説明

植物栽培装置

【課題】動作音が静かで、給液、排液、栽培容器内の通気ができ、簡便に植物を栽培することが出来るようにする。
【解決手段】植物Gを栽培する栽培容器Pの底部と、植物に供給する液体Wを貯留可能な貯留部Tとを、チューブポンプ1を介在させた給排チューブ2で連通接続して、チューブポンプの駆動で給排チューブを通して流体を搬送可能な搬送装置3を設けてあるとともに、搬送装置による流体の搬送方向を、貯留部側から栽培容器側へ流体を搬送する方向と、栽培容器側から貯留部側へ流体を搬送する方向とに切り替え制御可能な方向切替制御部6と、栽培容器側からの流体の搬送を、栽培容器から貯留部への液体の搬送を終了した後、栽培容器内の培地に対する通気を行うべく、栽培容器から外気を吸引して終了させる制御機構31を設けてある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物を栽培するための植物栽培装置及び植物栽培方法に関する。
【背景技術】
【0002】
植物の生育には光や温度以外に水分、養分、空気が不可欠である。特に水分と養分については植物の生育程度や生育温度に応じて供給する必要がある。植物生育を楽しむ園芸においては、これら、給水を忘れたり、外出時や旅行時に給水ができなかったり、肥料を適切に施せずに栽培を失敗してしまうという間題がある。
給水や肥料の補給の手間を軽減し、給水忘れを防止するために、毛細管現象、水道の水圧、電動ポンブなどを利用した自動灌水装置が提供されている(例えば、特許文献1〜3参照)。しかしながらこれらの装置では、植物の根圏が場合によつては加湿になり根腐れをおこしたり、肥料成分を混入できないので生育不良をおこしたり、灌水した液が外に漏水するので屋内では使用しにくい等の間題があった。特に、家庭用の装置としてこれらの問題を解決されたものはない。
農業用や業務用として、植物の根圏の加湿を防ぐために真空ポンプやサイフォンの原理を利用して植木鉢内の液を給液後強制的に排液することができる装置が考案されている(例えば、特許文献4〜8参照)。また、肥料成分を含んだ養液を送れるように、耐薬品性ポンプや空気圧を利用した非接触ポンプを利用した装置も考案されている(例えば、特許文献9参照)。また、液が外部に漏水しないように、重力を利用して養液を回収する装置も考案されている(例えば、特許文献10参照)。
【0003】
【特許文献1】特開平2000−300092号公報
【特許文献2】特開平11−299373号公報
【特許文献3】特開平10−033074号公報
【特許文献4】特開平05−284865号公報
【特許文献5】特開2000−4696号公報
【特許文献6】特開2000−61360号公報
【特許文献7】特開2000−312539号公報
【特許文献8】特開2000−324964号公報
【特許文献9】特開平7−25930号公報
【特許文献10】特開2000−224933号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、これまでに提案されている自動給水装置では、給液用送液ポンプもしくは給液用コンプレッサーと排液用真空ポンプとの2台のポンプを利用し、給液用と排液用の別々の2本の配管が必要であり、装置が複雑な構造となる問題がある。これら問題を解決するため、1台で給排液できるように、コンプレッサー機能を有する真空ポンプを利用した装置も考案されているが、切り替えバルブや酎圧タンクが必要であり、いずれの装置も大がかりである。よって、これらの装置は複雑であり、家庭などの簡易性と簡便性、メンテナンスの容易性を必要とする場所での使用に適さないという間題がある。また、真空ポンプを用いるものは大きな騒音が発生し、家庭などの静かな場所での使用には適さない。
本発明は、動作音が静かで、給液、排液、栽培容器内の通気ができ、簡便に植物を栽培することが出来るようにするところにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1記載の発明の特徴構成は、図1〜5に例示するごとく、植物Gを栽培する栽培容器Pと、植物Gに供給する液体Wを貯留可能な貯留部Tとの間にて、チューブポンプ1を介在させて連通接続される給排チューブ2を介して、前記栽培容器Pと前記貯留部Tの間にて流体を搬送可能な搬送装置3を設けるとともに、
