説明

植物材料からの揮発性芳香化合物の採取方法

【課題】植物材料から揮発性芳香化合物を採取する方法を提供する。
【解決手段】本方法は、植物材料から揮発性芳香化合物を採取する方法であって、a)植物材料を乾燥機内でガスと接触させる工程であって、前記乾燥機内に導入するガス中の水分量が、無水ガス1kg当たり15g未満である工程、b)前記乾燥機の噴出ガス流を、水蒸気またはスチームと接触させて気相混合物を得る工程、およびc)前記気相混合物を凝縮させて、揮発性芳香化合物を含む凝縮物を採取する工程と、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物材料からの揮発性芳香化合物の採取方法に関する。本方法は、特に、茶からの揮発性芳香化合物の採取方法に関する。
【背景技術】
【0002】
植物材料の加工処理中の揮発性芳香化合物の採取方法は知られている。
【0003】
特開2005−087122号(SHOWA NOUGEI KK、2005年公開)には、コーヒーフレーバーの製造方法であって、焙煎したコーヒー豆を水蒸気と接触させてコーヒー豆中の香気成分を水蒸気中に抽出する工程と、この水蒸気を冷却により凝縮させて香気成分を含む凝縮液を得る工程と、得られた凝縮液をグリセリン脂肪酸エステル〔好ましくはトリアセチン(グリセリルトリアセテート)〕により再抽出する工程とを含む方法が記載されている。このような方法は、植物材料を乾燥させるその後の別の工程を必要とし、これらにより追加のエネルギー消費および方法の複雑化がもたらされる。この植物材料をさらに乾燥させる場合でも、乾燥した植物材料は、通常の芳香/風味および視覚的特徴が欠けている。
【0004】
米国特許第3615665号(WHITE WILLIAM V、1971年公開)も、焙煎したコーヒーからの揮発性化合物のストリッピングおよび採取方法であって、焙煎したコーヒー豆を水蒸気と接触させる方法が記載されている。
【0005】
米国特許出願公開第2007/003683号(INOUE TAKASHI、2007年公開)には、食品(例えば、茶、コーヒーなど)から揮発性化合物を抽出する方法であって、食品材料を水蒸気と接触させ、遊離させた揮発性化合物を冷却により採取することによる方法が記載されている。
【0006】
植物材料の乾燥中に得られる芳香成分を含む気体を、水、または何らかの他の芳香成分溶解液に接触させることは知られている。特開2005−21040号(RIKEN PERFUMERY KK、2005年公開)には、茶抽出物の製造方法であって、焙煎によって発生した焙煎香気を、密閉型加熱容器の外に導き、水中に捕集することによって効率よく香気を採集し、この香気溶液を茶抽出溶剤の全量又は一部として使用するか、またはこの香気溶液を別途水で抽出した茶抽出液に合わせることによって、焙煎香気に富む茶抽出液を得る方法が記載されている。
【0007】
米国特許第4335150号(HOSAKA HIDEAKI ら、1982年公開)には、乾燥ガス(例えば、空気または窒素など)を使用することによって食品を乾燥させる方法が記載されている。使用したガスは、例えば、パージとして用いられる工程にさらに付され、吸着水と接触され得る。しかし、このパージガスを水蒸気またはスチームと接触させることについては全く記載されていない。
【0008】
米国特許第5214998号(NAGAOKA PERFUMERY CO LTD、1993年公開)には、加熱ユニット内に気密に収容した食品材料を加熱し、生成した芳香成分を、キャリアガス供給ユニットによって、キャリアガスと共に連結パイプを通して搬送させ、その中に香気溶解溶液が入った密封容器を備えた芳香成分溶解および捕捉ユニットに導く方法が記載されている。この方法では、乾燥材料の1単位質量当たりの香気の回収率が比較的低い。さらに、溶解溶液中に得られる芳香化合物の濃度が比較的低い。
【0009】
国際公開第2007/039018号には、茶葉から香気を採取し、次いでこの茶葉を乾燥させる工程を含む葉茶製品の製造方法であって、香気の採取工程において、低対流乾燥機中で生葉を少なくとも部分的に乾燥する間に香りを採取することを特徴とする方法が記載されている。この方法は、特別な装置を必要とし、従来の乾燥方法で実施することはできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2005−087122号公報
【特許文献2】米国特許第3615665号
【特許文献3】米国特許出願公開第2007/003683号
【特許文献4】特開2005−21040号公報
【特許文献5】米国特許第4335150号
【特許文献6】米国特許第5214998号
