説明

植物栽培用ゲル培地および植物栽培方法

【課題】土を用いずに低コストにて植物を良好に栽培することを可能にする植物栽培用ゲル培地および植物栽培方法を提供する。
【解決手段】本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、ゲル基剤としてイオタ型のカラギナンを含むゲル培地を用いれば、植物の根を良好に張らせることができることを見出した。すなわち、本発明は、イオタ型のカラギナンを含む植物栽培用ゲル培地を提供し、土を用いずに低コストにて植物を良好に栽培することを可能にする。また、本発明は、少なくとも鉄を含有するミネラルをさらに含む、上記植物栽培用ゲル培地を提供する。さらに、本発明は、上記植物栽培用ゲル培地に植物を播種することを含む、植物栽培方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、土を用いずに植物を栽培するためのゲル培地および栽培方法に関する。
【背景技術】
【0002】
土を用いずに植物を栽培する技術は、これまでにいくつか知られている。たとえば、水耕栽培は、固形培地を用いずに、植物の成長に必要な養水分を液肥として与える栽培方法である。水耕栽培では、養分循環システムよって植物の成長に必要な養分を液肥として与えることができ、また施設管理を充実することにより、年間を通じて安定した生産も可能となった。この水耕栽培のためには、多くの技術が開発されており、実用化されている。
【0003】
水耕栽培は、水溶液中で植物を栽培する方法であるが、その他の技術として、たとえば特許文献1には、種子をゲル培地に播種するホウレンソウの栽培方法が記載されている。このホウレンソウの栽培方法は、出荷時束中の株数を1つのゲル培地に播種することを特徴としており、種子の無駄がないホウレンソウの栽培を目的としている。
【0004】
また、特許文献2には、架橋ポリオレフィン多孔体を含む植物栽培用マトリックスが記載されている。この技術では、架橋ポリオレフィン多孔体を種々の用土と混合して使用している。
【0005】
また、特許文献3には、空孔の平均孔径が0.1〜2mmの多孔質性の親水性高分子化合物からなる植物栽培用材料が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10-191724号公報
【特許文献2】特開2001-186815号公報
【特許文献3】特開2002-045032号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
水耕栽培では、水が多量に必要となる。また、溶液中に肥料分や酸素を供給するために絶えず水を循環させ、空気を送らなければならない。このため、ポンプを駆動するためのエネルギーが必要となってしまい、ランニングコストが高いという問題があった。また、水耕栽培では、水が腐敗してしまうのを避けるために、多量の抗生物質を使用したり、無菌状態に保ったりするためにも、費用がかかってしまった。
【0008】
上記課題を解決するため、土を用いないが、水耕栽培とは異なる植物を栽培する方法の開発が試みられている。しかし、特許文献1に記載された方法では、収穫前に圃場に移植しなければならないため、最終的には土を使用することとなってしまう。
【0009】
また、特許文献2に記載された方法では、架橋ポリオレフィン多孔体を種々の用土と混合して使用しており、最終的には土を使用することとなってしまう。
【0010】
また、特許文献3には、カイワレダイコンを7日間生育しただけであり、植物を十分に育てることはできていない。
【0011】
通常、ゲル栽培においては、酸素を供給することができないため、ゲル中に根を張らせることが困難である。また、保水剤などの保水性の高い材料を用いる場合には、その材料の強い吸収力が、植物による吸収を妨げてしまうという問題もある。従来のゲル栽培技術では、これらの問題に対処することができておらず、植物を良好に栽培することが困難である。
【0012】
本発明は、上記の従来技術が有する問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、土を用いずに低コストにて植物を良好に栽培することを可能にする植物栽培用ゲル培地および植物栽培方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、ゲル基剤としてイオタ型のカラギナンを含むゲル培地を用いれば、植物の根を良好に張らせることができることを見出し、本発明を完成させた。
