説明

植物保護活性剤

【課題】害虫や線虫等による植物の被害(病害)を抑制して保護し、植物を活性して成長促進作用を向上する植物保護活性剤を提供する。
【解決手段】ニームオイル、ニームの器官、及びニーム粕のうちから選択した一種又は複数種と、下記式で示される二価三価鉄塩を含有してなる。
Fe+2Fe+3Cl2m+3n(式中m及びnは正の整数を示す)
前記二価三価鉄塩は水に溶解して含有されている。また、成分として、さらに有機質肥料を含有することもできる。
【効果】植物保護活性剤中に含まれている前記二価三価鉄塩の作用により、ニームの有する殺虫・制虫・忌避作用、及び摂食阻害作用等のニームの効果を増強し、害虫や線虫等による植物の被害(病害)を抑制して保護し、植物を活性して成長促進作用を向上する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種農作物や樹木その他の植物の保護活性剤に関する。さらに詳しくは、各種の害虫や線虫等の有害な微生物による植物の被害(病害)を抑制して保護し、植物を活性して成長を促進する植物保護活性剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、農作物その他の植物に被害を与える各種の病害や線虫等の防除ないし駆除として、合成殺虫剤等の農薬が使用されていたが、近年においては農薬による人体や地球環境への影響等を懸念して、各種の生物農薬(殺虫剤,制虫剤,害虫忌避剤等)が開発されている。その1例として、ニームオイルを有効成分とする生物農薬(殺虫剤,制虫剤,害虫忌避剤等)が提案されている(例えば、特許文献1〜3参照)。
【0003】
ニームオイルは殺虫活性を有しているが、ニームオイルによって、各種の害虫や線虫等が即座に死滅するものではなく、ニームオイルを付与された害虫等は咀嚼力が弱くなり、摂食が阻害され、繁殖することも、変態することもできなくなり、結果的に死滅することになるので、殺虫剤,制虫剤,病虫駆除剤等として使用されている。
【0004】
上記のように、植物に被害を与える多種の害虫、或いは線虫等の有害微生物に対してニームオイルを使用すると、殺虫・制虫・忌避作用、摂食阻害作用を有していることは知られているが、その効果は未だ充分でないといわれている。
【特許文献1】特開2002−363012号公報
【特許文献2】特開2002−154909号公報
【特許文献3】特開2002−154910号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記のような実情に鑑み、ニームの有する効果を活用すると共にニームの効果を増強し、害虫や線虫等による植物の被害(病害)を抑制して保護し、植物を活性して成長促進作用を向上し得る植物保護活性剤を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題を解決するために、研究、実験を続けた結果、その目的を達成したので、ここにその発明を提供する。
【0007】
即ち、本発明のうち、1つの発明(第1の発明)は、ニームオイル、ニームの器官、及びニームの器官の粕のうちから選択された一種又は複数種と、二価三価鉄塩を含有してなり、
前記二価三価鉄塩は、式、
Fe+2 Fe+3 Cl2m+3n(式中m及びnは正の整数を示す)
で示される化合物であることを特徴とする。
本発明の植物保護活性剤は、各種の農作物や樹木その他の全ての植物に適用できる。なお、この明細書において、「成長」とは「生長」の意味も含む広い概念として用いられている。
【0008】
ニーム(Neem,別名:インドセンダン,学名:Azadirachta indica)はセンダン科に属し、インドのデカン高原からミャンマーにかけて分布している植物である。
【0009】
ニームオイルとは、ニームの器官からの抽出物である。ニームの器官としては、葉,種子,樹皮,材部,根等が挙げられ、これらの中から選択した一種、或いは複数種を混合して採用することができる。ニームオイルは、例えば、前記器官を粉砕して圧搾し、或いはメタノール等のアルコール液に浸けて抽出することにより得られる。このニームオイルは市販されている。本発明においては、市販のニームオイルを使用することができる。
【0010】
本発明において、ニームオイルは例えば液状として使用できると共に、前記器官その他の物質と混合して粉末状,粒状,或いはペレット状等の形態(形状)として使用することができる。また、ニームの器官(ニームオイルを抽出する前の器官)は例えば粉末状,粒状,或いはペレット状等の形態(形状)として使用することができる。
【0011】
ニームの器官の粕とは、ニームの器官からニームオイルを抽出した残りの粕(以下、「ニーム粕」という)である。このニーム粕には所定量のニームオイルが残留している。前記ニーム粕は市販されている。本発明においては、市販のニーム粕を使用することができる。
本発明において、ニーム粕は前記例示した器官の中から選択した一種、或いは複数種を混合して採用することができる。また、ニーム粕は例えば固形状(例えば、市販のニーム粕のそのままの形状),粉末状,粒状,或いはペレット状等の形態(形状)として使用することができる。
【0012】