前記搬送装置3による流体の搬送方向を、前記貯留部T側から前記栽培容器P側へ流体を供給する方向と、前記栽培容器P側から前記貯留部T側へ流体を排出する方向とに切り替え制御可能な方向切替制御部6を設けてあるところにある。
【0006】
〔作用効果〕
本構成を備える植物栽培装置によれば、方向切替制御部によって、搬送装置による流体の搬送方向を貯留部側から栽培容器側へ流体を供給する方向に制御すると、チューブポンプにより給排チューブを介して、貯留部に貯留される植物に供給する液体を、植物を栽培する栽培容器側へと供給させることができる。一方、方向切替制御部によって、搬送装置による流体の搬送方向を栽培容器側から貯留部側へ流体を排出する方向に制御すると、チューブポンプにより給排チューブを介して、栽培容器側から液体や気体を貯留部側に排出させることができる。
【0007】
よって、本構成の搬送装置によるとチューブポンプにより給排チューブを介して流体が搬送されるため、搬送される流体と直接接触する給排チューブのメンテナンスを主に行えばよく、メンテナンス作業を簡単なものとすることが可能となる。そして、チューブポンプは、真空ポンプやコンプレッサーに比べると、小型化が可能であると共に駆動時の振動や騒音も小さいため、例えば住宅地のベランダやサンルーム、室内等でも周囲の環境をおかすことなく好適に用いることができ、利便である。
【0008】
さらに、例えば、同一経路にてつまり同一の給排チューブを介しての循環により、所定の栽培容器側に液体を供給したり、所定の栽培容器側から液体や気体を排出したりすることができるため、わざわざ、植物に対して水分や養分を供給するための供給経路と、植物から水分や養分を排出するための排出経路とを別々に設けたり、供給経路と排出経路の各々に、液体を貯留するためのタンクや流体を搬送させるための各種ポンプ設備を設けたりする必要がなく、植物栽培装置の構造を簡単なものとすることが可能となる。また、このような循環経路により流体が搬送されるため、貯留部の液体の量を計測することで当該液体の栽培容器への供給量等を容易に把握することも可能となる。
【0009】
また、方向切替制御部によって搬送装置による流体の搬送方向を切り替えることが可能であるため、例えば、給排チューブを介して、栽培容器側から吸引した空気を貯留部へ搬送することによって、貯留部に貯留される液体(例えば水や養液、以下同様)に対して曝気を行うことで、溶存酸素を高めることもでき、植物の根圏に酸素を十分に供給することができるため、植物を充分に生育させることが可能となる。
従って、簡便に植物を充分に生育させることができるのである。
請求項2記載の発明の特徴構成は、図1〜5に例示するごとく、上記請求項1の特徴構成に加えて、前記給排チューブ2の一方の端部を、前記栽培容器Pの底部に連通接続してあるところにある。
〔作用効果〕
本構成によれば、前述の請求項1の特徴構成による作用効果を期待することができるのに加えて、栽培容器にて栽培される植物の根腐れを防止すると共に、培地内の通気を促進して、植物の根圏に酸素を十分に供給させることが可能となる。
【0010】
つまり、給排チューブの一方の端部を、栽培容器の底部に連通接続してあるため、貯留部側から栽培容器側へ液体を供給する場合には、かかる栽培容器の底部に連通接続してある給排チューブの端部から栽培容器内の植物の根圏に確実に液体が供給されることとなり、確実に植物に液体が供給されることとなる。
【0011】
一方、栽培容器側から貯留部側へ流体を排出する場合には、栽培容器の底部に連通接続してある給排チューブの端部から栽培容器内の液体が確実に吸引排出させて、栽培される植物の根腐れを防止することができるとともに、かかる液体の吸引にともなって外気から吸引された新鮮空気を培地中に導入させて、培地内の通気を促進させることができる。尚、液体の排出後もさらに吸引排出操作を行うと、さらに外気から新鮮空気を培地中に導入させて、培地内の通気を一層促進させることができる。