【0014】
すなわち、本発明は、イオタ型のカラギナンを含む、植物栽培用ゲル培地を提供する。
【0015】
また、少なくとも鉄を含有するミネラルをさらに含む、上記植物栽培用ゲル培地を提供する。
【0016】
また、上記植物栽培用ゲル培地における上記鉄の含有量が0.1〜0.21μg/L以上である、上記植物栽培用ゲル培地を提供する。
【0017】
また、上記イオタ型のカラギナンがユーケマ・デンチクラタム(Eucheuma Denticulatum)由来である、上記植物栽培用ゲル培地を提供する。
【0018】
また、上記イオタ型のカラギナンの含有量が0.8〜2.0質量%である、上記植物栽培用ゲル培地を提供する。
【0019】
また、カッパ型のカラギナンをさらに含む、上記植物栽培用ゲル培地を提供する。
【0020】
また、上記カッパ型のカラギナンは、カッパフィカス・アルバレジ(Kappaphycus Alvarezii)由来である、上記植物栽培用ゲル培地を提供する。
【0021】
また、上記イオタ型のカラギナンが0.5〜2.0質量%であり、上記カッパ型のカラギナンが0.1〜0.5質量%である、上記植物栽培用ゲル培地を提供する。
【0022】
また、本発明は、弱酸性次亜塩素酸によって殺菌処理された、上記植物栽培用ゲル培地を提供する。
【0023】
さらに、本発明は、上記植物栽培用ゲル培地に植物を播種すること、および弱酸性次亜塩素酸を含有する肥料成分を上記植物栽培用ゲル培地に施すことを含む植物栽培方法を提供する。
【発明の効果】
【0024】
本発明は、土を用いずに低コストにて植物を良好に栽培することを可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の植物栽培用ゲル培地を使用して栽培した植物の図。
【図2】本発明の植物栽培用ゲル培地を使用して栽培した植物の図。
【図3】本発明の植物栽培用ゲル培地を使用して栽培した植物の図。
【図4】本発明の植物栽培用ゲル培地を使用して栽培した植物の図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
〔植物栽培用ゲル培地〕
本発明に係る植物栽培用ゲル培地(以下、単に「ゲル培地」ともいう。)は、ゲル基剤としてイオタ型のカラギナンを含む。
【0027】
カラギナンとは、紅藻類(Rhodophyta)のスギノリ目に含まれる粘質物の総称を指す。カラギナンは、カッパ型、イオタ型およびラムダ型の3つの形態に分けられる。カッパ型のカラギナンは、強いゲル可能を有し、ゼリー状に固まる性質を持つ。イオタ型のカラギナンは、チキソトロピック性の粘性を有し、流動性のゲルとなる性質を持つ。ラムダ型のカラギナンは、冷水に可溶であり、その水溶液が粘調であるという性質を持つ。
【0028】
イオタ型のカラギナンとしては、たとえばキリンサイ属(Eucheuma spinosum)由来のカラギナンなどを用いることができる。なかでも、ユーケマ・デンチクラタム(Eucheuma Denticulatum)由来であることが好ましい。イオタ型のカラギナンとしては、たとえばSP-100(マリン・サイエンス株式会社)などの市販のカラギナンを用いることができる。なお、使用するカラギナンは、100%イオタ型でなくてもよく、主成分がイオタ型のカラギナンであれば、他のタイプのカラギナンが混じっていてもよい。また、カラギナンは、精製されたカラギナンである必要はなく、たとえばユーケマ・デンチクラタムなどの紅藻類自体を使用することもできる。
【0029】
本発明に係る植物栽培用ゲル培地は、以上の構成によって、ゲル中に植物の根を良好に張らせることができるので、土を用いずに植物を栽培することを可能にする。また、本発明は、水耕栽培のように大量の水を必要としないため、低コストにて植物を栽培することを可能にする。したがって、本発明によれば、土や水を用いた栽培が困難な環境においても植物を栽培することができる。特に、本発明のゲル培地は、従来の水耕栽培のように絶えず殺菌した溶液を供給する必要がない。
【0030】
また、植物栽培用ゲル培地は、通常の水耕栽培に必要とされる成分を含む。たとえば、植物栽培用ゲル培地は、ハイポニカ肥料(ハイポニカA液およびハイポニカB液など)(協和株式会社)を含む。肥料は、植物の種類などに応じて適宜調整することが好ましい。肥料成分の濃度は、水耕栽培に用いられる濃度より、たとえば4倍程度高くてもよい。