【特許文献7】国際公開第2007/039018号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の1つの目的は、従来技術の欠点を少なくとも1つ解決または改善すること、あるいは有用な代替法を提供することである。
【0012】
本発明の別の目的は、揮発性芳香化合物を、植物材料から、乾燥させた植物材料の品質を損なうことなく採取する方法を提供することである。
【0013】
本発明のさらに別の目的は、植物材料からの揮発性芳香化合物の採取方法であって、乾燥ベースで植物材料1単位質量当たりの揮発性芳香化合物の回収率が比較的高い方法を提供することである。
【0014】
本発明のさらに別の目的は、植物材料からの揮発性芳香化合物の採取方法であって、凝縮物中の揮発性芳香化合物の濃度が比較的高い方法を提供することである。
【0015】
本発明のさらに別の目的は、植物材料からの揮発性芳香化合物の採取方法であって、エネルギー消費量が比較的少ない方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者らは、驚くべきことに、植物乾燥機から噴出する乾燥機の噴出ガス流に、凝縮工程前に、水蒸気を噴射することによって、芳香成分の比較的高い回収率がもたらされることを見出した。
【0017】
本発明は、植物材料から揮発性芳香化合物を採取する方法であって、
a)植物材料を乾燥機内でガスと接触させる工程であって、前記乾燥機内に導入するガス中の水分量が、無水ガス1kg当たり15g未満である工程、
b)前記乾燥機の噴出ガス流を、水蒸気またはスチームと接触させて気相混合物を得る工程、および
c)前記気相混合物を凝縮させて、揮発性芳香化合物を含む凝縮物を採取する工程と
を含む方法を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0018】
[植物材料]
本明細書において、植物材料という用語は、植物から得られる材料を意味する。植物材料は、植物の、根、茎、葉、種子、花、または他の部分から得ることができる。好ましくは、植物材料は、揮発性芳香化合物を含む。
【0019】
植物材料は、薬用植物、香辛料、果物および野菜を含む園芸作物、花作物、プランテーション作物、香料作物、根系作物、塊茎系作物、および球根系作物を含む植物群から得ることが好ましい。
【0020】
好ましい香辛料植物には、ガランガ(Alpinia galangal)、アモムム(Amomum sublatum)、トウガラシ(Capsicum annum)、キダチトウガラシ(Capsicum fruitenscens)、シナモンカシア(Cinnamomum aromaticum)、タマラニッケイ(Cinnamomum tamala)、シナモンリーフ(Cinnamomum zeylancium)、ウコン(Curcuma longa)、カルダモンエッセンシャルオイル(Elettaria cardamomum)、ガルシニアカンボジア(Garcinia cambogia)、インドマンゴスチン(Garcinia indica)、カレーリーフ(Murraya koenigi)、ナツメグ(Myristica fragrans)、オールスパイス(Pimenta diocia)、コショウ(Piper nigrum)、クローブ(Sysygium aromaticum)、タマリンド(Tamarindus indica)、バニラ(Vanilla planfolia)、バニラ(Vanilla fragrans)、ジンジャー(Zinziber officinalis)、コリアンダー(Coraindrum sativum)、クミン(Cuminum cyminum)、クミン(Cuminium odorum)、フェンネル(Foenciulum vulgare)、アニス(Carum copticum)、ディル(Anetheum graveolens)、フェングリーク(Tigonella foenum-graecum)、ブラッククミン(Nigella sativa)、アニス(Pimipnella anisum)、およびセロリ(Apium graveolens)が含まれる。特に好ましいスパイスには、トウガラシ(Capsicum annum)、キダチトウガラシ(Capsicum fruitenscens)、シナモンカシア(Cinnamomum aromaticum)、タマラニッケイ(Cinnamomum tamala)、シナモンリーフ(Cinnamomum zeylancium)、ウコン(Curcuma longa)、カルダモンエッセンシャルオイル(Elettaria cardamomum)、バニラ(Vanilla fragrans)、ジンジャー(Zinziber officinalis)、コリアンダー(Coraindrum sativum)、およびクミン(Cuminum cyminum)が含まれる。
