説明

植物加工物及びその製造法

本発明は、アリウム属植物を低酸素又は無酸素状態で1℃〜40℃の条件下、媒体と共存させずに1週間以上放置することにより得られる植物加工物、及びその製造法、並びにその利用に関する。 当該植物加工物は、刺激性物質が殆ど含まれず、γ−アミノ酪酸やS−アリルシステインなどの有用物質を多く含有することから、医薬品、健康食品等として、又はそれらの素材として有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、アリウム属植物の新規加工物及びその製造法、並びにその利用に関する。
【背景技術】
アリウム属植物であるニンニク、タマネギ、ラッキョウ、ニラ及びネギは、古くから食品あるいは医薬品として用いられており、ニンニクは滋養強壮、健胃、利尿、整腸、殺菌、駆虫、タマネギは血圧降下、糖尿病予防、高脂血症予防、ラッキョウ、ニラ及びネギは整腸、疲労回復といった効能・効果が期待されている。
従来、アリウム属植物の加工法として、加熱、乾燥、搾汁とする方法、水や有機溶媒を用いた抽出法、乾燥後、粉末とする方法、食塩水につけ塩味をつけると共に乳酸菌及び酢酸菌を添加させ、微生物によって発酵させる方法(例えば、特開55−7044号公報)などが報告されている。また、生ニンニクを2000〜7000気圧の超高圧条件下に5分以上保持する方法(例えば、特開平4−360661号公報)や蜂蜜、卵黄、酵母、酒類、米や麦などの穀類、豆類などの天然物を、媒体としてあるいは他の媒体と共に添加する方法も、用途により採用されている。
しかしながら、これらの方法を用いた場合、アリウム属植物特有の強烈な臭いや、その臭いの基となるスルフォキサイドあるいはその分解生成物であるスルフィネートなどによる刺激を低減又は除去することはできない。また、食塩水につけ塩味をつけると共に乳酸菌及び酢酸菌を添加して発酵させる方法や超高圧で処理する方法では、アリウム属植物の有効成分が分解又は消失する恐れがある。加えて、塩類、糖類、酸類あるいはアルコール類等、これらを含む媒体に接触又は共存させた場合、即ちいわゆる漬物や酒漬けのような状態にされた場合、浸透圧等の関係から、植物体に元々存在していた成分、あるいは新たに生成した有用な成分が植物体から流出してしまう。また、媒体によって酵素などの活性が損なわれ、有効成分の生成が行われない場合がある。加えて漬物などにおいて、植物体から流出した有効成分を含む液体等の媒体は、高濃度塩類等を含むため、一般に摂取するには好適ではない。
従って、アリウム属植物特有の臭いや刺激物質又は刺激物前駆体等が低減又は除去され、且つ有効成分の喪失がなく、また有用成分の生成を妨害しない加工法の開発が期待されている。
【発明の開示】
本発明は、臭いや刺激物質又は刺激物前駆体などが除去され、且つ有用物質の含有量が増加した植物加工物及びその製造法、並びに当該加工物を利用した医薬品、健康食品、調味料又は飼料を提供することを目的とする。
本発明者らは、斯かる事情に鑑み、鋭意研究を重ねた結果、アリウム属植物を低酸素又は無酸素状態で1℃〜40℃の条件下、1週間以上放置することにより、アリウム属植物特有の臭いや刺激性を緩和し、且つγ−アミノ酪酸やS−アリルシステインなどの有用物質の生成が促進されることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、アリウム属植物を低酸素又は無酸素状態で1℃〜40℃の条件下、媒体と共存させずに1週間以上放置することにより得られる植物加工物を提供するものである。
また、本発明は、当該植物加工物又はその抽出物を有効成分とする医薬品、健康食品、調味料又は飼料を提供するものである。
また、本発明は、当該植物加工物又はその抽出物を有効成分とする高血圧症の予防又は治療剤を提供するものである。
