説明

植物栽培用照射装置

【課題】 既設の支持フレームに取付ける場合であっても的確かつ最適な取付けを可能にして取付に対するフレキシビリティを高めるとともに、生育むらなどの生じない均質な植物の栽培を実現する。
【解決手段】 伝熱性を有する素材により形成した細長いベース体3と、このベース体3の下面3dに配した少なくとも一つ以上のLED2…を有する少なくとも一つ以上のLED発光部4…と、ベース体3の任意の位置に取付可能に構成した第一取付部6dと支持フレームFの任意の位置に取付可能に構成した第二取付部6uを所定長さの連結部6cを介して一体化させた吊下体6,及び第一取付部6dをベース体3に固定し、かつ第二取付部6uを支持フレームFに固定する固定手段7を有する少なくとも二以上の吊下器5…とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、栽培する植物の上方に配した支持フレームに取付けることによりLEDを発光させて当該植物に照射を行う際に用いて好適な植物栽培用照射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、栽培を行う植物の上方にLED(発光ダイオード)を配し、このLEDを発光させて植物に照射するようにした植物栽培用照射装置としては、特許文献1で開示される完全制御型有機栽培式植物工場おける植物栽培用照射装置が知られている。
【0003】
同文献1に開示される完全制御型有機栽培式植物工場は、植物を効率よく且つ優れた形状となるように生育させること等を目的としたものであり、平面視において互いに重なるように、複数の栽培ベッドが多数配置されており、各栽培ベッドには、植物が栽培される有機培地が保持されており、各栽培ベッドの上方には、有機培地で栽培されている植物に照射される光の光源として、蛍光ランプと、植物の生育促進に有効な波長の光を放射する発光ダイオード(LED)とが配置された構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−118957号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1で開示される完全制御型有機栽培式植物工場で用いられる植物栽培用照射装置をはじめ、従来におけるこの種の植物栽培用照射装置は、次のような問題点があった。
【0006】
即ち、植物工場等にLEDタイプの照射装置を設置する場合、予め総合的に設計した専用の植物工場等であれば、照射装置も設置環境にマッチングさせた設計を行うことが可能になるが、既設の植物工場等に、汎用性を有する照射装置を設置する場合には、LEDが蛍光管と異なり、照射範囲に指向性(120゜前後)を有する点光源となるため、取付環境によっては、的確かつ最適な取付けが困難となり、結局、栽培する植物に生育むらを招くなど、栽培に悪影響を与えやすい。
【0007】
特に、蛍光管をLEDタイプの照射装置に変更する場合、植物の栽培を行う栽培棚等は、蛍光管の取付けを前提に構成(設計)されているため、汎用性を有する照射装置を設置する場合には、取付スペースを確保できず、取付が困難になったり、或いは必要な照射量(光量)を確保できないなど、取付に対するフレキシビリティ性に劣る。
【0008】
本発明は、このような背景技術に存在する課題を解決した植物栽培用照射装置の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上述した課題を解決するため、栽培する植物Pの上方に配した支持フレームFに取付けることにより当該植物Pに対してLED2…を発光させて照射を行う植物栽培用照射装置1を構成するに際して、伝熱性を有する素材により形成した細長いベース体3と、このベース体3の下面3dに配した少なくとも一つ以上のLED2…を有する少なくとも一つ以上のLED発光部4…と、ベース体3の任意の位置に取付可能に構成した第一取付部6dと支持フレームFの任意の位置に取付可能に構成した第二取付部6uを所定長さの連結部6cを介して一体化させた吊下体6,及び第一取付部6dをベース体3に固定し、かつ第二取付部6uを支持フレームFに固定する固定手段7を有する少なくとも二以上の吊下器5…とを備えることを特徴とする。
【0010】
この場合、発明の好適な態様により、支持フレームFには、植物Pを載置するための複数段の棚Rを構成するフレーム部材Fsを適用することができる。また、ベース体3の平面視形状は、蛍光管の平面視形状に似せて形成することができるとともに、ベース体3の素材には、少なくともアルミニウム素材を含ませることができる。一方、吊下器5の第一取付部6dは、ベース体3の幅方向における両端を一対の把持部6dp,6dqにより把持して取付可能に構成できる。さらに、吊下器5の連結部6cは、把持部6dp,6dqから延出した一対の連結片部6cp,6cqにより形成し、かつこの連結片部6cp,6cqに第二取付部6uを連続形成するとともに、一対の連結片部6cpと6cq間を固定可能な固定手段7を用いることができる。
