説明

植物成長調節剤、肥料組成物およびその製造方法

【課題】環境に優しく、毒性が少なく、鉢苗やセル成型苗に対する矮化を確実に達成できる植物成長調節剤および該植物成長調節剤を含む肥料組成物を提供すること。
【解決手段】桂皮酸とアルカリ金属化合物との混合物または桂皮酸のアルカリ土類金属塩若しくはアルカリ土類金属塩を植物成長調節剤として用いる。桂皮酸とアルカリ金属化合物との混合物または桂皮酸のアルカリ土類金属塩若しくはアルカリ土類金属塩は水に高濃度で容易に溶解し、安定である。桂皮酸塩は桂皮酸カリウムまたは桂皮酸ナトリウムが好ましい。また、植物成長調節剤の対象となる植物はポインセチアであることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物の矮化(矮小化)に有効な植物成長調節剤および該植物成長調節剤を含有する肥料組成物並びにそれらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から作物(以下「植物」ともいう)の矮化は各方面で注目され、研究されてきた。例えば、鉢に植えられた作物、すなわち植物は、鉢と植物とのバランスが大切であり、一般的には生育状態のしまった、草丈の短い植物からなる鉢物が高品質とされている。従って、鉢物の高品質生産のためには植物の適切な矮化技術が必須である。また、農業分野の野菜栽培においては多数の鉢(セル)を用いて植物の苗を育成して使用する技術(セル成型苗)の利用が急増している。しかし、セル成型苗は高密度に苗を生産するために苗が徒長しやすく、この徒長防止策としての有効な苗の矮化技術が求められている。このように今日では園芸・農業両分野において植物の矮化技術が必要不可欠なものとなっている。
【0003】
植物の矮化技術には、植物矮化剤の使用、植物に与える肥料成分の減少、植物に対する潅水の制限、植物に対する送風や接触刺激、植物に塩分ストレスを与える技術などがあるが、これらの技術の内では、手間やコスト、そして効果の再現性、さらには実施の際の簡便性を考慮すると、前記の矮化剤の使用が有利である。
【0004】
現在、植物の矮化によく使用される薬剤には、ダミノジット剤、クロルメコート液剤、パクロブトラゾール粒剤、ウニコナゾール剤などがあるがこれらの薬剤は、いずれも合成化合物を主成分とする化学農薬であり、これらの中には変異原性が報告されているものもある。また、過剰使用の際に薬害が心配されるものも少なくない。これらの内、多くの化学農薬は使用濃度に依存する薬効成分であるため、薬害の回避方法や使用時期の選定などに知識と経験が必要とされ、その使用には細心の注意が必要となるばかりでなく、実際に薬害や環境汚染の発生が現実的なものとなる危惧も生じている。
【0005】
しかしながら、薬害や環境汚染の発生の恐れのない矮化剤の提案は少なく、環境に優しく、人体に安全で、しかも低コストかつ簡便で作業性の良好な矮化剤の開発が強く望まれていた。
【0006】
このような状況に鑑み、本発明者らの一部は、安全で環境汚染の少ない素材として天然に存在する桂皮酸に着目し、桂皮酸水溶液または水系分散体が農・園芸作物の矮化に有効であることを明らかにし、桂皮酸を含有する植物成長調節剤を提案している(特許文献1:特開2004−298176号公報)。また、この特許文献1の桂皮酸を含有する植物成長調節剤を含んでなる植物成長調節用栽培用土(特許文献2:特開2006−333804号公報)および桂皮酸をタブレット状、ペレット状等に成型した植物成長調節剤(特許文献3:特開2006−335700号公報)も提案している。
【0007】
特許文献1にあっては、桂皮酸は、分散剤の助けにより水系媒体に分散され、あるいはアルカリ性を呈する弱酸と強塩基の塩からなる溶解助剤により水に溶解され、分散液または水溶液とされて、施用時に水で適宜希釈して使用するとの態様が開示されている。しかし、分散剤または溶解助剤の助けにより調製された高濃度原液は、場合より保存安定性に欠けることが懸念され、改善の余地を残すものであった。
【0008】
また、高濃度原液を使用する場合、植物成長調節作用を発揮する化合物本体の数倍〜数10倍量(10%原液の場合、9倍量)の水も実質的に同時に保存若しくは輸送することになり、保存効率、輸送効率の面で不利であった。さらに、粉末や顆粒形態のものに比べると、原液は嵩高く、重量があり、作業性の面でも更なる改善が望まれていた。
【0009】
また、施用現場での手早い施用液の調製が望まれるが、上記特許文献1に開示された、リグニンスルホン酸塩などの分散剤や水酸化カリウムなどのアルカリ性溶解助剤を用いて桂皮酸の施用液を調製する手法は、施用現場での作業性の面からそれぞれ課題を有していた。すなわち、分散剤を使用した桂皮酸分散液を調製するためにはサンドミルなどの分散装置が必要であり、施用現場に分散装置を設置することは、非効率であり実際問題として実現性が低かった。また、アルカリ性溶解助剤を用いて桂皮酸水溶液を調製する際には、劇物で潮解性があり、取り扱い性に難がある水酸化カリウムなどの物質を施用現場で取り扱わなくてはならず、溶液の調製には配慮が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2004−298176号公報