また、本発明は、アリウム属植物を低酸素又は無酸素状態で1℃〜40℃の条件下、媒体と共存させずに1週間以上放置することを特徴とする植物加工物の製造法を提供するものである。
また、本発明は、高血圧症の予防又は治療剤製造のための当該植物加工物又はその抽出物の使用を提供するものである。
さらに、本発明は、アリウム属植物を低酸素又は無酸素状態で1℃〜40℃の条件下、媒体と共存させずに1週間以上放置することにより得られる植物加工物又はその抽出物を投与することを特徴とする高血圧症の処置方法を提供するものである。
本発明の植物加工物は、刺激性物質が殆ど含まれず、また、その加工過程において媒体を使用しないことから、有効成分が保持され、また、γ−アミノ酪酸やS−アリルシステインなどの有用物質を多く含有し、且つ長期間安定である。
従って、本発明の植物加工物は、医薬品、健康食品等として、又はそれらの素材として有用である。
【図面の簡単な説明】
図1は、SHRラットを用いた血圧上昇抑制試験の結果を示す図である。
図2は、SHRラットを用いた血圧降下試験の結果を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
本発明の植物加工物は、アリウム属植物を低酸素又は無酸素状態で1℃〜40℃の条件下、媒体と共存させずに1週間以上放置することにより得られるものである。
アリウム属植物としては、ニンニク(Allium sativum L.)、タマネギ(Allium cepa)、ラッキョウ(Allium chinense)、ニラ(Allium tuberosum)、ネギ(Allium fistulosum)などが挙げられる。本発明では、これら植物体の全部又はその一部を用いることができ、中でもニンニク、タマネギ、ラッキョウの鱗茎を用いるのが好ましく、特にニンニクの鱗茎を用いるのが好ましい。これらは単独で用いてもよく、または二種類以上混合して用いてもよい。
鱗茎とは、短くなった茎に変形肥厚した葉が、鱗片状についているものをいい、側球又は根茎とも呼ばれる。鱗茎は鱗片に分割したり、根を除去したり、必要に応じて洗浄や脱皮、乾燥処理したものを使用することができる。また、せん断、破砕、細分化したものを使用することもできるが、急激な酵素反応や化学反応を起こす可能性があるため、鱗茎または鱗片をそのままの状態で使用するのが望ましい。
低酸素状態とは、通常大気中における酸素濃度より低い状態をさす。この濃度は大部分のカビが含まれる偏性好気性菌が増殖できない酸素濃度であり、Streptococcus属などの微好気性菌やビブリオ、乳酸菌、酵母などの通性嫌気性菌の増殖は妨げない濃度である。一方、無酸素状態とは、Clostridium属などの偏性嫌気性菌が増殖できる状態をいい、例えば、アリウム属植物を気体の流通が起こらない容器に入れて、脱酸素処理することにより設定することができる。また、脱酸素処理を行わなくても、加工に用いる植物や微生物の有酸素呼吸活動の結果として低酸素又は無酸素状態にしてもよい。更に、低酸素又は無酸素状態を早期に実現させるために、鉄粉などの脱酸素剤にて酸素を除去する方法や、分子状酸素を含まない気体にて、容器内の空気の一部あるいは全てを置換することができる。分子状酸素を含まない気体については、単一気体あるいは混合気体など、特に限定しないが、操作が簡便でかつ安価である窒素、二酸化炭素、アルゴンあるいはエチレンを使用することができる。また低酸素又は無酸素状態で生存又は生育が可能な微生物は、放置開始時から存在していてもよく、また放置中に添加してもよい。
気体の流通が起こらない容器としては、特に限定されないが、ガラス容器、鉄、アルミ、ステンレスなどで作成された金属容器、陶器又は磁製容器、低酸素透過性プラスチック製の袋や容器などを用いることができる。特に、気体の流通を完全に遮断できるガラス容器、金属容器、陶器製容器などが好ましい。
