説明

植物加工品の製造方法

植物又はその処理物を、高温高圧の液体、気体又は流体で処理する植物加工品の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、新規な植物加工品の製造方法および前記方法により得られる植物加工品の利用に関する。
【背景技術】
近年の消費者嗜好の多様化に伴って、新規な香りや味を有する飲料または食品の開発需要はますます高まっている。新規な味、香りを付与することにより商品を差別化し、優位性を高めることができるためである。しかしながら、既存原料を既存方法に従って処理する限り、処理条件などを変化させても従来の延長線上の香味は実現しうるが、全く新しい香味を実現することは通常は困難である。したがって、飲料又は食品における全く新しい香味の実現には、▲1▼既存原料の新規処理方法、▲2▼新規原料の既存処理方法、▲3▼新規原料の新規処理方法が必要と考えられ、これらの技術の開発が求められていた。
これらの方法のうち、いずれの方法を用いるかは飲料または食品の特性等を考慮して選択する必要がある。例えば、ビールにおいては原料が酒税法で麦芽、ホップ、米等に限定されているため、新規原料の開発には限界がある。そのため、既存原料の新規な処理により新規な香味を付与できる技術の開発がより望まれていた。
一方、発泡酒は麦芽を原料として用い、発泡性があるという条件さえ満たせば、その他の原料、製法の制限は存在しないため、新規な原料を使用して香味の多様性を実現しやすい。例えば、発泡酒をはじめとするビール様飲料において、麦芽などの既存の原料にさらに他の成分を含有させた全く新しい原料を用いることにより新規な香味を付与することも行われている(例えば特許技術文献1参照)。しかしながら麦芽等の既存原料を用いている以上、全く新規な香味を付与することは容易ではなかった。そこで、発泡酒などにおいても、既存原料に新規な処理を施して従来にない全く新規な香味を付与する技術の開発が求められていた。
麦芽等の既存原料の処理方法については、従来から種々開発されている。例えば、ビール製造においては、ビール製品の色や香味を整えるために、メラノイジン麦芽またはカラメル麦芽などの特殊麦芽と呼ばれる麦芽が原料の一部として用いられている。これらの特殊麦芽は、麦芽製造工程の焙燥の温度を通常よりも高めに設定しカラメル化やメイラード反応を起こさせることにより製造されている。具体的には、通常の麦芽は、焙燥工程にて80℃程度の温度を2〜6時間程度かけることにより発芽を止めているが、メラノイジン麦芽は、開放系空気下にて100〜130℃程度の加熱下で2〜6時間、カラメル麦芽は130〜160℃程度の加熱下で2〜6時間程度、焙燥を行うことにより製造される。
しかし、上記処理方法は、焙燥時の温度が高いため投入エネルギーが大きくなるという問題を有していた。投入エネルギーの低減という観点から、焙燥工程の時間を短縮できる技術の開発が望まれていた。
また、上記特殊麦芽の製造時における焙燥工程は開放系で行われ酸素が常時供給されるため、麦芽に内在する物質が酸化され、生成した酸化物がビールや発泡酒の品質に好ましくない影響を与えているという問題も有していた。なかでも麦芽中の脂質が酸化されることによって生じる過酸化脂質やアルデヒド類は、酸化臭を放ち、舌に残る後味の悪さを与えるなど、ビールおよび発泡酒の香味を低下させるばかりでなく、泡持ちを低下させたり、香味の安定性を低下させる。そのため、麦芽等の原料を処理する際に、原料に含まれる脂質の酸化を抑制する技術の開発が望まれていた。
かかる状況下、麦芽等を原料とするアルコール飲料の製造工程において物質の酸化を最低限に抑える方法が盛んに研究されている(特許技術文献2、3,4参照)。また、超臨界COによって原料から脂質をとりのぞく技術も開発されている(特許技術文献5参照)。しかし、原料麦芽を製造する工程において麦芽中の脂質の酸化を抑制する技術については、いまだ開発されていない。
【特許技術文献1】
特開平9−37756号公報(請求項1など)
【特許技術文献2】
特開2000−4866号公報
【特許技術文献3】
特開2000−2701号公報
【特許技術文献4】
特開2002−131306号公報
【特許技術文献5】
特許第3255962号明細書
【特許技術文献6】
特開平11−292799号公報(請求項1、第(1)頁右欄45行)
【特許技術文献7】
特開2002−51751号公報(請求項8)
【発明の開示】
本発明は、新規な香味を有する植物加工品の製造方法、および当該植物加工品を原料とする飲食物の製造方法を提供することを目的とする。本発明は、上記植物加工品の製造工程において植物中の物質の酸化を抑制することができる植物加工品の製造方法を提供することも目的とする。本発明は、処理時間を短縮し、投入エネルギーを低減することができる植物加工品の製造方法を提供することも目的とする。
本発明者らは上記の課題を解決するために鋭意検討を行った結果、低酸素条件下、高温高圧の液体または気体で植物を処理することにより、植物中のリグニンが分解されて、リグニンの構成成分であるバニリン、p−クマル酸(パラ−クマル酸)またはフェルラ酸などの低分子フェノール化合物が増加し、植物に新規な香味を付与できることを知見した。さらに、当該処理により植物に含まれる成分間でメイラード反応が起こること、有機酸が増加すること等を知見した。当該処理により生成するメイラード反応産物や有機酸、当該処理によるその他の含有物の変化等により、新たな香り、味、色を有する植物加工品および当該植物加工品を原料とする飲食物を提供できる。
さらに上記処理によれば、植物に含まれる脂質またはポリフェノール等の酸化劣化を低減できることを知見した。その結果、上記処理によれば、過酸化脂質などの酸化物の生成を抑えた新規な植物加工品および当該植物加工品を原料とする飲食物を提供できる。
植物を超臨界水または亜臨界水で処理し、バニリンをはじめとする芳香族化合物を製造する方法は既に知られている(特許技術文献6、請求項1および0010欄参照。)。しかし、超臨界水または亜臨界水での処理を低酸素状態で行うことについての記載は全くない。そればかりか、植物体中に含まれている脂質などの酸化劣化に対する対策は全く取られておらず、示唆さえもされていない。
超臨界水または亜臨界水処理よりも低温低圧の条件で植物等を処理する技術としては、脱塩もしくは減塩処理した海洋深層水を用いて種子を高温高圧抽出する技術(特許技術文献7、請求項8等参照)がある。これは無色透明かつ無臭、無味なミネラル水を提供することを目的としており、リグニンを分解し新規な香味を付与することについては記載も示唆もされていない。さらに植物成分の酸化防止という面からは何ら対策がなされておらず、処理時間も40分と長時間かかる等の問題があった。
すなわち、本発明は、
(1) 植物又はその処理物を、0〜1μg/mLの酸素濃度下、高温高圧の液体、気体又は流体で処理することを特徴とする植物加工品の製造方法、
(2) 植物又はその処理物を、0〜1μg/mLの酸素濃度下、温度140〜500℃および圧力0.1〜100MPaの液体、気体又は流体で、1〜3600秒間処理することを特徴とする上記(1)に記載の植物加工品の製造方法、
(3) 植物又はその処理物を、0〜1μg/mLの酸素濃度下、温度160〜250℃および圧力0.5〜4.5MPaの液体、気体又は流体で、10〜1200秒間処理することを特徴とする上記(1)に記載の植物加工品の製造方法、
(4) 液体、気体又は流体が、脱気した液体由来であることを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれかに記載の植物加工品の製造方法、
(5) 処理前に、酸素濃度0〜1μg/mLの気体で処理容器内を置換することを特徴とする上記(1)〜(4)のいずれかに記載の植物加工品の製造方法、
(6) 酸素濃度0〜1μg/mLの気体が、不活性ガス、二酸化炭素または脱酸素した気体であることを特徴とする上記(5)に記載の植物加工品の製造方法、
(7) 植物又はその処理物が、リグニンを含有する植物又はその処理物であることを特徴とする上記(1)〜(6)のいずれかに記載の植物加工品の製造方法、
(8) リグニンを含有する植物又はその処理物が、穀類、樹木、茶類およびそれらの処理物、ならびに糖化かすから選ばれる1種以上であることを特徴とする上記(7)に記載の植物加工品の製造方法、
に関する。
また、本発明は、
(9) 上記(1)〜(8)のいずれかに記載の方法で製造され、バニリンを0.15mg/100g以上含有することを特徴とする植物加工品、
(10) 穀類、樹木、茶類またはそれらの処理物の加工品である上記(9)記載の植物加工品、
(11) 麦芽または麦芽穀皮の加工品である上記(10)に記載の植物加工品、
(12) 上記(9)〜(11)のいずれかに記載の植物加工品を原料として製造される飲食物、
(13) 飲食物が、酒類および清涼飲料から選ばれる飲料または製菓および飯類から選ばれる食品である上記(12)に記載の飲食物、
(14) 上記(9)〜(11)のいずれかに記載の植物加工品を原料として製造される飲食物、
(15) 飲食物が酒類である上記(14)に記載の飲食物、
(16) 上記(9)〜(11)のいずれかに記載の植物加工品が、水以外の原料に対して0%より多く、100%以下の範囲で原料として使用されている上記(12)に記載の飲食物、
(17) 上記(9)〜(11)のいずれかに記載の植物加工品の水以外の原料に対する使用率が、0.1重量%〜50重量%である上記(16)に記載の飲食物、
(18) 上記(9)〜(11)のいずれかに記載の植物加工品の水以外の原料に対する使用率が0.3重量%〜30重量%である上記(16)に記載の飲食物、
(19) バニリンを0.005μg/mL以上含有することを特徴とする上記(12)〜(18)のいずれかに記載の飲食物、及び
(20) 上記(9)〜(11)のいずれかに記載の植物加工品を原料の少なくとも一部に用いて製造されるビール、
に関する。
ここで、ビールとは、酒税法上のビールおよび発泡酒を含めたビール様飲料を含む。
また、本発明は、
(21) バニリン含有組成物の製造方法であって、リグニンを含有する植物又はその処理物を高温高圧の液体、気体又は流体で処理することにより、バニリン含有量を増加させることを特徴とするバニリン含有組成物の製造方法、
(22) 高温高圧条件が温度140℃ないし500℃、及び圧力0.1ないし100MPaである上記(21)に記載のバニリン含有組成物の製造方法、
(23) 高温高圧処理時間が1〜3600秒間である上記(21)または(22)に記載のバニリン含有組成物の製造方法、
(24) バニリン含有組成物が飲食物原料である上記(21)〜(23)のいずれかに記載のバニリン含有組成物の製造方法、
(25) バニリン含有組成物が酒類原料又は茶飲料原料である上記(21)〜(24)のいずれかに記載のバニリン含有組成物の製造方法、
(26) リグニンを含有する植物又はその処理物が穀類由来である上記(21)〜(25)のいずれかに記載のバニリン含有組成物の製造方法、
(27) 穀類が麦芽である上記(26)に記載のバニリン含有組成物の製造方法、
(28) バニリンの含有率が、高温高圧処理前のリグニンを含有する植物又はその処理物の含有率に比べ3倍以上である上記(21)〜(27)のいずれかに記載のバニリン含有組成物の製造方法、
(29) 前記高温高圧処理後に、処理産物を高圧から低圧へ暴露することにより、水分を蒸散させるとともに膨化させる工程を含むことを特徴とする上記(21)〜(28)のいずれかに記載のバニリン含有組成物の製造方法、
(30) エクストルーダを用いることを特徴とする上記(21)〜(29)のいずれかに記載のバニリン含有組成物の製造方法、
(31) バニリン含有組成物が膨化したスティック状、円柱状、多角柱状、球状又は多角体状である上記(29)または(30)に記載のバニリン含有組成物の製造方法、
(32) 0〜1μg/mLの酸素濃度下に、植物、その処理物又はこれらを含む原料を処理することを特徴とする上記(21)〜(31)のいずれかに記載のバニリン含有組成物の製造方法、
(33) 上記(21)〜(32)のいずれかに記載の製造方法により製造されたバニリン含有組成物、
(34) 上記(21)〜(32)のいずれかに記載の製造方法により製造された麦芽含有組成物、
(35) 上記(21)〜(32)のいずれかに記載の製造方法により製造されたバニリン含有組成物を原料として製造された飲食物、
(36) 飲食物がビール、発泡酒、ウイスキー、焼酎、果実酒類のいずれかである上記(35)に記載の飲食物、
(37) バニリンを0.005μg/mL以上含有する上記(35)に記載の飲食物、及び
(38) 飲食物がビール、発泡酒、ウイスキー、焼酎、果実酒類のいずれかである上記(37)に記載の飲食物、
に関する。
本発明によれば、植物中の水難溶性の化合物であるリグニン類を加水分解および熱分解することができ、その構成成分である低分子リグニン系フェノール化合物を含む植物加工品を得ることができる。これにより、従来にない芳ばしい香味やコクを有する植物加工品を提供することができる。
本発明においては、高温高圧の液体又は気体での処理を密閉系で行うことにより低酸素状態を保ち、植物成分と酸素との接触を最低限に抑えることができる。その結果、植物に内在する物質、特に脂質やアルデヒドの酸化を抑えることができる。これにより、植物に内在する物質の酸化による酸化臭や舌に残る後味の悪さを抑えた植物加工品を提供することができる。
さらに、本発明においては、植物の処理に高温高圧の液体又は気体を用いることにより、処理時間を短縮することができ、投入エネルギーも低減することができる。
また、植物を高温高圧の液体または気体で処理すれば、植物中の成分間でメラード反応が起こり褐変するため、植物加工品に褐色を付与することができるという効果も得ることができる。
本発明において穀類の殻皮などを用いる場合、従来利用されずに廃棄されていた殻皮等を有効利用できるというリサイクル効果も得られる。
【図面の簡単な説明】
第1図は、欧州産2条大麦麦芽、同麦芽を高温高圧処理して得た高温高圧処理麦芽、各特殊麦芽の長鎖脂肪酸分析の結果である。
第2図は、欧州産2条大麦麦芽、同麦芽を高温高圧処理して得た高温高圧処理麦芽、各特殊麦芽の脂質過酸化度である。
第3図は、欧州産2条大麦麦芽、同麦芽を高温高圧処理して得た高温高圧処理麦芽、各特殊麦芽のアルデヒド分析の結果である。
【発明を実施するための最良の形態】
本発明において使用される植物としては特に限定されないが、リグニンを含有する植物が特に好ましい。ここで、リグニンとは、p−ヒドロキシ桂皮酸アルコール類の酵素による脱水素重合生成物で、一定のメトキシル基を持つものを言う(中野準三編 リグニンの化学増補改訂版 15頁 ユニ出版株式会社 平成2年)。前記リグニンを含有する植物としては、典型的には維管束植物、すなわち、種子植物及びシダ植物が挙げられるが、リグニンを含有すればその他の植物種であっても使用できる。具体的には、例えば、オオムギ、コムギ、ライムギ、カラスムギ、オートムギ、イネ、トウモロコシ、ヒエ、アワ、キビ、ソバもしくはハトムギなどの穀類;オーク、サクラ、キハダ、カエデ、トチ、クリ、エンジュ、ケヤキ、ヒノキ、スギ、コウヤマキ、竹、ミズナラ、松、ヒバ、笹、桐、梅、桃、藤、樅、楡、銀杏、椿、柳、桑、チーク、マホガニー、木蓮、柿、杏、花梨、ハマナス、バラ、枇杷、ボケ、キンモクセイ、楠、イチイ、アカシアもしくはウコギなどの樹木;茶類;ダイズ、アズキ、エンドウ、ソラマメもしくはインゲンマメなどの豆類などが挙げられるがこれらに限られない。リグニンを含有する組成物には上述の植物やそれらの混合物も含まれる。バニリン含有組成物とはリグニンを含有する組成物を本発明にかかる高温高圧処理を行ってバニリンを組成物の内部に含むようになった組成物をいう。
本発明において上記「植物」には、完全な植物体の他に、植物組織、または植物体もしくは植物組織の処理物も含まれるが、本発明には、植物自体のみならずその処理物も使用され得る。前記植物組織としては、植物体の一部であれば特に限定されないが、例えば、発芽させた種子、発芽していない種子、種皮、芽、花、茎、葉または根等が挙げられる。前記処理物としては、植物体または植物組織に何らかの処理を加えたものであれば特に限定されないが、例えば、粉砕物、破砕物、摩砕物、乾燥物、凍結乾燥物または抽出(超臨界抽出も含む)物、その濃縮物もしくは抽出後の固形分などが挙げられる。より具体的には、穀類の穀皮、麦芽、樹木の細断物もしくは粉末状の粉砕物、または糖化かすなどが本発明で使用する植物として好適に使用される。
以上述べてきた本発明において使用される植物には、菌類なども含まれる。
本発明においては、上述した植物又はその処理物を高温高圧の液体、気体又は流体で処理する。以下、この処理を高温高圧処理ともいう。
