説明

植物栽培用ハウス

【課題】季節による日照または温度の変動による影響を受けない植物栽培を可能とし、周年栽培と季節または地域に縛られない作柄との拡大を図ることを目的とする。
【解決手段】本発明に係る植物栽培用ハウス100は、地面400(床面)を屋根210と外壁220とにより覆って形成され、屋根210と外壁220とにより太陽光を遮断するハウス200と、ハウス200の内部にて栽培される植物300に光を照射する照明手段(蛍光灯310)と、屋根210に備えられていて、ハウス200の内部の熱をハウス200の外部まで熱放射により放熱する放熱手段(屋根の外面212)と、室の外部から室の内部まで伝熱される熱を少なくとも部分的に断熱する室内用断熱手段(断熱天井230、断熱壁250)と、を具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物栽培用ハウスに関する。さらに詳細には、照明を用いた植物栽培用ハウスにおいて、外部からの熱を断熱し、照明からの熱と地中からの熱とを有効に蓄積または放射することにより内部の温度を安定させ、植物の周年栽培を可能とする植物栽培用ハウスに関する。
【背景技術】
【0002】
農業は、古来より季節または日照の影響を受け、季節性または地域性に強く左右される産業であった。農業の作業内容として施肥、播種及び収穫の作業があるが、さらに、自然環境の下で行われる農業においては、病害虫などから被害を防ぐための農薬散布があり、農業に従事する人々は重労働を強いられている。これらを解決する手段として、従来から例えば、温室、水耕栽培及び植物工場などの施設栽培ないし園芸技術が発達してきた。
【0003】
温室、水耕栽培及び植物工場などの施設栽培技術は、農業の収量を拡大し周年栽培化することと、重労働である作業を簡便化することとを目的として発達している。しかしながら、それらの施設栽培技術は、現状の農家に利点をもたらしてきた面を有する一方、農業の持つ根本的に解決していない種々の課題を有している。
【0004】
例えば、温室は比較的温暖な地域において、寒冷時期の野菜栽培のための温度維持には有効であるが、豪雪地帯などの寒冷地域においては積雪により日光が遮断されるため、温室本来の利点を活用できない。また、夏季においては強い日射の影響のため、温度が過剰に上昇し稼動期間が限定されるなどの課題があった。
【0005】
また、水耕栽培は従来の畑などの栽培に比較して栽培速度が速く、収量の拡大に貢献するものの、自然の太陽光の下においては、季節により日照時間または温度が大きく異なるため、周年栽培の実現は難しいという課題があった。
【0006】
これらの課題を克服するため、植物工場が開発され普及しつつある。植物工場においては、主として水耕ベッドを多段に積み上げて土地の有効活用を図るとともに、植物の栽培に必要な日照に人工光源を用いることにより光を安定的に供給している。また、同時に空調システムにより温度の安定化を図ることにより周年栽培と収量の拡大を可能としている。しかしながら、植物工場における人工光源を用いた栽培は、安定した温度・環境を維持するために、例えば、電力による空調システムを利用することから、非常にランニングコストがかかるという課題があった。
【0007】
植物工場による栽培にランニングコストがかかるという課題に対して、例えば、植物工場における空調システムにおいて、夜間電力を用いて蓄冷熱槽内の水を冷却・蓄冷し、冷却した冷水と空気とを熱交換して、冷却された空気を空調に利用するシステムが開示されている(特許文献1)。また、植物工場において使用する人工光源の発熱による冷暖房の負荷を低減させることを目的として、人工光源を光源囲により囲い、光源囲内の空気を外気空間に導通する管路を経由して循環させる装置が開示されている(特許文献2)。しかしながら、これらの設備を用いて採算を取るためには、一定以上の規模が必要となり、設備費に多額の資金を要するため、資金力に限界のある個人の農家では賄えないなどの課題があった。
【0008】
また、植物工場において用いる人工光源にLED光源を用いることにより、照明からの発熱を抑えることも試みられている(例えば特許文献3)。しかしながら、LED光源は、照射光の価格当たりの照度が不十分であり、LED光源のみでは植物工場の主照明として利用が難しいという課題があった。
【0009】
また、従来の植物工場においても、ハウス内温度を調整するためサンルーム等の採光域にブラインドなどの遮光・採光制御装置なるものを備えたものもある(例えば特許文献4)。しかしながら、ブラインドなどの遮光・採光制御装置は太陽光のハウス内強度を適宜、調整することを目的としており、ブラインドによる遮光のみでは、特に外部から直接伝わる熱、例えば屋根から伝導する熱と太陽光の放射熱とを断熱し、ハウス内の温度を調整することは難しいという課題があった。
【特許文献1】特開2000−93010号公報
【特許文献2】特開2007−236235号公報
【特許文献3】特開平8−103167号公報
【特許文献4】特開平8−308397号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上述した従来の農業生産に対する課題に鑑み、例えば、季節による日照または温度の変動による影響を受けない植物栽培を可能とし、周年栽培と季節または地域に縛られない作柄の拡大とを図ることを第一の目的とする。
【0011】
また、本発明は、農家が資金的な無理を生じさせない範囲において農業生産を行えるよう、可能な限り初期投資が低くて済む植物栽培を可能とし、かつまた植物栽培のためのランニングコスト、例えば設備費用と空調費用とを削減することを第二の目的とする。
【0012】
さらに、農薬散布の作業を不要とし農作業の簡便化を図るとともに、農作物の衛生管理を容易にし、農作物の安全性を向上させることを第三の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係る植物栽培用ハウスは、床面を屋根と壁とにより覆って形成され、屋根と壁とにより太陽光を遮断するハウスと、ハウスの内部にて栽培される植物に光を照射する照明手段と、屋根に備えられていて、ハウスの内部の熱をハウスの外部に、熱放射により放熱する放熱手段と、ハウスの外部からハウスの内部まで伝熱される熱を少なくとも部分的に断熱する室内用断熱手段と、を具備する。
【0014】
本発明に係る植物栽培用ハウスの使用者(以下、農家または農業従事者と呼ぶ)は、太陽光が遮断されたハウス内部において、ハウス内部の照明手段が照射する光を用いて植物栽培を行う。農家は植物栽培に太陽光を利用せず、ハウス内部の照明の光(人工光)を用いるので、季節による日照の変動を受けずに植物栽培を行うことができる。また、本発明に係る植物栽培用ハウスは、ハウス内部において発生した熱を放出する放熱手段を具備するので、例えば、農家は放熱手段を用いてハウス内部の熱を一日の最低温度の夜間に外部へ放熱することによりハウス内部の温度の上昇を抑制することが可能となる。熱を放出(運び出す)する方法として熱放射、熱伝達、熱伝導の三種類あるが、本発明に係る放熱手段は熱放射により熱を放出する方法を主として説明しているが、本発明に係る植物栽培用ハウスを使用する地域によっては、熱伝達または熱伝導により熱を放出してもかまわない。
【0015】