放置温度は、0℃以下になると、植物体が凍結して反応が進まなくなることがあり、40℃より高くなると、植物体が変性し、目的とする植物加工物が得られなくなる。そのため、放置温度は1℃〜40℃に設定するのが好ましく、特に5℃〜37℃に設定するのが好ましい。
放置期間は、植物体の色の変化、有用物質の増加、臭いもしくは刺激性物質が低減又は消失するのに要する期間をいい、放置温度によって異なる。一般に放置温度を高く設定すれば放置期間は短くなり、放置温度を低く設定すれば放置期間は長くなる。放置温度が1℃〜40℃に設定された場合、1週間以上放置することにより、本発明植物加工物を得ることができる。また、このような条件下で、1年間以上放置してもよいが、1週間〜1年間放置するのが好ましく、更に5℃〜37℃で、2週間〜6ヶ月間放置するのが好ましい。
以上の工程は、いずれも媒体が接触、共存しない状態で行われる。即ち、アリウム属植物や低酸素又は無酸素状態にするための添加物以外に、媒体となる水やアルコール等の液体、あるいは糠や味噌といった半固形物などが含まれない状態、あるいは容器中で被加工物と接触しない状態で行われる。
斯くして、本発明の植物加工物を得ることができるが、更に必要に応じて当該植物加工物を適切な媒体と共に破砕して破砕混合物とすること、更に必要に応じてこれを濃縮、乾燥することもできる。
本発明の植物加工物の抽出物は、植物加工物をそのまま、あるいはせん断、破砕、細分化した後、適切な媒体と共に抽出に付すことにより調製することができる。
上記破砕混合物や抽出物の調製に用いられる適切な媒体としては、食品添加物や医薬品原料として一般的に用いられる溶媒が挙げられる。具体的には、水、低級アルコール、又は含水低級アルコールで、低級アルコールは、炭素数1〜4のメチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコールやブチルアルコールなどを単独又は混合して用いることができ、特にエチルアルコールを用いるのが好ましい。
また、抽出条件は特に限定されないが、5〜95%の含水エタノールで、1℃〜70℃の条件下、1時間以上抽出するのが好ましい。得られた抽出物は必要に応じてろ過、クロマトグラフィーや限外ろ過などの任意の手段により、精製することができる。
このようにして得られた破砕混合物、抽出物は、必要に応じて減圧濃縮、凍結乾燥、流動層乾燥や棚式乾燥のような加熱乾燥、又はスプレードライなど任意の手段により濃縮、乾燥することができ、必要ならば、破砕、濃縮、乾燥の過程で、適宜結晶セルロースなどの賦形剤として一般的に用いられる基材を添加することができる。
本発明の植物加工物の好ましい態様としては、例えば、ニンニクを鱗茎のままステンレス容器に入れ、密閉下、20〜35℃にて1ヶ月間放置した後、破砕処理を行い、殺菌後、スプレードライにて粉末化したものが挙げられる。
斯くして得られた本発明の植物加工物又はその抽出物は、アリウム属植物に特徴的な臭いが減少又は消失し、刺激性物質やその前駆体の含有量が原料植物より大幅に低減されている。一方、γ−アミノ酪酸やS−アリルシステインといった有用成分の含有量が増加している(実施例)。γ−アミノ酪酸は血圧上昇抑制作用を有するアミノ酸であることが知られているが、本発明のニンニク加工物を高血圧ラットに摂取したところ、顕著な血圧上昇抑制作用が認められ、その効果が確認された(試験例)。また、S−アリルシステインは、ニンニク由来の特徴的含硫アミノ酸で、抗酸化、脂質の過酸化抑制(Planta Med.,60,417−420(1994)、Journal of Nutrition 131(3 Supplement):p1100S−1105S(2001))、肝保護(Phytother.Res.3.50−53(1989))、神経細胞賦活(Neurochemical Research;22(12),1449(1997))、ガン予防(Cancer Res.;50,5084(1990))等の薬理作用を有することが知られていることから、本発明の植物加工物又はその抽出物では、当該薬理作用がより効果的に発揮されるものと考えられる。
