説明

植物性材料を収納した構造体の処理方法

【課題】少なくとも間伐材等の木質を原料とする木材チップを含む林産物や穀類副産物などの植物性材料がネット状の袋に収納されてなる構造体の利用にあたり、防草効果の持続時間や植物育成の容易性等に課題があった。
【解決手段】少なくとも間伐材等の木質を原料とする木材チップを含む林産物や穀類副産物などの植物性材料がネット状の袋に収納されてなる構造体の利用にあたり、その製造工程中でそれぞれの用途に合わせた処理液に浸漬し、その後乾燥する工程を経ることにより、用途に応じた有効性を高めることが出来た。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも間伐材等の木質を原料とする木材チップを含む林産物や穀類副産物などの植物性材料がネット状の袋に収納されてなる構造体を利用するにあたって、これに加える処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
昨今、地球温暖化が世界的な課題となり、森林の育成のための間伐等の推進と並んで、既に二酸化炭素を固定している間伐材等の植物性材料の燃料以外での活用が非常に重要となっており、筆者らはこの活用のため、少なくとも間伐材等の木質を原料とする木材チップを含む林産物や穀類副産物などの植物性材料がネット状の袋に収納されてなる構造体及びその利活用に関して鋭意研究開発を行って来ている。
【0003】
これら用途の中には防草用途があり、また護岸用途や、海中に投入しての魚礁用途なども提案されている。防草用途への応用にあたっては、木質原料が径時変化して堆肥化することにより防草効果がなくなることが課題となっている。
【0004】
また、都市部での緑地の拡大による二酸化炭素固定吸収を図り、ヒートアイランドを緩和するために、屋上緑化等への要請が大きくなっている。また、食の安全が揺らぎ、自らの手で安心安全で清浄な野菜やハーブなどを作ろうというニーズも大きくなっている。
【0005】
これに対しては、従来、主にベランダや屋上等で用いる植物育成器としては、プラスチック容器等に土を入れたプランターが多く用いられていた。また、都市のベランダ等での土の使用は問題が多いことから、水耕栽培の提案も多くみられるが、筆者らは少なくとも間伐材等の木質を原料とする木材チップを含む林産物や穀類副産物などの植物性材料がネット状の袋に収納されてなる構造体がこれらの用途にも適することを見いだした。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−269998号公報
【特許文献2】特開2005−224211号公報
【特許文献3】特開2003−210051号公報
【特許文献4】特開2005−95021号公報
【特許文献5】特開2008−22808号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、従来の方法によっては、前記の通り防草用途に於いては木質原料が径時変化して堆肥化することにより防草効果がなくなることが課題となっていた。
【0008】
また、従来の方法によっては、都市のベランダや屋上等で土を使って植物を育成することは土の流出による汚れの問題、土自体が重いことからの過般性・設置容易性の問題、使用後の廃棄の際に土は一般ごみとして排出出来ないという問題、等々の多くの課題があった。
【0009】
また、水耕栽培による方法にあっては、水耕に適する植物しか育成出来ないという問題があり、またウレタンフォーム等の保水基盤材を用いる必要がありコストアップに繋がるという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、少なくとも間伐材等の木質を原料とする木材チップを含む林産物や穀類副産物などの植物性材料がネット状の袋に収納されてなる構造体の利用にあたり、その製造工程中でそれぞれの用途に合わせた処理液に浸漬し、その後乾燥する工程を含むことを、最も主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の方法を用いることにより、少なくとも間伐材等の木質を原料とする木材チップを含む林産物や穀類副産物などの植物性材料がネット状の袋に収納されてなる構造体を利用するにあたって、防草用途にあっては木酢液や塩分等を含む処理液に浸漬しその後乾燥処理を行うことによって防草効果の持続期間が長くなり、また屋上緑化や菜園等の植物育成用途にあっては液肥に浸漬しその後乾燥処理を行うことによって植物の育成効果が高まる等、それぞれの用途にさらに適した構造体を得ることが出来るという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、本発明にかかる処理工程の概要を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