前記処理に用いる液体としては、例えば、水、アルコール、ビール、発泡酒、ウィスキー、ウォッカ、ジン、ラム酒、マオタイ酒、ウィスキー原酒、焼酎、ワイン、ブランデー、ジュース、茶もしくは麦芽飲料等、またはこれらのうち2種以上の液体の混合物が挙げられる。また、上述の液体として、予め前処理を施した液体を用いることもできる。前処理としては、例えば、脱気処理、予め添加物質を加えるなどの処理が挙げられる。前記脱気処理としては、例えば、脱酸素処理、減圧処理等が挙げられる。前記添加物質としては、例えば、ビタミンCなどの抗酸化物質、酸化ジルコニウムなどのリグニン分解の触媒効果を有する物質、乳酸もしくは酢酸などの酸性物質、または炭酸ナトリウムもしくは炭酸水素ナトリウムなどの塩基性物質などが挙げられる。また、前処理としては、上述の液体を濃縮もしくは希釈する処理、または液体のpHを変化させる処理なども挙げられる。
高温高圧処理に用いる気体としては、上述の液体の蒸気などが挙げられる。具体的には、水蒸気、アルコール蒸気、またはビール、ウィスキーもしくは茶等の蒸気、あるいはこれらのうち2種以上の気体の混合物などが挙げられる。
高温高圧処理に用いる流体としては、上述の液体由来の流体などが挙げられ、超臨界流体または亜臨界流体等が含まれる。ある特定の圧力と温度(臨界点)を越えると、気体と液体の境界面が消失して両者が渾然一体となった流体の状態を維持する範囲が存在する。こうした流体を超臨界流体といい、気体と液体の中間の性質を持つ高密度の流体となる。亜臨界流体とは、臨界点よりも圧力および温度が低い状態の流体である。
高温高圧処理時の液体、気体又は流体の温度は約140〜500℃程度が好ましい。リグニンの分解を十分に促進するためには約140℃以上が好ましく、安全の確保、投入エネルギーの低減または設備投資などの観点からは約500℃以下が好ましい。また、処理による酸化、それに伴うこげ臭等が強くなり過ぎない程度の温度を選択することが好ましい。前記温度は、より好ましくは約160〜250℃の範囲であり、この範囲であればリグニン分解がより効率的に起こり、資化性糖の減少も少なく、反応の制御も容易であり、こげ臭の少ない加工品が得られる。特に好ましくは約180〜250℃であり、この範囲であればさらにリグニン分解が進み、さらに芳香成分が増加し,香りがより良くなるという効果がある。また約250℃以下であれば、脂質の酸化を抑制し、酸化臭を抑えた植物加工品を製造できるという効果がある。なお、温度範囲に関しては約140〜500℃の範囲内において、最も好ましい約180〜250℃の範囲に近づくほど本発明の効果がより高度に発揮できるものである。したがって、約140〜500℃以下の範囲内のいかなる数値においてその範囲を区切っても、それに応じた効果を発揮できるものである。
高温高圧処理時の液体、気体又は流体の圧力は、約0.1〜100MPaであることが好ましい。本明細書で「圧力」というときは「ゲージ圧力」を意味する。従って、例えば「圧力0.1MPa」は絶対圧力に換算すると、大気圧に0.1MPaを加えた圧力となる。この範囲であれば、植物中のリグニンをより効率的に分解できる。前記圧力は約0.25〜4.5MPaがより好ましい。なお、圧力に関しては約0.1〜100MPaの範囲内において、最も好ましい約0.25〜4.5MPaの範囲に近づくほど本発明の効果がより高度に発揮できるものである。したがって、約0.1〜100MPaの範囲内のいかなる数値においてその範囲を区切っても、それに応じた効果を発揮できるものである。
高温高圧処理は、約0〜1μg/mL程度の酸素濃度で行うのが好ましい。本発明においては、公知手段を用いてかかる低酸素状態にすることができる。例えば、上記処理に用いる高温高圧の液体として、脱気した(空気を除去した)液体を用いることにより前記低酸素状態にすることができる。脱気した液体の代わりに、酸素を除去できる物質を予め添加した液体などを用いることもできる。また、上記処理前に、酸素濃度約0〜1μg/mLの気体で処理容器内を置換することによっても、前記低酸素状態にすることができる。ここで、酸素濃度約0〜1μg/mLの気体としては、特に限定されないが、窒素などの不活性ガス、二酸化炭素または脱酸素した気体であることが好ましい。脱酸素した気体としては、脱気した液体を沸騰させて得られる気体などが挙げられる。上記処理中の酸素濃度は、公知の方法で測定することができ、例えば通常の溶存酸素計(DOメータ)によって測定することができる。
高温高圧処理を低酸素状態で行うことにより、植物中の物質、特に酸化されやすい脂質またはポリフェノール等が酸化劣化するのを抑制することができる。また、ボイラなどの処理容器などの腐食や劣化も押さえることができる。
処理時間は、好ましくは約1〜3600秒間であり、より好ましくは約10〜1200秒間である。より安定で、より確実に反応を起こすことができ、かつより酸化の影響の少ない植物加工品を得るためには上記範囲が好ましい。さらに好ましくは、処理時間は約10〜600秒間の範囲であり、この範囲であればより投入エネルギーを低減できるという効果が得られる。特に好ましくは約10〜300秒間であり、この範囲であればさらに投入エネルギーを低減でき、設備の稼働率を上げられるという効果がある。なお、処理時間に関しては約1〜3600秒間の範囲内において、最も好ましい約10〜300秒間の範囲に近づくほど本発明の効果が発揮できるものである。したがって、約1〜3600秒間の範囲内のいかなる数値においてその範囲を区切っても、それに応じた効果を発揮できるものである。
高温高圧処理に使用する装置は特に限定されず、高温高圧に耐えられる構造のものであればいかなるものでも使用できる。例えば、前記装置としては、耐圧の反応容器と加熱装置が組み合わされている装置が挙げられる。かかる装置では、液体または気体が加熱装置で加熱され高温高圧状態の液体または気体となって反応容器に送られる。加熱装置は加熱できればいかなるものも使用できる。例えば電気、石油、石炭もしくはガスによる加熱、太陽熱による加熱、地熱による加熱等が挙げられるがこれらに限られない。また、前記装置は単なる耐熱耐圧パイプの類でもよい。反応容器またはパイプの素材は耐圧耐熱であればよいが、金属等の成分が溶出したり、有毒物質が生成したり、好ましくない臭いが生ずるような材質でないほうが好ましい。前記素材としては、無用の反応や腐食、劣化などを防ぐためステンレスなどの素材が好ましいがこれに限定されるものではない。
本発明においては、高温高圧処理後に公知の処理を行ってもよい。前記公知の処理としては、例えば、粉砕、抽出(超臨界抽出も含む)、乾燥等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。
液体、気体又は流体で処理した後、さらに、乾燥の工程を付加することもできる。処理後そのまま放置した場合にはでんぷんが湖化し、冷えると固くなるため次の粉砕工程に労力が必要となる。より扱いやすい形態の加工品とするために、粉砕が容易になる乾燥工程を付加することが望ましい。そのための一つの方法としては、処理後、急激に圧力を下げ、水分を短時間で飛散させることにより急速に乾燥させる方法が挙げられる。この方法によれば、急激な圧力の低下により、組織がスポンジ状となり、通常の乾燥のように固くなるという問題を解消できる。この乾燥工程により、その後の溶解や粉砕も容易となる。この乾燥工程を積極的に付加することにより、液体、気体又は流体処理物を自然乾燥するよりもより次の工程で利用しやすい形態のものとして得ることが可能となる。
また、上記の乾燥工程に際し、液体、気体又は流体処理物を押し出しまたは引き出し手段と所望によりさらに切断手段とを組み合わせることにより、任意の形状に成型することもできる。形状としてはスティック状、円柱状、球状、多角柱状、多角体状等所望に応じて変形することができる。また、この際、加工物の水分含有率を操作することも可能である。
また、高温高圧処理と同時、または、高温高圧処理前に粉砕する工程を付加することもできる。これにより、均一な処理が可能となり、混合物の原料を均一に混合し、本発明の高温高圧処理物を均一なものにすることもできる。本発明の高温高圧処理物の成型もより容易になるという効果を有する。さらに粉砕に加えて混合する工程を付加することもできる。これにより、粉砕した原料を均一に混合することができるという効果を有する。
上記乾燥工程において、乾燥時の高温高圧処理物の酸化を防止するため、真空もしくは減圧下での乾燥、あるいは不活性ガスで置換した雰囲気中で乾燥させることもできる。これにより、脂質の酸化などの問題を防止することができる。不活性ガスとしては、例えば窒素、アルゴン、二酸化炭素、水素等が挙げられるが、これらに限定されない。要するに酸化を防止できる気体であればよい。
本発明は必ずしも低酸素の条件で高温高圧処理を行わなくても十分その効果を得ることができる。したがって、特に脱気した水を使用しなくても目的とする効果を得ることができる。
本発明を効率よく行う装置としては、エクストルーダの使用が挙げられる。これによれば、上記処理後の操作が非常に容易となる。また、連続処理が可能なことから多量の加工品を供給するためにもエクストルーダの使用が適している。エクストルーダは膨化食品などの製造によく用いられている処理方法であり、エクストルーダとしては押し出し筒内に配置された二軸等の多軸または一軸のスクリューにより、原料を混合しながら加熱加圧し、高温高圧状態でダイから押し出す装置が挙げられる。本発明においては安定して高温高圧処理を行えることから二軸型がより好ましい。本発明においては、エクストルーダ処理の条件は、圧力約0.1ないし100MPa、温度140℃ないし250℃程度が望ましい。より好ましくは圧力約0.5ないし4.5Mpaで温度約160℃ないし250℃で約10秒間ないし1200秒間の範囲で処理するのがよい。この範囲では効率よくリグニンを分解でき、バニリン含有率が増加し、焦げも少ない植物加工品が得られる。エクストルーダを用いることにより、連続処理が可能となり、また、処理後に、処理雰囲気を高圧から低圧に急激に開放すれば、水分が蒸散し、また、上記したようにダイの形状を適当に選択することにより、所望の形状に成型された処理物が得られる。この場合、処理物が膨化しており、処理物を水分等の液体に溶かす場合に、処理物が液体に溶けやすいというメリットもある。エクストルーダを用いて処理する場合には特に酸素濃度を管理して行わなくてもよい。すなわち、脱気した水を用いず、通常のエクストルーダの運転方法にしたがって処理すればよい。
エクストルーダ以外の装置で本発明を実施するのに適した装置としては、バッチ処理後に急速に開放するいわゆるポン菓子用の装置等が利用可能である。本発明を実施可能な高温高圧処理できるポン菓子装置は、SUS等高温高圧に耐える素材を用いて作成するのが好ましい。これらの装置以外でも本発明の上記の条件を実現できる装置であれば、いかなる装置でもよい。新たな装置の開発も期待される。
従来、リグニンの分解を効率的に行える実用的な条件はまだ開発されていなかった。本発明はこれを解決するものである。本発明の効果は根本的にはリグニンを分解することによるが、今回の発明で初めてリグニンの効率的な分解とその分解物の種々飲食品製造のための原料化への道が開けた。これにより、全く新しい味と香りを有するビール、発泡酒が製造できる。
上記のような高温高圧処理により得られる植物加工品は、処理前よりもリグニン系フェノール化合物を多く含んでいる。「リグニン系フェノール化合物」とは、リグニンを構成するフェノール化合物の総称であり、リグニンの分解等によって生ずるフェノール化合物が含まれる。低分子のものでは、p−クマル酸などのp−ヒドロキシフェニル化合物、バニリンもしくはフェルラ酸などのグアイアシル化合物、またはシリンガ酸もしくはシリンガアルデヒドなどのシリンジル化合物などが含まれ、またそれらのオリゴマーも含まれる。
このようにリグニン系フェノール化合物の含有量が増加すれば、それらに由来する芳ばしい香りやコク、ウマミを植物加工品に付与することができる。さらに、上記高温高圧処理によりメイラード反応による褐変も起こるため、例えば本発明の麦芽加工品は従来のメラノイジン麦芽およびカラメル麦芽などの特殊麦芽の代用品としても用いることができる。
上記のような高温高圧処理により得られる植物加工品としては、バニリンを約0.05mg/100g以上、とりわけ約0.15mg/100g以上含有する植物加工品が好ましい。植物加工品中のバニリンは実施例1記載の方法により測定することができる。バニリンは天然の植物などには微量しか含まれていないため、バニリン含有量を本発明にかかる処理の指標として用いることができる。すなわち、バニリン含有量を測定することで高温高圧処理によるリグニン分解効率を確認することができ、品質管理などにも利用できる。
特に、穀類またはその処理物の加工品については、バニリンを約0.15mg/100g以上含有することがより好ましい。麦芽、発芽していないオオムギ種子、イネ種子などの穀類またはその処理物においては、上記処理によりリグニンが分解され、通常ほとんど検出されないバニリンや、少量含有されているp−クマル酸もしくはフェルラ酸などのリグニン系フェノール化合物を大量に生成させることができるからである。より具体的には、麦芽を高温高圧下に気体、液体又は流体で処理して得られる加工品の場合、バニリンを約0.05〜150mg/麦芽100g、より好ましくは約0.1〜150mg/麦芽100g、さらに好ましくは約0.15〜150mg/麦芽100g含有することがより好ましい。麦芽穀皮を上記処理して得られる麦芽殻皮加工品の場合、バニリンを約0.15〜150mg/麦芽穀皮100g、より好ましくは約0.3〜100mg/麦芽穀皮100g、さらに好ましくは約0.3〜75mg/麦芽穀皮100g含有することがとくに好ましい。
本発明の植物加工品としては、従来の植物加工品よりも酸化物の含有量が低減されていることが特徴である。生成酸化物の含有量を直接測定することは難しい。そのため、植物加工品の脂質に注目し、脂質酸化物である共役ジエンを持つ脂肪酸、アルデヒド類および遊離脂肪酸を解析し判断する。前記植物加工品としては234nmにおける吸光度が従来の植物加工品よりも実質的に少ない植物加工品が好適な例として挙げられる。不飽和脂肪酸酸化物である共役ジエンは234nmに強い吸収を持つから、234nmにおける吸光度が少ないほど不飽和脂肪酸が酸化されていないことを示す。また、上記共役ジエン型脂肪酸が共役ジエンのところで切断されて生成するアルデヒド類の含有量が従来の植物加工品よりも実質的に少ない植物加工品も好適な例として挙げられる。アルデヒド類は脂肪酸酸化物の代表であり、その含有量が測定しやすいからである。さらに、酸化によって遊離の脂肪酸が生成するので、遊離長鎖脂肪酸を公知の方法、具体的には下記実施例に記載の方法で測定し、遊離脂肪酸の量が従来の植物加工品よりも実質的に少ない植物加工品も好適な例として挙げられる。
本発明の植物加工品は、種々の用途に応用することができる。例えば、本発明の植物加工品を飲料や食品に含有させることができる。また、本発明の植物加工品そのものも飲料または食品として好適である。この場合、本発明の植物加工品は、飲料に代表される動物が摂取可能な液体またはその蒸気を用いて植物を高温高圧処理することにより得られるものが好ましい。前記飲料としては、例えば酒類、またはジュース、コーヒー、茶もしくは麦芽飲料等の清涼飲料などが挙げられる。前記食品としては、製菓、製パン類、穀粉、麺類、飯類、農産・林産加工食品、畜産加工品、水産加工品、乳・乳製品、油脂・油脂加工品、調味料またはその他の食品素材等が挙げられる。
本発明の植物加工品を含有する食品は、例えば該食品の原料に本発明の植物加工品を添加し、かかる原料を用いて前記食品の通常の製造方法に従って製造することができる。また、食品の製造工程の途中で本発明の植物加工品を添加してもよいし、本発明の植物加工品を最終製品に添加してもよい。本発明の植物加工品の添加量は0重量%より多ければ特に限定されず、100重量%であってもよいが、好ましくは約0.1〜50重量%、より好ましくは約0.1〜30重量%程度である。また、本発明の植物加工品の水以外の原料に対する使用率は、0重量%より多ければ特に限定されず、100重量%であってもよいが、好ましくは0.1〜50重量%、より好ましくは0.5〜30重量%程度である。このように本発明の植物加工品を添加することにより、食品に芳ばしい香味やコクを付与することができる。食品としては、製菓または飯類が好ましい。製菓としては、ポン菓子、クッキー、ビスケット、せんべい、あられ、おかき、飴、ガムまたはスナック菓子などが挙げられる。飯類としては、白米ごはん、玄米ごはん、殻付きごはん様食物、焼き飯、チャーハン、炊き込みごはんまたは麦めしなどが挙げられる。
本発明の植物加工品を含有する酒類は、通常は酒類原料に本発明の植物加工品を添加し、かかる原料を用いて酒類の通常の製造方法に従って製造することができる。前記酒類とはアルコールを1%以上含む飲料を意味し、酒税法上定義されている清酒、合成清酒、焼酎、みりん、ビール、発泡酒、果実酒類、ウィスキー類、スピリッツ類、リキュール類または雑酒などが挙げられる。
本発明にかかる植物加工品の酒類原料への添加量は、植物系原料の全使用量に対して0を超え100重量%であってよい。より好ましくは約0.1〜40重量%が適当であり、特に好ましくは約0.5〜10重量%程度である。この程度の範囲であればより適度な良い香味を与えられるという効果がある。ここで、植物系原料とは酒類の原料のうち植物に由来するものをいい、例えば、オオムギ、イネ、トウモロコシなどの穀類などが挙げられる。