本発明の植物加工物又はその抽出物は、1種又は2種以上を混合して、そのまま或いは他の薬学的に許容される担体を添加することにより、上記薬理作用を発揮する医薬品、健康食品、調味料、飼料等の各種製剤とすることができる。このうち、高血圧症の予防又は治療のための医薬品又は健康食品としての使用は特に好適である。
製剤形態は特に限定されるものではなく、使用目的に応じて、粉剤、液剤、カプセル剤、懸濁剤、乳剤、シロップ剤、エリキシル剤、顆粒剤、丸剤、錠剤、トローチ剤、リモナーデ剤等の経口剤又は注射剤等の非経口剤とすることができる。尚、薬学的に許容される担体としては、例えば乳糖、白糖、塩化ナトリウム、ブドウ糖、尿素、デンプン、炭酸カルシウム、カオリン、結晶セルロース、ケイ酸等の賦形剤、水、エタノール、プロパノール、ブドウ糖液、デンプン液、ゼラチン溶液、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、リン酸カリウム、ポリビニルピロリドン等の結合剤、アルギン酸ナトリウム、カンテン末、炭酸水素ナトリウム、炭酸カルシウム、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類、ラウリル硫酸ナトリウム等の崩壊剤、グリセリン、デンプン等の保湿剤、精製タルク、ステアリン酸塩、ポリエチレングリコール等の滑沢剤等が挙げられる。
上記の各種製剤に配合されるべき植物加工物又はその抽出物の量は、服用する患者の症状、年齢、体重等によっても異なるが、通常成人1日あたり乾燥植物加工物として0.1〜500mg/kg、好ましくは0.2〜50mg/kg程度である。
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例】
以下に実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
容器容量約1000mLのガラス製容器に、重量約50gのニンニク球の外皮を取り除かず入れ、密栓をして約1ヶ月間、室温にて放置した。その後ニンニクを取り出し、外皮を取り除き、約10gを量り、約30mLの5%トリクロロ酢酸溶液でホモジナイズした後、50mL定容とした。この液を1mL取り、5%トリクロロ酢酸溶液で希釈し、10mLとした。この液を一部とり、メンブランフィルターでろ過し、ろ液中のS−アリルシステインスルフォキサイド(アリイン)、S−アリルシステイン及びγ−アミノ酪酸の含有量を定量した。
各アミノ酸の分析は、オルトフタルアルデヒドをラベル化試薬として用い、ポストラベルイオン交換高速液体クロマトグラフ法にて行った。検出は蛍光検出器を用いた。検量線は、各目的のアミノ酸をあらかじめ合成し、標準溶液として調製し作成した。
【実施例2】
容器容量約1000mLのガラス製容器に、重量約50gのニンニク球を外皮を取り除かず入れ、窒素ガスを用いて空気を置換した後、密栓をして約1ヶ月間、室温にて放置した。その後ニンニクを取り出し、実施例1と同様に、S−アリルシステインスルフォキサイド(アリイン)、S−アリルシステイン及びγ−アミノ酪酸を分析した。
【実施例3】
容器容量約1000mLのガラス製容器に、重量約200gのニンニク球を外皮を取り除いたものと取り除かないものを混合して入れ、密栓をして約1ヶ月間、室温にて放置した。その後ニンニクを取り出し、実施例1と同様に、S−アリルシステインスルフォキサイド(アリイン)、S−アリルシステイン及びγ−アミノ酪酸を分析した。
【実施例4】