また、本実施の発明に係る植物栽培用ハウスは、外部から伝熱される熱を少なくとも部分的に断熱する室内用断熱手段を具備する。植物栽培用ハウスは、室内用断熱手段により外部からの熱を断熱するので、夏季においては外部からの伝熱によるハウス内部の温度の上昇が抑えられ、主として年間を通じて温度変化の少ない土壌の床によって冷却されている。冬季においてはハウス内の熱が外部に伝熱することによるハウス内の温度の低下が抑えられ、主として土壌の床によって暖められている。従って、植物栽培用ハウスは室内用断熱手段により外部の温度の変化を受けることがないので、植物を栽培する室の内部の温度(気温)を安定させることが可能となる。農家は植物栽培に本発明に係る植物栽培用ハウスを用いれば、日照と温度の変動による影響を受けずに植物栽培をすることができる。すなわち、農家は例えば周年栽培を可能にすると共に、季節または地域に縛られない作柄の拡大を図ることができる。本発明に係る植物栽培用ハウスを用いた施設栽培は、従来の施設栽培と比較して、周年栽培または作柄の拡大をすることができるため、農家にとって収量の拡大に貢献し、農家の収益向上を図ることが可能となる。
【0016】
本発明に係る植物栽培用ハウスは、太陽光を遮断し、照明手段(人工光、例えば蛍光灯)による植物栽培を行う。そのため、太陽光の日照時間に左右されず、照明手段に必要な電力に深夜電力を利用することが可能となる。深夜電力は通常日中の電力より安価に利用できるので、深夜電力を利用すれば、電力費用を安価に調達できる。さらに、屋根や屋上からの熱伝達や放射冷却による放熱手段と天井を形成する開閉可能な室内用断熱手段を組み合わせて、制御された形の放熱を行う。これによって室内用断熱手段から洩れ出てくる熱と、床や潅水から放出される熱との過不足を昼夜、四季を通じて微細に調整する。その結果、ハウス内の温度調整に必要な空調設備は、大抵の場合不要となる。
【0017】
本発明の植物栽培用ハウスの床面は地面から成り、ハウス内において栽培される植物は、地面の土壌により栽培される植物である。床面は地面であるため、床面に対する初期投資を低くするとともに、ハウス内の温度を調整するのに地中からの熱(地熱)を利用することが可能となり、ハウス内の空調設備を不要とするか、空調費用を下げる効果がある。また、土壌により栽培するので栽培する植物の作柄は限定されることがない。
【0018】
本発明に係る植物栽培用ハウスの室内用断熱手段は開閉可能である。農家は室内用断熱手段を開閉することにより、屋根から外部への熱伝達や熱放射による放熱手段による冷却作用を有効とするか、室内用断熱手段による断熱作用を有効とするかを選択することが可能となる。室内用断熱手段が開放された場合、ハウス内部の熱は屋根からハウス外部へ伝達ないし放射により伝熱するため、冷却が有効となる。室内用断熱手段が閉鎖された場合、屋根からハウス外部への放熱を遮断するため、昼間の消灯時のハウス内部の温度は安定する。例えば、夏季に、農家は次のように植物栽培用ハウスを運用することが可能となる。農家は夜間において照明手段により照射している間、室内用断熱手段を開放する。照明手段の照射によりハウス内部の温度は上昇するが、室内用断熱手段が開放されているのでハウス内部の熱は放熱手段により放出される。放熱手段は、照明で生じた熱を夜間に外部への放射冷却や熱伝達によりハウス外部へ放出する。一方、昼間において、農家は照明手段による照射は行わず、室内用断熱手段を閉鎖する。照明手段による照射は行わないので、照明手段によってハウス内部の温度は上昇しない。また、室内用断熱手段は閉鎖されているので、ハウス外部からの伝熱を遮断している。従って、ハウス内部の温度は外部からの熱の影響を受けることなく安定したものとなる。また農家は、例えば冬季の照明時、ハウス内部の温度が低下した場合、室内用断熱手段を閉鎖し照明の熱を利用して、ハウス内の温度を調整しても構わない。このように、本発明による植物栽培用ハウスの室内用断熱手段は開閉可能であるので、農家はハウス内部の温度調整が可能となり、季節による日照または温度の変動による影響を受けない植物栽培が可能となる。
【0019】
本発明による植物栽培用ハウスの室内用断熱手段は、室の外部からの伝導熱を断熱する室内用断熱層と室の内部への放射熱を遮熱する室内用遮熱層との少なくとも一方を有する。室内用断熱手段は、伝導熱を断熱する室内用断熱層を有するため、例えば、室内用断熱手段は伝導率の低い材料から成りハウス外部からハウス内部に侵入しようとする熱を断熱する。また、室内用遮熱層は、室内側に低放射率の層を有することから、室内への放射熱を遮熱し、抑制する。本発明による植物栽培用ハウスを設置する地域の気候によって、植物栽培用ハウスに必要とされる断熱性能は異なる。農家は、植物栽培用ハウスに必要な断熱性能を、地域の気候に即して、室内用断熱層および室内用遮熱層の厚さを調整し配置することができる。植物栽培用ハウスの断熱性能を必要最低限のものとすることにより、農家は初期費用(設置費用)を抑えることができる。
【0020】
または、本発明に係る植物栽培用ハウスの放熱手段は、可視光および近赤外の領域における反射率が80%以上であって、遠赤外の領域における放射率が70%以上である物質により塗装された少なくとも一部の屋根の外面である。
または、本発明に係る植物栽培用ハウスの放熱手段は、酸化チタンを含む物質により塗装された少なくとも一部の屋根の外面である。
【0021】
屋根の外面の塗装に遠赤外に対して放射率の高い物質を用いれば屋根表面の放射効率が上がるので、植物栽培用ハウス内の温度をより効率よく下げることが可能となる。特に遠赤外の領域における放射率が70%以上の場合は放射冷却による効果が高い。
また、可視光と近赤外の領域において反射率の高い物質を塗装することにより、太陽から直接的、あるいは間接的にハウスに入射してくる放射熱を反射によってはね返す。このことにより屋根の温度の上昇、すなわち屋根からの伝熱によるハウス内部の温度の上昇を抑えるため、より容易に温度の調整を行うことができる。
【0022】
可視光と近赤外の領域において反射率が80%以上であって、遠赤外の領域における放射率が70%以上である物質の一つとして、例えば、酸化チタンがある。酸化チタンは、主に白色の絵具、日焼け止め剤に使用されており、比較的入手が容易である。酸化チタンを含む物質を屋根の外面に塗装すれば、反射率が高くかつ放射率が高い放熱手段を容易に備えることができる。
【0023】
本発明に係る植物栽培用ハウスの放熱手段は、例えば、既存の施設である従来の温室またはビニルハウスの屋根を上述した放射率の高い物質を塗装することにより作成可能である。既存の施設を利用することにより、放熱手段を作成するのに必要な農家の初期投資(例えば設備費用)を抑えることができる。
【0024】
本発明に係る植物栽培用ハウスは、ハウス外部の土壌からハウス内部に対応する土壌まで伝達される地熱を断熱する地熱断熱手段を有する。一般に地表近くの土壌の温度(地中温度又は地熱とも呼ぶ)は外気の温度変化の影響を受けるため、地表から10cmまでの土壌は昼夜の、地下2mまでの土壌は季節的な、温度変化が大きい。しかしながら、地下2m以下、とくに5m以下の地中においては、土壌は外気の温度変化の影響を受けることが少なくその温度変化は小さい。本発明に係る植物栽培用ハウスは、地熱断熱手段を備えており、地熱断熱手段がハウス外部の土壌からハウス内部の土壌向かう伝導熱を遮断するので、ハウス内部の土壌の温度変化を抑えることが可能となる。ハウス内部にある土壌の温度が安定するので、ハウス内部の空気の温度変化も少なくなる。
【0025】
本発明に係る植物栽培用ハウスの地熱断熱手段は地中に向かって延びる壁部である。壁部が地中に向かって延びていることから、ハウス内部の土壌は、昼夜ないし季節の温度変化の大きいハウス外部の土壌から側面方向に伝熱する地熱から断熱される。そのため、ハウス内部の土壌の温度はハウス外部の土壌の温度変化に左右されることがない。
【0026】
本発明の植物栽培用ハウスは、照明手段から照射される光を植物の方向に集光する笠と、笠の頂部から上方に延びていて、照明手段から発生した熱を上方に排出する筒体を具備する。笠の頂部から上方に延びている筒体を備えているため、照明手段から発生した熱により温められた照明手段の周辺および植物の周辺の空気を室の上方に排出することが可能となる。温められた照明手段の周辺空気は、筒体の上方にある空気より密度が小さいので筒体の煙突効果により上昇し移動する。笠の頂部に単に開口部を備えて熱を排出した場合と比較して短時間に温められた空気を上方に移動させることができる。