【0012】
しかも、このような給排チューブの端部からの吸引排出操作により、培地内にて通気された外気は貯留部側へと搬送されるため、培地内の通気を促進させながら、貯留部に貯留される液体に対して曝気を行って溶存酸素を高めることもできるのである。
【0013】
従って、栽培容器にて栽培される植物の根腐れを防止すると共に、培地内の通気を促進しながら、貯留部に貯留される液体の溶存酸素濃度を高く保持し、植物の根圏に酸素を十分に供給しながら植物を生育させることができる。
【0014】
請求項3記載の発明の特徴構成は、図1,2に例示するごとく、上記請求項2の特徴構成に加えて、前記栽培容器Pの底部に連通接続された給排チューブ端部から前記貯留部T側への流体の搬送を、所定量の流体を搬送させた後に終了させる制御機構31を設けてあるところにある。
〔作用効果〕
本構成によれば、前述の請求項1,2の特徴構成による作用効果を期待することができるのに加えて、培地に対して適度な通気を行うことにより、一層確実に植物を生育させることが可能となる。
つまり、本制御機構にて、栽培容器の底部に連通接続された給排チューブ端部から前記貯留部側への流体の搬送が所定量の流体の搬送がなされた後に終了されるため、給排チューブの端部からの吸引により外気を培地内にて通気させるにあたって、培地に対して適度な通気を行うことが可能となり、例えば外気が培地内に過剰に通気されて乾燥してしまうようなことを防止することができる。
よって、培地に対して適度な通気量をコントロールすることにより、一層確実に植物を生育させることが可能となる。
【0015】
請求項4記載の発明の特徴構成は、上記請求項3に記載の前記制御機構が、流体の搬送に要する時間をもって制御する時間制御機構であるところにある。
【0016】
〔作用効果〕
本構成によれば、本発明のチューブポンプによる流体の搬送は、流体の搬送量をそれを搬送するに要する時間により制御することにより、制御装置の構成を簡便化でき、制御装置のメンテナンスも容易かつ簡便であり、請求項3記載の作用効果を一層容易に得ることができる。
請求項5記載の発明の特徴構成は、上記請求項4記載の特徴構成に加えて、前記流体の搬送に要する時間を、前記栽培容器内から前記貯留部側への液体の搬送を終了する時間よりも長く設定してあるところにある。
〔作用効果〕
本構成によれば、前記流体の搬送に要する時間を、前記栽培容器内から前記貯留部側への液体の搬送を終了する時間よりも長く設定してあるので、前記栽培容器内から前記貯留部側への液体の搬送が終了した後、栽培容器から貯留部へ気体が搬送され、栽培容器内の培地が乾燥しすぎない程度の空気を、その培地に通過させ、植物の根に酸素を補給し、さらに、その空気により貯留部に貯留させた液体を曝気することができる。
請求項6記載の発明の特徴構成は、図5に例示するごとく、上記請求項2の特徴構成に加えて、前記給排チューブ2のうち、前記チューブポンプ1と前記栽培容器P間の中間部から外気を吸引して前記給排チューブ2内を搬送可能な外気吸引機構35を、前記搬送装置3に設けるとともに、
前記栽培容器Pの底部に連通接続された給排チューブ端部から前記貯留部T側への流体の搬送を所定量行った後に、前記中間部から前記貯留部T側への外気搬送に切り替える搬送切替機構36を設けてあるところにある。
〔作用効果〕
本構成によれば、前述の請求項1,2の特徴構成による作用効果を期待することができるのに加えて、一層、植物の生育に良好な条件を提供することができる。
つまり、搬送切替機構により、栽培容器の底部に連通接続された給排チューブ端部から貯留部側への流体の搬送を所定量行った後に、給排チューブのうちチューブポンプと栽培容器間の中間部から貯留部側への外気搬送に切り替えるため、給排チューブの端部からの吸引排出操作により外気を培地内にて通気させるにあたって、培地に対して適度な通気を行うことが可能となり、例えば外気が培地内に過剰に通気されて乾燥してしまうようなことを防止することができる。
しかも、外気搬送に切り替えてからも、貯留部側には、外気吸引機構により中間部から吸引された外気が搬送されるため、貯留部に貯留される液体に対して充分に曝気を行って、溶存酸素濃度を高めることも可能となるのである。
