説明

植物栽培用の培土

【課題】育苗や園芸に用いる培土に関する。従来の軽量化培土は、軽石やパーライトなどの比重の軽い材料の混合割合が多く、培土の価格が高くなり、農家の経済的負担が増大するという問題があることに鑑み、天然の土に比較的少ない量の材料を添加することにより、経済的に、従来の培土に比べて軽量でかつ育苗に特に適した物理的及び化学的性質を備え、かつ作業性にも優れた植物栽培用の培土を得る。
【解決手段】天然に採取した土を主材として、乾燥した土に、炭4〜5重量%、パーライト2〜3重量%及びヤシ殻3〜5重量%を混合してなるものである。土、炭及びパーライトに水を加えて加熱環境下で均一に混合することにより殺菌・乾燥して粒状とし、この粒状物にヤシ殻と必要な肥料を混合して商品とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、育苗や園芸に用いる培土に関するものである。
【背景技術】
【0002】
土は、岩石が風化や自然の営力(水力、風力など)による浸食作用や運搬作用によって平坦化を受け、堆積してできたもので、自然地盤の土は、SiO、Alを主成分とする無機質の混合物で、粒度によって砂、シルト、粘土に分類され、それらの混合割合により、排水性、保水性、通気性、pHなどが異なる。培土としては、粗砂80〜90重量%、シルト15重量%以下、粘土5%以下のものが多く用いられている。
【0003】
育苗や園芸に用いる培土は、天然に存在する土を主成分として通気性や保水性を改善するための材料や植物の生育に必要な養分を備えた材料などを混合したものであり、排水性や通気性を付与するために粒状化することも行われている。
【0004】
園芸に用いる培土は、育てる植物の性質に合せて種々の材料を混合しているため、多種多様のものが提供されているが、育苗に用いる培土は、わが国の土に適した植物の栽培に用いるものであるから、ほぼ近似した物理的ないし化学的性質を備えたものが多く、天然から採取した土を主材として、それにピートモス、パーライト、腐葉土などを混合したものが多く用いられている。なお、特許文献1には、軽石、ピートモス、堆肥、パーライト、赤玉土、バーミキュライト、バーク、椰子がら、くん炭、ゼオライトから選択された材料を混合してなる園芸用の培土が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−84877号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
育苗用の培土は、その物理的及び化学的性質が育苗に適していることは当然のこととして、作業負担が少ないことや価格が安いことが望まれる。作業性の点において、従来の育苗用の培土は、比重が重く、農業人口の高齢化に伴って、土を入れた育苗箱を運搬する際の作業負担が大きいという問題が生じていた。
【0007】
培土を軽量化するには、例えば軽石やパーライトなどの比重の軽い材料を多く混合するなどによって容易に実現可能であるが、単にこれらの材料の混合割合を多くしただけでは保水性や通気性の点で問題が生じるなど、育苗用の培土として必要な他の物理的ないし化学的性質とのバランスが崩れるという問題がある。また、これらの材料の混合割合を多くすると、培土の価格が高くなり、農家の経済的負担が増大するという問題が生じる。
【0008】
この発明は、これらの従来の培土の問題点を解決するためになされたもので、天然の土に比較的少ない量の材料を添加することにより、従って経済的に、従来の培土に比べて軽量でかつ育苗に特に適した物理的及び化学的性質を備え、かつ作業性にも優れた植物栽培用の培土を得ることを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明の植物栽培用培土は、天然に採取した土を主材として、乾燥した土に、炭4〜5重量%、パーライト2〜3重量%及びヤシ殻3〜5重量%を混合してなるものである。
【0010】
土は、培土として従来から用いられている天然の土である。上記の組成を備えたこの発明の培土における乾燥した土の割合は、87〜91重量%である。使用する材料の性質にもよるが、最も好ましい混合割合は、乾燥重量で、土88重量%、炭5重量%、パーライト3重量%、ヤシ殻4重量%である。
【0011】
炭は、粉末状の木炭であって、比重が軽いという利点がある。炭の混合割合が上記の範囲より多いと、育苗箱に詰めた培土にかん水したとき、育苗箱から黒い水が流れ出て作業性が悪くなる。また、土に混ぜて回転キルンで造粒するとき、土にうまく入り込まず、分離したり余分のものが燃えてしまったりする。