【0027】
本発明に係る植物栽培用ハウスは、植物の根元において照明手段によって直接照射される光と笠によって集光される光とを反射する光反射板を具備する。光反射板は、植物が小さい間は主として直接に、植物が生長すると照明手段によって照射され植物を通過した後、光を反射し、再度、植物に向けて照射する。植物は、合せ鏡のように配置された笠と光反射板との間に位置し、照明手段から照射された光を繰り返し受けるので、植物は照明手段から照射された光を最大限に利用して光合成を行うことができる。植物栽培に必要な光を照明手段から照射する電力に無駄がなくなるので、照明手段の電力費用に対する効果(例えば植物の成長)が高くなり、照明による照射時間が減少し、結果としてランニングコストが減少する。
【0028】
本発明に係る植物栽培用ハウスは、熱を有する前記屋根から前記ハウスの内部に向かって放射される放射熱を抑制する放射率が10%以下の放射熱抑制層を、前記屋根の少なくとも一部の内面に具備する。すなわち、植物栽培用ハウスは、屋根の少なくとも一部の内面に、屋根の外面からハウスの内部に向かって放射される放射熱を抑制する放射率の低い層(放射熱抑制層)を備える。低放射率の層の材料は例えばアルミ箔である。植物栽培用ハウスの低放射率の層は、例えば、屋根の外面に蓄積された熱による屋根の外面からハウスの内部に向けて放射される放射熱を低減する。このようにして低放射率の層はハウス内部の温度が放射熱により上昇することを防止し、ハウス内の温度調整を容易とする。
【0029】
本発明に係る植物栽培用ハウスは、照明手段の上方に位置し、植物に対して放射されるハウス外部からまたは熱が蓄積された屋根からの放射熱を遮熱する植物用遮熱手段を有する。
植物に対して放射される放射熱を遮断する植物用遮熱手段を有するため、例えば、室内用断熱手段が開放された場合においても、植物と土壌とに放射される放射熱を遮熱することが可能となり、植物周辺の温度の上昇を防止することができる。
【0030】
本発明の植物栽培用ハウスは、ハウス内部の空気の熱とハウス外部の空気の熱とを交換し、ハウス内部の空気に含まれる湿気をハウス外部に排出する顕熱交換器を具備する。
本発明による植物栽培用ハウスのハウス内部は、外部からの熱を断熱する室内用断熱手段により囲まれているので、密封状態または機密性の高い状態であり、水蒸気が外部に放出されずハウス内部の湿度が高くなる可能性がある。ハウス内部の湿度を下げるために、圧縮機を用いた除湿機を利用してもよい。しかしながら圧縮機は多くの電力を必要とし、電力費用が大幅に増加する可能性がある。本発明の植物栽培用ハウスは例えば空気取り入れ口に病害虫を遮断するフィルタを備えた顕熱交換器を使用し、顕熱のみを交換することによりハウス内部の温度を安定させ、さらに、空気内の湿気を排出することにより除湿する。顕熱交換器の構造については後述するが、顕熱交換器は圧縮機を使用せず、顕熱交換器が備える送風機を用いてハウス内外の空気を送風することにより除湿する。圧縮機と比較して送風機による送風に必要とされる電力は小さいので、農家は顕熱交換器を植物栽培用ハウスのハウス内の除湿に利用すれば、除湿に必要なランニングコスト、例えば電力費用を抑えることができる。またハウス内の湿度や温度を保ったままで換気が必要なときには、フィルタ付の全熱交換器を設置する。
【0031】
本発明に係る植物栽培用ハウスは、植物の栽培に用いる養液の温度を調節して、植物の周辺の土壌である畝の温度を、養液からの熱伝導により調整する床温度調整手段を具備する。本発明に係る植物栽培用ハウスは、例えば養液土耕されていて、必要に応じて温度調整された養液(栽培のための養分を含んだ水)を畝(植物周辺の土壌)に点滴または散水する。畝の表面の温度は、点滴された養液が浸透することにより調整される。水路を通過する養液からの伝導熱により畝の表面の温度を調整しても構わない。畝の表面は養液から直接的に伝熱されるので、農家はハウス内部の空気の対流による伝熱よりも速く的確に畝の表面の温度を調整することができる。
【0032】
本発明に係る植物栽培用ハウスは、例えば畝を避けた床に配置され、水を循環させる循環水路と、循環水路に水を循環させるポンプと、水を一時的に貯水する貯水槽とを具備する。一定の温度を有する水を床に循環させるため、例えばハウス内部の土壌の温度が低下した場合においても、植物周辺、特に根元に当たる部分の土壌の温度を一定とすることが可能となる。循環させる水に、通年において温度変化が少ない井戸水または地下水を用いれば、床面の温度を安定した温度とするとともに、水温の維持に掛かる費用も抑えることが可能となる。
【0033】
本発明に係る植物栽培用ハウスは、床面を掘り下げて形成され、水を透さない不浸透層により覆われた水槽と、水槽に溜められた植物の水耕栽培に用いる養液の表面に位置し、照明手段によって照射される光を照明手段に向かって反射させる光反射板とを具備する。また、光反射板は、植物を記養液の表面に位置させるよう支持する。さらに、本発明に係る植物栽培用ハウスは、養液を温度調整し循環させて、床面の温度を養液からの熱伝導により調整する床温度調整手段を具備する。
【0034】
本発明に係る植物栽培用ハウスは、養液土耕などの土耕栽培だけではなく、例えば薄膜水耕、湛液式水耕、ロックウール水耕、礫耕などの水耕栽培にも利用できる。従来の水耕栽培は、発泡スチロールなどで、成型された養液槽に液温を最適条件に制御された養液を循環させ、植物体の地下茎の生育条件を整える機能を持つ。これに対して、本発明に係る植物栽培用ハウスにおいては、必要とされる養液槽の形状に畝を堀り下げ、その上に薄いビニールシートなどを養液がもれないように敷き詰めて養液を溜め、この養液上に植物の上部からくる照明手段により照射される光(人工光)を反射する比重の軽いプラスチックからなる光反射板を浮かべて植物を支持する、いわゆる養液水耕を行うこともできる。この場合、養液を温度制御しつつ循環させることにより、床の温度ひいては室の温度を制御することができる。これによって高価なでかつ大きさや形状が自由にならない養液槽を必要とする従来の養液水耕栽培の課題を解決することができる。
【0035】
本発明に係る植物栽培用ハウスのハウスは、屋根と壁とにより密閉された室である。ハウス内部は密閉されているため農作物の安全性が高くなる。例えば、病害虫が植物栽培用ハウスの内部に侵入する可能性が小さくなり、病害虫による被害を防ぐために農薬散布をする必要が無くなる。農薬を散布しないため農作物の安全性の向上が図られ、農薬散布の労働が減ることから農家の収益向上を図ることができる。病害虫が少ないので、農作物の衛生管理も容易となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
(実施の形態1)
本実施の形態に係る植物栽培用ハウス100について図1から図6を用いて説明する。図1は、本実施の形態に係る植物栽培用ハウスの構成の一例を示す概略断面図である。図2は、実施の形態1に係る植物栽培用ハウスの室内用断熱手段の他の例を示す図であり、図2(a)は室内用断熱手段にシート状の遮熱シートを用いた場合を示す部分断面図、図2(b)は室内用断熱手段に板状の天井部材を利用した場合を示す部分断面図である。図3は、外気温と地中温度の年間変動を示すグラフである。図4は、実施の形態1に係る植物栽培用ハウスの照明ユニットと畝の一部を示す部分拡大断面図であり、図4(a)は照明ユニットの縦断面図、図4(b)は蛍光灯(照明手段の一例)が一列の照明ユニットを示す横断面図、図4(c)は蛍光灯が二列の照明ユニットを示す横断面図である。図5は、実施の形態1に係る植物栽培用ハウスの循環水路の一例を示す図であり、図5(a)は、植物栽培用ハウスの循環水路の設置状況を示す部分拡大断面図、図5(b)は循環水路の設置状況を示す平面図である。図6は植物栽培用ハウスを用いて水耕栽培を行う場合の畝の一例を示す部分拡大断面図である。
