説明

植物栽培装置および植物栽培方法

【課題】植物の栽培における光の照射を効率よく行う。
【解決手段】植物栽培装置1は、照明部11、撮像部12および制御部を備える。照明部11は、光源部111、光ファイバ112および走査機構113を備える。光源部111は半導体レーザを備える。撮像部12は栽培対象91の画像を取得し、この画像から光の照射範囲が決定される。走査機構113は光ファイバ112からの光を2次元に走査する。制御部の制御により、照射位置が照射範囲内に位置する間にのみ半導体レーザから光が出射される。また、照射範囲は栽培対象91の成長に従って変更される。これにより、栽培対象91に効率よく光が照射される。光ファイバ112により、光源部111から放出される熱が栽培対象91に与える影響が低減される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人工的な照明により植物を栽培する技術に関連する。
【背景技術】
【0002】
近年、人工的な照明により植物を栽培する研究が行われており、植物工場として実用化されている。このような植物栽培では、照明に要するコストは重要であり、電球や蛍光灯に代えて寿命の長い発光ダイオード(LED:light emitting diode)の利用が注目されている。しかし、LEDは電球や蛍光灯に比べて高価であるため、LEDの使用個数の削減が必要となる。
【0003】
例えば、特許文献1では、1つの植物に光を照射する複数のLED(または半導体レーザ(LD:laser diode))のそれぞれにバルク型レンズが設けられる。これにより、LEDからの光が効率よく植物に照射される。特許文献2の図9では、畝上の植物にのみ光が当たるようにLEDユニットを配置し、移動部にてLEDユニットを移動する技術が開示されている。また、LED照明部の高さを調整することにより、光量が変更される。特許文献3では、直管タイプの光源に略樋形状の反射板を設け、栽培用ベンチの大きさや、多数の植物の生長度合いに応じて反射板を変形させる技術が開示されている。非特許文献1では、LEDやLDによる植物へのパルス照射により、植物による光の吸収効率が高められる点に言及されている。
【0004】
一方、特許文献4では、レーザ光の照射によって植物から放出されるレーザ誘起蛍光を観測することにより、植物の病変、枯死、またはこれらの状態への移行過程を判別する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−223636号公報
【特許文献2】特開2005−27521号公報
【特許文献3】特開2008−125412号公報
【特許文献4】特開2002−214141号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】高辻 正基、”光資源を活用し、創造する科学技術の振興(持続可能な「光の世紀」に向けて) 第2章 豊かな暮らしに寄与する光”、[online]、科学技術・学術審議会 資源調査分科会、[平成22年5月24日検索]、インターネット<http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/gijyutu/gijyutu3/toushin/07091111/004.htm>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、植物は成長するため、特許文献1および2の手法にて光を照射する場合、植物の成長を考慮して広い範囲に光を照射する必要がある。そのため、植物の育成の初期の段階にて光の利用効率が低下してしまう。特許文献3においても、多数の植物に一括して照明が行われるため、光の利用効率が低下する。また、光源としてLEDが用いられる場合、光が発散するため、効率よく光を利用することは容易ではない。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、植物の栽培における光の照射をさらに効率よく行うことを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載の発明は、植物栽培装置であって、半導体レーザと、前記半導体レーザから出射された光を、栽培対象の葉緑体が存在する領域を含む予め定められた照射範囲内に導く照射範囲制限部と、前記照射範囲を変更する照射範囲変更部とを備える。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の植物栽培装置であって、前記照射範囲制限部および前記照射範囲変更部が、前記半導体レーザから出射された光を2次元に走査する走査機構と、前記光の照射位置が前記照射範囲内に位置する間のみ前記半導体レーザを能動化するレーザ制御部とを備える。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の植物栽培装置であって、撮像部と、前記撮像部により取得された画像から葉緑体の存在領域を検出する葉緑体領域検出部と、前記葉緑体の存在領域から前記照射範囲を決定する照射範囲決定部とをさらに備える。