【特許文献2】特開2006−333804号公報
【特許文献3】特開2006−335700号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従って、本発明は、溶解性に優れた桂皮酸を主成分とする植物成長調節剤の提供をその目的としている。より具体的には、本発明は良好な保存安定性を有するとともに、作業性にも配慮された、環境に優しく、毒性の少ない、優れた矮化効果を発揮する植物成長調節剤および該植物成長調節剤を含む肥料組成物を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者は、今般、桂皮酸とアルカリ金属化合物との混合物または桂皮酸のアルカリ金属塩若しくはアルカリ土類金属塩を用いることにより、容易に高濃度の水溶液を調製することができ、かつ保存安定性に優れる植物成長調節剤が得られるとの知見を得た。本発明はかかる知見に基づくものである。
【0013】
従って、本発明による植物成長調節剤は、桂皮酸とアルカリ金属化合物との混合物または桂皮酸のアルカリ金属塩若しくはアルカリ土類金属塩を含んでなることを特徴とするものである。
【0014】
また、本発明による肥料組成物は、植物成長調節剤と、肥料成分とを含んでなることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0015】
桂皮酸とアルカリ金属化合物との混合物または桂皮酸のアルカリ金属塩は常温の水に容易に溶解する。従って、本発明によれば、分散剤や溶解助剤を必要とせず、高濃度の水溶液を容易に調製可能な植物成長調節剤が提供される。また、桂皮酸自体は、天然物である桂皮酸の塩を有効成分とし、安全性が高く、植物体には悪影響を及ぼさず、植物の成長を調節できる点で有利である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】白色粉末(A)の蛍光X線分析チャートを示す図である。
【図2】桂皮酸と白色粉末(A)の赤外線吸収スペクトルを示す図である。
【図3】白色粉末(A)のイオンクロマトグラムを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明による植物成長調節剤は、桂皮酸とアルカリ金属化合物との混合物または桂皮酸のアルカリ金属塩若しくはアルカリ土類塩を有効成分として含んでなる。
【0018】
桂皮酸の飽和水溶液濃度は25℃で0.05%程度であるが、桂皮酸とアルカリ金属化合物との混合物、または桂皮酸のアルカリ金属塩若しくはアルカリ土類塩は容易に水に溶解し、その溶液は安定である。例えば、アルカリ金属塩、特に桂皮酸カリウムからは、容易に高濃度の水溶液(例えば、20%)を調製することができる。その結果、桂皮酸の水溶液の調製にあたり、溶解助剤や分散剤を必要としない。よって、本発明による植物成長調節剤は、液剤とされた場合、高濃度であっても安定であり、高濃度で提供される植物成長調節剤は、生産効率、運送効率、そして作業効率にも優れる。また、粉末や顆粒とされた場合、施用現場において容易に、施用目的に応じた濃度の水溶液とすることができ、また粉末や顆粒は、液剤にくらべ軽量であるため、運送効率、作業性に優れるとの利点が得られる。
【0019】
本発明に用いられる桂皮酸は、C6−C3化合物(フェニルプロパン誘導体)であり、リグニン、リグナン、カテキン、フラボノイド、アントシアニン、スチルベン、カルコンなどの、植物成分の生合成過程における前駆物質である。よって、植物とは相性は良い物と考えられる。また、桂皮酸はリグニン分解産物と同様の構造を持ち、環境中に廃棄されても微生物分解を受け、腐植物質の素材にもなり得ることから、環境負荷が小さいことに加え、食品添加物でもあるので安全性が高い。また、桂皮酸塩はLD50値が大きく、例えば、桂皮酸ナトリウムの場合、マウスの腹腔内投与で2g/kgであり、変異原性も報告されていないので極めて安全性が高い。上述の特許文献1に記載のとおり、桂皮酸は植物に対する矮化効果を有する。さらに、桂皮酸塩は微生物抑制効果、特にかび(真菌類)に対する抑制効果を有している(特願2010−054907号出願および特開平5−117125号公報)ことから、生産植物の微生物汚染を防ぐことができるとの効果も期待できる。本発明における桂皮酸塩を使用すれば、植物体には損傷を与えず、微生物汚染を防ぎながら、矮化を達成することができる。
【0020】
本発明による植物成長調節剤の有効成分である桂皮酸塩は、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属塩またはベリリウム、マグネシウム、カルシウム等のアルカリ土類金属塩から選ばれるものである。特に、桂皮酸カリウムまたは桂皮酸ナトリウムの利用が好ましい。
