出てくる。こうして樹液とともに冬の間に熟成された糖分を出しつくす。
【0118】
メープルが澱粉質を蓄積するのは木の成長期である。雪解けの頃、酵素の働きによってこの澱粉質は糖分に変り、根から吸い上げた水分と混じりあって、ほのかに甘い樹液になる。シロップ1L(リットル)を精製するためには樹液が40Lも必要となる。
【0119】
メープルシロップはカルシウム、カリウム、マグネシウム、リン、マンガン、鉄分などのミネラルやビタミンB2、B5、B6、C、PPなどが含まれ、健康食品にもなる。特にカルシウムは蜂蜜の15倍と豊富である。
【0120】
樹液の取り方は、ドリルで直径約1cm、深さ約5cmとなる穴を開け、バケツで樹液を受け取る。木を傷つけないように穴は3ヶ所まで、またどのようなサトウカエデでもよいのではなく、樹液を採取する木は樹齢100年以上、直径が25cm以上の木、採取量などが制限されている。
【0121】
また最近は地球温暖化の影響か、気温が高すぎるので、樹液が流れ出す、夜の気温が約マイナス4度、日中の気温が約4度から約9度という気温条件にならず、樹液が採れにくい。そのため、真空ポンプを使って樹液を採る方法も採られている。例えば、サトウカエデの木を全てビニールチューブでつなぎ、真空ポンプにつなげて樹液を集める方法がある。
【0122】
このような採取方法は樹木に損傷を与えているとともに、木の成長のもととなる栄養分の一方的な採取であるといえる。
【0123】
本実施例では、樹木の木部表皮付近の一部に採取管100を設け、樹木の表皮に採取管100の管継ぎ手部130に対応したくり抜き部を切り抜き、採取管100の管継ぎ手部130をくり抜き部にはめ込む。これにより樹木の表皮付近の道管や、師管の一部に管継ぎ手部130を介して、樹液が行き来できる。
【0124】
このように、本実施例では、樹木の機能を損なわないように樹木に採取管100を接続することによって樹液を採取する方法を提供する。また、木の自然の成長リズムに合わせた樹液の採取が採取弁の調整により可能であり、採取液の還元(樹液の戻し)も可能な方法である。
【0125】
<実施例4:薬草成分の採取方法>
植物成分には一次代謝物と二次代謝物があり、植物成分として存在感のあるのは有機化合物である。大半は炭素、水素、酸素、窒素から構成されるので、燃やせば二酸化炭素や水などになる。しかし、これらは全て生体内の物質代謝系によって創りだされるものである。植物に限らず生物の作り出す有機化合物を「代謝物(metabolites)」というのもそのためである。生物の代謝産物は大きく「一次代謝物(primary metabolite)」と「二次代謝物(secondary metabolite)」に分けることができる。
【0126】
一次代謝物とは、生体を維持するのに必須の物質群であり、各分類群に属する生物にとっては共通に存在するものである。例えば、DNA、RNA、蛋白質、炭水化物、脂質など高分子化合物およびその構成単位である核酸、アミノ酸、単糖類、脂肪酸はほとんどの生物にとって欠くことのできないものである。その他、高等植物に含まれる繊維質であるリグニン、セルロースも機械的組織の基本的要素であり、一次代謝物とされる。
【0127】
これに対して、一次代謝系から派生してできたもので、生物にとって必ずしも必須とは目されないものが二次代謝物と称されるものである。二次代謝物は各生物種によって個々かってに創られるのではなく、共通の前駆体があって一定の経路(生合成経路という)にしたがって生体内で酵素系の支配をうけて合成される。したがって、二次代謝物の生合成能を生物種固有の遺伝形質とみなすことができ、二次代謝物の化学的多様性は種の進化、分化とともに構築されてきた所産といえる。この地球上に蓄積された二次代謝物種類の多さは、生物多様性により生み出されたといえる。実際、二次代謝物の中には構造的に類似するものあるいは共通の部分構造を有するものがあり、それに基づいて多種多様な二次代謝物を分類することが可能である。有史以来、人類が薬として利用してきたのは膨大な化学ここでは二次代謝物を次の二つのカテゴリー、すなわち生合成経路に基づくもの(イソプレノイド、ポリケチドなど)、構造的には雑多なものでも共通の特性を有するもの(サポニン、タンニン、アルカロイドなど)として分類し説明を加えると、後者に関しては必ずしも明瞭なプロトコルに従って命名されているわけではなく慣用名というべきものが多く多様性のうちのごくわずかな部分にすぎない。
【0128】
採取管100による採取は、この二次代謝産物を対象とすることにより、多くの薬草成分等を、長期に渡り、植物から採取することができる。そればかりでなく、植物そのものの成分を強化する効果や、育成する効果もある。
【0129】
<実施例5:ミニトマトの果柄から代謝物を採取する方法>
「ミニトマト(サンチェリーエキストラ)の果柄で木部流量を測定し、夜間から早朝にかけて果実に水が流入し、昼間には果実から水が流出することを観察した。この結果から、裂果は、夜間から早朝にかけての水の果実への流入が果肉細胞を肥大させ、その圧力によって生じるものと推論している。そして、暗期における葉からの蒸散の促進は裂果の発生を抑制することを見出した。メロン果実の重量変化速度と果実ヘの木部流速度がほぼ平行関係にあること、昼間に水ストレスが強い場合には果実から茎葉に向かって水が逆流することを明らかにした。マンゴー花序の花梗部で蒸散流を測定し、花序での蒸散流は日射や飽差にあまり影響されないことを見ている。また、マンゴー果実の果柄では夜間に果実への水の流れを、枝での蒸散流が増大した昼間には果実から枝梢への流れを認め、これは収縮と肥大を繰り返す果径の日変化とよく一致した。」との報告がある。
【0130】
また、「トマトを用い、側枝2本から根系を発達させ、それぞれを、乾土側と湿土側として、両者の間の水移動を調べた。このような場合、土壌が極端に乾燥すると夕方から早朝に掛けて、最大約10ccの水が乾土側へ移動するのを見出している。またトマトを栽培した南北高畦(あぜ)において、東側と西側からの根の水の吸収量の日変化を調べ、吸水において東面が有利な環境にあることを見出した。茎内木部流の測定から夜間においても根が水を吸収していることも確認している。」との報告もある。
【0131】
これらのことから、植物個体全体を一つの巨大な「多核体」とみなした場合に、植物の一カ所で乾燥が起こると、他の部分の水分がその部分を埋めようと作用が働いているととれえられる。また、水分ばかりでなく養分も同じであると考えられる。その様子は、植物個体全体が均一な溶液となるため、水分や養分が拡散現象による拡散するといえる。
【0132】
このようなことから、植物個体の一部(果枝、茎、根)部分で溶液をコントロールすることにより、植物個体全体をコントロールすることが可能といえる。
【0133】
また、りんごは果肉内の余分な水分を外に出そうとする。そのとき、気温が低くなると、りんごの実に水滴がつくようになる。この水滴によって実から水分が出にくくなり、結果的に蜜ができやすくなる。
【0134】
これらのことから、本実施例では、道管や師管の圧力(例えば、液圧)をコントロールすることにより、果実の肥大化の調節や、裂果の発生を防ぐこと、そして、水分や養分(成長ホルモンなど)の量をコントロールする。その結果、果実の生育時期や、大きさ、甘み(味)などをコントロールしたりすることも可能となる。このため、代謝物質の抽出から得られる物質の変化ばかりでなく、本代謝物採取コントローラー300を設置した植物から得られる、植物本体(例えば野菜)や果実の含有する代謝物質をコントロールしたり、花の開花を調整したりすることが可能である。すなわち、本代謝物採取コントローラー300は、採取した代謝物の一部や、他で得た植物ホルモンなどを混合して、植物本体に戻すことにより、植物の状態をコントロールし、植物本体(野菜等)や果実の出来(味や、形状など)、そして、採取代謝物をコントロールするものである。
【0135】
以上、いくつかの植物に対して、本願発明を適用した例を説明したが、これに限らず、植物の種類、形態、性質、採取したい成分、などに応じて、本願発明を適宜、適用することができる。
【符号の説明】
【0136】