【0012】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の植物栽培装置であって、前記撮像部により取得された画像に基づいて、前記栽培対象の病変部を検出する病変部検出部をさらに備える。
【0013】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の植物栽培装置であって、青色光を出射する他の半導体レーザをさらに備え、前記走査機構が、前記青色光を2次元に走査し、前記病変部検出部が、前記他の半導体レーザからの光を前記栽培対象に照射しつつ前記撮像部により取得された画像に基づいて前記病変部を検出する。
【0014】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の植物栽培装置であって、前記レーザ制御部が、照射位置が前記病変部上に位置する間のみ前記半導体レーザを非能動化し、前記他の半導体レーザを能動化する。
【0015】
請求項7に記載の発明は、請求項1に記載の植物栽培装置であって、前記照射範囲制限部が、前記半導体レーザから前記栽培対象に至る光路上に配置されたレンズを備え、前記照射範囲変更部が、前記レンズを光軸に沿って移動するレンズ移動機構を備える。
【0016】
請求項8に記載の発明は、請求項1ないし7のいずれかに記載の植物栽培装置であって、前記照射範囲制限部が、前記半導体レーザから出射された光が一端から入射し、他端から出射する光ファイバを備える。
【0017】
請求項9に記載の発明は、植物栽培方法であって、半導体レーザから出射された光を、栽培対象の葉緑体が存在する領域を含む予め定められた照射範囲内に導く工程と、前記栽培対象の生育に合わせて前記照射範囲を変更する工程とを備える。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、植物栽培における光の照射を効率よく行うことができる。
【0019】
請求項2の発明では、照射範囲を容易に変更することができる。請求項3の発明では、照射範囲を自動的に変更することができ、請求項6の発明では、病変部での成長を抑制することができる。
【0020】
請求項7の発明では、照射範囲の制限および変更が簡単な構造により実現される。請求項8の発明では、半導体レーザから放出される熱が栽培対象に与える影響を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】植物栽培装置を示す斜視図である。
【図2】走査機構を示す図である。
【図3】植物栽培装置の機能構成を示すブロック図である。
【図4】撮像部にて取得された画像の一部を示す図である。
【図5】植物栽培装置の動作の流れを示す図である。
【図6】第2の実施の形態における撮像部およびフィルタ切替部を示す図である。
【図7】植物栽培装置の機能構成を示すブロック図である。
【図8】病変部を例示する図である。
【図9】第3の実施の形態に係る植物栽培装置の一部を示す図である。
【図10】植物栽培装置の機能構成を示すブロック図である。
【図11】植物栽培装置の動作の流れの一部を示す図である。
【図12】植物栽培装置の一部を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る植物栽培装置1を示す斜視図である。植物栽培装置1は、複数の照明部11、撮像部12および図示省略の制御部を備える。照明部11および撮像部12は、栽培空間内にて図示省略の支持部材により支持される。照明部11は、光源部111、光ファイバ112および走査機構113を備える。
【0023】
光源部111内には、赤色光を出射する半導体レーザ(以下、「第1半導体レーザ」という。)および青色光を出射する半導体レーザ(以下、「第2半導体レーザ」という。)が収納される。2つの半導体レーザから出射された赤色光および青色光は、光源部111内にて合波器等を介して1本の光ファイバ112の一端に入射し、他端から出射されて走査機構113へと導かれる。なお、光ファイバ112を2本のファイバを束ねたものとし、赤色光および青色光が2本のファイバにそれぞれ入射してもよい。
