植物生産システム
【課題】植物を生産するためのエネルギー、生産コスト、環境負荷等を低減できるとともに、植物の成長によって好ましい波長の光を十分に供給することができる植物生産システムを提供すること。
【解決手段】波長変換光学板3で波長変換された光は、その平面方向の端部から反射プリズム5に照射され、更に、反射プリズム5の反射膜15によって、下面側に配置された植物7に供給されるので、植物7を生産するためのエネルギー、生産コスト、環境負荷等を大きく低減することができる。つまり、波長変換光学板3の上面から照射された太陽光は、波長変換光学板3の平面方向の端部側に約70%集光されるので、波長変換光学板3の平面方向の端部から反射プリズム5を介して植物7に光を供給することにより、太陽光を極めて効率良く利用できる。
【解決手段】波長変換光学板3で波長変換された光は、その平面方向の端部から反射プリズム5に照射され、更に、反射プリズム5の反射膜15によって、下面側に配置された植物7に供給されるので、植物7を生産するためのエネルギー、生産コスト、環境負荷等を大きく低減することができる。つまり、波長変換光学板3の上面から照射された太陽光は、波長変換光学板3の平面方向の端部側に約70%集光されるので、波長変換光学板3の平面方向の端部から反射プリズム5を介して植物7に光を供給することにより、太陽光を極めて効率良く利用できる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、太陽光などの光を用いて植物を生産する植物工場などに利用できる植物生産システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、人工的に植物を生産する植物工場としては、太陽光利用型と完全制御型が知られている。
前者は、ハウス栽培の延長であり、太陽光を利用して、比較的低コストで野菜等を生産できるという利点がある。この太陽光利用型の技術としては、植物の成長を高めるために、波長変換光学板を用いて太陽光の波長を変換し、植物の生育に好適な波長の光を供給する技術が提案されている(特許文献1、2 参照)。
【0003】
一方、後者は、野菜など農産物の安定供給を図るため、光源に、人工的な高圧Naランプ、蛍光灯、発光ダイオード等を用いたものであり、近年では、あたかも野菜を栽培する工場の様な植物工場の建設が進められている。
【0004】
この完全制御型の特長は、光、温度、二酸化炭素濃度などの環境制御による植物の周年生産システムであり、天候に左右されず狭い土地で太陽生産ができ、無農薬、新鮮、清潔等、高付加価値作物の安定供給ができ、食の安全、安心、消費者の健康志向に合致する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭63−160521号公報
【特許文献2】特開2008−181771号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、太陽光利用型は、夏季の高温対策が課題であり、一般的に無農薬栽培は容易ではない。そのため、農薬を使用することになるが、農薬を使用することによる周辺の大気汚染、雨水に混入することによる水質汚染の問題がある。更に、最近の健康志向の高まりにより、無農薬栽培や豊潤な味の有機栽培が要請されている。
【0007】
特に、波長変換光学板を用いる場合には、太陽光の多くが波長変換光学板の表面などで反射してしまい、十分な光量の波長変換光が植物に照射されない(例えば太陽光の15%程度しか利用されない)という問題があった。
【0008】
一方、完全制御型で栽培を行うためには、大量の電力を消費するため生産コストがかかり、また、地球温暖化、化石燃料の枯渇化など、環境・エネルギー問題に大きな影響を与えることが懸念されている。
【0009】
更に、使用する光源については、高圧Naランプは、高出力でかつW当り単価が安価だが、多量の熱放射によって近接照明ができないという問題がある。また、蛍光灯は、安価で扱いやすいが、赤色成分が少なく生産物の品質にやや難点がある。更に、発光ダイオードは、長寿命、赤と青のクロロフィルの吸収スペクトルに一致するなどの利点があるが、照明設備が高価格になるという問題がある。
【0010】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、その目的は、植物を生産するためのエネルギー、生産コスト、環境負荷等を低減できるとともに、植物の成長によって好ましい波長の光を十分に供給することができる植物生産システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(1)請求項1の発明(植物生産システム)は、光の波長を変換する波長変換光学板と、該波長変換光学板の平面方向における端部の外側に配置された反射プリズムと、を備え、前記反射プリズムは、前記波長変換光学板の平面方向における端部から射出された光を該波長変換光学板の板厚方向に反射させるようにその反射面が配置されるとともに、該反射プリズムによる光の反射方向に、植物の配置場所が設定されていることを特徴とする。
【0012】
本発明では、波長変換光学板に入射した光(例えば太陽光)は、波長変換光学板内で、植物の生育に好適な波長に変換される。この変換された光は、波長変換光学板内で反射を繰り返して集光され、その平面方向の端部から光の多く(波長変換光学板の板厚方向から入射した光の約70%程度)が射出される。そして、波長変換光学板の端部から射出された光は、反射プリズム内に入射し、その反射面によって反射して、植物側に照射される。
【0013】
よって、本発明によれば、植物を生産するためのエネルギー、生産コスト、環境負荷等を低減できるとともに、植物の成長によって好ましい波長の光を集中的に且つ十分に供給することができるという顕著な効果を奏する。
【0014】
(2)請求項2の発明では、前記波長変換光学板の平面方向における端部と、該端部の外側に配置された反射プリズムの反射面との間に、前記光を前記波長変換光学板の板厚方向に透過させる光透過部を備えたことを特徴とする。
【0015】
本発明では、波長変換光学板の端部と反射プリズムの反射面との間に光透過部を備えているので、波長変換光学板の板厚方向から光透過部に入射した光は、そのまま光透過部を通過して植物に照射される。
【0016】
従って、植物に対しては、波長変換光学板によって波長変換された光だけでなく、その他の波長の光もある程度は照射されるので、植物の育成にとってはより好ましいと考えられる。
【0017】
(3)請求項3の発明では、前記反射プリズムの周囲に、前記植物に向けて光を照射する照明部を設けたことを特徴とする。
本発明では、例えばLED等によって植物に光を照射する照明部を設けているので、例えば天気が悪く太陽光が十分でない場合や夜間においても、植物に光を供給することができる。
【0018】
(4)請求項4の発明(植物生産システム)は、光の波長を変換する波長変換光学板と、該波長変換光学板の平面方向における端部に配置されて光を反射する反射部と、を備え、前記反射部は、前記波長変換光学板の平面方向における端部に到る光を該波長変換光学板の板厚方向に反射させるように、該波長変換光学板の平面方向に対して斜めに配置されるとともに、該反射部による光の反射方向に、植物の配置箇所が設定されていることを特徴とする。
【0019】
本発明では、波長変換光学板に入射した光(例えば太陽光)は、波長変換光学板内で、植物の生育に好適な波長に変換される。この変換された光は、波長変換光学板内で反射を繰り返して集光され、その平面方向の端部の反射部にて光の多く(即ち波長変換光学板の板厚方向から入射した光の約70%程度)が反射する。そして、波長変換光学板の反射部にて植物側に反射した光は、植物に効率良く照射される。
【0020】