【0021】
好ましい果物には、イチゴ(Fragaria vesca)、マンゴー(Mangifera indica)、パパイア(Carica papaya)、ブドウ(Vitis vinifera)、ヒメザクロ(Punica gargantum)、グアバ(Psidium guajava)、レモン(Citrus limon)、ライム(Citrus aurantifolia)、タヒチライム(Citrus latifolia)、マニルカラの果実(Manilkara zapota)、アカテツの果実(Achras sapota)、パーシーアメリカーナ(Persea Americana)、パッションフルーツ(Passiflora edulis)、ライチ(Litchi chinensis)、ポンカン(Annona reticulate)、パラミツ(Artocarpus heterophyllus)、ナツメ(Ziziphus mauritiana)、アンマクロ(Emblica officinalis)、アンマロク(Phyllanthus emblica)、イチジク(Ficus carica)、カリッサッカランダス(Carissa carandas)、マルメロ(Aegle marmelos)、パンノキ(Artocarpus incisa)、スターフルーツ(Averrhoa carambola)、セイヨウミザクラ(Prunus avium)、ナツメヤシ(Phoneix dactylifera)、チョウジ(Syzygium cuminiim)、ビワ(Eriobotrya japonica)、モーラバター(Vassila latifolia)、マンゴスチン(Garcinia mangostana)、ファルサ(Grewia subinequalis)、ネフェリウム(Nephelium lappaceeum)、パイナップル(Ananas comosus)、フトモモ(Syzigium jambos)、ウッドアップル(Feronia limonia)、リンゴ(Malus domestica)、セイヨウナシ(Pyrus communis)、モモ(Prunus persica)、スイートアーモンド(Prunus amygdalus)、アンズ(Prunus armeniaca)、クルミ(Juglans regia)、およびキウイフルーツ(Actinidia chinensi)が含まれる。特に好ましい果物には、レモン(Citrus limon)、ライム(Citrus aurantifolia)、タヒチライム(Citrus latifolia)、イチゴ(Fragaria vesca)、およびパイナップル(Ananas comosus)が含まれる。
【0022】
好ましい野菜には、ウリ類、アブラナ類および温帯野菜、豆類および葉物野菜が含まれる。
【0023】
好ましいウリ類には、ツルレイシ(Momordica charantia)、カボチャ(Cucurbita moschata)、ペポカボチャ(Cucurbita pepo)、ユウガオ(Lagenaria siceraria)、メロン(Cucumis melo)、テッポウウリ(Citrulus lanatus)、トウガン(Benincasa hispida)、キュウリ(Cucumis sativus)、シロウリ(Cucumis melo var. utilissimus)、ユッキニア(Coccinia indica)、トカドヘチマ(Luffa acutangula)、ヘチマ(Luffa cylindricale)、ヒョウタンカボチャ(Praecitrullus fistulosus)、ヘビウリ(Trichosanthes cucurmerina)、モモルディカメロン(Cucurmis melo var. momordica)、スイカ(Cucumis callosus)が含まれる。
【0024】
好ましいアブラナ類および温帯野菜には、ムラサキキャベツ(Brassica oleracea subsp. Capitata)、カリフラワー(Brassica oleracea L. var botrytis)、ブロッコリー(Brassica oleracea var. Italica)、コールラビ(Brasssica oleracea var. gongylodes)、ニンジン(Daucus carota)、サトウダイコン(Beta vulgaris)、ダイコン(Raphanus sativus)、ベンガルワシミミズク(Brassica oleracea var. bengalensis)、レタス(Lactuca sativa)、ベンガルサトウダイコン(Beta vulgaris var. bengalensis)、パセリ(Petroselinum hortense)、トマト(Lycopersicon esculentum)、ナス(Solanum melongena)、オクラ(Abelmoschus esculentus)、およびホウレンソウ(Spinaceae oleracea)が含まれる。