【0012】
パーライトは、溶岩が急冷されてできたガラス質火山岩と呼ばれる岩石を砕いたもので、加熱により膨張する性質を持っており、一般的には真珠岩や黒耀岩を加熱して発泡させて作られる。性質は、きわめて軽量で断熱性、保温性がよく、吸水性に優れ、完全な不燃性である。パーライトは、5重量%以上混ぜると、回転キルンで造粒する際、土にうまく入り込まないで白い粉となって残り、育苗箱に詰めた培土にかん水すると、造粒されないで残ったパーライトが流れ出てしまうため、一般的には3重量%程度が上限と考えられる。パーライトを混ぜることの利点は、比重が軽く、pHが5.0前後で、培土を育苗に適したpHに調整できることである。
【0013】
ヤシ殻(ココピート)は、椰子の実からマットやロープを作るための繊維を採取した後の残りかすで、比重の軽い繊維質で容易に燃える。ヤシ殻は、殺菌や造粒をする前に混ぜると回転キルンで加熱する際に燃えてしまうので、土と炭とパーライトとの混合物を殺菌や造粒をしたあとで混合するのが製造の点で便利である。混合比率が多いと、土の比重の違いから、製品を貯留するタンク内や流通時に使用する袋内で分布に偏りができ、使用時に培土の均質性が保証できなくなる。ヤシ殻を混合することの利点は、保水性が良いこと、軽量であること、pHが5前後で育苗に適していることである。
【0014】
この発明の培土は、適切な大きさ(1〜3mm)に粒状化するのが好ましいが、粒状化の過程での加熱殺菌の際にヤシ殻が燃えやすく、技術的な困難を伴うため、土、炭及びパーライトを加熱環境下で均一に混合することにより殺菌及び乾燥して粒状とし、この粒状物にヤシ殻と必要な肥料を混合して商品とするのがよい。
【発明の効果】
【0015】
この発明の植物栽培用培土は、天然の土を主材とし、比較的少ない人工の材料の添加により、軽量でかつ育苗に適した物理的及び化学的性質を備えた培土を得ることができる。軽量であるために高齢化した農家における作業負担が軽減され、添加する材料が比較的少量であるために経済的であり、添加した材料が水で流れ出したり、偏在したりすることがないので、均質で作業性に優れかつ流失や偏在による材料の無駄がない。
【0016】
また、この発明の培土は、育苗時のかん水に対しても吸水が良く、溜まり水もできず、保水性、通気性、肥料の保持性、pHなどの点でも植物の栽培に適した性質を備えている。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の培土の製造工程の一例を示すブロック図
【発明を実施するための形態】
【0018】
この発明の最も好ましい実施形態の一例を、図1を参照して、以下に説明する。
【0019】
乾燥重量で、原土88重量%、炭5重量%及びパーライト3重量%を混合して水を加えて練ったものを回転キルン1内で加熱しながら混合することにより、殺菌、混合及び造粒を行う。
【0020】
原土は地中から採取した有機物を含まない土で、粗砂50重量%、細砂43重量%、シルト4重量%、粘土3重量%である。
【0021】
回転キルン1から排出された塊状物を破砕機2で粉砕し、篩い分け機3で篩い分けすることによって、粒度を揃える。粒度の外れたものは、回転キルンに投入する前の工程に戻して原料として再使用する。好ましい粒度範囲は直径1〜2mmである。所定粒度範囲に揃えた粒状の土は、冷却したあと再度、篩い分けし、その後、4重量%のヤシ殻を加えて混合し、本発明の培土を得る。
【0022】
育苗土には必要な肥料を添加しておくことが好ましいので、ヤシ殻を添加して混合する際に必要な肥料を同時に添加して混合し、得られた混合物を包装(袋詰め)して製品とする。
【符号の説明】
【0023】
1 回転キルン
2 破砕機
3 篩い分け機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭4〜5重量%、パーライト2〜3重量%、ヤシ殻3〜5重量%を含む植物栽培用の培土。
【請求項2】
炭とパーライトとを含みかつヤシ殻を含まない粒状の土と、ヤシ殻とを混合してなる、請求項1記載の植物栽培用の培土。

【図1】
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【公開番号】特開2011−250739(P2011−250739A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−126836(P2010−126836)
【出願日】平成22年6月2日(2010.6.2)
【出願人】(510153685)北陸産業株式会社 (1)
【Fターム(参考)】