したがって、培地に対して適度な通気を行いながら、充分に貯留部の液体の曝気を行い、一層、植物を良好に生育させることができる。
請求項7記載の発明の特徴構成は、図2(ハ),(ニ)に例示するごとく、植物Gを栽培する栽培容器Pと、植物Gに供給する液体Wを貯留可能な貯留部Tとの間にて、チューブポンプ1を介し連通接続される給排チューブ2を備える搬送手段3を用いて、前記栽培容器P側から前記貯留部Tへ液体Wを排出する排出工程を行った後に、前記栽培容器P側から吸引した気体を前記貯留部Tへ搬送し前記貯留部Tの液体Wを曝気する曝気工程を行うところにある。
〔作用効果〕
まず、搬送手段として、植物を栽培する栽培容器と、植物に供給する液体を貯留可能な貯留部との間にて、チューブポンプを介し連通接続される給排チューブを備えるものを用いることで、メンテナンス作業を簡単なものとすることが可能となり、また、チューブポンプは、真空ポンプやコンプレッサーに比べると、小型化が可能であると共に駆動時の振動や騒音も小さいため、例えば住宅地のベランダやサンルーム、室内等でも周囲の環境をおかすことなく好適に用いることができ、利便である。
そして、栽培容器側から貯留部へ液体を排出する排出工程を行うことにより、栽培容器内の植物に過剰に液体が供給されることによる植物の根腐れが発生するのを防止することができるとともに、かかる液体の吸引にともなって外気から吸引された新鮮空気を培地中に導入させて、培地内の通気を促進させることができる。さらに、この排出工程後、曝気工程にて、栽培容器側から吸引した気体を貯留部側へと搬送するため、貯留部に貯留される液体(例えば水や養液、以下同様)に対して曝気を行うことで、貯留部に貯留される液体の溶存酸素濃度を高めることができる。
従って、簡便に植物を充分に生育させることができるのである。
【0017】
尚、上述のように、図面との対照を便利にするために符号を記したが、該記入により本発明は添付図面の構成に限定されるものではない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下に本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1に、本発明に係る植物栽培装置の一実施形態を示す。図に示すように、この植物栽培装置は、植物Gを栽培する栽培容器Pと、植物Gに供給する液体Wを貯留可能な貯留部Tとの間にて、チューブポンプ1を介在させて連通接続される給排チューブ2を介して、前記栽培容器Pと前記貯留部Tの間にて流体を搬送可能な搬送装置3を設けるとともに、前記搬送装置3による流体の搬送方向を、貯留部T側から栽培容器P側へ流体を供給する方向と、栽培容器P側から貯留部T側へ流体を排出する方向とに切り替え制御可能な方向切替制御部6を設けて、構成してある。
【0019】
前記栽培容器Pは、植物Gを栽培するものであり、その内部に植物Gを栽培するための培地を収容することができると共に、給排チューブ2より供給された液体Wをその内部に貯留することができるように構成してある。
この栽培容器P内に収容される培地としては、植物Gを栽培することができれば如何なるものを用いてもよく、一般に用いられる培養土、腐葉土、水苔等は勿論のこと、バーミキュライト、パーライト、ロックウール、ハイドロボール、スポンジ等の人工のものを用いてもよい。
【0020】
因みに、図1に示すように、液体や気体を透過し固形物を透過し難い仕切部材11として、栽培容器P底部の内部側に貫通孔を有する仕切板を設けて、その仕切部材11の上方に培地を配置し、その仕切部材11の下方に給排チューブ2の一方の端部を配置するようにすれば、後述するように給排チューブ2を介して流体を搬送するときに、給排チューブ2内に培地が混入するおそれを低減したり、植物Gの根が給排チューブ2内に生育するおそれを低減することができる。尚、仕切部材11は、栽培容器Pと一体のものでも、別体のものでもどちらでもよいのはいうまでもなく、また、図に例示するような仕切板に限らず、液体や気体を透過し固形物を透過し難いものであれば如何なるものでもよく、例えば、防根シートや網やフェルトやスポンジ等でもよい。