【0031】
また、植物栽培用ゲル培地は、上述した成分以外の成分をさらに含んでいてもよい。たとえば、植物栽培用ゲル培地は、ゲル基剤として上述したカラギナン以外の基剤をさらに含んでいてもよい。
【0032】
また、植物栽培用ゲル培地は、水耕栽培に通常用いられる肥料成分の他に、少なくとも鉄を含有するミネラルをさらに含むことが好ましい。これにより、植物栽培用ゲル培地中に植物の根をより良好に張らせることができる。ミネラルは、少なくとも鉄を含んでいればよく、限定されないが、鉄以外の成分、たとえば窒素、リン、カリウム、カルシウム、鉄、銅、マンガンおよび亜鉛等が挙げられる。これらの元素源としては、通常これらの元素を含む有機または無機塩類を使用することができる。
【0033】
ミネラルとしては、鉄を含むミネラル水、たとえばシーマロックス(株式会社 シマニシ科研)などを好適に用いることができる。シーマロックスを使用する場合には、植物栽培用ゲル培地におけるシーマロックスの含有量は、20ppmである。
【0034】
鉄とは、金属鉄、鉄イオン、鉄を含む塩などの化合物を含む概念である。植物栽培用ゲル培地における鉄の含有量は、たとえばFe2(SO4)3として0.1〜1μg/mlであり、0.21μg/ml(10.5g/Lの養液を20ppm含有)であることがより好ましい。なお、「鉄の含有量」とは、鉄の元素の含有量を指す。
【0035】
また、植物栽培用ゲル培地は、ゲル基剤としてカッパ型のカラギナンをさらに含むことが好ましい。これにより、植物栽培用ゲル培地の強度を高めることができるため、取り扱いが容易になる。
【0036】
カッパ型のカラギナンとしては、たとえばオオキリンサイ属(Kappaphycus cottonii)由来のカラギナンなどを用いることができる。なかでも、カッパフィカス・アルバレジ(Kappaphycus Alvarezii)由来であることが好ましい。カッパ型のカラギナンとしては、たとえばTA-200(マリン・サイエンス株式会社)などの市販のカラギナンを好適に用いることができる。なお、使用するカラギナンは、100%カッパ型でなくてもよく、主成分がカッパ型のカラギナンであれば、他のタイプのカラギナンが混じっていてもよい。
【0037】
植物栽培用ゲル培地におけるイオタ型のカラギナンの含有量は、特に限定されないが、0.8〜2.0質量%であることが好ましく、0.8〜1.5質量%であることがより好ましい。これにより、植物の根をより良好にゲル中に張らせることができるため、植物を大きく育てることができる。
【0038】
また、植物栽培用ゲル培地がカッパ型のカラギナンを含む場合には、特に限定されないが、イオタ型のカラギナンの含有量が0.5〜2.0質量%、カッパ型のカラギナンの含有量が0.1〜0.5質量%であることが好ましく、イオタ型のカラギナンの含有量が0.8〜1.0質量%、カッパ型のカラギナンの含有量が0.1〜0.2質量%であることがより好ましい。これにより、傾けても形が崩れないような固いゲルとすることができ、車中、船上などの不安定な環境下での栽培を容易にすることができる。
【0039】
植物栽培用ゲル培地は、固体培地を作製するための公知の方法を用いて作製することができる。たとえば、水にゲル基剤のカラギナンを加え、60℃以上に加熱して溶解し、溶解後に他の成分を加えて混合し、容器等に移した後に冷却して固化させることにより、作製することができる。
【0040】
また、植物栽培用ゲル培地は、殺菌された植物栽培用ゲル培地として提供することができる。たとえば、上記製造工程において、水に加えて、殺菌剤として弱酸性次亜塩素酸水を添加することによって、ゲル基剤を殺菌することができる。弱酸性次亜塩素酸水は、非常に低濃度で殺菌することができるため、植物に影響を与えることなくゲル基剤を殺菌することができる。
【0041】
また、本発明の植物栽培用ゲル培地は、ゲル培地を層状にして複数層重ねて使用することができる。たとえば、異なる肥料成分をファン有する数種類のゲル培地を層状にして使用することができる。それぞれの層には、植物の成長および根の成長に合わせた成分とすることができる。このような層状のゲル培地であれば、植物の成長に合わせて肥料成分を調整したり、追加の肥料を調整したりすることなく、植物を生長させることができる。
【0042】