【0024】
第1半導体レーザから出射される光の波長は、好ましくは、630nm以上680nm以下であり、第2半導体レーザから出射される光の波長は、500nm以下であり、実用上、400nm以上である。これらの半導体レーザの発光層の幅は2μm以上100μm以下である。これにより、後述の光の走査を容易に行うことができる。
【0025】
図2は走査機構113の内部構造を示す斜視図である。走査機構113は、互いに垂直に伸びる一対のガルバノミラー21,22を備える。ガルバノミラー21,22が回転軸を中心に回転振動することにより、光ファイバ112の先端から出射される光が走査される。2つのガルバノミラー21,22により、植物である栽培対象91上における光の照射位置が2次元に走査される。光ファイバ112の先端は球面に成形されており、赤色光および青色光はほぼ平行光の状態で出射される。赤色光および青色光は走査機構113により同様に2次元に走査され、これらの光の照射位置は一致する。
【0026】
撮像部12は、モノクロ2次元CCDを撮像素子として有する。撮像素子には緑色光を透過するフィルタが取り付けられる。図1では、撮像部12は培地部92上の4個の栽培対象91を一括して撮像する。4つの照明部11のそれぞれは、1つの栽培対象91に光を照射する。
【0027】
図3は、植物栽培装置1の機能構成を示すブロック図である。制御部13は、レーザ制御部131、照射範囲決定部132および葉緑体領域検出部133を備える。制御部13は、一般的なコンピュータシステムに専用のハードウェアデバイスを追加した構造を有し、CPUがプログラムに従って演算処理を実行することにより、コンピュータおよび他のデバイスにより図3に示す各機能構成が実現される。
【0028】
レーザ制御部131は、図1に示す光源部111内の第1半導体レーザ31および第2半導体レーザ32のON/OFFを個別に制御する。葉緑体領域検出部133は、撮像部12からの画像に基づいて栽培対象91の葉緑体が存在する領域を検出する。照射範囲決定部132は、葉緑体領域検出部133による検出結果に基づいて、赤色光および青色光の照射範囲を決定する。
【0029】
図4は、撮像部12にて取得された画像の一部を示す図であり、図5は、植物栽培装置1の動作の流れを示す図である。なお、図5のステップS21は、後述の第2の実施の形態においてのみ実行される。まず、植物栽培装置1が設けられる室内の白色照明が一時的に点灯され、撮像部12にて栽培対象91の画像が取得される(ステップS11)。そして、葉緑体領域検出部133により、画像中の緑色の部分、すなわち、フィルタを介して取得された画像中の明るい部分が、葉緑体の存在領域として取得される(ステップS12)。照射範囲決定部132は、葉緑体の存在領域を囲む円形、楕円形、矩形または多角形の領域を光の照射範囲として決定する(ステップS13)。図4では、決定された照射範囲を符号81を付す破線にて示している。
【0030】
照射範囲81が決定されると、走査機構113が駆動され、半導体レーザからの光の照射位置が繰り返し2次元に走査される。図4において水平方向に伸びる破線および実線は、照射位置の走査の軌跡を示す。照射位置は、例えば、左から右への主走査が繰り返される毎に上から下へと副走査される。そして、照射位置が照射範囲81内に位置する間のみ第1半導体レーザ31および第2半導体レーザ32が能動化されて光が出射される(ステップS14)。これにより、水平方向に伸びる実線にて示すように照射範囲81内に光が照射される。
【0031】
赤色光と青色光との比は、光量子束密度の単位で、10:1〜5:1が好ましい。第1半導体レーザ31および第2半導体レーザ32は連続発光してもよく、パルス発光でもよい。パルス発光の場合は、2次元の走査周期とパルス発光の周期とが同期しないように調整される。これにより、照射範囲81内に均一に光が照射される。植物の種類によっては赤色光のみが照射されてもよい。
【0032】
実際の植物栽培装置1の動作では、図5のステップS11〜S13は一定時間毎に(例えば、1日毎に)行われ、ステップS14は、ステップS11〜S13が行われていない間、継続して行われる。
【0033】
以上のように、植物栽培装置1では、光を予め決定された照射範囲81内のみに照射することができる。栽培対象91が離れている場合は、栽培対象91の間の照明が不要な領域に光が照射されない領域が設けられる。また、照射範囲81は容易に変更することができ、栽培対象91の形状に適切に合わせることができる。加えて、半導体レーザからの光は(実質的に)遮られることなく照射範囲81内に導かれる。その結果、光を効率よく栽培対象91に照射することができる。