前記式で示される二価三価鉄塩は近年開発された活性物質で、この活性物質(二価三価鉄塩)は二価鉄と三価鉄との中間の性質を示す単一の化合物、或いは二価鉄と三価鉄が共存する単一の化合物であると思われる。この二価三価鉄塩は現在工業的に生産可能である(例えば、特公平3−63593号公報、特公平4−27171号公報参照)。
【0013】
前記二価三価鉄塩は、例えば塩化第二鉄を水酸化ナトリウム,水酸化カルシウム,水酸化カリウム,水酸化リチウム等の強アルカリの水溶液に投入して原子価変換を起こさせた場合の遷移形態等として得られる(第1の方法)。この第1の方法による具体的製造方法として、例えば次の工程により得たものを例示する。即ち、塩化第二鉄を強アルカリの水溶液に溶解させる工程、この溶液を中和する工程、この中和した溶液を濃縮する工程、とを含んで製造する。
【0014】
また、二価三価鉄塩は、三価の鉄塩と二価の金属塩とを混合した溶液によっても得られる。具体的には、例えば三価の鉄塩及び二価の金属塩を所定の比率で含有する所定濃度の希薄水溶液に、第二鉄塩を添加して溶解させ、得られた溶液を濃縮して製造することができる(第2の方法)。前記第二鉄塩としては、例えば塩化第二鉄、硫酸第二鉄、硝酸第二鉄を用いることができる。前記二価の金属塩としては、例えば塩化カルシウム,塩化マグネシウム,塩化亜鉛,硫酸マグネシウム,硝酸カルシウム,硝酸マグネシウム,硝酸亜鉛を用いることができる。
【0015】
前記二価三価鉄塩の前記式中のm:nの比は前記化合物製造に用いる物質の種類等により特定の数値をとる。
【0016】
前記二価三価鉄塩の活性物質は水と接触することにより、種々の作用を有する。即ち、通常の水に前記活性物質を超微量(例えば、濃度2×10−12モルないし2×10−18モル)混入することにより、この水溶液(以下、この水溶液を便宜上「パイウォーター」という)は水分子の構造変化,脱イオン反応,PHの安定効果等の特性を持つことが判明している。
【0017】
また、パイウォーターは前記特性に加え、病原菌の阻止作用,植物活性作用、及び植物生長促進作用を有していることも本発明者による実験によって証明された。
【0018】
そして、本願の第1の発明による植物保護活性剤は、上記したように、ニームオイル、ニームの器官、及びニーム粕のうちから選択された一種又は複数種と、前記二価三価鉄塩を含有してなるものである。
【0019】
前記ニームオイル等に対する前記二価三価鉄塩の配合比(配合量)は特に限定するものではないが、微量で十分に本発明の目的を達成する。前記した配合比については後述する各発明についても同様である。また、本発明において、前記第1及び第2の方法で製造した二価三価鉄塩を蒸留水や純水等に溶解して所定の濃度に調整した二価三価鉄塩水溶液(前記二価三価鉄塩の原液)を製造し、この原液を使用することができる(この点については後述する各発明においても同様である)。なお、前記原液の具体的製造例については追って説明する。
【0020】
上記第1の発明によれば、植物保護活性剤中に含まれている前記二価三価鉄塩の有する作用によりニームの効果を増強し、害虫や線虫等による植物の被害(病害)を抑制して保護し、植物を活性して成長促進作用を向上する。
【0021】
本発明のうち、他の1つの発明(第2の発明)は、第1の発明の植物保護活性剤において、二価三価鉄塩は前記式で示される化合物に代え、磁性を帯びた二価三価鉄塩であることを特徴とする。この磁性を帯びた二価三価鉄塩は、電磁気処理による特性と化学処理による特性の両方を同時に兼ね備えた活性物質で、例えば、磁鉄鉱を化学処理して得られる。前記磁性を帯びた二価三価鉄塩としては、例えば磁鉄鉱を濃塩酸に溶解させた後、この溶液を中和し、この中和した溶液を濃縮して結晶化し、この結晶を、磁鉄鉱を濃塩酸に半溶解させた溶液に加える工程を含んで得られる化合物で構成することができる。
【0022】
前記磁性を帯びた二価三価鉄塩の活性物質は水と接触することにより、次のような作用を有する特性をもつことが判明している。即ち、通常の水に前記活性物質を超微量(例えば濃度2×10−12モルないし2×10−18モル)混入することにより、この水溶液は、上述したパイウォーターのもつ特性に加え、電磁気処理した活性水と同様な特性をもち、特にこの活性物質は水に溶解して共存するので、外部から磁場をかけた活性水に比べて水に強く、かつ効果的に作用する。
【0023】
そして、本願の第2の発明による植物保護活性剤は、上記のように第1の発明の植物保護活性剤において、前記式で示される化合物に代え、磁性を帯びた二価三価鉄塩を含有することを特徴とするものである。この第2の発明によっても第1の発明の植物保護活性剤と同様の作用効果を発揮する。
【0024】
本発明のうち他の1つの発明(第3の発明)は、第1及び第2の発明の植物保護活性剤において、植物保護活性剤を構成する成分として、さらに有機質肥料を含有してなることを特徴とする。有機質肥料の成分構成については特に限定するものではないが、例えば、サトウキビの搾り粕、米ぬか、及びおからの中から選択した一種、或いは複数種を混合したものを主成分として含んでなるものを採用することができる。
【0025】
前記サトウキビの搾り粕は蔗糖や糖密等の生産過程において、サトウキビの茎を圧縮させて糖液を搾り出した粕であり、バガス(Bagasse)とも称されている。この搾り粕(バガス)は炭素、窒素、或いはリン等、植物の生育に有効な栄養分(固形有機物)を含んでいる。また、バガスは植物の葉の色を良くする作用も有している。前記バガスは通常の場合、約40重量%程度の水分を含んでいるため、これを乾燥して粉末化したサトウキビの搾り粕の乾燥粉末(以下「バガスパウダー」という)も市販されている。本発明においては、このバガスパウダーも使用することができる。通常はバガスパウダーを採用する場合が多くなる。