特に好ましいアブラナ類および温帯野菜には、ムラサキキャベツ(Brassica oleracea subsp. Capitata)、カリフラワー(Brassica oleracea L. var botrytis)、ブロッコリー(Brassica oleracea var. Italica)、コールラビ(Brasssica oleracea var. gongylodes)、およびニンジン(Daucus carota)が含まれる。
【0025】
好ましいに豆類および葉物野菜は、インゲンマメ(Phaseolus vugarsis)、ササゲ(Vigna unguiculata)、フジマメ(Dolichos lablab)、エンドウ(Pisum sativum)、グアー(Cyamopsis tetragonolobus)、ワサビノキ(Moringa oleifera)、シロゴチョウ(Sesbania grandiflora)、および根パセリ(Petroselinum crispum)が含まれる。特に好ましい葉物野菜には、根パセリ(Petroselinum crispum)が含まれる。
【0026】
好ましい塊茎系および球根系作物には、ジャガイモ(Solanum tuberosum)、キャッサバ(Manihot esculenta)、サツマイモ(Ipomoea batatas)、ダイショ(Dioscorea alata)、トゲイモ(Dioscorea esculenta)、ヤムイモ(Dioscorea rotundata)、ゾウコンニャク(Amorphophallus paeoniifolius)、クズイモ(Pachyrrhizus erosus)、タマネギ(Allium cepa)、ニンニク(Allium sativum)、およびアロールート(Maranta arundinaceae)が含まれる。特に好ましい塊茎系および球根系作物には、タマネギ(Allium cepa)およびニンニク(Allium sativum)が含まれる。
【0027】
好ましい花作物には、チューベローズ(Polianthes tuberose)、カーネーション(Dianthus cayophyllus)、アスター(Callistepheus chinensis)、およびシンビジューム(Cymbidicum dendrobium)が含まれる。
【0028】
好ましいプランテーション作物には、ココヤシ(Cocos nucifera)、ビンロウジュ(Areca catechu)、カカオ(Theobroma cacao)、カシューナッツ(Anacardium occidentale)、チャノキ(Camelia sinensis)、コーヒーノキアラビカ種(Coffea Arabica)、コーヒーノキロブスタ種(Coffea robusta)、パラゴムノキ(Hevia brasilensis)、アブラヤシ(Elacis guineensis)、チコリインティバス(Cichorium intybus)、およびオヨギヤシ(Borassusが含まれる。特に好ましいプランテーション作物には、ココヤシ(Cocos nucifera)、チャノキ(Camelia sinensis)、コーヒーノキアラビカ種(Coffea Arabica)、およびコーヒーノキロブスタ種(Coffea robusta)が含まれる。チャノキ(Camelia sinensis)は最も好ましいプランテーション作物である。
【0029】
好ましい芳香性作物には、レモングラス(Cymbologon flexuosus)、パルマローザ(Cymbopogon martini var. motia)、スペアミント(Mentha spicata)、ゼラニウム(Pelargonium graveolens)、カノコソウ(Valeriana jatamansi)、タヴァナ(Artemisia pallens)、シトロネラ(Cympopogon winterianus)、コーンミント(Mentha arvensis)、パチョリー(Pogostemon patchouli)、およびベチバー(Vetiveria zizanioides)が含まれる。
【0030】