1・・・植物、1a・・・成長した植物、2・・・幹、10・・・植物体代謝物採取システム、11・・・果実、12・・・果柄、20・・・師管細胞、21・・・伴細胞、22・・・師板、23・・・師域、24・・・道管、30・・・茎、31・・・根、32・・・芯部、33・・・空間、34・・・分かれ目、100・・・採取管、100a・・・道管用の採取管、100b・・・師管用の採取管、101・・・吸収管、102・・・送入管、103・・・細管、104・・・先端(部)、104a・・・膨らんだ採取管先端部、104b・・・多孔質採取管先端部、105・・・浸透膜、106・・・多孔質部、107・・・送入液孔網、110・・・採取タンク、110a・・・道管用の採取タンク、110b・・・師管用の採取タンク、111・・・貯蔵・濃縮タンク、115・・・蛇口、120・・・透過膜、130・・・管継ぎ手部、140・・・分岐部、150・・・くり抜き部、160・・・挿入管、170・・・海綿体、180・・・カバー部、190・・・電動弁、200・・・採取液、201・・・採取液の流れ、204・・・伴細胞と細管間の流れ、205・・・幹と細管間の流れ、206・・・導管継ぎ手部の流れ、207・・・細管と海綿体間の流れ210・・・送出液、211・・・スリーブ部、212・・・保護スリーブ、300・・・代謝物採取コントローラー、310・・・第1の吸引ポンプ、320・・・半浸透膜、330・・・第2の吸引ポンプ、340・・・第3の吸引ポンプ、350・・・送水液タンク、360・・・第1の送出ポンプ、370・・・第2の送出ポンプ、400・・・植物電池、401・・・酸素の配送管、402・・・水の配送管、403・・・グルコースの配送管、404・・・グルコノラクトンの配送管、410・・・セパレータ、500・・・密着テープ
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物体代謝物採取方法に関する。
【背景技術】
【0002】
植物から代謝物を採取する方法がある。例えば、ヘチマの茎を切断し、切り口から流れ出す道管液を採取することによって、ヘチマ水を採取する方法がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、茎を切断されたヘチマは、切り口を自発的に補修する。そのため、上記の方法では、切り口が補修されるまでの一時的な期間にしか代謝物を採取できない。
【0004】
本発明は、植物の代謝物を従来よりも長期的に採取可能にする技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための本願発明は、植物の木部(道管)および篩部(師管)の少なくともいずれかに採取管を接続し、植物の代謝物を当該採取管から採取する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】本発明の一実施形態が適用された植物体代謝物採取システムの概略構成図、及び、植物から代謝物(栄養素)を採取する方法について説明するための説明図である。
【図2】採取管の接続部に透過膜を設けることによる効果を説明するための図である。
【図3】果柄に採取管を接続する場合の概要を示す図である。
【図4】ツタ類の茎の切断面に採取管を接続する場合の概要を示す図である。
【図5】根に採取管を接続する場合の概要を示す図である。
【図6】枝の分かれ目に採取管を接続する場合(接ぎ木方式)の概要を示す図である。
【図7】接ぎ木方式での接続に用いる採取管の外観を示す図である。
【図8】樹木木部の表皮付近の一部に採取管を接続する場合の概要を示す図である。
【図9】樹木木部の表皮付近の一部に採取管を接続した場合における、代謝物(道管液)の流れを概念的に示す図である。
【図10】代謝物採取コントローラーの概念図である。
【図11】植物電池の概念図である。
【図12】樹木木部の表皮の一部に接続する採取管の外観を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本願発明は、植物の木部(道管、仮道管)および篩部(師管)の少なくともいずれかに採取管を接続し、植物で生成された代謝物を採取する方法についての発明である。以下、具体的に説明する。
【0008】
<概要>
植物には、植物体の全体にわたってその内部を貫く維管束を有するものがある。維管束は、物質の輸送を役割とする木部、篩部などからなる。
【0009】
木部には道管(導管)がある。道管は「節を抜いた竹」のように道管要素が管状に連なることで形成されており、水と水に溶解したイオンの輸送路となる。道管要素は、原形質膜と細胞質のほとんどを失った「死んだ細胞」である。道管要素には木部柔組織細胞が密着していて、その原形質膜を介して道管要素との間で、水と水に溶解したイオンのやり取りを行う。
【0010】
小型の道管要素は、細胞膜、核、細胞質が失われた「死んだ細胞」であるが、元は分裂組織から分化してきた細胞自身である。
【0011】
成熟した道管要素には、二次細胞壁が肥厚して多量のリグニンが沈着している(木化)。道管要素と道管要素との間の一部の細胞壁は失われ、節を抜いた竹のように、道管要素が管状に連なる。
【0012】
また、仮道管(仮導管)も導管要素と同じようなはたらきをするが、細胞同士を仕切る薄い細胞壁が残り、水溶液は、仮道管から仮道管へと細胞壁を透過して移動する。被子植物の多くは道管・仮道管の両方を持つが、シダ植物・裸子植物・少数の被子植物ではつながった仮道管のみが水溶液の上昇路となる。
【0013】
一方、篩部には師管(篩管)がある。師管は師管要素が連なることで形成されており、主に同化産物の輸送路となる。師管要素は、師管細胞と伴細胞(コンパニオンセル)よって形成されている。師管細胞同士は大形のプラスモデスム(原形質連絡)による小孔が存在する「師板」を介して連絡しており、水溶性の同化産物の輸送を行う。師管細胞は、核や細胞質の多くを失ってはいるものの生きた細胞であり、師管細胞自身の代謝に必要な物質を伴細胞に依存している。
【0014】
なお、プラスモデスムには、一次プラスモデスムと二次プラスモデスムとがあり、それぞれ通過させることのできる物質の大きさ(通過限界分子量)、構造、由来ともに異なる。
【0015】
一次プラスモデスムは、細胞分裂終期の細胞板形成の際に積極的に形成される構造体であり、通過限界分子量は組織の部位によっても異なる。
【0016】
一方、二次プラスモデスムは、細胞分裂後から積極的に細胞間に形成されるものである。二次プラスモデスムの形成の例としては、植物個体における「接ぎ木」などがある。
【0017】
二次プラスモデスムは、既存の細胞壁が酵素的に分解された結果形成されたものである。植物個体はそれ自身の「あるべき姿」を想定して酵素的に(すなわち遺伝子を発現させて)二次プラスモデスムを形成させていると考えられている。また、植物では、プラスモデスムが存在することにより、植物個体全体を「1つの多核体」としてとらえることができる。
【0018】
ところで、植物の木部(道管)や篩部(師管)に採取管を接続する場合には、その採取管を植物体の一部として植物に認識させるように接続(以下では「癒合接続」とよぶ)するのが好ましい。
【0019】
木部(道管)は、上述したように原形質膜と細胞質のほとんどを失った「死んだ細胞(木化状態)」であるため、木部に採取管を癒合接続する場合には、液漏れや乾燥さえ対処すれば接続可能である。
【0020】
一方、篩部(師管)は、上述したように師管細胞同士が「師板」を介して連絡しており、生きた細胞であるため、篩部に採取管を癒合接続する場合には、師板に相当する透過膜、又は、吸収管を、篩管と採取管の間に設ける必要性がある。仮に、この透過膜や吸収管を設けずに採取管を篩管に接続すると、植物による拒否反応の起因となり得る。
【0021】
ところで、2つの植物(穂木と台木)の切断面を接着して1つの個体とする接ぎ木の技術を用いれば、遺伝的に異なる部分から構成されている1つの個体を作ることができる。例えば、カボチャとキュウリの接ぎ木、スイカとカボチャの接ぎ木など、さまざまな種類の植物同士を、同化させて接着することができる。
【0022】
そのため、このような接ぎ木の技術を用いれば、採取管を植物に癒合接続することもできる。例えば、採取管と植物の接続面(少なくとも採取管の先端部分)に、植物がもつ植物性ホルモン(タンパク質、ペプチド、等)を混入することにより、採取管と植物の癒合(同化)を促進させることができる。また、採取管の周囲に植物性ホルモンを塗布して、または、接着材として、癒合(同化)を促進させてもよい。
【0023】
なお、動物の体内などにおいては、独立性の高い動物細胞同士が接着して、組織、個体を形成している。動物細胞の細胞接着では、デスモソーム(desmosome)、ヘミデスモソーム(hemidesmosome)など、細胞接着のための構造体が介在する。
【0024】
これに対して植物では、もともと個体の全ての細胞が連続性のある細胞壁によってつながれており、細胞接着のための構造体は存在しない。また、上述したように、植物では、細胞膜を貫通する原形質連絡(プラスモデムス)という構造によって細胞同士の原形質が一部共有されている。このような点からも、植物体全体が1つの巨大な多核体としての性質をもっているといえる。
【0025】
しかし、植物の遊離単細胞が集塊を形成する場合には、動物細胞における細胞接着のように、何らかの方法で細胞同士が結合しているはずである。
【0026】
例えば、プラスモデスムは、隣り合う細胞相互間における架橋構造を提供し、細胞分裂により両細胞が同化するように隙間を埋める(細胞同士を結合させる)働きをしていると考えられる。
【0027】