本発明にかかる植物加工品の酒類原料への添加時も特に限定されない。ビール類を製造する際には、添加時期はマッシング(糖化工程)中か仕込み前が好ましい。ウィスキー類を製造する際には、添加時期は蒸留前のマッシング(糖化工程)中か仕込み前が好ましい。焼酎を製造する際には、添加時期は発酵前の糖液製造時が好ましい。スピリッツ類を製造する際には、添加時期は発酵前糖液製造時、蒸留前、アルコール浸漬あるいは最終製品ブレンド時などが好ましい。リキュール類を製造する際には、添加時期はアルコール浸漬あるいは最終製品ブレンド時などが好ましい。また、植物を高温高圧のアルコールまたはその気体で処理して得られる本発明の植物加工品もリキュール類として利用できる。
上記本発明にかかる酒類は本発明の植物加工品を酒類原料とするため、リグニン系フェノール化合物に起因する芳ばしい香味やコクを有する。なかでも、上記本発明にかかる酒類はバニリンを約0.005μg/mL以上含有していることが好ましい。特に、発泡酒においては、好ましくは約0.005〜5μg/mL、より好ましくは約0.005〜1μg/mL、さらに好ましくは約0.005〜0.1μg/mLのバニリンを含有している。また、ビールにおいては、好ましくは約0.005〜20μg/mL、より好ましくは約0.005〜5μg/mL、さらに好ましくは約0.005〜1μg/mLのバニリンを含有している。
本発明の植物加工品を含有する清涼飲料は、例えば該清涼飲料の原料に本発明の植物加工品を添加し、かかる原料を用いて前記清涼飲料の通常の製造方法に従って製造することができる。また、清涼飲料の製造工程の途中で本発明の植物加工品を添加してもよいし、本発明の植物加工品を最終製品に添加してもよい。本発明の植物加工品の添加量は特に限定されないが、好ましくは約0.1〜50重量%、より好ましくは約0.1〜30重量%程度である。このように本発明の植物加工品を添加することにより、清涼飲料に芳ばしい香味やコクを付与することができる。清涼飲料としては、茶、麦茶、玄米茶、および複数の素材を混合した混合茶、コーヒーなどが好適な例として挙げられる。
以下に、代表的な植物加工品及び飲食物についてさらに具体的に説明する。
(リグニン分解低酸化穀類)
穀類を低酸素下で高温高圧処理することによって、脂質などの酸化を抑え、かつリグニン分解によってバニリンなどのリグニン系フェノール化合物を創生し、かかるリグニン系フェノール化合物や、有機酸、メイラード反応物などにより新規香味を有する穀類を製造することができる。例えば適当量の麦芽を高温高圧(好ましくは140℃、0.25MPa〜250℃、4.5MPaであるがこのかぎりではない)の液体、気体、もしくは流体で適当時間(好ましくは10〜1200秒であるがこの限りではない)処理すると、リグニン分解低酸化麦芽を製造することができる。このリグニン分解低酸化麦芽は、芳ばしい香り、甘い香りや穀物様の香り、コクやウマミを持ち、飲食物の原料として使用できる。また色の付与という効果も得ることができる。この場合穀類は、オオムギ、コムギ、ライムギ、カラスムギ、オートムギ、イネ、トウモロコシ、ヒエ、アワ、キビ、ソバ、ハトムギなどがあげられるがそれらに限定されるものではない。また、それらの発芽させた種子、発芽していない種子やワラ、葉、茎や根などの植物体の一部分でもよく、特に限定しない。
(リグニン分解低酸化木材)
木材を低酸素下で高温高圧処理することによって、脂質などの酸化を抑え、かつリグニン分解によってバニリンなどのリグニン系フェノール化合物を創生し、かかるリグニン系フェノール化合物や、有機酸、メイラード反応物などにより新規香味を有する木材を製造することができる。例えば適当量のオークを高温高圧(好ましくは140℃、0.25MPa〜250℃、4.5MPaであるがこのかぎりではない)の液体、気体、もしくは流体で適当時間(好ましくは10〜1200秒であるがこの限りではない)処理すると、リグニン分解低酸化オークを製造することができる。このリグニン分解低酸化オークは、芳ばしい香りや甘い香り、コクやウマミを持ち、飲食物の原料として使用できる。また色の付与という効果も得ることができる。この場合木材としては、例えば、サクラ、キハダ、カエデ、トチノキ、クリ、エンジュ、ケヤキなどの落葉広葉樹、ヒノキ、スギ、コウヤマキなどの常緑針葉樹やタケ、ササなどの木本が挙げられる。また、それらの発芽させた種子、発芽していない種子や花、葉、茎、根などの植物体の一部分でもよく、特に限定されない。
(リグニン分解低酸化豆類)
豆類を低酸素下で高温高圧処理することによって、脂質などの酸化を抑え、かつリグニン分解によってバニリンなどのリグニン系フェノール化合物を創生し、かかるリグニン系フェノール化合物や、有機酸、メイラード反応産物などにより新規香味を有する豆類を製造することができる。例えば適当量のダイズを高温高圧(好ましくは140℃、0.25MPa〜250℃、4.5MPaであるがこのかぎりではない)の液体、気体、もしくは流体で適当時間(好ましくは10〜1200秒であるがこの限りではない)処理すると、リグニン分解低酸化ダイズを製造することができる。このリグニン分解低酸化ダイズは、芳ばしい香りや甘い香り、コクやウマミを持ち、そのまま食用に供しても良いし、あるいは他の飲食物の原料として使用できる。また色の付与という効果も得ることができる。この場合豆類としては、例えば、ダイズ、アズキ、ソラマメ、インゲンマメ、エンドウなどがあげられる。また、それらの発芽させた種子、発芽していない種子や葉、茎、根などの植物体の一部分でもよく、特に限定されない。
(リグニン分解低酸化茶)
茶を低酸素下で高温高圧処理することによって、脂質などの酸化を抑え、かつリグニン分解によってバニリンなどのリグニン系フェノール化合物を生成させ、かかるリグニン系フェノール化合物や、有機酸、メイラード反応物などにより新規香味や色を有する茶を製造することができる。例えば適当量の茶葉を高温高圧(好ましくは140℃、0.25MPa〜250℃、4.5MPaであるがこのかぎりではない)の液体、気体、もしくは流体で適当時間(好ましくは10〜1200秒であるがこの限りではない)処理すると、リグニン分解低酸化茶葉を製造することができる。このリグニン分解低酸化茶葉は、芳ばしい香りや焙じ香、コクやウマミを持ち、飲食物の原料として使用できる。また色の付与という効果も得ることができる。この場合茶としては、例えば、茶の生茶葉、茶の実、茶の木部、不発酵茶葉、半発酵茶葉、発酵茶葉などが挙げられるがこれらに限られない。
(リグニン分解低酸化コーヒー豆)
コーヒー豆を低酸素下で高温高圧処理することによって、脂質などの酸化を抑え、かつリグニン分解によってバニリンなどのリグニン系フェノール化合物を創生し、かかるリグニン系フェノール化合物や、有機酸、メイラード反応物などにより新規香味を有するコーヒー豆を製造することができる。例えば適当量のコーヒー生豆を高温高圧(好ましくは140℃、0.25MPa〜250℃、4.5MPaであるがこのかぎりではない)の液体、気体、もしくは流体で適当時間(好ましくは10〜1200秒であるがこの限りではない)処理すると、リグニン分解低酸化コーヒー豆を製造することができる。このリグニン分解低酸化コーヒー豆は、芳ばしい香りや、コクやウマミ、酸味を持ち、飲食物の原料として使用できる。この場合コーヒー豆とは、コーヒーに使用される豆であればよく、産地、種別などは特に限定されない。
(茶飲料)
高温高圧処理したリグニン含有物を利用して新規香味を有する茶飲料を製造することもできる。例えば本発明にかかる高温高圧処理を行った麦芽を原料に適当量添加して(原料の0.1〜30%程度が好ましいがこれに限られない、添加時期は温水あるいは熱水抽出時、あるいは最終製品ブレンド時などが好ましいがこの限りではない。)当業者に周知の製造法に従って茶飲料を製造することにより、新規な香味を有する茶飲料を製造することができる。すなわち、芳ばしい香り、甘い香りや穀物様の香りを付与したり、コクやウマミなどを増強できる。また色も付与することができ、製品の色を調整できる効果も得られる。この場合リグニン含有物は麦芽にかぎらず、例えば、オオムギ、コムギ、ライムギ、カラスムギ、オートムギ、イネ、トウモロコシ、ヒエ、アワ、キビ、ソバ、ハトムギなどの穀類、サクラ、キハダ、カエデ、トチノキ、クリ、エンジュ、ケヤキなどの落葉広葉樹、ヒノキ、スギ、コウヤマキなどの常緑針葉樹、タケ、ササなどの木本、ダイズ、アズキ、エンドウ、インゲン、ソラマメなどの豆類、チャ、コーヒーなどが挙げられる。また、それらの発芽させた種子、発芽していない種子、種皮、花、葉、茎や根などの植物体の一部分も使用できるがこれらに限定されない。ここで茶飲料とは、例えば、麦茶、玄米茶、緑茶、ウーロン茶等の中国茶、どくだみ茶、はぶ茶、抹茶、玉露、京ばん茶、ほうじ茶、煎茶雁ヶ音、玉露雁ヶ音、煎茶、粉茶、杜仲茶、減肥茶、ルイボスティー、はと麦茶、新茶および複数の素材を混合した混合茶などをいうがこれらに限られない。
(清涼飲料)
高温高圧処理したリグニン含有物を利用して新規香味を有する清涼飲料を製造することもできる。例えば本発明にかかる高温高圧処理を行った麦芽を原料に適当量添加して(原料の0.1〜30%程度が好ましいがこれに限られない、添加時期は製造工程のいずれの工程でもよく、最終製品ブレンド時などが好ましいがこの限りではない。)当業者に周知の製造法に従って清涼飲料を製造することにより、新規な芳香を有する清涼飲料を製造することができる。芳ばしい香り、甘い香りや穀物様の香りを付与したり、コクやウマミなどを増強できる。また色も付与することができ、製品の色を調整できる効果も得られる。この場合リグニン含有物は麦芽にかぎらず、例えば、オオムギ、コムギ、ライムギ、カラスムギ、オートムギ、イネ、トウモロコシ、ヒエ、アワ、キビ、ソバ、ハトムギなどの穀類、サクラ、キハダ、カエデ、トチノキ、クリ、エンジュ、ケヤキなどの落葉広葉樹、ヒノキ、スギ、コウヤマキなどの常緑針葉樹、タケ、ササなどの木本、ダイズ、アズキ、エンドウ、インゲン、ソラマメなどの豆類、チャ、コーヒーなどが挙げられる。また、それらの発芽させた種子、発芽していない種子、種皮、花、葉、茎や根などの植物体の一部分、一部位でもよく、特に限定されない。ここで清涼飲料とは、ジュース、炭酸飲料、麦芽飲料、乳酸菌飲料、健康飲料、スポーツ飲料、アミノ酸飲料、ビタミン飲料などをいうがこれにかぎらない。
(コーヒー飲料)
高温高圧処理したリグニン含有物を利用して新規香味を有するコーヒー飲料を製造することもできる。例えば本発明にかかる高温高圧処理を行った麦芽を原料に適当量添加して(原料の0.1〜10%程度が好ましいがこれにかぎらない、添加時期は製造工程のいずれの工程でもよいし、あるいは最終製品ブレンド時などが好ましいがこの限りではない。)当業者に周知の製造法に従ってコーヒー飲料を製造することにより、新規な芳香を有するコーヒー飲料を製造することができる。すなわち、コーヒーに甘い香りや穀物様の香りを付与したり、コクやウマミなどを増強できる。この場合リグニン含有物は麦芽にかぎらず、例えば、オオムギ、コムギ、ライムギ、カラスムギ、オートムギ、イネ、トウモロコシ、ヒエ、アワ、キビ、ソバ、ハトムギなどの穀類、サクラ、キハダ、カエデ、トチノキ、クリ、エンジュ、ケヤキなどの落葉広葉樹、ヒノキ、スギ、コウヤマキなどの常緑針葉樹、タケ、ササなどの木本、ダイズ、アズキ、エンドウ、インゲン、ソラマメなどの豆類、チャ、コーヒーなどが挙げられる。また、それらの発芽させた種子、発芽していない種子、種皮、花、葉、茎や根などの植物体の一部分も使用できるがこれらに限定されない。特にコーヒー豆を用いる場合には原料の100%を本発明にかかる高温高圧処理したコーヒー豆を使用することにより、穀物様の香りを持ち、コクのある豊かな風味を有する従来にないコーヒーを製造することができる。ここでコーヒー飲料とは、コーヒー、コーヒー飲料、コーヒー入り清涼飲料などをいうがこれにかぎらない。
(菓子)
リグニン含有物を高温高圧処理した飲食物原料を利用して新規香味を有する菓子を製造することもできる。例えば本発明にかかる高温高圧処理を行った麦芽を原料に適当量添加して(原料の0.1%以上100%以下。添加時期は製造工程のいずれの工程でもよいし、あるいは最終製品に添加するなどが好ましいがこの限りではない。)当業者に周知の製造法に従って菓子を製造することにより、新規な芳香を有する菓子を製造することができる。芳ばしい香り、甘い香りや穀物様の香りを付与したり、コクやウマミなどを増強できる。また色も付与することができ、製品の色を調整できる効果も得られる。この場合リグニン含有物は麦芽にかぎらず、例えば、オオムギ、コムギ、ライムギ、カラスムギ、オートムギ、イネ、トウモロコシ、ヒエ、アワ、キビ、ソバ、ハトムギなどの穀類、サクラ、キハダ、カエデ、トチノキ、クリ、エンジュ、ケヤキなどの落葉広葉樹、ヒノキ、スギ、コウヤマキなどの常緑針葉樹、タケ、ササなどの木本、ダイズ、アズキ、エンドウ、インゲン、ソラマメなどの豆類、チャ、コーヒーなどが挙げられる。また、それらの発芽させた種子、発芽していない種子、種皮、花、葉、茎や根などの植物体の一部分も使用できるがこれらに限られない。ここで菓子とは、ポン菓子やクッキー、ビスケット、せんべい、あられ、おかき、飴、ガム、スナック菓子などをいうがこれにかぎらない。
(飯類)
高温高圧処理した穀類を利用して新規香味を有する飯類を製造することもできる。例えば本発明にかかる高温高圧処理を行った麦芽を原料に適当量添加して(原料の0.1〜100%。添加時期は製造工程のいずれの工程でもよいし、あるいは最終製品に添加することもできるがこの限りではない。)通常の飯類の製造法に従って飯類を製造することにより、新規な芳香を有するご飯類を製造することができる。芳ばしい香り、甘い香りや穀物様の香りを付与したり、コクやウマミなどを増強できる。また色も付与することができ、製品の色を調整できる効果も得られる。この場合穀類は麦芽にかぎらず、例えばオオムギ、コムギ、ライムギ、カラスムギ、オートムギ、イネ、トウモロコシ、ヒエ、アワ、キビ、ソバ、ハトムギなどが挙げられる。また、それらの発芽させた種子、発芽していない種子、種皮、花、葉、茎や根などの植物体の一部分も使用できるがこれらに限定されない。ここで飯類とは、白米飯、玄米飯、殻付き飯様食物、焼飯、炒飯、炊き込みご飯、麦飯、そば飯、釜飯、赤飯、鳥飯、五目飯、松茸ご飯、牡蠣飯、鯛飯、蛸飯、ホタテ飯などをいうがこれらにかぎられない。
【実施例】
以下に本発明の実施例を説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。なお、実施例中の「%」は、特に断りのない限り「重量%」を示す。
<実施例1> 高温高圧処理した麦芽中のリグニン系フェノール化合物の分析
高温高圧処理には高温湿熱処理試験装置(株式会社日阪製作所製:HTS−25/140−8039)、蒸気ボイラ(三浦工業株式会社製:FH−100)を用いた。SUS316合金製12Lのバスケットに欧州産二条大麦麦芽6kgを入れ、SUS316合金製耐熱耐圧容器(30L)内にて密閉した。脱酸素装置(三浦工業株式会社製:DOR−1000P)により除酸素した水(酸素濃度0.3μg/ml)を用いて発生させた高温高圧飽和蒸気(2.7MPa、230℃)を約1秒間送り込むことにより容器内の空気を置換した後、200℃、1.4MPaにて60秒間高温高圧状態を保持した。脱気後、反応容器が80℃以下になった時点で容器を開放し、麦芽を取り出し、一昼夜風乾して、本発明にかかる麦芽加工品を得た。
麦芽、本発明による高温高圧処理を施した麦芽およびメラノイジン麦芽ないしカラメル麦芽である特殊麦芽に存在するリグニン系フェノール化合物の量を比較した。これらの麦芽をそれぞれ粉砕した後、麦芽粉末20gに水80mlを加え、65℃にて15分間および75℃にて15分間、温水抽出した抽出液中のリグニン系フェノール化合物を測定した。リグニン系フェノール化合物の測定は、温水抽出液20gに等量の酢酸エチルを加え、10分間振とう後、酢酸エチル層を回収した。この操作を3回繰り返して得た酢酸エチル層をロータリーエバポレーターを用いて濃縮乾固し、得られた濃縮物をメタノール1mlに溶解し、そのうちの10μlをHPLCに供し、280nmの吸光度を測定した。測定は、高速液体クロマトグラフィーシステムCLASS−VPシリーズ(株式会社島津製作所製)およびDeverosil−C30カラム(野村化学株式会社製 4.6x150mm)を用い、水−アセトニトリル系の溶媒を用いて行った。分析条件は、A液を0.05%TFA(トリフルオロ酢酸)水溶液、B液を0.05%TFA、90%アセトニトリル水溶液とし、流速1ml/minにて、B液0%から20%までの100分間の直線グラジエントとした。化合物の同定は、市販の各標準物質とのNMR、UV吸収曲線、リテンションタイムの比較により行った。化合物の定量は各標準物質のUV吸収強度から算出した。
その結果を下記表に示す。表中の値は麦芽100gあたりの各化合物の重量(mg)である。