【0026】
前記米ぬかは、玄米を精米するときに生じる粉末である。この米ぬかにも植物の生育に良いとされる栄養分が多く含まれている。
【0027】
前記おからは、豆腐を製造するときに副生される副産物で、このおからにも植物の生育に有効な栄養分が含まれている。また、おからは水分が多いため(通常、含水率約70〜約90%)、乾燥したおから(乾燥おから)も市販されている。本発明においては乾燥おからも使用することができ、一般的には乾燥おからを採用する場合が多くなる。
【0028】
本願の第3の発明において、植物保護活性剤を構成する有機質肥料の配合比率並びに前記肥料を構成する原料中の前記例示したサトウキビの搾り粕と米ぬか及びおからの配合比は特に限定するものではない。
【0029】
第3の発明は上記のように、第1及び第2の発明の植物保護活性剤において、さらに有機質肥料を含有させてなるものである。この第3の発明によれば植物の成長を一層促進する。
【0030】
本発明(第1ないし第3の発明)においては、植物保護活性剤を構成する成分(原料)として、さらに枯草菌を含有させることもできる(第4の発明)。
【0031】
前記枯草菌は比較的大きな好気性の桿菌で、病原性がなく、土壌や草木(枯草や枯木など)等、自然界に広く生息している。この枯草菌は液体(状)化(枯草菌溶液)した形態も市販されている。本発明においては、市販の枯草菌溶液を使用することができる。
【0032】
本発明(第1ないし第4の発明)においては、植物保護活性剤を構成する成分として、さらに苦汁又は/及びゼオライトを含有させることもできる(第5の発明)。
【0033】
前記苦汁としては、塩化マグネシウム(合成塩化マグネシウム)、及び海水を濃縮して塩分(NaCI)を除去した液体(天然苦汁)が一般に知られている。また、天然苦汁は海洋深層水を濃縮して塩分(NaCl)を除去することによっても製造することができる。前記天然苦汁中には多種のミネラルが多く含まれている。前記天然苦汁の中でも海洋深層水から得られた苦汁は海水から得られた苦汁に比べてミネラルの含有量が多い。このミネラルは植物の成長を促進する作用がある。本発明においては苦汁として、塩化マグネシウムを使用することもできるが、天然苦汁、即ち、海水及び海洋深層水から得られた苦汁を採用する方がより好ましい。
また、ゼオライトにはミネラルが多く含まれている。したがって、ゼオライトを含有させることにより、植物の成長を一層促進させる。
【0034】
本発明の植物保護活性剤は、上述したように液状、固形状、粉末状、粒状、或いはペレット状等の形態として使用される。液状に製造した植物保護活性剤は、例えば葉面散布処理、土壌灌注処理等により植物に適用される。また、固形状、粉末状、粒状、或いはペレット状等に製造した植物保護活性剤は、例えば、田畑等の土壌に散布し、或いは混入する等により適用される。但し、使用方法は上記例示した方法に限定するものではない。
【発明の効果】
【0035】
本発明によれば、植物保護活性剤中に含まれている前記二価三価鉄塩の作用により、ニーム本来の有する殺虫・制虫・忌避作用、摂食阻害作用等のニームの効果を大巾に増強し、害虫や線虫等による植物の被害(病害)を抑制して保護し、植物を活性して成長促進作用を向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
以下、本発明の実施の形態の一例を説明する。
【0037】
(実施の形態1)
本発明の実施の形態1による植物保護活性剤は、ニームオイル、ニームの器官、及びニーム粕のうちのいずれか一種又は複数種と、式、Fe+2 Fe+3Cl2m+3n(式中m及びnは正の整数を示す)で示される二価三価鉄塩を含有して製造される。
【0038】
実施の形態1において、前記ニームオイルは市販のものを採用している。前記ニームの器官は粉砕して粉末状ないし粒状等に形成したものを採用できる。また、前記ニーム粕は固形状のもの、或いは粉末状や粒状などに形成したものを採用するが、このニーム粕は市販されている。実施の形態1において、ニーム粕は市販品を採用する。上記の点に関しては、以下に説明する実施の形態においても同様である。
また、二価三価鉄塩は後述する方法により製造した二価三価鉄塩水溶液(二価三価鉄塩の原液)を採用している。以下、前記二価三価鉄塩の原液の具体的製造方法の一例について説明する。
【0039】
(二価三価鉄塩の原液の製造例1)
1.0mgの塩化第二鉄を100mlの0.5Nカセイソーダ水溶液に入れ、攪拌溶解させて24時間静置する。前記溶液中に生じた不溶性物質を除去し、この溶液を塩酸で中和した後、減圧濃縮してデシケーター中で乾燥結晶化する。得られた結晶に50mlのイソプロピルアルコール80重量%水溶液を加えて再溶解し、減圧濃縮して溶媒を除去、乾燥させ、この再溶解,濃縮,乾燥を数回繰り返すことにより0.25mgの結晶(二価三価鉄塩)を得た。この結晶を水(蒸留水又は純水)に溶解して約100倍〜約10,000倍に希釈した水溶液、即ち、前記二価三価鉄塩約0.01%〜約1%水溶液(二価三価鉄塩の原液A)とする。
【0040】
(二価三価鉄塩の原液の製造例2)