また、維管束系をなす道管要素間に存在する二次プラスモデスムは、既存の細胞壁が酵素的に分解を受けたことによって生成された構造体である。しかし、上述したように、道管要素は、原形質膜、核、細胞質のほとんどを失った「死んだ細胞」であるはずで、自らセルラーゼあるいはペクチナーゼの生合成は不可能である。従って、道管要素の細胞壁の一部を分解し、二次プラスモデスムを形成させた酵素群は、別の細胞に由来したものと考えられている。
【0028】
このようなことからも、植物における酵素の役割は重要であるといえる。例えば、酵素のコントロールは、細胞接着や植物の成長促進につながる。また、代謝物を採取する対象の植物の健康状態、代謝物(二次代謝物を含む)の生産量、代謝物の成分などの調整を行うことも、細胞接着や植物の成長促進につながる。
【0029】
ところで、植物は太陽の光を受け、光化学反応により光合成を行っている。光合成によって生成された糖は、いわば太陽エネルギーが化学エネルギーに転換された形といえる。糖はさらに高分子の多糖類、脂質、その他物質の合成のための原料となる。また、これと同時に酸化されて、そのエネルギーは生物に利用可能なアデノシン三リン酸(ATP)という形に変えられる。このような過程(化学反応)が分子状の酸素を用いて効率よく行われる場合、「呼吸」とよばれる。また、このような有機化合物の合成と分解の過程(化学反応)を「代謝」とよび、酸素によって触媒される。
【0030】
光合成によって生成されたグルコースは、部分的には細胞によって分解され、再び水と二酸化炭素になる。このとき得られるATPのエネルギーは、グルコースを原料とした原形質成分、細胞壁成分、脂質などの貯蔵物質の合成に用いられる。呼吸によって生じたエネルギーは、このような合成的な仕事のほか、浸透的な仕事(物質の呼吸など)にも用いられる。こうして、生物特有の遺伝情報の保持、発現などが可能となる。
【0031】
なお、上述したATPは、植物細胞、あるいは生物の細胞一般における代謝でのエネルギー転換において重要な役割を果たす物質である。ATPは加水分解すると大量のエネルギーを放出する高エネルギーリン酸化合物の1つである。ATPは、細胞内でいろいろな生化学的な反応に関与して加水分解するため、エネルギー熱として放出されず、それらの生化学的な反応の遂行に利用される。従って、ATPは、生体反応において利用可能な化学エネルギーであるといえる。
【0032】
また、呼吸の過程では、「グルコース→ピルビン酸→水+二酸化炭素」となる。「グルコース→ピルビン酸」の過程では酸素を必要とせず、この化学反応を「無気呼吸」または「嫌気呼吸」または「解糖」とよぶ。また、「ピルビン酸→水+二酸化酸素」の過程では、分子状の酸素を必要とし、この化学反応を「好気呼吸」などとよぶ。また、この化学反応は、<1>クエン酸回路(TCA回路)の反応、<2>電子伝達、<3>ATP生成、の3段階に分けられる。ところで、発芽初期など、植物細胞では酸素を消費しないでグルコースを分解する反応(解糖と同じ反応)もあり、特に「発酵」とよばれる。発酵の際には、乳酸のほかエタノールも生産される。
【0033】
なお、上記のような呼吸におけるエネルギー変換効率は、{(36分子×7.3kcal)/686kcal}×100=38%であり、熱機関を用いたエネルギー変換効率よりもはるかに効率がよい。
【0034】
ところで、植物は空気中ではアルコールや乳酸を蓄積しない。しかし、ピルビン酸は嫌気呼吸でも好気呼吸でも合成されるため、嫌気呼吸と好気呼吸のはじめの段階は同じである。すなわち、好気呼吸と同じく、嫌気呼吸の生成物も植物では二酸化炭素である。また、リン酸化は嫌気呼吸、好気呼吸のいずれの場合にもおこる。
【0035】
また、クエン酸回路の反応で遊離した水素はイオン化し、電子はチトクローム系を経て酸素に渡される。このような酸化還元反応においては、電子圧の低い物質(すなわち陰性の物質)から電子圧の高い物質(すなわち陽性の物質)へと電子が流れる。ここで、電子圧の低い物質は、電子供与体とよばれ、いわば還元剤である。また、電子圧の高い物質は、電子受容体とよばれ、いわば酸化剤である。また、電子供与体には固有の電子圧があり、電子受容体には固有の電子親和力がある。これらの電子圧や電子親和力は、起電力(すなわち電位)で測定できる。なお、それぞれの物質について標準状態で測定されたときの電位を標準還元単位とよぶ。
【0036】
また、好気呼吸をする植物など真核生物の細胞は、ミトコンドリアを有している。そして、ミトコンドリアによって、クエン酸回路と呼吸鎖の反応、酸化的リン酸化が行われる。ミトコンドリアは、長さ0.4〜5μm、厚さ約0.3〜0.8μmの楕円形に近い形をしている。1つの細胞には、数個から数千個のミトコンドリアが存在する。ミトコンドリアは、クエン酸回路や電子伝達系の酵素を含み、また、前核生物型のDNA及びリボソームを備え、自己増殖的な性質をもつと考えられている。
【0037】
植物細胞における呼吸速度は、原形質の状態、呼吸酸素の活性、呼吸基質の供給などに依存しているが、これらの内的要因は、外的要因によって著しく影響される。外的要因としては、温度(30〜40℃で最大)、酸素分圧(0.2気圧:ただし20〜25%の酸素濃度)などがある。
【0038】
ところで、植物における呼吸によって放出される二酸化炭素の容積と、吸収される酸素の容積の比(すなわち「二酸化炭素の容積/酸素の容積」)を、呼吸商(RQ値)とよぶ。種子が発芽するとき、種子の種類や発芽後の時間によって呼吸基質が異なるため、呼吸商は著しく変動する。
【0039】
また、光合成産物であるグルコースは、スクロースの形に変わって転流する。グルコースを原料とする植物の重要な貯蔵多糖類はデンプンであり、構造多糖類は細胞壁多糖類である。これは糖のリン酸化によって変換される。
【0040】
糖の変換における重要な代謝経路の1つにペントースリン酸経路(PPP)があり、これは多くの点で光合成の暗反応に似ている。ペントースリン酸経路は、葉緑体の外側、すなわち細胞質中におこり、酵素も細胞質中に可溶な形で存在している。
【0041】
ところで、上記の光化学反応では、光エネルギーによる電子の励起およびそれに伴う電子伝達によってATP生成が行われる。光合成反応は植物および一部の細菌(光合成細菌:シアノバクテリア、紅色硫黄細菌など)のみが有する。酸素発生型光合成の場合には、水が電子供与体として使用される。また、酸素非発生型光合成の場合には、硫化水素、水素をはじめいくつかの有機化合物(プロパノールなど)が電子供与体として利用される。
【0042】
カルビン回路(カルビン−ベンソン回路)は、光合成反応における代表的な炭酸固定反応である。ほぼ全ての緑色植物と光合成細菌がこの回路を所持している。
【0043】
光化学反応により生じたNADPHおよびATPが駆動力となって回路が回転し、最終的にフルクトース−6−リン酸から糖新生経路に入り、多糖(デンプン)となる。この回路の中核である炭酸固定反応を担うリブロースビスリン酸カルボキシラーゼ(RubisCO)は地球上に存在するもっとも量の多い酵素であると言われている。
【0044】
また、反応自体は光がなくても進行するため、光が不可欠な光化学反応(明反応)と対比して暗反応ともよばれる。ただし、反応にかかわる酵素のうち、RuBPカルボキシラーゼ等やホスファターゼ等の複数の酵素は光によって間接的に活性化されるため、暗くなると数分のうちに活性を失う。
【0045】
電子伝達が起こっているのは明反応である。光合成の明反応では、光によって励起された電子が光化学系を伝達されていくときに、水素イオンをチラコイド内腔へ輸送するとともに、NADP+を還元してNADPHをつくる。光のエネルギーを利用して水から電子を引き抜き、その結果、酸素が発生する。
【0046】
一方、ミトコンドリア内膜ではNADHの酸化に引き続き、電子伝達が起こる。電子伝達(連続的な酸化還元反応)によるエネルギーを利用して、水素イオンをミトコンドリアの基質から内膜の外側に輸送する。その結果、ミトコンドリア内の膜の内外には水素イオンの濃度勾配ができる。水素イオンは電荷を持っているので電位差も同時に生じる。電子伝達が起こるので、この一連の反応(あるいは反応を担う酵素群)を「電子伝達系」とよぶ。電子の最終的な受取手は酸素であり、その結果、水ができる。
【0047】
上述したATPは、DNAの構成要素であるアデノシンにリン酸を2つ余計に取り付けたもので、ADPとリン酸が酵素の働きで結合したものとも言える。
【0048】
炭水化物、タンパク質、脂肪を摂取した体内で消化吸収された分子は三つの段階(解糖、クエン酸回路、電子伝達)を経てエネルギー源となるATPがつくられる。三つの段階のうち、解糖は細胞質の液状の部分(細胞質基質、マトリックス)で行われ、クエン酸回路は細胞内のミトコンドリアのマトリックスで行われる。また、電子伝達は、ミトコンドリアの内膜で行われる。
【0049】
ATPを作り出す前駆体の電子伝達系タンパク質にはいくつかのタンパク質複合体がある。エネルギー源となるATPを作り出す最大の原資は炭水化物が分解されたグルコース(ブドウ糖)である。グルコースは分解されてピルビン酸となり、アセチルCoAを経てクエン酸回路に入る。ピルビン酸は酸素なしで二分子のATPを作り出す。呼吸鎖と連結したトリカルボン酸回路の反応で、ピルビン酸は完全に酸化され、二酸化炭素、水ができるとともに、強力なATP化を促進する。