高温高圧処理によって麦芽に含まれるリグニンが分解され、通常の麦芽ではごく微量しか含有されておらず、ほとんど検出されることのないバニリンや、少量しか含有されていないp−クマル酸、フェルラ酸などのリグニン系フェノール化合物を麦芽中に大量に生成させることができた。このことから、リグニンを含有する穀物を高温高圧処理することにより低分子のフェノール化合物を増加させることができることが明らかとなった。上表から明らかなように、穀類として麦芽を用いて200℃、1.4MPaにて60秒間、高温高圧処理を行った場合は、未処理麦芽より得られるバニリン量の約180倍ものバニリンを生成させることができ、これは穀物総重量の0.007%に相当する。高温高圧処理によるリグニン系フェノール化合物の生成は麦芽に限らず、例えば、オオムギ、コムギ、ライムギ、カラスムギ、オートムギ、イネ、トウモロコシ、ヒエ、アワ、キビ、ソバ、ハトムギなどの穀類、または、それらの発芽させた種子、発芽していない種子、葉、茎や根などの植物体の一部分などにおいても、得られるリグニン系フェノール化合物の量や組成に若干の違いが見られるものの、同様の結果を得ることができる。
通常の麦芽以外にもメラノイジン麦芽やカラメル麦芽などがあるが、それらの特殊麦芽でも、リグニン系フェノール化合物はごく微量ないし少量含有されているのみである。本発明の高温高圧処理によれば、通常の麦芽中のリグニンを分解することによって、バニリンなどのリグニン系フェノール化合物を大幅に増加させることができた。これにより従来にはない物質組成をもつ新規な植物加工品を製造することができた。
<実施例2> 高温高圧処理した麦芽穀皮中のリグニン系フェノール化合物の分析
高温高圧処理には株式会社AKICO製高温高圧反応器を用いた。SUS316合金製耐熱耐圧容器(400ml)に、脱酸素装置(三浦工業株式会社製:DOR−1000P)により除酸素した水(酸素濃度0.3μg/ml)を40g入れ、SUS316合金製200mlのバスケットに麦芽穀皮30gを入れ、水に触れないように設置した。なお、麦芽穀皮は欧州産二条大麦麦芽を乾式粉砕した麦芽粉末を篩(0.7mm)で分画して得た。窒素を約5秒間程度送り込むことにより容器内の空気を置換した後、140℃で0.25MPa、200℃で1.4MPa、250℃で4.5MPaというそれぞれの条件で60秒間高温高圧状態を保持し、水熱反応を行った後、容器を冷却し、反応容器が80℃以下になった時点で容器を開放し、麦芽穀皮をとりだした。このようにして本発明にかかる麦芽穀皮を得た。
得られた高温高圧処理麦芽穀皮20gに水80mlを加え、65℃にて15分間および75℃にて15分間、温水抽出した。温水抽出液中のリグニン系フェノール化合物の量を、実施例1のリグニン系フェノール化合物測定法に従い測定した。下記表にその結果を示す。表中の値は麦芽穀皮100gあたりの各化合物の重量(mg)である。


