説明

植物根寄生植物の防除方法

【課題】 所定の時期に該発芽刺激物質を放出させることが可能な製剤を用いた植物根寄生植物の防除方法を提供すること。
【解決手段】 植物根寄生植物の発芽刺激物質を含み、該発芽刺激物質の放出を制御し得る製剤を、植物栽培土壌に散布する工程を包含する、植物根寄生植物の防除方法。用いられる製剤は、通常、水との接触から2〜10日後に該発芽刺激物質の放出を開始する性質を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物根寄生植物の発芽刺激物質を含有する製剤を用いた植物根寄生植物の防除方法に関する。
【背景技術】
【0002】
植物根寄生植物であるストライガ(例えば、Striga hermonthica、S. asiatica、S. gesnerioides)、オロバンキ(例えば、Orobanche crenata、 O. ramosa、 O. cumana、O. aegyptiaca、 O. minor)などの植物根寄生植物は、アフリカ、西南アジア、欧州、豪州などでみられる。これらの植物は、主要作物の根に寄生し、作物の生育を妨げることにより、農業生産に甚大な被害を与えている。ストライガはイネ科植物(ソルガム、トウモロコシ、ミレット)等、オロバンキはナス科植物(トマト、タバコ)、キク科植物(ヒマワリ)等を宿主として寄生する。この寄生のメカニズムは、乾燥した上記寄生植物の種子が土壌において吸水した後、宿主である被寄生植物の根からの発芽刺激物質を感受して発芽し、宿主の根に寄生することであると報告されている(非特許文献1)。
【0003】
従って、ストライガやオロバンキの防除方法の一つとして、宿主となる植物を播種する前の土壌に発芽刺激物質を散布し、土壌中の根寄生植物種子を強制的に発芽させ、周囲に宿主がないために、枯死に至らしめるという方法が提案されている(非特許文献1)。この方法は、上記寄生植物が宿主に寄生することなく、独立しては生存できないことを利用している。この発芽刺激物質としては、ストリゴール、ソルゴラクトン、アレクトール、オロバンコール、ジャスモン酸、ブラシノライド、ブラシノステロイド(カスタステロン等)、ククルビン酸、ジヒドロソルゴレオン、コチレニン、フシコクシン、GR−7、GR−24、ニーメゲン−1などが挙げられる。これらの中でも、下記の天然物であるストリゴールおよびソルゴラクトン、ならびに合成物であるGR−7およびGR−24の活性が高いことが知られている。
【0004】
【化1】

【0005】
非特許文献2および3には、GR−7もしくはGR−24をアセトン懸濁液もしくは粉剤として各々土壌に散布した研究例があるが、高温下、アルカリ性土壌中でこれらの物質が急速に分解したことが報告されている。これらの発芽刺激物質はエノールエーテル部分を有しており、この結合部分が水分存在下で分解して活性を失うため、さらに、このエノールエーテル部分が太陽光で分解して活性を失うためであると考えられる。
【0006】
その為、上述の物質によって植物根寄生植物を枯死させるという防除方法は、実際には実施が難しいと考えられている。
【特許文献1】特開昭52−148635号公報
【特許文献2】特開平04−134002号公報
【特許文献3】特開2003−47432号公報
【非特許文献1】Root Research, 2003, 12, 51
【非特許文献2】Weed Research, 1987, 27, 173
【非特許文献3】Weed Research, 1988, 28, 1
【非特許文献4】Phytochemistry, 2003, 62, 1115
【非特許文献5】J. Org. Chem., 1985, 50, 628
【非特許文献6】J. Agric. Food Chem., 1992, 40, 1230
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述の通り、植物根寄生植物の被害が特に発展途上国で甚大であり、農業生産性を向上させるためには、植物根寄生植物を防除する方法が望まれている。本発明の目的は、植物の発芽刺激物質を安定に含有する製剤であって、土壌に散布後、植物根寄生植物の種子が休眠から醒める時にあわせて発芽刺激物質の放出を開始し得る製剤を用いて、植物根寄生植物を防除する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記した目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、本発明を完成するに至った。
【0009】
本発明の植物根寄生植物の防除方法は、植物根寄生植物の発芽刺激物質を含み、該発芽刺激物質の放出を制御し得る製剤を植物栽培土壌に散布する工程を包含する。
【0010】
好適な実施態様においては、上記製剤は、水との接触から2〜10日後に該発芽刺激物質の放出を開始する性質を有する。
【0011】
好適な実施態様においては、上記製剤は遮光性製剤である。
【0012】
