説明

植物成長調節

本発明は、植物成長調節物質とアシベンゾラル−S−メチルとの混合物を植物に適用することにより作物の植物成長調節を改善する、および/または作物を改良する方法、および当該混合物を含んでなる組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物成長調節物質とアシベンゾラル−S−メチルとの混合物を作物に適用することにより作物の植物成長調節改善する方法、および当該混合物を含んでなる組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
植物成長調節物質を使用して、作物の成長と発達を調節することが多い。例えば植物成長調節物質を使用して、(アブラナなどの)作物が所望のタイミングで開花するように発達を遅らせ、(穀類などの)作物が倒伏しにくくなるように高さを低くし、窒素効率を増大させ、作物の着花および結実(果樹など)を調節し、芝草の成長速度を遅くして芝刈りの頻度を低下させる。
【0003】
いくつかの異なる種類の植物成長調節物質がある。公知の種類としては、アゾール(ウニコナゾール、およびパクロブトラゾールなど)、シクロヘキサンカルボン酸塩(トリネキサパックエチル、およびプロヘキサジオンカルシウムなど)、ピリミジニルカルビノール(フルルプリミドール、およびアンシミドールなど)、四級アンモニウム(クロルメコートクロリド、およびメピコートクロリドなど)、およびスルホニル−アミノフェニル−アセトアミド(メフルイジドなど)が含まれる。
【0004】
植物成長調節物質は、様々な作用様式によって機能する。例えば、正に帯電したアンモニウム、ホスホニウムまたはスルホニウム基を有する、クロルメコートクロリドやメピコートクロリドなどのオニウムタイプの植物成長遅延剤は、ジベレリン合成を生合成経路の初期にブロックすることで機能する。フルルプリミドール、パクロブトラゾール、およびウニコナゾール−Pなどの窒素含有複素環を含んでなる成長遅延剤は、ジベレリン生合成中の酸化段階を触媒するモノオキシゲナーゼの阻害剤として機能する。アシルシクロヘキサンジオントリネキサパックエチルやプロヘキサジオン−カルシウムなどの2−オキソグルタル酸の構造的模倣物は、ジベレリン生合成の後期段階を妨げる。メフルイジドなどのその他の植物成長調節物質は、細胞の分裂および分化を阻害する。
【0005】
トリネキサパックエチルなどの植物成長調節物質は、通常、茎の肥厚と短縮、そして発根の改善を通じて、倒伏のリスクを低下させるために、作物に対して使用される。
【0006】
場合によっては、活性成分は、個別に適用した場合と比較して、その他の活性成分と混合した場合に、より効果的であることが示されており、組み合わせは、構成要素の個々の効力の知識に基づいて予期されるレベルを超える効力または活性レベルを実証することから、これは「相乗作用」と称される。
【0007】
国際特許出願公開番号国際公開第2008/020872号パンフレットは、主として種子処理を通じた、植物のストレス耐性、種子発芽操作、または植物病害防除のための、植物成長活性化剤と植物活性化剤との混合物に関する。国際公開第2008/020872号パンフレットでは、このような混合物が、相乗的植物成長調節効果を有し得ることについては言及されていない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、植物成長調節物質をアシベンゾラル−S−メチルと組み合わせて適用すると、植物成長調節効果の改善を示すという発見にある。
【0009】
本発明はまた、より低濃度の何れか1つの植物成長調節物質を使用して、既存の植物成長調節製品を使用して達成されるのと同程度に良い、またはそれよりも良い植物成長調節効果を作物に提供するのにも有用である。これにより、植物毒性を引き起こさずに、組成物を作物の成長初期段階に適用することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明に従って、作物、作物部位、作物増殖材料、または作物成長地点に、植物成長調節物質およびアシベンゾラル−S−メチルを相乗的有効量で適用するステップを含んでなる、作物の成長を調節する方法が提供される。
【0011】
「成長を調節する」という用語は、根の成長を制限すること、根の成長を促進すること、成長を阻害することなどを含む。
【0012】
「植物」という用語は、種子、果実生、苗木、根、根茎、葉柄、茎、葉、および実をはじめとする、植物の全ての物理的部分を指す。
【0013】
