説明

植物成長促進剤

【課 題】経済的で、かつ、植物の著しい成長促進効果を示す植物成長促進剤の提供。
【解決手段】高圧水中において、酸素と水素の混合ガスを噴射し、これに点火して燃焼ガス中にチタン原料を供給して生成したチタン蒸気を高圧水と接触させて瞬間的に粉砕・凝固させることにより得られた金属チタン微粉末又は高圧水中でチタン原料の電極と対極の間でプラズマ水中放電して生ずるチタン金属イオン蒸気を水と接触させて粉末化させて得られた金属チタン微粉末を植物成長促進剤として用いる。
【選択図面】なし

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高純度で、粉末形状や粒度が均一な金属チタン微粉末を適用した植物成長促進剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、農業分野においては、農業の近代化、効率化、人手不足の解消、収益性のアップを理由に、栽培方法の改良が成され、従来の播種栽培から、苗圃における育苗、苗の移植の2段階栽培となっている。
【0003】
苗圃における育苗用の培地資材(以下、「育苗培地」という)としては、より発根、発芽性が良く、育苗用資材ごと圃場へ移植可能なものが求められ、ペーパーポット的なもの、プラグ苗的なもの、あるいは人工培土的な樹脂フォームによるものが開発されている。
【0004】
とりわけ、近年、温室栽培、家庭菜園、公園やゴルフ場の整備などの需要が増して、食用又は非食用作物、果樹、花弁、花木、樹木などの植物の生育を促進したり、あるいは抑制したり、また発芽を促進あるいは抑制したりするために農薬以外に各種有機、無機化合物が施用されているが、対象となる植物は多数に亘り、また、植物の生育調節効果も生育促進、生育抑制などの他に菜緑増進、緑色保持、鮮度保持などの緑肥効果、酸度矯正、糖度増、食味の向上、などの肥料的効果、草丈抑制効果など多種多様であるため、植物に対して適切な生育調節用資材が希求されている。
【0005】
中でも、植物成長促進効果は、生鮮食料品の流通経路の進歩に伴って益々要求されてきており、盛んに研究・開発されているのが実情である。とりわけ、金属チタン及びその酸化物を含む成長促進剤が注目され、二酸化チタン薄膜を形成した材料からなる植物活性剤が特開平11−9093号公報に開示され、土壌改良剤が特開平11−196672号公報に開示されている。
【0006】
また、二酸化チタンを有する脱臭性、抗殺菌性、遠赤外線放射性及び帯電防止性を有する植物育成用粒体が特開平3−103125号公報に、二酸化チタンを含有する植物栽培用不織構造体が特開平4−135429号公報で公知となっており、二酸化チタンを含有するポリエステルステープルからなる植物育成用繊維構造体が特開平2―227011号公報に開示されている。さらには、酸化チタンとサンゴ、トルマリン、銀ゼオライト、金属シリコンなどの無機化合物を含有した土壌改良剤も特開2002−332482号公報に開示され、石膏及び酸化鉄を主成分として酸化チタンを含有する植物生育調節用資材が特開2003−52247号公報に開示されている。
【0007】
一方、金属チタンのキレート化合物と好気性微生物、嫌気性微生物を含む堆肥混合肥料が特開2002−003291号公報で公知となっており、各種金属を含むセラミックスと金属チタンを含有した土壌改良剤が特開2000−51848号公報に、石英班岩の粉末と金属チタンを併用して植物の健康維持と成長促進のみならず、光合成を速めて大気浄化能力を向上させることが特開2002−142562号公報に開示されているが、いずれも植物成長促進作用が格段とすぐれたものとは言えなかった。
【0008】
【特許文献1】特開平11−009093号公報
【特許文献2】特開平11−196672号公報
【特許文献3】特開平03−103125号公報
【特許文献4】特開平04−135429号公報
【特許文献5】特開平02−227011号公報
【特許文献6】特開2002−332482号公報