好適な実施態様においては、上記製剤は、シームレスカプセル、軟カプセル、硬カプセル、錠剤、顆粒剤、ビーズ、キューブ、およびシートでなる群から選択される少なくとも1種の製剤である。
【0013】
好適な実施態様においては、上記製剤の表面部分は架橋処理または被覆処理されている。
【発明の効果】
【0014】
本発明の方法に用いられる製剤を植物栽培土壌に散布し、水分と接触させることにより、所定の時期に該発芽刺激物質を放出させることが可能となる。このことにより、植物根寄生植物の種子が休眠から醒める時にあわせて発芽刺激物質の放出を開始させることが可能となり、植物根寄生植物の種子を発芽させ、発芽した種子を枯死させることができる。従って、本発明の方法により、植物根寄生植物を容易に防除することが可能となり、植物根寄生植物による農業生産の被害を効果的に阻止し得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に、本発明の方法に用いられ得る製剤、および該製剤を用いた植物根寄生植物の防除方法について、順次説明する。
【0016】
(1)植物根寄生植物の発芽刺激物質を含む製剤
本発明の方法に用いられ得る製剤は、植物根寄生植物の発芽刺激物質を含み、該発芽刺激物質の放出を制御し得る製剤である。この製剤は、通常、水が実質的に存在しない状態においては該発芽刺激物質を安定に保持し、かつ水との接触により該発芽刺激物質を放出する性質を有する。この製剤は、好ましくは、水との接触により所定時間後、例えば2〜10日間に該発芽刺激物質の放出を開始する。このように、含有される発芽刺激物質の放出が制御される。このような製剤の形態は特に限定されないが、シームレスカプセル、軟カプセル、硬カプセルなどのカプセル剤;錠剤;顆粒剤;ビーズ;キューブ;シートなどの形態であり得る。
【0017】
(1.1)植物根寄生植物の発芽刺激物質
植物根寄生植物の発芽刺激物質としては、ストライガ科およびオロバンキ科の植物の発芽刺激物質が好適であり、それには、ストリゴール、ソルゴラクトン、アレクトール、オロバンコール、ジャスモン酸、ブラシノライド、ブラシノステロイド(カスタステロン等)、ククルビン酸、ジヒドロソルゴレオン、コチレニン、フシコクシン、GR−7、GR−24、ニーメゲン−1などが挙げられる。これらの中でも、天然物であるストリゴールおよびソルゴラクトン、ならびに合成物であるGR−7およびGR−24の活性が高いため、特に好適である。ストリゴール、ソルゴラクトン、GR−7、およびGR−24の構造を次に示す。
【0018】
【化2】

【0019】
(1.2)製剤の形態
(1.2.1) シームレスカプセル
シームレスカプセルは、発芽刺激物質を非水性溶媒に溶解させて得られる溶液を内容液とし、これを皮膜で取り囲む構造を有している。
【0020】
発芽刺激物質を溶解させる非水性溶媒としては、各種油脂類、脂肪酸類、糖の脂肪酸エステル、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、鎖状エーテル、高級脂肪酸エステル、高級アルコール、テルペン類等を用いることができる。具体的には大豆油、米油、胡麻油、パーム油、コーン油、ピーナッツ油、綿実油、椰子油、菜種油、オリーブ油、カカオ脂、牛脂、豚脂、馬油、鯨油、マーガリン、ショートニング、融点が40℃以下である水添油脂、脂肪酸モノグリセリド、脂肪酸ジグリセリド、脂肪酸トリグリセリド、蔗糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、石油エーテル、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ベンゼン、トルエン、キシレン、ジプロピルエーテル、エチルt−ブチルエーテル、ハロアルカン、酢酸エチル、酪酸エチル、デシルアルコール、ウンデシルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、樟脳油、薄荷油、α−ピネン、D−リモネン等を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0021】
本発明のカプセルの皮膜を形成するための基剤としては、タンパク質と水溶性多価アルコールとの混合物、タンパク質と水溶性多価アルコールと多糖類との混合物、もしくは多糖類と水溶性多価アルコールとの混合物等が挙げられる。上記タンパク質としては、例えばゼラチン、コラーゲン等があげられる。水溶性多価アルコールとしては、ソルビトール、マンニトール、グリセリン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、グルコース、フルクトース、ガラクトース、アラビノース、マンノース、ラムノース、マルトース、ラフィノース、スクロース、エリスリトール、マルチトール、トレハロース、ラクトース、キシロース等を挙げることができる。多糖類としては、寒天、ゲランガム、キサンタンガム、ローカストビーンガム、ペクチン、サイリウムシードガム、グアーガム、ファーセレラン、アラビノガラクタン、アラビノキシラン、アルギン酸塩、カラギナン、アラビアガム、デキストリン、変性デキストリン、デンプン、化工デンプン、プルラン、カルボキシメチルセルロース塩等があげられる。アルギン酸塩、ゲランガム、ペクチン、もしくはカラギナンを使用する場合は、適宜アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩などを添加してもよい。
【0022】
上記発芽刺激物質は、上記非水性溶媒中に、好ましくは10−10〜10−5モル/L、さらに好ましくは10−8〜10−6モル/Lの濃度で溶解させる。このようにして得られる溶液、および上記皮膜を形成するための基材を溶媒中に含む液状物を用い、当該分野で一般に用いられるシームレスカプセルの製造法により、発芽刺激物質を含むシームレスカプセルが調製される。例えば、特許文献1に記載されている2重ノズルを用いる滴下法で調製することができる。
【0023】
上記シームレスカプセルは、好ましくは、水との接触により2〜10日後に該発芽刺激物質を放出を開始する性質を有する。このような性質を付与するために、該カプセルの皮膜の架橋処理および該カプセルの被覆処理のうちの少なくとも一方の表面処理を行い、カプセル皮膜の水に対する崩壊速度を制御することが好ましい。
【0024】
上記皮膜の架橋処理は、タンパク質を含む皮膜の処理に好適である。例えば、従来から知られている架橋剤を用いた化学反応による架橋、あるいは酵素反応による架橋を採用することができる。
【0025】
化学反応による架橋に用いられる架橋剤としては、アルデヒド、ケトン、ミョウバン、クロムイオンを放出し得る化合物などが挙げられる。アルデヒドおよびケトンは、アルギニン、リジン、ヒスチジンなどの塩基性アミノ酸において、α−アミノ基以外の塩基性部位と反応してシッフ塩基あるいはエナミンを生じることにより、架橋を行う性能を有する。ミョウバンおよびクロムイオンは、グルタミン酸、アスパラギン酸などの酸性アミノ酸において、α−カルボキシル基以外のカルボキシル基とイオン結合を形成することにより、架橋を行う性質を有する。本発明に用いられ得る架橋剤としては、次の化合物が挙げられる:ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、グリオキサール、グルタルアルデヒド、シンナムアルデヒド、バニリルアルデヒド、アセトン、エチルメチルケトン、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、カリミョウバン、アンモニウムミョウバン、クロムミョウバン等。これらの架橋剤により皮膜の架橋処理を行う場合は、例えば上記方法により湿カプセルを調製した後、充分水洗し、架橋剤を含む水溶液に加え、皮膜表面部分の架橋を行う。
【0026】
架橋剤の使用量、作用させる時間は、架橋剤によっても異なる。具体的には、0.1〜10%、好ましくは0.5〜2%の架橋剤を含む水溶液に得られたカプセルを加え、10〜300秒間接触させる。通常、撹拌することにより効果的に接触が行われる。架橋剤を含む水溶液の質量は、カプセル質量の10〜100倍が好適である。皮膜を架橋させた後、充分水洗することにより、架橋剤を含む水溶液を除去し、皮膜中に含まれる水分を乾燥により除去することにより発芽刺激物質を含むシームレスカプセルが得られる。このようにして化学反応による架橋処理が行われる。
【0027】
酵素反応による架橋に用いられる酵素としては、トランスグルタミナーゼなどが挙げられる。トランスグルタミナーゼは、遊離アミノ基と遊離カルボキシル基とによりペプチド結合を形成させることにより架橋を達成させる機能を有する。トランスグルタミナーゼを用いて架橋を行う場合には、0.1〜10%、好ましくは0.5〜2%の該酵素を含む水溶液に、上記方法により得られた未架橋のカプセルを加え、1〜300分間接触させる。通常、撹拌することにより効果的に接触が行われる。架橋剤である酵素を含む水溶液の質量は、カプセル質量の10〜100倍が好適である。カプセルを水洗し、乾燥させることにより架橋されたシームレスカプセルが得られる。
【0028】
上記の各処理により、カプセルの表面部分が架橋され、該部分の水に対する溶解性が低下する。架橋の度合いをコントロールするためには、例えば、架橋剤との反応時間を短くすること、あるいは皮膜成分にデキストリンやデンプンを加えることにより、架橋の度合いを低くすることが可能である。逆に、架橋剤との反応時間を長くすること、あるいは皮膜成分にタンパク質のみを使用するか皮膜成分のタンパク質含有量を高くすることにより、架橋の度合いを高くすることが可能である。架橋剤のpHおよび温度を調整することにより、架橋の度合いを調整することも可能である。
【0029】