少なくとも間伐材等の木質を原料とする木材チップを含む林産物や穀類副産物などの植物性材料がネット状の袋に収納されてなる構造体を利用するにあたって、その製造工程中でそれぞれの用途あわせた処理液に浸漬しその後乾燥処理を行うことによって、それぞれの用途にさらに適した構造体を得ることを実現した。
【実施例1】
【0014】
図1は本発明にかかる処理工程の概要を示した説明図である。ここで、本実施例では、少なくとも間伐材等の木質を原料とする木材チップを含む林産物や穀類副産物などの植物性材料がネット状の袋に収納されてなる構造体を用いている。本実施例では、通常は用途がほとんど無く、産業廃棄物として処理されていた間伐材を有効に再利用しており、エコロジーという観点からも非常に有効である。
【0015】
本実施例では、該構造体の用途を植物育成基盤材として用いるものとするため、構造体に収納した植物性材料は、木質原料としての間伐材を破砕した後、緑葉をブレンドして一次発酵を行い、さらに二次破砕を行った後にネット状の袋に収納したうえで、図1中に符号1で示した液体への浸漬工程として液肥への浸漬を行い、その後図1中に符号2で示した乾燥工程を経て構造体を得た。ここで、液肥としては堆肥を水に分散したものを用いたが、本発明は処理液の種類に限定されるものではなく、液肥としても各種有機肥料等を利用して同様の効果を得ることが出来る。
【0016】
また、緑葉のブレンドは植物育成基盤材として用いる構造体の軽量・過般性に悪影響を与えずに養分の含有率を高め、植物の育成に有効であったが、本発明はこれら副原料の添加の有無、或いは添加量等に関して何等の制限を有するものではなく、例えば緑葉を添加しなくても十分な効果を得ることが出来るし、ブレンドする材料としても緑葉に限定されるものではなく、もみ殻等の穀類副産物を加えてもよい。
【0017】
本発明の方法を用いる事により、安価に簡便な方法で植物の育成という機能を実現することが出来、さらに液肥への浸漬と乾燥工程を経ることによって植物の育成に非常に適した構造体を得ることが出来、非常に有効であった。また、本発明に係る植物育成器は、用いている基盤材が間伐材等の木質を原料とする木材チップを含む林産物や穀類副産物などの植物性材料がネット状の袋に収納されてなる構造体であるため、乾燥重量が小さくまた袋で取り回しが出来るため過般性に優れ、ビルの屋上やベランダ等での利用に非常に有効であった。従来の土を用いる方法等では、土は非常に重くベランダ等に運び入れることにも困難があると同時に風雨等により流出して周囲を汚損したりすることがあったが、本発明による基盤材を用いることによりその虞はなくなった。
【0018】
また、本発明の構造体は、利用後に廃棄する場合にも木質及び植物性材料からなるため、使用後は筐体容器から出して乾燥すれば軽量になるとともに、一般の可燃ごみとして廃棄することが出来、この面でも非常に優れたものであった。本発明にかかる浸漬及び乾燥処理も、有機液肥等を利用しているため廃棄、焼却等の際にも汚染や有害ガスの発生等の恐れはなく、環境負荷も小さい優れた製品であった。
【実施例2】
【0019】
本実施例に於いては、工程中に用いる処理液として、液肥に木酢液を添加したものを用いた。これにより、植物の育成に障害となる昆虫類の減少や胞子菌類の育成の減少等の効果があり、さらに植物の育成に非常に適した構造体を得ることが出来、非常に有効であった。
【0020】
ここで、処理液への添加物は木酢液に限定されるものではなく、用途及び求める効果に応じてハーブ抽出液等々を選択して添加することが出来る。
【実施例3】
【0021】