【0037】
本実施の形態に係る植物栽培用ハウス100は、図1に示すように、屋根210、梁290、柱292、外壁220及び地面400(床面の一例)により構成される。ハウス200は、屋根210、外壁220及び地面400により構成され、植物を栽培する空間を形成している。ハウス200は屋根210および外壁220により太陽光を遮断しており、太陽光を取り入れる窓を備えていない。地面400は土壌であり、植物300が地面400上の複数の畝324に植えられ栽培されている。本実施の形態では、屋根210の断面形状は三角形であるが、屋根210の断面形状は平屋またはビニルハウスのように半円形(かまぼこ型)の形状をしていてもよい。
【0038】
ハウス200内部において栽培される植物300は、例えば野菜、果菜、花卉であり、野菜を具体的にいえば、レタス、ほうれん草、大根、人参、キュウリ、トマトなどである。本実施の形態では植物栽培を土壌による栽培方法として説明しているが、植物栽培は水耕栽培でも構わない。水耕栽培の場合、例えばレタス、ほうれん草などを栽培する。本実施の形態では、四列の畝324が建物の長辺に沿って平行に地面400上にあり、各畝324において二列に植物300が栽培されている。二列の植物300の間には、植物300に水を供給する養液土耕の水路322が設けられている。
【0039】
本実施の形態の植物栽培用ハウス100は、ハウス200の内部に栽培される植物300に対して光を照射する蛍光灯310(照射手段の一例)を具備している。本実施の形態においては、各畝324に対して一列の蛍光灯310が設置されている。植物300に対してより強い光が必要とされる場合には、各畝324に対して二列またはそれ以上の蛍光灯310を設置しても構わない。本実施の形態では、照明手段として蛍光灯310を用いたが、照明手段は特に蛍光灯に限定されず、公知の照明、例えば、HF蛍光灯(高周波点灯専用形蛍光灯)、白色灯、水銀灯、ナトリウム灯、LEDを用いることができる。
【0040】
本実施の形態の植物栽培用ハウス100は、ハウス200を構成する屋根210を具備している。屋根210の外面212(放熱手段の一例)は、例えば、蛍光灯310により上昇したハウス200内部の熱をハウス200の外部へ熱放射により放熱する。すなわち、屋根210は、ハウス200内部の熱を屋根210の内面から伝熱により吸収し、屋根210の外面212から熱を外部に伝達し放射する。特に晴れた日の夜間においては、放射冷却現象により夜空に対して熱を放射するため、屋根210の温度が低下し、ハウス200内部の温度も低下する。また曇りで風のある日や雨天では、熱伝達により多くの熱が外部へ取り去られる。風のない日においても自然対流によってかなりの熱が取り去られる。
【0041】
放射の効率を高める、すなわち屋根210の温度を放射冷却により可能な限り低下させるために、屋根210の外面212の放射率は高いことが望ましい。放射率を高める方法として、例えば、屋根210の外面212を遠赤外で放射率の高い物質により塗装する方法がある。
【0042】
放射率の高い物質により外面212を塗装された屋根210は、とくに夜間においては熱を放射しやすい。しかしながら昼間は太陽光から受ける熱を吸収・蓄積しやすいという課題を有する。そのため、太陽光を高反射するとともに熱、すなわち遠赤外線を高放射する材料により屋根210を塗装するのがよい。具体的には、可視光および近赤外の領域における反射率が80%以上、遠赤外の領域における放射率が70%以上である物質により屋根の外面を塗装する。可視光および近赤外の領域における反射率が90%以上、遠赤外の領域における放射率が90%以上である物質であるほうがより望ましい。この条件を満たす材料として、例えば、酸化チタンが挙げられる。酸化チタンを含む物質により、屋根210の外面212を塗装すれば昼間は太陽光を反射し、夜間は放射冷却により熱を放射する屋根210(放熱手段の一例)を形成することが可能となる。
なお、可視光および近赤外の領域における反射率が80%以上の物質を含む材料により塗装された屋根の色は、白色に近いものになる。
【0043】
屋根210の内面には、放射熱抑制層としてアルミ箔214が貼付けられている。このアルミ箔214は、屋根210の外面からハウス200の内部に向かって放射される熱を強度に抑制する。アルミ箔214は、ハウス200内部の熱を伝導熱により屋根210内部に吸収するが、外部からの熱の放射を強度に抑制するので、ハウス200内部の温度が上昇することを防ぐ。
【0044】
本実施の形態の植物栽培用ハウス100は、屋根210と栽培している植物300との間に断熱天井230を具備している。断熱天井230は室内用断熱手段の一例である。断熱天井230は、例えば梁290に支持されている。本実施の形態における断熱天井230は、厚さ10cm程の発泡材241と、表裏の両面にアルミ箔242を貼付けた複数の板状の部材(天井部材231)から成る。発泡材241は室内用断熱層の一例であり、外部からの伝導熱を断熱する。アルミ箔242はアルミニウムを圧延し薄紙状にしたもので、室内用遮熱層の一例である。アルミ箔242は、ハウス200の外部からの放射熱を強度に抑制遮熱する。
【0045】
断熱天井230は、図1に示すように、幅1m程の板状とした複数の天井部材231を梁290上に平行に並べて設置したものである。各天井部材231は長辺の両端部において蝶番を有し、隣接する天井部材231と蝶番により折畳み可能に接続している。そのため、断熱天井230は、図1の点線で示すように蛇腹状に折畳まれ、天井を開放可能としている。
【0046】
本実施の形態の植物栽培用ハウス100は、さらに、ハウス200の周囲に配置された室内用断熱手段を備えている。具体的には、室内用断熱手段は、植物栽培用ハウス100の外壁の220の内側に設けられた断熱材による断熱壁250である。断熱壁250はハウス200内部にハウス外部から伝熱される熱、例えば外気による対流熱や太陽の直射などで過熱された外壁220からの熱を断熱する。断熱壁250は、厚さ20cm程の発泡材251を用いた壁であり、内側(ハウス内部)にアルミ箔252を貼付けられている。発泡材251は、ハウス外部からの伝導熱を断熱する室内用断熱層の一例であり、内側に貼り付けられたアルミ箔252は、ハウス内への放射熱を抑制する室内用遮熱層の一例である。発泡材251の厚さは大きいほど断熱の効果はあるが、設備費用を考慮すれば約10cmから20cmの厚さが好適である。
【0047】
断熱天井230の折畳みは、農業従事者が手作業により折畳みを行ってもよい。また、電動モータを利用して、農業従事者が動作内容を指示するスイッチを入れることにより自動的に折畳まれるようにしてもよい。また、断熱天井230を時刻やハウス内の環境により自動的に折畳むことも可能である。例えば、コンピュータと温度センサと電動モータとを有するシステム(図示していない)において、温度センサが測定した温度を示す信号をコンピュータに対し送信し、コンピュータは送信された信号から、ハウス内の温度がコンピュータの記憶部が記憶する所定の温度を超えたか否かを判断する。温度センサの測定した温度が所定の温度を超えるとコンピュータが判断した場合、コンピュータは、電動モータに対して断熱天井230を開放する制御信号を送信する。制御信号を受信した電動モータは断熱天井230の開放を行う。温度センサの測定するハウス内の温度が所定の温度より下がるとコンピュータが判断した場合は、断熱天井230を閉鎖する信号を電動モータに対して送信する。コンピュータは、断熱天井230を開閉する所定の時刻を予めコンピュータの記憶部に記憶しておき、タイマを用いて所定の時刻が経過したとコンピュータが判断した時点で、電動モータに対し開放信号または閉鎖信号を送信しても構わない。