従来、穀類の穀皮は、ビールや発泡酒の製造工程において、廃棄物として処理されていた。しかし、穀類のリグニンは、その多くが穀皮に局在しているので、穀類の穀皮部分に本発明にかかる高温高圧処理を施せば穀物全粒の場合と同等かそれ以上のリグニン系フェノール化合物が得られる。第2表に示すように、穀類の穀皮あるいは穀皮を含む画分に本発明にかかる高温高圧処理を施した場合も、リグニン分解物であるバニリンなどのリグニン系フェノール化合物を著量生成することができた。
これらのリグニン系フェノール化合物は、バニリン類に代表されるような芳香性をもち、それらの特徴的な芳ばしい香りを当該穀類加工品に与える。さらに、リグニン含有率の高い穀類穀皮のみを処理した場合、処理物の全重量に対するリグニン系フェノール化合物の割合が増加するため、これらの芳ばしい香りが増大した。
<実施例3> 脂質酸化抑制の検討
本発明の高温高圧処理によれば、処理中の高温高圧状態を密閉系で行うため、穀類などのリグニン含有植物を開放下にて焙燥することにより製造する従来の特殊麦芽などの原料とは異なる効果が得られる。すなわち、低酸素状況における化学反応の結果、脂質などの酸化が抑制された低酸化穀類加工品を製造することができる。本発明によって、穀類の処理時に酸素との接触を最低限に抑えることができ、その結果、穀類などに内在する脂質の酸化を抑制することができる。
実施例1に記載の方法に従って高温高圧処理麦芽を得た。
第1図は、麦芽、3つの条件(180℃、0.9MPa;190℃、1.1MPa;210℃、1.8MPa)で実施例1と同一の処理をした高温高圧処理麦芽、及びメラノイジン麦芽ないしカラメル麦芽である各特殊麦芽の遊離脂肪酸分析の結果である。脂肪酸分析は、麦芽、高温高圧処理麦芽、各特殊麦芽を粉砕後、麦芽粉末20gに水80mlを加え、65℃で15分間および75℃で15分間、温水抽出した抽出液100μlに0.02Mの2−ニトロフェニルヒドラジン塩酸塩−エタノール溶液200μlおよび0.25Mの1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩−エタノール溶液200μlを添加し、60℃で20分反応させた。反応後10%水酸化ナトリウム−メタノール溶液200μlを添加し、60℃にて15分間反応させ、冷却後0.5M塩酸−0.03Mリン酸水溶液4mlを加え、ついでn−ヘキサン5mlを加えヘキサン抽出を行った。ヘキサン層を回収後、ヘキサンを蒸発させ、残渣を0.5mlのメタノールに溶解し、HPLCにて脂肪酸を分析した。HPLCは高速液体クロマトグラフィーシステムCLASS−VPシリーズ(株式会社島津製作所製)を用いた。分離はYMC−PAC−FAカラム(6x250mm)を用い、水−アセトニトリル系の溶媒を用いて行った。分析条件は、流速1.2ml/minにて、90%アセトニトリル(pH4.5)にて25分間溶出し、400nmの吸光度で測定した。物質の同定は、市販の各標準物質のリテンションタイムとの比較により行った。
第2図は、本発明において、麦芽、第1図と同様3つの条件で処理をした高温高圧処理麦芽、各特殊麦芽における共役ジエン型脂肪酸量、すなわち脂肪酸過酸化度を示す。脂肪酸過酸化度の測定は、麦芽粉末0.5gに(メタノール:エーテル=1:3)混合液5mlを添加し、5分間振とう後、234nmにて吸光度を測定した。不飽和脂肪酸酸化物である共役ジエンは、234nmに強い吸収をもつことを利用して測定した。
第3図は、本発明において、麦芽、第1図と同様3つの条件で処理をした高温高圧処理麦芽、各特殊麦芽のアルデヒド類測定の結果である。アルデヒド類の測定は以下のように行った。麦芽粉末5gを50ml酢酸エチルにて抽出し、100μlまで濃縮後、エタノール400μlおよび10mM亜硫酸水素ナトリウム溶液500μlを加え、室温にて60分間反応させた。反応液をHPLCにて分離し、ポストカラムにてオルトフタルアルデヒドとアンモニアを反応させ、生成したイソインドール−2−スルホン酸を蛍光検出により測定した(特開平4−208855)。
第1図、第2図、第3図より、本発明における高温高圧処理麦芽においては、従来の特殊麦芽に比べ、脂質酸化が抑えられていることがわかる。従来のメラノイジン麦芽では、脂質からの脂肪酸の遊離も多く、脂質の酸化によって生ずる過酸化脂肪酸やアルデヒド類の生成量も非常に大きい値を示した。またカラメル麦芽においても過酸化脂質の生成量が通常麦芽の2倍程度と非常に高い値を示しており、アルデヒド類の生成量も多かった。これに対し、本発明による高温高圧処理麦芽においては、遊離長鎖脂肪酸、過酸化脂質、アルデヒド類のいずれにおいても低い値を示しており、脂質の酸化反応を抑制できていることが確認された。従って本発明にかかる高温高圧処理を施すことにより、従来のメラノイジン麦芽やカラメル麦芽などの酒類の穀物原料の製造工程でおこっていた脂質などの酸化劣化をおこすことなく穀類を酒類の原料化することができ、すなわち酸化劣化物の少ない低酸化穀類を製造することが可能となった。
この低酸化ビール原料、発泡酒原料を使用することにより、従来のメラノイジン麦芽等の特殊麦芽を用いて醸造したビールおよび発泡酒よりも、脂質の酸化した嫌な臭いを著しく低減することができ、また脂質酸化物のもつ舌に残るエグミをかなりの程度低減することができた。また、ビール発泡酒製品の泡持ちや香味安定性を向上させることができ、総じてビールおよび発泡酒品質を飛躍的に向上させることが可能となった。すなわち本発明は、穀類の脂質などの酸化反応を簡便に制御することより、酒類の穀物原料の質を高め、その結果、香味や泡持ちなどのビールおよび発泡酒の品質を飛躍的に向上せしめるものである。
<実施例4> 麦芽を用いた発泡酒の製造
本発明における麦芽加工品を原料とし発泡酒を製造した例を示す。実施例1に記載した方法に従って得た高温高圧処理麦芽(200℃、1.4MPa)を、水を除く全使用原料(以下単に使用原料という。)の2.5%使用して、発泡酒(製品B)を得た。具体的には、麦芽27kgに高温高圧処理麦芽(200℃、1.4MPa)を3kg混合し、65℃の水150Lで約1時間糖化した。糖化液をろ過した後、糖化スターチを麦芽比率25%になるように加えて撹拌し、ホップ約100gを投入して100℃で約1時間煮沸した。12℃に冷却した後、ビール醸造用酵母約300gを添加し2週間12℃で発酵させ、発泡酒(製品B)を得た。また対照として麦芽のみを使用原料として用いた発泡酒(製品A)、従来技術としてメラノイジン麦芽を使用原料の10%使用した発泡酒(製品C)も全く同様に作成した。
発泡酒中のリグニン系フェノール化合物量を実施例1に記載した方法に従って測定した。その結果を下記表に示す。表中の数字は各化合物の製品中の濃度(μg/ml)である。高温高圧処理麦芽の使用により、通常醸造における発泡酒においては検出できないバニリンが検出され、バニリン酸、p−クマル酸、フェルラ酸などのリグニン系フェノール化合物が増加した。

