説明

植物栽培装置および植物栽培システム

【課題】大規模かつ高価な空調装置を用いることなく、栽培対象植物に適した環境への調整を従来よりも容易に実現すること。
【解決手段】栽培棚における栽培対象植物の上方に配置した状態で、栽培対象植物の栽培環境を調整すべく、本体部と、1以上の光源と、1以上の排出口それぞれから栽培媒体を排出する供給経路と、を備えた構成とすることによって、栽培対象植物それぞれに対して個別に栽培媒体を排出することができるため、大規模かつ高価な空調装置などがなくても、栽培対象植物に適した環境への調整を容易に実現することができる。さらに、栽培対象植物それぞれに対して個別に栽培媒体を排出する構造上、栽培対象植物それぞれへと直接的に適切な二酸化炭素濃度の栽培媒体を付与することができるだけでなく、この栽培媒体により栽培対象植物近辺を適切に換気することができるため、栽培対象植物の栽培促進という観点で好適である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物栽培装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、建物内において植物の栽培を行うシステムとして、例えば、床に沿って移動可能な多段ラック式の栽培棚を複数並べたものが提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3105482号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記システムでは、システムを収容する建物内部の環境(二酸化炭素濃度など)を栽培対象植物に適した状態にする必要があり、その調整が難しく、また、大規模かつ高価な空調装置などが必要になるという課題があった。
【0005】
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであり、その目的は、大規模かつ高価な空調装置を用いることなく、栽培対象植物に適した環境への調整を従来よりも容易に実現するための技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため第1の構成(請求項1)は、それぞれ複数の栽培対象植物を配置可能な栽培棚のうち、該栽培対象植物の上方に配置した状態で、該栽培対象植物を栽培するための環境を調整する植物栽培装置である。
【0007】
そして、前記栽培対象植物が配置された列に沿って延びる本体部と、前記本体部の下方側領域のうち、前記栽培対象植物それぞれと対向する領域に設けられ、該栽培対象植物に向けて所定波長の光を照射する1以上の光源と、前記本体部の下方側領域のうち、前記光源を挟んだ一方または両方の領域を長手方向に沿って延びるように設けられた管状の部材であって、該管状の内部空間に二酸化炭素を含む栽培媒体を流通させると共に、該管状の表面に長手方向に沿って形成された1以上の排出口それぞれから前記栽培媒体を排出して前記栽培対象植物へと供給する供給経路と、を備えている。
【0008】
このように構成された植物栽培装置によれば、栽培対象植物それぞれに対して個別に栽培媒体を排出することができるため、大規模かつ高価な空調装置などがなくても、栽培対象植物に適した環境(二酸化炭素濃度など)への調整を容易に実現することができる。
【0009】
さらに、上記構成では、栽培対象植物それぞれに対して個別に栽培媒体を排出する構造上、栽培対象植物それぞれへと直接的に適切な二酸化炭素濃度の栽培媒体を付与することができるだけでなく、この栽培媒体により栽培対象植物近辺を適切に換気することができるため、栽培対象植物の栽培促進という観点で好適である。
【0010】
この構成において、本体部に設けられる光源は、栽培対象植物それぞれに1つずつのものが配置されることとしてもよいし、複数の栽培対象植物それぞれに光を照射可能な形状のもの1以上が配置されることとしてもよい。
【0011】
また、この光源においては、栽培対象植物の種類に応じた最適な波長で光を照射できるものを採用すればよく、具体例な光源としては、例えば、白熱電球、蛍光灯、発光ダイオードなどが考えられる。
【0012】
また、上記構成における供給経路は、その長手方向に沿って1以上の排出口が形成されていればよく、この排出口は、長手方向に延びた形状で1以上を形成してもよいし、栽培対象植物それぞれに応じた孔状のものを複数形成することとしてもよい。
【0013】