【0050】
栄養素は段階を経るほどエネルギー生産効率が高くなるが、橋渡しする物質なくしては、その原資もすべての段階を経由できるとは限らない。ATP生産には電子伝達が重要であり、電子伝達で活躍する電子のメッセンジャーといわれるユビキノン(補酵素Q10)がある。
【0051】
細胞壁の主成分はセルロースで、若い細胞では、細胞壁の25%から35%を占め、木材では、約50%に達する。なお、セルロースは、光合成でできたグルコースが鎖状につながった高分子である。また、細胞壁は、セルロースの他に、分解されやすいヘミセルロースやペクチンなどを含んでいる。新しい細胞は、セルロースとヘミセルロースの繊維からなる1次壁によって包まれている。セルロースを分解して消化するためには、セルラーゼと言う酵素が必要である。草食動物はセルロースを分解するが、自分自身でセルラーゼを合成しているのでは無く腸内にいる微生物がセルラーゼをもっており、これが分解している。植物自体にもセルラーゼがあり、必要な場合にはセルロースを分解する。例えば落ち葉のために基部に離層を作るときに使われるので、この時期は生成が多くなると考えられる。
【0052】
DNAの複製をするときは、その二重らせんをほどいてそれぞれの配列を鋳型にして、もう一本の塩基配列を作る。末端のプライマー付着の余裕を持たせ、DNAの末端部には無意味なテロメア配列が繰り返される。
【0053】
テロメアは分裂と共に短くなる。しかし、それでは生物はいずれ絶滅してしまう。そこで、テロメアを再生するために生物にはテロメラーゼという酵素がある。植物の染色体でも末端にテロメアがある。そして花粉を作る組織以外の分裂細胞でもテロメラーゼが発見されているが、花粉を付ける開花時期にはテロメナーゼの生成が多くなると考えられる。
【0054】
一方で、例えば、ある植物がほかの植物の陰に生えてしまい、その陰からどうしても抜け出せないときには、植物は成長を早めの切り上げて、花を咲かせ、種子をつくって次の世代に可能性をつなぐ、という戦略をとる。これはFT遺伝子が働くことを抑制していた「枷」を外すことにより早咲きできる。
【0055】
これらのことより、本発明は、植物の光合成に生成される多糖(デンプン)やグルコース(ブドウ糖)を、採取管から採取する。そして、呼吸系で行われるミトコンドリアの役割を採取コントローラ装置内行う。また、採取コントーラー装置は、装置内で生成された生成物を植物に戻すことにより、植物のシンク器官として機能する。
【0056】
そればかりでなく、本発明は、セルロースを分解するセルラーゼやテロメラーゼ、植物ホルモンとして、ジベレリン、サイトカイニン等の酵素の採取、及び植物に戻すことも可能である。また、採りだしたグルコースをもとに植物電池として、クエン酸回路の一部や、クエン酸回路の一部の組み合わせにより電力を得る。さらに、アルコール発酵、乳酸発酵を起こしアルコールや乳酸を得る。
【0057】
<実施形態の例>
以下、本発明の実施形態の一例を図面を参照して説明する。
【0058】
動物の世界において、乳牛(ホルスタイン)は分娩後から牛乳が出る。その後、乳牛は、牛乳を搾り続けることにより、牛乳を出し続ける。これは、本来、子供に与える牛乳を、人間が搾り続ける行為により、乳牛の身体は、子供に必要とされているとみなして牛乳を出し続ける。
【0059】
実際には、1回の分娩後、牛乳を搾り続けることができる期間は、10ヶ月位が限度であるが、次の分娩で再度繰り返される。一方、子牛は2ヶ月程度で離乳される。
【0060】
植物の世界では、植物に果実を付ける植物が多くある。果実は、植物の根や葉の光合成によって作られた栄養分をもとに成長する。
【0061】
果実を実らせる際、成熟前の果実を果柄から外し、本来果実に与えられる栄養分(代謝物質)を採取し続け、あたかも果実が要求しているかのごとく振る舞うことにより、植物本体は果実に栄養分を送り続けることになる。ただし、その期間や量には限度があり、経済的効果を考慮して植物の種類や品種を選別し、より有効性の高い植物を対象とすることが必要とされる。
【0062】
また、春に芽吹く植物において、新芽が延びる際に、新芽に対して栄養分(代謝物質)が葉や根などから送られ続ける。新芽が成長を続ける間はこの栄養分が送られ続けることになる。
【0063】
図1は、本発明の一実施形態が適用された植物体代謝物採取システム10の概略構成図、及び、植物から代謝物(栄養素)を採取する方法について説明するための説明図である。
【0064】
まず、図1(a)から図1(b)に示すように、成熟前の果実11の果柄12を痛めないように、果実(例えば、ミカンの実)11が取り外される。次に、図1(c)に示すように採取管100が果柄12の先端に取り付けられる。このとき、果柄12に採取管100が確実に取り付けられることにより、接続部の乾燥を防ぐことができる。また、接着細胞を促すために、タンパク質を含有または合成した部材(例えば、成長ホルモンや酵素)が接続部に使用(例えば、塗布)されてもよい。また、果柄12と採取管100を確実に取り付けるために、接続部の外側に柔軟性のある保護テープ等が巻かれてもよい。
【0065】
採取管100の方端(先端の反対端)には、採取タンク110が設けられる。採取タンク110は、植物から採取した採取液を貯蔵する。また、採取タンク110には、貯蔵された採取液を抽出するための蛇口115が設けられる。なお、道管、師管のそれぞれから採取した採取液を分離して貯蔵するために、道管から採取した採取液を貯蔵する道管用の採取タンク110aと、師管から採取した採取液を貯蔵する師管用の採取タンク110bと、が別個に設けられてもよい。ただし、本発明は、これに限定されず、少なくとも道管及び師管のいずれかから代謝物(栄養素)を採取すればよい。
【0066】
採取管100の先端には、師管細胞20の師管にある師板22や師域23に相当する透過膜(半透膜、逆透過膜を含む)120が設けられる。この透過膜120には、透過小孔が設けられ、背後(採取タンク110側)には、海面状の海綿体170などで隙間が埋められる。これにより、浸透効果を損わない接続が可能となる。
【0067】
図2は、採取管100の接続部に透過膜120を設けることによる効果を説明するための図である。図2(a)に示す例では、一列の上下の師管細胞20と伴細胞21、師板22、師域23を示している。また、図2(b)に示ように、師管を切断すると、師管や伴細胞21の切断面には師板22が存在しない。そのため、師管や伴細胞21の切断面に採取管(細管)100を、直接、接合すると、代謝物の浸透がうまくできなくなる可能性がある。そこで、本発明では、図2(c)に示すように、師管や伴細胞21の切断面と採取管(細管)100との間に、浸透膜120を挿入し、本来持つ師管の浸透効果を損なわないようにしている。
【0068】
図1に戻り説明する。図示するように、採取管100の内部には、貯蔵タンク110に
代謝物を導くために、複数の細管を組み合わせた構造や、複数のファイバーを束ねた構造が設けられる。これにより、代謝物や液の浸透や毛管現象を促進することができる。また、採取管100には、代謝物の採取量を調節するための電動弁(電磁弁や逆止弁でもよい)190を設けてもよい。また、採取管100には、時期や時間帯や気候などに応じて代謝物を植物(道管、師管など)に戻すための吸引、逆送モーターを設けてもよい。
【0069】
また、植物は、根圧以外に、蒸散による水分子同士がくっつき合う凝集力により水を運ぶ。この蒸散による凝集力を利用し、採取管100の一方に蒸散機能を設け、途中分岐点から代謝物を採取してもよい。
【0070】
図示していないが、採取管100は、風や雨等で植物(道管、師管など)から外れにくくするために、バンドやテープ等で固定される。
【0071】
図3は、大型の樹木(椰子、パパイヤ等)の果柄12に採取管100を接続する場合の概要を示す図である。図3(a)から図3(c)に示するように、果実11の果柄12を痛めないように、果実11が取り外され、果柄12に採取管100が接続される。また、図3(d)に示すように、採取管100は、内部に植物(ソース器官)から代謝物などを抜き取るための管(以下では「吸収管101」とよぶ)と、採取タンク(シンク器官)110から植物に代謝物などを戻す管(以下では「送入管102」とよぶ)と、の2本の管を備える。もちろん、道管、師管のそれぞれに同様の採取管(道管用の採取管100a、師管用の採取管100b)100を接続し、計4本の管を植物1(果柄12)に接続するようにしてもよい。
【0072】