下記表に官能評価を示した。評価は20名のパネリストにより行い、各製品の香味について各項目のキーワードを感じた人数を数えることにより行った。

また、各製品について色の測定を行った。色の測定は、当業者に周知の色測定方法(EBCカラーチャート)によった。

<実施例5> 麦芽を用いたビールの製造
本発明における麦芽加工品を原料とし、ビールを製造した例を示す。実施例1に記載した方法に従って得た高温高圧処理麦芽(200℃、1.4MPa)を使用原料の5%使用して、ビール(製品E)を得た。具体的には、麦芽25kgに高温高圧処理麦芽(200℃、1.4MPa)を5kg混合し、65℃の水150Lで約1時間糖化した。糖化液をろ過した後、ホップ約100gを投入し100℃で約1時間煮沸した。12℃に冷却した後、ビール醸造用酵母約300gを添加し2週間12℃で発酵させ、ビール(製品E)を得た。また対照として麦芽のみを使用原料として用いたビール(製品D)も全く同様に作成した。
ビール中のリグニン系フェノール化合物量を実施例1に記載した方法に従って測定した。その結果を下記表に示す。表中の数字は各化合物の製品中の濃度(μg/ml)である。高温高圧処理麦芽の使用により、通常醸造におけるビールにおいては検出できないバニリンが検出され、プロトカテキュアルデヒド、バニリン酸、p−クマル酸、フェルラ酸などのリグニン系フェノール化合物が増加した。

下記表に官能評価を示した。評価は20名のパネリストにより行い、各製品の香味について各項目のキーワードを感じた人数を数えることにより行った。

また、各製品について色の測定を行った。色の測定は、当業者に周知の色測定方法(EBCカラーチャート)によった。

<実施例6> イネ種子を用いた発泡酒の製造
本発明におけるイネ種子加工品を原料とし、発泡酒を製造した例を示す。麦芽の代わりにイネ種子を用いて実施例1に記載した方法に従って得た高温高圧処理イネ種子(200℃、1.4MPa)を、使用原料の2.5%使用して、実施例4に記載の発泡酒醸造方法に従って発泡酒(製品G)を得た。また対照として麦芽のみを使用原料として用いた発泡酒(製品F)も全く同様に作成した。
発泡酒中のリグニン系フェノール化合物量を実施例1に記載した方法に従って測定した。その結果を下記表に示す。表中の数字は各化合物の製品中の濃度(μg/ml)である。高温高圧処理イネ種子の使用により、通常醸造における発泡酒においては検出できないバニリンが検出され、バニリン酸、p−クマル酸、フェルラ酸などのリグニン系フェノール化合物が増加した。

下記表に官能評価を示した。評価は20名のパネリストにより行い、各製品の香味について各項目のキーワードを感じた人数を数えることにより行った。

また、各製品について色の測定を行った。色の測定は、当業者に周知の色測定方法(EBCカラーチャート)によった。

<実施例7> 麦芽穀皮を用いた発泡酒の製造
本発明における麦芽穀皮加工品を原料とし発泡酒を製造した例を示す。200℃、1.4MPaの条件で実施例2に記載した方法に従って得た高温高圧処理麦芽穀皮を、使用原料の2.5%使用して、実施例4に記載の発泡酒醸造方法に従って発泡酒(製品I)を得た。また対照として麦芽のみを使用原料として用いた発泡酒(製品H)も全く同様に作成した。
発泡酒中のリグニン系フェノール化合物量を実施例1に記載した方法に従って測定した。その結果を下記表に示す。表中の数字は各化合物の製品中の濃度(μg/ml)である。高温高圧処理麦芽穀皮の使用により、通常醸造における発泡酒においては検出できないバニリンが検出され、バニリン酸、p−クマル酸、フェルラ酸などのリグニン系フェノール化合物が増加した。

下記表に官能評価を示した。評価は20名のパネリストにより行い、各製品の香味について各項目のキーワードを感じた人数を数えることにより行った。

また、各製品について色の測定を行った。色の測定は、当業者に周知の色測定方法(EBCカラーチャート)によった。

<実施例8> 高温高圧処理麦芽穀皮を用いた発泡酒の製造
本発明における麦芽穀皮加工品を原料とし発泡酒を製造した例を示す。400℃、25MPaの条件で実施例2に記載した方法に従って高温高圧処理麦芽穀皮を得た。反応容器から取り出した麦芽穀皮を凍結乾燥により乾固させ、コゲ臭を揮発させた超臨界流体処理麦芽穀皮を、使用原料の2.5%使用して、実施例4に記載の発泡酒醸造方法に従って発泡酒(製品K)を得た。また対照として麦芽のみを使用原料として用いた発泡酒(製品J)も全く同様に作成した。
発泡酒中のリグニン系フェノール化合物量を実施例1に記載した方法に従って測定した。その結果を下記表に示す。表中の数字は各化合物の製品中の濃度(μg/ml)である。超臨界流体処理麦芽穀皮の使用により、通常醸造における発泡酒においては検出できないバニリンが検出され、プロトカテキュアルデヒド、バニリン酸、p−クマル酸、シリンガアルデヒド、フェルラ酸などのリグニン系フェノール化合物が増加した。

下記表に官能評価を示した。評価は20名のパネリストにより行い、各製品の香味について各項目のキーワードを感じた人数を数えることにより行った。

また、各製品について色の測定を行った。色の測定は、当業者に周知の色測定方法(EBCカラーチャート)によった。

<実施例9> ホワイトオークを用いた発泡酒の製造
本発明におけるホワイトオーク加工品を原料とし発泡酒を製造した例を示す。麦芽の代わりにホワイトオークを用いて実施例1に記載した方法に従って得た高温高圧処理オーク(200℃、1.4MPa)を、粉砕機RETSCH(日本精機製作所社製:ZM100Japan)を用いて粉砕した。前記粉砕物を使用原料の2%使用して、実施例4に記載の発泡酒醸造方法に従って発泡酒(製品M)を得た。また対照として麦芽のみを使用原料として用いた発泡酒(製品L)も全く同様に作成した。
発泡酒中のリグニン系フェノール化合物量を実施例1に記載した方法に従って測定した。その結果を下記表に示す。表中の数字は各化合物の製品中の濃度(μg/ml)である。高温高圧処理オークの使用により、通常醸造における発泡酒においては検出できないバニリンが検出され、シリンガアルデヒド、バニリン酸、p−クマル酸、フェルラ酸などのリグニン系フェノール化合物量が増加した。

下記表に官能評価を示した。評価は20名のパネリストにより行い、各製品の香味について各項目のキーワードを感じた人数を数えることにより行った。

また、各製品について色の測定を行った。色の測定は、当業者に周知の色測定方法(EBCカラーチャート)によった。

<実施例10> タケを用いた発泡酒の製造
本発明におけるタケ加工品を原料とし発泡酒を製造した例を示す。麦芽の代わりにタケを用いて実施例1に記載した方法に従って得た高温高圧処理タケ(200℃、1.4MPa)を、粉砕機RETSCH(日本精機製作所社製:ZM100Japan)を用いて粉砕した。前記粉砕物を使用原料の2%使用して、実施例4に記載の発泡酒醸造方法に従って発泡酒(製品O)を得た。また対照として麦芽のみを使用原料として用いた発泡酒(製品N)も全く同様に作成した。
発泡酒中のリグニン系フェノール化合物量を実施例1に記載した方法に従って測定した。その結果を下記表に示す。表中の数字は各化合物の製品中の濃度(μg/ml)である。高温高圧処理タケの使用により、通常醸造における発泡酒においては検出できないバニリンが検出され、バニリン酸、p−クマル酸、シリンガアルデヒド、フェルラ酸などのリグニン系フェノール化合物が増加した。

下記表に官能評価を示した。評価は20名のパネリストにより行い、各製品の香味について各項目のキーワードを感じた人数を数えることにより行った。

また、各製品について色の測定を行った。色の測定は、当業者に周知の色測定方法(EBCカラーチャート)によった。

以上の結果から明らかなように、本発明にかかる植物加工品の使用により、リグニン系フェノール化合物由来の芳ばしい香り、甘い香りや穀物様の香りを発泡酒やビールに付与することができた。また香り成分の増加によって、発泡酒やビールにおいて香味バランスに変化を加えることができ、それにより発泡酒やビールの香味に厚みを増すことができ、コクやウマミなどを増強できた。また製品に色を付与することができ、色を調整できる効果もあった。これらの効果は、リグニン分解物以外の反応生成物であるメイラード反応物や増加した有機酸等を含む高温高圧処理麦芽使用による発泡酒またはビールの組成変化も大きく寄与していると考えられる。また、本発明にかかる植物加工品の使用により、麦芽などの植物に内在する物質の酸化を抑えることができた。特に酸化しやすい脂質などの酸化が抑制され、舌触りの悪さが改善されたことから飲みやすさが向上し、また脂質酸化臭などの嫌なにおいが著しく減少しており、発泡酒やビールの香味が格段に向上した。
<実施例11> ムギワラを用いた発泡酒の製造
本発明におけるムギワラ加工品を原料とし発泡酒を製造した例を示す。麦芽の代わりにオオムギの茎部(ムギワラ)を用いて実施例1に記載した方法に従って得た高温高圧処理ムギワラ(200℃、1.4MPa)を、粉砕機RETSCH(日本精機製作所社製:ZM100Japan)を用いて粉砕した。前記粉砕物を使用原料の2%使用して、実施例4に記載の発泡酒醸造方法に従って発泡酒を得た。
本原料の使用により、リグニン系フェノール化合物由来の芳ばしい香りを発泡酒に付与することができた。また香り成分の増加によって、発泡酒の香味バランスに変化を加えることができ、それにより発泡酒の香味に厚みを増すことができ、コクを増強できた。また製品に色を付与することができ、色を調整できる効果もあった。これらの効果は、リグニン分解物以外の反応生成物であるメイラード反応物や増加した有機酸等を含む処理原料使用による発泡酒の組成変化も大きく寄与していると考えられる。本原料の使用により、リグニン系フェノール化合物などによる芳ばしい香りやコクなどを製品に付与でき、芳香を有する新規な香味を創生できた。
<実施例12> 麦芽の高温高圧処理加工品
2軸押出機(株式会社日本製鋼所製TEX30F)を用いて欧州産2条麦芽を温度200℃、圧力0.6MPa、1分の条件で高温高圧処理を行い、本発明にかかる麦芽加工品を得た。この麦芽加工品は、さらなる粉砕等を行わなくても水(温水等含む)に容易に溶解させることができた。
実施例1に記載された方法で各種分析を行った結果、実施例1に記載された麦芽加工品と同等のリグニン系フェノール化合物の生成、脂質酸化の抑制がみられた。

実施例1に記載された高温高圧処理の効果を保持したまま、麦芽の連続処理が行え、効率よく麦芽加工品を得ることができた。また本発明は、高温高圧処理と同時に粉砕、成形加工や乾燥を行うことができ、したがって本発明にかかる植物加工品は、乾燥工程、粉砕工程等の、さらなる加工工程を必要とせず、そのまま水(温水等含む)に均一に溶解させることができ、酒類や食品の原料としての利便性が高まるという効果があった。
<実施例13> 麦芽を用いた発泡酒の製造
本発明における麦芽加工品を原料とし発泡酒を製造した例を示す。実施例12に記載した方法に従って得た高温高圧処理麦芽を、水を除く全使用原料(以下単に使用原料という。)の2.5%使用して、発泡酒を得た。具体的には、麦芽27kgに実施例12で得られた高温高圧処理麦芽を3kg混合し、65℃の水150Lで約1時間糖化した。糖化液をろ過した後、糖化スターチを麦芽比率25%になるように加えて攪拌し、ホップ約100gを投入して100℃で約1時間煮沸した。12℃に冷却した後、ビール醸造用酵母約300gを添加し2週間12℃で発酵させ、発泡酒を得た。また対照として麦芽のみを使用原料として用いた発泡酒も全く同様に比較例として作成し、本発明にかかる麦芽加工品の効果を比較検討した。

その結果、本発明にかかる植物加工品の使用により、リグニン系フェノール化合物由来の芳ばしい香り、甘い香りや穀物様の香りを発泡酒に付与することができた。また香り成分の増加によって、発泡酒の香味バランスに変化を加えることができ、それにより発泡酒の香味に厚みを増すことができ、コクやウマミなどを増強できた。また発泡酒に色を付与することができ、色を調整できる効果もあった。
下記表に官能評価を示した。評価は20名のパネリストにより行い、各製品の香味について各項目のキーワードを感じた人数を数えることにより行った。

また、各製品について色の測定を行った。色の測定は、当業者に周知の色測定方法(EBCカラーチャート)によった。

これらの効果は、リグニン分解物以外の反応生成物であるメイラード反応物や増加した有機酸等を含む高温高圧処理麦芽使用による発泡酒の組成変化も大きく寄与していると考えられる。また、本発明にかかる植物加工品の使用により、麦芽などの植物に内在する物質の酸化を抑えることができた。特に酸化しやすい脂質などの酸化が抑制され、舌触りの悪さが改善されたことから飲みやすさが向上し、また脂質酸化臭などの嫌なにおいが著しく減少しており、発泡酒の香味が格段に向上した。
<実施例14> 麦芽を用いたビールの製造
本発明における麦芽加工品を原料とし、ビールを製造した例を示す。実施例12に記載した方法に従って得た高温高圧処理麦芽を、使用原料の5%使用して、ビールを得た。具体的には、麦芽25kgに実施例12に記載した方法に従って得た高温高圧処理麦芽を5kg混合し、65℃の水150Lで約1時間糖化した。糖化液をろ過した後、ホップ約100gを投入し100℃で約1時間煮沸した。12℃に冷却した後、ビール醸造用酵母約300gを添加し2週間12℃で発酵させ、ビールを得た。また対照として麦芽のみを使用原料として用いたビールも全く同様に比較例として作成し、本発明にかかる麦芽加工品の効果を比較検討した。