濃度10ミリモルの塩化カルシウム水溶液100mlに、塩化第二鉄270mgを添加して溶解させた。この溶液を水(蒸留水又は純水)で希釈して、濃度10−10ミリモルの希薄溶液を調製した。この希薄溶液20mlに結晶状態の塩化第二鉄1gを溶解させた後、これを磁器製等の蒸発皿に入れ、湯煎で徐々に蒸発させて濃縮した。得られた固溶状の濃縮物をデシケーター中で乾燥して結晶(二価三価鉄塩)を得た。この結晶を水(蒸留水又は純水)に溶解して約100倍〜約10,000倍に希釈した水溶液、即ち、前記二価三価鉄塩約0.01%〜約1%水溶液(二価三価鉄塩の原液B)とする。
【0041】
実施の形態1において、ニームオイルを選択して採用する場合には、ニームオイルと前記二価三価鉄塩を含んで製造される。具体的にはニームオイルに対し、前記二価三価鉄塩の原液A又はBを所定量添加して製造される。ニームオイルに対する前記原液A又はBの配合比(配合量)は特に限定されるものではないが、例示的な配合比として重量比で前者1:後者約1/100〜約1/100,000(約1/10万)程度の範囲に設定することができる。但し、前記範囲内に限定するものではない。
【0042】
上記したように、前記植物保護活性剤は、ニームオイルに対し、前記原液A又はBを所定量添加(配合)して製造されるが、この場合、通常は例えば次の方法により調製して製造される。
即ち、前記原液A又はBを水道水や井戸水等の水で所望の濃度、例えば約500倍〜約3000倍に希釈し、この希釈水溶液をニームオイルに所定量添加配合して植物保護活性剤を製造する。つまり、ニームオイルを前記原液A又はBの希釈水溶液で所定の倍率で希釈して植物保護活性剤を製造する。この場合、ニームオイルに対する前記希釈水溶液の添加量(ニームオイルに対する前記原液A又はBの配合量)は上述した範囲に設定して行なうことができる。
前記のように調製した植物保護活性剤は、例えば葉面散布用や土壌灌注用等として使用する場合等に適している。植物に対する植物保護活性剤の使用量は、特に限定するものではなく、植物の種類やその他の種々の状況等に応じて適当に決定できる。この場合、植物に対する植物保護活性剤の散布や灌注等の回数は適当に決定する。
【0043】
実施の形態1において、ニームの器官を選択して採用する場合には、前記器官と前記二価三価鉄塩を含んで製造される。具体的には、ニームの器官を粉砕し、この粉砕したニームの器官に対し、前記原液A又はBを所定量添加して製造される。前記粉砕したニームの器官に対する前記原液A又はBの配合比(配合量)は特に限定されるものではないが、例示的な配合比として、重量比で前者1:後者約1/100〜1/100,000(約1/10万)程度の範囲に設定することができる。但し、前記範囲内に限定するものではない。
【0044】
ニームの器官を採用して植物保護活性剤を製造する場合、前記原液A又はBを前記粉砕したニームの器官にそのまま所定量添加して製造してもよいが、上記と同様に前記原液A又はBを水道水や井戸水等の水で例えば約500倍〜約3000倍に希釈し、この希釈水溶液を前記粉砕したニームの器官に所定量添加して混合する。そして、これを粉末状、粒状、或いはペレット状等に処理加工して植物保護活性剤を製造し、これを植物に適用することができる。
前記のように粉末状、粒状、或いはペレット状等に形成した植物保護活性剤は、例えば、田畑等の土壌に散布し、或いは土壌に混入する等により使用するのに適している。植物に対する植物保護活性剤の使用量は特に限定するものではなく、植物の種類やその他の種々の状況等に応じて適当に決定できる。なお、この植物保護活性剤を使用する場合、所望に応じて前記原液A又はBの前記希釈水溶液と併用することもできる。
【0045】
実施の形態1において、ニーム粕を選択して採用する場合には、ニーム粕と前記二価三価鉄塩を含んで製造される。具体的にはニーム粕に対し、前記原液A又はBを所定量添加して製造される。ニーム粕に対する前記原液A又はBの配合比(配合量)は特に限定されるものではないが、例示的な配合比として、重量比で、前者1:後者約1/100〜約1/100,000(約1/10万)程度の範囲に設定することができる。但し、前記範囲内に限定するものではない。
【0046】
ニーム粕を採用する場合においても、ニーム粕に前記原液A又はBをそのまま所定量添加して製造してもよいが、前記と同様に前記原液A又はBを水道水や井戸水等の水で例えば約500倍〜約3000倍に希釈し、この希釈水溶液をニーム粕に所定量添加して上述した固形状(例えば、市販のニーム粕そのままの形状)の植物保護活性剤とし、これを植物に適用することができる。また、ニーム粕に前記希釈水溶液を所定量添加して混合し、これを粉末状、粒状、或いはペレット状等に処理加工して植物保護活性剤を製造し、これを植物に適用することもできる。
【0047】
前記のように固形状、粉末状、粒状、或いはペレット状等に形成した植物保護活性剤は、例えば、田畑等の土壌に散布し、或いは土壌に混入する等により使用するのに適している。植物に対する植物保護活性剤の使用量は特に限定するものではなく、植物の種類やその他の状況等に応じて適当に決定できる。なお、この植物保護活性剤を使用する場合においても、所望に応じて前記原液A又はBの希釈水溶液と併用することもできる。