【発明の効果】
【0011】
このような構成を有する本発明に係る植物栽培用照射装置1によれば、次のような顕著な効果を奏する。
【0012】
(1) 下面3dにLED発光部4…を配した細長いベース体3の任意の位置に取付可能に構成した第一取付部6dと支持フレームFの任意の位置に取付可能に構成した第二取付部6uを所定長さの連結部6cを介して一体化させた吊下体6,及び第一取付部6dをベース体3に固定し、かつ第二取付部6uを支持フレームFに固定する固定手段7を有する吊下器5…を備えるため、各種形態により構成される既設の支持フレームFに取付ける場合であっても、第一取付部6d及び第二取付部6uの取付位置を任意かつ容易に変更し、的確かつ最適な取付けが可能になるなど、取付に対するフレキシビリティを高めることができるとともに、生育むらなどの生じない均質な植物Pの栽培を実現できる。
【0013】
(2) 好適な態様により、支持フレームFに、植物Pを載置するための複数段の栽培棚Rを構成するフレーム部材Fs…を適用すれば、特に、フレーム部材Fs…の組合わせにより構成される様々な栽培棚Rに対して、的確かつ確実な取付けを行うことができるため、この種の栽培棚Rに取付ければ、植物栽培用照射装置1の有効性を確保する観点から最適なパフォーマンスを得ることができる。
【0014】
(3) 好適な態様により、ベース体3の平面視形状を、蛍光管の平面視形状に似せて形成すれば、蛍光管タイプの照射装置から植物栽培用照射装置1に変更する場合であっても、取付スペース等に対する適合性を確保できるため、植物栽培用照射装置1を容易かつ確実に取付けることができる。
【0015】
(4) 好適な態様により、ベース体3の素材に、少なくともアルミニウム素材を含ませれば、一般的な金属素材の利用により、比較的低コストに実施できるとともに、必要な強度及び伝熱性を確保できる。
【0016】
(5) 好適な態様により、吊下器5の第一取付部6dを構成するに際し、ベース体3の幅方向における両端を一対の把持部6dp,6dqにより把持して取付可能に構成すれば、比較的簡易な構成により低コストに実施できるとともに、ベース体3に対して容易かつ確実に取付けることができる。
【0017】
(6) 好適な態様により、吊下器5の連結部6cを、把持部6dp,6dqから延出した一対の連結片部6cp,6cqにより形成し、かつこの連結片部6cp,6cqに第二取付部6uを連続形成するとともに、一対の連結片部6cpと6cq間を固定可能な固定手段7を用いれば、固定手段7による第一取付部6dと第二取付部6uに対する固定を同時に行うことができるため、更なる構成の簡略化に寄与できるとともに、連結片部6cp及び6cqを利用した様々な機能を付加することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の好適実施形態に係る植物栽培用照射装置における要部を抽出して示す斜視図、
【図2】同植物栽培用照射装置を支持フレームに取付けた状態を示す正面図、
【図3】同植物栽培用照射装置を支持フレームに取付けた状態を示す平面図、
【図4】同植物栽培用照射装置に用いる吊下器の一部断面側面図、
【図5】同植物栽培用照射装置を支持フレームに取付けた状態を示す図2中のA−A線断面側面図、
【図6】同植物栽培用照射装置を支持フレームに取付けた状態を示す図2中のB−B線断面側面図、
【図7】同植物栽培用照射装置におけるLED発光部の一部断面底面図、
【図8】同植物栽培用照射装置を栽培棚に取付けた状態を示す正面図、
【図9】本発明の変更実施形態に係る植物栽培用照射装置を他の支持フレームに取付けた状態を示す一部断面側面図、
【図10】本発明の他の変更実施形態に係る植物栽培用照射装置におけるLED発光部の一部断面正面図、
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に、本発明に係る好適実施形態を挙げ、図面に基づき詳細に説明する。
【0020】
まず、本実施形態に係る植物栽培用照射装置1の構成について、図1〜図7を参照して説明する。
【0021】
例示する植物栽培用照射装置1は、図2及び図3に示すように、大別して、一つのベース体3,三つのLED発光部4,4,4及び二つの吊下器5,5により構成する。
【0022】