その結果、本発明にかかる植物加工品の使用により、リグニン系フェノール化合物由来の芳ばしい香り、甘い香りや穀物様の香りをビールに付与することができた。また香り成分の増加によって、ビールの香味バランスに変化を加えることができ、それによりビールの香味に厚みを増すことができ、コクやウマミなどを増強できた。またビールに色を付与することができ、色を調整できる効果もあった。
下記表に官能評価を示した。評価は20名のパネリストにより行い、各製品の香味について各項目のキーワードを感じた人数を数えることにより行った。

また、各製品について色の測定を行った。色の測定は、当業者に周知の色測定方法(EBCカラーチャート)によった。

これらの効果は、リグニン分解物以外の反応生成物であるメイラード反応物や増加した有機酸等を含む高温高圧処理麦芽使用によるビールの組成変化も大きく寄与していると考えられる。また、本発明にかかる植物加工品の使用により、麦芽などの植物に内在する物質の酸化を抑えることができた。特に酸化しやすい脂質などの酸化が抑制され、舌触りの悪さが改善されたことから飲みやすさが向上し、また脂質酸化臭などの嫌なにおいが著しく減少しており、ビールの香味が格段に向上した。
<実施例15> イネ種子を用いた発泡酒の製造
本発明におけるイネ種子加工品を原料とし、発泡酒を製造した例を示す。麦芽の代わりにイネ種子を用いて実施例12に記載した方法に従って得た高温高圧処理イネ種子を、使用原料の2.5%使用して、実施例13に記載の発泡酒醸造方法に従って発泡酒を得た。また対照として麦芽のみを使用原料として用いた発泡酒も全く同様に比較例として作成し、本発明にかかるイネ種子加工品の効果を比較検討した。

その結果、本発明にかかる植物加工品の使用により、リグニン系フェノール化合物由来の芳ばしい香り、甘い香りや穀物様の香りを発泡酒に付与することができた。また香り成分の増加によって、発泡酒の香味バランスに変化を加えることができ、それにより発泡酒の香味に厚みを増すことができ、コクやウマミなどを増強できた。また発泡酒に色を付与することができ、色を調整できる効果もあった。
下記表に官能評価を示した。評価は20名のパネリストにより行い、各製品の香味について各項目のキーワードを感じた人数を数えることにより行った。

また、各製品について色の測定を行った。色の測定は、当業者に周知の色測定方法(EBCカラーチャート)によった。

これらの効果は、リグニン分解物以外の反応生成物であるメイラード反応物や増加した有機酸等を含む高温高圧処理イネ種子使用による発泡酒の組成変化も大きく寄与していると考えられる。また、本発明にかかる植物加工品の使用により、イネ種子などの植物に内在する物質の酸化を抑えることができた。特に酸化しやすい脂質などの酸化が抑制され、舌触りの悪さが改善されたことから飲みやすさが向上し、また脂質酸化臭などの嫌なにおいが著しく減少しており、発泡酒の香味が格段に向上した。
実施例12〜15は、本発明者らによって新たに開発されたシリンダ内を高温高圧に保持した2軸押出機(エクストルーダ)を使用することにより、▲1▼原料を連続的に加工でき、▲2▼高温高圧処理と同時に、粉砕・乾燥が同時に行える、植物の新しい高温高圧処理加工方法である。本発明にかかる植物加工品は、さらなる粉砕等を行わなくても水(湯)に容易に溶解させることができる。これにより実施例1〜11に記載された高温高圧処理の効果を保持したまま、連続加工が実現でき、原料の粉砕工程や、高温高圧処理後の乾燥工程が不要になり、生産効率が極めて向上する。
<実施例16> ムギワラを用いた発泡酒の製造
本発明におけるムギワラ加工品を原料とし発泡酒を製造した例を示す。麦芽の代わりにオオムギの茎部(ムギワラ)を用いて実施例1に記載した方法に従って得た高温高圧処理ムギワラ(200℃、1.4MPa)を、粉砕機RETSCH(日本精機製作所社製:ZM100Japan)を用いて粉砕した。前記粉砕物を使用原料の2%使用して、実施例4に記載の発泡酒醸造方法に従って発泡酒を得た。
発泡酒中のリグニン系フェノール化合物量を実施例1に記載した方法に従って測定した。その結果を下記表に示す。表中の数字は各化合物の製品中の濃度(μg/ml)である。高温高圧処理タケの使用により、通常醸造における発泡酒においては検出できないバニリンが検出され、バニリン酸、p−クマル酸、シリンガアルデヒド、フェルラ酸などのリグニン系フェノール化合物が増加した。

下記表に官能評価を示した。評価は20名のパネリストにより行い、各製品の香味について各項目のキーワードを感じた人数を数えることにより行った。

また、各製品について色の測定を行った。色の測定は、当業者に周知の色測定方法(EBCカラーチャート)によった。

本原料の使用により、リグニン系フェノール化合物由来の芳ばしい香りを発泡酒に付与することができた。また香り成分の増加によって、発泡酒の香味バランスに変化を加えることができ、それにより発泡酒の香味に厚みを増すことができ、コクを増強できた。また製品に色を付与することができ、色を調整できる効果もあった。これらの効果は、リグニン分解物以外の反応生成物であるメイラード反応物や増加した有機酸等を含む処理原料使用による発泡酒の組成変化も大きく寄与していると考えられる。本原料の使用により、リグニン系フェノール化合物などによる芳ばしい香りやコクなどを製品に付与でき、芳香を有する新規な香味を創生できた。
<実施例17> 麦芽を用いたウィスキーの製造
本発明における麦芽加工品を原料とし、ウィスキーを製造した例を示す。実施例1に記載した方法に従って得た高温高圧処理麦芽(200℃、1.4MPa)を、使用原料の5%使用して、ウィスキーを得た。具体的には、麦芽25kgに高温高圧処理麦芽(200℃、1.4MPa)を5kg混合し、65℃の水150Lで約1時間糖化した。糖化液をろ過した後、蒸留によって得たニューポット(蒸留液)をホワイトオーク製の樽に詰めて3年間貯蔵し、ウィスキーを得た。
官能評価は5名のパネリストにより行い、香味について特徴を調べたところ、本原料の使用により、リグニン系フェノール化合物由来の芳ばしい香りをウィスキーに付与することができた。香りの伸びがきれいで口あたりをまろやかにする効果があり、味わい・ウマミを感じさせる効果もあった。また、これらの効果は、リグニン分解物以外の反応生成物であるメイラード反応物や増加した有機酸等を含む処理原料を使用したことによるウィスキーの組成変化も大きく寄与していると考えられる。
<実施例18> 麦芽穀皮を用いたウィスキーの製造
本発明における麦芽穀皮加工品を原料とし、ウィスキーを製造した例を示す。実施例2に記載した方法に従って得た高温高圧処理麦芽穀皮(200℃、1.4MPa)を、使用原料の5%使用して、ウィスキーを得た。具体的には、麦芽25kgに高温高圧処理麦芽穀皮(200℃、1.4MPa)を5kg混合し、65℃の水150Lで約1時間糖化した。糖化液をろ過した後、蒸留によって得たニューポット(蒸留液)をホワイトオーク製の樽に詰めて3年間貯蔵し、ウィスキーを得た。
官能評価は5名のパネリストにより行い、香味について特徴を調べたところ、本原料の使用により、リグニン系フェノール化合物由来の芳ばしい香りをウィスキーに付与することができた。香りの伸びがきれいで口あたりをまろやかにする効果があり、味わい・ウマミを感じさせる効果もあった。また、これらの効果は、リグニン分解物以外の反応生成物であるメイラード反応物やピラジン類、有機酸等を含む処理原料を使用したことによるウィスキーの組成変化も大きく寄与していると考えられる。
<実施例19> オオムギ種子を用いた焼酎の製造
本発明におけるオオムギ種子加工品を原料とし、焼酎を製造した例を示す。麦芽の代わりにオオムギ種子を用いて実施例1に記載した方法に従って得た高温高圧処理オオムギ種子(200℃、1.4MPa)を使用して、焼酎を得た。具体的には、乾燥コウジ2.5kgに乾燥酵母100mgと水3Lを加え攪拌して25℃にて4日間静置した。その後粉砕した高温高圧処理オオムギ種子(200℃、1.4MPa)を5kgと水7.5Lを加えて攪拌し、25℃で2週間静置後、蒸留によって焼酎を得た。
官能評価は5名のパネリストにより行い、香味について特徴を調べたところ、本原料の使用により、リグニン系フェノール化合物由来の芳ばしい香りを焼酎に付与することができた。甘くて芳ばしい香りの付与とともに口あたりをまろやかにする効果があり、味わい・ウマミを感じさせる効果もあった。また、これらの効果は、リグニン分解物以外の反応生成物であるメイラード反応物やピラジン類、有機酸等を含む処理原料を使用したことによる焼酎の組成変化も大きく寄与していると考えられる。
<実施例20> イネ種子穀皮を用いたスピリッツ類の製造
本発明におけるイネ種子穀皮加工品を原料とし、スピリッツ類を製造した例を示す。麦芽穀皮の代わりにイネ種子穀皮を用いて、実施例2に記載した方法に従って得た高温高圧処理イネ種子穀皮(200℃、1.4MPa)を、使用原料の10%使用して、スピリッツ類を得た。具体的には、麦芽45kgに高温高圧処理イネ種子穀皮(200℃、1.4MPa)を5kg混合し、65℃の水200Lで約1時間糖化した。糖化液をろ過した後、連続式蒸留によってスピリッツ類を得た。
官能評価は5名のパネリストにより行い、香味について特徴を調べたところ、本原料の使用により、リグニン系フェノール化合物由来の芳ばしい香りをスピリッツ類に付与することができた。香りの伸びがきれいで口あたりをまろやかにする効果があり、味わい・ウマミを感じさせる効果もあった。また、これらの効果は、リグニン分解物以外の反応生成物であるメイラード反応物やピラジン類、有機酸等を含む処理原料を使用したことによるスピリッツ類の組成変化も大きく寄与していると考えられる。
<実施例21> ホワイトオーク材を用いたスピリッツ類の製造
本発明におけるホワイトオーク材加工品を用いて、スピリッツ類を製造した例を示す。麦芽の代わりにホワイトオーク材を用いて実施例2に記載した方法に従って得た高温高圧処理ホワイトオーク材(200℃、1.4MPa)を1センチ角の立方体形に加工し、グレーンスピリッツに0.1%添加し浸漬することにより、スピリッツ類を得た。
官能評価は5名のパネリストにより行い、香味について特徴を調べたところ、本原料の使用により、リグニン系フェノール化合物由来の芳ばしい香りをスピリッツ類に付与することができた。香りの伸びがきれいで口あたりをまろやかにする効果があり、味わい・ウマミを感じさせる効果もあった。また、これらの効果は、リグニン分解物以外の反応生成物であるメイラード反応物やピラジン類、有機酸等を含む処理原料を浸漬したことによるスピリッツ類の組成変化も大きく寄与していると考えられる。
<実施例22> オオムギ種子とサクラ材を用いたスピリッツ類の製造
本発明におけるオオムギ種子加工品を原料とし、スピリッツ類を製造した例を示す。麦芽の代わりにオオムギ種子を用いて、実施例1に記載した方法に従って得た高温高圧処理オオムギ種子(200℃、1.4MPa)を、使用原料の10%使用して、スピリッツ類を得た。具体的には、麦芽45kgに高温高圧処理オオムギ種子(200℃、1.4MPa)を5kg混合し、65℃の水200Lで約1時間糖化した。糖化液をろ過した後、連続式蒸留によってスピリッツ類を得た。麦芽の代わりにサクラ材を用いて実施例2に記載した方法に従って得た高温高圧処理サクラ材(200℃、1.4MPa)を1センチ角の立方体形に加工し、得られたスピリッツ類に0.1%添加し浸漬することにより、スピリッツ類を得た。
官能評価は5名のパネリストにより行い、香味について特徴を調べたところ、本原料の使用により、リグニン系フェノール化合物由来の芳ばしい香りをスピリッツ類に付与することができた。香りの伸びがきれいで口あたりをまろやかにする効果があり、味わい・ウマミを感じさせる効果もあった。また、これらの効果は、リグニン分解物以外の反応生成物であるメイラード反応物やピラジン類、有機酸等を含む処理原料を使用したことによるスピリッツ類の組成変化も大きく寄与していると考えられる。
<実施例23> 麦芽を用いたリキュール類の製造
本発明における麦芽加工品を原料とし、リキュール類を製造した例を示す。実施例1に記載した方法に従って得た高温高圧処理麦芽(200℃、1.4MPa)を、グレーンスピリッツに5%添加して浸漬することにより、リキュール類を得た。
官能評価は5名のパネリストにより行い、香味について特徴を調べたところ、高温高圧処理麦芽の浸漬により、リグニン系フェノール化合物由来の芳ばしい香りをリキュール類に付与することができた。香りの伸びがきれいで口あたりをまろやかにする効果があり、味わい・ウマミを感じさせる効果もあった。また、これらの効果は、リグニン分解物以外の反応生成物であるメイラード反応物やピラジン類、有機酸等を含む処理原料を使用したことによるリキュール類の組成変化も大きく寄与していると考えられる。
<実施例24> 茶葉を用いたリキュール類の製造
本発明における茶葉加工品を原料とし、リキュール類を製造した例を示す。麦芽穀皮の代わりに茶葉を用い、実施例2に記載した方法に従って得た高温高圧処理茶葉(200℃、1.4MPa)を、グレーンスピリッツに5%添加して浸漬することにより、リキュール類を得た。
官能評価は5名のパネリストにより行い、香味について特徴を調べたところ、高温高圧処理茶葉の浸漬により、リグニン系フェノール化合物由来の芳ばしい香りをリキュール類に付与することができた。香りの伸びがきれいで芳ばしく、口あたりをまろやかにする効果があり、味わい・ウマミを感じさせる効果もあった。また、これらの効果は、リグニン分解物以外の反応生成物であるメイラード反応物やピラジン類、有機酸等を含む処理原料を浸漬したことによるリキュール類の組成変化も大きく寄与していると考えられる。
<実施例25> 茶葉を用いた茶飲料の製造
本発明における茶葉加工品を用いて茶飲料を製造した例を示す。麦芽穀皮の代わりに生茶葉を用い、実施例2に記載した方法に従って得た高温高圧処理茶葉(200℃、1.4MPa)を、90℃の熱水に浸漬することにより、茶飲料を得た。
官能評価は5名のパネリストにより行い、茶飲料の香味について特徴を調べたところ、高温高圧処理茶葉の使用により、リグニン系フェノール化合物由来の芳ばしい香りを付与することができた。甘酸っぱくて芳ばしい香りの伸びがきれいで、口あたりをまろやかにする効果があり、味わい・ウマミ・適度な酸味を感じさせる効果もあった。また、これらの効果は、リグニン分解物以外の反応生成物であるメイラード反応物やピラジン類、有機酸等を含む処理茶葉を使用したことによる茶飲料の組成変化も大きく寄与していると考えられる。
<実施例26> オオムギ種子を用いた茶飲料の製造
本発明におけるオオムギ種子加工品を原料とし、茶飲料を製造した例を示す。麦芽の代わりにオオムギ種子を用いて実施例1に記載した方法に従って得た高温高圧処理オオムギ種子(200℃、1.4MPa)を使用茶葉の10%を茶葉に混合し、90℃の熱水に浸漬することにより、茶飲料を得た。
官能評価は5名のパネリストにより行い、茶飲料の香味について特徴を調べたところ、高温高圧処理オオムギ種子の使用により、リグニン系フェノール化合物由来の芳ばしい香りを付与することができた。甘酸っぱくて芳ばしい香りの伸びがきれいで、口あたりをまろやかにする効果があり、味わい・ウマミ・適度な酸味を感じさせる効果もあった。また、これらの効果は、リグニン分解物以外の反応生成物であるメイラード反応物やピラジン類、有機酸等を含む処理茶葉を使用したことによる茶飲料の組成変化も大きく寄与していると考えられる。
<実施例27> 麦芽、イネ種子穀皮、タケ材を用いた茶飲料の製造
本発明における麦芽加工品、イネ種子穀皮加工品、タケ材加工品を用いて混合茶飲料を製造した例を示す。実施例1に記載した方法に従って得た高温高圧処理麦芽(200℃、1.4MPa)、麦芽穀皮の代わりにイネ種子穀皮を用い、実施例2に記載した方法に従って得た高温高圧処理イネ種子(200℃、1.4MPa)をそれぞれ使用茶葉の3%を茶葉に混合し、麦芽穀皮の代わりにタケを用いて、実施例2に記載した方法に従って得た高温高圧処理タケ材(200℃、1.4MPa)を約1センチ角の大きさに切断したものとともに、90℃の熱水にて浸漬することにより混合茶飲料を得た。
官能評価は5名のパネリストにより行い、茶飲料の香味について特徴を調べたところ、高温高圧処理麦芽、高温高圧処理麦芽穀皮と高温高圧処理タケ材の使用により、リグニン系フェノール化合物由来の芳ばしい香りを付与することができた。甘くて芳ばしい香りに加え、タケの華やかな香りも付与でき、口あたりをまろやかにする効果や味わい・ウマミを感じさせる効果があった。また、これらの効果は、リグニン分解物以外の反応生成物であるメイラード反応物やピラジン類、有機酸等を含む処理茶葉を使用したことによる茶飲料の組成変化も大きく寄与していると考えられる。
【産業上の利用可能性】
本発明は、新規な植物加工品の製造に利用できる。さらに詳しくは、本発明は、新規な香味を有する植物加工品の製造方法、および当該植物加工品を原料とする酒類の製造方法を提供できる。本発明は、上記植物加工品の製造工程において植物中の物質の酸化を抑制することができる植物加工品の製造方法を提供できる。本発明は、処理時間を短縮し、投入エネルギーを低減することができる植物加工品の製造方法を提供できる。
【図1】