好ましい薬用植物には、ケシ(Papaver sominferum)、ナルコユリ(Chlorophytum borivilianum)、ディオスコレア・プラエヘンシリス(Dioscoria floribunda)、ケジギタリス(Digitalis lanata)、ツノゲシ(Glaucium flavum)、カンゾウ(Glycyrrhiza glabra)、インドジャボク(Rauvolfia serpentine)、ソラヌム(Solanum laciantum)、キンギンナスビモドキ(Solanum viarum)、キンマ(Piper betle)、ヒヨス(Hyoscyamus muticus)、アンブレットシード(Ahelmoschus moschatus)、ショウブ(Acorus calamus)、アダトダゼイラニカ(Adhatoda zeylanica)、アロエ・ベラ(Aloe barbadensis)、インディアン・ジンジャー(Alpinia calcarata)、インドセンダン(Azardichta indica)、スオウ(Caesalpinia sappan)、センナ(Cassia angustifolia)、ウコン(Curcuma zerumbet)、ニチニチソウ(Catharanthus roseus)、ハズ(Croton tiglium)、クルクマ・ウコン(Curcuma angustifolia)、ベンガルボダイジュ(Ficus benghalensis)、インドボダイジュ(Ficus religiosa)、ユリグルマ(Gloriosa superba)、タイワンコマツナギ(Indigofera tinctoria)、イヌラ(Inula racemosa)、ナンヨウアブラギリ(Jatropha curcas)、バンウコン(Kemfaria galangal)、ヘンナ(Lawsonia inermis)、ガーデンクレス(Lepidium sativum)、スイートバジル(Ocimum basilicum)、ホーリーバジル(Ocimum sanctum)、カミメボウキ(Ocimum tenuiflorum)、インドナガコショウ(Piper longum)、イスパグラ(Plantago ovata)、シノニム(Plechtranthus barbatus)、クロヨナ(Pongamia pinata)、ミルクシスル(Sylibum marianum)、ホホバオイル(simmondsia chinensis)、アジョワン(Trachyspermum ammi)、タイワンニンジンボク(Vitex negundo)、アシュワガンダ(Withania somnifera)、およびサネブトナツメ(Zizyphus jujube)が含まれる。特に好ましい薬用植物には、スイートバジル(Ocimum basilicum)、ホーリーバジル(Ocimum sanctum)、およびカミメボウキ(Ocimum tenuiflorum)が含まれる。
【0031】
植物材料が、茶(Camellia sinensis)、バジル(Ocimum basilicum、Ocimum sanctum、Ocimum tenuiflorum)、パセリ(Petroselinum crispum)、トウガラシおよびチリ(Capsicum annum、Capsicum fruitenscens)、ニンジン(Daucus carota)、アスパラガス(Asparagus Racemosus)、ブロッコリー(Brassica oleracea var. Italica)、シナモン(Cinnamomum aromaticum、Cinnamomum tamala、Cinnamomum zeylancium)、クルクミン(Curcuma longa)、カルダモン(Elettaria cardamomum)、バニラ(Vanilla fragrans)、ジンジャー(Zinziber officinalis)、コリアンダー(Coraindrum sativum)、ストロベリー(Fragaria vesca)、タマネギ(Allium cepa)、ニンニク(Allium sativum)、ならびにクミン(Cuminum cyminum)からなる植物の群に由来することがさらに特に好ましい。
【0032】
粉砕した植物材料を使用することも、粉砕していない植物材料を使用することもできる。粉砕した植物材料を使用することが好ましい。
【0033】
本発明の一態様では、茶植物からの植物材料が好ましい。茶植物からの植物材料は、生茶葉、緑茶、紅茶、ウーロン茶であってよい。任意の発酵、未発酵、または部分発酵の茶材料を使用することができる。しかし、茶材料が、少なくとも部分的に発酵された茶葉が特に好ましい。
【0034】
植物材料は、約0.1〜10kg、より好ましくは0.5〜5kg、最も好ましくは1〜4kgの水分を、植物材料の乾燥質量1kg当たり含む。
【0035】
用語「揮発性芳香化合物」は、本明細書において、植物材料を、通常の大気圧下、30℃より高い温度に加熱した時にこの植物材料から分離される、植物材料中の有機化合物を意味する。
【0036】