【0021】
また、本発明による植物成長調節剤の有効成分は桂皮酸とアルカリ金属化合物との混合物であってもよく、アルカリ金属化合物の例としては、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素ナトリウム、硝酸カリウム、トリポリリン酸ナトリウム、トリポリリン酸カリウム、ポリリン酸ナトリウム、ポリリン酸カリウム、リン酸三ナトリウム、リン酸三カリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸水素二ナトリウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウムを挙げることができる。これらのアルカリ金属化合物の中でも好適に用いることができるものとして、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素カリウムおよび炭酸水素ナトリウムからなる群から選択される少なくとも1種を挙げることができる。
【0022】
本発明による植物成長調節剤の施用対象植物は特に限定されず、多くの植物に対して矮化効果が期待できるが、好適な施用対象植物としては、園芸作物では、例えば、ポインセチア、ゼラニウム、ハイドランジア、キク、ユリ、アサガオ、ペチュニアなどが挙げられ、ポインセチアおよびゼラニウムの苗に対して特に好適に用いられる。また、農作物では、広く野菜類が施用対象植物として挙げられるが、例えば、ハクサイ、キャベツ、にんじん、ネギ、玉ネギ、チンゲンサイ、大根、レタス、さやえんどう、カリフラワー、ブロッコリー、ごぼう、二十日大根、蕪、トマト、きゅうり、ナス、かぼちゃ、スイカ、プリンスメロン、まくわうり、メロンなどに対し特に好適に用いられる。
【0023】
一般に、矮化剤は葉や茎から矮化成分が吸収される葉面散布剤と、根から矮化成分が吸収されて矮化効果を発現する土壌潅注剤とに分けられる。葉面散布剤は、矮化剤を200倍前後の水で希釈し、得られた水溶液(0.5質量%)を、霧吹きで葉面に散布する。新芽が伸び始めたころに処理するのが効果的であるが、植物によっては効果が発現されないものもある。また、葉面や茎の表面に薬剤が残留するので、当該植物に接触することにより人体に薬剤が移行することがあり、薬剤の毒性が高い場合は安全性が問題となる。一方、土壌潅注剤は土壌もしくは栽培土に薬剤を直接施すもので、比較的矮化効果を発現しやすく、葉面散布剤で効果が発現されない場合は土壌潅注剤が用いられる。また、土壌潅注剤は植物表面には薬剤の付着が無いので、植物表面から人体への薬剤の移行は考慮する必要がない。
【0024】
本発明による植物成長調節剤は、植物中に自然に存在する物質である桂皮酸を主成分としており、極めて安全性が高く、葉面散布剤、土壌潅注剤のいずれとしてもよい。特に、土壌潅注剤として用いた場合により矮化効果が期待できる。
【0025】
一般に矮化剤をその作用性の観点から分類すると、抗オーキシン性と抗ジベレリン性に分けられるが、本発明の植物成長調節剤における矮化効果の発現は抗オーキシン性によると思われる。すなわち、本発明の植物成長調節剤の主成分である桂皮酸塩が細胞の分裂と伸長に関与する植物ホルモンであるオーキシンの作用を撹乱し、細胞分裂の抑制、呼吸作用の異常増進などが生じ、節間伸長が抑制されて矮化効果が発現されると推定される。本発明の植物成長調節剤は、上記の矮化効果を発現することにより、草姿を改善した高品位化鉢物の生産を可能とし、セル成型野菜苗の徒長を防止できる。
【0026】
従来、農林業や園芸分野などで用いられる植物用矮化剤には、変異原性、腫瘍原性またはがん原性などの遺伝毒性が報告されているものや、残留性が高く、内分泌かく乱性の疑いがあるものもある。しかし、本発明による植物成長調節剤は、植物中に自然に存在する物質であり、食品添加物にも指定されている桂皮酸の塩を有効成分としており、化学合成物質を主成分とした矮化剤に散見される変異原性や内分泌かく乱性の疑いも認められていない。また、残留性も低いので極めて安全に使用できる。本発明の植物成長調節剤は、植物体には深刻な毒性は及ぼさず、矮化のみを達成でき、鉢花における商品価値の向上やセル成型苗の高品質生産にも利用できる。
【0027】
また、本発明の植物成長調節剤は、種々の濃度の桂皮酸塩の水溶液を調製でき、その水溶液を散布することにより植物体の矮化できる。具体的には植物体に直接散布するか、植物体周辺に散布して使用する。例えばその水溶液を、対象植物の根、茎、葉などの部位に散布し、またはその水溶液に対象植物の根、茎、葉などの部位を浸し、または当該植物の周辺の土壌に水溶液を散布することにより、植物成長調節剤として用いることができる。
【0028】