容器容量約1000mLのガラス製容器に、重量約200gのニンニク球を外皮を取り除いたものと取り除かないものを混合して入れ、密栓をして約1ヶ月間、37℃にて放置した。その後ニンニクを取り出し、実施例1と同様に、S−アリルシステインスルフォキサイド(アリイン)、S−アリルシステイン及びγ−アミノ酪酸を分析した。
【実施例5】
容器容量約10Lのガラス製容器に、重量約6kgのニンニク球を外皮を取り除かず入れ、密栓をして約3ヶ月間、室温にて放置した。その後ニンニクを取り出し、実施例1と同様に、S−アリルシステインスルフォキサイド(アリイン)、S−アリルシステイン及びγ−アミノ酪酸を分析した。
【実施例6】
容器容量約500mLのガラス製容器に、重量約50gのニンニク球を外皮を取り除かず入れ、密栓をして約8年間、4℃にて放置した。その後ニンニクを取り出し、実施例1と同様に、S−アリルシステインスルフォキサイド(アリイン)、S−アリルシステイン及びγ−アミノ酪酸を分析した。
【実施例7】
容器容量約1000mLのガラス製容器に、重量約50gのニンニク球を外皮を取り除かず入れ、窒素ガスを用いて空気を置換した後、Lactobacirusを接種し密栓をして約1ヶ月間、室温にて放置した。その後ニンニクを取り出し、実施例1と同様に、S−アリルシステインスルフォキサイド(アリイン)、S−アリルシステイン及びγ−アミノ酪酸を分析した。
比較例1
ニンニク球の外皮を取り除き、約10gを量り、実施例1と同様に、S−アリルシステインスルフォキサイド(アリイン)、S−アリルシステイン及びγ−アミノ酪酸を分析した。
【実施例8】
容器容量約1000mLのガラス製容器に、重量約200gのニンニク球を外皮を取り除かず入れ、密栓し、1ヶ月間室温にて放置したニンニクの外皮を取り除き、160gの放置物に対し、160mLの水を加え、約2分間のホモジナイズを行った。ホモジナイズを、30メッシュの篩過器にて粗繊維などを取り除き、ついでスプレードライによって乾燥粉末を調製した。その結果、淡黄色微粉末を8g回収した。この粉末は、ニンニク特有の匂いを認めなかった。
【実施例9】
容器容量約1000mLのガラス製容器に、重量約200gのニンニク球を外皮を取り除かず入れ、密栓し、1ヶ月間室温にて放置したニンニクの外皮を取り除き、160gの放置物に対し、160mLの水を加え、約2分間のホモジナイズを行った。ホモジナイズを凍結乾燥し、淡黄色粉末を64g回収した。この粉末は、実施例6と同様、ニンニク特有の匂いを認めなかった。
【実施例10】
容器容量約1000mLのガラス製容器に、約300gのタマネギ球を外皮を取り除かず入れ、窒素ガスを用いて空気を置換した後、密栓をして約6ヶ月間、室温にて放置した。本調製物は、淡黄色でタマネギ由来の刺激臭を認めなかった。
【実施例11】
容器容量約1000mLのガラス製容器に、約100gのラッキョウを外皮を取り除かず入れ、窒素ガスを用いて空気を置換した後、密栓をして約6ヶ月間、室温にて放置した。本化合物は、暗褐色でラッキョウ由来の刺激臭を認めなかった。
【実施例12】
容器容量約15Lのガラス製容器に、約10kgのニンニク球を外皮を取り除かず入れ、窒素ガスを用いて空気を置換した後、密栓をして約6ヶ月間、室温にて放置した。約4kgのニンニクの外皮を取り除き、スライスした後、約60℃の温度で送風下、一夜乾燥を行った。乾燥物を粉砕機で粉砕し約1.3kgの乾燥粉砕物を回収した。
【実施例13】
容器容量約18Lの金属製容器に、約9kgのニンニク球を外皮及び根を取り除かず入れ、窒素ガスを用いて空気を置換した後、密栓をして2ヶ月間、室温にて放置した。約1kgのニンニクをそのまま微粉砕した。微粉砕物50gに水を450mL加え、スプレードライを行い約7gの乾燥物を回収した。乾燥物は、淡黄色でニンニク特有の臭いを認めなかった。
【実施例14】
容器容量約18Lの金属製容器に、約9kgのニンニク球を外皮及び根を取り除かず入れ、空気を置換せず、密栓をして2ヶ月間、室温にて放置した。約1kgのニンニクをそのまま微粉砕した。微粉砕物50gに水を450mL加え、スプレードライを行い約7gの乾燥物を回収した。乾燥物は、淡黄色でニンニク特有の臭いを認めなかった。