植物材料の揮発性有機炭素の総含量は、典型的には、植物材料中の揮発性有機化合物の料を示し、このような植物材料の揮発性有機炭素の総含量は、当分野で知られた任意の好適な方法によって測定することができる。好ましくは、揮発性有機炭素の総含量は、植物材料を、200mmHg以下の減圧下、90℃の温度に曝し、生成した蒸気を凝縮させて、揮発性芳香化合物および水の混合物を含む凝縮物を得ることによって測定する。次いで、この凝縮物を分析して、有機炭素の総含量を求める。植物材料の揮発性有機炭素の総含量は、植物材料の乾燥質量1kg当たり少なくとも100mgであることが好ましい。植物材料の揮発性有機炭素の総含量は、好ましくは植物材料の乾燥質量1kg当たり150mgより高く、より好ましくは植物材料の乾燥質量1kg当たり200mgより高い。植物材料の揮発性有機炭素の総含量は、植物材料の乾燥質量1kg当たり10000mg未満であることが好ましい。
【0037】
[工程(a)]
工程(a)は、植物材料を乾燥機内でガスと接触させる工程である。植物材料は、任意のガスと接触させることができる。
【0038】
ガスは、空気、窒素、二酸化炭素、またはこれらの混合物であることが好ましい。
【0039】
工程(a)のガスの温度は、30℃より高いことが好ましい。このガスの温度は、好ましくは少なくとも40℃、より好ましくは少なくとも75℃、最も好ましくは少なくとも100℃である。ガスの温度は、好ましくは300℃未満、より好ましくは200℃未満、最も好ましくは150℃未満である。
【0040】
工程(a)は、好ましくは0.5〜5気圧、より好ましくは0.9〜3気圧、最も好ましくは0.95〜1.2気圧の絶対圧力で実施する。工程(a)は、好ましくは0.051〜0.51MPa、より好ましくは0.091〜0.31MPa、最も好ましくは0.096〜0.12MPaの絶対圧力で実施する。大気圧(約0.1MPa)に近い圧力が特に好ましい。
【0041】
乾燥機は、ガスと植物材料とを接触させるチャンバーと、噴出ガス流のための導出口とを備えた任意の装置である。好ましくは、乾燥機は、乾燥機内にガスを導入する導入口を有する。任意の好適な乾燥機を使用することができる。好ましい乾燥機には、空気乾燥機(例えば、箱形乾燥機および流動床乾燥機など)が含まれる。
【0042】
乾燥機は、バッチ式乾燥機であっても連続式乾燥機であってもよい。
【0043】
乾燥機に導入するガスの温度は、好ましくは30℃〜300℃、より好ましくは40℃〜250℃、最も好ましくは100℃〜160℃である。
【0044】
乾燥機に導入するガスの水分量は、乾燥ガス1kg当たり15g未満、より好ましくは乾燥ガス1kg当たり10g未満、最も好ましくは乾燥ガス1kg当たり5g未満である。乾燥機に導入するガスの水分量は、乾燥ガス1kg当たり0.01gより多いことが好ましい。
【0045】
工程(a)で植物材料と接触させるガスの量は、植物材料の乾燥質量1kg当たり好ましくは10〜1200kg、より好ましくは25〜800kg、最も好ましくは40〜500kgである。
【0046】
[工程b]
工程(b)は、乾燥機の噴出ガス流を水蒸気またはスチームと接触させて気相混合物を得る工程である。
【0047】
本明細書で用いる用語「水蒸気またはスチーム」は、少なくとも50質量%、より好ましくは少なくとも90質量%、最も好ましくは少なくとも95質量%の蒸発した水を含む気体物質を意味する。「水蒸気またはスチーム」が、蒸発した水を大幅に含む気体物であることが特に好ましい。
【0048】
工程(b)は、乾燥機の外で実施されることが好ましい。
【0049】
水蒸気またはスチームの温度は、好ましくは70℃〜170℃、より好ましくは80℃〜150℃、最も好ましくは95℃〜120℃であることが好ましい。
【0050】
水蒸気またはスチームの絶対圧力は、好ましくは0.3〜7気圧、より好ましくは0.5〜2気圧、最も好ましくは0.8〜1気圧であることが好ましい。水蒸気またはスチームの絶対圧力は、好ましくは0.304MPa〜0.71MPa、より好ましくは0.051MPa〜0.202MPa、最も好ましくは0.081MPa〜0.101MPaであることが好ましい。
【0051】
気相混合物1kg当たりの水蒸気またはスチームの量は、好ましくは1g〜500g、より好ましくは5g〜200g、最も好ましくは10g〜100gである。
【0052】
[工程c]
工程(c)は、気相混合物を凝縮させて、揮発性芳香化合物を含む凝縮物を採取(回収する工程である。工程(c)は、任意の凝縮装置を使用することによって実施することができる。
【0053】
使用することができる好適な凝縮装置には、例えば、円筒多管型(shell and tube type)、コイル型、管状型、らせん型、フィン付きチューブ型の凝縮装置が含まれる。冷却水の温度は、好ましくは40℃未満、より好ましくは10℃未満、最も好ましくは−5℃未満である。