【0021】
そして、前記貯留部Tは、植物に供給するための液体Wを貯留することができれば如何なる材質のものから構成してもよい。尚、前記液体Wは、単なる水でもよいし、植物を生育するための各種生育成分(例えば栄養成分や活力成分や殺菌成分等)を水に溶解した養液でもよい。
【0022】
また、前記チューブポンプ1は、栽培容器Pと貯留部Tとの間にて連通接続される給排チューブ2の途中に介在されるものであり、一般に用いられるチューブポンプ(別称、ローラポンプ或いはペリスタティックポンプ)を用いればよい。尚、チューブポンプとは、周方向に複数のローラを外周側に備えるロータを回転させることにより、ローラが弾性のある給排チューブをポンプヘッド内壁に押しつけながら回転して、給排チューブ内部の流体を押し出す一方で、給排チューブのローラにより押しつけられた箇所が復元力によって元の形状に戻る際、給排チューブ内に発生する真空により次の流体を吸引することができるように構成され、チューブポンプはこの動作を連続的に行うことで吸引・吐出というポンプ機能を有するものである。
【0023】
そして、前記給排チューブ2は、上述のようにチューブポンプ1の回転操作により流体を搬送することができるものであればよく、弾性を有し所定の耐圧構造を有していれば、如何なる材質のものから形成してあるものでもよいが、藻類の発生を防止するための着色処理を施してあるものの方が好ましい。
【0024】
この給排チューブ2は栽培容器Pと貯留部Tとの間を連通接続するように配設してあればよく、例えば、図1に示すように、一方の端部を栽培容器Pの底部に連通接続し、他方の端部を貯留部Tの底部に連通接続すればよい。因みに、図1に示すように、給排チューブ2の端部各々には、植物の根や培地等の異物が給排チューブ内に混入するのを防止するために、フィルター21,22を設けておく方が好適である。
【0025】
尚、給排チューブ2は、栽培容器Pと貯留部Tとの間を連通接続するものであればよく、単一の1本のチューブからなるものは勿論のこと、複数のチューブを連通接続して1本のチューブとしてあるものでもよいのはいうまでもない。
【0026】
当該実施形態では、チューブポンプ1の運転を制御するための制御装置Cを設け、方向切替制御部6及び時間制御機構31を備えさせてある。
【0027】
前記方向切替制御部6は、チューブポンプ1の回転の正転・逆転を制御することにより、搬送装置3による流体の搬送方向を、貯留部T側から栽培容器P側へ流体(液体W)を供給する方向と、栽培容器P側から貯留部T側へ流体(液体Wや外気)を排出する方向とに切り替え可能に構成されるものであり、手動スイッチによりチューブポンプ1の回転を制御可能に構成しても、タイマー等により自動的に所定時間毎にチューブポンプの回転の制御を制御可能に構成してもよいが、後者の場合には、忘れることなく確実に植物に液体Wを供給させることができ、好適である。
【0028】
前記時間制御機構31は、当該実施形態では、タイマーによるチューブポンプ1の回転時間の計測やチューブポンプ1の回転速度に基づいて、栽培容器Pの底部に連通接続された給排チューブ2端部から貯留部T側への流体(液体Wや外気)の搬送を、所定時間にてチューブポンプ1の回転を停止することで終了させるように構成してあり、培地に対して適度な通気を行い、より確実に植物を生育させることができるようにしてある。ここでは、一例として、栽培容器P内から貯留部T側への液体の搬送を終了したのち、所定時間後、搬送を終了するようにして、後述するように曝気工程を行えるようにしてある。
【0029】
尚、時間制御機構31は、所定時間にて、栽培容器Pの底部に連通接続された給排チューブ2端部から貯留部T側への流体(液体Wや外気)の搬送を終了させるように構成してあればよい。また、この時間制御機構31に限らず、前記栽培容器Pの底部に連通接続された給排チューブ2端部から前記貯留部T側への流体の搬送を、所定量の流体を搬送させた後に終了させる制御機構を設けてあればよく、例えば、培地のEC(電気伝導度)、培地のpH、液体の搬送量、又は、培地の湿度による管理にて制御するように構成してあっても勿論よい。