図4は、カボチャ、ヘチマ、葛などのツタ類の茎30の切断面に採取管100を接続する場合の概要を示す図である。図4(a)から図4(b)に示すように、植物1の茎30が切断され、その切断面に採取管100が接続される。図4(c)に示すように、採取管100の内部は、管が二重化された構造となる。すなわち、道管用の採取管100aの中に、師管用の採取管100bが挿入された構造となる。もちろん、ツタ類の茎30に採取管100を接続する場合に限らず、果柄12などに採取管100を接続する場合にも、同様の構造を有する採取管100を用いてもよい。
【0073】
図5は、根(例えば、葛、サツマイモ、レンコン、ジャガイモ)31に採取管100を接続する場合の概要を示す図である。図5(a)から図5(c)に示すように、地下茎や根31は、芯部32を残すように表皮が剥かれ、採取管100が接続される。また、接続部は、風や雨等で採取管100が移動しないように、地面に埋められる。また、地下茎や根31が地中で成長(伸び)しても採取管100が外れないようにするために、地面中に空間33を持たせ、根31と採取管100が一緒に移動可能にするとよい。
【0074】
図6は、枝の分かれ目34に採取管100を接続する場合(接ぎ木方式)の概要を示す図である。図6(a)、図6(b)に示すように、採取管100は、若芽に接ぎ木をするように、枝または葉の分かれ目34に割って接続される。また、図6(c)に示すように、採取管100の先端104の接続部は、楔状とし、成長による肥大化に対処するため(図には、成長した植物1aを示している)、柔軟性を有する素材(延びる素材)で構成される(104a)。また、細管103も延びる素材で構成し、各細管103の間隔も広がる構造としてもよい。なお、その接続部は、テープなどで固定されるとよい。
【0075】
図7は、接ぎ木方式での接続に用いる採取管100の外観を示す図である。採取管100の先端(先端部)104は、図示するように、細管103がスリーブ部211でまとめられる。接ぎ木と接続部分を密着させるために、保護スリーブ212が設けられる。一部の細管103は、吸収管101に導かれ、採取タンク110に代謝物を供給する。一方、残りの細管103は、送入管102に導かれ、採取タンク110からの代謝物を植物に戻す。各細管103は、中空の管でもよいし、ファイバーを束ねたもの(ファイバー間で代謝物が行き来可能なもの)でもよいし、浸透性(吸収性のよい)繊維や不織布であってもよい。また、各細管103の先端付近を透過膜(半透過膜、逆透過膜を含む)120で覆ってもよい。また、スリーブ部211内において、細管103と吸収管101の接続部分や、細管103と送入管102の接続部分に浸透膜(透過膜120)を封入してもよい。
【0076】
図8は、樹木木部の表皮付近の一部に採取管100を接続する場合の概要を示す図である。図8(a)から図8(b)に示すように、採取管100は、管継ぎ手部130と分岐部140から構成される。樹木の幹2の表皮には、採取管100の管継ぎ手部130に対応したくり抜き部150がくり抜かれる。そして、採取管100の管継ぎ手部130がくり抜き部150にはめ込まれ、密着テープ500でとめられる。これにより、管継ぎ手部130を介して、樹木の表皮付近の道管や師管の一部を代謝物が行き来できる。
【0077】
管継ぎ手部130の移植がスムーズに快復後(管継ぎ手部130が道管や師管として機能した後)に、分岐部140から代謝物が採取される。
【0078】
管継ぎ手部130は、細管103の束が上下方向に密につながり、それぞれの細管103は、分岐部140で外管(挿入管160)に接続される。ここで、各細管103は、2系統に分岐(分類)される。例えば、各細管103は、道管、師管といった2系統に分岐(分類)されてもよいし、吸収管101、送入管102といった2系統に分岐(分類)されてもよい。また、各細管103は、1系統でまとめられてもよい。この場合には、樹木木部の複数箇所に同様の採取管100がくり抜き部150にはめ込まれ、一方の採取管100を道管用の採取管100aとし、他方の採取管100を師管用の採取管100bとする。
【0079】
図9は、樹木木部の幹2表皮付近の一部に採取管100を接続した場合における、代謝物(道管液)の流れを概念的に示す図である。図は、管継ぎ手部130が樹木表面のくり抜き部150から遊離した状態で示されている。図示するように、採取管100の先端部(管継ぎ手部130)には、細管103が縦方向に配されており、挿入管160側に海綿体170が設置される。細管103を行き来する代謝物は、海綿体170を介して、挿入管(外管)160に至る。
【0080】
細管103は、外壁に浸透性を有する小孔が設けられたパイプ状の管である。樹木の道管の樹液(代謝物を含む液)は、道管と細管管103間の流れ205を経て、管継ぎ手部130の流れ206方向(上下)に流れるとともに、樹木の伴細胞と細管103間の流れ204方向と、細管103と海綿体170の流れ207方向にも樹液が流れる。
【0081】
採取管100の先端はカバー部180で覆われており、樹木に接続された状態において接合部の乾燥や樹液漏れを防ぐ。
【0082】
また、図示していないが、採取管100を樹木に埋め込んだ後(接続後)に、カバー部180表面と樹木をテープ等で貼り付けて(接着して)もよい。
【0083】
また、細管103は、ファイバー状の管を束ねたもの、不織布、海綿体など、上下方向および左右方向に浸透性のあるものに代えてもよい。
【0084】
なお、本実施形態では、樹木の表皮部分を採取管100の接続対象としているが、樹木の芯に向かってくさび形に切り込み部を設け、切り込み部の形状に対応した採取管100をその切り込み部にはめ込むように接続してもよい。
【0085】
例えば、図12は、採取管100の先端(先端部)104を、多孔質部106とした多孔質採取管先端部104bで構成した採取管100を示す。カバー部180の内側には、多孔質材で構成した多孔質部106が設けられるとともに、多孔質部106の内部と送入管102に代謝物を行き交わせる溝として、送入液孔網107が設けられる。多孔質材はセラミックスや、金属製等の硬質のものでも、海面体、スポンジ状の軟質のものでもよく、送入管と植物間で代謝液の流れが起きるものであれば良い。送入液孔網107は、それらの流れを増長するものであり、多孔質部106に溝を張り巡らした水路の様なものである。
【0086】
椰子は、竹と同じく単子葉類で、篩部が木部とセットになった維管束が茎の中に散在(不斉中心柱)するので、散在した維管束に対応するように接続するのがよい。
【0087】
図10は、採取管100を介して植物から代謝物を採取して、採取タンク110に貯蔵する代謝物採取コントローラー300と、植物から採取した代謝物を用いて電荷を蓄積する植物電池400と、の概念図を示す。
【0088】
図10(a)から図10(c)に示すように、代謝物採取コントローラー300は、採取管100の吸収管101側から植物の代謝物(主にブドウ糖)を採取する。代謝物採取コントローラー300は、代謝物の採取量を調整するための第1の吸引ポンプ310を備える。そして、代謝物採取コントローラー300は、第1の吸引ポンプ310を用いて、時期(例えば、6月から8月)、時間(例えば、朝)、環境温度、湿度、日照量(例えば、快晴の日)に応じて、代謝物の採取量を調整する。そして、代謝物コントローラー300は、採取した糖分を、拡散・限外濾過・浸透圧等の透析技術を使用し、透析機で糖分を抽出する。図示する例では、半浸透膜320での抽出を示す。透析機で抽出された代謝物(糖分など)を含む液(代謝液)は、採取・濃縮タンク110に貯蔵される。そして、採取・濃縮タンク110に貯蔵された代謝物は、第1の送出ポンプ360を用いて、植物電池400に送られる。なお、採取・濃縮タンク100では、より糖分(ブドウ糖)の濃度を高めたり、他の成分を分離することによって、蓄電効果の高い植物電池400の燃料を作ることができる。
【0089】
図11は、植物から採取した代謝物を用いて電荷を蓄積する植物電池400の概念図を示す。
【0090】
植物電池400は、採取・濃縮タンク110から送られてきたグルコース(別名:ブドウ糖)を酵素群によりグルコノラクトン(別名:ハツミツ酸)に変換(酵素分解)する。これにより、電子伝達物質(多孔性の炭素棒等)から電子(e−)を得て、負電極を形成する。なお、ここでの酵素分解により、ATPが産出される。
【0091】
一方、植物電池400は、セパレータ410を通過した水素イオンを、対峙する酵素群を介して、配送管401(酸素供給のための配送管)から配送された酸素と結合させ、水を生成する。これとともに、電子伝達物質(多孔性の炭素棒等)を介して正電極を形成する。
【0092】
こうして、植物電池400は、正電極と負電極間に生成される電位差を電気エネルギーとして取り出す(例えば、電気として活用、電池に充電する、等)ことができる。
【0093】
また、植物電池400で生成されたグルコノラクトンは、配送管404(グルコノラクトンの配送管)により、水は、配送管402(水の配送管)により、代謝物採取コントローラー300に備わる第2の吸引ポンプ330や第3の吸引ポンプ340を用いて吸い上げられ、必要に応じた量だけ送水液タンク350に送水液210として貯蔵される。或いは、別途溶液に蓄えて、再利用される。なお、送水液タンク350には、透析機で透析された採取液200も貯蔵される。または、必要に応じた割合で混合貯蔵される。