よって、本発明によれば、植物を生産するためのエネルギー、生産コスト、環境負荷等を低減できるとともに、植物の成長によって好ましい波長の光を集中的に且つ十分に供給することができるという顕著な効果を奏する。
【0021】
(5)請求項5の発明では、前記波長変換光学板の平面方向における端部が該平面方向に対して斜めにカットされており、該斜めの斜面に前記反射部を構成する反射膜が形成されていることを特徴とする。
【0022】
本発明は、反射部の構成を例示したものである。
なお、斜めに傾斜した傾斜角θ(平面方向と垂直の板厚方向に対する傾斜角)としては、例えば40°<θ<50°の範囲が好適である。
【0023】
(6)請求項6の発明(植物生産システム)は、光の波長を変換する波長変換光学板と、該光を案内する光ファイバーと、を備え、前記光ファイバーの一端は、前記波長変換光学板の平面方向における端部から射出された光を受光するように、該波長変換光学板の平面方向における端部の外側に配置されるとともに、前記光ファイバーの他端側に、植物の配置箇所が設定されていることを特徴とする。
【0024】
本発明では、波長変換光学板に入射した光(例えば太陽光)は、波長変換光学板内で、植物の生育に好適な波長に変換される。この変換された光は、波長変換光学板内で反射を繰り返して集光され、その平面方向の端部から光の多く(即ち波長変換光学板の板厚方向から入射した光の約70%程度)が射出される。そして、波長変換光学板の端部から光ファイバー内に照射された光は、光ファイバー内を案内されて、植物に効率良く照射される。
【0025】
よって、本発明によれば、植物を生産するためのエネルギー、生産コスト、環境負荷等を低減できるとともに、植物の成長によって好ましい波長の光を集中的に且つ十分に供給することができるという顕著な効果を奏する。
【0026】
(7)請求項7の発明では、前記波長変換光学板は、波長変換の特性が異なる複数の波長変換光学板が積層されたものであることを特徴とする。
本発明は、波長変換光学板を例示したものである。これにより、植物の育成に好適な複数の波長の光を選択的に取り出して、植物に供給できるので、植物の育成に一層好適である。
【0027】
(8)請求項8の発明では、前記波長変換光学板は、300nm〜400nmの波長の紫外光を吸収し、400nm〜500nmの波長の青色光を発光する青色波長変換光学板と、400nm〜600nmの波長の光を吸収し、600nm〜700nmの波長の赤色光を発光する赤色波長変換光学板とのうち、少なくとも1種を備えたことを特徴とする。
【0028】
本発明は、波長変換光学板の好ましい構成を例示したものである。
図4に例示する様に、主として450nmの波長の光(例えば青色LEDの光)が、発芽を促進することが知られており、また、主として650nmの波長の光(例えば赤色LEDの光)が、光合成、発芽、開花を促進することが知られている。
【0029】
従って、本発明では、これらの波長を含むように、400nm〜500nmの波長の青色光を発光する青色波長変換光学板や、600nm〜700nmの波長の赤色光を発光する赤色波長変換光学板を用いる。
【0030】
特に、青色波長変換光学板と赤色波長変換光学板とを積層した波長変換光学板を用いると、より一層光合成や発芽や開花を促進できるので、好適である。
しかも、青色波長変換光学板と赤色波長変換光学板とを積層するとともに、太陽光の入射側に青色波長変換光学板を配置した場合には、赤色波長変換光学板は、青色波長変換光学板にて波長変換された青色光を、効率よく赤色光に変換できるので、太陽光を極めて有効に利用できるという利点がある。
【0031】
(9)請求項9の発明では、複数の前記波長変換光学板を板厚方向に積層した構成を備えるとともに、前記光の入射側の波長変換光学板の面積が該光の入射側と反対側の波長変換光学板の面積より大きく設定されていることを特徴とする。
【0032】
本発明では、光の入射側の波長変換光学板の面積が光の入射側と反対側(出射側)の波長変換光学板の面積より大きく設定されているので、入射側の波長変換光学板の端部側で反射した光を、出射側の波長変換光学板を通過することなく、直接に植物側に供給することができる。よって、一層植物に効率よく光を供給することができる。
【0033】
(10)請求項10の発明では、前記波長変換光学板の光の入射側と反対側の表面に、光を反射する反射膜を備えたことを特徴とする。
本発明では、波長変換光学板の入射側から入射した光(特に赤外線)を反射膜によって反射することによって、赤外線が植物側に供給することを防ぐことができる。
【0034】
よって、本発明では、植物に対する熱放射が少ないので、波長変換光学板や反射プリズムや光ファイバー等を植物に近接して配置できる。これにより、一層多くの光(即ち植物の生育に好適な光)を供給できるので、好適に植物を育成できるという顕著な効果を奏する。
【0035】
(11)請求項11の発明では、前記波長変換光学板から射出される光が案内される位置に、前記光の導入が可能な密閉容器を配置するとともに、前記密閉容器内に、前記植物を載置して移動させるベルトコンベア、前記植物に養分を与える養分水循環システム、前記植物に水分を供給するシャワー、前記植物に炭酸ガスを供給する炭酸ガスシステム、前記植物の生育に有害な物質及び/又は生物の侵入を阻止するクリーンエアシステムのうち、少なくとも1種を備えたことを特徴とする。
【0036】
本発明では、植物を密閉容器内で育てることができるので、有害な物質や生物の侵入を防止でき、よって、無農薬で植物を育てることができるという顕著な効果を奏する。また、最小限の容積で植物を育成することができるという利点がある。
【0037】
(12)請求項12の発明では、更に、前記ベルトコンベアに載置した植物の培養床に対して種付けを行う自動種付け装置と、前記ベルトコンベアに載置した植物を回収する回収装置とのうち、少なくとも1種を備えたことを特徴とする。
【0038】
本発明では、植物の種付けや回収などをベルトコンベアを用いて行うことができるので、植物生産の労力を低減できるという利点がある。また、従来の様な、コストのかかる大型の建物が不要であるという効果もある。
【0039】
なお、前記各請求項においては、波長変換光学板としては、例えば透明なガラス又は樹脂中に、不純物として蛍光物質(蛍光色素)等が混入されているものを採用できる。この場合には、波長変換光学板に入射した光が、蛍光物質等に当たると特定の波長の蛍光を発生する。
【0040】
また、前記波長変換光学板は、透明なガラス又は樹脂からなる基板の表面(光の入射側の表面)に、入射した光に応じて蛍光を発生する蛍光物質を含む蛍光物質層等を形成したものを採用できる。この場合には、光が基板表面の蛍光物質に当たって発生した蛍光は、透明な基板に入射する。
【0041】
なお、前記ガラス及び樹脂としては、無色透明が最も好ましいが、色がついていてもよい。また、ガラスとしては、例えばシリカ、酸化ホウ素系ガラスを採用でき、樹脂としては、例えばアクリル、ポリカーボネイトを採用できる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】実施例1の植物生産システムを示す正面図である。
【図2】実施例1の植物生産システムを示す平面図である。
【図3】(a)青色波長変換光学板の波長変換の特性を示すグラフ、(b)赤色波長変換光学板の波長変換の特性を示すグラフである。
【図4】光の波長と植物の生育との関係を示すグラフである。
【図5】実施例2の植物生産システムを示す正面図である。
【図6】実施例3の植物生産システムを示す正面図である。
【図7】実施例4の植物生産システムを示す正面図である。
【図8】実施例5の植物生産システムを示す正面図である。
【図9】実施例6の植物生産システムを示す正面図である。
【図10】実施例7の植物生産システムを示す正面図である。