【0030】
次に、以上のように構成される植物栽培装置の使用方法について、図2を参照しながら説明する。
(1) 図2(イ),(ロ)に示すように、チューブポンプ1の回転を正転させることで、貯留部T側から栽培容器P側へ液体Wを供給搬送させ、液体を所定量供給したらチューブポンプ1の回転を停止する供給工程を行う。尚、栽培容器Pへの液体Wの供給量は、制御装置Cによって植物Gの種類により最適の潅水深さとなるように自動制御してあれば、好適である。
(2) そして、栽培容器Pへ液体Wを供給してから所定時間が経過したら、チューブポンプ1の回転を逆転させることで、栽培容器P側から貯留部T側へ液体Wを排出搬送させる排出工程を行い、液体Wの過剰供給による植物の根腐れを防止する。
(3) 次に、栽培容器P側から液体Wの排出を終了した後、さらに引き続きチューブポンプ1を逆転回転させて、栽培容器P側から外気を吸引して貯留部T側へ搬送させる曝気工程を所定時間行うことで、培地の通気を行いながら、貯留部Tに貯留される液体Wの溶存酸素濃度を高める。
【0031】
以上の操作を順次繰り返すことにより、簡便に適切な植物への給水と排水、さらには液体Wの曝気を繰り返すことで植物の栽培を継続することが可能となる。尚、上記例では工程(1)により栽培容器側に液体を供給してから始める例について説明したが、そのような形態に限らず、工程(2)から始めても勿論よい。
【0032】
このように、本発明によれば、動作音が静かで、給液、排液、栽培容器内の通気が、簡便にできる。さらに、上述のように、チューブポンプの回転方向を変化させるだけで、給液、排液、栽培容器内の通気、貯留部の液体の曝気を、1本の給排チューブで可能にすることができ、有利である。
【0033】
〔別実施形態〕
以下に他の実施形態を説明する。
〈1〉 先の実施形態では、チューブポンプ1に一つの給排チューブ2を介在させる例について説明したが、チューブポンプ1の能力により単一のチューブポンプ1に複数の給排チューブ2を介在させるように構成しても勿論よい。例えば、図3に示すように、チューブポンプ1のヘッドを多段掛けに構成して、栽培容器Pと貯留部T間にて連通接続させてある3本の給排チューブ2夫々を、単一のチューブポンプ1に介在させてもよい。
【0034】
〈2〉 あるいは、図4に示すように、栽培容器Pと貯留部T間にて連通接続させてある単一の給排チューブ2を、そのうちのチューブポンプ1と栽培容器P間にて、分配器41により分岐配設し複数の栽培容器Pに連通接続して、複数の栽培容器Pに液体を供給するように構成してもよい。
【0035】
〈3〉 また、図5に示すように、給排チューブ2のうち、チューブポンプ1と栽培容器P間の中間部から外気を吸引して給排チューブ2内を搬送可能な外気吸引機構35を搬送装置3に設けるとともに、栽培容器Pの底部に連通接続された給排チューブ2端部から貯留部T側への流体の搬送を所定時間行った後に、前記中間部から貯留部T側への外気搬送に切り替える搬送切替機構36を設けてもよい。図5に示す例では、給排チューブ2のうちのチューブポンプ1と栽培容器P間の中間部にて、栽培容器P側の給排チューブ2を分岐する分岐バルブ(電磁弁等)Bを設けてある。そして、分岐バルブBの切替によって、栽培容器Pに連通接続してある給排チューブ2の端部から貯留部T側への搬送と、前記中間部から外気を吸引して貯留部T側への外気搬送とに切り替える搬送切替機構36を制御装置Cに備えさせてあり、培地に対して適度な通気を行いながら、充分に貯留部の液体の曝気を行うことができる。
【0036】
〈4〉 尚、これまでの実施形態では、給排チューブの一方の端部を栽培容器の底部に連通接続する構成について説明したが、そのような構成に限らず、例えば、栽培する植物によっては、栽培容器の上部或いは上方に給排チューブの一方の端部を配設しても勿論よい。
【0037】
(実施例)