【0094】
送水液タンク350の送水液は、第2の送出ポンプ370によって、採取管100の送入管102をへて植物に戻される。なお、植物に戻される送水液は、植物に適した成分、濃度(例えば、代謝物の濃度、酵素の濃度)や、量(例えば、代謝物の量、酵素の量)、植物体の体液(樹液)の液圧を考慮して、植物に送入される。また、送水液タンク350の送水液には、ミネラルや、タンパク、その他の栄養素を含んでいる。そして、送水液タンク350の送水液は、植物への送入ばかりでなく、他に利用してもかまわない。また、図示しないが、他で採取されたり合成された植物ホルモンやミネラルなどを混合してもかまわない。
【0095】
採取管100を介した植物からの採取量の調整、採取管100を介した植物への送入量の調整、植物電池400の起動、植物電池400からの吸引量の調整などは、各種センサーに接続されたコンピューターシステムによりコントロールされる。ここで、コンピューターシステムは、CPUと、メモリと、補助記憶装置と、入力装置と、出力装置と、通信装置と、各種センサーなどからなる。上記の各種調整などは、CPUが所定のプログラムを読み込み実行することにより構築される。そのため、記憶装置(メモリ)には、上記の各種調整などを実現するためのプログラムやデータテーブルなどが記憶されている。これにより、植物に適合した採取が可能となる(植物から効率よく代謝物を採取することができる)。
【0096】
なお、ここでは、酸素を使用した植物電池400を示したが、嫌気呼吸を利用した植物電池や、糖質だけでなく、アミノ酸や脂肪酸等エネルギーに変える方法もある。
【0097】
また、通常は、植物に採取管100を取り付ける際に、植物の切断部から樹液が出てくる。このとき、樹液が固まらない間に採取管100を植物に接合することにより、採取管100内部は、樹液で満たされる。そして、採取管100に樹液が満たされると、毛管現象、水の凝集力によって、植物と採取管100との間での代謝物のやりとりをスムーズに行えるようになる。水の凝集力を利用するには、細管103内に空気(水蒸気等を含む)が入らないようにするとともに、入った場合の対策として、起動時にポンプで吸い込む、押し出すコントロールが有用である。
【0098】
以下、本発明を、植物の種類に応じた実施例を用いて説明する。ただし、本願発明は、これらの実施例に制限されるものではない。
【0099】
<実施例1:ヘチマ水の採取方法>
従来から道管液を採取する方法として、ヘチマ水の採取方法がある。ヘチマ水(道管液)は植物の体液である。この道管の中を流れる液には、栄養となる無機塩類に加え、ホルモンやタンパク質や糖質などが含まれている。これらの有機物質は、根が作り出して道管の中へ分泌したものであり、植物体、特に地上部器官の生活に必須なものである。ヘチマ水や、カボチャ水は一本から約1リッター採れる。採取方法は茎を切り、切り口の茎を瓶などに刺し込み乾燥しないように覆いをすることにより、採取できる。1日ぐらいで出が悪くなるため、別の茎を切って瓶に切り口を刺すことをくり返す必要がある。
【0100】
このように現在のヘチマ水の採取方法は、ヘチマの茎を切断し、切り口から流れ出す道管液を取り出す方法といえる。また、この採取方法は、植物本体を痛めるとともに、切り口を植物が補修することによって道管液の流れを止めるまでの期間のみ有効とされる。そのため、一時的な採集方法と言える。
【0101】
道管液は、植物の道管の中を、主に根から地上部器官へと流れる液体である。維管束の構成要素の一つである道管は、プログラム細胞死した管状要素細胞の殻(細胞壁)が連なった管で、維管束内の柔組織細胞に囲まれた細胞外空間である。道管液は、根において土壌から吸収された水とミネラル(無機イオン類)に加え、根の細胞で合成・分泌されたアミノ酸(グルタミンなど)、植物ホルモン(ゼアチンリボシド、アブシジン酸など)、タンパク質(レクチン、アラビノガラクタンタンパク質など)、糖質(果糖、ブドウ糖など)などの有機物質を含んでいる。日中は蒸散によって、夜間は根圧(維管束内外のミネラル濃度差を埋めるために生じる維管束内に向かう水の圧力)によって主に輸送される。
【0102】
師管液は、植物の師管中を、主に葉(ソース器官)から芽や根、果実など(シンク器官)へと流れる液体である。維管束の構成要素の一つである師管は、核を失った師要素細胞が師板を通して連なった連続した原形質からなる管である。師管液の成分は、タンパク質や高濃度のショ糖、アミノ酸(グルタミン)などを含む原形質から成り、それらは原形質連絡を通して伴細胞から供給される。同化産物(ショ糖)の師管内の部位(シンク、ソース)による濃度差によって、主にソース器官(成葉)からシンク器官(根、果実、芽)へと輸送される。
【0103】
上述したように、道管液は主にミネラルの濃度差(浸透圧の差)により根から茎部方向に移動する。このことから、本実施例では、これらの成分を採取管100を通してコントロールすることによって、道管液の採取を行う。
【0104】
また、師管液は、師管内の部位(シンク器官とソース器官)に濃度差を生じることにより移動する。このため、本実施例では、主にシンク器官(芽や根、果実など)に採取管100を設けることにより師管液を採取する。
【0105】
<実施例2:葛から代謝物を採取する方法>
葛(クズ)は、植物分類上、マメ科ソラマメ亜科アズキ族クズ属に属する。越冬した多年生茎や株から出芽し始めてから梅雨前頃までは、茎の伸長は比較的緩慢である。しかし、梅雨期に入ってからしばらくすると、急激に伸長速度を早め、7月下旬〜8月上旬にピークに達する。その後8月中旬〜下旬の猛暑下では一時期伸長を休止する。
【0106】
このことは、群落の繁茂が極に達したため、群落内部に光不足とか、風通しの悪さなどで多くの枯死葉を生じ、また、当年生茎の成長が一時的に鈍り、そのため新葉の展開がわずかになることなどに原因があると考えられる。
【0107】
葛は、9月上旬より再び伸長が旺盛となり、10月上旬頃に停止する。その間8月下旬〜9月中旬に開花する。その後、11月上旬頃より逐次葉が黄化しはじめ、それとともに茎は先端より枯れはじめる。その間強い降霜に遭うと葉は全面的に萎えたようになり、その後黒褐色に変化し枯死する。茎は、葉の黄化と平行して株の方より表面が茶褐色を帯びて硬化し、木質化しはじめる。
【0108】
葛に類する多年草植物は、貯蔵器官に炭水化物を主体とする物質を貯えている。葛は主根に多量の炭水化物を貯蔵しているばかりでなく、越年した多年生茎にも少量であるが貯蔵物質を持っている。これらの貯蔵物質は春の生育初期に成長部へ送られて、新生器官の急速な成長を支えている。
【0109】
新生器官は貯蔵期間から送られてくる物質と、葉の光合成によってつくられるが、この物質が炭水化物である場合は、乾燥重量で貯蔵期間における物質減少量の約半分の新植物体がつくられることが分かっている。これを根拠に実験した結果、7月下旬までにつくられた当年生茎葉の約67%は、貯蔵物質によってつくられたことが分かっている。このことは、猛烈な葛の成長を大いに有利にしている根源であると言える。消耗してしまった多年生茎や根部には、8月以降当年生器官から同化物質が送り込まれ、これによって貯蔵器官の比重が急速に大きくなる。このようにして夏から秋にかけて貯蔵した物質を再び次の生育器官の形成に活用するという循環を繰り返す。
【0110】
葛の茎(つる)には当年生茎と多年生茎がある。葛の葉面積については、繁茂地での1個体の葉面積が10月時で約5〜8m2にもなる。
【0111】
葛の根系は株から地中深く発根している主根と、茎の節から発根している節根とがある。
【0112】
主根は地中深く貫通しているので、その形は中程の肥大した紡錘形をし、塊根ともいわれる。この紡錘体は株から1〜2本地中に進入し、さらにその紡錘体からやや細めの紡錘体をいくつか分岐して発根している。これらの主根は養分を多量に貯蔵しており、昔からこれを秋に掘り採って澱粉を製造する(いわゆる貯蔵根)。
【0113】
節根は主根のように大きくはないが、葛は葉数が多く蒸散の激しい植物であるので、水分を補給するため主根とともに葛の生育にとって重要な役割を果たしているものと考えられる。
【0114】
このようなことから、8月中旬〜下旬の猛暑下では一時期伸長を休止している期間は、養分をシンク器官が必要としていないと言うことができる。逆にこの間はシンク器官に接続した師管採取管からより多くの養分を採取できる期間とすることができる。
【0115】
また、8月以降当年生器官から同化物質が送り込まれることにより、主根に設けた採取管に依り、より多くの採取が可能となる期間となる。
【0116】
なお、葛でん粉は古くから葛から製造されている。それ以外にでんぷん粉は日本ではカラスウリ、ワラビ、カタクリ、ユリ、ヒガンバナなどからでん粉を取り出している。
【0117】