以上の制御は、ハウスの熱容量を考慮すれば、フィードフォワード制御とするのが望ましい。
【0048】
本実施の形態の植物栽培用ハウス100は、太陽光が照射される日中において、室内用断熱手段を閉鎖される、すなわち断熱天井230を折畳まれた状態から広げられることにより断熱し、植物を栽培するハウス内部の温度の上昇を防止する。夜間においては、蛍光灯210が照射する光により植物300の栽培を行う。断熱天井230が折畳まれ天井部分が開放されることにより、ハウス200内部の熱が屋根210に伝達される。屋根210に蓄積された熱は、夜間の放射冷却現象や外部への熱伝達により放熱される。このように農業従事者が断熱天井230の開閉を行うことによりハウス200内部の温度調整を行う。
【0049】
図2に室内用断面手段の開閉方法の他の例を示す。室内用断面手段は、厚さ数ミリの発泡材から成る発泡シートを用いて作成してもよい。発泡シートは厚さ10cmの発泡材をと比較して断熱効果は若干劣るが、シート状のため取り扱いが容易であるというメリットがある。発泡シートの表と裏との両面に、または表と裏との片面のどちらかにアルミ箔を貼付けたものを遮熱シートと呼ぶ。図2(a)は室内用断熱手段にシート状の遮熱シート233を用いた場合の断面を示している。図2(a)に示した室内用断熱手段を開放する場合、遮熱シート233を筒状に巻き、閉鎖する場合は筒状の遮熱シート233を広げ敷くことにより天井部分を開放する。梁290の中央付近から左右両方向(E方向、F方向)に遮熱シート233を筒状に巻き、天井を開放してもよい。農業従事者は遮熱シート233を筒状に巻く量を増減させることにより、天井の開放面積を調整し、植物300近傍の温度を調整することができる。
また、図2(b)は、板状の天井部材231を回動させることにより室内用断熱手段を開閉可能とする方法を示している。天井部材231の短辺における端部の一方に軸243を設け、点線で示すように天井部材231を下方に回動させることにより、農業従事者は断熱天井230を開放する。軸243を天井部材231の短辺の中央に位置させることにより、室内用断熱手段をブラインド状に開閉しても構わない。
【0050】
次に本実施の形態の植物栽培用ハウス100の地熱の利用方法について説明を行う。
図3は、気象庁が計測した群馬県前橋市の外気温と地中温度の年間変動を示したものである。外気の温度は年間を通じて2度から25度まで変化しており、地表に近い地下5cmにおける温度も外気の温度の変化とほぼ同じように、2度から28度まで変化している。すなわち、地表付近は外気の温度に影響され変化する。一方、地下2mから5mまで地中温度は、10度から17度付近までの温度変化であり、地表付近と比較して温度の変化が小さい。すなわち、地表付近の土壌は、太陽からの放射熱と地表の空気の伝熱ため温度の変化が激しいが、地表から2m以上深い地中の温度は年間を通じて比較的安定している。
【0051】
そこで、本実施の形態の植物栽培用ハウス100は、2m以上深い地中の地熱を利用するため、ハウス200の外部の土壌410から室の内部の土壌(地面400)に伝達される地熱を断熱する地中断熱壁253(地熱断熱手段の一例)を具備する。
再び図1を用いて説明する。地中断熱壁253は地中に向かって埋設されている壁部である。本実施の形態の地中断熱壁253は、ハウス200を取り囲む断熱壁250を地中方向に延長して壁部としている。地中に埋設する部分は、必ずしも地上部分の断熱壁と同じにする必要はなく、壁の材料を変更して別部材として埋設してもよい。例えば地中の壁部は一定の幅を有する空気層であっても構わない。但し、地下1m付近においても、地中温度の温度差は大きいため、地中断熱壁253の地表からの深さ(図1のH)は、少なくとも2m以上である必要がある。望ましくは、地中断熱壁253の地表からの深さは5m以上であることが望ましい。
なお、本実施の形態においては、地中断熱壁253は側面方向(例えば図1におけるC方向)からの地熱を断熱しているのみで、地中方向(下方)からの地熱を断熱していない。これは、地中方向からの熱は、外気の影響を受けにくく安定しており、地中方向からの熱を断熱するよりも利用した方が、ハウス内温度の安定につながるからである。地中方向からの地熱を断熱した場合、ハウス内の土壌の温度はハウス200の内部の温度に左右される可能性がある。よって、図1に示すように、地熱断熱壁253は側面方向からの地熱を断熱するように形成し、地中方向には形成しないのが望ましい。このように形成することによって、地中方向からの地熱によりハウス内の地面400にある土壌の温度が安定し、ハウス内の温度が安定するようになる。
【0052】
次に、本実施の形態の植物栽培ハウス100の除湿方法について説明する。
本実施の形態の植物栽培ハウス100は、屋根210、外壁220、断熱壁250により密閉されているためハウス200内部に湿気が溜まり易く、湿度が高くなる。湿度が高い場合、結露によりハウス200内部にカビまたは金属の錆びまたは電気機器の漏電が発生する。漏電は危険であり、カビまたは金属の錆びは植物の成長に悪影響を与えるので、ハウス200内部の湿度を適切なものとなるよう除湿する必要がある。
【0053】
ハウス200内部を除湿するために通常の除湿機を用いることも可能である。しかしながら、通常の冷凍方式または圧縮方式による除湿機を用いた除湿は、圧縮機を用いるため電力費用がかかり、ランニングコストが高くなるという課題がある。そこで、本実施の形態では、湿度を下げるために顕熱交換器338を備えている。顕熱交換器338は、ハウス200内部の空気と外部の空気とを交換する際に熱(主に顕熱)を交換し、湿気を含む内部の空気を外部に放出するものである。湿気をもった空気すなわち水蒸気を含んだ空気は外部に放出されるため、ハウス200内部の湿度は下がる。一方、外部の空気と内部の空気との熱は交換されるのでハウス内の温度の変化は少ない。
【0054】
顕熱交換器とは、隔壁を通じて二つの流体間で熱の授受を行う装置の一つであり、例えば、隔壁に特殊加工された紙またはプラスチックを用いることにより、顕熱を交換することが可能な装置である。顕熱交換器は、特殊加工された通気性のない仕切板と間仕切板とで構成された隔壁と、隔壁を通じてハウス内部の空気をハウス外部に送風する排気用送風機と、隔壁を通じてハウス外部の空気をハウス内部に送風する給気用送風機とを有する。顕熱交換器が有する排気用送風機と給気用送風機の送風により、隔壁を通じてハウス内空気と室外空気と交換し、隔壁を通過する際にそれぞれの空気の顕熱を交換する。空気を交換する際に、隔壁による水蒸気の移動は行われない。すなわち、空気の顕熱を交換しつつ湿気を含む空気を放出するので、ハウス内の温度変化を少なくするともに、除湿することが可能となる。本発明の植物栽培用ハウス100は、送風のみによる熱の交換のため、電力費用の高い圧縮機を利用していない。顕熱交換器338は一般的な除湿機のように圧縮機を利用しないことから、除湿のための電力費用を抑えランニングコストを低減させる。除湿を目的とした顕熱交換器338として、例えば、排湿用ロスナイ(商標登録)がある。
【0055】
本実施の形態で用いる顕熱交換器338の使用方法について以下に述べる。
日本、とくに本州おいて、秋季から春季まで(10月から翌4月)は、蛍光灯310(照明手段の一例)を点灯していない場合、ハウス200内の温度は、潅水で湿っている地面400の土壌温度より低くなるので、結露防止のために除湿の必要性が生じてくる。上述したようにカビが生えたり、錆びたり、漏電したりするからである。幸い秋季から春季においては外部の絶対湿度は低いため、顕熱交換器338を用いて排出する必要がある。