【特許文献7】特開2003−052247号公報
【特許文献8】特開2002−003291号公報
【特許文献9】特開2000−051848号公報
【特許文献10】特開2002−142562号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記のように植物成長促進剤に対する期待は大きく、現状では、チタン系の成分については、チタン酸化物を含有する成長促進剤と金属チタンと他の無機、有機化合物との併用したものが多い。しかるに、これらチタン酸化物では、粉末状態であっても、粒径が大きく、チタンの金属としての安定性と相まって土壌中で容易にその効果を発揮しがたい問題があった。チタン酸化物を多量に含有する植物成長促進剤とするには、多量に用いられ、かつ、安価であることを求められる植物成長促進剤のコストを圧迫し、使用性に乏しくなるという問題もあった。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、鋭意検討した結果、金属チタンの粉末に植物成長促進作用に着目し、従来の金属チタン粉末よりはさらに微粉末化した金属チタン微粉末を用いることでかかる問題を解決できることを見出した。
すなわち、金属チタン含有量が小さく、植物成長促進効果を短期に発現する植物成長促進剤の取得である。かかる金属チタン微粉末としては、本出願人による再表2002/078884号公報に記載するように、高圧水中に酸素と水素の混合ガスを噴射し、これを点火して燃焼ガス中にチタン原料を供給して生成したチタン蒸気を高圧水と接触させて瞬間的に粉砕・凝固させることにより得られた微粉末、及び再表2003/037553号公報に記載されている、高圧水中でチタン原料の電極と対極の間でプラズマ水中放電して生ずるチタンイオン蒸気を水と接触させて得られた金属チタン微粉末を用いることが植物成長促進効果において極めて有効であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【発明の効果】
【0011】
本発明の、上記製造法で得られた金属チタン微粉末の植物成長促進剤の作用は著しいもので、これら金属チタン微粉末を単独で土壌に混入して用いてもよいし、他の無機、有機化合物と併用して土壌に混入して用いても差し支えない。
また、肥料成分を併用させることによって、さらなる植物成長促進作用を発揮することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
従来、金属粉末の製造には、金属素材を機械的に直接粉砕して粉末にする古典的方法や溶融金属をガスにて吹き飛ばして粉末にする方法などが利用され、比較的新しい方法として、電解製造法なども知られている。
しかし、このような製造方法によっても、金属の粉末形状や粒度の均一性において満足できるものではなく、また経済性などの問題は解決されていなかった。
金属のなかで、特に金属チタンは、古来からの鉄や銅又はアルミニウムなどに比して比較的に新しい金属であり、軽くて高温における優れた強度や耐食性などを活かして工業的に多用されている。
しかし、金属チタンは、難加工性や難切削性などの物性のため、金属チタンを利用する際には、粉末冶金法が多用されているが、従来の金属の粉末製造法によりチタン粉末を製造しても、他の金属の場合と同様に粉末形状や粒度の均一性又は経済性などで問題があり、現在では、純度が高く、粉末形状や粒度の均一性においてより優れたチタン粉末の製造方法の開発が待たれていた。
【0013】
本発明において用いた上述の再表2002/078884号公報記載の金属チタン微粉末の製造は、高圧水収容タンク上部空間に不活性ガスを充填し、該空間に酸素・水素混合ガス噴射ノズルと点火装置及び金属材料供給装置を具備した燃焼室を構成して、該燃焼室内で、点火装置により前記酸素・水素混合ガス噴射ノズルから噴射される酸素・水素混合ガスに点火して、金属材料供給装置より供給される金属材料を燃焼ガスにより溶解蒸発せしめ、生成した金属蒸気を高圧水と接触させてこれを瞬間的に凝固し、生成する超微粉末を水中に沈降させて回収することを特徴とする金属、特に金属チタン微粉末の製造方法である。