「植物増殖材料」という用語は、植物の増殖のために使用し得る種子などの植物の繁殖部分、および挿し木または例えばジャガイモなどの根茎などの植物材料を意味する。特に、それは、(厳密な意味での)種子、根、実、根茎、球根、根茎、および植物の部分を含む。発芽後にまたは土壌からの出芽後に移植される発芽植物および幼若植物についても言及されるが、これらの幼若植物は、浸漬による全体または部分的処理により、移植前に保護されてもよい。適切には「植物増殖材料」は、種子を意味すると理解される。
【0014】
「植物成長地点」という用語は、植物の植物増殖材料が蒔かれるか、有用な植物の植物増殖材料が土壌中に置かれる、植物が成長する地点を包含することが意図される。このような地点の例は、作物が成長する田畑である。
【0015】
本発明はまた、作物、作物部位、作物増殖材料、または作物成長地点に、植物成長調節物質およびアシベンゾラル−S−メチルを相乗的有効量で適用するステップを含んでなる、作物を改良する方法も提供する。
【0016】
本発明に従うと、「作物を改良する」とは、植物の質および/または植物の精力および/またはストレス因子耐性を改善することを意味し、そのいずれもが収穫高の増大をもたらし得る。一実施形態では、本発明は、作物、作物部位、作物増殖材料、または作物成長地点に、植物成長調節物質およびアシベンゾラル−S−メチルを適用するステップを含んでなる、植物収穫高を改善する方法に関する。このような収穫高の改善は、根の成長の改善の結果であってもよい。さらなる実施形態では、本発明は、作物、作物部位、作物増殖材料、または作物成長地点に、植物成長調節物質およびアシベンゾラル−S−メチルを適用するステップを含んでなる、植物の精力および/または植物の質および/または植物のストレス因子耐性を改善する方法に関する。
【0017】
本発明に従うと、植物の精力の改善とは、本発明の方法の不在下、同一条件下で栽培された対照植物中の同一形質と比較して、特定の形質が定性的にまたは定量的に改善されていることを意味する。このような形質としては、早期のおよび/または改善された発芽、出芽の改善、必要種子の少量化、根の成長増大、より発達した根系、芽の成長増大、分蘖増大、より強力な分蘖、より生産的な分蘖、植物立性の増大または改善、植物転倒(plant verse)(倒伏)の減少、植物高の増大および/または改善、(新鮮または乾燥)植物重量の増大、より大きな葉身、緑色がより濃い葉色、色素含有量の増大、光合成活性の増大、より早い開花、均質な開花、より長い穂、穀実の早期成熟、種子または実または莢サイズの増加、莢または穂数の増大、莢または穂あたりの種子数増大、種子体積の増大、種子登熟の改善、根出葉枯死の減少、老化の遅延、植物活力の改善および/または必要インプットの少量化(例えば肥料、水および/または必要労力の少量化)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。精力が改善された植物は、前述の形質の何れかが、または前述の2つ以上の形質のあらゆる組み合わせが増大していてもよい。適切には、本発明の方法は、植物高、植物重量を増大させ、および/または、発芽の改善を提供する。
【0018】
本発明に従うと、植物の質の改善とは、本発明の方法の不在下、同一条件下で栽培された対照植物中の同一形質と比較して、特定の形質が定性的にまたは定量的に改善されることを意味する。このような形質としては、植物外観の改善(例えば色、密度、均一性、密集性の改善)、エチレンの減少(生成の減少および/または感受性の抑制)、例えば種子、果実、葉、植物体などの収穫物の質の改善(このような質の改善は、収穫物の視覚的外観の改善、炭水化物含有量の改善(例えば糖および/またはデンプン量の増大、糖酸比率の改善、還元糖類の減少、糖生成速度の増大)、タンパク質含有量の改善、油の含有量および組成の改善、栄養価の改善、抗栄養化合物の減少、官能特性の改善(例えば味覚の改善)および/または消費者の健康上の利点の改善(例えばビタミンおよび抗酸化剤レベルの増大)として発現されてもよい)、収穫後特性の改善(例えば貯蔵寿命および/または貯蔵安定性の改善、より容易な加工性、より容易な化合物抽出)および/または(例えば次の栽培期に使用するための)種子の質の改善が挙げられるが、これらに限定されるものではない。質が改善された植物は、前述の形質の何れかが、または前述の2つ以上の形質のあらゆる組み合わせが増大していてもよい。
【0019】