シームレスカプセルの被覆処理を行う場合は、湿カプセルを乾燥させた後、各種被覆用の基材および可塑剤を用い、常法に従って被覆処理が行われる。基材としては、次の化合物が用いられ得る:セラック、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン、ビニルピロリドン−酢酸ビニル共重合体、ゼイン、エチレンワックスなど。可塑剤としては、次の化合物あるいは材料が用いられ得る:ヒマシ油、菜種油、ジブチルフタレート、ポリエチレングリコール、グリセリン、ステアリン酸、脂肪酸エステル、ソルビタンパルミテート、ポリオキシエチレンステアレート、アセチル化モノグリセリド等。
【0030】
上記シームレスカプセルに遮光剤を含有させることも好適である。その場合には、上記皮膜および内容液の少なくとも一方に遮光剤を含有させてシームレスカプセルを調製し、あるいは、被覆処理を行う場合は該被覆膜に含有させることが可能である。遮光剤としては、例えば、二酸化チタン、酸化亜鉛、三二酸化鉄、二酸化珪素、炭酸カルシウム、タルク、雲母等をあげることができる。
【0031】
シームレスカプセルの平均粒径は、通常0.3〜10mmであり、特に本発明の高い効果を得るためには、0.5〜3mmであることが好ましい。
【0032】
このようにして得られたシームレスカプセルでは、室温で発芽刺激物質の活性を保持したまま6ヶ月以上保存することが可能であり、10℃以下で保存する場合は、1年以上の長期保存が可能である。
【0033】
(1.2.2)軟カプセル
軟カプセルは、シームレスカプセルの場合と同様、発芽刺激物質の非水性溶媒溶液を内容液とし、皮膜シートでこれを取り囲む構造を有する。
【0034】
発芽刺激物質を含む内容液は、上記シームレスカプセルの場合と同様に調製され得る。皮膜シートの材料としては、上記シームレスカプセルの皮膜の材料と同様の材料が採用され得る。軟カプセルの調製においては、この材料は、常法に従ってシートとされ、上記内容液を用いて、一般的な軟カプセルの製造方法に従って、調製される。例えば、特許文献2に記載されている方法で調製することが可能であり、皮膜シートと内容液とを用い、ロータリーダイにより軟カプセルが調製される。
【0035】
上記軟カプセルの場合も、水との接触により所定時間後、例えば2〜10日後に該発芽刺激物質の放出を開始する性質を有することが望ましい。そのために、シームレスカプセルの場合と同様、カプセルの皮膜の架橋処理および該カプセルの被覆処理のうちの少なくとも一方の処理を行い、カプセル皮膜の水に対する崩壊速度を制御することが好ましい。
【0036】
例えば、上記方法により得られた軟カプセルから、製造工程において付与された離型剤である油を、極性溶媒、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール等で洗浄することによって除去する。次いで、シームレスカプセルの場合と同様に、架橋処理および被覆処理のうちの少なくとも一方の処理を行うことにより、架橋または被覆された軟カプセルが得られる。
【0037】
さらに、シームレスカプセルの場合と同様に、遮光剤を、上記皮膜シートおよび内容液の少なくとも一方に含有させて軟カプセルを調製し、あるいは、被覆処理を行う場合は該被覆膜に含有させることが可能である。遮光剤としては、シームレスカプセルに用いられるのと同様の化合物が利用され得る。
【0038】
軟カプセルの長径は、通常3〜16mm、短径は、通常2〜10mmであり、特に本発明の高い効果を得るためには、長径が5〜7mm、短径が2〜3mmであることが好ましい。
【0039】
このようにして得られた軟カプセルでは、室温で発芽刺激物質の活性を保持したまま6ヶ月以上保存することが可能であり、10℃以下で保存する場合は、1年以上の長期保存が可能である。
【0040】
(1.2.3) 硬カプセル
硬カプセルは、あらかじめ成形して得られるカプセル本体のボディ部分に、内容物として、発芽刺激物質および賦形剤を含む粉末、あるいは発芽刺激物質および非水性溶媒を含む内容液を充填し、これにカプセル本体のキャップをかぶせて封止することにより製造される。カプセル本体の基材としては、ゼラチン、コラーゲン、メチルセルロース、セルロースアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、ポリビニルアルコール、ポリビニルアルコール−アクリルメチルエステルなどが用いられる。上記賦形剤としては、無水ケイ酸、合成ケイ酸アルミニウム、乳糖、コーンスターチ、結晶セルロースなどが挙げられる。発芽刺激物質および非水性溶媒を含む内容液としては、上記シームレスカプセルの場合と同様の内容液が用いられ得る。内容液を含有させる場合には、通常、内容液が漏出しないように、ボディ部分をキャップにより封止した後、シーリングが行われる。
【0041】
上記硬カプセルの場合も、水との接触により所定時間後、例えば2〜10日後に該発芽刺激物質の放出を開始する性質を有することが望ましい。そのために、シームレスカプセルの場合と同様、カプセル本体の架橋処理および該カプセルの被覆処理のうちの少なくとも一方の処理を行い、カプセル皮膜の水に対する崩壊速度を制御することが好ましい。
【0042】
