説明

植物栽培装置

【課題】植物の水耕栽培に際して、その根の周辺における菌類または藻類の繁殖をより確実に抑制し、この植物の成長促進を図ることができる装置を提供する。
【解決手段】支持部材1により根の少なくとも一部を露出させた状態で植物が保持されている。給水装置3から供給される水が案内部材2の底板内側面21に沿って上方から下方に案内されることにより、この水を支持部材1により支持されている植物pの根の周囲に停滞させることなく当該根の露出部分に接触させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物を栽培するための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ミツバなどの植物を植え込むための貫通孔を有する植栽パネルにおける病原菌および藻類の繁殖を抑制しながら、その植物を水耕栽培するための手法が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−178287号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、パネル下方に突出している根の部分に菌類または藻類が発生し、これが病気の原因となりあるいは根から吸収されるべき養分を過度に奪ってしまい、植物の育成の妨げとなる可能性がある。
【0005】
そこで、本発明は、植物の水耕栽培に際して、その根の周辺における菌類または藻類の繁殖をより確実に抑制し、この植物の成長促進を図ることができる装置を提供することを解決課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するための本発明の植物栽培装置は、少なくとも植物の根の一部を露出させた状態で当該植物を支持するように構成されている支持部材と、給水装置と、案内部材であって、前記給水装置により供給される水を前記植物の根の露出部分に接触させながら当該案内部材の表面に沿って上方から下方に案内するように構成されている案内部材とを備えていることを特徴とする。
【0007】
本発明の植物栽培装置によれば、給水装置から供給される水が案内部材の表面に沿って上方から下方に案内されることにより、この水を植物の根の周囲に停滞させることなく当該根の露出部分に接触させることができる。このため、水の停滞による水温上昇、さらには菌類または藻類の滞留および繁殖が確実に回避され、その結果として植物の成長が確実に促進されうる。
【0008】
前記案内部材において少なくとも水に接触する部分が金属からなることが好ましい。
【0009】
当該構成の植物栽培装置によれば、水の熱が金属を通じて放出されることにより水温上昇が防止される結果、水中、特に根周辺の菌類および藻類の繁殖が確実に抑制され、当該水を根に接触させる栽培法により植物の成長が確実に促進されうる。
【0010】
前記案内部材において少なくとも水に接触する部分が抗菌作用を有する光触媒により被覆されていることが好ましい。
【0011】
当該構成の植物栽培装置によれば、水中、特に根周辺の菌類および藻類が殺傷されるまたは繁殖が抑制されるので、当該水を根に接触させる栽培法により植物の成長が確実に促進されうる。
【0012】
前記給水装置が、前記案内部材の下端に流れ落ちた水を汲み上げて前記案内部材の上端部から再び流し落とすための給水ポンプを備えていてもよい。
【0013】
前記支持部材が、前記植物を貫通させた状態で支持するための一定方向に配列されている複数の貫通孔が設けられ、かつ、傾斜状態に維持されている平板部材により構成され、前記案内部材が前記支持部材の下方にあって前記平板部材に対して平行であって、前記給水装置から供給される水を案内するための傾斜面を有する部材により構成されていてもよい。
【0014】
本発明者の得た知見によれば、植物の根に対して赤色光(可視光のうち波長範囲620〜750[nm]に含まれる光)が照射されると、この根ひいては植物の成長が促進される。その一方、植物の根に対して青色光(可視光のうち波長範囲450〜495[nm]に含まれる光)が照射されると、この根ひいては植物の成長が抑制される。
【0015】
そこで、前記植物の根の露出部分に対して赤色光を照射する、あるいは、青色光を遮断するように構成されている光調節機構を備えていることが好ましい。
【0016】
当該構成の植物栽培装置によれば、根の成長および植物の成長のさらなる促進が図られる。また、前記のように案内部材が光触媒により被覆されている場合、照射光によって活性化された当該光触媒の抗菌作用により、菌類および藻類の繁殖が確実に抑制されうる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1実施形態としての植物栽培装置の構成説明図。
【図2】本発明の第2実施形態としての植物栽培装置の構成説明図。