一方、夏季(6月から9月)の間、蛍光灯310を点灯していない場合でも、ハウス200内の最低温度は地面400の土壌温度(土壌付近の温度、露点)より高くなるので、ハウス内で結露する可能性は少なく、顕熱交換器338を用いる必要はない。さらに言えば、夏季は絶対湿度が外部のほうが高くなる場合があり、外部の湿度がハウス内部の湿度より高い場合は、外部の空気を取り入れる顕熱交換器338を使わない方が望ましい。外部の湿度が高いときに換気が必要な場合は、全熱交換器を使うべきである。
【0056】
次に本実施の形態における植物栽培ハウスの蛍光灯310(照明手段の一例)と蛍光灯310の周囲について、図4を用いて説明する。図4は、植物栽培ハウスの蛍光灯310とその周囲の構成について示している。図4(a)は縦断面図、図4(b)は、蛍光灯310が一本の場合の横断面図、図4(c)は、蛍光灯310が二本の場合の横断面図である。
【0057】
本実施の形態の蛍光灯310には、図4(b)に示すように、蛍光灯310を上から覆うように笠312が設置されている。また、筒体318が、笠312の頂部から上方に延びるよう設置されている。さら、に笠312を覆うように、後述する植物用屋根326(植物用遮熱手段の一例)が設置されている。蛍光灯310、笠312、筒体318および植物用屋根326は、一体の部材として照明ユニット360を形成しており、照明ユニット360は例えば梁290から巻上機320によって吊下げられ、植物の成長に合わせて上下に移動することができる。植物300の成長に合わせて照明ユニット360の高さを調整することにより、蛍光灯310からの光を最も効率のよい位置から照射させることができる。また、植物300の播種または収穫のときには、照明ユニット360を農業従事者より高い位置に移動させることにより、作業の障害とならないようにすることができる。
【0058】
本実施の形態の笠312について説明する。図4(b)に示すように、笠312は、断面を放物線状となるように形成されている。蛍光灯310は、例えば、放物線状の笠312の焦点に位置決めされている。笠312の内面は、蛍光灯310から照射された光を反射するようプラスチックで構成されているか、または表面に加工(例えば、白く塗装またはアルミ箔の貼付)が施されている。笠312の断面は放物線状であるので、蛍光灯310から照射された光は笠312の内面によって反射・集光され、下方の植物300に照射される。笠312の幅KWは畝324の幅を超えないように形成する。
【0059】
植物に照射する光の照度を上げるために、照明ユニット360は、図4(c)に示すように複数の蛍光灯310を備えてもよい。複数の蛍光灯310に対応する笠は、蛍光灯310のそれぞれに放物線状の笠312を配置し、各笠312が重複する部分を切取り、平面の笠板313により連結して作成する。平面の笠板313の幅LHと蛍光灯310からの距離LHとは、植物300への照度が均一化するように調整して位置決めする。
【0060】
次に本実施の形態の筒体318について説明する。筒体318は、笠312の頂部314から上方に延びるように形成されている。笠312の頂部314には、笠312の内部に充満した空気を排出する開口部315がある。筒体318は、開口部315と筒体318の空洞部319とを位置合わせして、空気を上方に流すように形成されている。図4(a)に示すように、本実施の形態においては、筒体318は蛍光灯310の端部に対応する二箇所に配置されている。蛍光灯310の最もよく熱を発する場所は蛍光灯310のソケットの周辺であるので、ソケット周辺に筒体319を形成することが望ましい。蛍光灯310により熱せられた笠312の内部の空気は膨張し、筒体318の上方の空気の密度より小さくなるので、筒体318は煙突効果により笠312内部の空気を上方に排出される。
【0061】
本実施の筒体318の形状は、煙突効果をより効果的にするため、内径EWは約3cm、高さEHは約20cmの寸法により形成されている。筒体318の内径EWは3cm以上であっても構わない。また、屋根210の付近に伝熱するために、高さEHは20cm以上としても構わない。照明ユニット360を農作業のため上下させることを考慮すると、高さEHは概ね20cmが望ましい。笠312の内部の空気を上方に排出させるため、笠の頂部314の開口部315において、笠312の内部の空気を上方に送風するファンを取付けてもよい(図示していない)。ファンと筒体318とを併用して取付けてもよい。併用する場合、空気の流量が増加するので、笠312の開口部315と筒体318との数を減らすことができる。
【0062】
本実施の形態の笠312の上方には、ハウス外部から植物に対して放射される放射熱を遮熱する植物用屋根326(植物用遮熱手段の一例)が位置されている。本実施の形態の植物用屋根326の断面はコの字型に形成されており、蛍光灯310と笠312とを上方から覆うように配置されている。植物用屋根326の上面(屋根210向きの面)には放射熱を反射する植物用反射層328を有する。具体的には植物用屋根326は、上面に植物用反射層328としてアルミ箔を貼付けられており、貼付けられたアルミ箔により屋根210方向からの放射熱を反射する。本実施の形態の植物用屋根326は、植物300のみならず畝324に対する放射熱も防止するために、植物用屋根326の幅YWは畝の幅以上に形成されている。
【0063】
また、本実施の形態に係る植物栽培用ハウス100は、畝324上に光反射板316を有している。光反射板316は、蛍光灯310から照射された光を、笠312の方向へ反射する、例えばプラスチック発泡材にアルミ箔を貼り付けた板である。光反射板316は、蛍光灯310に対して向き合うように畝324上に位置決めされる。畝324は土壌であるので、光反射板316を単に載せるだけでは不安定となり、蛍光灯310から照射された光を笠312に反射しない場合がある。そこで、本実施の形態においては、光反射板の位置と床面に対する角度とを調整するために、固定部330を具備している。固定部330は、例えば、図4(b)に示すように光反射板316から下方に突起した複数の棒333である。また、図4(c)に示すように固定部330は、畝324の長辺に対して平行に配置した二本の棒334であってもよい。また、光反射板316は栽培される植物の通る開口部332を有しているが、農業従事者は、開口部332に対応するよう土壌を盛り上げて山を形成することにより、光反射板316を固定してもよい。
【0064】
次に、本実施の形態に係る植物栽培用ハウス100の床温度調整手段について、再度図1用いて説明する。本実施の形態に係る植物栽培用ハウス100は、図1に示すように畝324上に潅水用の水路322を備えている。水路322は、養液を小出しにする複数の排出用穴(図示していない)を有している。農業従事者は、水路322に養液を流し、排出用穴から常時または定期的に畝324に対して養液を小出しすることにより植物300に養液を与える。この方法を用いる農業は養液土耕といわれるもので、間歇的に養液を出すものを点滴潅水法、連続的に出すものを散水潅水法と呼ばれている。農業従事者が小出しする養液の温度を調整すれば、床温度調整手段は養液からの直接的な伝熱により畝324または土壌(地面400)の温度を調整する。
【0065】
灌水用の養液として井戸水または地下水を利用すれば、畝324の温度を例えば温帯の植物に適した温帯の井戸水または地下水の温度(約16度)に近いものとすることができる。地下水の温度は上述のように地下5m以下の温度と等しく年間を通じて比較的安定していることから、地下水を用いれば、夏季においては畝324の温度を冷却し、冬季においては、畝324を温めるという効果がある。さらに、ヒータを用いて水を温めれば冬季における畝324または土壌(地面400)の温度低下を防止することができる。
【0066】