本発明に従うと、ストレス因子耐性の改善は、本発明の方法の不在下、同一条件下で栽培された対照植物中の同一形質と比較して、特定の形質が定性的にまたは定量的に改善されていることを意味する。このような形質としては、旱魃などの最適以下成長条件を引き起こす非生物的ストレス因子(例えば植物水分の欠如、水取り込み能力の欠如または植物への水供給の減少を引き起こすあらゆるストレス)に対する耐性および/または抵抗性の増大、寒冷曝露、高温暴露、浸透圧ストレス、UVストレス、洪水、(例えば土壌中の)塩分増大、ミネラル曝露の増大、オゾン曝露、高照度曝露および/または栄養素(例えば窒素および/またはリン栄養素)の限定的可用性が挙げられるが、これらに限定されるものではない。ストレス因子耐性が改善された植物は、前述の形質の何れかが、または前述の2つ以上の形質のあらゆる組み合わせが増大していてもよい。旱魃および栄養素ストレスの場合、このような耐性の改善は、例えば水および栄養素のより効率的な取り込み、使用または保持に起因してもよい。適切には、本発明の方法は、植物の旱魃耐性を増大させる。
【0020】
上記の作物改良の何れかまたは全ては、例えば植物の生理機能、植物の成長および発達および/または植物の構造を改善することで、収穫高の改善をもたらすこともある。本発明の文脈で「収穫高」としては、(i)(a)植物それ自体によって産生される量の増大、または(b)植物材料を収する能力の改善に起因してもよい、バイオマス生産、穀実収穫高(例えば穀実寸法、穀実数、穀実密度)、デンプン含有量、油含有量および/またはタンパク質含有量の増大、(ii)収穫物組成の改善(例えば糖酸比率の改善、油組成の改善、栄養価の増大、抗栄養化合物の減少、消費者の健康上の利点の増大)および/または(iii)作物の収穫能力の増大/促進、作物加工性の改善および/またはより良い貯蔵安定性/貯蔵寿命が挙げられるが、これらに限定されるものではない。農芸作物収穫高の増大は、定量的測定が可能である場合、それぞれの植物の生産物の収穫高が、同一条件下であるが、本発明を適用しないで栽培された植物の同一生産物の収穫高よりも、測定可能量で増大することを意味する。本発明に従うと、少なくとも0.5%、より望ましくは少なくとも1%、なおもより望ましくは少なくとも2%、さらにより望ましくは少なくとも4%、好ましくは5%またはそれ以上にも収穫高が上昇することが望ましい。
【0021】
上の作物改良の何れかまたは全ては、土地利用の改善をもたらしてもよく、すなわちこれまで耕作のために利用できなかったまたは最適以下であった土地が、利用できるようになってもよい。例えば旱魃状態を乗り切る能力の増大を示す植物が、例えば恐らくは砂漠の周辺または砂漠それ自体のこともある、降雨量が最適以下の地帯で栽培可能となり得る。
【0022】
「相乗的有効量」という用語は、植物成長に対する効果を改変できる化合物の量を示し、前記効果は、各化合物を個別に適用して得られる効果の和を超える。
【0023】
アシベンゾラル−S−メチルは、植物が生物的および非生物的ストレスとより良く戦えるように、植物中の全身獲得抵抗性(SAR)応答を刺激する植物活性化剤である。
【0024】
本発明に従って、あらゆる植物成長調節物質を使用してもよい。全ての市販される植物成長調節物質の完全な一覧は、Pesticide Manual(第14版、英国作物保護協議会(the British Crop Protection Council)による出版)から得られてもよい。一実施形態では、植物成長調節物質は、トリネキサパックエチル、プロヘキサジオン−カルシウム、パクロブトラゾール、ウニコナゾール、フルルプリミドール、メフルイジド、メピコートクロリド、クロルメコートクロリド、およびその混合物からなる群から選択される。
【0025】
適切には、植物成長調節物質は、ジベレリン生合成阻害剤である。適切には、植物成長調節物質は、クラスAジベレリン生合成阻害剤である。適切には、植物成長調節物質は、クラスBジベレリン生合成阻害剤である。好ましい実施形態では、植物成長調節物質は、トリネキサパックエチル、プロヘキサジオン−カルシウムまたはクロルメコートクロリドである。一実施形態では、植物成長調節物質は、トリネキサパックエチルである。一実施形態では、植物成長調節物質は、プロヘキサジオン−カルシウムである。一実施形態では、植物成長調節物質は、クロルメコートクロリドである。一実施形態では、植物成長調節物質は、パクロブトラゾールである。一実施形態では、植物成長調節物質は、フルルプリミドールである。
【0026】
所望ならば、トリネキサパックエチルとパクロブトラゾールの混合物などのように、2種類以上の植物成長調節物質を本発明に従って組み合わせて使用することが可能である。
【0027】
本発明では、成長調節効果が相乗的である、植物成長調節物質とアシベンゾラル−S−メチルの混合比は、重量で約1:1000乃至約1000:1の範囲内にある。適切には、植物成長調節物質とアシベンゾラル−S−メチルの混合比は、重量で約1:100乃至約100:1である。より適切には、植物成長調節物質とアシベンゾラル−S−メチルの混合比は、重量で約10:1乃至約1:1である。例えば植物成長調節物質がトリネキサパックエチルである場合、重量で約5:1乃至約2:1のトリネキサパックエチル対アシベンゾラル−S−メチルの混合比が望ましい。
