説明

植物栽培システム

【課題】暗期の二酸化炭素濃度の上昇を抑制できると共に、明期の二酸化炭素濃度の低下を抑制できて、植物の生育を良好なものにでき、しかも、それを、無駄のない合理的な構成によって実現できる植物栽培システムを提供する。
【解決手段】栽培用光源7が備えられた第1、第2の各室1,2と、ファン8,9と、制御部12とが備えられ、制御部12は、光源7が点灯した明期と、光源7が消灯した暗期とを、第1室1と第2室2のうちの一方の室が明期のとき、もう一方の室が暗期となるよう、各室1,2において交互に繰り返す制御を、各室の光源7に対して行うと共に、第1室1が明期、第2室2が暗期であるとき、第2室2の空気が第1室1に送り込まれ、逆のとき、第1室1の空気が第2室2に送り込まれるよう、ファン8,9の駆動を制御するようになされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物工場などにおいて用いられる植物栽培システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば植物工場では、栽培用の室に光源を設け、該室において、光源が点灯した明期と、光源が消灯した暗期とを、交互に繰り返していくことで、植物を生育させていくことが行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−93010号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のような方法では、植物の行う呼吸と光合成とによって、暗期に、局所的に二酸化炭素の濃度が上昇しすぎたり、明期に、局所的に二酸化炭素の濃度が低下しすぎたりして、植物の生育に悪影響を及ぼすことがある。
【0005】
本発明は、このような問題に鑑み、暗期の二酸化炭素濃度の上昇を抑制することができると共に、明期の二酸化炭素濃度の低下を抑制することができて、植物の生育を良好なものにすることができ、しかも、それを、無駄のない合理的な構成によって実現することができる植物栽培システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題は、栽培用光源が備えられた植物栽培用の第1室と、同じく栽培用光源が備えられた植物栽培用の第2室と、第1室の空気を第2室に送るファンと、第2室の空気を第1室に送るファンと、制御部とが備えられ、
前記制御部は、
栽培用光源が点灯した明期と、栽培用光源が消灯した暗期とを、第1室と第2室のうちの一方の室が明期のとき、もう一方の室が暗期となるよう、各室において交互に繰り返す制御を、各室の光源に対して行う光源制御と、
第1室が明期、第2室が暗期であるとき、第2室の空気が第1室に送り込まれ、第1室が暗期、第2室が明期であるとき、第1室の空気が第2室に送り込まれるよう、前記ファンの駆動を制御するファン制御と
を行うようになされていることを特徴とする植物栽培システムによって解決される(第1発明)。
【0007】
このシステムでは、暗期の室の二酸化炭素濃度の高い空気が、明期の室に送り込まれるようファンの制御が行われる構成となっているから、それにより、暗期の室の二酸化炭素濃度の上昇が抑制されると共に、明期の室の二酸化炭素濃度の低下が抑制されて、第1,第2の各室における植物の生育をいずれも良好なものにすることができる。
【0008】
しかも、明期の室での二酸化炭素濃度の低下を、二酸化炭素濃度を上昇させようとする暗期の室の空気を明期の室に送り込むことで抑制し、この送込みによって暗期の室での二酸化炭素濃度の上昇を抑制する構成となっているので、無駄のない合理的な構成によって、植物の生育を良好なものにすることができる。
【0009】
第1発明において、暗期の室から明期の室への前記ファンによる空気の送込み作用によって、明期の室が正圧となるように構成されている場合は(第2発明)、明期の室をクリーンな状態に保ちやすくすることができる。
【0010】
第1,第2発明において、前記第1,第2の各室にエアコンが設けられ、
前記制御部は、明期の室の室温が暗期の室の室温よりも高くなるよう、各エアコンの運転を制御するエアコン制御を行うようになされているとよい(第3発明)。
【0011】
この場合は、ファンにより、暗期の室の二酸化炭素が明期の室に送り込まれるのと併せて、暗期の室の冷気も明期の室に送り込まれて、明期の室における温度上昇と湿度低下を抑制して明期の室における植物の光合成の速度を向上することができ、また、暗期の室における湿度上昇を抑えることができる。
【0012】
第1〜第3発明において、第1,第2の各室に二酸化炭素を供給する二酸化炭素供給源が備えられ、
前記制御部は、明期の室に対して、二酸化炭素供給源から二酸化炭素が供給され、暗期の室に対して、二酸化炭素供給源からの二酸化炭素の供給が停止状態にされるよう、二酸化炭素供給源からの二酸化炭素の供給を制御する二酸化炭素供給制御を行うようになされているとよい(第4発明)。
【0013】