硬カプセルの場合も、上記シームレスカプセルの場合と同様に、遮光剤を含有させることが可能である。遮光剤は、カプセルのボディ本体の製造時に該ボディ本体に含有させること、発芽刺激物質および賦形剤を含む粉末に含有させること、および内容物に含有させることが可能であり、これらのうちの少なくとも1箇所に含有させることが好ましい。被覆処理を行う場合は、該被覆膜に遮光剤を含有させることも可能である。遮光剤としては、上記シームレスカプセルの場合と同様の化合物を使用することができる。
【0043】
このようにして得られた硬カプセルでは、室温で発芽刺激物質の活性を保持したまま6ヶ月以上保存することが可能であり、10℃以下で保存する場合は、1年以上の長期保存が可能である。
【0044】
(1.2.4) マイクロカプセル
マイクロカプセルは、シームレスカプセルと同様に、発芽刺激物質を非水性溶媒に溶解させて得られる溶液を内容液とし、これを皮膜で取り囲む構造を有するが、その粒子が後述のように極めて微細であることがシームレスカプセルと異なる。
【0045】
このようなマイクロカプセルは、当該分野で一般的に用いられる方法、例えば、特許文献3に記載の方法によって製造され得る。例えば、まず、シームレスカプセルの場合と同様に、発芽刺激物質を含む非水性溶媒溶液を内容液として調製する。これを、皮膜を形成するための基材を溶媒中に含む液状物に加えて撹拌することにより、O/Wエマルションが形成される。これは、一般にコアセルベーション法として知られる方法である。
【0046】
上記マイクロカプセルの場合も、水との接触により所定時間後、例えば2〜10日後に該発芽刺激物質の放出を開始する性質を有することが望ましい。そのために、シームレスカプセルの場合と同様、マイクロカプセルの架橋処理および該カプセルの被覆処理のうちの少なくとも一方の処理を行い、カプセル皮膜の水に対する崩壊速度を制御することが好ましい。
【0047】
マイクロカプセルの場合も、上記シームレスカプセルの場合と同様に、遮光剤を含有させることが可能である。遮光剤は、上記内容液に含有させること、または皮膜形成用の液状物に含有させることが可能である。あるいは、コアセルベーションを行っている系に遮光剤を混合することも可能であり、被覆処理を行う場合は、該被覆膜に遮光剤を含有させることも可能である。上記のうちの少なくとも1つにより、遮光剤を含有させることが好ましい。遮光剤としては、上記シームレスカプセルの場合と同様の化合物を使用することができる。
【0048】
マイクロカプセルの平均粒径は、通常、0.01〜1mmであり、特に本発明の高い効果を得るためには、粒径は、0.1〜0.8mmであることが好ましい。
【0049】
このようにして得られたマイクロカプセルでは、室温で発芽刺激物質の活性を保持したまま6ヶ月以上保存することが可能であり、10℃以下で保存する場合は、1年以上の長期保存が可能である。
【0050】
(1.2.5) ビーズ
ビーズは、シームレスカプセルの製造における発芽刺激物質を含む内容液を、皮膜を形成するための基材を溶媒中に含む液状物に懸濁させ、これを球状に整形して得られる。このビーズは、当該分野で一般に利用される技術で調製することができる。例えば、上記懸濁液を、針の先から空気中を経て、凝固油中に噴出させることによって、ビーズが調製される。あるいは、後述のキューブを調製後、これを湿潤させ、温度をかけて、製丸器を用いて球状に成形することによっても得られる。
【0051】
上記ビーズの場合も、水との接触により所定時間後、例えば2〜10日後に該発芽刺激物質の放出を開始する性質を有することが望ましい。そのために、ビーズの架橋処理および被覆処理のうちの少なくとも一方の処理を行い、ビーズの水に対する崩壊速度を制御することが好ましい。例えば、得られたビーズを充分水洗し、シームレスカプセルの場合と同様に、架橋剤による架橋処理または被覆処理が行われる。
【0052】
上記各製剤の場合と同様に、上記内容液、皮膜を形成するための基材を含む液状物、および被覆剤のうちの少なくとも1つに遮光剤を含有させることも好適である。
【0053】
ビーズの平均粒径は、通常、1〜6mmであり、特に本発明の高い効果を得るためには、粒径は、1〜3mmであることが好ましい。
【0054】
このようにして得られたビーズは、室温で発芽刺激物質の活性を保持したまま6ヶ月以上保存することが可能であり、10℃以下で保存する場合は、1年以上の長期保存が可能である。
【0055】
(1.2.6) 錠剤および顆粒剤
錠剤および顆粒剤は、上記発芽刺激物質を用い、当該分野で使用される錠剤および顆粒剤の一般的な製造方法を利用して製造され得る。
【0056】
例えば、上記発芽刺激物質と汎用の製剤添加剤とを混合して、常法により錠剤または顆粒剤が製造される。製剤添加剤としては、無水ケイ酸、合成ケイ酸アルミニウム、乳糖、コーンスターチ、結晶セルロース等の賦形剤;アラビアガム、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルセルロース等の結合剤;ステアリン酸マグネシウム、タルク、無水ケイ酸等の滑沢剤;コーンスターチ、カルボキシメチルセルロースカルシウム等の崩壊剤等がある。
【0057】