【図3】本発明の第2実施形態としての植物栽培装置に関する説明図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(第1実施形態)
図1に示されている本発明の第1実施形態としての植物栽培装置は、支持部材1と、案内部材2と、給水装置3とを備えている。
【0019】
支持部材1は、複数の貫通孔12が設けられたアクリル樹脂製の矩形状の平板により構成されている。複数の貫通孔12の配列される方向および間隔などの配置態様は、栽培対象となる植物の種類等に応じてさまざまに変更されうる。貫通孔12のそれぞれには、ほうれん草などの植物がその茎および葉を支持部材の上方に突出させる一方、その根を支持部材1の下方に突出させた状態で支持される。
【0020】
案内部材2はステンレス製の上部が開放されている略直方体状の筐体により構成されている。案内部材2は、当該筐体の底板が水平面に対して角度θだけ傾斜した姿勢が維持されるように、適当な部材(図示略)によって台などに固定されている。角度θは、当該水の勢いによって植物の根の姿勢が過度に下方に偏向しないように、たとえば5°〜45°の範囲、より好ましくは15°〜35°の範囲で調節されうる。
【0021】
支持部材1は、案内部材2の底板に対して平行な姿勢、すなわち、水平面に対して角度θだけ傾斜した姿勢が維持されるように、適当な部材(図示略)によって案内部材2に対して固定されている。支持部材1と案内部材2の底板との間隔は、栽培対象となる植物の種類などに応じて任意に偏向されうる。案内部材2の下端部には、底板内側面(傾斜面)21に対して下方に窪んでいる水溜まり部22が設けられている。
【0022】
なお、案内部材2の底板内側面21のうち、少なくとも支持部材1の貫通孔12に対向する部分が、チタニアなどの抗菌性の光触媒によって被覆されていてもよい。また、支持部材1のうち少なくとも貫通孔12の周囲が同じくチタニアなどの抗菌性の光触媒によって被覆されていてもよい。
【0023】
給水装置3は、給水管31と、給水ポンプ32とを備えている。給水管31は、その終端部が支持部材1の上縁に対して平行な方向にのびている姿勢で、案内部材2の上端部に対して固定されている。
【0024】
給水管31の終端部には、当該終端部の長手方向に沿って並べられている複数の給水孔312が設けられている。給水管31の終端部およびそこに設けられている複数の給水孔322の配置態様は、給水孔312から流れ出た水のうち少なくとも一部が案内部材2の底板に直接的に落下しうるように適当に調節されている。
【0025】
給水ポンプ32の動作により、給水孔312から流れ出た水は、底板内側面(傾斜面)21に沿って植物の根に接触しながら水溜まり部22まで流れ落ちる。また、水溜り部22に溜まった水は、給水ポンプ32の動作により汲み上げられ、水中のごみ等を除去するためのフィルター33を経由した上で、再び給水管31の終端部にまでいたって給水孔312から流れ出る。
【0026】
給水量(流量)は、当該水の勢いによって植物の根の姿勢が過度に下方に偏向しないように、たとえば0.01〜0.20[m3/s]の範囲、より好ましくは0.05〜0.10[m3/s]の範囲で調節されうる。水の勢いの強弱を調節するため、支持部材1と案内部材2の底板との間隔の広狭が調節されてもよい。
【0027】
水温計および当該水温計による測定結果に応じて給水管31を流れる水の温度を調節する水温調節器が設けられていてもよい。水温は、たとえば菌類および藻類の繁殖を抑制する観点から定められる温度範囲(たとえば15〜22[℃])に調節される。
【0028】
(第2実施形態)
図2に示されている本発明の第2実施形態としての植物栽培装置は、第1実施形態と同様に支持部材1と、案内部材2と、給水装置3とを備えているほか、これらをまとめて収納する外側筐体4を備えている。略筐体状の案内部材2は、前記のように当該筐体の底板が水平面に対して角度θだけ傾斜した姿勢が維持されるように、適当な部材によって外側筐体4に固定されている。
【0029】
外側筐体4はその内部空間、特に、支持部材1の上部空間を外部に対して開放または閉塞するための蓋部材40を備えている。蓋部材40はヒンジ機構44を介して外側筐体4に接続されており、当該ヒンジ機構44の軸回りに回動されることにより、外側筐体4を開閉するように構成されている(図2および図3参照)。蓋部材40の金属または合成樹脂等の剛性素材よりなるフレーム41と、このフレーム41により支持されているアクリル樹脂性のパネル42とを備えている。蓋部材40によって外側筐体4が閉じられた状態であっても、蓋部材40の当該パネル42を通じて内部の様子が観察可能になっている。
【0030】
蓋部材40の横幅方向に沿って平行に配列されている複数の樹脂製の基板5が蓋部材40のフレーム41に対して固定されている。基板5は、図3に示されているように外側筐体4が蓋部材40によって閉じられた状態で、支持部材1により支持されている複数の植物pを左右両側から挟むように配置されている。基板5には、この状態で複数の植物pに対して左右両側から光を照射するようにLEDなどの光源52が配置されている。基板5には、各光源の光照射パターンを調節するための制御器が搭載されている。