【0034】
照射範囲81は、撮像部12からの画像に基づいて決定されるため、栽培対象91の成長に合わせて照射範囲81を自動的に拡大することができる。さらに、栽培対象91上の一点に注目した場合、強度の高いレーザ光が間欠的に照射されることから、さらなるエネルギーの削減が実現される。光源部111と走査機構113とは光ファイバ112にて接続されるため、光源部111を栽培対象91から離して配置することができ、半導体レーザから放出される熱が栽培対象91に与える影響を容易に低減することができる。
【0035】
上記第1の実施の形態に係る作用効果は、以下の第2の実施の形態においても同様である。
【0036】
走査機構113は、ガルバノミラーにポリゴンミラーを組み合わせたものでもよい。さらには、光の走査は、MEMS(micro electro mechanical system)ミラーや電気光学結晶を有する電気光学素子により行われてもよい。半導体レーザとしては、緑色光を出射するものやさらに他の波長の光を出射するものが加えられてもよい。1つの照明部11により複数の栽培対象91に光の照射が行われてもよい。以下の他の実施の形態においても同様である。
【0037】
植物栽培装置1では、光ファイバ112、走査機構113およびレーザ制御部131により、光の照射範囲が決定される。すなわち、これらの構成が照射範囲を制限する照射範囲制限部として機能する。また、照射範囲はレーザ制御部131による半導体レーザのON/OFF制御により変更されることから、レーザ制御部131が照射範囲変更部として機能する。ただし、照射範囲は、走査機構113による走査範囲の変更によっても変更可能であることから、走査機構113を照射範囲変更部として機能させることも可能である。第2の実施の形態においても同様である。
【0038】
図6は、第2の実施の形態に係る植物栽培装置1の撮像部12およびその近傍の構成を示す図である。撮像部12の下方には回転式のフィルタ切替部14が設けられる。また、図7に示すように、制御部13には病変部検出部134がさらに設けられる。植物栽培装置1の他の構成は、第1の実施の形態と同様であり、同符号を付す。
【0039】
フィルタ切替部14は、複数のフィルタ141が取り付けられる円板部142と、円板部142を回転するモータ143とを備える。モータ143が回転することにより、撮像部12の前方に配置されるフィルタ141が切り替えられる。フィルタ141としては、680nm以上690nm以下の波長(以下、「第1波長帯」という。)の光を透過するバンドパスフィルタと、735nm以上745nm以下の波長(以下、「第2波長帯」という。)の光を透過するバンドパスフィルタとが少なくとも設けられる。
【0040】
第2の実施の形態にて栽培対象91の画像が取得される際には(図5:ステップS11)、まず、フィルタ切替部14により第1波長帯のバンドパスフィルタ141が撮像部12の前方に配置され、第2半導体レーザ32が連続点灯されて走査機構113により照射位置が2次元に走査される。これにより、栽培対象91から放たれるレーザ誘起蛍光のうち、第1波長帯のものが第1画像として取得される。次に、フィルタ切替部14により第2波長帯のバンドパスフィルタ141が撮像部12の前方に配置され、第2半導体レーザ32が連続点灯されて走査機構113により照射位置が2次元に走査される。これにより、栽培対象91のレーザ誘起蛍光のうち、第2波長帯のものが第2画像として取得される。
【0041】
葉緑体領域検出部133および病変部検出部134では、第1画像および第2画像に基づいて栽培対象91の葉緑体の存在領域および病変または枯死した病変部の領域が検出される(ステップS12,S21)。ここでは、例えば、第1画像および第2画像の少なくともいずれかに所定のしきい値よりも大きな画素値が現れる領域が葉緑体の存在領域として検出される。また、病変部の領域の検出には、特開2002−214141号公報(特許文献4)に開示される方法が利用される。具体的には、第1画像と第2画像とを比較することにより、(第2波長帯の蛍光強度/第1波長帯の蛍光強度)が1.0以下の領域が病変部の領域として検出される。もちろん、フィルタ切替部14に他の波長帯のバンドパスフィルタを設けて病変部が検出されてもよい。特許文献4に示されるように、レーザ誘起蛍光のうち520nm以上540nm以下の波長帯が利用されてもよい。
【0042】