また、ニーム粕を採用する場合、前記原液A又はBの希釈水溶液をニーム粕に所定量添加した後、これを発酵して植物保護活性剤とする方法も採用することができる。ニーム粕に前記希釈水溶液を添加して置くと、約3日程度で発酵する。
【0048】
(実施の形態2)
本発明の実施の形態2による植物保護活性剤は、実施の形態1の植物保護活性剤において、二価三価鉄塩を前記式で示される化合物に代え、磁性を帯びた二価三価鉄塩を採用したことを特徴とするものである。
【0049】
前記磁性を帯びた二価三価鉄塩は上述したように、電磁気処理による特性と化学処理による特性の両方を同時に兼ね備えた活性物質で、この物質としては例えば磁鉄鉱を化学処理したものが例示でき、この物質の具体的製造方法として、次の工程により得たものを例示する。即ち、磁鉄鉱を濃塩酸に溶解させる工程、この溶液を水酸化ナトリウム,水酸化カルシウム,水酸化カリウム,水酸化リチウム等の強アルカリで中和する工程、この中和した溶液を濃縮して結晶を得る工程、この結晶を、磁鉄鉱を濃塩酸に半溶解させた溶液に加える工程とを含んで製造する。
【0050】
実施の形態2において、前記磁性を帯びた二価三価鉄塩は後述する方法により製造した磁性を帯びた二価三価鉄塩水溶液(二価三価鉄塩の原液)を採用している。以下前記二価三価鉄塩の原液の具体的製造方法の一例について説明する。
【0051】
(二価三価鉄塩の原液の製造例3)
0.1gの磁鉄鉱を10mlの濃塩酸に入れ、攪拌溶解させて24時間静置する。この溶液に25mlの2N水酸化ナトリウム水溶液を加えて24時間静置して、中和する。この溶液を減圧濃縮して結晶を析出し、空気乾燥器中で結晶を乾燥する。この結晶を10mlのエチルアルコールに入れて洗浄する。この洗浄操作を数回繰り返して結晶を精製し、活性物質(結晶)を得る。この際の収率は0.88gであった。次いで、5gの磁鉄鉱を10mlの濃塩酸に入れ、攪拌して半溶解させた後、上記工程で得られた活性物質結晶を0.1g加え良く攪拌して24時間静置する。この上澄み液をデカンテーション法により不溶の磁鉄鉱と分離し、活性物質溶液(磁性を帯びた二価三価鉄塩)を得た。この活性物質溶液を蒸留水や純水で溶解して約100倍〜約10,000倍に希釈した水溶液、即ち、前記磁性を帯びた二価三価鉄塩約0.01%〜約1%水溶液(二価三価鉄塩の原液C)とする。
【0052】
実施の形態2の植物保護活性剤は、二価三価鉄塩として前記原液Cを採用する以外は実施の形態1の植物保護活性剤と同様であるため、説明を省略する。
【0053】
(実施の形態3)
本発明の実施の形態3による植物保護活性剤は、実施の形態1又は2の植物保護活性剤において、成分として、さらに有機質肥料を含有して製造される。実施の形態3においては、有機質肥料として、サトウキビの搾り粕(バガスパウダー)、米ぬか、及び乾燥おからを主成分としてなるものを採用している。
また、実施の形態3においても、二価三価鉄塩として、実施の形態1と同様に二価三価鉄塩の原液(前記原液A又はB又はC)を採用している。
【0054】
即ち、具体的には、ニームオイル、ニームの器官、及びニーム粕のうちいずれか一種又は複数種と、前記原液A又はB又はCと、バガスパウダー、米ぬか、及び乾燥おからとを配合して製造される。
ニームオイル、ニームの器官、及びニーム粕と有機質肥料(実施の形態3ではバガスパウダー、米ぬか、及び乾燥おからの総量)との配合比は特に限定するものではなく、任意に設定することができる。
【0055】
前記有機質肥料を構成する成分(材料)中のバガスパウダー、米ぬか、及び乾燥おからの配合比は特に限定されるものではないが、例示的な配合比として、前記組成物(有機質肥料)の全量に対し、バガスパウダー約25〜約45重量%、米ぬか約40〜約55重量%、及び乾燥おから約10〜約30重量%、さらに好ましくは、バガスパウダー約30〜約40重量%、米ぬか約40〜約50重量%、及び乾燥おから約15〜約25重量%程度の範囲に設定することができる。
【0056】
実施の形態3において、ニームオイルを選択して採用する場合、ニームオイルと前記有機質肥料(バガスパウダー、米ぬか、及び乾燥おからの全量、以下同じ)との配合比は前述したように特に限定するものではないが、例示的な配合比として、組成物(植物保護活性剤)の全量に対し、ニームオイルを約1/50〜約1/500重量%程度の範囲に設定することができる。また、前記原液(原液A又はB又はC)の配合比は、実施の形態1及び2と同様に、ニームオイルに対し、重量比でニームオイル1:前記原液約1/100〜約1/100,000程度の範囲に設定することができる。但し、前記範囲内に限定するものではない。
【0057】
ニームオイルを採用する場合、前記原液(原液A又はB又はC)を実施の形態1又は2と同様に、水道水や井戸水等の水で例えば約500倍〜約3000倍に希釈し、この希釈水溶液をニームオイルに所定量添加配合して水溶液を調製し、この水溶液を前記有機質肥料に適当量添加して混合し、これを粉末状、粒状、或いはペレット状等に処理加工して植物保護活性剤を製造し、これを植物に適用することができる。
前記により、製造した植物保護活性剤は、例えば田畑等の土壌の散布し、或いは混入する等により使用するのに適している。植物に対する前記植物保護活性剤の使用量は特に限定するものではなく、植物の種類やその他の種々の状況等に応じて適当に決定できる。例えば、農作物に適用する場合、例えば1平米(1m)に対し、例えば約0.1kg〜約0.3kg程度の範囲を挙げることができる。但し、上記範囲に限定するものではない。なお、この植物保護活性剤を使用する場合、所望に応じて前記原液A又はB又はCの前記希釈水溶液と併用することもできる。