【0028】
本発明の化合物の適用率は、広い制限内で変動してもよく、土壌の性質、適用方法、防除する標的害虫、支配的な気候条件、そして適用方法および適用時期に支配されるその他の要因に左右される。本発明の化合物は、ほとんどの場合0.001乃至4kg/ha、特に0.005乃至1kg/ha、特に0.01乃至0.5kg/haの比率で適用される。適切には、植物成長調節物質は、約50乃至約100g ai/haの比率で適用され、およびアシベンゾラル−S−メチルは約5乃至約25g ai/haの比率で適用される。植物成長調節物質がトリネキサパックエチルである場合、特に望ましい比率は100g ai/haである。
【0029】
本発明の方法は、特に、穀類(小麦、アワ、ソルガム、ライ麦、ライ小麦、オート麦、大麦、テフ、スペルト小麦、ソバ、フォニオ、およびキノア)、イネ、トウモロコシ(トウキビ),および/またはサトウキビなどの単子葉植物;または(甜菜または飼料用ビートなどの)ビーツなどの双子葉作物;(例えばリンゴ、セイヨウナシ、セイヨウスモモ、桃、アーモンド、チェリー、イチゴ、キイチゴまたはブラックベリーなどのナシ状果、核果またはソフトフルーツなどの)果実;(マメ、レンズマメ、エンドウマメまたはダイズなどの)マメ科植物;(ナタネ、カラシ、ケシ、オリブ、ヒマワリ、ココナッツ、ヒマ、カカオ豆またはラッカセイなどの)油料植物;(ナタウリ、キュウリまたはメロンなどの)キュウリ植物;(綿、亜麻、麻またはジュートなどの)繊維植物;(オレンジ、レモン、グレープフルーツまたはミカンなどの)柑橘類;(ホウレンソウ、レタス、キャベツ、ニンジン、トマト、ジャガイモ、ウリ科植物またはパプリカなどの)野菜;(アボカド、シナモンまたはショウノウなどの)クスノキ科;タバコ;堅果;コーヒー;茶;つる植物;ホップ;ドリアン;バナナ;インドゴムノキ;および(花、低木、広葉樹、または例えば針葉樹などの常緑樹などの)観賞植物などのあらゆる作物に適用してもよい。この一覧は、いかなる制限も意味しない。
【0030】
適切には、作物は単子葉植物である。より適切には、作物は穀類、特に小麦または大麦である。一実施形態では、穀類は小麦である。さらなる実施形態では、穀類は大麦である。さらなる実施形態では、作物はイネである。さらなる実施形態では、作物はサトウキビ植物である。さらなる実施形態では、作物はトウキビである。
【0031】
適切には、作物は双子葉植物である。一実施形態では、作物はアブラナである。
【0032】
作物は、従来の品種改良法または遺伝子操作の結果として、ブロモキシニル、または(HPPD阻害剤、ALS阻害剤(例えばプリミスルフロン、プロスルフロンおよびトリフロキシスルフロン)、EPSPS(5−エノール−ピロビル−シキマート−3−ホスファート−シンターゼ)阻害剤、GS(グルタミンシンセターゼ)阻害剤、またはPPO(プロトポルフィリノーゲン−オキシダーゼ)阻害剤などの)除草剤クラスのような除草剤に耐性にされたものを含む。従来の品種改良(変異誘発)法によって、例えばイマザモックスなどのイミダゾリノン耐性にされた作物の一例は、Clearfield(登録商標)夏ナタネ(カノーラ)である。遺伝子操作法により除草剤または除草剤クラスに耐性にされた作物の例としては、RoundupReady(登録商標)、Herculex IOおよびLibertyLink(登録商標)の商品名で市販される、グリホサートおよびグルホシネート抵抗性トウモロコシ変種が含まれる。作物としてはまた、知られているように、例えば毒素産生細菌、特にバチルス属(Bacillus)からの選択的に作用する1つ以上の毒素を合成できるように、組換えDNA技術の使用によって形質転換された植物も含まれる。作物としてはまた、知られているように、例えばいわゆる「病原性関連タンパク質」などの選択的作用を有する、抗病原性物質を合成できるように、組換えDNA技術の使用によって形質転換された植物も含まれる。このような抗病原性物質を合成できるこのような抗病原性物質および遺伝子導入植物の例は、例えば欧州特許出願公開第A−0392225号明細書、国際公開第95/33818号パンフレット、および欧州特許出願公開第A−0353191号明細書から知られている。このような遺伝子導入植物を生成する方法は、当業者に一般に知られており、例えば上述の公報に記載されている。
【0033】