また、本実施の形態に係る水路322(床温度調整手段の一例)と、開閉可能な断熱天井230(室内用断熱手段の一例)を用いれば、農業従事者は次のように植物栽培用ハウス100を使用することにより温帯の野菜を栽培することができる。開閉可能な断熱天井230は、両面アルミ箔貼りの厚さ10cmの発泡材で構成されており、水路322からの点滴潅水は常に行われているものとする。
【0067】
まず、温帯(例えば近畿地方)の夏季において、本実施の形態の植物栽培ハウス100を使用する場合について説明する。農業従事者は深夜を挟んだ夜間の約10時間、蛍光灯310を点灯し植物に光を照射する。蛍光灯310の点灯時において、農業従事者は断熱天井230を開放する。農業従事者は潅水用の水に井戸水を利用し、水の温度を約16度とする。一方、昼を挟んだ14時間においては、農業従事者は蛍光灯310を消灯し植物に光を照射するのをやめ、断熱天井230を全て閉鎖し、室を密閉状態とする。農業従事者は、潅水用の水に、夜間と同様、井戸水を利用する。
【0068】
温帯の冬期は、消灯時の昼間において、農業従事者は外部からの冷熱を断熱するため断熱天井230を全て閉じる。それでも昼間に夜間においてハウス200の内部の温度がひいては床の温度が下がりすぎる場合があるので、農業従事者は深夜の点灯時に断熱天井230の開閉を室内の温度が高めになるよう制御して熱を床に入れ、昼間の低下を補償する。断熱天井230の開閉作業を、室内の温度センサとコンピュータを利用して機械的に制御してもよい。
【0069】
次に、亜寒帯(例えば、北海道)の場合は、地下2m以下の温度が温帯の場合より数度低い。そのため潅水に例えば地下水を利用して温帯の野菜を栽培する場合には、地下水を常時加熱して温帯の地下水と同じ温度にする。いずれにしても農業従事者は、温帯の地下水とほぼ同じ温度の水を潅水として使い、夏季、冬季を問わず、次のようにして栽培する。昼間において蛍光灯310を消灯する際は、断熱天井230を全て閉じる。夜間の点灯時においては、蛍光灯310の発生する熱によりハウス200内部の温度が上昇するので、ハウスの床温度が16度近傍になるように断熱天井230を開閉し、ハウス200内部の温度を調整する。とくに冬季は、16度よりやや高めになるように調整して、昼間の床の温度低下を補償する。
【0070】
豪雪地帯(例えば、北陸、東北の日本海側)の夏季においては、農業従事者は温帯の夏季の場合と同様の手段・条件により栽培する。豪雪地帯の冬季は、場所によっては常時外気温がゼロ度となるので、ハウスの床温度が16度近傍になるように点灯時に断熱天井230の開閉を制御する。ただし潅水の温度は温帯の井戸水と同じ温度にする。
【0071】
亜熱帯(例えば、沖縄地方)においては、農業従事者は、水(潅水)の温度を下げることにより土壌温度を下げる。
上記のように、農業従事者が植物栽培用ハウス100を利用すれば、どの地域においても温帯の野菜を栽培することができる。
【0072】
床温度調整手段の別の方法について図5を用いて説明する。
5(a)は、植物栽培用ハウスの循環水路の配置状況を示す部分拡大断面図、図5(b)は循環水路の配置状況を示す平面図である。上述の床温度調整手段においては、灌漑用水の温度を調整することにより床温度調整手段を実現していたが、図5に示す床温度調整手段は灌漑用水路322を用いるのではなく、図5(b)に記載されている点線のように、畝324の周囲に循環水路420を別途配置して作成されている。循環水路420は、例えば、図5(a)に示すように、床の畝を避けて土壌表面近くに埋設して取付けられてもよい。図5(b)に示すように床温度調整手段はポンプ430を具備し、循環水路420を循環する水を循環する。循環水路420は一時的に水を貯蔵する貯水槽440と接続されており、貯水槽440に蓄積された水は、温度調整後に再度、ポンプ430によりハウス内を循環する。
【0073】
灌漑用の水を利用する場合は、熱は水と共に土壌に吸収される。しかしながら、水を循環させる方法の場合は、貯水槽に再度水が帰還するので、水に蓄積された熱を有効に再利用可能である。従って、循環水路を利用すれば、例えば、水を加温に用いるヒータの電力を減少させ、電力費用を抑えることができる。
【0074】
循環水路420は、図5(a)に示すように、上部または下部に水路の熱を土壌に伝熱するためのフィン422を有してもよい。フィン422を備えることにより、土壌と接する表面積が増加し、水からの伝熱効果を高めることができる。
【0075】
図6は水耕栽培の場合の畝周辺の部分拡大断面図を示す。水耕の場合は、まず畝または地面を養液槽500(水槽の一例)が形成されるように堀り下げ、その上にビニールシート530(不浸透層の一例)を養液520が洩れないように敷き詰める。これに養液520を溜め満たした後に、例えば発泡材からなる比重が小さい光反射板510を浮かべる。この光反射板510には上から植物550を差し込めるような穴が開いている。前記の養液槽500に養液520を注水または取水するパイプを上から挿入し、養液520を温度制御しながら循環させる。この養液からの熱伝導によって養液槽500の温度、ひいては地面540の温度が制御され、さらには熱伝達によってハウス200内部の温度が制御される。
【0076】
図1を再び参照すると、本実施の形態の植物栽培用ハウス100は、屋根210と断熱壁250とにより密閉されているため、ハウス200内部の空気と外部の空気とが交換されることがない。そのため、栽培中の植物300から発生する酸素は、植物300の周辺に充満しやすい。酸素の充満された状態は植物300の光合成を阻害するので、本実施の形態の植物栽培用ハウス100は、蓄積された酸素を発散させ光合成を促進するために、ハウス200内に空気循環ファン334を備えている。
【0077】
酸素が植物300の周辺に充満される一方、二酸化炭素は光合成により減少する。本実施の形態の植物栽培用ハウスは、光合成の効率を高めるために、二酸化炭素ボンベ336を備えている。植物栽培用ハウス100は二酸化炭素ボンベ336により二酸化炭素をハウス200内部に取込んでいる。ハウス200内部に二酸化炭素の濃度を計測する二酸化炭素センサ(図示していない)を設ければ、作業者は、二酸化炭素センサによる計測値に基づいて、二酸化炭素ボンベ336の開閉を行うことにより、植物300の栽培に適した二酸化炭素の濃度を維持することができる。また、例えば、二酸化炭素センサとコンピュータと二酸化炭素ボンベ336とを備えた二酸化炭素濃度を制御するシステムにおいて、コンピュータが二酸化炭素センサの計測値から所定の濃度を超えたと判断した場合に、二酸化炭素をハウス200内部に送る指示信号を二酸化炭素ボンベ336に送信して二酸化炭素の排出量を制御させることにより、ハウス200内部の二酸化炭素の濃度を自動的に制御することも可能である。また、空気循環ファン334が植物300の周辺に微風を送ることにより、二酸化炭素と酸素の濃度が均一化され、光合成による二酸化炭素の吸収と酸素の発散とが活発になる。
【0078】
本実施の形態の植物栽培用ハウス100は、ハウス200内部に紫外線ランプの入ったダクト340を備えている。紫外線ランプとは紫外線放射の割合が高いランプであり、例えば、水銀ランプである。紫外線は殺菌効果を有するので、紫外線ランプの入ったダクト340に強制的にファンにより空気を取り込んで殺菌する安全な循環式空気殺菌灯などがある。また、紫外線をハウス200内部に放射することにより、例えば、病害虫の繁殖を抑制することも考えられる。上述の空気循環ファン334を紫外線ランプに向けて配置することにより、病害虫は紫外線ランプの付近に集まるので、紫外線ランプの殺菌効果はさらに高まる。
【0079】