この場合は、暗期の室の二酸化炭素濃度の高い空気が、明期の室に送り込まれるようファンの制御が行われる構成となっていることとの組み合わせで、二酸化炭素供給源からの二酸化炭素の供給を少なくすることができる。
【0014】
第4発明において、第1,第2の各室に、二酸化炭素濃度を検知するセンサーが備えられ、
前記制御部は、明期の室における該センサーからの検知信号に基づいて、二酸化炭素濃度が設定濃度以下よりも低いとき、二酸化炭素供給源に、明期の室に対して二酸化炭素の供給を行わせ、二酸化炭素濃度が設定濃度以上であるとき、二酸化炭素供給源に、明期の室に対する二酸化炭素の供給を停止させる制御を行うようになされているとよい(第5発明)。
【0015】
この場合は、制御部によるこのような制御によって、二酸化炭素供給源からの二酸化炭素の供給を、自動で、実際に、少なくすることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、以上のとおりのものであるから、暗期の二酸化炭素濃度の上昇を抑制することができると共に、明期の二酸化炭素濃度の低下を抑制することができて、植物の生育を良好なものにすることができ、しかも、それを、無駄のない合理的な構成によって実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図(イ)は実施形態の植物栽培システムを示す説明平面図、図(ロ)は各室における明期と暗期の切換えの態様を示す表図である。
【図2】図(イ)及び図(ロ)はそれぞれ、制御によるシステムの作動状態を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0019】
図1(イ)に示す実施形態の植物栽培システムにおいて、1は植物栽培用の第1室、2は同第2室であり、第1室1と第2室2とは、互いに隣り合うようにして間仕切り3で仕切られて備えられていると共に、これら第1室1と第2室2との両方に隣り合うように前室4が備えられ、前室4も、第1,第2の各室1,2に対して間仕切り5で仕切られて備えられている。
【0020】
そして、第1、第2の各室1,2にはそれぞれ、植物栽培用の棚6と、該棚6で栽培される植物に光を供給するLED等の栽培用光源7が設けられている。
【0021】
また、第1室1と第2室2とを仕切っている間仕切り3には、第1室1の空気を第2室2に送り込む第1ファン8と、第2室2の空気を第1室1に送り込む第2ファン9とが設けられている。なお、正逆回転駆動可能なファンが用いられてもよい。
【0022】
更に、第1、第2の各室1,2にはそれぞれ、エアコン10が設けられている。
【0023】
また、前室4には二酸化炭素供給源としてのボンベ11が設けられ、二酸化炭素を、第1室1に供給したり、第2室2に供給したりすることができるようになされている。
【0024】
そして、各室1,2の栽培用光源7の点灯消灯制御、ファン8,9の駆動制御、各室1,2のエアコン10の運転制御、及び、二酸化炭素ボンベ11からの二酸化炭素の供給制御を行うため、制御部12が備えられている。
【0025】
即ち、該制御部12は、栽培用光源7が点灯した明期と、栽培用光源7が消灯した暗期とを、第1室1と第2室2のうちの一方の室が明期のとき、もう一方の室が暗期となるよう、各室1,2において交互に繰り返す制御を、各室1,2の光源7,7に対して行うようになされている。具体的には、例えば、図1(ロ)に示すように、明期と暗期とが12時間おきに繰り返されるように制御される。
【0026】
また、制御部12は、図2(イ)に示すように、第1室1が明期、第2室2が暗期であるとき、第2室2の空気が第1室1に送り込まれ、図2(ロ)に示すように、第1室1が暗期、第2室2が明期であるとき、第1室1の空気が第2室2に送り込まれるよう、ファン8,9の駆動を制御するようになされている。この制御において、本実施形態では、前室4と第1室1とを仕切っている仕切り部に、扉のアンダーカット部などからなる通気口が設けられると共に、前室4と第2室2とを仕切っている仕切り部にも、同様に通気口が設けられ、暗期の室から明期の室へのファン8,9による空気の送込み作用によって、明期の室が正圧となるように構成されている。なお、前室4には、全熱交換器の備えられたファン付き換気口13が備えられている。
【0027】
更に、制御部12は、明期の室の室温が暗期の室の室温よりも高くなるよう、第1,第2の各室1,2のエアコン10,10の運転を制御するようになされている。具体的には、例えば、明期の室の室温が25°C、暗期の室の室温が18°Cとなるように制御される。
【0028】
また、制御部12は、明期の室に対して、二酸化炭素ボンベ11から二酸化炭素が供給され、暗期の室に対して、二酸化炭素ボンベ11からの二酸化炭素の供給が停止状態にされるよう、二酸化炭素ボンベ11からの二酸化炭素の供給が制御されるようになされている。
【0029】