〔植物栽培方法〕
本発明に係る植物栽培方法は、上述した植物栽培用ゲル培地を用いて植物を栽培する方法であり、ゲル培地に植物を播種することを含む。播種する方法としては、ゲル培地の上に種子を置いてもよい。また、播種する方法として公知の方法を用いてもよい。なお、播種する種子は、予め発芽させてもよいし、発芽させなくてもよく、植物に応じて好適な方法を選択することができる。
【0043】
また、植物を十分に制勝させるために、上記植物栽培用ゲル培地に植物を播種した後、必要な肥料成分を追加することができる。肥料成分の追加は、弱酸性次亜塩素酸を含有する肥料成分を物栽培用ゲル培地に施すことによって行うことができる。また、植物栽培用ゲル培地に雑菌が繁殖するのを防ぐために、ゲル培地に弱酸性次亜塩素酸水を施すこともできる。
【0044】
本発明の植物栽培方法に適用する植物は、特に限定されず、栽培が可能な植物であればよい。
【0045】
本発明は、上述した実施形態および以下の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示した範囲で種々の変更が可能である。
【実施例】
【0046】
(海藻粉末)
以下の実施例および比較例で使用した海藻粉末は、SP-100、KK-9、CC-50、MK-100、MJ-6、GA-900およびTA-200(マリン・サイエンス株式会社)である。SP-100は、ユーケマ・デンチクラタム由来の100%イオタ型の精製カラギナンである。KK-9は、カッパフィカス・アルバレジ由来の100%カッパ-K型の精製カラギナンである。CC-50は、カッパフィカス・アルバレジおよびカシアガム(Cassia Gum)由来のカラギナン・カシアガム製剤である。MK-100は、チリ産オゴノリ(Gracilaria verrucosa)由来の粉末寒天である。MJ-6は、カッパフィカス・アルバレジ由来のカッパ-K型カラギナンおよびカシアガムをベースとするゲル化剤製剤である。GA-900は、天草(Gelidium amansii)由来の粉末寒天である。TA-200は、カッパフィカス・アルバレジ由来の100%カッパ-K型200メッシュパスの加工ユーケマ藻類である。
【0047】
〔実施例1〕
(ゲル培地の作製)
ゲル基剤としてSP-100を使用したゲル培地を作製した。
【0048】
まず、殺菌のため、使用する水として200ppmの弱酸性次亜塩素酸水(エヴァテック株式会社)を20ppm程度となるように添加した。次に、水に対して1質量%のSP-100を加えて、60℃以上に加熱して溶解した。溶解後、肥料成分としてハイポニカ(協和株式会社)を添加した。ハイポニカは、ハイポニカA液およびハイポニカB液の2種類の溶液をそれぞれ500倍希釈して添加した。ハイポニカA液およびハイポニカB液の成分は、以下の通りである。
【0049】
【表1】

【0050】
次いで、鉄成分を含むシーマロックス(株式会社 シマニシ科研)を20ppmとなるように添加した。得られた混合液を容器に流し込み、自然冷却によって固化させ、ゲル培地を作製した。シーマロックスの組成は、表2に示したとおりである。
【0051】
【表2】

【0052】
(植物の栽培)
植物として、コリアンダー、三つ葉、赤紫蘇、青梗菜、小松菜、葉ネギを用いた。なお、青梗菜、小松菜および葉ネギは、予め発芽させた種子を用いた。
【0053】
十分に温度が下がったゲル培地上に、各植物の種子を播き、暗所にて発芽させた。カビの発生および腐敗を防ぐために、時々ゲル培地上に50ppm弱酸性次亜塩素酸水のミストを噴霧した。その後2週間において、ゲル培地の抗菌効果、発芽の有無、および根がゲル中に入るか否かを観察した。
【0054】
結果を表3に示す。表3において、ゲル培地の抗菌効果については、強い抗菌効果があったものを「◎」、通常レベルの抗菌効果があったものを「○」、抗菌効果がなかったものを「△」、腐敗したものを「×」で表した。また、各植物について、発芽したものを「○」、発芽しなかったものを「×」でそれぞれ表した。根がゲル中に入るか否かについては、ゲル中に入ったものを「○」、入らなかったものを「×」で表した。
【0055】
【表3】

【0056】
表3に示すように、実施例1のゲル培地には強い抗菌効果が見られた。また、発芽した植物の根がゲル中に入ることを観察した。図1および図2は、実施例1のゲル培地で栽培した植物を示す写真である。
【0057】