上記各製剤の場合と同様に、水との接触により所定時間後、例えば2〜10日後に該発芽刺激物質の放出を開始する性質を有することが望ましい。そのために、被覆処理が行われ得る。例えば、製剤形態が錠剤の場合には、当該分野で一般に利用される技術を用いることにより、裸錠を得た後、シームレスカプセルの場合と同様の被覆処理が行われる。製剤形態が顆粒剤の場合、当該分野で一般に利用される乾式法、湿式法などの技術が採用される。例えば、湿式法のひとつである押し出し造粒法により細い円柱状の成形体を得、これを適当な長さに裁断して顆粒を得る。次いでシームレスカプセルと同様の被覆処理が行われる。
【0058】
遮光剤は、シームレスカプセルの場合と同様の化合物を使用でき、上記製剤添加剤との混合時に添加するか、上記被覆処理を行うときに該被覆剤に含有させることができる。
【0059】
錠剤の直径は、通常3〜8mm、厚みは1〜10mmであり、特に本発明の高い効果を得るためには、直径は、3〜4mm、厚みは1〜3mmであることが好ましい。
【0060】
顆粒剤の直径は、通常0.5〜2mmであり、特に本発明の高い効果を得るためには、直径は、1〜1.5mm、長さは2〜3mmであることが好ましい。
【0061】
このようにして得られた錠剤および顆粒剤では、室温で発芽刺激物質の活性を保持したまま6ヶ月以上保存することが可能であり、10℃以下で保存する場合は、1年以上の長期保存が可能である。
【0062】
(1.2.7) シートおよびキューブ
シートは、軟カプセルの製造時に調製されるシートと同様の方法でシートを調製することにより得られるが、このときに発芽刺激物質および必要に応じて遮光剤を含有させ、これらの材料を含有するシートとされる。キューブは、このようなシートをやや厚手に調製し、これを常法に従いカッティングし、立方体状とすることにより得られる。
【0063】
上記シートおよびキューブの場合も、水との接触により所定時間後、例えば2〜10日後に該発芽刺激物質の放出を開始する性質を有することが望ましい。そのために、シームレスカプセルの場合と同様、シートまたはキューブの表面部分の材料の架橋処理および被覆処理のうちの少なくとも一方の処理を行い、シートまたはキューブを構成する材料の水に対する崩壊速度を制御することが好ましい。処理後のシートおよびキューブは、充分水洗後、乾燥させる。
【0064】
さらに、上記各製剤の場合と同様に、遮光剤を、上記シートに含有させることが好ましい。被覆処理を行う場合は該被覆膜に含有させることが可能である。遮光剤としては、シームレスカプセルに用いられるのと同様の化合物が利用され得る。
【0065】
このようにして得られたシートおよびキューブは、室温で発芽刺激物質の活性を保持したまま6ヶ月以上保存することが可能であり、10℃以下で保存する場合は、1年以上の長期保存が可能である。
【0066】
(2)植物根寄生植物の発芽刺激物質を含む製剤を用いた植物根寄生植物の防除方法
上記で得られた製剤は、植物根寄生植物を枯死させる目的で、植物栽培土壌に散布される。ここで、植物栽培土壌とは、植物の栽培を目的とする土壌であって、田、畑などを包含する。上記散布量は、特に限定されないが、通常、植物栽培土壌1mあたり、発芽刺激物質換算で0.5μg〜10μgである。
【0067】
植物栽培土壌への散布により、製剤は水と接し、これにより製剤が崩壊して内容物である発芽刺激物質が放出される。製剤の崩壊速度は、上記製剤の材料の種類、架橋、被覆などの処理の度合により、任意に調節することが可能である。好適には、水との接触により、2〜10日後に製剤が崩壊し、該発芽刺激物質の放出を開始する。これにより、土壌中に存在していた植物根寄生植物の種子の発根が生じる。しかし、土壌中には、寄生する植物の根が存在しないため、かつ土壌から養分を吸収できないため、発根した植物根寄生植物は枯死する。上記発芽刺激物質の放出は、通常10〜20日後に終了するように設計される。
【0068】
上記製剤による植物根寄生植物の発芽刺激物質の発芽誘導および放出挙動は、生物学的または化学的に評価することができる。例えば、生物学的には、ストライガの種子を用いて評価することができ、化学的には、高速液体クロマトグラフィー等での評価を行うことができる。
【実施例】
【0069】
本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが,本発明は以下の実施例に限定されない。なお、実施例及び比較例において「%」は質量基準である。
【0070】
発芽刺激物質として用いているストリゴールは、以下のようにして得た。
【0071】
コウモリカズラ(Menispermum dauricum)の根をガンボルグB5培地中で6週間培養して得た培養液より非特許文献4に記載の方法により単離した。ストリゴール含有量は、非特許文献5に記載の方法で得られたものを標品として高速液体クロマトグラフを用いて定量した。(クロマト条件、カラム:CN(250´4.6mm)、溶離液: MeOH:HO=50:50、流速:0.5mL/分、検出器: UV (240 nm))。発芽刺激物質として用いているGR−24は、非特許文献6に記載の方法により得た。