本実施の形態の植物栽培用ハウス100のハウス内は、屋根210および断熱壁250により密閉されている。農業従事者が農作業のために出入りする出入口が必要であるが、植物栽培用ハウスが出入口として単に一重の扉を備えた場合、扉の開閉時に病害虫が侵入する可能性がある。また、扉の開閉時に外気が侵入することにより、ハウス200内部の温度が影響される。本実施の形態に係る植物栽培用ハウス100は、病害虫と外気との侵入を防ぐことを目的として出入口の扉を二重扉にしている(図示していない)。出入口の扉を二重扉とすれば、一方の扉が開閉された場合においても、他方の扉は閉鎖されているので、ハウス200内部の密閉性は確保され、かつ人の出入りが可能となる。植物栽培用ハウス100は、二重扉の代わりに回転扉を備えていても構わない。
【0080】
植物の根がはる地下1m以内の地中温度は、上述のように、季節によって植物栽培には高すぎたり、低すぎたりすることがある。また雑菌が繁殖していることがある。従って、農業従事者は、ハウス使用開始に当たって、肥料の代わりに次亜塩素酸ナトリウムあるいは微量の銀イオンを加えた潅水を、平常運転の5割り増し程度の流量で約1週間流し続けてから、栽培を開始する。
【0081】
当該技術分野における当業者にとって明らかであるように、上記説明は、本発明がどのように実施されるかを示した実施例としてのみ解釈されるべきである。また、本発明は、主旨を逸脱しない範囲において当業者の知識に基づき種々なる改良、修正、変更を加えた態様により実施できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】実施の形態1に係る植物栽培用ハウスの構成の一例を示す概略断面図である。
【図2】実施の形態1に係る植物栽培用ハウスの室内用断熱手段の他の例を示す図であり、図2(a)は室内用断熱手段にシート状の遮熱シートを用いた場合を示す部分断面図、図2(b)は室内用断熱手段に板状の天井部材を利用した場合を示す部分断面図である。
【図3】外気温と地中温度の年間変動を示すグラフである。
【図4】実施の形態1に係る植物栽培用ハウスの照明ユニットと畝の一部を示す部分拡大断面図であり、図4(a)は照明ユニットの縦断面図、図4(b)は一列の蛍光灯(照明手段の一例)を有する照明ユニットを示す横断面図、図4(c)は二列の蛍光灯を有する照明ユニットを示す横断面図である。
【図5】実施の形態1に係る植物栽培用ハウスの循環水路の一例を示す図であり、図5(a)は、植物栽培用ハウスの循環水路の配置状況を示す部分断面図、図5(b)は循環水路の配置状況を示す平面図である。
【図6】図6は水耕栽培の場合の畝周辺の一例を示す部分拡大断面図である。
【符号の説明】
【0083】
100 植物栽培用ハウス
200 ハウス
210 屋根(放熱手段の一例)
212 外面
214 アルミ箔
220 外壁
230 断熱天井(室内用断熱手段の一例)
231 天井部材
233 遮熱シート(室内用断熱手段の一例)
241 発泡材(室内用断熱層の一例)
242 アルミ箔(室内用遮熱層の一例)
243 回転部
250 断熱壁(室内用断熱手段の一例)
251 発泡材(室内用断熱層の一例)
252 アルミ箔(室内用遮熱層の一例)
253 地中断熱壁
290 梁
292 柱
300 植物
310 蛍光灯
312 笠
314 頂部
315 開口部
316 光反射板
318 筒体
319 空洞部
320 巻上機
322 水路
324 畝
326 植物用屋根
328 植物用反射層
330 固定部
332 開口部
334 空気循環ファン
336 二酸化炭素ボンベ
338 顕熱交換器
340 紫外線ランプの入ったダクト
400 地面
410 外部の土壌
420 循環水路
422 フィン
430 ポンプ
440 貯水槽
500 養液槽
510 光反射板
520 養液
530 ビニールシート
540 地面
550 植物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
床面を屋根と壁とにより覆って形成され、前記屋根と前記壁とにより太陽光を遮断するハウスと、
前記ハウスの内部にて栽培される植物に光を照射する照明手段と、
前記屋根に備えられていて、前記ハウスの内部の熱を前記ハウスの外部に、熱放射により放熱する放熱手段と、
前記ハウスの外部から前記ハウスの内部まで伝熱される熱を少なくとも部分的に断熱する室内用断熱手段と、を具備する植物栽培用ハウス。
【請求項2】
前記床面は地面から成り、
前記栽培される植物は、前記地面の土壌により栽培される植物である請求項1に記載の植物栽培用ハウス。
【請求項3】
前記室内用断熱手段は開閉可能である請求項1に記載の植物栽培用ハウス。
【請求項4】
前記室内用断熱手段は、外部からの伝導熱を断熱する室内用断熱層と外部からの放射熱を遮熱する室内用遮熱層とのうちの少なくとも一方を有する請求項1に記載の植物栽培用ハウス。
【請求項5】
前記放熱手段は、可視光および近赤外の領域における反射率が80%以上であって、遠赤外の領域における放射率が70%以上である物質により塗装された少なくとも一部の前記屋根の外面である請求項1に記載の植物栽培用ハウス。
【請求項6】
さらに、前記ハウス周囲の外部の土壌から前記ハウスの内部の土壌に伝達される熱を断熱する地熱断熱手段を具備する請求項1に記載の植物栽培用ハウス。
【請求項7】
さらに、前記照明手段から照射される光を植物の方向に集光する笠と、
前記笠の頂部から上方に延びていて、前記照明手段から発生した熱を上方に排出する筒体と、を具備する請求項1に記載の植物栽培用ハウス。
【請求項8】
さらに、前記照明手段によって照射される光を、前記照明手段に向かって反射させる光反射板を前記植物の根元に具備する請求項1に記載の植物栽培用ハウス。
【請求項9】
さらに、熱を有する前記屋根から前記ハウスの内部に向かって放射される放射熱を抑制する放射率が10%以下の放射熱抑制層を、前記屋根の少なくとも一部の内面に具備する請求項1に記載の植物栽培用ハウス。
【請求項10】
さらに、前記照明手段の上方に位置し、前記屋根から前記植物に放射される放射熱を遮熱する植物用遮熱手段を、具備する請求項1に記載の植物栽培用ハウス。
【請求項11】
さらに、前記ハウス内部の空気の熱と前記ハウス外部の空気の熱とを交換し、前記ハウス内部の空気に含まれる湿気を前記ハウス外部に排出する顕熱交換器を、具備する請求項1に記載の植物栽培用ハウス。
【請求項12】
さらに、前記植物の栽培に用いる養液の温度を調節して、前記植物の周辺の土壌である畝の温度を、前記養液からの熱伝導により調整する床温度調整手段を、具備する請求項2に記載の植物栽培用ハウス。
【請求項13】
前記床温度調整手段は、
さらに、前記床面の表面近傍に配置され水が流動し循環する循環水路と、
前記循環水路に前記水を流動させるポンプと、
前記水を一時的に貯水する貯水槽と、を具備し、
循環する前記水からの熱伝導により、床温度を調節する前記請求項12に記載の植物栽培用ハウス。
【請求項14】
前記床面を掘り下げて形成され、水を透さない不浸透層により覆われた水槽と、
前記水槽に溜められた前記植物の水耕栽培に用いる養液の表面に位置し、前記照明手段によって照射される光を前記照明手段に向かって反射させる光反射板と、を具備する請求項1に記載の植物栽培用ハウス。
【請求項15】
前記光反射板は、前記植物を前記養液の表面に位置させるよう支持する請求項14に記載の植物栽培用ハウス。
【請求項16】
前記養液を温度調整し循環させて、前記床面の温度を前記養液からの熱伝導により調整する床温度調整手段、を具備する請求項14に記載の植物栽培用ハウス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−268377(P2009−268377A)
【公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−119895(P2008−119895)
【出願日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【出願人】(508132458)
【出願人】(508132702)
【Fターム(参考)】