【図11】実施例8の植物生産システムを示す正面図である。
【図12】実施例9の植物生産システムの平面を示す説明図である。
【図13】(a)他の波長変換光学板の構成を示す説明図、(b)更に他の光変換光学板の構成を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
次に、本発明の植物生産システムの実施例について、いくつかの具体的な例を挙げて説明する。
【実施例1】
【0044】
a)まず、本実施例の植物生産システムの構成について説明する。
図1及び図2に示す様に、本実施例の植物生産システム1は、平面形状が長方形の複数の波長変換光学板3と、波長変換光学板3の平面方向に配置された複数の反射プリズム5と、反射プリズム5の下方に配置された植物7とを備えている。なお、波長変換光学板3と反射プリズム5とから平板状の植物育成パネル9が構成されている。
【0045】
以下、各構成について説明する。
前記波長変換光学板3は、例えば縦500mm×横1000mm×厚み8mmの透光性を有する平板であり、その平面方向の端面は、平面方向に対して垂直に形成されている。
【0046】
また、この波長変換光学板3は、受光した太陽光の波長を変換する、板厚4mmの平板状の青色波長変換光学板11と、同様な板厚4mmの平板状の赤色波長変換光学板13とを、板厚方向に重ねて、透光性を有する光学接着剤(例えば光学シリコン樹脂接着剤)で貼り合わせて一体にしたものである。
【0047】
このうち、青色波長変換光学板11は、300nm〜400nmの波長の紫外光を吸収し、400nm〜500nmの波長の青色光を発光する青色蛍光板である。この青色波長変換光学板11としては、例えばBASF社製のLumogen570を採用することができる。なお、この青色波長変換光学板11は、図3(a)に示す様な特性を有する。なお、図3の縦軸は、吸収、発光強度を規格化した値を示している。
【0048】
また、赤色波長変換光学板13は、400nm〜600nmの波長の光を吸収し、600nm〜700nmの波長の赤色光する赤色蛍光板である。この赤色波長変換光学板13としては、例えばBASF社製のLumogen305を採用することができる。なお、この赤色波長変換光学板13は、図3(b)に示す様な特性を有する。
【0049】
ここで、青色波長変換光学板11と赤色波長変換光学板13とを積層した波長変換光学板3を用いる理由を説明する。
図4に示す様に、450nm前後の波長の光(例えば青色LEDの光)が、発芽を促進することが知られており、また、650nm前後の波長の光(例えば赤色LEDの光)が、光合成、発芽、開花を促進することが知られている。
【0050】
従って、本実施例では、これらの植物7の生育に好ましい波長の光を発生させるために、400nm〜500nmの波長の青色光を発光する青色波長変換光学板11と600nm〜700nmの波長の赤色光を発光する赤色波長変換光学板13とを重ねて使用するのである。
【0051】
なお、図4の縦軸の相対効果とは、660nmのスペクトルの強度で規格化した値を示している。
また、前記図1及び図2に示す様に、前記反射プリズム5は、長手方向(図2の左右方向)と垂直の断面が直角三角形(短辺8mm×長辺(斜辺)11.3mm)のプリズムである。この反射プリズム5は、例えば透明なアクリルから構成され、その斜辺に反射膜15が形成されている。なお、反射膜15は、厚み100nmのAlからなり、スパッタ又は蒸着により形成することができる。
【0052】
特に本実施例では、左右の波長変換光学板3に挟まれた空間に、一対の反射プリズム5が左右対称となるように配置されている。
詳しくは、左右の波長変換光学板3に挟まれた空間において、図1の左側の波長変換光学板3の平面方向における右側の端面17に、左側の反射プリズム5Lの一方の短辺側の端面19が当接するとともに、同左側の反射プリズム5Lの他方の短辺側の端面21が、波長変換光学板3の下面23と、その表面が一致するように(従って、端面21が図1の下方に向くように)配置されている。
【0053】
これにより、反射プリズム5Lの斜面25に形成された反射膜15が、前記平面方向(図1の左右方向)に対して45°傾斜することになる。
同様に、前記左右の波長変換光学板3に挟まれた空間において、図1の右側の波長変換光学板3の平面方向における左側の端面27に、右側の反射プリズム5Rの一方の短辺側の端面29が当接するとともに、同右側の反射プリズム5Rの他方の短辺側の端面31が、波長変換光学板3の下面23と、その表面が一致するように(従って、端面31が図1の下方に向くように)配置されている。
【0054】
これにより、反射プリズム5Rの斜面33に形成された反射膜15が、前記平面方向(図1の左右方向)に対して45°傾斜することになる。
なお、植物育成パネル9において、その左右端に配置された波長変換光学板13の外側端面35には、アルミからなる反射膜37が形成されている。
【0055】
そして、植物育成パネル9の左右の反射プリズム5R、5Lの直下、即ち、植物育成パネル9の板厚方向において、太陽光の入射側と反対側である出射側(図1の下方)には、複数の植物7が配置されている。なお、植物7は、ブロック状の例えば不織布等からなる培養床39に植え付けられているが、培養床39がなく植物の根だけでもよい。
【0056】
b)次に、植物生産システム1の機能について説明する。
本実施例では、植物育成パネル9の上方(青色波長変換光学板11側)から、波長変換光学板3の表面(上面)に対して、垂直に近い所定角度で太陽光が照射される。なお、地面に対して植物育成パネル9をどのように配置するか等により、太陽光の入射角度は異なる。
【0057】
そして、波長変換光学板3のうち、上面側の青色波長変換光学板11に入射した太陽光の多くは、青色波長変換光学板11にて波長変換される。具体的には、前記図3(a)に示した特性により、主として紫外線が青色光に波長変換される。
【0058】
この青色光は、青色波長変換光学板11内にて全反射を繰り返し、前記図1の実線で示す様に、青色波長変換光学板11の平面方向の端部から反射プリズム5に放射される。この端部から放射された青色光は、反射プリズム5の反射膜15にて反射され、反射プリズム5の端面21、31から、同図下方の植物7に向かって照射される。
【0059】
なお、一部の光、即ち、青色波長変換光学板11にて波長変換された光及び波長変換されない光の一部は、青色波長変換光学板11を板厚方向に透過して、下側の赤色波長変換光学板13に到る。
【0060】
同様に、下面側の赤色波長変換光学板13に入射した太陽光の多くは、赤色波長変換光学板13にて波長変換される。具体的には、前記図3(b)に示した特性により、主として緑色の光が赤色光に波長変換される。
【0061】
この赤色光は、赤色波長変換光学板13内にて全反射を繰り返し、前記図1の破線で示す様に、赤色波長変換光学板13の平面方向の端部から反射プリズム5に放射される。この端部から放射された赤色光は、前記青色光と同様に、反射プリズム5の反射膜15にて反射され、反射プリズム5の端面21、31から、同図下方の植物7に向かって照射される。
【0062】
なお、一部の光、即ち、赤色波長変換光学板13にて波長変換された光及び波長変換されない光の一部は、赤色波長変換光学板13を板厚方向に透過して、赤色波長変換光学板13の下面側から放射される。
【0063】
また、植物育成パネル9の左右両端の波長変換光学板3には、その外側の端面35に反射膜37が形成されているので、波長変換光学板3によって波長変換された光は、前記端面35から外部に漏出することなく、反射プリズム5側などに放射される。
【0064】