【0072】
(実施例1.1)シームレスカプセルの製造
GR−24の10mgを大豆油1kgに溶解させ、シームレスカプセルの内容液を得た。シームレスカプセルの外層の調製に用いる皮膜材料懸濁液は、ゼラチン350g、二酸化チタン(平均粒径270nm)50g、および分子量が約400であるポリエチレングリコール100gを蒸留水2kgに加え、60℃にて攪拌して懸濁させることにより得た。
【0073】
上記内容液を、二重管ノズルの内側ノズルから、60℃に加熱した皮膜材料懸濁液を外側のノズルから同時に噴出させ、形成される2層構造の液滴を12℃の凝固油中に滴下した後、冷却して、湿カプセルを得た。得られた湿カプセルから凝固油を除いた後、充分水洗した。得られたカプセル500gを、0.5%のグルタルアルデヒド水溶液10L中に加えて、20℃で30秒間撹拌し、架橋を行った。カプセルを回収し、水洗後、ドラム乾燥することにより、粒径2mmのシームレスカプセルを240g得た。
【0074】
(実施例1.2)軟カプセルの製造
ストリゴール10mgをナタネ油300gに溶解させて、軟カプセルの内容液を得た。軟カプセルの皮膜に用いるゼラチン膜は、ゼラチン370g、二酸化チタン(平均粒径270nm)20g、グリセリン100gを、蒸留水200gに加えて、60℃で攪拌して懸濁させ、これをシート状に成形することにより得た。このゼラチン膜が一対の回転円筒型金型の間に送られ、これと連動するポンプで内容液をゼラチン膜間に噴出することにより、カプセルの調製を行った。得られたカプセル400gを転動造粒器に入れ、セラック10gおよびヒマシ油1gをメタノール−酢酸エチル(1:1)混液400gに溶解させた溶液を、被覆膜厚0.3mmとなるように噴霧した。このようにして、長径4mm、短径3mmの被覆軟カプセルを400g得た。
【0075】
(実施例1.3)硬カプセルの製造
ストリゴール10mgをコーンスターチ300gに分散させて、硬カプセルの内容物を得た。硬カプセルの本体としては、市販の二酸化チタン含有局方5号のカプセルを用いた。上記内容物を常法によりカプセル本体に充填し、得られたカプセル100gを転動造粒器に入れ、セラック10gおよびヒマシ油1gを1:1メタノール−酢酸エチル混液400gに溶解させたものを、被覆膜厚0.3mmとなるように噴霧し、被覆硬カプセルを100gを得た。
【0076】
(実施例1.4)コアセルべーション法を用いたマイクロカプセルの製造
ゼラチン85g、アラビアガム9g、酸化亜鉛5gおよび蒸留水810gを50℃で混合し、36℃に冷却した。得られた水性液に、GR−24を0.01%の割合で含有する大豆油750gを混合し、撹拌することにより0.2mmの粒径の油滴を形成させた。次いで、これに36℃の蒸留水4kgを添加した。得られた混合物をゆっくり20℃に冷却し、該混合物の5倍容量のトランスグルタミナーゼ(味の素(株)製:アクティバTG−S)1%水溶液を添加して、300分間撹拌し、架橋を行った。生じた固体を濾過によって回収し、乾燥することにより、約0.4mmの粒径のマイクロカプセルを1.2kg得た。
【0077】
(実施例1.5)錠剤の製造
ストリゴール10mg、乳糖250g、コーンスターチ45gおよびカルボキシメチルセルロースカルシウム20gを転動造粒機に入れ、予熱混合し、ヒドロキシプロピルセルロース1.7gを含む水溶液34gをスプレーして、造粒末を得た。ここにカルボキシメチルセルロースカルシウム100gおよびタルク40gを加えて混合し、この混合末を打錠機により打錠し、裸錠を得た。メタノール800gにセラック40gおよびヒドロキシプロピルメチルセルロース40gを溶解させ、得られた溶液に酸化亜鉛10gを分散させて被覆液を得た。上記裸錠にこの被覆液を噴霧し、被覆膜厚0.3mmの錠剤を得た。
【0078】
(実施例1.6)顆粒剤の製造
実施例1.5と同様の操作により、ストリゴール、乳糖、コーンスターチ、およびカルボキシメチルセルロースカルシウムを含み、ヒドロキシプロピルセルロースでコートされた造粒末を得た。この造粒末を、押出成型器を用いて顆粒とした。これとは別に、メタノール800gにセラック40gおよびヒドロキシプロピルメチルセルロース40gを溶解させ、得られる溶液に二酸化チタン10gを分散させ、被覆液を得た。次いで、上記顆粒にこの被覆液を噴霧し、被覆膜厚0.3mmの顆粒剤を得た。
【0079】
(実施例1.7)ビーズの製造
ストリゴール10mg、ゼラチン225g、二酸化チタン(平均粒径 270nm)15g、およびグリセリン60gを、蒸留水400gに60℃において溶解させ、これを厚さ1.3mmのシートに成形した。得られたシートを1.3mm角に裁断した後、充分水洗し、35℃に暖めた製丸器を用いてビーズとした。得られたビーズ50gを、1Lの0.5%のグルタルアルデヒド水溶液中に加えて20℃で40秒間撹拌して架橋させた。ビーズを再度水洗後、ドラム乾燥することにより、粒径1mmのビーズを21g得た。
【0080】
(実施例2.1〜2.7)各種製剤の製造
