説明

植物性食物繊維からなる食用糸・紐

【課題】新規な食用可能な糸・紐を提供する。
【解決手段】植物性食物の繊維からなる食用糸又は紐。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物性食物繊維からなる食用糸・紐に関する。
【背景技術】
【0002】
食材の加熱時の変形を抑制し出来上がり時の見た目を良くするために、食材(食肉類・野菜果実類等)の形を加熱前に整えたり、維持したりするために、木綿の凧紐等を、食材に巻くことが行われている。例えば、ハムや焼豚を作る際は肉塊を紐で巻いて加熱等加工する。これらの紐は食べるときは取り除かなくてはならないが、食品に食い込んでいるため、手が汚れたり、食品を傷つけたり又は食品の一部も取り除いてしまったりすることがよくある。さらに、紐の一部が残っていると誤って口にする恐れもあった。
【0003】
尚、特許文献1には、可食性紐として、ロールキャベツに使用できるコンニャクから製造した紐が記載されている。
特許文献2にはバナナの茎から繊維を取り出し衣料用繊維を製造することが記載され、特許文献3には大根から繊維を取り出しシート状食品を製造することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−23723号公報
【特許文献2】特開平9−313115号公報
【特許文献3】特開2004−52176号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、新規な食用可能な糸・紐を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、以下の食用糸又は紐等が提供される。
1.植物性食物の繊維からなる食用糸又は紐。
2.前記植物性食物が、野菜又は果物である1記載の食用糸又は紐。
3.前記植物性食物が、ごぼう又はアスパラガスである2記載の食用糸又は紐。
4.1〜3のいずれか記載の食用糸又は紐を巻いた肉加工食品。
5.1〜3のいずれか記載の食用糸又は紐を芯に用いたキャンドル。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、新規な食用可能な糸・紐が提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の食用糸又は紐は、植物性食物の繊維からなる。
使用する植物性食物は、野菜、果物、穀物、豆等であり、具体的には、あわ、大麦、きび、小麦粉、玄米、そば、とうもろこし、はとむぎ、ひえ、ライ麦、じゃがいも、やまのいも、そらまめ、だいず、明日葉、アスパラガス、いんげんまめ、おかひじき、かぶ、かぼちゃ、かんぴょう、からしな、きゅうり、ぎょうじゃにんにく、ごぼう、こまつな、ザーサイ、しょうが、ずいき、せり、セロリー、ぜんまい、大根、たけのこ、なずな、にら、ねぎ、のざわな、はくさい、はす、パセリ、ホウレン草、ピーマン、ふき、もやし、よもぎ、りんご、ミカン、グレープフルーツ、レモン、パイナップル、バナナ、マンゴ等であり、繊維(すじ等)を多く含むものが好ましい。また、本発明の糸・紐はヒトが摂取するものであるから、素材は毒性の無いものが好ましい。
これらの植物性食物の可溶性繊維と不溶性繊維を配合して、糸の強度や耐久性を調整することができる。
【0009】
本発明は、基本的には木綿や麻等の繊維から製造される糸・紐において、繊維として植物食物の繊維を利用することで、可食の糸・紐を製造する。
本発明の繊維は、原料となる植物の繊維部分と肉質の部分を分離させて製造する。例えば、植物を煮沸した後で濾す、水等に浸して肉質部分を腐らせ繊維だけを取り出す、又はミキサー、ジューサー、圧搾機で粉砕し濾したりする。その後、乾燥させて原料繊維とする。この繊維を紡績して糸とする。繊維を撚って糸としてもよい。さらに、糸を束ね、又は撚って紐とすることができる。尚、製造の際に灰と共に煮てあくを取り除いてもよい。
【0010】
製造の際、適宜必要に応じ、澱粉、糊、油、油脂、凝固剤等を用いることができる。また、各種食品添加剤を用いることができる。例えば、防腐剤、防カビ剤を用いて保存性を高めてもよい。漂白剤、着色料、香料を用いて、美感を高めてもよい。さらに、調味料を加えて、味を改良してもよいし、加工の補助(隠し味等)としてもよい。
本発明の糸・紐は、主に植物繊維からなり、80重量%以上、90重量%以上,95重量%以上、98重量%以上又は100重量%を植物繊維由来としてよい。
【0011】
本発明の糸・紐は、米類・野菜類・芋類等の食物に含まれる食物繊維から製造しているため、食しても身体に害はない。さらに、現代人に不足がちな食物繊維を補うこともできる。
【0012】
本発明の一実施形態の糸・紐は、加熱調理等の加工時に食材の形を整えるために、例えば、ローストビーフ、ローストチキン、ローストポーク、ハム、焼ブタに使用できる。使用後、取り除いてもよいが、取り除かずに食してもよい。
他の実施形態の糸・紐は、ロールキャベツ、油揚げ等の袋状食材の結び紐等、食材を結ぶためにも使用できる。
さらに他の実施形態の糸・紐は、適宜着色剤や香料を用いて、菓子やパン等の食物の装飾に用いることもできる。
また、他の実施形態では、ケーキに用いるキャンドルについて、本体部分を可食の材料(例えば食用油脂や油)で製造し、芯に本発明の糸を用いれば、火を灯し消した後、キャンドルは捨てること無くそのままケーキと共に食すことができる。この場合は、食物繊維をほぐして撚り(ねじり)をかけて糸状にし、毛細管現象を惹起できる形態とすることが好ましい。
【0013】
本発明の糸・紐は、上記に例示する用途に用いられるが、通常、衣服を製造するための糸や、物を繋ぎ止める等長期間用いる紐のような強度と耐久性は求められない。食材の加工や調理の際等の、一定の時間と温度内で変化が無いか変化が少ない、強度と耐久性を有すればよい。
【実施例】
【0014】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
実施例1
ごぼうを洗浄し、鍋に水を入れて煮た。柔らかくなったら鍋から取り出し濾し器で濾した。濾し器に残ったものをさらに鍋に水と共に入れて煮た。煮るのと濾すのを数回繰り返し、得られた粗繊維を乾かした後、撚って糸を得た。約8cmの糸が得られた。
【0015】
実施例2
乾かした粗繊維にオリーブ油を含ませて糸を撚った他は実施例1と同様にして糸を得た。糸を撚る際、粗繊維は切れ難かった。
【0016】
実施例3
ごぼうの代わりにアスパラガスを用いた他は、実施例1と同様にして糸を得た。約30cmの強度の高い糸が得られた。
【産業上の利用可能性】
【0017】
本発明の糸・紐は、可食な食材として食品業界で使用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物性食物の繊維からなる食用糸又は紐。
【請求項2】
前記植物性食物が、野菜又は果物である請求項1記載の食用糸又は紐。
【請求項3】
前記植物性食物が、ごぼう又はアスパラガスである請求項2記載の食用糸又は紐。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか記載の食用糸又は紐を巻いた肉加工食品。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれか記載の食用糸又は紐を芯に用いたキャンドル。

【公開番号】特開2013−13330(P2013−13330A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−146136(P2011−146136)
【出願日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(511160033)
【Fターム(参考)】