【0014】
上記金属チタン微粉末の製造法によれば、目的とする元素チタン粉末以外の副成物や不純物などの生成がほとんど無い。また、金属チタン原料の加熱による金属酸化物の発生もきわめて微量で、しかも得られた金属チタン粉末の球状形状の均一性や粉末粒度の一定性が優れており、製造コストも大幅な低下が可能である。また、バッチ生産と共に、連続生産も可能でチタン粉末の大量生産も実用化が可能である。
上記製造工程においては、高圧水収容タンクの上部空間内で酸素・水素混合ガスを燃焼させると、高温状態が得られ、その熱によりチタン金属原料が加熱されて熔融あるいは蒸発(酸素・水素混合ガス燃焼温度以下の蒸発温度を持つ金属は蒸発してガス化する。)し、燃焼雰囲気の周囲は不活性ガス雰囲気のため、生成したチタンの溶滴はほとんど金属の状態のままでミクロンスケールの非常に細かいチタンの微粒子が生成し、粉末状となって水中に分散される。生成した金属チタン微粉末は短時間のうちに沈降する。
【0015】
得られた金属チタン微粉末は、元素チタン粉末以外の副成物や不純物などの生成は全く無く、粉末の球状形状の均一性や粉末粒度の一定性が優れた粉末が得られた。また、製造コストも従来技術に比べて、約1/2程度の廉価であった。
【0016】
また、本発明に用いられる再表2003/037553号公報記載の金属チタン微粉末は、高圧水中において、元素金属の電極と対極の間でプラズマ水中放電して生ずる金属イオン蒸気を水と接触させて粉末化させることを特徴とするチタン粉末を製造する方法で得られる。
この方法は、一方の電極としてチタン電極を、対極としてカーボン電極を使用し、両電極を振動又は摺動させることにより電極同士の溶着を防ぎ、瞬間的にプラズマ放電させるため分散量の制御を行うことを特徴とするチタン粉末を製造する方法で、純度が高く、粉末の球状形状や粉末粒度の均一性が優れた元素金属粉末、特に金属チタン微粉末が得られ、しかも製造コストを大幅に低下することができる。
【0017】
本プラズマ水中放電による金属チタンの製造方法では、きわめて効率良く、元素チタンの微粉末を製造することができる。そして、目的とする金属チタン微粉末以外の副成物や不純物などの生成が全く無い。また、金属チタン原料の加熱による金属チタン酸化物の発生もほとんどなく、しかも得られた金属チタン粉末の球状形状は均一で、粉末粒度もきわめて微細で、製造コストも大幅な低下が可能である。また、バッチ生産と共に、連続生産も可能で、均一粒径の金属チタン微粉末の工業的生産の実用化が可能で、経済性を十分に満たすことができる。
【0018】
上記のように本出願人による再表2002/078884号公報又は再表2003/037553号公報記載の方法で得られた金属チタン微粉末は、いずれかの方法単独で得られたもの、あるいは各製造方法により得られたものを併用しても差し支えない。
【0019】
本発明の植物成長促進剤を用いる際には、上記金属チタン微粉末を単独で用いてもよいし、他の無機、有機化合物と併用しても差し支えない。
また、肥料成分を併用させることによって、さらなる植物成長促進作用を発揮することができる。
使用可能な肥料成分は、対象とする植物によって使い分けすればよく、例えば、窒素質肥料、リン酸質肥料、カリ質肥料、有機質肥料、複合肥料、石灰質肥料、ケイ酸質肥料、苦土肥料、マンガン質肥料、ホウ素質肥料、微量要素複合肥料等の普通肥料、その他の特殊肥料を挙げることができる。これらの肥料成分は、液状又は粉末等の固体状であり、水とともに土壌、砂、無機物、その他の植物の支持体に添加することによって含有させることができる。
その他の植物の支持体とは、肥料や鮮度保持剤その他の添加剤の支持体となり得る基体であり、例えば、鋸屑、パルプ、紙、腐食土壌、チップ、ダスト、バーク、稲わら、麦わら、バーミキュライト、ロックウール、石膏、多孔質セラミック等を挙げることができる。
【0020】