本発明の植物成長調節物質およびアシベンゾラル−S−メチルは、同時または逐次のどちらかで任意の順に適用してもよい。逐次投与する場合、構成要素は、例えば第1の構成要素投与時間と最後の構成要素投与時間の間が、1ヶ月以内、1週間以内、または24時間以内の適切な時間内で、任意の順に投与してもよい。適切には、構成要素は1時間など、2、3時間以内に投与される。植物成長調節物質とアシベンゾラル−S−メチル構成要素を同時に投与する場合、それらは別個にまたはタンクミックスまたは予備調合混合物として投与してもよい。一実施形態では、本発明の混合物または組成物は、種蒔き前に種子処理剤として作物に適用してもよい。
【0034】
本発明の方法が、作物に対する共配合組成物の適用に言及する場合、組成物は植物成長調節剤とアシベンゾラル−S−メチルの双方を含んでなる。化合物は、当業者に知られているように、所望の調合物タイプを製造するのに必要なその他の調合物構成要素と共に均質に混合されてもよい。
【0035】
本発明の一実施形態では、植物成長調節物質およびアシベンゾラル−S−メチルは、農業的に許容可能なキャリアを含んでなる組成物の形態で適用される。
【0036】
本発明の化合物は、未改質形態で使用されてもよいが、ほとんどの場合、キャリア、溶剤、および界面活性物質などの配合アジュバントを使用して、組成物に調合される。調合物は、例えば散布剤、ゲル、湿潤性粉末、水分散顆粒、水分散性錠剤、発泡性圧縮錠剤、乳化性濃縮物、微小乳化性濃縮物、水中油エマルション、油流動性材料、水性分散体、油分散体、サスポエマルション、カプセル懸濁液、乳化性顆粒、可溶性液体、水溶性濃縮物(キャリアとして水または水混和性有機溶媒使用)、または含浸ポリマーフィルムなどの様々な物理的形状であり得る。このような調合物は、そのままでまたは使用前に希釈して使用し得る。希釈調合物は、例えば水、液体肥料、微量栄養素、生物有機体、油または溶剤を用いて調製し得る。これらの調合物は、重量で最低約0.5%から最大約95%以上の活性成分を含有してもよい。あらゆる所定の化合物の最適量は、調合物、適用機器、および調節される植物の性質に左右される。
【0037】
湿潤性粉末は、水またはその他の液体キャリア中に容易に分散する超微粒子の形態である。粒子は、固体マトリックス内に保持される活性成分を含有する。典型的な固体マトリックスとしては、フラー土、カオリン粘土、シリカ、およびその他の容易に濡らすことができる有機または無機固体が含まれる。湿潤性粉末は、常態では約5%乃至約95%の活性成分に加えて、少量の湿潤剤、分散剤または乳化剤を含有する。
【0038】
乳化性濃縮物は、水またはその他の液体中に分散した均質な液体組成物であり、液体または固体乳化剤を含む活性化合物から完全に構成されてもよく、またはキシレン、重質芳香族ナフサ、イソホロン、およびその他の非揮発性有機溶媒などの液体キャリアもまた含有してもよい。使用時には、これらの濃縮物を水またはその他の液体に分散し、常態では処理する区域にスプレーとして適用する。活性成分量は、濃縮物の約0.5%乃至約95%の範囲に及んでもよい。
【0039】
顆粒調合物としては、押出物と比較的粗い粒子との双方が挙げられ、通常、植生抑止が所望される区域に希釈せずに適用される。顆粒調合物の典型的なキャリアとしては、肥料、砂、フラー土、アタパルガイト粘土、ベントナイト粘土、モンモリロナイト粘土、蛭石、パーライト、炭酸カルシウム、煉瓦、軽石、葉蝋石、カオリン、ドロマイト、プラスター、木粉、粉砕トウモロコシ穂軸、粉砕落花生殻、糖類、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、ホウ酸ナトリウム、マグネシア、雲母、酸化鉄、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化アンチモン、クリオライト、石膏、珪藻土、硫酸カルシウム、そして活性化合物を吸収しまたはそれによって被覆され得る、その他の有機または無機材料が含まれる。特に適切なのは、肥料顆粒キャリアである。顆粒調合物は、常態では約5%乃至約25%の活性成分を含有し、それは重質芳香族ナフサ、灯油、およびその他の石油留分、または植物油などの界面活性剤;および/またはデキストリン、接着剤または合成樹脂などの固着剤を含んでいてもよい。顆粒支持材料は、上述の典型的なキャリアの1つであり得ておよび/または例えば尿素/ホルムアルデヒド肥料、アンモニウム、液体窒素、尿素、塩化カリウム、アンモニウム化合物、リン化合物、イオウ、類似した植物栄養素および微量栄養素、およびそれらの混合物または組み合わせなどの肥料材料であり得る。植物成長調節物質およびアシベンゾラル−S−メチルは、顆粒全体を通じて均質に分布していてもよく、または顆粒形成後にスプレー含浸され、または顆粒支持材上に吸収されてもよい。
【0040】