本発明の植物成長調節剤は、粉体または顆粒状の固体状物として提供されてもよい。その場合、施用現場まで運搬し、使用現場にて目的に適した濃度(桂皮酸カリウムの場合、例えば、0.3%)の水溶液を調製し、直ちに施用するのが好ましい。また、本発明による植物成長調節剤は、桂皮酸の高濃度液(原液)として調製され、使用時に目的に応じて適宜希釈して使用してもよい。さらに必要により展着剤や他の成長調節剤、抗菌・殺菌剤やその他の添加剤などと混合して用いることもできる。また、上記の桂皮酸塩をシクロデキストリンなどとの包接化合物として使用することや、ゼオライト、シリカなどの担体に担持させて粉体またはその懸濁液としても使用できる。
【0029】
また、本発明による植物成長調節剤は、水溶液から乳化液、分散液、懸濁液を調製して使用されてもよい。あるいは、粉体または顆粒状の固体として散布し、次いで適量の水を散布して用いてもよい。
【0030】
本発明による植物成長調節剤を水溶液として使用する場合、その濃度は適宜決定されてよいが、一般的には、桂皮酸塩として0.001〜0.5%程度の水溶液にして使用する。また、流通の利便性向上のため濃縮液とする場合、例えば桂皮酸塩として0.1〜30%程度に調製することができる。
【0031】
本発明による植物成長調節剤の使用量は特に制限されないが、桂皮酸カリウムを使用する場合、例えば栽培用用土(肥料、添加剤も含めて)100質量部当たり桂皮酸カリウムとして0.00001〜0.3質量部となる量を用いる。本発明の一つの態様によれば、桂皮酸カリウムを使用する場合、施用区域の単位面積(m2)あたり桂皮酸カリウムとして0.05〜30.0gとなる量を2〜4回/月散布するのが好ましい。他の塩を用いた場合も、桂皮酸カリウムに準じた量(桂皮酸残基部分として0.05〜25.0g)を上記と同様に散布する。
【0032】
また、本発明の別の態様によれば、本発明による植物成長調節剤を、種々の農・園芸用資材、農薬などの化学物質と混合することにより、それらに植物成長調節作用を付与することができる。すなわち、本発明によれば、植物成長調節作用を有する農・園芸用資材および農薬が提供される。農・園芸用資材の例としては、界面活性剤、着色剤、香料、植物栄養剤、各種添加物を挙げることができる。また、農薬の例としては、他の植物成長調節剤、抗菌剤、殺菌剤、除草剤、殺虫剤、展着剤、忌避剤などを挙げることができる。本発明の植物成長調節剤は環境に優しいという特徴を備えているため、環境への影響が軽微な天然物系薬剤との混合が好ましい。
【0033】
また、本発明の植物成長調節剤を種々の肥料と混合することにより、これらの肥料に植物成長調節作用を付与することができる。すなわち、本発明によれば、植物成長調節作用を有する肥料が提供される。特に水溶性が高い肥料成分と混合して該肥料組成物を水溶液として施用することで、速効性の植物成長調節剤として用いることができる。植物管理の適切な時期、例えば水やりの際などに、上記のような速効性の植物成長調節剤を用いることにより、効率的かつ簡便で安全に植物成長の抑制(矮化)を達成することができる。
【0034】
本発明の植物成長調節剤と混合可能な肥料としては、窒素、リン酸、カリウム、カルシウム、マグネシウム、マンガン、ホウ素などの肥料成分を含有するものが挙げられる。より具体的には、窒素質肥料、リン酸質肥料、カリ質肥料、石灰質肥料、ケイ酸質肥料、苦土質肥料、マンガン質肥料、ホウ素質肥料、複合肥料(例えば、熔成複合肥料、化成肥料、成型複合肥料、吸着複合肥料、被覆複合肥料、副産複合肥料、液状複合肥料、配合肥料、家庭園芸用複合肥料)、微量要素複合肥料、農薬その他のものが混入された肥料、有機質肥料、汚泥肥料などの普通肥料を挙げることができる。
【0035】
さらに、上記窒素質肥料の具体例としては、硫酸アンモニウム(硫安)、塩化アンモニウム(塩安)、硫酸苦土アンモニア、腐植酸アンモニア、硝酸アンモニウム(硝安)、硝酸アンモニア石灰(硝安石灰)、硝酸石灰、硝酸ソーダ、尿素、被覆尿素、石灰窒素、IB(イソブチリデン2尿素、イソブチルアルデヒド加工尿素肥料)、CDU(クロトニリデン2尿素、アセトアルデヒド加工尿素肥料)、ウレアホルム(ウラホルム、ホルム窒素、ホルムアルデヒド加工尿素肥料)、GU(グアニル尿素)、オキサミドなどの無機質肥料の他、油かす類や魚肥類などの有機質肥料を挙げることができる。
【0036】
また、リン酸質肥料の具体例としては、過リン酸石灰、重過リン酸石灰、苦土過リン酸石灰、熔成リン肥(熔リン)、BM熔リン、焼成リン肥、熔過リン、重焼リン、苦土重焼リン、腐植酸混合リン肥、副産リン肥などの無機質肥料の他、骨粉類、米ぬかなどの有機質肥料を挙げることができる。
【0037】
また、カリ質肥料の具体例としては、塩化カリウム、硫酸カリウム、硫酸カリ苦土、重炭酸カリウム、ケイ酸カリウム、腐植酸カリウムなどが用いられ、石灰質肥料としては、生石灰、消石灰、炭酸カルシウム、副産石灰、混合石灰肥料、貝化石肥料などを挙げることができる。
【0038】
また、本発明の植物成長調節剤と組み合わせることができる肥料組成物に好適な水溶性の肥料成分の例としては、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、硝酸アンモニウム、硝酸ソーダ、硝酸カルシウム、尿素、リン酸、リン酸一アンモニウム、リン酸二アンモニウム、過リン酸石灰、塩化カリウム、硫酸カリウム、リン酸一カリウム、リン酸二カリウム、硝酸カリウムなどを挙げることができる。