さらに、本発明の植物成長促進剤を用いる際には、さらに鮮度保持剤、活力剤、防腐剤、殺菌剤、殺虫剤、殺菌殺虫剤、土壌改質剤、植物ホルモン剤等の1種以上を併用することもできる。
【0021】
本発明の植物成長促進剤を適応できる土壌としては、単なる砂地でも効果を発揮するが、一般的に土壌として使用される赤玉土、黒土、ビートモス、培養土、腐葉土、石灰、鹿沼土、山苔、日向土、水苔、ケト土等がある。砂や無機物としては、川砂、山砂、矢作砂、桐生砂、富士砂、朝明砂、多孔性鉱物として砕石、バーミキュライト、パーライト、ゼオライト、オスマンダ、鉱さい、軽石、苦土石灰、ドリームボール、くん灰、火山灰等が挙げられるが、この限りではない。
【0022】
〈実施例〉
以下、本発明の植物成長促進剤を実施例により具体的に説明するが、本発明は実施例のみに限定されるものではない。
なお、植物成長促進剤の試験は、下記のとおり行った。
【実施例1】
【0023】
○試験条件
1.植物成長促進効果を観るために用いた植物は、セダムであり、本植物は、丈10cm程度のメキシコ産の多年草であり、屋上緑化に多用されている多肉植物である。このセダムの成長度を各種環境下で比較した。ちなみに、セダムは、今後の都市の緑化植物として最も注目を浴びているものの一つである。
2.セダムの生育環境として土壌量1800gをトレー内で本発明の金属チタン微粉末(メタルT,メタルS)試験量を混ぜ、温度25℃に保持した。また、蛍光灯を照射して24時間明期とした。
【0024】
金属チタン微粉末の濃度(重量%)の異なる土壌の入っているトレーにセダムを移植し、移植後40日の栽培期間を経て、セダム地上部の乾燥重量をセダムの成長度として図1に示した。ただし、金属チタン微粉末を混合しない土壌(対照区)におけるセダム地上部の乾燥重量を1.0としてセダムの成長度を換算表示して図1に示した。
【0025】
図1におけるメタルTは、再表2002/078884号公報記載の金属チタン微粉末を示し、メタルSは再表2003/037553号公報記載の金属チタン微粉末を示す。この結果から、メタルTを各種濃度(重量%)で混合した土壌では、明らかに対照区と比較してセダムの成長が著しく促進され、メタルTの土壌への混合濃度(重量%)が増大するにしたがって、やや成長が促進される傾向が認められるものの大差は認められなかった。
以上から、メタルSを各種濃度(重量%)で混合した土壌においては、メタルTと同様にセダムの成長は対照区の土壌におけるセダムの成長と比較して促進されており、特にメタルS濃度が25重量%である土壌においてセダムの成長促進効果が著しかった。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】セダムの成長促進効果

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属チタン微粉末からなる植物成長促進剤。
【請求項2】
金属チタン微粉末が、高圧水中に酸素と水素の混合ガスを噴射し、これを点火して燃焼ガス中にチタン原料を供給して生成したチタン蒸気を高圧水と接触させてこれを瞬間的に粉砕・凝固させることにより得られた微粉末であることを特徴とする請求項1記載の植物成長促進剤。
【請求項3】
金属チタン微粉末が、高圧水中でチタン原料の電極と対極の間でプラズマ水中放電して生ずる金属イオン蒸気を水と接触させて得られたものであることを特徴とする請求項1記載の植物成長促進剤。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2007−191421(P2007−191421A)
【公開日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−10796(P2006−10796)
【出願日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【出願人】(593022906)ファイルド株式会社 (10)
【Fターム(参考)】