<実施例3:メープルシロップの採取方法>
メープルシロップは、極寒地に育つサトウカエデが冬、寒さを乗り切るために樹液の糖度を高め、甘くなっているところを、冬の終わり頃から春の初めにかけての6〜8週間のあいだに採取される。日中の気温が0度を超えるようになると気温の変動により樹木内で樹液の流れが作り出されるのでその時期に採取される。樹液の流れはその日のうちに止まってしまうが、夜になると今度は根から水分を吸収する。翌日気温が上がればまた樹液が出てくる。こうして樹液とともに冬の間に熟成された糖分を出しつくす。
【0118】
メープルが澱粉質を蓄積するのは木の成長期である。雪解けの頃、酵素の働きによってこの澱粉質は糖分に変り、根から吸い上げた水分と混じりあって、ほのかに甘い樹液になる。シロップ1L(リットル)を精製するためには樹液が40Lも必要となる。
【0119】
メープルシロップはカルシウム、カリウム、マグネシウム、リン、マンガン、鉄分などのミネラルやビタミンB2、B5、B6、C、PPなどが含まれ、健康食品にもなる。特にカルシウムは蜂蜜の15倍と豊富である。
【0120】
樹液の取り方は、ドリルで直径約1cm、深さ約5cmとなる穴を開け、バケツで樹液を受け取る。木を傷つけないように穴は3ヶ所まで、またどのようなサトウカエデでもよいのではなく、樹液を採取する木は樹齢100年以上、直径が25cm以上の木、採取量などが制限されている。
【0121】
また最近は地球温暖化の影響か、気温が高すぎるので、樹液が流れ出す、夜の気温が約マイナス4度、日中の気温が約4度から約9度という気温条件にならず、樹液が採れにくい。そのため、真空ポンプを使って樹液を採る方法も採られている。例えば、サトウカエデの木を全てビニールチューブでつなぎ、真空ポンプにつなげて樹液を集める方法がある。
【0122】
このような採取方法は樹木に損傷を与えているとともに、木の成長のもととなる栄養分の一方的な採取であるといえる。
【0123】
本実施例では、樹木の木部表皮付近の一部に採取管100を設け、樹木の表皮に採取管100の管継ぎ手部130に対応したくり抜き部を切り抜き、採取管100の管継ぎ手部130をくり抜き部にはめ込む。これにより樹木の表皮付近の道管や、師管の一部に管継ぎ手部130を介して、樹液が行き来できる。
【0124】
このように、本実施例では、樹木の機能を損なわないように樹木に採取管100を接続することによって樹液を採取する方法を提供する。また、木の自然の成長リズムに合わせた樹液の採取が採取弁の調整により可能であり、採取液の還元(樹液の戻し)も可能な方法である。
【0125】
<実施例4:薬草成分の採取方法>
植物成分には一次代謝物と二次代謝物があり、植物成分として存在感のあるのは有機化合物である。大半は炭素、水素、酸素、窒素から構成されるので、燃やせば二酸化炭素や水などになる。しかし、これらは全て生体内の物質代謝系によって創りだされるものである。植物に限らず生物の作り出す有機化合物を「代謝物(metabolites)」というのもそのためである。生物の代謝産物は大きく「一次代謝物(primary metabolite)」と「二次代謝物(secondary metabolite)」に分けることができる。
【0126】
一次代謝物とは、生体を維持するのに必須の物質群であり、各分類群に属する生物にとっては共通に存在するものである。例えば、DNA、RNA、蛋白質、炭水化物、脂質など高分子化合物およびその構成単位である核酸、アミノ酸、単糖類、脂肪酸はほとんどの生物にとって欠くことのできないものである。その他、高等植物に含まれる繊維質であるリグニン、セルロースも機械的組織の基本的要素であり、一次代謝物とされる。
【0127】
これに対して、一次代謝系から派生してできたもので、生物にとって必ずしも必須とは目されないものが二次代謝物と称されるものである。二次代謝物は各生物種によって個々かってに創られるのではなく、共通の前駆体があって一定の経路(生合成経路という)にしたがって生体内で酵素系の支配をうけて合成される。したがって、二次代謝物の生合成能を生物種固有の遺伝形質とみなすことができ、二次代謝物の化学的多様性は種の進化、分化とともに構築されてきた所産といえる。この地球上に蓄積された二次代謝物種類の多さは、生物多様性により生み出されたといえる。実際、二次代謝物の中には構造的に類似するものあるいは共通の部分構造を有するものがあり、それに基づいて多種多様な二次代謝物を分類することが可能である。有史以来、人類が薬として利用してきたのは膨大な化学ここでは二次代謝物を次の二つのカテゴリー、すなわち生合成経路に基づくもの(イソプレノイド、ポリケチドなど)、構造的には雑多なものでも共通の特性を有するもの(サポニン、タンニン、アルカロイドなど)として分類し説明を加えると、後者に関しては必ずしも明瞭なプロトコルに従って命名されているわけではなく慣用名というべきものが多く多様性のうちのごくわずかな部分にすぎない。
【0128】
採取管100による採取は、この二次代謝産物を対象とすることにより、多くの薬草成分等を、長期に渡り、植物から採取することができる。そればかりでなく、植物そのものの成分を強化する効果や、育成する効果もある。
【0129】
<実施例5:ミニトマトの果柄から代謝物を採取する方法>
「ミニトマト(サンチェリーエキストラ)の果柄で木部流量を測定し、夜間から早朝にかけて果実に水が流入し、昼間には果実から水が流出することを観察した。この結果から、裂果は、夜間から早朝にかけての水の果実への流入が果肉細胞を肥大させ、その圧力によって生じるものと推論している。そして、暗期における葉からの蒸散の促進は裂果の発生を抑制することを見出した。メロン果実の重量変化速度と果実ヘの木部流速度がほぼ平行関係にあること、昼間に水ストレスが強い場合には果実から茎葉に向かって水が逆流することを明らかにした。マンゴー花序の花梗部で蒸散流を測定し、花序での蒸散流は日射や飽差にあまり影響されないことを見ている。また、マンゴー果実の果柄では夜間に果実への水の流れを、枝での蒸散流が増大した昼間には果実から枝梢への流れを認め、これは収縮と肥大を繰り返す果径の日変化とよく一致した。」との報告がある。
【0130】
また、「トマトを用い、側枝2本から根系を発達させ、それぞれを、乾土側と湿土側として、両者の間の水移動を調べた。このような場合、土壌が極端に乾燥すると夕方から早朝に掛けて、最大約10ccの水が乾土側へ移動するのを見出している。またトマトを栽培した南北高畦(あぜ)において、東側と西側からの根の水の吸収量の日変化を調べ、吸水において東面が有利な環境にあることを見出した。茎内木部流の測定から夜間においても根が水を吸収していることも確認している。」との報告もある。
【0131】
これらのことから、植物個体全体を一つの巨大な「多核体」とみなした場合に、植物の一カ所で乾燥が起こると、他の部分の水分がその部分を埋めようと作用が働いているととれえられる。また、水分ばかりでなく養分も同じであると考えられる。その様子は、植物個体全体が均一な溶液となるため、水分や養分が拡散現象による拡散するといえる。
【0132】
このようなことから、植物個体の一部(果枝、茎、根)部分で溶液をコントロールすることにより、植物個体全体をコントロールすることが可能といえる。
【0133】
また、りんごは果肉内の余分な水分を外に出そうとする。そのとき、気温が低くなると、りんごの実に水滴がつくようになる。この水滴によって実から水分が出にくくなり、結果的に蜜ができやすくなる。
【0134】
これらのことから、本実施例では、道管や師管の圧力(例えば、液圧)をコントロールすることにより、果実の肥大化の調節や、裂果の発生を防ぐこと、そして、水分や養分(成長ホルモンなど)の量をコントロールする。その結果、果実の生育時期や、大きさ、甘み(味)などをコントロールしたりすることも可能となる。このため、代謝物質の抽出から得られる物質の変化ばかりでなく、本代謝物採取コントローラー300を設置した植物から得られる、植物本体(例えば野菜)や果実の含有する代謝物質をコントロールしたり、花の開花を調整したりすることが可能である。すなわち、本代謝物採取コントローラー300は、採取した代謝物の一部や、他で得た植物ホルモンなどを混合して、植物本体に戻すことにより、植物の状態をコントロールし、植物本体(野菜等)や果実の出来(味や、形状など)、そして、採取代謝物をコントロールするものである。
【0135】
以上、いくつかの植物に対して、本願発明を適用した例を説明したが、これに限らず、植物の種類、形態、性質、採取したい成分、などに応じて、本願発明を適宜、適用することができる。
【符号の説明】
【0136】