c)この様に、本実施例では、波長変換光学板3で波長変換された光は、その平面方向の端部から反射プリズム5に射出され、更に、反射プリズム5の反射膜15によって、下面側に配置された植物7に照射されるので、植物7を生産するためのエネルギー、生産コスト、環境負荷等を大きく低減することができる。
【0065】
つまり、波長変換光学板3の上面から照射された太陽光は、波長変換光学板3の平面方向の端部側に約70%集光されるので、本実施例の様に、波長変換光学板3の平面方向の端部から反射プリズム5を介して植物7に光を供給することにより、太陽光を極めて効率良く利用できるという利点がある。
【0066】
更に、本実施例では、青色波長変換光学板11と赤色波長変換光学板13とを積層することにより、各波長変換光学板11、13に到達した波長の光を、それぞれ植物の生育に適した波長の光に変化することができる。特に、赤色波長変換光学板13は、青色波長変換光学板11にて波長変換された青色光を、効率よく赤色光に変換できるので、太陽光を極めて有効に利用できるという利点がある。
【0067】
つまり、本実施例では、植物7の成長によって好ましい波長の光を十分に供給することができるので、植物7を効率良く成長させることができるという顕著な効果を奏する。
【実施例2】
【0068】
次に、実施例2について説明するが、実施例1と同様な内容の説明は省略する。
図5に示す様に、本実施例の植物生産システム41は、前記実施例1と同様に、(青色波長変換光学板43と赤色波長変換光学板45とが積層された)複数の波長変換光学板47と、左右の波長変換光学板47の間に配置された複数対の反射プリズム49とからなる植物育成パネル51を備えており、反射プリズム49の下面側(同図下方)には植物53が配置されている。
【0069】
また、左右の反射プリズム49L、49Rの斜面には、それぞれ反射膜55が形成されるとともに、左右の外側に配置された波長変換光学板43の外側の端面にも反射膜57が形成されている。
【0070】
特に、本実施例では、反射プリズム49は、その長手方向と垂直の断面の形状は、長方形と直角三角形が一体となった台形の形状となっている。そして、直角三角形部分59の斜面には前記反射膜55が形成されているものの、長方形部分61の上下面には反射膜が形成されていない。従って、上方から反射プリズム49の長方形部分61に入射した光は、長方形部分61を透過して、その長方形部分61の下面側から出射されるようになっている。
【0071】
従って、本実施例では、前記実施例1と同様に、上面側の青色波長変換光学板43に入射した太陽光の多くは、青色波長変換光学板41にて波長変換され、また、下面側の赤色波長変換光学板45に入射した太陽光の多くは、赤色波長変換光学板45にて波長変換される。
【0072】
そして、青色波長変換光学板43で集光された光と赤色波長変換光学板45で集光された光は、それぞれ平面方向の端部から反射プリズム49側に出射され、反射プリズム49の反射膜55で反射して、植物53側に照射される。
【0073】
また、植物育成パネル51の上方から照射された太陽光のうち、反射プリズム49の長方形部分61に照射された太陽光は、上述した様に、透明な長方形部分61を透過して、そのまま植物53に供給される。
【0074】
これにより、本実施例では、前記実施例1と同様な効果を奏するとともに、反射プリズム49に太陽光がそのまま透過する長方形部分61を備えているので、多くの波長の光を植物53に供給することができる。よって、植物53の生育には、より好ましいと推定される。
【実施例3】
【0075】
次に、実施例3について説明するが、実施例2と同様な内容の説明は省略する。
図6に示す様に、本実施例の植物生産システム71は、前記実施例2と同様に、(青色波長変換光学板73と赤色波長変換光学板75とが積層された)複数の波長変換光学板77と、左右の波長変換光学板77の間に配置された複数対の反射プリズム79とからなる植物育成パネル81を備えており、反射プリズム79の下面側には植物83が配置されている。
【0076】
また、左右の反射プリズム79L、79Rも、前記実施例2と同様に、台形形状であり、その斜面に反射膜85が形成されるとともに、左右の外側に配置された波長変換光学板77の外側の端面にも反射膜87が形成されている。
【0077】
特に、本実施例では、波長変換光学板77の下面、即ち、赤色波長変換光学板75の下面にも、前記と同様な光を反射する反射膜89が形成されているので、赤色波長変換光学板75の下面から光が植物83側に照射されることを防止している。
【0078】
従って、本実施例では、前記実施例2と同様な効果を奏するとともに、波長変換光学板77に入射した光は、赤色波長変換光学板75の下面から漏出することなく、効率的に反射プリズム79に導かれて、植物83に供給されるので、太陽光を有効利用できるという利点がある。
【0079】
特に、本実施例では、赤色波長変換光学板75の下面に反射膜87が形成されているので、赤外線が波長変換光学板77の板厚方向に透過して、植物83に照射されることを防止できるので、植物に対する熱放射を少なくできる。従って、植物育成パネル81を植物83に近接して配置できるので、好適に植物を育成できるという顕著な効果を奏する。
【実施例4】
【0080】
次に、実施例4について説明するが、実施例1と同様な内容の説明は省略する。
図7に示す様に、本実施例の植物生産システム91では、(青色波長変換光学板93と赤色波長変換光学板95とが積層された)複数の波長変換光学板97が同図の紙面の厚み方向に沿って並列に配置された植物育成パネル101が用いられている。
【0081】
そして、波長変換光学板97の平面方向における端部の下面側(同図下方)に、植物103が配置されている。
特に本実施例では、波長変換光学板97の平面方向における端部、従って、青色波長変換光学板93と赤色波長変換光学板95との平面方向における端部が、平面方向に対して斜め(例えば45°)にカットされており、この斜めの端面に、反射膜105が形成されている。
【0082】
従って、本実施例では、波長変換光学板97の上方から入射された光は、青色波長変換光学板93と赤色波長変換光学板95とでそれぞれ集光されて、各端部の反射面105で反射して植物103側に照射される。
【0083】
よって、本実施例でも、前記実施例1と同様な効果を奏するとともに、反射プリズムを使用しないので、構成を簡易化できるという利点がある。
【実施例5】
【0084】
次に、実施例5について説明するが、実施例4と同様な内容の説明は省略する。
図8に示す様に、本実施例の植物生産システム111では、(青色波長変換光学板113と赤色波長変換光学板115とが積層された)複数の波長変換光学板117が同図の紙面の厚み方向に並列に配置された植物育成パネル121が用いられている。
【0085】
そして、波長変換光学板117の平面方向における端部の下面側(同図下方)に、植物123が配置されている。
また、青色波長変換光学板113と赤色波長変換光学板115とのそれぞれの平面方向における端部が、平面方向に対して斜め(例えば45°)にカットされており、この斜めの端面に、それぞれ反射膜125、127が形成されている。
【0086】
特に本実施例では、青色波長変換光学板113の幅(同図左右方向)が赤色波長変換光学板115の幅より大きく設定されている。詳しくは、青色波長変換光学板113の反射膜125と赤色波長変換光学板115の反射膜127とが、同図上下方向において重ね合わないように設定されている。
【0087】
従って、本実施例では、青色波長変換光学板113の上方から入射された光は、青色波長変換光学板113で集光されて、その端部の反射面125で反射して植物123側に照射される。一方、赤色波長変換光学板115に入射して集光された光は、その端部の反射面127で反射して植物123側に照射される。
【0088】