ベース体3は、全体を伝熱性を有する素材、望ましくは、アルミニウム素材により細長いプレート状に一体形成する。このようなアルミニウム素材を用いれば、一般的な金属素材の利用により、比較的低コストに実施できるとともに、必要な強度及び伝熱性を容易に確保できる。この際、ベース体3の平面視形状は、図3に示すように、蛍光管の平面視形状に似せて形成、即ち、細長い長方形に形成するとともに、ベース体3の厚さは、図2に示すように、水平に配したときに撓まない厚さ、特に、LED発光部4…を取付け、かつ吊下器5…により支持した際であっても撓まない厚さを選定する。なお、必要により、長手方向に沿った一又は二以上の補強用リブを一体に設けてもよい。このように、ベース体3の平面視形状を、蛍光管の平面視形状に似せて形成すれば、蛍光管タイプの照射装置から本発明に係る植物栽培用照射装置1に変更(交換)する場合であっても、取付スペース等に対する適合性を確保できるため、植物栽培用照射装置1を容易かつ確実に取付けることができる利点がある。
【0023】
LED発光部4は、図7に示すように、三つのLED実装部11,11,11を備える。一つのLED実装部11は、六角形状の配線基板12を有し、この配線基板12の中央にLED(発光ダイオード)2を実装するとともに、このLED2の両側に正負の接続端子13p,13nを配する。この場合、LED2には、白色LEDをはじめ、各種色(波長)を発光するLEDを適用でき、光には植物の栽培にとって必要となる可視光以外の光も含まれる。また、配線基板12は、図6に示すように、二本の取付ネジ14,14を用いてベース体3の下面3dに直接固定する。これにより、LED2の発熱は配線基板12を介してベース体3に伝達され、伝熱性を有する素材により形成したベース体3を介して必要な放熱性能が確保される。さらに、ベース体3の下面3dには、配線基板12の周りを囲むリングカバー15を固定する。なお、リングカバー15の固定は、例えば、接着剤等による接着で足りる。このようなLED実装部11は、図7に示すように、同様に構成する三つのLED実装部11…を並べて配する。この際、各リングカバー15…の180゜対向する位置には、内部配線リード16p,16nを通すための切欠凹部15i,15eを形成し、各切欠凹部15i…,15e…を介して三つのリングカバー15…の内部を連通させる。図7の仮想線は内部配線リード16p,16nを示す。各内部配線リード16p,16nは、各接続端子13p…,13n…に順次接続することにより、三つのLED2…を並列接続する。
【0024】
そして、端に位置する接続端子13p,13nからは、外部配線リード17p,17nを含む一本の接続ケーブル17をリングカバー15の外部に導出するとともに、さらに、ベース体3に形成した貫通孔18を通して上面3u側に導出させる。この後、各リングカバー15…の内部に、合成樹脂等のポッティング剤Eを充填する。この際、図6に示すように、LED2…はポッティング剤Eに埋まらないように外部に露出させる。これにより、リングカバー15も強固に固定され、一つのLED発光部4の実装が終了する。このLED発光部4…は、図2に示すように、ベース体3の両端寄り位置と中央位置にそれぞれ実装し、三つの同一構成したLED発光部4…が設けられる。また、接続ケーブル17…により各LED発光部4…間を接続するとともに、一つの植物栽培用照射装置1から一本の接続ケーブル17を導出することにより、他の植物栽培用照射装置1に、又は植物栽培用照射装置1のための所定の電源に接続する。
【0025】
なお、LED発光部4は、以上の構成が基本的構成となるが、例示の場合には、さらに着脱可能な化粧カバー19を装着している。化粧カバー19は、三つのLED実装部11…の全体を覆う形状に形成し、各LED2…を外部に露出させる三つの孔部20…を有するとともに、四隅付近には、装着時にベース体3の上面3uに係止する爪を有する四つの係止部21…を一体に設ける。なお、22は接続ケーブル17を導出するための切欠凹部を示す。
【0026】
吊下器5は、吊下体6と固定手段7からなる。吊下体6は、図4に示すように、ベース体3の任意の位置に取付可能に構成した第一取付部6dと支持フレームFの任意の位置に取付可能に構成した第二取付部6uを所定長さの連結部6cを介して一体化させたものであり、この吊下体6は、プラスチック素材等により一体形成する。このように、吊下体6を一体形成すれば、基本的には単一部品の構成となるため、容易かつ低コストに実施できる利点がある。
【0027】