【0058】
実施の形態3において、ニームの器官を採用する場合、ニームの器官と前記有機質肥料との配合比は前述したように特に限定するものではないが、例示的な配合割合として、重量比で前者約0.5〜約1.5:後者約0.5〜約1.5程度の範囲に設定することができる。前記原液(原液A又はB又はC)の配合比は実施の形態1及び2と同様に、ニームの器官に対し、重量比でニームの器官1:前記原液約1/100〜約1/100,000程度の範囲に設定することができる。但し、前記範囲内に限定するものではない。
【0059】
ニームの器官を採用する場合、上記と同様に、前記原液(原液A又はB又はC)の希釈水溶液をニームの器官に所定量添加混合し、これを前記した割合で前記有機質肥料に配合して混合し、これを粉末状、粒状、或いはペレット状等に処理加工して植物保護活性剤を製造し、これを植物に適用する。
前記により製造した植物保護活性剤は、例えば田畑等の土壌に散布し、或いは混入する等により使用するのに適している。植物に対する前記植物保護活性剤の使用量は特に限定するものではなく、植物の種類やその他の状況等に応じて適当に決定できる。例えば、農作物に適用する場合、例えば1平米(1m)に対し、例えば約0.1kg〜約0.3kg程度の範囲を挙げることができる。但し、上記範囲に限定するものではない。なお、この植物保護活性剤を使用する場合においても前記原液A又はB又はCの前記希釈水溶液と併用することもできる。
【0060】
実施の形態3において、ニーム粕を採用する場合、ニーム粕と前記有機質肥料との配合比は前述したように特に限定するものではないが、例示的な配合割合として、重量比で前者約0.5〜約1.5:後者約0.5〜約1.5程度の範囲に設定することができる。また、前記原液(原液A又はB又はC)の配合比は実施の形態1及び2と同様に、ニーム粕に対し、重量比でニーム粕1:前記原液約1/100〜約1/100,000程度の範囲に設定することができる。但し、前記範囲内に限定するものではない。
【0061】
ニーム粕を採用する場合、上述したニーム器官と同様の方法により調製して粉末状、粒状、或いはペレット状等に処理加工して植物保護活性剤を製造し、これを植物に適用する。この植物保護活性剤も例えば田畑等の土壌に散布し、或いは混入する等により使用するのに適している。植物に対する植物保護活性剤の使用量は特に限定するものではなく、植物の種類やその他の状況等に応じて適当に決定できるものであるが、例えばニームの器官の場合と同様の範囲を挙げることができる。但し、上記範囲に限定するものではない。なお、この植物保護活性剤を使用する場合においても前記原液A又はB又はCの前記希釈水溶液と併用することもできる。
【0062】
(実施の形態4)
実施の形態4の植物保護活性剤は、実施の形態3の植物保護活性剤において、成分として、さらに枯草菌を含有して製造される。具体的には実施の形態3の植物保護活性剤を構成する組成物に枯草菌を添加して調製される。
前記枯草菌は市販のもの(枯草菌溶液)を使用することができる。前記枯草菌の添加量は適当に決定することができる。
【0063】
(実施の形態5)
実施の形態5は、実施の形態3又は4の植物保護活性剤において、成分として、さらに苦汁を含有して製造される。具体的には、前記植物保護活性剤を構成する組成物に苦汁を添加して調製される。苦汁としては天然苦汁を採用する。前記苦汁の添加量は適当に決定することができる。
【0064】
(実施の形態6)
実施の形態6は、実施の形態3〜5のいずれかの植物保護活性剤において、成分として、さらにゼオライトを含有して製造する。具体的には、前記植物保護活性剤を構成する組成物にゼオライトを添加して調製する。ゼオライトは粉末化した市販のものを採用することができる。前記ゼオライトの添加量は適当に決定することができる。
【0065】
次に本発明の実施例を説明する。下記の実施例はその一例として開示したもので、本発明はこれらに限定されるものではないこと勿論である。
【0066】
以下に示す実施例は、ニームオイル及びニーム粕として、市販のものを採用した。サトウキビの搾り粕として、市販のバガスパウダーを、米ぬかとして市販の米ぬかを、また、おからとして、市販の乾燥したおから(乾燥したおから)を採用した。
さらに、以下に示す実施例では、前記原液Aとして、実施の形態1の二価三価鉄塩の原液の製造例1により製造した約1000倍希釈の水溶液、即ち、前記製造例1の前記二価三価鉄塩約0.1%水溶液を採用した。
また、前記原液Bとして、実施の形態1の二価三価鉄塩の原液の製造例2により製造した約1000倍希釈の水溶液、即ち、前記製造例2の前記二価三価鉄塩約0.1%水溶液を採用した。
さらにまた、前記原液Cとして、実施の形態2の二価三価鉄塩の原液の製造例3により製造した約1000倍希釈の水溶液、即ち、前記製造例3の前記二価三価鉄塩約0.1%水溶液を採用した。
【実施例1】
【0067】
前記原液A(前記二価三価鉄塩約0.1%水溶液)を水(水道水)で1000倍に希釈して希釈水溶液を調製する。そして、ニームオイルに対し、前記希釈水溶液を容量比で400倍の割合で添加(配合)、即ち、容量比でニームオイル1に対し、前記希釈水溶液を400の割合で配合して植物保護活性剤を得た。