以下、具体的な実施例について説明する。栽培容器として、プラスチック製吊り鉢(直径270mm、深さ200mm)を用い、その底部の排水口をふさぎ、付属の目皿をセットし、防根シートを敷く。給排チューブの一例としてのウレタンチューブ(外径8mm、内径6mm)の先にエアストーンフィルターをつけ、このエアストーンフィルターを目皿の下の鉢の底面のなるべく低い位置に置く。ウレタンチューブの他方の端を、吊り鉢の上部から出し、約5m先のチューブポンプのポンプ内チューブ(給排チューブに相当)にジョイントで接続する。このポンプ内チューブには、ローラーポンプ用耐久性チューブ(外径8mm、内径5mm)を約10cm使用する。そして、ポンプ内チューブの他方の端に、給排チューブの一例としてのウレタンチューブ(外径8mm、内径6mm)を接続し、約1m先の貯留部に相当する養液タンク(容量20Lのポリタンク)に導く。尚、ウレタンチューブの先端には、エアストーンフィルターをつけ、養液タンクの底に設置する。
吊り鉢内にロックウールを詰め、この中にペチュニアの苗を3株配置し、吊り下げる。チューブポンプの正転電源入力端子と逆転電源入力端子をそれぞれタイマーに接続し、正転(送液)および逆転(排液、曝気)を表1のスケジュールに
設定できるようにタイマーを設定する。
【0038】
【表1】

【0039】
ポンプの回転数は約160rpmで、これにより毎回約500ccずつの送液が行われ、逆転時は約2分間の排液と約1分間の養液タンク内の養液曝気が行われる。曝気は養液タンク内の泡で確認できる。排液時間と排液量は栽培温度、湿度、成長度合いにより異なるので、適宜調整する。
尚、養液タンク内には市販の液体肥料を1000倍程度に希釈した液体を補充する(EC=1〜2が好ましい)。あるいは、緩効性固体肥料を吊り鉢内に入れる場合、養液タンクには水道水を満たしてもよい。
以上の条件で栽培を開始した。10日〜2週間ごとに養液タンクへ養液を補充する以外に他の管理作業なしで、1ヶ月後に約1m、3ヶ月後に約2mの草丈の花数が豊かなペチュニアを育成することができた。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明に係る植物栽培装置の一実施形態を示す説明図
【図2】本発明に係る植物栽培方法の一実施形態を示す説明図
【図3】本発明の別実施形態を示す説明図
【図4】本発明の別実施形態を示す説明図
【図5】本発明の別実施形態を示す説明図
【符号の説明】
【0041】
G 植物
P 栽培容器
T 貯留部
W 液体
1 チューブポンプ
2 給排チューブ
3 搬送装置
6 方向切替制御部
31 時間制御機構
35 外気吸引機構
36 搬送切替機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物を栽培する栽培容器の底部と、植物に供給する液体を貯留可能な貯留部とを、チューブポンプを介在させた給排チューブで連通接続して、前記チューブポンプの駆動で前記給排チューブを通して流体を搬送可能な搬送装置を設けてあるとともに、
前記搬送装置による流体の搬送方向を、前記貯留部側から前記栽培容器側へ流体を搬送する方向と、前記栽培容器側から前記貯留部側へ流体を搬送する方向とに切り替え制御可能な方向切替制御部と、
前記栽培容器側からの流体の搬送を、前記栽培容器から前記貯留部への液体の搬送を終了した後、前記栽培容器内の培地に対する通気を行うべく、前記栽培容器から外気を吸引して終了させる制御機構を設けてある植物栽培装置。
【請求項2】
前記制御機構が、前記栽培容器からの液体と外気の搬送に要する時間に基づいて、前記栽培容器からの外気の吸引を停止して、搬送を終了させるように構成してある請求項1記載の植物栽培装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−167076(P2007−167076A)
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−72644(P2007−72644)
【出願日】平成19年3月20日(2007.3.20)
【分割の表示】特願2002−181403(P2002−181403)の分割
【原出願日】平成14年6月21日(2002.6.21)
【出願人】(000001904)サントリー株式会社 (319)