【図2】

【図3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物又はその処理物を、0〜1μg/mLの酸素濃度下、高温高圧の液体、気体又は流体で処理することを特徴とする植物加工品の製造方法。
【請求項2】
植物又はその処理物を、0〜1μg/mLの酸素濃度下、温度140〜500℃および圧力0.1〜100MPaの液体、気体又は流体で、1〜3600秒間処理することを特徴とする請求の範囲第1項に記載の植物加工品の製造方法。
【請求項3】
植物又はその処理物を、0〜1μg/mLの酸素濃度下、温度160〜250℃および圧力0.5〜4.5MPaの液体、気体又は流体で、10〜1200秒間処理することを特徴とする請求の範囲第1項に記載の植物加工品の製造方法。
【請求項4】
液体、気体又は流体が、脱気した液体由来であることを特徴とする請求の範囲第1項〜第3項のいずれか1項に記載の植物加工品の製造方法。
【請求項5】
処理前に、酸素濃度0〜1μg/mLの気体で処理容器内を置換することを特徴とする請求の範囲第1項〜第4項のいずれか1項に記載の植物加工品の製造方法。
【請求項6】
酸素濃度0〜1μg/mLの気体が、不活性ガス、二酸化炭素または脱酸素した気体であることを特徴とする請求の範囲第5項に記載の植物加工品の製造方法。
【請求項7】
植物又はその処理物が、リグニンを含有する植物又はその処理物であることを特徴とする請求の範囲第1項〜第6項のいずれか1項に記載の植物加工品の製造方法。
【請求項8】
リグニンを含有する植物又はその処理物が、穀類、樹木、茶類およびそれらの処理物、ならびに糖化かすから選ばれる1種以上であることを特徴とする請求の範囲第7項に記載の植物加工品の製造方法。
【請求項9】
請求の範囲第1項〜第8項のいずれか1項に記載の方法で製造され、バニリンを0.15mg/100g以上含有することを特徴とする植物加工品。
【請求項10】
穀類、樹木、茶類またはそれらの処理物の加工品である請求の範囲第9項に記載の植物加工品
【請求項11】
麦芽または麦芽穀皮の加工品である請求の範囲第10項に記載の植物加工品。
【請求項12】
請求の範囲第9項〜第11項に記載の植物加工品を原料として製造される飲食物。
【請求項13】
飲食物が、酒類および清涼飲料から選ばれる飲料または製菓および飯類から選ばれる食品である請求の範囲第12項に記載の飲食物。
【請求項14】
請求の範囲第9項〜第11項のいずれか1項に記載の植物加工品を原料として製造される飲食物。
【請求項15】
飲食物が酒類である請求の範囲第14項に記載の飲食物。
【請求項16】
請求の範囲第9〜第11項のいずれか1項に記載の植物加工品が、水以外の原料に対して0%より多く、100%以下の範囲で原料として使用されている請求の範囲第12項に記載の飲食物。
【請求項17】
請求の範囲第9〜第11項のいずれか1項に記載の植物加工品の水以外の原料に対する使用率が、0.1重量%〜50重量%である請求の範囲第16項に記載の飲食物。
【請求項18】
請求の範囲第9〜第11項のいずれか1項に記載の植物加工品の水以外の原料に対する使用率が0.5重量%〜30重量%である請求の範囲第16項に記載の飲食物。
【請求項19】
バニリンを0.005μg/mL以上含有することを特徴とする請求の範囲第12項〜第18項のいずれか1項に記載の飲食物。
【請求項20】
請求の範囲第9項〜第11項のいずれか1項に記載の植物加工品を原料の少なくとも一部に用いて製造されるビール。
【請求項21】
バニリン含有組成物の製造方法であって、リグニンを含有する植物又はその処理物を高温高圧の液体、気体又は流体で処理することにより、バニリン含有量を増加させることを特徴とするバニリン含有組成物の製造方法。
【請求項22】
高温高圧条件が温度140℃ないし500℃、及び圧力0.1ないし100MPaである請求の範囲第21項に記載のバニリン含有組成物の製造方法。
【請求項23】
高温高圧処理時間が1〜3600秒間である請求の範囲第21項または第22項に記載のバニリン含有組成物の製造方法。
【請求項24】
バニリン含有組成物が飲食物原料である請求の範囲第21項〜第23項のいずれか1項に記載のバニリン含有組成物の製造方法。
【請求項25】
バニリン含有組成物が酒類原料又は茶飲料原料である請求の範囲第21項〜第24項のいずれか1項に記載のバニリン含有組成物の製造方法。
【請求項26】
リグニンを含有する植物又はその処理物が穀類由来である請求の範囲第21項〜第25項のいずれか1項に記載のバニリン含有組成物の製造方法。
【請求項27】
穀類が麦芽である請求の範囲第26項に記載のバニリン含有組成物の製造方法。
【請求項28】
バニリンの含有率が、高温高圧処理前のリグニンを含有する植物又はその処理物の含有率に比べ3倍以上である請求の範囲第21項〜第27項のいずれか1項に記載のバニリン含有組成物の製造方法。
【請求項29】
前記高温高圧処理後に、処理産物を高圧から低圧へ暴露することにより、水分を蒸散させるとともに膨化させる工程を含むことを特徴とする請求の範囲第21項〜第28項のいずれか1項に記載のバニリン含有組成物の製造方法。
【請求項30】
エクストルーダを用いることを特徴とする請求の範囲第21項〜第29項のいずれか1項に記載のバニリン含有組成物の製造方法。
【請求項31】
バニリン含有組成物が膨化したスティック状、円柱状、多角柱状、球状又は多角体状である請求の範囲第29項または第30項に記載のバニリン含有組成物の製造方法。
【請求項32】
0〜1μg/mLの酸素濃度下に、植物、その処理物又はこれらを含む原料を処理することを特徴とする請求の範囲第21項〜第31項のいずれか1項に記載のバニリン含有組成物の製造方法。
【請求項33】
請求の範囲第21項〜第32項のいずれか1項に記載の製造方法により製造されたバニリン含有組成物。
【請求項34】
請求の範囲第21項〜第32項のいずれか1項に記載の製造方法により製造された麦芽含有組成物。
【請求項35】
請求の範囲第21項〜第32項のいずれか1項に記載の製造方法により製造されたバニリン含有組成物を原料として製造された飲食物。
【請求項36】
飲食物がビール、発泡酒、ウイスキー、焼酎、果実酒類のいずれかである請求の範囲第35項に記載の飲食物。
【請求項37】
バニリンを0.005μg/mL以上含有する請求の範囲第35項に記載の飲食物。
【請求項38】
飲食物がビール、発泡酒、ウイスキー、焼酎、果実酒類のいずれかである請求の範囲第37項に記載の飲食物。

【国際公開番号】WO2004/039936
【国際公開日】平成16年5月13日(2004.5.13)
【発行日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−548076(P2004−548076)
【国際出願番号】PCT/JP2003/013885
【国際出願日】平成15年10月29日(2003.10.29)
【出願人】(000001904)サントリー株式会社 (319)
【Fターム(参考)】