【0039】
本発明の植物成長調節剤である桂皮酸塩としてアルカリ金属またはアルカリ土類塩を製造する場合、アルカリ金属またはアルカリ土類金属を含むアルカリ性の溶液を用意し、水溶液のアルカリ性を保ちながら桂皮酸を徐々に溶解することにより、桂皮酸の水溶液を調製する。その後、この溶液から晶析により、高純度の桂皮酸塩を得ることができる。
【0040】
本発明の植物成長調節剤として最も好適に使用される桂皮酸塩の一つである桂皮酸カリウムは、現在日本では市販されていない。桂皮酸カリウムの好ましい調製方法を示せば、以下のとおりである。まず、約90℃の熱水に、30質量%となる量の桂皮酸と13質量%となる量の水酸化カリウム(純度85%、試薬特級)をそれぞれ1/3量ずつ3回程度に分けて徐々に溶解させ、桂皮酸濃度約30%の水溶液を調製する。このときのpHは7.8前後となる。次に、この水溶液を4℃まで冷却し、この温度で24時間放置すると白色沈澱を生ずるのでこれを濾別し、濾別した白色沈澱を105℃で6時間程乾燥した後、粉砕し、桂皮酸カリウムの白色粉末を得ることができる。または、上記桂皮酸溶液をバット上に薄く広げ105℃で6時間程度加熱し、水分を蒸発乾枯させた後、得られた白色固体を粉砕し、桂皮酸カリウムの白色粉末を得ることができる。上記の桂皮酸水溶液調製の際に使用する塩または塩基の使用量は特に限定されないが、桂皮酸に対して30〜300質量%となる量が好ましい。
【0041】
本発明による植物成長調節剤に好ましく用いられる桂皮酸ナトリウムは市販のものを入手することができる。また、桂皮酸ナトリウムは、以下の方法により容易に調製することができる。まず、約90℃の熱水に、10質量%となる量の桂皮酸と2.6質量%となる量の水酸化ナトリウム(純度97%、試薬特級)をそれぞれ1/3量ずつ3回程度に分けて徐々に溶解させ、桂皮酸濃度約10%の水溶液を調製する。このときのpHは7.7前後となる。次に、この水溶液を4℃まで冷却し、この温度で24時間放置すると白色沈澱を生ずるのでこれを濾別し、濾別した白色沈澱を105℃で6時間程乾燥した後、粉砕し、桂皮酸ナトリウムの白色粉末を得ることができる。または、上記桂皮酸溶液をバット上に薄く広げ105℃で6時間程度加熱し、水分を蒸発乾枯させた後、得られた白色固体を粉砕し、桂皮酸ナトリウムの白色粉末を得ることができる。上記の桂皮酸水溶液調製の際に使用する塩または塩基の使用量は特に限定されないが、桂皮酸に対して20〜200質量%となる量が好ましい。
【0042】
桂皮酸のアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩を調製する際に使用する塩基または塩は、塩基またはその水溶液がアルカリ性を呈する弱酸と強塩基の塩であれば特に限定されないが、pH緩衝作用を示し、環境汚染の恐れが少なく、人体に安全であるものを用いることが好ましい。塩基としては、水酸化カリウム、水酸化ナトリウムなどが、弱酸と強塩基との塩としては、例えば、炭酸水素カリウム、炭酸水素ナトリウム、トリポリリン酸ナトリウム、トリポリリン酸カリウム、ポリリン酸ナトリウム、ポリリン酸カリウム、リン酸三ナトリウム、リン酸三カリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸水素二ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウムなどが好ましいものとして挙げられる。特に好ましい塩基または塩としては、食品にも用いられる水酸化カリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素ナトリウム、トリポリリン酸ナトリウム、炭酸カリウムおよび酢酸ナトリウムなどが挙げられる。
【実施例】
【0043】
次に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。なお、文中の「部」または「%」とあるのは質量基準である。
【0044】
<桂皮酸カリウム粉末の調製>
(1)白色粉末(A)の調製
90℃の蒸留水650mLに水酸化カリウム(純度85%、試薬特級)130gを溶解し、この水酸化カリウム溶液に桂皮酸302gを徐々に加えて撹拌して溶解した。さらに、この溶液を蒸留水で1000mLにメスアップして、濃度30%の桂皮酸水溶液(pH7.8)を作製した。次にこの溶液を25℃まで冷却した後、4℃で12時間放置し、白色物質を析出させた。この白色物質を取り出し、風乾の後、105℃で6時間乾燥し、白色粉末370gを得た。以下、この白色粉末を白色粉末(A)と呼ぶ。
【0045】
(2)桂皮酸カリウムの確認
a)カリウムの確認
白色粉末(A)を蛍光X線分析したところ、図1に示すチャートを得た。このチャートを見ると、140 2θ(°)付近(Kα:図1ではKAで表示)にカリウムのピークが確認され、白色粉末(A)中にはカリウム成分が存在することが明らかになった。