ところで、上記構成においては、光源による光の照射に伴い、この光源およびその周辺が発熱するため、適切な温度環境の維持、光源としての安定動作といった観点から、光源およびその周辺を冷却できることが望ましい。
【0014】
このための構成としては特に限定されないが、例えば、以下に示す第2の構成(請求項2)、第3の構成(請求項3)のようにすることが考えられる。
まず、第2の構成は、前記本体部において、前記光源が設けられた領域と隣接する領域を長手方向に沿って貫通するように設けられ、前記光源を冷却するための冷却媒体を流通させる冷却経路、を備えている。
【0015】
この構成であれば、光源に沿って設けられた冷却経路を流通する冷却媒体によって、光源およびその周辺を冷却することができる。
また、第3の構成において、前記本体部の下方側領域は、前記供給経路よりも前記光源の方が前記栽培対象植物に向けて突出した位置関係になるように形成されており、前記供給経路は、少なくとも前記排出口における一部が前記光源に向けられている。
【0016】
この構成であれば、一部の栽培媒体が供給経路から光源に向けて排出されるため、この栽培媒体により光源およびその周辺を冷却することができる。
なお、この第3の構成においては、供給経路における排出口の一部が光源に向けられていればよいが、栽培媒体を栽培対象植物に向けて排出するための排出口と、光源に向けて排出するための排出口と、をそれぞれ別系統で設けることとしてもよい。
【0017】
また、上記課題を解決するため第4の構成(請求項4)は、それぞれ複数の栽培対象植物を配置可能な栽培棚と、該栽培対象植物の上方に配置される植物栽培装置と、からなる植物栽培システムである。そして、前記植物栽培装置には、上記第1から3のいずれかの構成に係る植物栽培装置が用いられる。
【0018】
このように構成された植物栽培システムであれば、上記各構成と同様の作用効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】植物栽培システムの全体構成を示す三面図
【図2】植物栽培装置の構成を示す正面図
【図3】植物栽培システムの制御系統を示すブロック図
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に本発明の実施形態を図面と共に説明する。
植物栽培システム1は、図1に示すように、それぞれに栽培対象植物を設置するための設置部12が上下方向に複数段形成されてなる収納棚10と、収納棚10それぞれへの給水および排水を行う給排水ホース20と、栽培対象植物の上方にそれぞれ配置される植物栽培装置30と、を備えている。
【0021】
これらのうち、収納棚10は、前後方向に延びる矩形の構造体となっており、設置部12それぞれの上方側に植物栽培装置30が配置された構成とされている。
この植物栽培装置30は、図2に示すように、栽培対象植物が配置された列(同図奥行方向)に沿って延びる本体部31と、本体部31の下方側領域のうち、栽培対象植物それぞれと対向する領域に設けられ、この栽培対象植物に向けて所定波長の光を照射する複数の光源33と、栽培媒体を排出して栽培対象植物へと供給する供給経路35と、光源33を冷却するための冷却媒体を流通させる冷却経路37と、を備えている。
【0022】
これらのうち、光源33は、本体部31の長手方向(同図奥行方向)に沿って配置された複数の発光ダイオードからなる。なお、光源33は、複数の栽培対象植物それぞれに光を照射可能な形状のもの1以上が配置された構成としてもよい。
【0023】
また、この光源33は、栽培対象植物の種類に応じた最適な波長で光を照射できるものが採用されていればよく、発光ダイオード以外に、例えば、白熱電球、蛍光灯などを採用することもできる。
【0024】
また、供給経路35は、本体部31の下方側領域のうち、光源33を挟んだ一方または両方の領域を長手方向に沿って延びるように設けられた管状の部材であって、管状の表面から孔状の排出口39が長手方向に沿って複数形成されている。そして、この管状の内部空間には、二酸化炭素を含む栽培媒体を流通させることにより、この排出口39それぞれから栽培媒体が排出されるように構成されている。
【0025】
なお、本実施形態においては、栽培媒体を栽培対象植物側に向けて主に排出するための排出口39と、光源33に向けて主に排出するための排出口39と、がそれぞれ別系統で設けられている。
【0026】
また、冷却経路37は、本体部31において、光源33が設けられた領域と隣接する領域を長手方向に沿って貫通するように設けられており、この経路内部に冷却媒体が流通することとなる。
【0027】