【実施例2】
【0068】
ニーム粕に対し、実施例1の前記希釈水溶液(前記原液Aを水で1000倍に希釈した水溶液)を、ニーム粕の容量の10%添加(霧吹き等で吹き付ける)し、これを発酵(約3日間)させて植物保護活性剤を得た。
【0069】
(試験例)
次に実施例1及び2の植物保護活性剤について実施した試験例を以下に示す。
【0070】
本件試験は鉢植したトマトについて、線虫(ジンバンクより購入したネコブセンチュウ)を接種し、ネコブセンチュウ(以下、単に「センチュウ」という)の感染度(センチュウによる病害の発生ないし抑制度)及び植物の成長度を主として測定する方法で以下の条件で実施した。その測定結果を下記表1に示す。
【0071】
<試験準備等>
鉢…高さ18cm、下端の直径13.5cm、上端の直径15cmの円錐台状のプラスチック製の鉢を使用。
検体の構成…各区を5鉢の群で構成し、A区〜F区の6区画(群)の検体(6区画×5検体=30鉢)を作成した。
土壌…鉢の容積の90%の量の土壌を各鉢に入れる。この場合、F区の各鉢には、実施例2で製造した植物保護活性剤を土壌に対し、容量比で10%の割合で配合して調製した配合土壌を入れた。また、E区の各鉢には、実施例2の植物保護活性剤において、前記希釈水溶液(原液Aを水で1000倍に希釈した希釈水溶液)に代え、水(水道水)を使用する以外は実施例2と同一の方法で調製した組成物(植物保護活性剤)を土壌に対し、容量比で10%の割合で配合して調製した配合土壌を入れた。
苗の定植…トマト播種後30日経ったトマト苗を各鉢に定植する。なお、定植の1週間前に、各鉢に水(水道水)を100mlづつ散布し、各鉢内の土壌を湿らせておく。
センチュウの接種…定植して1週間後に各区画(A〜F)の各鉢にセンチュウを約200匹宛づつ接種した。
【0072】
<試験方法>
各区画(A〜F)の検体について次の方法で試験を実施。試験期間はトマト苗の定植から2ヶ月間。即ち、定植後、2ヶ月で試験を終了し、測定した。
A区画…A区の各鉢に、センチュウを接種して1週間後に水(水道水)を100ml灌注、その後は7日に1回の割合で水道水を50ml宛づつ灌注した。
B区画…B区の各鉢に、センチュウを接種して1週間後に、実施例1の前記希釈水溶液(原液Aを水で1000倍に希釈した希釈水溶液)を100ml灌注、その後は7日に1回の割合で前記希釈水溶液を50ml宛づつ灌注した。
C区画…C区の各鉢に、センチュウを接種して1週間後に、実施例1のニームオイルを水(水道水)で400倍に希釈した希釈ニームオイル水溶液を100ml灌注、その後は7日に1回の割合で前記希釈ニーム水溶液を50ml宛づつ灌注した。
D区画…D区の各鉢に、センチュウを接種して1週間後に、実施例1で製造した植物保護活性剤を100ml灌注、その後は7日に1回の割合で前記植物保護活性剤を50ml宛づつ灌注した。
E区画…E区の各鉢に、センチュウを接種して1週間後に水(水道水)を100ml灌注、その後は7日に1回の割合で水道水を50ml宛づつ灌注した。
F区画…F区の各鉢に、センチュウを接種して1週間後に、実施例1の前記希釈水溶液(原液Aを水で1000倍に希釈した希釈水溶液)を100ml灌注、その後は7日に1回の割合で前記希釈水溶液を50ml宛づつ灌注した。
【0073】
上記方法により試験を実施した各区画(A〜F)の各検体(植物)について、センチュウの感染度及び植物の成長度を測定した結果は下記表1に示すとおりであった。
植物の成長度は草丈(主茎の根元部から茎頂部までの長さ)を基準にして測定(単位:mm)し、判定した。表1中、草丈の項目(欄)の数値は各区の群の平均数値(単位:mm)を示し、小数点以下一桁目の数値は四捨五入して示す。また、表1中、感染度の欄に示す数値はセンチュウの感染度を下記の事実を基準としてランク付けした測定値(各区の群の平均数値)を示す。さらにまた、表1中の感染度の欄のカッコ内の数値は根こぶの数(各区の群の平均数値:小数点以下一桁目の数値は四捨五入して示す)を示す。
0:全く感染せず
1:根こぶ数5以下
2:根こぶ数5〜20
3:根こぶ数20〜50
4:根こぶ数50以上
5:根こぶのため生育障害が出ている(しおれる)
6:根こぶ被害大(枯死)
【0074】
【表1】

【0075】
上記試験結果により、A区及びB区の各検体(植物)はセンチュウ感染により、根の生育障害が顕著に現われ、しおれていると共に葉枯がしどくなって枯死しているものもあることが判明した。上記状態(状況)について、両者にほとんど差は認められなかったが、B区の方がA区に比べて極く微かだけセンチュウによる被害を抑えているようにも見受けられた。
一方、上記1により明らかなとおり、C区〜F区の各検体(植物)については、A区及びB区の植物に比べてセンチュウ感染根(根こぶ)の数が極端に少なく、発根も旺盛であり、かつ、植物の成長(生育)において比較できないほど良好であった。
しかし、C区〜F区の各検体(植物)のうち、D区の各検体(実施例1の植物保護活性剤を使用した植物)は、C区の各検体に比べ、また、F区の各植物(実施例2の植物保護活性剤を使用した植物)はE区の各検体に比べ、センチュウ防除ないしセンチュウ駆除効果(ニームの効果)を大巾に増強し、センチュウによる植物の被害(病害)を抑制して保護し、植物を活性化して成長促進効果を著しく向上することが判明した。この成果は予期し得ない事実であった。