この場合、第一取付部6dは、図5に示すように、ベース体3の幅方向における両端を把持して取付可能な対称形状による一対の把持部6dp,6dqを有する。各把持部6dp,6dqは、先端部を断面コの字形に形成するとともに、ベース体3の上面3u側はベース体3の中央付近まで延出させる。このように、第一取付部6dを、ベース体3の幅方向における両端を一対の把持部6dp,6dqにより把持して取付可能に構成すれば、比較的簡易な構成により低コストに実施できるとともに、ベース体3に対して容易かつ確実に取付けできる利点がある。また、把持部6dp,6dqの上面3u側の端部は、それぞれ上方へ起立延出させることにより、それぞれ連結片部6cp,6cqを形成し、これら一対の連結片部6cp,6cqにより連結部6cを構成する。例示の連結片部6cp,6cqは、図5及び図6に示すように、下部に折曲部を形成することにより、接続ケーブル17を通して保持するための挿通空間Aを設けている。なお、把持部6dp,6dqと連結片部6cp,6cq間には、補強用リブ31を設ける。
【0028】
また、連結部6cの上端には第二取付部6uを連続形成する。第二取付部6uは、支持フレームFに対して取付けを行うため、支持フレームFを考慮した形態に形成する。例示の支持フレームFは、植物Pを載置する複数段の栽培棚Rを構成するフレーム部材Fs、即ち、断面円形の鉄筋Sである。このため、第二取付部6uは、フレーム部材Fsの周面に装着可能な円筒状に形成する。この場合、第二取付部6uは、下部に軸方向のスリットを有し、このスリットに臨む一端が一方の連結片部6cpの上端に連続し、スリットに臨む他端が他方の連結片部6cqの上端に連続する。
【0029】
固定手段7は、第一取付部6dをベース体3に固定し、かつ第二取付部6uを支持フレームFに固定する機能を有する。この固定手段7には、一般的なボルトナット7wを用いることができる。このため、一対の連結片部6cp,6cqには、ボルトナット7wが挿通するボルト挿通孔32p,32qを設ける。以上の構成からなる吊下体6と固定手段7が組となって一つの吊下器5を構成する。例示の場合、二つの吊下器5…を使用する。
【0030】
次に、本実施形態に係る植物栽培用照射装置1の使用方法及び機能について、図1〜図8を参照して説明する。
【0031】
植物栽培用照射装置1は、栽培する植物Pの上方に配した支持フレームFに取付けることにより当該植物Pに対してLED2…を発光させて照射を行う機能を備える。図8は、植物栽培用照射装置1を用いて好適な植物栽培工場における栽培棚Rを示す。この栽培棚Rは、植物Pを載置するための複数段の棚部Rs…を備え、各棚部Rs…は複数の支柱T…により支持される。例示の棚部Rsは、断面円形の鉄筋S…を格子状に組合わせて構成したものであり、植物栽培用照射装置1は、一本の鉄筋S(フレーム部材Fs)に取付けて使用する。また、例示の植物Pはキノコであり、図8は複数のキノコ栽培ビンPb…を収容したコンテナCを載置した状態を示す。
【0032】
このように、植物Pを載置するための複数段の栽培棚Rを構成するフレーム部材Fsを支持フレームFに適用すれば、特に、フレーム部材Fs…の組合わせにより構成される様々な栽培棚Rに対して、的確かつ確実な取付けを行うことができるため、この種の栽培棚Rに取付ければ、植物栽培用照射装置1の有効性を確保する観点から最適なパフォーマンスを得ることができる。例えば、栽培棚Rに蛍光管を用いた照射装置が付設されており、この蛍光管を用いた照射装置を本実施形態に係る植物栽培用照射装置1に変更(交換)する場合、一つの棚部Rsに一本の蛍光管が取付られていれば、蛍光管を取外した後、その空いた取付スペースに、本実施形態に係る植物栽培用照射装置1をそのまま取付けることが可能となる。
【0033】
一方、植物栽培用照射装置1をフレーム部材Fsに取付ける際には、まず、二つの吊下器5,5を用意する。そして、各吊下器5…における吊下体6…を、図4に示す仮想線のように開き、第二取付部6u…をフレーム部材Fsに順次装着する。次いで、第一取付部6d…を構成する一対の把持部6dp…,6dq…によりベース体3における幅方向両側を把持する。この際、フレーム部材Fsと植物栽培用照射装置1間の相対位置は固定となるため、吊下体6…の位置を、直交する他のフレーム部材Fs…或いはベース体3におけるLED発光部4…のいずれにも干渉しない最適な位置を選定する。
【0034】
そして、一対の連結片部6cp,6cqに設けたボルト挿通孔32p,32qに挿通させたボルトナット7wを締め付けることにより連結片部6cpと6cq間を固定する。これにより、第二取付部6uはフレーム部材Fsの周面に圧接して当該フレーム部材Fs上に固定されるとともに、第一取付部6dの把持部6dp,6dqがベース体3を把持して当該ベース体3上に固定される。図8が各植物栽培用照射装置1…を栽培棚Rのフレーム部材Fsに取付けた状態を示している。また、各植物栽培用照射装置1…に接続ケーブル17…を介して給電すれば、各LED2…が発光し、下方の棚部Rs…上に配したキノコ栽培ビンPb…(栽培する植物P)に照射することができる。