この植物栽培システム1は、図3に示すように、光源33の点灯制御、供給経路35への栽培媒体の送出を行う栽培ポンプ41の動作制御、栽培ポンプ41により送出される栽培媒体における二酸化炭素濃度を調整する調整弁43の開閉制御、冷却経路37への冷却媒体の送出を行う冷却ポンプ45の動作制御、冷却ポンプ45により送出される冷却媒体の温度を調整する恒温装置47の動作制御、などといったことのための処理を制御部49により実施するように構成されている。
【0028】
このように構成された植物栽培システム1によれば、栽培対象植物それぞれに対して個別に栽培媒体を排出することができるため、大規模かつ高価な空調装置などがなくても、栽培対象植物に適した環境(二酸化炭素濃度など)への調整を容易に実現することができる。
【0029】
さらに、上記構成では、栽培対象植物それぞれに対して個別に栽培媒体を排出する構造上、栽培対象植物それぞれへと直接的に適切な二酸化炭素濃度の栽培媒体を付与することができるだけでなく、この栽培媒体により栽培対象植物近辺を適切に換気することができるため、栽培対象植物の栽培促進という観点で好適である。
【0030】
また、上記構成においては、光源33による光の照射に伴い、この光源33およびその周辺が発熱するため、適切な温度環境の維持、光源33としての安定動作といった観点で、光源33およびその周辺を冷却できるように構成されている。
【0031】
具体的にいえば、上記構成では、光源33に沿って設けられた冷却経路37を流通する冷却媒体によって、光源33およびその周辺を冷却することができる。
また、上記構成では、供給経路35から排出口39を介して一部の栽培媒体が光源33に向けて排出されるため、この栽培媒体により光源33およびその周辺を冷却することができる。
【符号の説明】
【0032】
1…植物栽培システム、10…収納棚、12…設置部、20…給排水ホース、30…植物栽培装置、31…本体部、33…光源、35…供給経路、37…冷却経路、39…排出口、41…栽培ポンプ、43…調整弁、45…冷却ポンプ、47…恒温装置、49…制御部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ複数の栽培対象植物を配置可能な栽培棚のうち、該栽培対象植物の上方に配置した状態で、該栽培対象植物を栽培するための環境を調整する植物栽培装置であって、
前記栽培対象植物が配置された列に沿って延びる本体部と、
前記本体部の下方側領域のうち、前記栽培対象植物それぞれと対向する領域に設けられ、該栽培対象植物に向けて所定波長の光を照射する1以上の光源と、
前記本体部の下方側領域のうち、前記光源を挟んだ一方または両方の領域を長手方向に沿って延びるように設けられた管状の部材であって、該管状の内部空間に二酸化炭素を含む栽培媒体を流通させると共に、該管状の表面に長手方向に沿って形成された1以上の排出口それぞれから前記栽培媒体を排出して前記栽培対象植物へと供給する供給経路と、を備えている
ことを特徴とする植物栽培装置。
【請求項2】
前記本体部において、前記光源が設けられた領域と隣接する領域を長手方向に沿って貫通するように設けられ、前記光源を冷却するための冷却媒体を流通させる冷却経路、を備えている
ことを特徴とする請求項1に記載の植物栽培装置。
【請求項3】
前記本体部の下方側領域は、前記供給経路よりも前記光源の方が前記栽培対象植物に向けて突出した位置関係になるように形成されており、
前記供給経路は、少なくとも前記排出口における一部が前記光源に向けられている
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の植物栽培装置。
【請求項4】
それぞれ複数の栽培対象植物を配置可能な栽培棚と、該栽培対象植物の上方に配置される植物栽培装置と、からなる植物栽培システムであって、
前記植物栽培装置には、請求項1から3のいずれかに記載の植物栽培装置が用いられる
ことを特徴とする植物栽培システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−106600(P2013−106600A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−256666(P2011−256666)
【出願日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【出願人】(511006203)株式会社中央グリーンシステム (3)
【Fターム(参考)】