【0054】
凝縮工程は、一段階であっても多段階であってもよい。しかし、一段階の凝縮が好ましい。理論に拘束されることは望まないが、一段階の凝縮における芳香揮発物の回収率が、多段階の凝縮で得られる芳香揮発物の回収率より高いと考えられる。
【0055】
凝縮物は、回収した揮発性芳香化合物と水とを含む。揮発性芳香化合物の量は、典型的には、植物材料の乾燥質量1kg当たり0.02〜5gである。しかし、この量は、植物材料の選択および除去する水分の量次第である。
【0056】
凝縮物中の揮発性芳香化合物の濃度は、好ましくは水の1〜500ppm、より好ましくは水の5〜400ppm、最も好ましくは12〜200ppmである。
【0057】
凝縮物は、揮発性芳香凝縮物の濃度を高めるために、当業者に知られているさまざまな方法によってさらに濃縮してもよい。芳香凝縮物のさらなる濃縮の好ましい方法には、蒸留、相分離、吸着、脱離、および膜分離が含まれる。
【0058】
上述した方法から得られた芳香凝縮物は、直接、あるいは好ましくは濃縮された形態で、あるいはカプセル化した形態で、香気および芳香を賦与/増強するための任意の製品に添加することによって使用することができる。
【0059】
[乾燥植物材料]
本明細書において乾燥植物材料という用語は、工程(c)の最後に残った植物材料を意味する。この乾燥植物材料は、工程(a)の植物材料より少ない水分含量を有する。
【0060】
乾燥植物材料は、植物材料の乾燥質量1kg当たり3kg未満、より好ましくは2kg未満、最も好ましくは1kg未満の水分を含む。
【実施例】
【0061】
本発明を、以下に実施例で実証する。これらの実施例は、説明だけのためのものであり、いかなる態様でも本発明の範囲を制限するものではない。
【0062】
[蒸気噴射法の効果]
実験は、植物材料としての180gの紅茶葉(ケニア産)を空気と接触させることによって実施した。乾燥機に導入する空気は、110℃の温度であり、空気の乾燥質量1kg当たり11gの水分含量を有していた。植物材料は、植物材料の乾燥質量1kg当たり2.33kgの水分を含有していた。乾燥機に導入する空気の流量は、3.2kg/時間であった。接触させた空気の合計量は、植物材料の乾燥質量1kg当たり40kgであった。乾燥機の噴出ガスは、取り出された芳香揮発物と、乾燥中に植物材料から放出された水分と含む空気流からなっていた。100℃の温度および96g/時間の速度の蒸気を、乾燥機の噴出空気流に噴射して、気相混合物を生じさせた。加えた蒸気の量は、気相混合物1kg当たり30gである。この気相混合物を、2℃の冷水が供給されているらせん型凝縮装置内に供給した。空気流および蒸気の噴射を40分後に停止させた。凝縮物をTOC計(Shimadzu Model 5000A)で分析し、TOC値を得、これを揮発性芳香化合物の量とした。この値から、芳香成分の量(植物材料の乾燥質量1kg当たりのmgで表す)、および凝縮物中の揮発性芳香化合物の濃度(ppm/水)を算出した。乾燥植物材料は、植物材料の乾燥質量1kg当たり0.72kgの水分を含有していた。別の実験を、蒸気の噴射を全く行わない以外は、上述した方法と同じ方法で実施した。これらの実験の結果を下記に示す。
【0063】
【表1A】

【0064】
これらの結果から、本発明の方法(蒸気噴射あり)により、凝縮物中の揮発性芳香化合物の濃度を大幅に低下させることなく、比較的により高い揮発性芳香化合物の回収率を得ることができることが明らかである。
【0065】
[バジルからの芳香の採取]
同様の実験をバジルを用いて実施した。実験の詳細を以下に示す:
植物材料の合計量:160g
植物材料中の水分量:植物材料の乾燥質量1kg当たり9kg
乾燥植物材料中の水分量:植物材料の乾燥質量1kg当たり1.63kg
乾燥機に導入する空気流の速度:3.2kg/時間
蒸気流の速度:180g/時間
蒸気温度:100℃
蒸気添加量は、気相混合物1kg当たり55gであった。
空気流および蒸気噴射は、60分後に停止させた。
実験結果(蒸気噴射ありおよびなし)を下記に示す。
【0066】
【表1B】

【0067】
これらの結果から、本発明の方法(蒸気噴射あり)により、比較的により高い揮発性芳香化合物の回収率を得ることができることが明らかである。凝縮物中の揮発性芳香化合物の濃度はわずかに低いが、許容可能な程度である。
【0068】
[温度の効果]
以下の全ての実験は、60分間実施した。これらの実験は、バジルで実施した。実験条件は以下のとおりである。
乾燥機に導入する空気流の速度:4.5kg/時間
蒸気流の速度:180g/時間
乾燥床への注入空気温度を、下記にその結果と共に一覧にしたとおりに変化させた。
【0069】