遮光剤である二酸化チタンまたは酸化亜鉛の代わりにデキストリンを用いたこと以外は、各々実施例1.1〜1.7と同様に操作し、各々の形態の製剤を得た。実施例2.3においては、二酸化チタンを含有せずデキストリンを含有すること以外は局方5号と同様のカプセルを用いた。
【0081】
(比較例1.1〜1.7)各種製剤の製造
架橋を行わなかったこと、あるいは被覆を行わなかったこと以外は、各々実施例1.1〜1.7と同様に操作し、各種製剤を得た。
【0082】
(実施例3)生物学的活性試験1
実施例1.1〜1.7、実施例2.1〜2.7、および比較例1.1〜1.7で得られた製剤を、次に示すストライガ(S. hermonthica)の種子の発芽活性試験に供した。
【0083】
ストライガ種子を、滅菌、洗浄した後、乾燥させた。乾燥させたストライガの種子を、直径8mmの滅菌したグラスフィルターペーパー上に約50粒のせ、これに水を含ませて30℃で24時間種子に充分吸水させた。その後、90mmの濾紙に蒸留水を含ませておき、その中心に上記実施例または比較例の製剤(軟カプセル、硬カプセル、錠剤については1粒、それ以外の製剤では10mg)を載置し、中心から同心円上の所定の距離の位置に種子を載せたグラスフィルターペーパーを1個ずつ載置した。濾紙の中心から各グラスフィルターペーパーの中心までの距離は、10mm、16mm、および24mmであった。蛍光灯により96時間照射(5000ルクス)を行った後、実体顕微鏡(倍率30倍)を用いてストライガ種子の発芽数を調べ、発芽率を計算した。濾紙の中心からの各距離におけるグラスフィルターペーパー上の、ストライガ種子の発芽率を表1に示す。
【0084】
【表1】

【0085】
表1から、いずれの実施例においても96時間(4日)後に良好な発芽率が観察されることから、製剤中の発芽刺激物質は光や水の影響を受けて分解せず、96時間後まで活性を保持していることがわかる。特に遮光剤を含む実施例1.1〜1.7の製剤は、その性能が高いことがわかる。
【0086】
(実施例4)生物学的活性試験2
実施例1.1〜1.7で得られた製剤を用い、実施例3に準じて発芽試験を行った。この試験は、90mmの濾紙に含ませる蒸留水を、0.05Mトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン−塩酸(pH8.0)緩衝液に変更したこと以外は、実施例3と同様である。ストライガ種子の発芽率を表2に示す。
【0087】
【表2】

【0088】
表2から、pH8.0緩衝液を用いた系においても実施例の製剤から放出される発芽刺激物質が根寄生植物の発芽に対して効果を与えたことがわかる。
【0089】
(実施例5)生物学的活性試験3
実施例1.1〜1.7、および実施例2.1〜2.7で得られた製剤を静置し、蛍光灯照射下(5000lux)、40℃にて3ヶ月間保持した。次いで、実施例3と同様の試験を行い、ストライガ種子の発芽率を計算した。その結果を表3に示す。
【0090】
【表3】

【0091】
表3から、遮光剤を含む製剤は、より長期間にわたり該製剤中の発芽刺激物質の活性を保持し得ることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0092】
本発明によれば、発芽刺激物質の放出が制御可能な製剤が植物栽培土壌に散布される。そのため、植物根寄生植物の種子が休眠から醒める時にあわせて発芽刺激物質の放出を開始させることが可能となり、宿主植物の根が無い時に植物根寄生植物の種子を発芽させ、発芽した種子を枯死させることができる。従って、本発明の方法により、植物根寄生植物を容易に防除することが可能となり、植物根寄生植物による農業生産の被害を効果的に阻止し得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物根寄生植物の発芽刺激物質を含み、該発芽刺激物質の放出を制御し得る製剤を植物栽培土壌に散布する工程を包含する、植物根寄生植物の防除方法。
【請求項2】
前記製剤が、水との接触から2〜10日後に該発芽刺激物質の放出を開始する性質を有する、請求項1に記載の植物根寄生植物の防除方法。
【請求項3】
前記製剤が遮光性製剤である請求項1または2に記載の植物根寄生植物の防除方法。
【請求項4】
前記製剤が、シームレスカプセル、軟カプセル、硬カプセル、錠剤、顆粒剤、ビーズ、キューブ、およびシートでなる群から選択される少なくとも1種の製剤である、請求項1から3のいずれかに記載の植物根寄生植物の防除方法。
【請求項5】
前記製剤の表面部分が架橋処理または被覆処理されている、請求項4に記載の防除方法。

【公開番号】特開2006−282513(P2006−282513A)
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−100896(P2005−100896)
【出願日】平成17年3月31日(2005.3.31)
【出願人】(000191755)森下仁丹株式会社 (30)
【Fターム(参考)】