本実施例に於いては、本発明にかかる構造体の用途を防草用途とするための処理を行った。本実施例にかかる工程も、基本的に図1に示された処理工程と同様である。ここで、本実施例では、少なくとも間伐材等の木質を原料とする木材チップを含む林産物や穀類副産物などの植物性材料がネット状の袋に収納されてなる構造体を用いている。本実施例では、通常は用途がほとんど無く、産業廃棄物として処理されていた間伐材を有効に再利用しており、エコロジーという観点からも非常に有効である
【0022】
本実施例では、該構造体の用途を防草用として用いるものとするため、構造体に収納した植物性材料は、木質原料としての間伐材を一次破砕した後に一次発酵を行い、さらに二次破砕を行った後にネット状の袋に収納したうえで、図1中に符号1で示した液体への浸漬工程として海水への浸漬を行い、その後図1中に符号2で示した乾燥工程を経て構造体を得た。ここで、本実施例に於いては処理液として海水を用いたが、本発明は処理液の種類に限定されるものではなく、海水ではない塩水や木酢液、ハーブ抽出液、等を利用して同様の効果を得ることが出来る。
【0023】
本実施例の方法により、簡便な処理工程の追加によって防草効果の持続時間の延伸が図られ、もって本発明にかかる構造体の利用価値の向上という効果が得られた。
【0024】
ここで、本実施例に於ける処理は海水への浸漬であるから特に浸漬槽等の設備を設置することなく海中に投入後引き上げ、乾燥することによって処理が可能であり、処理コストの低減という効果をも得ることが出来た。また、本実施例の方法により、海中に投入して魚礁として利用した後の構造体についても同様に乾燥工程を経て防草材料としての利用が可能となり、経済的効果は大であった。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明の方法を用いることにより、少なくとも間伐材等の木質を原料とする木材チップを含む林産物や穀類副産物などの植物性材料がネット状の袋に収納されてなる構造体を利用するにあたって、防草用途にあっては木酢液や塩分等を含む処理液に浸漬しその後乾燥処理を行うことによって防草効果の持続期間が長くなり、また屋上緑化や菜園等の植物育成用途にあっては液肥に浸漬しその後乾燥処理を行うことによって植物の育成効果が高まる等、それぞれの用途にさらに適した構造体を得ることが出来るという利点があり、本来本発明にかかる構造体が有するエコロジー的な効果とも相俟って、産業上の利用可能性は大であると言える。
【符号の説明】
【0026】
1 処理液への浸漬工程
2 乾燥工程

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも間伐材等の木質を原料とする木材チップを含む林産物や穀類副産物などの植物性材料がネット状の袋に収納されてなる構造体の製造工程に於いて、少なくとも該植物性材料を破砕する工程と、該破砕済の植物性材料をネットに収納する工程と、該植物性材料をネットに収納した構造体を処理液に浸漬する工程と、該浸漬後の構造体を乾燥する工程とを有することを特徴とする、植物性材料を収納した構造体の処理方法。
【請求項2】
該破砕工程は、植物性材料を一次破砕する工程と、該破砕済材料を一次発酵する工程と、該一次発酵済材料を二次破砕する工程とを含むことを特徴とする、請求項1記載の植物性材料を収納した構造体の処理方法。
【請求項3】
該処理液は、有機肥料等の液肥として有効な成分を含む処理液であることを特徴とする、請求項1乃至2記載の植物性材料を収納した構造体の処理方法。
【請求項4】
該処理液は、木酢液やハーブ抽出液等の殺菌、殺虫、忌避等の効果を発揮する有効な成分を含む処理液であることを特徴とする、請求項1乃至3記載の植物性材料を収納した構造体の処理方法。
【請求項5】
該処理液は、海水等を含むの塩類の水溶液を含む処理液であることを特徴とする、請求項1乃至2記載の植物性材料を収納した構造体の処理方法。

【図1】
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【公開番号】特開2010−166836(P2010−166836A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−10929(P2009−10929)
【出願日】平成21年1月21日(2009.1.21)
【出願人】(301011604)有限会社ノースグリーン (12)
【Fターム(参考)】