病変部の検出(正確には、画像における病変部の領域の検出)は、より簡単な方法で行われてもよい。例えば、フィルタ切替部14にRGBのフィルタを設け、あるいは、カラーカメラを別途設け、白色照明下での栽培対象91のカラー画像を取得し、栽培対象91の色から病変部が検出されてもよい。
【0043】
葉緑体の存在領域および病変部の領域が検出されると、照射範囲決定部132により、葉緑体の存在領域を包含する領域が第1の実施形態と同様に強い赤色光および弱い青色光の照射範囲(以下、「生育照射範囲」という。)として決定され、病変部の領域が強い青色光のみの照射範囲(以下、「抑制範囲」という。)として決定される(ステップS13)。図8では、符号81を付す破線にて生育照射範囲を例示し、符号82を付す平行斜線を付す領域にて抑制範囲を例示している。
【0044】
その後、走査機構113により照射位置が2次元に走査されつつ、レーザ制御部131により、照射位置が生育照射範囲81内に位置する間のみ、第1半導体レーザ31および第2半導体レーザ32が能動化されて強い赤色光および弱い青色光が出射され、照射位置が抑制照射範囲82内に位置する間のみ、第1半導体レーザ31が非能動化され、第2半導体レーザ32が能動化されて強い青色光が出射される(ステップS14)。これにより、栽培対象91を生育しつつ病変部における成長が抑制される。その結果、病変部の拡大が抑制される。
【0045】
第2の実施の形態においても、半導体レーザからの光が、遮られることなく生育照射範囲81内へと導かれるため、栽培対象91を効率よく栽培することができる。また、栽培対象91の成長に合わせて生育照射範囲81および抑制照射範囲82を自動的に変更することができ、作業の軽減が実現される。第2の実施の形態では、第2半導体レーザ32は、葉緑体の存在領域の検出、病変部の領域の検出、生育、病変部での成長の抑制の全てに利用される。
【0046】
図9は、第3の実施の形態に係る植物栽培装置1の一部を示す図である。図9に示す構成は、図1に示す走査機構113に代えて設けられ、レンズ151と、レンズ151を上下に移動するレンズ移動機構152とを備える。図10は制御部13および制御部13に接続される構成を示すブロック図である。図1の光源部111内には赤色光を出射する半導体レーザ31のみが設けられる。各照明部11の光ファイバ112は1本のファイバである。図9に示すように、光ファイバ112から出射される光は、発散しながらレンズ151に至り、正のパワーを有するレンズ151にて栽培対象91を囲む照射範囲81内へと導かれる。光ファイバ112からの光は遮光されることなく照射範囲81内へと導かれる。植物栽培装置1の他の構成は第1の実施の形態と同様であり、以下、同様の構成には同符号を付して説明する。半導体レーザとしては、他の波長の光を出射するものが組み合わされてもよい。
【0047】
植物栽培装置1では、第1の実施の形態と同様に、撮像部12にて栽培対象91の画像が取得され(図5:ステップS11)、取得された画像に基づいて葉緑体領域検出部133が葉緑体の存在領域を検出し、照射範囲決定部132が葉緑体の存在領域を囲む円形の照射範囲を決定する(ステップS12,S13)。その後、図11に示すステップS31が実行され、レンズ151がレンズ移動機構152により光軸に沿って上下動して照射範囲81が変更される。
【0048】
ステップS11〜S14は、一定期間、例えば、1日毎に行われる。これにより、図12に示すように、栽培対象91の成長に従ってレンズ151が移動し、照射範囲81が拡大される。その結果、第1の実施の形態と同様に、作業の軽減が実現される。また、半導体レーザ31からの光は遮光されることなく照射範囲81内に制限されて照射されるため、効率よく照明を行うことができる。半導体レーザ31はパルス発光されてよく、これにより、さらに消費電力が削減される。
【0049】
第3の実施の形態では、光ファイバ112およびレンズ151が光の照射範囲を制限する照射範囲制限部として機能し、レンズ移動機構152が照射範囲を変更する照射範囲変更部として機能する。このように、簡単な構造にて照射範囲の制限および変更が実現される。第3の実施の形態においても、光ファイバ112を用いることにより、半導体レーザから放出される熱が栽培対象91に与える影響を容易に低減することができる。
【0050】
なお、照射範囲制限部としては、レンズ151に加えて他のレンズが設けられてもよい。レンズには、等価なミラーであるミラーレンズが含まれる。照射範囲変更部としては、複数のレンズを光軸に沿って移動する機構やミラーを移動する機構が設けられてもよい。さらに、半導体レーザからの光を実質的に遮ることなく照射範囲81内へと導くことができるのであれば、照射範囲制限部や照射範囲変更部として他の光学要素が用いられてもよい。光ファイバ112の端部自体が照射範囲制限部として機能し、端部を上下に移動する機構が照射範囲変更部として設けられてもよい。