【実施例15】
容器容量約18Lの金属製容器に、約9kgのニンニク球を外皮及び根を取り除かず入れ、炭酸ガスを用いて空気を置換した後、密栓をして2ヶ月間、室温にて放置した。約1kgのニンニクをそのまま微粉砕した。微粉砕物50gに水を450mL加え、スプレードライを行い約7gの乾燥物を回収した。乾燥物は、淡黄色でニンニク特有の臭いを認めなかった。
実施例1〜7及び比較例1の分析結果を表1に示す。いずれの実施例においても、比較例1と比較して、生ニンニクの特徴的成分で刺激物質の前駆体となるアリインは消失しており、かつS−アリルシステインやγ−アミノ酪酸といった有用物質の増加が認められた。

試験例1
SHRラット(自然発症高血圧ラット)にControl群として2%食塩含有MF飼料(オリエンタル酵母)を、また、Garlic群として2%食塩、実施例12で得られたニンニクの乾燥粉砕物4%を含有したMF飼料を6週齢時から摂取させて2週間ごとの血圧上昇の変化を16週齢まで観察した。
測定方法は、ラットを保定用ポケットで包み、約20分間一定温度で保温し、tail−cuff法による最高血圧(SBP)を非観血式自動血圧測定装置BP−98A(株式会社Softron)を用いて測定した。測定は、個体の血圧が安定する14〜16時の間に実施した。結果を図1に示す。
図1より、Garlic群は、Control群と比較して、血圧の上昇が抑制されてた。
試験例2
SHRラット(自然発症高血圧ラット)にControl群としてAIN93G粉末飼料(オリエンタル酵母(株))を、また、Garlic群として実施例12で得られたニンニクの乾燥粉砕物4%を含有したAIN93G飼料を、血圧が上昇し、ほぼ安定する12週齢時から摂取させた。22週齢まで2週間ごとの血圧の変化を、試験例1と同様の方法で測定した。結果を図2に示す。
図2より、Garlic群は、血圧降下作用を有することが確認された。
【図1】

【図2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
アリウム属植物を低酸素又は無酸素状態で1℃〜40℃の条件下、媒体と共存させずに1週間以上放置することにより得られる植物加工物。
【請求項2】
放置が、1週間〜1年間放置である請求項1記載の植物加工物。
【請求項3】
アリウム属植物が、ニンニク、タマネギ又はラッキョウである請求項1又は2記載の植物加工物。
【請求項4】
請求項1〜3記載の植物加工物又はその抽出物を有効成分とする医薬品、健康食品、調味料又は飼料。
【請求項5】
請求項1〜3記載の植物加工物又はその抽出物を有効成分とする高血圧症の予防又は治療剤。
【請求項6】
アリウム属植物を低酸素又は無酸素状態で1℃〜40℃の条件下、媒体と共存させずに1週間以上放置することを特徴とする植物加工物の製造法。
【請求項7】
放置後更に、外皮、茎、根等をつけたまま破砕処理し、粉末化を行うものである請求項6記載の製造法。
【請求項8】
高血圧症の予防又は治療剤製造のための請求項1〜3記載の植物加工物又はその抽出物の使用。
【請求項9】
請求項1〜3記載の植物加工物又はその抽出物を投与することを特徴とする高血圧症の処置方法。

【国際公開番号】WO2004/077963
【国際公開日】平成16年9月16日(2004.9.16)
【発行日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−503066(P2005−503066)
【国際出願番号】PCT/JP2004/002627
【国際出願日】平成16年3月3日(2004.3.3)
【出願人】(000250100)湧永製薬株式会社 (51)
【Fターム(参考)】