カプセル化粒剤は、一般に多孔性顆粒であり、多孔性メンブランが顆粒孔開口部を密封して、活性化学種を顆粒孔内に液体形態で保持する。顆粒は、直径が、典型的には1ミリメートル乃至1センチメートルの範囲に及び、好ましくは1乃至2ミリメートルである。顆粒は押出、凝集または粒子化によって形成され、または天然である。このような材料の例は、蛭石、焼結粘土、カオリン、アタパルガイト粘土、おがくず、および粒状炭素である。シェルまたはメンブラン材料としては、天然および合成ゴム、セルロース系材料、スチレン−ブタジエン共重合体、ポリアクリロニトリル、ポリアクリレート、ポリエステル、ポリアミド、ポリ尿素、ポリウレタン、およびデンプンザンセートが含まれる。
【0041】
ダストは、活性成分と、滑石、粘土、小麦粉、および分散剤およびキャリアとして機能するその他の有機および無機固体などの超微粒子固形物との易流動性混和材料である。
【0042】
マイクロカプセルは、典型的には、封入材料を制御された速度で周囲に逸出させる、不活性多孔性シェル内に封入された活性物質の小滴または顆粒である。カプセル化小滴は、直径が典型的には約1乃至50μmである。封入液体は、典型的には、カプセル重量の約50乃至95%を構成し、活性化合物に加えて溶剤を含んでもよい。
【0043】
植物成長調節用途のためのその他の有用な調合物としては、活性成分がその中に所望濃度で完全に可溶性である、アセトン、アルキル化ナフタレン、キシレン、およびその他の有機溶剤などの溶剤中の単純な溶液が含まれる。低沸点分散剤溶媒キャリアの気化の結果として、その中に活性成分が微粉化形態で分散する加圧噴霧器もまた、使用してもよい。
【0044】
上述の調合物の多くは、湿潤剤、分散または乳化剤を含む。実例は、スルホン酸アルキルおよびスルホン酸アルキルアリール、および硫酸アルキルおよび硫酸アルキルアリール、それらの塩、多価アルコール;ポリエトキシ化アルコール、エステルおよび脂肪アミンである。これらの薬剤は、使用される場合、常態では調合物の0.1重量%乃至15重量%を構成する。
【0045】
共に調合されおよび/または個別に添加されて、上述の調合物タイプ中で本発明の組成物を調合するのに有用である、適切な農業アジュバントおよびキャリアが、当業者に良く知られている。異なるクラスの適切な例は、下の非限定的一覧にある。
【0046】
用い得る液体キャリアとしては、水、トルエン、キシレン、石油ナフサ、クロップオイル、AMS;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、無水酢酸、アセトニトリル、アセトフェノン、酢酸アミル、2−ブタノン、クロロベンゼン、シクロヘキサン、シクロヘキサノール、酢酸アルキル、ジアセトンアルコール、1,2−ジクロロプロパン、ジエタノールアミン、p−ジエチルベンゼン、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールアビエテート、ジエチレングリコールブチルエーテル、ジエチレングリコールエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエーテル、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、1,4−ジオキサン、ジプロピレングリコール、ジプロピレングリコールメチルエーテル、ジプロピレングリコールジベンゾエート、ジプロキシトール、アルキルピロリジノン、酢酸エチル、2−エチルヘキサノール、炭酸エチレン、1,1,1−トリクロロエタン、2−ヘプタノン、αピネン、d−リモネン、エチレングリコール,エチレングリコールブチルエーテル、エチレングリコールメチルエーテル、γ−ブチロラクトン、グリセロール、グリセロールジアセテート、グリセロールモノアセテート、グリセロールトリアセテート、ヘキサデカン、ヘキシレングリコール、酢酸イソアミル、酢酸イソボルニル、イソオクタン、イソホロン、イソプロピルベンゼン、ミリスチン酸イソプロピル、乳酸、ラウリルアミン、酸化メシチル、メトキシ−プロパノール、メチルイソアミルケトン、メチルイソブチルケトン、ラウリン酸メチル、オクタン酸メチル、オレイン酸メチル、塩化メチレン、m−キシレン、n−ヘキサン、n−オクチルアミン、オクタデカン酸、オクチルアミン酢酸塩、オレイン酸、オレイルアミン、o−キシレン、フェノール、ポリエチレングリコール(PEG400)、プロピオン酸、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、p−キシレン、トルエン、リン酸トリエチル、トリエチレングリコール、キシレンスルホン酸、パラフィン、鉱物油、トリクロロエチレン、ペルクロロエチレン、酢酸エチル、酢酸アミル、酢酸ブチル、メタノール、エタノール、イソプロパノール、およびアミルアルコール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ヘキサノール、オクタノールなどのより高分子量のアルコール類;エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、N−メチル−2−ピロリジノンなどが含まれる。水は、濃縮物を希釈するために一般に好まれるキャリアである。