【0046】
b)カルボン酸塩形成の確認
白色粉末(A)を赤外分光法にて分析したところ、図2の下側に示す赤外線吸収スペクトルを得た。このスペクトルを桂皮酸の赤外線吸収スペクトル(図2の上側)と比較すると、白色粉末(A)のスペクトルでは、桂皮酸のスペクトルで見られる1700cm-1付近のフリーなカルボン酸のピークが消滅し、新たに1550cm-1付近にカルボン酸塩のピークが確認された。このことから、白色粉末(A)中にはカルボン酸の塩が存在していることが明らかになった。
【0047】
c)カリウム成分の定量
白色粉末(A)1gを正確に量り200mLのメスフラスコに入れ、精製水50mL、0.2M−硝酸5mLを加え、さらに精製水で200mLとした後振り混ぜた。さらに精製水で20倍希釈して、イオンクロマトグラフィーで分析したところ、図3に示すクロマトグラムが得られた。このクロマトグラムのカリウムのピーク面積からカリウムの量を計算したところ、0.21gであった。この結果より、白色粉末(A)中のカリウム成分は21.0%であることが明らかになった。
【0048】
d)桂皮酸成分の定量
クロロホルム処理した白色粉末(A)0.05gを正確に量り50mLのメスフラスコに入れ、0.5M−塩酸1mL、精製水20mLを加えて振り混ぜ、エタノールを加えて50mLとした。さらにエタノールで50倍希釈し、吸光光度法(270nm)を用いて、標準桂皮酸溶液(対照)との比較により該白色粉末(A)中の桂皮酸成分を定量した。その結果、桂皮酸成分は全白色粉末中の76.7%であることが明らかになった。
【0049】
e)白色粉末(A)の内容確認
以上のa)〜d)の分析試験の結果から、白色粉末(A)は桂皮酸カリウムであり、その純分は約98%であることが確認された。
【0050】
<桂皮酸カリウム水溶液のポインセチア苗に対する矮化試験>
[実施例1]
上記白色粉末(A)を用いて、桂皮酸カリウム濃度が0.3%である水溶液を調製した。次に、草丈約6cmのポインセチア苗(ミレニアム種)を5号鉢(直径14.5cm、深さ14.5cm)に定植し、栽培を続け、栽培19日目と栽培48日目に、1鉢当り100mLの上記0.3%桂皮酸カリウム水溶液を30鉢の栽培用土に添加した。栽培63日目に、各栽培鉢の用土面からポインセチア苗の頭頂部までの長さを測定し、下記式で矮化率(%)を算出し、0.3%桂皮酸カリウム水溶液の矮化効果を調べた。
矮化率(%)=〔(比較例1の草丈−実施例1の草丈)/比較例1の草丈〕×100
【0051】
結果は後記する表1に示されるとおりであった。矮化率算出の結果、0.3%桂皮酸カリウム水溶液を添加したポインセチア苗の矮化率は22.7%を示し、0.3%桂皮酸カリウム水溶液の矮化効果を確認できた。
【0052】
[実施例2]
ポインセチア苗栽培鉢に添加する桂皮酸カリウム水溶液の桂皮酸カリウム濃度を0.5%としたこと以外は実施例1と同様にして矮化率の算出を行った。結果は後記する表1に示されるとおりであった。0.5%桂皮酸カリウム水溶液を添加したポインセチア苗の矮化率は31.6%に達し、0.3%桂皮酸カリウム水溶液を添加した場合(実施例1)よりも顕著な矮化効果を確認できた。
【0053】
[比較例1]
ポインセチア苗栽培鉢に桂皮酸カリウムを添加しなかったこと以外は実施例1と同様にして矮化率の算出を行った。結果は、下記の表1に示されるとおりであった。
【0054】
以上の結果から、本発明の桂皮酸カリウム水溶液が、ポインセチア苗の成長を効果的に抑制でき、同苗の矮化に有効であることが明らかになった。
【0055】

【0056】
<桂皮酸カリウム配合液体肥料組成物(3成分系)のポインセチア苗に対する矮化試験>
[実施例3]
20℃にて蒸留水400mLに硝酸カリウム0.32gおよびリン酸水素ニアンモニウム0.08gを溶解し、液体肥料基液を調製した。この液体肥料基液400mLに上記の白色粉末(A)0.04gを溶解し、濃度0.01%の桂皮酸カリウム配合液体肥料組成物(3成分系)を作製した。
【0057】
次に、草丈約6cmのポインセチア苗(ミレニアム種)を5号鉢(直径14.5cm、深さ14.5cm)に定植し、栽培を続け、毎週2回、1鉢当り100mLの上記0.01%桂皮酸カリウム配合液体肥料組成物(3成分系)を30鉢の栽培用土に添加した。栽培63日目に、各栽培鉢苗の用土面からポインセチア苗の頭頂部までの長さを測定し、下記式で矮化率(%)を算出し、桂皮酸カリウム配合液体肥料組成物(3成分系)の矮化効果を調べた。
矮化率(%)=〔(比較例2の草丈−実施例3の草丈)/比較例2の草丈〕×100
【0058】
結果は、後記する表2に示されるとおりであった。矮化率算出の結果、0.01%桂皮酸カリウム配合液体肥料組成物(3成分系)を添加したポインセチア苗の矮化率は9.8%を示し、0.01%桂皮酸カリウム配合液体肥料組成物(3成分系)の矮化効果を確認できた。
【0059】
[実施例4]