よって、本実施例では、前記実施例4と同様な効果を奏するとともに、青色波長変換光学板113で集光されて反射膜125で反射した光は、直接に植物123に供給されるので、植物123への光の供給を一層効率良く行うことができるという利点がある。
【実施例6】
【0089】
次に、実施例6について説明するが、実施例1と同様な内容の説明は省略する。
図9に示す様に、本実施例の植物生産システム131では、植物育成パネル132として、青色波長変換光学板133と赤色波長変換光学板134とが積層された波長変換光学板135が用いられている。
【0090】
また、波長変換光学板135の平面方向の一端には、光を反射する反射膜136が形成されている。
特に本実施例では、波長変換光学板135の平面方向の他端、即ち、青色波長変換光学板133の平面方向の他端と赤色波長変換光学板134の平面方向の他端には、それぞれ光ファイバー137、138の一端が配置されている。そして、光ファイバー137、138の他端には、植物139が配置されている。
【0091】
従って、本実施例では、青色波長変換光学板133の上方から入射された光は、青色波長変換光学板133で集光されて、その端部から光ファイバー137内に出射され、光ファイバー137の他端から植物139に照射される。同様に、赤色波長変換光学板134に入射して集光された光は、その端部から光ファイバー138内に出射され、光ファイバー138の他端から植物139に照射される。
【0092】
よって、本実施例では、前記実施例1と同様な効果を奏するとともに、光ファイバー137、138の方向は自由に変更できるので、植物生産システム131の構造の自由度が高いという利点がある。
【実施例7】
【0093】
次に、実施例7について説明するが、実施例3と同様な内容の説明は省略する。
図10に示す様に、本実施例の植物生産システム141は、前記実施例3と同様に、(青色波長変換光学板143と赤色波長変換光学板145とが積層された)複数の波長変換光学板147と、左右の波長変換光学板147の間に配置された複数対の反射プリズ149とからなる植物育成パネル151を備えており、反射プリズム149の下面側に植物153が配置されている。
【0094】
また、左右の反射プリズム149L、149Rも、前記実施例3と同様に、台形形状であり、その斜面に反射膜155が形成されている。また、左右の外側の波長変換光学板147の外側の端面に反射膜157が形成されるとともに、波長変換光学板147の下面にも反射膜159が形成されている。
【0095】
特に、本実施例では、左右の反射プリズム149L、149Rの間に空間が設けられており、この空間に、植物153に光を照射する例えばLEDからなる照明161が配置されている。
【0096】
この照明としては、前記図4に示す様に、450nm前後の光を照射する青色LEDや650nm前後の光を照射する赤色LED等の両方又は一方を用いることができる。また、青色LEDや赤色LEDの配置としては、図10の左右方向に配列する方法や、図10の紙面の厚み方向に交互に配置する方法等を採用できる。
【0097】
従って、本実施例では、前記実施例3と同様な効果を奏するとともに、照明161を備えているので、太陽光が少ない場合でも、植物153を安定的に成長させることができるという利点がある。
【実施例8】
【0098】
次に、実施例8について説明するが、実施例7と同様な内容の説明は省略する。
図11に示す様に、本実施例の植物生産システム171は、前記実施例7と同様に、(青色波長変換光学板173と赤色波長変換光学板175とが積層された)複数の波長変換光学板177と、左右の波長変換光学板177の間に配置された複数対の反射プリズ179とからなる植物育成パネル181を備えている。
【0099】
また、左右の反射プリズム179L、179Rも、前記実施例7と同様に、台形形状であり、その斜面に反射膜183が形成されている。また、左右の外側の波長変換光学板177の外側の端面に反射膜185が形成されるとともに、波長変換光学板177の下面にも反射膜187が形成されている。更に、左右の反射プリズム179L、179Rの間に照明191が配置されている。
【0100】
特に本実施例では、反射プリズム179の下面側に、上面側より光の入射が可能な透明な(同図の紙面の厚み方向に長く伸びる)密閉容器193が配置されている。
そして、密閉容器193には、養分水195が供給されるとともに、植物197を載置するパッド199、パッド199を載置して紙面の厚み方向に移動させるベルトコンベア201、水分を供給するシャワー203が設けられている。
【0101】
また、この密閉容器193には、図示しないが、周知の、養分水195を循環させるポンプ等の循環システム、炭酸ガスを供給する炭酸ガスシステム、植物の生育に有害な物質や(昆虫や植物等の)生物の侵入を阻止するクリーンエアシステム等が設けられている。
【0102】
本実施例では、前記実施例7と同様な効果を奏するとともに、植物197は密閉容器193内にて生育するので、有害な物質や生物の侵入を防止でき、よって、無農薬で植物を育てることができるという顕著な効果を奏する。また、最小限の容積で植物を育成することができるという利点がある。
【実施例9】
【0103】
次に、実施例9について説明するが、実施例8と同様な内容の説明は省略する。
図12に示す様に、本実施例の植物生産システム211は、前記実施例8と同様に、波長変換光学板213や反射プリズム215を備えた植物育成パネル217(他の実施例の植物育成パネルでも良い)の下面側(図12では紙面の裏側)、詳しくは、反射プリズム215の下面側に、同図の左右方向に伸びる第1ベルトコンベア219を並列に複数本備えている。
【0104】
そして、第1ベルトコンベア219の上面(図12では紙面の表側)には、複数のトレイ311が一列に配置されるとともに、各トレイ311には、複数個(例えば3個)の植物313が載置されている。
【0105】
また、植物育成パネル217の端部(図12の左端)には、同図の上下方向に伸びるような第2ベルトコンベア315が設けられている。この第2ベルトコンベア315は、第1ベルトコンベア219によって搬送されたトレイ311を受領することが可能なように、第1ベルトコンベア219と高さを揃えて、第1ベルトコンベア219と(平面において)垂直に配置されている。
【0106】
更に、第2ベルトコンベア315の上方(図12では紙面の表側)には、第2ベルトコンベア315に載置した植物313の培養床(図示せず)に対して種付けを行う自動種付け装置317と、第2ベルトコンベア315に載置した植物313を回収する回収装置319とを備えている。
【0107】
なお、図示しないが、植物生産システム211には、例えば第1、2ベルトコンベア219、315、自動種付け装置317、回収装置319などの動作を制御するために、制御装置を備えている。
【0108】
従って、本実施例では、第2ベルトコンベア315によって、同図上方に搬送された植物313(又は自動種付け装置317によって種がまかれた培養床)が載置されたトレイ311を、例えばロボットのアーム等によって第1ベルトコンベア219に移し替え、その第1ベルトコンベア219によって、同図右側に搬送することによって、光の照射を受ける位置に配置することができる。
【0109】
また、植物313が十分に成長した場合には、第1ベルトコンベア219によって、同図左側に搬送されたトレイ311を、第2ベルトコンベア315に移し替え、その第2ベルトコンベア315によって、同図上方に搬送し、回収装置319によって(例えばロボットのアーム等によって)植物313を回収することができる。
【0110】
本実施例では、前記実施例8と同様な効果を奏するとともに、植物313の種付けや回収などを第1、第2ベルトコンベア219、315等を用いて行うことができるので、植物生産の労力を低減できるという利点がある。