【0047】
適切な固体キャリアとしては、滑石、二酸化チタン、葉蝋石粘土、シリカ、アタパルガイト粘土、ケイ藻土、チョーク、珪藻土(diatomaxeous earth)、石灰、炭酸カルシウム、ベントナイト粘土、フラー土、肥料、綿実殻、小麦粉、ダイズ粉、軽石、木粉、クルミ殻粉、リグニンなどが含まれる。
【0048】
広範な界面活性剤が、有利には、前記液体と固体組成物の双方で、特に適用前にキャリアで希釈されるように設計されたものにおいて用いられる。界面活性剤は、性質が、アニオン性、カチオン性、非イオン性またはポリマー性である可能性があり、乳化剤、湿潤剤、懸濁剤として、またはその他の目的で用いることができる。典型的な表面活性剤としては、硫酸ラウリルジエタノールアンモニウムなどのアルキル硫酸塩;ドデシルベンゼンスルホン酸カルシウムなどのアルキルアリールスルホン酸塩;ノニルフェノール−C18エトキシレートなどのアルキルフェノール−酸化アルキレン付加生成物;トリデシルアルコール−C16エトキシレートなどのアルコール−酸化アルキレン付加生成物;ステアリン酸ナトリウムなどの石鹸;ジブチルナフタレンスルホン酸ナトリウムなどのアルキルナフタレンスルホン酸塩;スルホコハク酸ジ(2−エチルヘキシル)ナトリウムなどのスルホコハク酸塩のジアルキルエステル;ソルビトールオレアートなどのソルビトールエステル;塩化トリメチルアンモニウムラウリルなどの四級アミン;ポリエチレングリコールステアラートなどの脂肪酸のポリエチレングリコールエステル;酸化エチレンと酸化プロピレンのブロック共重合体;およびモノアルキルリン酸エステルおよびジアルキルリン酸エステルの塩が含まれる。
【0049】
一般に農業組成物で用いられるその他のアジュバントとしては、結晶化阻害剤、粘度調整剤、懸濁剤、スプレー液滴調整剤(spray droplet modifiers)、顔料、抗酸化剤、発泡剤、遮光剤、相溶化剤、消泡剤、金属イオン封鎖剤、中和剤および緩衝液、腐食防止剤、染料、付臭剤、展着剤、浸透助剤、微量栄養素、軟化剤(emollients)、潤滑剤、付着剤などが含まれる。組成物はまた、液体肥料、または硝酸アンモニウムや尿素などの固体粒子肥料キャリアと共に調合し得る。
【0050】
さらに、本発明はまた、殺虫剤、殺線虫剤、殺真菌剤または除草剤または追加的植物成長調節剤などの1つ以上の追加的殺虫剤を任意選択的に含んでもよい。殺虫剤と本発明との当時適用は、1回だけの適用で成長調節と害虫防除の双方を提供し得るので、農業従事者が製品を作物に適用するのに費やす時間を最小化するという追加的利点がある。
【0051】
本発明に従うと、上述のように作物の成長を調節する、および/または作物を改良するために、相乗的有効量の植物成長調節物質とアシベンゾラル−S−メチルとを含んでなる組成物の使用が提供される。
【0052】
本発明に従うと、植物成長調節物質およびアシベンゾラル−S−メチルを約10:1乃至約1:1の重量比で含んでなる、植物成長調節組成物が提供される。一実施形態では、重量比は約5:1である。さらなる実施形態では、植物成長調節物質およびアシベンゾラル−S−メチルは、相乗的有効量で存在する。代案の実施形態では、植物成長調節物質はトリネキサパックエチルである。
【0053】
本発明の組成物は、約0.001%乃至約99重量%の活性成分を含有してもよい。適切には、組成物は、約0.001%乃至約50重量%の活性成分を含有する。より適切には、組成物は、約0.001%乃至約10重量%の活性成分を含有する。より適切には、組成物は、約0.001%乃至約1重量%の活性成分を含有する。調合物が使用前に水による希釈を要する濃縮物の形態である場合、それは希釈なしにすぐ使用できる組成物よりも、より多量の活性成分を含有する。
【0054】
以下の実施例は、本発明をさらに例証する。本発明を望ましい実施形態とその実施例に言及して記載するが、本発明の範囲は、これらの記載される実施形態のみに限定されない。添付の特許請求の範囲で定義され制限される本発明の精神と範囲を逸脱することなく、上記の発明を修正および適合し得ることは、当業者には明らかである。
【実施例】
【0055】
実施例1