桂皮酸カリウム濃度を0.05%としたこと以外は実施例3と同様にして矮化試験を行い、矮化率を算出した。結果は、後記する表2に示されるとおりであった。0.05%桂皮酸カリウム配合液体肥料組成物(3成分系)を添加したポインセチア苗の矮化率は13.5%を示し、0.01%桂皮酸カリウム配合液体肥料組成物(3成分系)を添加したポインセチア苗の場合(実施例3)よりも顕著な矮化効果を確認できた。
【0060】
[実施例5]
桂皮酸カリウム濃度を0.1%としたこと以外は実施例3と同様にして矮化試験を行い、矮化率を算出した。結果は、後記する表2に示されるとおりであった。0.1%桂皮酸カリウム配合液体肥料組成物(3成分系)を添加したポインセチア苗の矮化率は21.2%に達し、0.05%桂皮酸カリウム配合液体肥料組成物(3成分系)を添加したポインセチア苗の場合(実施例4)よりもさらに顕著な矮化効果を確認できた。
【0061】
[実施例6]
桂皮酸カリウム濃度を0.2%としたこと以外は実施例3と同様にして矮化試験を行い、矮化率を算出した。結果は、後記する表2に示されるとおりであった。0.2%桂皮酸カリウム配合液体肥料組成物(3成分系)を添加したポインセチア苗の矮化率は37.5%に達し、0.1%桂皮酸カリウム配合液体肥料組成物(3成分系)を添加したポインセチア苗の場合(実施例5)よりもさらに顕著な矮化効果を確認できた。
【0062】
[比較例2]
ポインセチア苗栽培鉢に桂皮酸カリウムを添加しなかったこと以外は実施例3と同様にして矮化試験を行い、矮化率を算出した。結果は、下記の表2に示されるとおりであった。
【0063】
以上の結果から、本発明の桂皮酸カリウム配合液体肥料組成物(3成分系)が、ポインセチア苗の成長を効果的に抑制でき、同苗の矮化に有効であることが明らかになった。
【0064】

【0065】
<桂皮酸カリウム配合液体肥料組成物(4成分系)のポインセチア苗に対する矮化試験>
[実施例7]
20℃にて蒸留水400mLに硝酸カリウム0.19、硝酸アンモニウム0.1gおよびリン酸水素ニカリウム0.06gを溶解し、液体肥料基液を調製した。この液体肥料基液400mLに上記の白色粉末(A)0.04gを溶解し、濃度0.01%の桂皮酸カリウム配合液体肥料組成物(4成分系)を作製した。
【0066】
次に、草丈約4cmのポインセチア苗(プレミアムレッド種)を5号鉢(直径14.5cm、深さ14.5cm)に定植し、栽培を続け、3〜4日に1回、1鉢当り100mLの上記0.01%桂皮酸カリウム配合液体肥料組成物(4成分系)を30鉢の栽培用土に添加した。栽培76日目に、各栽培鉢苗の用土面からポインセチア苗の頭頂部までの長さを測定し、下記式で矮化率(%)を算出し、桂皮酸カリウム配合液体肥料組成物(4成分系)の矮化効果を調べた。
矮化率(%)=〔(比較例3の草丈−実施例7の草丈)/比較例3の草丈〕×100
【0067】
結果は、後記する表3に示されるとおりであった。矮化率算出の結果、0.01%桂皮酸カリウム配合液体肥料組成物(4成分系)を添加したポインセチア苗の矮化率は15.9%を示し、0.01%桂皮酸カリウム配合液体肥料組成物(4成分系)の矮化効果を確認できた。
【0068】
[実施例8]
桂皮酸カリウム濃度を0.05%としたこと以外は実施例7と同様にして矮化試験を行い、矮化率を算出した。結果は、後記する表3に示されるとおりであった。0.05%桂皮酸カリウム配合液体肥料組成物(4成分系)を添加したポインセチア苗の矮化率は18.8%を示し、0.01%桂皮酸カリウム配合液体肥料組成物(4成分系)を添加したポインセチア苗の場合(実施例7)よりも顕著な矮化効果を確認できた。
【0069】
[実施例9]
桂皮酸カリウム濃度を0.1%としたこと以外は実施例7と同様にして矮化試験を行い、矮化率を算出した。結果は、後記する表3に示されるとおりであった。0.1%桂皮酸カリウム配合液体肥料組成物(4成分系)を添加したポインセチア苗の矮化率は23.8%に達し、0.05%桂皮酸カリウム配合液体肥料組成物(4成分系)を添加したポインセチア苗の場合(実施例8)よりもさらに顕著な矮化効果を確認できた。
【0070】
[比較例3]
ポインセチア苗栽培鉢に桂皮酸カリウムを添加しなかったこと以外は実施例7と同様にして矮化試験を行い、矮化率を算出した。結果は、下記の表3に示されるとおりであった。
【0071】
以上の結果から、本発明の桂皮酸カリウム配合液体肥料組成物(4成分系)が、ポインセチア苗の成長を効果的に抑制でき、同苗の矮化に有効であることが明らかになった。
【0072】

【0073】
<桂皮酸ナトリウム粉末の調製>
90℃の蒸留水650mLに水酸化ナトリウムと桂皮酸を徐々に加えて溶解し、濃度10%の桂皮酸水溶液を調製した。次にこの溶液を25℃まで冷却した後、4℃で12時間放置し、白色物質を析出させた。この白色物質を取り出し、風乾の後、105℃で6時間乾燥し、白色粉末を得た。この白色粉末を以下、白色粉末(B)と呼ぶ。白色粉末(A)と同様に蛍光X線分析、赤外分光スペクトル測定、イオンクロマトグラム測定および桂皮酸成分を定量し、白色粉末(B)は桂皮酸ナトリウムであることを確認した。