特に、本実施形態では、図1(イ)に示すように、第1,第2の各室1,2のそれぞれに、二酸化炭素濃度を検知するセンサー14が備えられ、制御部12は、明期の室における該センサー14からの検知信号に基づいて、二酸化炭素濃度が設定濃度以下よりも低いとき、二酸化炭素ボンベ11に、明期の室に対して二酸化炭素の供給を行わせ、二酸化炭素濃度が設定濃度以上であるとき、二酸化炭素ボンベ11に、明期の室に対する二酸化炭素の供給を停止させる制御を行うようになされている。なお、図1(イ)における太線矢印は、管理者動線をあらわす。
【0030】
上記のシステムでは、暗期の室の二酸化炭素濃度の高い空気が、明期の室に送り込まれるようファン8,9の駆動制御が行われる構成となっているから、暗期の室の二酸化炭素濃度の上昇が抑制されると共に、明期の室の二酸化炭素濃度の低下が抑制され、それにより、第1,第2の各室における植物の生育をいずれも良好なものにすることができる。
【0031】
しかも、明期の室での二酸化炭素濃度の低下を、二酸化炭素濃度を上昇させようとする暗期の室の空気を明期の室に送り込むことで抑制し、この送込みによって暗期の室での二酸化炭素濃度の上昇を抑制する構成としているので、無駄のない合理的な構成によって、植物の生育を良好なものにすることができる。
【0032】
また、暗期の室から明期の室へのファン8,9による空気の送込み作用によって、明期の室が正圧となるように構成されているので、明期の室をクリーンな状態に保ちやすくすることができる。
【0033】
更に、ファン8,9との組み合わせによるエアコン10,10を用いた室温制御によって、明期の室における温度上昇と湿度低下を抑制して明期の室における植物の光合成の速度を向上することができ、また、暗期の室における湿度上昇を抑えることができる。
【0034】
また、暗期の室の二酸化炭素濃度の高い空気が、明期の室に送り込まれるようファン8,9の駆動の制御が行われる構成となっていることとの組み合わせで、二酸化炭素ボンベ11からの二酸化炭素の供給を少なくすることができると共に、二酸化炭素濃度センサー14,14を用いた二酸化炭素の供給制御によって、二酸化炭素ボンベ11からの二酸化炭素の供給を、自動で、実際に、少なくすることができる。
【符号の説明】
【0035】
1…第1室
2…第2室
7…栽培用光源
8,9…ファン
10…エアコン
11…二酸化炭素ボンベ(二酸化炭素供給源)
12…制御部
14…二酸化炭素センサー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
栽培用光源が備えられた植物栽培用の第1室と、同じく栽培用光源が備えられた植物栽培用の第2室と、第1室の空気を第2室に送るファンと、第2室の空気を第1室に送るファンと、制御部とが備えられ、
前記制御部は、
栽培用光源が点灯した明期と、栽培用光源が消灯した暗期とを、第1室と第2室のうちの一方の室が明期のとき、もう一方の室が暗期となるよう、各室において交互に繰り返す制御を、各室の光源に対して行う光源制御と、
第1室が明期、第2室が暗期であるとき、第2室の空気が第1室に送り込まれ、第1室が暗期、第2室が明期であるとき、第1室の空気が第2室に送り込まれるよう、前記ファンの駆動を制御するファン制御と
を行うようになされていることを特徴とする植物栽培システム。
【請求項2】
暗期の室から明期の室への前記ファンによる空気の送込み作用によって、明期の室が正圧となるように構成されている請求項1に記載の植物栽培システム。
【請求項3】
前記第1,第2の各室にエアコンが設けられ、
前記制御部は、明期の室の室温が暗期の室の室温よりも高くなるよう、各エアコンの運転を制御するエアコン制御を行うようになされている請求項1又は2に記載の植物栽培システム。
【請求項4】
第1,第2の各室に二酸化炭素を供給する二酸化炭素供給源が備えられ、
前記制御部は、明期の室に対して、二酸化炭素供給源から二酸化炭素が供給され、暗期の室に対して、二酸化炭素供給源からの二酸化炭素の供給が停止状態にされるよう、二酸化炭素供給源からの二酸化炭素の供給を制御する二酸化炭素供給制御を行うようになされている請求項1乃至3のいずれか一に記載の植物栽培システム。
【請求項5】
第1,第2の各室に、二酸化炭素濃度を検知するセンサーが備えられ、
前記制御部は、明期の室における該センサーからの検知信号に基づいて、二酸化炭素濃度が設定濃度以下よりも低いとき、二酸化炭素供給源に、明期の室に対して二酸化炭素の供給を行わせ、二酸化炭素濃度が設定濃度以上であるとき、二酸化炭素供給源に、明期の室に対する二酸化炭素の供給を停止させる制御を行うようになされている請求項4に記載の植物栽培システム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−249612(P2012−249612A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−126612(P2011−126612)
【出願日】平成23年6月6日(2011.6.6)
【出願人】(390037154)大和ハウス工業株式会社 (946)
【Fターム(参考)】