温室試験を設定して、冬および夏型の双方の大麦および小麦(パサデナ(Pasadena)種夏大麦、ハッソ(Hasso)種冬大麦、アリーナ(Arina)種冬小麦、およびロナ(Lona)種夏小麦)に対する、トリネキサパックエチル、アシベンゾラル−S−メチル、および様々な比率のトリネキサパックエチルおよびアシベンゾラル−S−メチル混合物の成長調節効果を比較した。
【0056】
表1に、実施処理を記載する。各処理は、植物成長段階30(茎成長の始まり)の植物の葉に噴霧して適用した。適用の2週間後に成長アセスメントを行い、結果を表2に成長低下百分率として表した。
【0057】
【表1】

【0058】
【表2】

【0059】
トリネキサパックエチルとアシベンゾラル−S−メチルの混合物を適用した場合、試験された全ての比率で4種全てに対して、相乗的成長低下効果が観察された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物に植物成長調節物質およびアシベンゾラル−S−メチルを適用するステップを含んでなる、作物の成長を調節する、および/または前記作物を改良する方法。
【請求項2】
前記植物成長調節物質およびアシベンゾラル−S−メチルが、相乗的有効量で適用される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記植物成長調節物質が、トリネキサパックエチル、プロヘキサジオン−カルシウム、パクロブトラゾール、ウニコナゾール、フルルプリミドール、メフルイジド、メピコートクロリド、クロルメコートクロリド、およびその混合物からなる群から選択される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記植物成長調節物質がトリネキサパックエチルである、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記植物成長調節物質がパクロブトラゾールである、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記作物が単子葉植物である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記作物が、穀類、イネ、トウモロコシ、およびサトウキビからなる群から選択される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記植物成長調節物質およびアシベンゾラル−S−メチルが、約5:1乃至約1:1の重量比で前記植物に適用される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記植物成長調節物質が、約50乃至約100g ai/haの比率で適用される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記アシベンゾラル−S−メチルが、約5乃至約25g ai/haの比率で適用される、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記改良が、植物収穫高の改善である、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記改良が、植物の精力および/または植物の質、および/または植物のストレス因子耐性の改善である、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記改良が、旱魃状態耐性の改善である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
トリネキサパックエチルとアシベンゾラル−S−メチルを約10:1乃至約1:1の重量比で含んでなる、植物成長調節組成物。
【請求項15】
植物成長調節物質およびアシベンゾラル−S−メチルを約5:1の重量比で含んでなる、請求項14に記載の植物成長調節組成物。
【請求項16】
作物の成長を調節する、および/または前記作物を改良するための、植物成長調節物質およびアシベンゾラル−S−メチルを相乗的有効量で含んでなる組成物の使用。

【公表番号】特表2013−512207(P2013−512207A)
【公表日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−540314(P2012−540314)
【出願日】平成22年11月24日(2010.11.24)
【国際出願番号】PCT/EP2010/007129
【国際公開番号】WO2011/063947
【国際公開日】平成23年6月3日(2011.6.3)
【出願人】(500584309)シンジェンタ パーティシペーションズ アクチェンゲゼルシャフト (352)
【Fターム(参考)】