〔実施例2〜4〕
実施例1におけるゲル培地の組成に、抗菌剤として0.1質量%の安息香酸ナトリウム(実施例2)、0.1質量%のビタミンB1(実施例3)または20質量ppmの弱酸性次亜塩素酸水(実施例4)をさらに加えたゲル培地を作製した。そして、実施例1と同様に植物を播種して栽培し、観察した。
【0058】
表3に示すように、実施例2〜5のゲル培地は、いずれも強い抗菌効果を示した。また、発芽した植物の根がゲル中に入ることを観察した。
【0059】
〔比較例1〜4〕
ゲル基剤としてKK-9を使用した以外は実施例1と同じ組成のゲル培地を、実施例1と同様の方法により作製した(比較例1)。また、このゲル培地の組成に、抗菌剤として安息香酸ナトリウム(比較例2)、ビタミンB1(比較例3)または弱酸性次亜塩素酸水(比較例4)をさらに加えたゲル培地を、実施例2〜4と同様に作製した。そして、実施例1と同様に植物を播種して栽培し、観察した。
【0060】
表3に示すように、比較例1〜4はいずれも、植物の根がゲル上部のみにあり、ゲル中に入らなかった。
【0061】
〔比較例6〜9〕
ゲル基剤としてCC-50を使用した以外は実施例1と同じ組成のゲル培地を、実施例1と同様の方法により作製した(比較例6)。また、このゲル培地の組成に、抗菌剤として安息香酸ナトリウム(比較例7)、ビタミンB1(比較例8)または弱酸性次亜塩素酸水(比較例9)をさらに加えたゲル培地を、実施例2〜4と同様に作製した。そして、実施例1と同様に植物を播種して栽培し、観察した。
【0062】
表3に示すように、比較例6〜9はいずれも、植物の根がゲル上部のみにあり、ゲル中に入らなかった。
【0063】
〔比較例11〜14〕
ゲル基剤としてMK-100を使用した以外は実施例1と同じ組成のゲル培地を、実施例1と同様の方法により作製した(比較例11)。また、このゲル培地の組成に、抗菌剤として安息香酸ナトリウム(比較例12)、ビタミンB1(比較例13)または弱酸性次亜塩素酸水(比較例14)をさらに加えたゲル培地を、実施例2〜4と同様に作製した。そして、実施例1と同様に植物を播種して栽培し、観察した。
【0064】
表3に示すように、比較例11〜14はいずれも、植物の根がゲル上部のみにあり、ゲル中に入らなかった。
【0065】
〔比較例16〜19〕
ゲル基剤としてMJ-6を使用した以外は実施例1と同じ組成のゲル培地を、実施例1と同様の方法により作製した(比較例16)。また、このゲル培地の組成に、抗菌剤として安息香酸ナトリウム(比較例17)、ビタミンB1(比較例18))または弱酸性次亜塩素酸水(比較例19)をさらに加えたゲル培地を、実施例2〜4と同様に作製した。そして、実施例1と同様に植物を播種して栽培し、観察した。
【0066】
表3に示すように、比較例16〜19はいずれも、植物の根がゲル上部のみにあり、ゲル中に入らなかった。
【0067】
〔比較例21〜24〕
ゲル基剤としてGA-900を使用した以外は実施例1と同じ組成のゲル培地を、実施例1と同様の方法により作製した(比較例21)。また、このゲル培地の組成に、抗菌剤として安息香酸ナトリウム(比較例22)、ビタミンB1(比較例23)または弱酸性次亜塩素酸水(比較例24)をさらに加えたゲル培地を、実施例2〜4と同様に作製した。そして、実施例1と同様に植物を播種して栽培し、観察した。
【0068】
表3に示すように、比較例21〜24はいずれも、植物の根がゲル上部のみにあり、ゲル中に入らなかった。
【0069】
〔実施例6〕
ゲル基剤としてSP-100およびTA-200を使用した以外は実施例1と同じ組成のゲル培地を、実施例1と同様の方法により作製した。SP-100の含有量は、0.9質量%、TA-200の含有量は、0.1質量%とした。図3の右図は、実施例6のゲル培地で栽培した植物を示す写真である。
【0070】
〔実施例7〕
ゲル基剤としてSP-100およびTA-200を使用した以外は実施例1と同じ組成のゲル培地を、実施例1と同様の方法により作製した。SP-100の含有量は、0.8質量%、TA-200の含有量は、0.2質量%とした。図3の左図は、実施例6のゲル培地で栽培した植物を示す写真である。
【0071】
〔実施例8〕
ゲル基剤としてSP-100およびTA-200を使用した以外は実施例1と同じ組成のゲル培地を、実施例1と同様の方法により作製した。SP-100の含有量は、0.3質量%、TA-200の含有量は、0.4質量%とした。