【0111】
また、従来の様な、コストのかかる大型の建物が不要であるという効果もある。
なお、以上、本発明の実施例について説明したが、本発明は上記の具体的な実施例に限定されず、本発明の範囲内でこの他にも種々の形態で実施することができる。
【0112】
(1)波長変換光学板としては、波長変換の機能を有しない透明等の基板の表面に、波長変換の機能を有する層を形成してもよい。
具体的には、例えば図13(a)に示す様に、波長変換光学板411として、例えば透明なアクリル又はガラスからなる第1基板413の表面に、無機半導体クラスターからなる青色波長変換層415を形成した青色波長変換光学板417と、同様に、例えば透明なアクリル又はガラスからなる第2基板419の表面に、無機半導体クラスターからなる赤色波長変換層421を形成した赤色波長変換光学板423とを積層したものを用いることができる。
【0113】
なお、300nmから400nmの波長の光を、波長400nmから500nmの青色光に波長変換する青色波長変換層415を構成する無機半導体クラスターとしては、ZnSe(Erドープ)や、CdSe(Erドープ)等を採用できる。
【0114】
また、400nmから600nmの波長の光を、波長600nmから700nmの赤色光に波長変換する赤色波長変換層421を構成する無機半導体クラスターとしては、ZnSe(Mnドープ)や、CdSe(Mnドープ)等を採用できる。
【0115】
(2)また、例えば図13(b)に示す様に、他の波長変換光学板431として、例えば前記実施例1と同様な青色波長変換光学板433及び赤色波長変換光学板435からなる積層体437の表面に、無機半導体クラスターからなる波長変換層439を形成したものを用いることができる。
【0116】
なお、前記波長変換層439構成する無機半導体クラスターとしては、ZnSe(Er、Mnドープ)や、CdSe(Er、Mnドープ)等を採用できる。この波長変換層439により、波長300nmから400nmの光を、波長400nmから700nmの光に変換できる。
【0117】
(3)例えば太陽光以外の光も利用可能である。
【符号の説明】
【0118】
1、41、71、91、111、131、141、171、121…植物生産システム
3、47、77、97、117、135、147、177、213、411、431…波長変換光学板
5、5L、5R、49、49L、49R、79、79L、79R、149、149L149R、179、179L、179R、215…反射プリズム
7、53、83、103、123、139、153、197、313…植物
9、51、81、101、121、132、151、181、217…植物育成パネル
11、43、73、93、113、133、143、173、417、433…青色波長変換光学板
13、45、75、95、115、134、145、175、423、435…赤色波長変換光学板
15、37、55、57、85、87、89、105、125、127、136、15
5、157、159、183、185、187…反射膜
137、138…光ファイバー
193…密閉容器
【技術分野】
【0001】
この発明は、太陽光などの光を用いて植物を生産する植物工場などに利用できる植物生産システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、人工的に植物を生産する植物工場としては、太陽光利用型と完全制御型が知られている。
前者は、ハウス栽培の延長であり、太陽光を利用して、比較的低コストで野菜等を生産できるという利点がある。この太陽光利用型の技術としては、植物の成長を高めるために、波長変換光学板を用いて太陽光の波長を変換し、植物の生育に好適な波長の光を供給する技術が提案されている(特許文献1、2 参照)。
【0003】
一方、後者は、野菜など農産物の安定供給を図るため、光源に、人工的な高圧Naランプ、蛍光灯、発光ダイオード等を用いたものであり、近年では、あたかも野菜を栽培する工場の様な植物工場の建設が進められている。
【0004】
この完全制御型の特長は、光、温度、二酸化炭素濃度などの環境制御による植物の周年生産システムであり、天候に左右されず狭い土地で太陽生産ができ、無農薬、新鮮、清潔等、高付加価値作物の安定供給ができ、食の安全、安心、消費者の健康志向に合致する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭63−160521号公報
【特許文献2】特開2008−181771号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、太陽光利用型は、夏季の高温対策が課題であり、一般的に無農薬栽培は容易ではない。そのため、農薬を使用することになるが、農薬を使用することによる周辺の大気汚染、雨水に混入することによる水質汚染の問題がある。更に、最近の健康志向の高まりにより、無農薬栽培や豊潤な味の有機栽培が要請されている。
【0007】
特に、波長変換光学板を用いる場合には、太陽光の多くが波長変換光学板の表面などで反射してしまい、十分な光量の波長変換光が植物に照射されない(例えば太陽光の15%程度しか利用されない)という問題があった。
【0008】
一方、完全制御型で栽培を行うためには、大量の電力を消費するため生産コストがかかり、また、地球温暖化、化石燃料の枯渇化など、環境・エネルギー問題に大きな影響を与えることが懸念されている。
【0009】
更に、使用する光源については、高圧Naランプは、高出力でかつW当り単価が安価だが、多量の熱放射によって近接照明ができないという問題がある。また、蛍光灯は、安価で扱いやすいが、赤色成分が少なく生産物の品質にやや難点がある。更に、発光ダイオードは、長寿命、赤と青のクロロフィルの吸収スペクトルに一致するなどの利点があるが、照明設備が高価格になるという問題がある。
【0010】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、その目的は、植物を生産するためのエネルギー、生産コスト、環境負荷等を低減できるとともに、植物の成長によって好ましい波長の光を十分に供給することができる植物生産システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(1)請求項1の発明(植物生産システム)は、光の波長を変換する波長変換光学板と、該波長変換光学板の平面方向における端部の外側に配置された反射プリズムと、を備え、前記反射プリズムは、前記波長変換光学板の平面方向における端部から射出された光を該波長変換光学板の板厚方向に反射させるようにその反射面が配置されるとともに、該反射プリズムによる光の反射方向に、植物の配置場所が設定されていることを特徴とする。
【0012】
本発明では、波長変換光学板に入射した光(例えば太陽光)は、波長変換光学板内で、植物の生育に好適な波長に変換される。この変換された光は、波長変換光学板内で反射を繰り返して集光され、その平面方向の端部から光の多く(波長変換光学板の板厚方向から入射した光の約70%程度)が射出される。そして、波長変換光学板の端部から射出された光は、反射プリズム内に入射し、その反射面によって反射して、植物側に照射される。
【0013】
よって、本発明によれば、植物を生産するためのエネルギー、生産コスト、環境負荷等を低減できるとともに、植物の成長によって好ましい波長の光を集中的に且つ十分に供給することができるという顕著な効果を奏する。
【0014】
(2)請求項2の発明では、前記波長変換光学板の平面方向における端部と、該端部の外側に配置された反射プリズムの反射面との間に、前記光を前記波長変換光学板の板厚方向に透過させる光透過部を備えたことを特徴とする。
【0015】