【実施例3】
【0076】
実施例1の原液Aに代え、前記原液B(前記二価三価鉄塩約0.1%水溶液)を水(水道水)で1000倍に希釈した希釈水溶液を採用する以外は実施例1と全く同様の方法で調製して植物保護活性剤を得た。
【実施例4】
【0077】
実施例1の原液Aに代え、前記原液C(前記二価三価鉄塩約0.1%水溶液)を水(水道水)で1000倍に希釈した希釈水溶液を採用する以外は実施例1と全く同様の方法で調製して植物保護活性剤を得た。
【0078】
上記実施例3及び4の植物保護活性剤を前記同様の方法で植物に使用したところ、実施例1と同様の作用効果を奏することが判明した。
【実施例5】
【0079】
実施例2の原液Aに代え、前記原液Bを採用する以外は実施例2と全く同様の方法で調製して植物保護活性剤を得た。
【実施例6】
【0080】
実施例2の原液Aに代え、前記原液Cを採用する以外は実施例2と全く同様の方法で調製して植物保護活性剤を得た。
【0081】
上記実施例5及び6の植物保護活性剤を前記と同様の方法で植物に使用したところ、実施例2と同様の作用効果を奏することが判明した。
【実施例7】
【0082】
任意の容器等にバガスパウダーを2kg、米ぬかを3kg、及び乾燥おからを1kg入れる。一方、任意の容器等に前記原液Aを水(水道水)で1000倍に希釈した希釈水溶液を990ml入れ、これにニームオイルを10ml添加して1000mlの水溶液を調製する。この水溶液を前記三種類の材料に添加して攪拌混合し、この混合原料(組成物)をペレット成型機等にかけて、直径約3ミリ、長さ約5ミリ程度のペレット状に形成して植物保護活性剤を得た。
【実施例8】
【0083】
実施例7の前記原液Aに代え、前記原液Bを採用する以外は実施例7と全く同様の方法で処理加工してペレット状の植物保護活性剤を得た。
【実施例9】
【0084】
実施例7の前記原液Aに代え、前記原液Cを採用する以外は実施例7と全く同様の方法で処理加工してペレット状の植物保護活性剤を得た。
【0085】
実施例7〜9の植物保護活性剤を上記した実施例2の植物保護活性剤と同様の方法で植物に適用したところ、実施例2、実施例5及び実施例6の植物保護活性剤と比べ、植物の成長を一層促進させることが判明した。
【実施例10】
【0086】
任意の容器等にニーム粕を6kg、バガスパウダーを2kg、米ぬかを3kg、及び乾燥おからを1kg入れる。一方、前記原液Aを水(水道水)で1000倍に希釈した希釈水溶液を2000ml用意する。この希釈水溶液を前記四種類の材料に添加して攪拌混合し、この混合原料(組成物)をペレット成型機等にかけて、実施例7と同様の大きさのペレット状に形成した植物保護活性剤を得た。
【実施例11】
【0087】
実施例10の前記原液Aに代え、前記原液Bを採用する以外は実施例10と同様の方法で処理加工してペレット状の植物保護活性剤を得た。
【実施例12】
【0088】
実施例10の前記原液Aに代え、前記原液Cを採用する以外は実施例10と同様の方法で処理加工してペレット状の植物保護活性剤を得た。
【0089】
実施例10〜12の植物保護活性剤を上記した実施例2の植物保護活性剤と同様の方法で植物に適用したところ、実施例7〜9の植物保護活性剤と同様の作用効果を発揮することが判明した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ニームオイル、ニームの器官、及びニームの器官の粕のうちから選択された一種又は複数種と、二価三価鉄塩を含有してなりなり、
前記二価三価鉄塩は、式、
Fe+2 Fe+3 Cl2m+3n(式中m及びnは正の整数を示す)
で示される化合物であることを特徴とする、
植物保護活性剤。
【請求項2】
請求項1に記載の植物保護活性剤において、前記二価三価鉄塩は、前記式で示される化合物に代え、磁性を帯びた二価三価鉄塩であることを特徴とする、植物保護活性剤。
【請求項3】
前記磁性を帯びた二価三価鉄塩は、磁鉄鉱を濃塩酸に溶解させた後、この溶液を中和し、この中和した溶液を濃縮して結晶化し、この結晶を、磁鉄鉱を濃塩酸に半溶解させた溶液に加える工程を含んで得られる化合物であることを特徴とする、請求項2記載の植物保護活性剤。
【請求項4】
前記二価三価鉄塩は水に溶解して含有されていることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の植物保護活性剤。
【請求項5】
前記植物保護活性剤は成分として、さらに有機質肥料を含んでいることを特徴とする、請求項1ないし4のいずれか1項に記載の植物保護活性剤。
【請求項6】
前記肥料はサトウキビの搾り粕、米ぬか、及びおからの中から選択した一種又は複数種を主成分として含んでなることを特徴とする、請求項5に記載の植物保護活性剤。
【請求項7】
前記植物保護活性剤は成分として、さらに枯草菌、苦汁、及びゼオライトの中から選択した一種又は複数種を含んでいることを特徴とする、請求項1ないし6のいずれか1項に記載の植物保護活性剤。

【公開番号】特開2009−167177(P2009−167177A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−320513(P2008−320513)
【出願日】平成20年12月17日(2008.12.17)
【出願人】(592170259)
【Fターム(参考)】