【0031】
たとえば光源52が赤色光を発し、この赤色光がアクリル樹脂性の支持部材1を通じて植物の根に対して照射される。また、光源52が赤色光のみならず、青色光などの異なる波長範囲の光を発する場合、支持部材1は、赤色光のみを選択的に透過するまたは青色光を選択的に遮断するような素材により構成されている、またはコーティングが施されていてもよい。これらの場合、光源52と、支持部材1またはそのコーティングとが光調節機構を構成する。
【0032】
(発明の効果)
本発明の植物栽培装置によれば、給水装置3から供給される水が案内部材2の底板内側面21に沿って上方から下方に案内されることにより、この水を支持歩合1により支持されている状態の植物pの根の周囲に停滞させることなく当該根の露出部分に接触させることができる。このため、水の停滞による水温上昇、さらには菌類または藻類の滞留および繁殖が確実に回避され、その結果として植物の成長が確実に促進されうる。
【0033】
案内部材2において、少なくとも水に接触する底板内側面21は金属からなるので、水の熱がこの金属を通じて放出されることにより水温上昇が防止される結果、水中、特に根周辺の菌類および藻類の繁殖が確実に抑制され、当該水を根に接触させる栽培法により植物の成長が確実に促進されうる。
【0034】
案内部材2において少なくとも水に接触する部分が抗菌作用を有する光触媒により被覆されていることにより、水中、特に根周辺の菌類および藻類が殺傷されるまたは繁殖が抑制されるので、当該水を根に接触させる栽培法により植物の成長が確実に促進されうる。
【0035】
特に第2実施形態では、植物pの根の露出部分に対して赤色光を照射する、あるいは、青色光を遮断するように構成されている光調節機構(光源51および支持部材1)を備えている。これにより、根の成長および植物の成長のさらなる促進が図られる。また、前記のように案内部材2が光触媒により被覆されている場合、照射光によって活性化された当該光触媒の抗菌作用により、菌類および藻類の繁殖が確実に抑制されうる。
【符号の説明】
【0036】
1‥支持部材、2‥案内部材、3‥給水装置、52‥光源。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも植物の根の一部を露出させた状態で当該植物を支持するように構成されている支持部材と、
給水装置と、
案内部材であって、前記給水装置により供給される水を前記植物の根の露出部分に接触させながら当該案内部材の表面に沿って上方から下方に案内するように構成されている案内部材とを備えていることを特徴とする植物栽培装置。
【請求項2】
請求項1記載の植物栽培装置において、
前記案内部材において少なくとも水に接触する部分が金属からなることを特徴とする植物栽培装置。
【請求項3】
請求項1または2記載の植物栽培装置において、
前記案内部材において少なくとも水に接触する部分が抗菌作用を有する光触媒により被覆されていることを特徴とする植物栽培装置。
【請求項4】
請求項1〜3のうちいずれか1つに記載の植物栽培装置において、
前記給水装置が、前記案内部材の下端に流れ落ちた水を汲み上げて前記案内部材の上端部から再び流し落とすための給水ポンプを備えていることを特徴とする植物栽培装置。
【請求項5】
請求項1〜4のうちいずれか1つに記載の植物栽培装置において、
前記支持部材が、前記植物を貫通させた状態で支持するための一定方向に配列されている複数の貫通孔が設けられ、かつ、傾斜状態に維持されている平板部材により構成され、
前記案内部材が前記支持部材の下方にあって前記平板部材に対して平行であって、前記給水装置から供給される水を案内するための傾斜面を有する部材により構成されていることを特徴とする植物栽培装置。
【請求項6】
請求項1〜5のうちいずれか1つに記載の植物栽培装置において、
前記植物の根の露出部分に対して赤色光を照射する、あるいは、青色光を遮断するように構成されている光調節機構を備えていることを特徴とする植物栽培装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−179010(P2012−179010A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−44359(P2011−44359)
【出願日】平成23年3月1日(2011.3.1)
【出願人】(504237050)独立行政法人国立高等専門学校機構 (656)
【出願人】(511054569)シンワ電装株式会社 (1)
【出願人】(507326456)株式会社仙台放送 (2)
【出願人】(511054570)東北プレス工業株式会社 (1)
【Fターム(参考)】