【表2】

【0070】
これらの結果から、芳香化合物の回収率が、乾燥機に導入する乾燥空気の温度が高くなるに従って高くなることが明らかである。
【0071】
[気相混合物1kg当たりの蒸気添加量の効果]
以下の全ての実験は、60分間実施した。これらの実験は、バジルで実施した。実験条件は以下のとおりである。
乾燥機に導入する空気流の速度:4.5kg/時間
乾燥床への注入空気温度:110℃
蒸気添加量を、下記にその結果と共に一覧にしたとおりに変化させた。
【0072】
【表3】

【0073】
これらの結果から、芳香化合物の回収率が、気相混合物1kg当たりの蒸気添加量が多くなるに従って高くなることが明らかである。凝縮物中の揮発性芳香化合物の濃度がある程度低減することを伴うが、気相混合物1kg当たりの蒸気添加量は、比較的高いことが好ましい。
【0074】
[乾燥機の噴出ガスに水を直接接触させる場合の比較データ]
以下の実験を、乾燥機の噴出ガスに蒸気を噴射する代わりに、乾燥機の噴出ガスを液体の水に通してバブルさせた以外は、表1bにおける条件と同様の条件で行った。
【0075】
【表4】

【0076】
使用する水の量が比較的少ないと、揮発性化合物の回収率が非常に低く、より多い量の水を使用すると、水中の揮発性芳香化合物の濃度が比較的低くなりすぎることが分かった。このことは、本発明の蒸気噴射法により、乾燥機の噴出ガス流を直接液体の水に接触させる従来の方法と比較して、有意により良い結果がもたらされることを示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物材料から揮発性芳香化合物を採取する方法であって、
a)植物材料を乾燥機内でガスと接触させる工程であって、前記乾燥機内に導入するガス中の水分量が、無水ガス1kg当たり15g未満である工程、
b)前記乾燥機の噴出ガス流を、水蒸気またはスチームと接触させて気相混合物を得る工程、および
c)前記気相混合物を凝縮させて、揮発性芳香化合物を含む凝縮物を採取する工程
を含む、方法。
【請求項2】
工程(a)の前記ガスの温度が30℃より高い、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程(a)の絶対圧力が0.051〜0.51MPaである、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
工程(c)が、一段階の凝縮工程である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記植物材料が、茶(Camellia sinensis)、バジル(Ocimum basilicum、Ocimum sanctum、Ocimum tenuiflorum)、パセリ(Petroselinum crispum)、トウガラシおよびチリ(Capsicum annum、Capsicum fruitenscens)、ニンジン(Daucus carota)、アスパラガス(Asparagus Racemosus)、ブロッコリー(Brassica oleracea var. Italica)、シナモン(Cinnamomum aromaticum、Cinnamomum tamala、Cinnamomum zeylancium)、クルクミン(Curcuma longa)、カルダモン(Elettaria cardamomum)、バニラ(Vanilla fragrans)、ジンジャー(Zinziber officinalis)、コリアンダー(Coraindrum sativum)、ストロベリー(Fragaria vesca)、タマネギ(Allium cepa)、ニンニク(Allium sativum)、ならびにクミン(Cuminum cyminum)からなる群から選択される、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
工程(a)の前記ガスの温度が300℃未満である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
添加する水蒸気またはスチームの量が、前記気相混合物1kg当たり1g〜約500gである、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。

【公開番号】特開2011−115166(P2011−115166A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−271589(P2010−271589)
【出願日】平成22年12月6日(2010.12.6)
【出願人】(590003065)ユニリーバー・ナームローゼ・ベンノートシヤープ (494)
【Fターム(参考)】