【0035】
よって、このような本実施形態に係る植物栽培用照射装置1によれば、下面3dにLED発光部4…を配した細長いベース体3の任意の位置に取付可能に構成した第一取付部6dと支持フレームFの任意の位置に取付可能に構成した第二取付部6uを所定長さの連結部6cを介して一体化させた吊下体6,及び第一取付部6dをベース体3に固定し、かつ第二取付部6uを支持フレームFに固定する固定手段7を有する吊下器5…を備えるため、各種形態により構成される既設の支持フレームFに取付ける場合であっても、第一取付部6d及び第二取付部6uの取付位置を任意かつ容易に変更し、的確かつ最適な取付けが可能になるなど、取付に対するフレキシビリティを高めることができるとともに、生育むらなどの生じない均質な植物Pの栽培を実現できる。
【0036】
特に、本実施形態では、吊下器5の連結部6cを、把持部6dp,6dqから延出した一対の連結片部6cp,6cqにより形成し、かつこの連結片部6cp,6cqに第二取付部6uを連続形成するとともに、一対の連結片部6cpと6cq間を固定可能な固定手段7を用いたため、固定手段7による第一取付部6dと第二取付部6uに対する固定を同時に行うことができ、更なる構成の簡略化に寄与できるとともに、連結片部6cp及び6cqを利用した様々な機能、例えば、前述した固定手段7の配設機能や接続ケーブル17の保持機能を付加することができる。
【0037】
次に、本発明の変更実施形態に係る植物栽培用照射装置1について、図9及び図10を参照して説明する。
【0038】
図9の変更実施形態は、支持フレームFが異なる場合を示す。図9は、支持フレームFとして、L形アングルFeを例示する。このため、吊下体6を構成する第二取付部6uを、L形アングルFeの垂直面(鉛直面)に対して、仮想線で示すネジ(又はボルト)41によりネジ止めできるように、ネジ挿通孔42を有する第二取付部6ueとして構成した。 また、連結部6cを上下に二分割することにより、吊下体6を上下二つの分割体6x,6yとして構成し、上側の分割体6xにおける分割連結部6cpx及び6cqxに対して、下側の分割体6yにおける分割連結部6cpy及び6cqyを、固定手段5sとなるボルトナット7wにより固定可能に構成した。この場合、分割体6yは、前述した一対の把持部6dp,6dqと同じ形態で構成できるため、分割体6yを共有とし、異なる複数の分割体6x…から選択した任意の分割体6xを組合わせて用いることができる。これにより、コスト面で有利になるとともに、組付時においては第一取付部6dと第二取付部6u間の角度を設定(調整)できる。
【0039】
さらに、上側の分割体6xにおける分割連結部6cpx及び6cqxに設けた挿通孔32pe及び32qeを上下に長い長孔により形成した。これにより、分割連結部6cpx及び6cqxに対して、分割連結部6cpy及び6cqyを伸縮できるため、第一取付部6dと第二取付部6ueの間隔を設定(調整)することができる。したがって、連結部6cには、上述した固定手段7の配設機能や接続ケーブル17の保持機能を付加することに加え、このような間隔及び角度の調整機能も付加することができる。その他、図9において、図1〜図8と同一部分には同一符号を付してその構成を明確にするとともに、その詳細な説明は省略する。
【0040】
一方、図10の変更実施形態は、LED発光部4をベース体3に対して着脱可能なユニット、即ち、発光部ユニット4eとして構成したものである。例示の発光部ユニット4eは、前述した化粧カバー19をユニットケース19eとして用いたものであり、ユニットケース19eの開口部分は、伝熱性を有するアルミニウム素材等により形成した放熱プレート51により閉塞するとともに、この放熱プレート51の内面に、前述した三つのLED実装部11…を配設した。なお、例示のユニットケース19eでは、LED2…を外部に露出させないため、ユニットケース19eは透明素材又は半透明素材により形成するとともに、発光部ユニット4eの内部は密閉される。
【0041】
これにより、発光部ユニット4eは、ベース体3の任意の位置に対して着脱可能となるため、任意数量の発光部ユニット4e…をベース体3の任意の位置に取付けることができる。したがって、用途や目的に応じて発光部ユニット4e…の取付数量や取付位置を設定し、設置環境に対する最適化を図ることができる。なお、発光部ユニット4eをベース体3に取付けた際には、放熱プレート51がベース体3の下面3dに接触するため、LED2…の発熱は放熱プレート51からベース体3に放熱される。その他、図10において、図1〜図8と同一部分には同一符号を付してその構成を明確にするとともに、その詳細な説明は省略する。