【0074】
<桂皮酸ナトリウム水溶液のポインセチア苗に対する矮化試験>
[実施例10]
上記白色粉末(B)を用いて、桂皮酸ナトリウム濃度が0.3%である水溶液を調製した。次に、草丈約6cmのポインセチア苗(ミレニアム種)を5号鉢(直径14.5cm、深さ14.5cm)に定植し、栽培を続け、栽培19日目と栽培48日目に、1鉢当り100mLの上記0.3%桂皮酸ナトリウム水溶液を30鉢の栽培用土に添加した。栽培63日目に、各栽培鉢の用土面からポインセチア苗の頭頂部までの長さを測定し、下記式で矮化率(%)を算出し、0.3%桂皮酸ナトリウム水溶液の矮化効果を調べた。
矮化率(%)=〔(実施例10の草丈−比較例4の草丈)/比較例4の草丈〕×100
【0075】
結果は後記する表4に示されるとおりであった。矮化率算出の結果、0.3%桂皮酸ナトリウム水溶液を添加したポインセチア苗の矮化率は27.3%を示し、0.3%桂皮酸ナトリウム水溶液の矮化効果を確認できた。
【0076】
[実施例11]
ポインセチア苗栽培鉢に添加する桂皮酸ナトリウム水溶液の桂皮酸ナトリウム濃度を0.5%としたこと以外は実施例10と同様にして矮化試験を行い、矮化率を算出した。結果は、後記する表4に示されるとおりであった。0.5%桂皮酸ナトリウム水溶液を添加したポインセチア苗の矮化率は33.0%に達し、0.3%桂皮酸ナトリウム水溶液を添加した場合(実施例10)よりも顕著な矮化効果を確認できた。
【0077】
[比較例4]
ポインセチア苗栽培鉢に桂皮酸ナトリウムを添加しなかったこと以外は実施例10と同様にして矮化試験を行い、矮化率を算出した。結果は、下記の表4に示されるとおりであった。
【0078】
以上の結果から、本発明の桂皮酸ナトリウム水溶液が、ポインセチア苗の成長を効果的に抑制でき、同苗の矮化に有効であることが明らかになった。
【0079】

【0080】
[参考実験例1]
<植物成長調節剤の水に対する溶解性試験>
水温20℃の水100gに、下記の表5に記載の濃度となる桂皮酸カリウム粉末(白色粉末(A))を加え、スターラーを用いて攪拌しつつ、水溶液が透明になるまでの時間を計測した。同様の実験を、桂皮酸ナトリウム粉末(白色粉末(B))および桂皮酸についても行った。結果は表5に示されるとおりであった。
【0081】
表5の結果から、本発明の植物成長調節剤である桂皮酸カリウム粉末は20℃の水に35%程度まで、桂皮酸ナトリウム粉末は5%程度までは確実に溶解することがわかった。特に、桂皮酸カリウム粉末は25%程度までは、短い時間で容易に溶解した。このことから、桂皮酸カリウム粉末が、施用現場での施用液の調製などの際に高い実用性を具備していることが明らかになった。一方、桂皮酸粉末は水溶性が低く、水溶液の調製が困難であった。
【0082】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
桂皮酸とアルカリ金属化合物との混合物または桂皮酸のアルカリ金属塩若しくはアルカリ土類金属塩を含んでなることを特徴とする、植物成長調節剤。
【請求項2】
前記桂皮酸のアルカリ金属塩として、少なくとも桂皮酸カリウムまたは桂皮酸ナトリウムを含んでなる、請求項1に記載の植物成長調節剤。
【請求項3】
前記アルカリ金属化合物が、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素カリウム、および炭酸水素ナトリウムからなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項1に記載の植物成長調節剤。
【請求項4】
ポインセチアに用いられる、請求項1に記載の植物成長調節剤。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の植物成長調節剤と、肥料成分とを含んでなることを特徴とする、肥料組成物。
【請求項6】
桂皮酸とアルカリ金属化合物との混合物または桂皮酸のアルカリ金属塩若しくはアルカリ土類金属塩を水に溶解して水溶液とし、または固体状物とすることを少なくとも含んでなる、請求項1〜4のいずれか一項に記載の植物成長調節剤の製造方法。
【請求項7】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の植物成長調節剤と、肥料成分とを組み合わせることを少なくとも含んでなる、請求項5に記載の肥料組成物の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−92029(P2012−92029A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−239216(P2010−239216)
【出願日】平成22年10月26日(2010.10.26)
【出願人】(000002820)大日精化工業株式会社 (387)
【Fターム(参考)】