1・・・植物、1a・・・成長した植物、2・・・幹、10・・・植物体代謝物採取システム、11・・・果実、12・・・果柄、20・・・師管細胞、21・・・伴細胞、22・・・師板、23・・・師域、24・・・道管、30・・・茎、31・・・根、32・・・芯部、33・・・空間、34・・・分かれ目、100・・・採取管、100a・・・道管用の採取管、100b・・・師管用の採取管、101・・・吸収管、102・・・送入管、103・・・細管、104・・・先端(部)、104a・・・膨らんだ採取管先端部、104b・・・多孔質採取管先端部、105・・・浸透膜、106・・・多孔質部、107・・・送入液孔網、110・・・採取タンク、110a・・・道管用の採取タンク、110b・・・師管用の採取タンク、111・・・貯蔵・濃縮タンク、115・・・蛇口、120・・・透過膜、130・・・管継ぎ手部、140・・・分岐部、150・・・くり抜き部、160・・・挿入管、170・・・海綿体、180・・・カバー部、190・・・電動弁、200・・・採取液、201・・・採取液の流れ、204・・・伴細胞と細管間の流れ、205・・・幹と細管間の流れ、206・・・導管継ぎ手部の流れ、207・・・細管と海綿体間の流れ210・・・送出液、211・・・スリーブ部、212・・・保護スリーブ、300・・・代謝物採取コントローラー、310・・・第1の吸引ポンプ、320・・・半浸透膜、330・・・第2の吸引ポンプ、340・・・第3の吸引ポンプ、350・・・送水液タンク、360・・・第1の送出ポンプ、370・・・第2の送出ポンプ、400・・・植物電池、401・・・酸素の配送管、402・・・水の配送管、403・・・グルコースの配送管、404・・・グルコノラクトンの配送管、410・・・セパレータ、500・・・密着テープ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物の木部(道管、仮道管)および篩部(師管)の少なくともいずれかに採取管を接続し、植物の代謝物を当該採取管から採取する、
ことを特徴とする植物体代謝物採取方法。
【請求項2】
請求項1に記載の植物体代謝物採取方法であって、
植物の代謝物の採取量を、時期、時間、日照量、環境温度、湿度の少なくともいずれかに基づいて調整する、
ことを特徴とする植物体代謝物採取方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の植物体代謝物採取方法であって、
植物の代謝物の供給を促すために、植物体に送出する代謝物をコントロールする、
ことを特徴とする植物体代謝物採取方法。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の植物体代謝物採取方法であって、
前記代謝物のコントロールは、少なくとも代謝物の濃度をコントロールする、
ことを特徴とする植物体代謝物採取方法。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の植物体代謝物採取方法であって、
前記代謝物のコントロールは、少なくとも酵素をコントロールする、
ことを特徴とする植物体代謝物採取方法。
【請求項6】
請求項3乃至5のいずれか1項に記載の植物体代謝物採取方法であって、
前記代謝物のコントロールは、植物体の体液(樹液)の液圧をコントロールする、
ことを特徴とする植物体代謝物採取方法。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1項に記載の植物体代謝物採取方法であって、
植物本体(野菜等)や果実の出来(味や、形状など)、開花をコントロールする、
ことを特徴とする植物代謝物採取方法。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか1項に記載の植物体代謝物採取方法であって、
透過膜を介して、前記採取管を植物に接続する、
ことを特徴とする植物体代謝物採取方法。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか1項に記載の植物体代謝物採取方法であって、
前記採取管の植物への接続部分には、タンパク質を含有または合成した部材を使用する、
ことを特徴とする植物体代謝物採取方法。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれか1項に記載の植物体代謝物採取方法であって、
前記採取管を、植物の果柄部に接続する、
ことを特徴とする植物体代謝物採取方法。
【請求項11】
請求項1乃至9のいずれか1項に記載の植物体代謝物採取方法であって、
前記採取管を、植物の地下茎(地中にある茎)部に接続する、
ことを特徴とする植物体代謝物採取方法。
【請求項12】
請求項1乃至9のいずれか1項に記載の植物体代謝物採取方法であって、
前記採取管を、植物の幹(草木のみきや茎)部に接続する、
ことを特徴とする植物体代謝物採取方法。
【請求項13】
請求項1乃至9のいずれか1項に記載の植物体代謝物採取方法であって、
前記採取管を、植物の根部に接続する、
ことを特徴とする植物体代謝物採取方法。
【請求項1】
植物の木部(道管、仮道管)および篩部(師管)の少なくともいずれかに採取管を接続し、植物の代謝物を当該採取管から採取する、
ことを特徴とする植物体代謝物採取方法。
【請求項2】
請求項1に記載の植物体代謝物採取方法であって、
植物の代謝物の採取量を、時期、時間、日照量、環境温度、湿度の少なくともいずれかに基づいて調整する、
ことを特徴とする植物体代謝物採取方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の植物体代謝物採取方法であって、
植物の代謝物の供給を促すために、植物体に送出する代謝物をコントロールする、
ことを特徴とする植物体代謝物採取方法。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の植物体代謝物採取方法であって、
前記代謝物のコントロールは、少なくとも代謝物の濃度をコントロールする、
ことを特徴とする植物体代謝物採取方法。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の植物体代謝物採取方法であって、
前記代謝物のコントロールは、少なくとも酵素をコントロールする、
ことを特徴とする植物体代謝物採取方法。
【請求項6】
請求項3乃至5のいずれか1項に記載の植物体代謝物採取方法であって、
前記代謝物のコントロールは、植物体の体液(樹液)の液圧をコントロールする、
ことを特徴とする植物体代謝物採取方法。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1項に記載の植物体代謝物採取方法であって、
植物本体(野菜等)や果実の出来(味や、形状など)、開花をコントロールする、
ことを特徴とする植物代謝物採取方法。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか1項に記載の植物体代謝物採取方法であって、
透過膜を介して、前記採取管を植物に接続する、
ことを特徴とする植物体代謝物採取方法。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか1項に記載の植物体代謝物採取方法であって、
前記採取管の植物への接続部分には、タンパク質を含有または合成した部材を使用する、
ことを特徴とする植物体代謝物採取方法。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれか1項に記載の植物体代謝物採取方法であって、
前記採取管を、植物の果柄部に接続する、
ことを特徴とする植物体代謝物採取方法。
【請求項11】
請求項1乃至9のいずれか1項に記載の植物体代謝物採取方法であって、
前記採取管を、植物の地下茎(地中にある茎)部に接続する、
ことを特徴とする植物体代謝物採取方法。
【請求項12】
請求項1乃至9のいずれか1項に記載の植物体代謝物採取方法であって、
前記採取管を、植物の幹(草木のみきや茎)部に接続する、
ことを特徴とする植物体代謝物採取方法。
【請求項13】
請求項1乃至9のいずれか1項に記載の植物体代謝物採取方法であって、
前記採取管を、植物の根部に接続する、
ことを特徴とする植物体代謝物採取方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2011−87472(P2011−87472A)
【公開日】平成23年5月6日(2011.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−241423(P2009−241423)
【出願日】平成21年10月20日(2009.10.20)
【出願人】(302045602)株式会社レーベン販売 (13)
【公開日】平成23年5月6日(2011.5.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年10月20日(2009.10.20)
【出願人】(302045602)株式会社レーベン販売 (13)
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