【0042】
以上、好適実施形態(変更実施形態)について詳細に説明したが、本発明は、このような実施形態に限定されるものではなく、細部の構成,形状,素材,数量等において、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、任意に変更,追加,削除することができる。
【0043】
例えば、支持フレームFとして、鉄筋S…及びL形アングルFeを例示したが、その他、丸パイプ,角材,木材等の各種支持フレームFを適用することができるとともに、この支持フレームFには、棒材のみならず板材も含まれる。また、ベース体3の素材には一般に放熱性素材(伝熱性素材)と言われている各種素材を利用できるとともに、放熱フィンを付加したり放熱孔を空けるなど、ベース体3の形態は任意である。一方、吊下体6の素材もプラスチック素材をはじめ、金属素材等の各種素材で形成できる。なお、吊下体6における第一取付部6dの形態として、ベース体3の幅方向における両端を把持して取付可能に構成した場合を示したが、ベース体3の幅方向における中央を支持可能な各種形態により実施可能である。さらに、連結部6cとして各種変更例を示したが、基本的には第一取付部6dと第二取付部6uを一体化できればよいため、例えば、全部又は一部をチェーン等により連結する場合も連結部6cの形態に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明に係る植物栽培用照射装置は、キノコを含む野菜や果物等の各種植物を栽培する植物栽培工場をはじめ各種形態の栽培場における植物の照射に利用できる。
【符号の説明】
【0045】
1:植物栽培用照射装置,2…:LED,3:ベース体,3d:ベース体の下面,4…:LED発光部,5…:吊下器,6:吊下体,6d:第一取付部,6dp:把持部,6dq:把持部,6u:第二取付部,6c:連結部,6cp:連結片部,6cq:連結片部,7:固定手段,P:植物,F:支持フレーム,Fs:フレーム部材,R:棚

【特許請求の範囲】
【請求項1】
栽培する植物の上方に配した支持フレームに取付けることにより当該植物に対してLEDを発光させて照射を行う植物栽培用照射装置において、伝熱性を有する素材により形成した細長いベース体と、このベース体の下面に配した少なくとも一つ以上のLEDを有する少なくとも一つ以上のLED発光部と、前記ベース体の任意の位置に取付可能に構成した第一取付部と前記支持フレームの任意の位置に取付可能に構成した第二取付部を所定長さの連結部を介して一体化させた吊下体,及び前記第一取付部を前記ベース体に固定し、かつ前記第二取付部を前記支持フレームに固定する固定手段を有する少なくとも二つ以上の吊下器とを備えることを特徴とする植物栽培用照射装置。
【請求項2】
前記支持フレームには、植物を載置するための複数段の棚を構成するフレーム部材を適用することを特徴とする請求項1記載の植物栽培用照射装置。
【請求項3】
前記ベース体の平面視形状は、蛍光管の平面視形状に似せて形成することを特徴とする請求項1又は2記載の植物栽培用照射装置。
【請求項4】
前記ベース体の素材には、少なくともアルミニウム素材を含むことを特徴とする請求項1又は3記載の植物栽培用照射装置。
【請求項5】
前記吊下器の第一取付部は、前記ベース体の幅方向における両端を一対の把持部により把持して取付可能に構成することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の植物栽培用照射装置。
【請求項6】
前記吊下器の連結部は、前記把持部から延出した一対の連結片部により形成し、かつこの連結片部に前記第二取付部を連続形成するとともに、一対の連結片部間を固定可能な固定手段を備えることを特徴とする請求項5記載の植物栽培用照射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−101635(P2011−101635A)
【公開日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−258682(P2009−258682)
【出願日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【出願人】(595124169)株式会社倭技術研究所 (2)
【出願人】(500149522)中野市農業協同組合 (13)
【Fターム(参考)】