本発明では、波長変換光学板の端部と反射プリズムの反射面との間に光透過部を備えているので、波長変換光学板の板厚方向から光透過部に入射した光は、そのまま光透過部を通過して植物に照射される。
【0016】
従って、植物に対しては、波長変換光学板によって波長変換された光だけでなく、その他の波長の光もある程度は照射されるので、植物の育成にとってはより好ましいと考えられる。
【0017】
(3)請求項3の発明では、前記反射プリズムの周囲に、前記植物に向けて光を照射する照明部を設けたことを特徴とする。
本発明では、例えばLED等によって植物に光を照射する照明部を設けているので、例えば天気が悪く太陽光が十分でない場合や夜間においても、植物に光を供給することができる。
【0018】
(4)請求項4の発明(植物生産システム)は、光の波長を変換する波長変換光学板と、該波長変換光学板の平面方向における端部に配置されて光を反射する反射部と、を備え、前記反射部は、前記波長変換光学板の平面方向における端部に到る光を該波長変換光学板の板厚方向に反射させるように、該波長変換光学板の平面方向に対して斜めに配置されるとともに、該反射部による光の反射方向に、植物の配置箇所が設定されていることを特徴とする。
【0019】
本発明では、波長変換光学板に入射した光(例えば太陽光)は、波長変換光学板内で、植物の生育に好適な波長に変換される。この変換された光は、波長変換光学板内で反射を繰り返して集光され、その平面方向の端部の反射部にて光の多く(即ち波長変換光学板の板厚方向から入射した光の約70%程度)が反射する。そして、波長変換光学板の反射部にて植物側に反射した光は、植物に効率良く照射される。
【0020】
よって、本発明によれば、植物を生産するためのエネルギー、生産コスト、環境負荷等を低減できるとともに、植物の成長によって好ましい波長の光を集中的に且つ十分に供給することができるという顕著な効果を奏する。
【0021】
(5)請求項5の発明では、前記波長変換光学板の平面方向における端部が該平面方向に対して斜めにカットされており、該斜めの斜面に前記反射部を構成する反射膜が形成されていることを特徴とする。
【0022】
本発明は、反射部の構成を例示したものである。
なお、斜めに傾斜した傾斜角θ(平面方向と垂直の板厚方向に対する傾斜角)としては、例えば40°<θ<50°の範囲が好適である。
【0023】
(6)請求項6の発明(植物生産システム)は、光の波長を変換する波長変換光学板と、該光を案内する光ファイバーと、を備え、前記光ファイバーの一端は、前記波長変換光学板の平面方向における端部から射出された光を受光するように、該波長変換光学板の平面方向における端部の外側に配置されるとともに、前記光ファイバーの他端側に、植物の配置箇所が設定されていることを特徴とする。
【0024】
本発明では、波長変換光学板に入射した光(例えば太陽光)は、波長変換光学板内で、植物の生育に好適な波長に変換される。この変換された光は、波長変換光学板内で反射を繰り返して集光され、その平面方向の端部から光の多く(即ち波長変換光学板の板厚方向から入射した光の約70%程度)が射出される。そして、波長変換光学板の端部から光ファイバー内に照射された光は、光ファイバー内を案内されて、植物に効率良く照射される。
【0025】
よって、本発明によれば、植物を生産するためのエネルギー、生産コスト、環境負荷等を低減できるとともに、植物の成長によって好ましい波長の光を集中的に且つ十分に供給することができるという顕著な効果を奏する。
【0026】
(7)請求項7の発明では、前記波長変換光学板は、波長変換の特性が異なる複数の波長変換光学板が積層されたものであることを特徴とする。
本発明は、波長変換光学板を例示したものである。これにより、植物の育成に好適な複数の波長の光を選択的に取り出して、植物に供給できるので、植物の育成に一層好適である。
【0027】
(8)請求項8の発明では、前記波長変換光学板は、300nm〜400nmの波長の紫外光を吸収し、400nm〜500nmの波長の青色光を発光する青色波長変換光学板と、400nm〜600nmの波長の光を吸収し、600nm〜700nmの波長の赤色光を発光する赤色波長変換光学板とのうち、少なくとも1種を備えたことを特徴とする。
【0028】
本発明は、波長変換光学板の好ましい構成を例示したものである。
図4に例示する様に、主として450nmの波長の光(例えば青色LEDの光)が、発芽を促進することが知られており、また、主として650nmの波長の光(例えば赤色LEDの光)が、光合成、発芽、開花を促進することが知られている。
【0029】
従って、本発明では、これらの波長を含むように、400nm〜500nmの波長の青色光を発光する青色波長変換光学板や、600nm〜700nmの波長の赤色光を発光する赤色波長変換光学板を用いる。
【0030】
特に、青色波長変換光学板と赤色波長変換光学板とを積層した波長変換光学板を用いると、より一層光合成や発芽や開花を促進できるので、好適である。
しかも、青色波長変換光学板と赤色波長変換光学板とを積層するとともに、太陽光の入射側に青色波長変換光学板を配置した場合には、赤色波長変換光学板は、青色波長変換光学板にて波長変換された青色光を、効率よく赤色光に変換できるので、太陽光を極めて有効に利用できるという利点がある。
【0031】
(9)請求項9の発明では、複数の前記波長変換光学板を板厚方向に積層した構成を備えるとともに、前記光の入射側の波長変換光学板の面積が該光の入射側と反対側の波長変換光学板の面積より大きく設定されていることを特徴とする。
【0032】
本発明では、光の入射側の波長変換光学板の面積が光の入射側と反対側(出射側)の波長変換光学板の面積より大きく設定されているので、入射側の波長変換光学板の端部側で反射した光を、出射側の波長変換光学板を通過することなく、直接に植物側に供給することができる。よって、一層植物に効率よく光を供給することができる。
【0033】
(10)請求項10の発明では、前記波長変換光学板の光の入射側と反対側の表面に、光を反射する反射膜を備えたことを特徴とする。
本発明では、波長変換光学板の入射側から入射した光(特に赤外線)を反射膜によって反射することによって、赤外線が植物側に供給することを防ぐことができる。
【0034】
よって、本発明では、植物に対する熱放射が少ないので、波長変換光学板や反射プリズムや光ファイバー等を植物に近接して配置できる。これにより、一層多くの光(即ち植物の生育に好適な光)を供給できるので、好適に植物を育成できるという顕著な効果を奏する。
【0035】
(11)請求項11の発明では、前記波長変換光学板から射出される光が案内される位置に、前記光の導入が可能な密閉容器を配置するとともに、前記密閉容器内に、前記植物を載置して移動させるベルトコンベア、前記植物に養分を与える養分水循環システム、前記植物に水分を供給するシャワー、前記植物に炭酸ガスを供給する炭酸ガスシステム、前記植物の生育に有害な物質及び/又は生物の侵入を阻止するクリーンエアシステムのうち、少なくとも1種を備えたことを特徴とする。
【0036】
本発明では、植物を密閉容器内で育てることができるので、有害な物質や生物の侵入を防止でき、よって、無農薬で植物を育てることができるという顕著な効果を奏する。また、最小限の容積で植物を育成することができるという利点がある。
【0037】
(12)請求項12の発明では、更に、前記ベルトコンベアに載置した植物の培養床に対して種付けを行う自動種付け装置と、前記ベルトコンベアに載置した植物を回収する回収装置とのうち、少なくとも1種を備えたことを特徴とする。
【0038】
本発明では、植物の種付けや回収などをベルトコンベアを用いて行うことができるので、植物生産の労力を低減できるという利点がある。また、従来の様な、コストのかかる大型の建物が不要であるという効果もある。
【0039】