【0051】
レンズ151は、半導体レーザ31から栽培対象91に至る光路上に配置されるのであれば、他の位置に配置されてもよい。例えば、光ファイバ112が省略され、半導体レーザ31からの光がレンズ151を含む複数のレンズやミラーを介して栽培対象91に照射されてもよい。
【0052】
上記各実施の形態にて説明した構成は、矛盾しない範囲で他の実施の形態にて採用されてよい。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明は、野菜、観賞用植物、資源用植物等の様々な植物の栽培に利用することができる。植物は、地上にて生育するものに限定されず、クロロフィルを含むものであれば、水中に生育するものであってもよい。
【符号の説明】
【0054】
1 植物栽培装置
12 撮像部
31 第1半導体レーザ
32 第2半導体レーザ
81 照射範囲
82 病変部
91 栽培対象
112 光ファイバ
113 走査機構
131 レーザ制御部
132 照射範囲決定部
133 葉緑体領域検出部
134 病変部検出部
151 レンズ
152 レンズ移動機構
S11〜S14,S21,S31 ステップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物栽培装置であって、
半導体レーザと、
前記半導体レーザから出射された光を、栽培対象の葉緑体が存在する領域を含む予め定められた照射範囲内に導く照射範囲制限部と、
前記照射範囲を変更する照射範囲変更部と、
を備えることを特徴とする植物栽培装置。
【請求項2】
請求項1に記載の植物栽培装置であって、
前記照射範囲制限部および前記照射範囲変更部が、
前記半導体レーザから出射された光を2次元に走査する走査機構と、
前記光の照射位置が前記照射範囲内に位置する間のみ前記半導体レーザを能動化するレーザ制御部と、
を備えることを特徴とする植物栽培装置。
【請求項3】
請求項2に記載の植物栽培装置であって、
撮像部と、
前記撮像部により取得された画像から葉緑体の存在領域を検出する葉緑体領域検出部と、
前記葉緑体の存在領域から前記照射範囲を決定する照射範囲決定部と、
をさらに備えることを特徴とする植物栽培装置。
【請求項4】
請求項3に記載の植物栽培装置であって、
前記撮像部により取得された画像に基づいて、前記栽培対象の病変部を検出する病変部検出部をさらに備えることを特徴とする植物栽培装置。
【請求項5】
請求項4に記載の植物栽培装置であって、
青色光を出射する他の半導体レーザをさらに備え、
前記走査機構が、前記青色光を2次元に走査し、
前記病変部検出部が、前記他の半導体レーザからの光を前記栽培対象に照射しつつ前記撮像部により取得された画像に基づいて前記病変部を検出することを特徴とする植物栽培装置。
【請求項6】
請求項5に記載の植物栽培装置であって、
前記レーザ制御部が、照射位置が前記病変部上に位置する間のみ前記半導体レーザを非能動化し、前記他の半導体レーザを能動化することを特徴とする植物栽培装置。
【請求項7】
請求項1に記載の植物栽培装置であって、
前記照射範囲制限部が、前記半導体レーザから前記栽培対象に至る光路上に配置されたレンズを備え、
前記照射範囲変更部が、前記レンズを光軸に沿って移動するレンズ移動機構を備えることを特徴とする植物栽培装置。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれかに記載の植物栽培装置であって、
前記照射範囲制限部が、前記半導体レーザから出射された光が一端から入射し、他端から出射する光ファイバを備えることを特徴とする植物栽培装置。
【請求項9】
植物栽培方法であって、
半導体レーザから出射された光を、栽培対象の葉緑体が存在する領域を含む予め定められた照射範囲内に導く工程と、
前記栽培対象の生育に合わせて前記照射範囲を変更する工程と、
を備えることを特徴とする植物栽培方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−5453(P2012−5453A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−146214(P2010−146214)
【出願日】平成22年6月28日(2010.6.28)
【出願人】(000000309)IDEC株式会社 (188)
【Fターム(参考)】