【0072】
〔実施例9〕
ゲル基剤として1.5%のSP-100を使用した以外は実施例1と同じ組成のゲル培地を実施例1と同様の方法により作製した。
【0073】
実施例6〜9のいずれのゲル培地も、実施例1〜4のゲル培地よりも固く、容器を傾けてもゲルの移動が見られなかった。また、成長速度は異なるが、いずれも植物の根がゲル培地内に入り、植物が成長した。
【0074】
〔実施例10〕
ゲル基剤に20ppmのシーマロックス(株式会社 シマニシ科研)を添加しないこと以外は、実施例1と同じ組成のゲル培地を実施例1と同様の方法により作製した。
〔実施例11〕
ゲル基剤にハイポニカを添加しないこと以外は、実施例1と同じ組成のゲル培地を実施例1と同様の方法により作製した。
【0075】
実施例10〜11のいずれのゲル培地も、実施例1および6〜9のゲル培地と比較して植物が成長しなかった。また、ゲル中に根が張らなかった。図4は、実施例10および11のゲル培地で栽培した植物を示す写真である。実施例10〜11の種子は、上記実施例6〜9(図3)と同日に種をまいた。
【0076】
実験の結果、ゲル基剤中にミネラルとして鉄を多く含有するシーマロックスを含有する場合に、いずれの植物も根がゲル中に入り、植物の成長が優れていることが観察された。鉄を0.21μg/ml含有(10.5g/Lの養液を20ppm含有)することにより、根に酸素が供給されていなくても、植物がゲル中に根を張って生育することが観察された。また、ゲル培地で植物が成長するためには、ゲル基剤中に肥料成分を含むことが必要なことが明らかとなった。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明は、土を用いずに低コストにて植物を良好に栽培することを可能にするため、植物栽培用培地の製造および提供、土を用いない植物の栽培などに好適に利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオタ型のカラギナンを含む、植物栽培用ゲル培地。
【請求項2】
少なくとも鉄を含有するミネラルをさらに含む、請求項1に記載の植物栽培用ゲル培地。
【請求項3】
前記植物栽培用ゲル培地における前記鉄の含有量が0.1〜0.21μg/L以上である、請求項2に記載の植物栽培用ゲル培地。
【請求項4】
前記イオタ型のカラギナンがユーケマ・デンチクラタム(Eucheuma Denticulatum)由来である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の植物栽培用ゲル培地。
【請求項5】
前記イオタ型のカラギナンの含有量が0.8〜2.0質量%である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の植物栽培用ゲル培地。
【請求項6】
カッパ型のカラギナンをさらに含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載の植物栽培用ゲル培地。
【請求項7】
前記カッパ型のカラギナンは、カッパフィカス・アルバレジ(Kappaphycus Alvarezii)由来である、請求項6に記載の植物栽培用ゲル培地。
【請求項8】
前記イオタ型のカラギナンが0.5〜2.0質量%であり、前記カッパ型のカラギナンが0.05〜0.2質量%である、請求項6または7に記載の植物栽培用ゲル培地。
【請求項9】
弱酸性次亜塩素酸によって殺菌処理された、請求項1〜8のいずれか1項に記載の植物栽培用ゲル培地。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の植物栽培用ゲル培地に植物を播種すること、および、
弱酸性次亜塩素酸を含有する肥料成分を前記植物栽培用ゲル培地に施すこと、を含む、植物栽培方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−111024(P2013−111024A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−260625(P2011−260625)
【出願日】平成23年11月29日(2011.11.29)
【出願人】(511049174)株式会社エクセルクリーンテクノ (2)
【出願人】(511289655)
【出願人】(312000930)
【Fターム(参考)】