なお、前記各請求項においては、波長変換光学板としては、例えば透明なガラス又は樹脂中に、不純物として蛍光物質(蛍光色素)等が混入されているものを採用できる。この場合には、波長変換光学板に入射した光が、蛍光物質等に当たると特定の波長の蛍光を発生する。
【0040】
また、前記波長変換光学板は、透明なガラス又は樹脂からなる基板の表面(光の入射側の表面)に、入射した光に応じて蛍光を発生する蛍光物質を含む蛍光物質層等を形成したものを採用できる。この場合には、光が基板表面の蛍光物質に当たって発生した蛍光は、透明な基板に入射する。
【0041】
なお、前記ガラス及び樹脂としては、無色透明が最も好ましいが、色がついていてもよい。また、ガラスとしては、例えばシリカ、酸化ホウ素系ガラスを採用でき、樹脂としては、例えばアクリル、ポリカーボネイトを採用できる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】実施例1の植物生産システムを示す正面図である。
【図2】実施例1の植物生産システムを示す平面図である。
【図3】(a)青色波長変換光学板の波長変換の特性を示すグラフ、(b)赤色波長変換光学板の波長変換の特性を示すグラフである。
【図4】光の波長と植物の生育との関係を示すグラフである。
【図5】実施例2の植物生産システムを示す正面図である。
【図6】実施例3の植物生産システムを示す正面図である。
【図7】実施例4の植物生産システムを示す正面図である。
【図8】実施例5の植物生産システムを示す正面図である。
【図9】実施例6の植物生産システムを示す正面図である。
【図10】実施例7の植物生産システムを示す正面図である。
【図11】実施例8の植物生産システムを示す正面図である。
【図12】実施例9の植物生産システムの平面を示す説明図である。
【図13】(a)他の波長変換光学板の構成を示す説明図、(b)更に他の光変換光学板の構成を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
次に、本発明の植物生産システムの実施例について、いくつかの具体的な例を挙げて説明する。
【実施例1】
【0044】
a)まず、本実施例の植物生産システムの構成について説明する。
図1及び図2に示す様に、本実施例の植物生産システム1は、平面形状が長方形の複数の波長変換光学板3と、波長変換光学板3の平面方向に配置された複数の反射プリズム5と、反射プリズム5の下方に配置された植物7とを備えている。なお、波長変換光学板3と反射プリズム5とから平板状の植物育成パネル9が構成されている。
【0045】
以下、各構成について説明する。
前記波長変換光学板3は、例えば縦500mm×横1000mm×厚み8mmの透光性を有する平板であり、その平面方向の端面は、平面方向に対して垂直に形成されている。
【0046】
また、この波長変換光学板3は、受光した太陽光の波長を変換する、板厚4mmの平板状の青色波長変換光学板11と、同様な板厚4mmの平板状の赤色波長変換光学板13とを、板厚方向に重ねて、透光性を有する光学接着剤(例えば光学シリコン樹脂接着剤)で貼り合わせて一体にしたものである。
【0047】
このうち、青色波長変換光学板11は、300nm〜400nmの波長の紫外光を吸収し、400nm〜500nmの波長の青色光を発光する青色蛍光板である。この青色波長変換光学板11としては、例えばBASF社製のLumogen570を採用することができる。なお、この青色波長変換光学板11は、図3(a)に示す様な特性を有する。なお、図3の縦軸は、吸収、発光強度を規格化した値を示している。
【0048】
また、赤色波長変換光学板13は、400nm〜600nmの波長の光を吸収し、600nm〜700nmの波長の赤色光する赤色蛍光板である。この赤色波長変換光学板13としては、例えばBASF社製のLumogen305を採用することができる。なお、この赤色波長変換光学板13は、図3(b)に示す様な特性を有する。
【0049】
ここで、青色波長変換光学板11と赤色波長変換光学板13とを積層した波長変換光学板3を用いる理由を説明する。
図4に示す様に、450nm前後の波長の光(例えば青色LEDの光)が、発芽を促進することが知られており、また、650nm前後の波長の光(例えば赤色LEDの光)が、光合成、発芽、開花を促進することが知られている。
【0050】
従って、本実施例では、これらの植物7の生育に好ましい波長の光を発生させるために、400nm〜500nmの波長の青色光を発光する青色波長変換光学板11と600nm〜700nmの波長の赤色光を発光する赤色波長変換光学板13とを重ねて使用するのである。
【0051】
なお、図4の縦軸の相対効果とは、660nmのスペクトルの強度で規格化した値を示している。
また、前記図1及び図2に示す様に、前記反射プリズム5は、長手方向(図2の左右方向)と垂直の断面が直角三角形(短辺8mm×長辺(斜辺)11.3mm)のプリズムである。この反射プリズム5は、例えば透明なアクリルから構成され、その斜辺に反射膜15が形成されている。なお、反射膜15は、厚み100nmのAlからなり、スパッタ又は蒸着により形成することができる。
【0052】
特に本実施例では、左右の波長変換光学板3に挟まれた空間に、一対の反射プリズム5が左右対称となるように配置されている。
詳しくは、左右の波長変換光学板3に挟まれた空間において、図1の左側の波長変換光学板3の平面方向における右側の端面17に、左側の反射プリズム5Lの一方の短辺側の端面19が当接するとともに、同左側の反射プリズム5Lの他方の短辺側の端面21が、波長変換光学板3の下面23と、その表面が一致するように(従って、端面21が図1の下方に向くように)配置されている。
【0053】
これにより、反射プリズム5Lの斜面25に形成された反射膜15が、前記平面方向(図1の左右方向)に対して45°傾斜することになる。
同様に、前記左右の波長変換光学板3に挟まれた空間において、図1の右側の波長変換光学板3の平面方向における左側の端面27に、右側の反射プリズム5Rの一方の短辺側の端面29が当接するとともに、同右側の反射プリズム5Rの他方の短辺側の端面31が、波長変換光学板3の下面23と、その表面が一致するように(従って、端面31が図1の下方に向くように)配置されている。
【0054】
これにより、反射プリズム5Rの斜面33に形成された反射膜15が、前記平面方向(図1の左右方向)に対して45°傾斜することになる。
なお、植物育成パネル9において、その左右端に配置された波長変換光学板13の外側端面35には、アルミからなる反射膜37が形成されている。
【0055】
そして、植物育成パネル9の左右の反射プリズム5R、5Lの直下、即ち、植物育成パネル9の板厚方向において、太陽光の入射側と反対側である出射側(図1の下方)には、複数の植物7が配置されている。なお、植物7は、ブロック状の例えば不織布等からなる培養床39に植え付けられているが、培養床39がなく植物の根だけでもよい。
【0056】
b)次に、植物生産システム1の機能について説明する。
本実施例では、植物育成パネル9の上方(青色波長変換光学板11側)から、波長変換光学板3の表面(上面)に対して、垂直に近い所定角度で太陽光が照射される。なお、地面に対して植物育成パネル9をどのように配置するか等により、太陽光の入射角度は異なる。
【0057】
そして、波長変換光学板3のうち、上面側の青色波長変換光学板11に入射した太陽光の多くは、青色波長変換光学板11にて波長変換される。具体的には、前記図3(a)に示した特性により、主として紫外線が青色光に波長変換される。
【0058】
この青色光は、青色波長変換光学板11内にて全反射を繰り返し、前記図1の実線で示す様に、青色波長変換光学板11の平面方向の端部から反射プリズム5に放射される。この端部から放射された青色光は、反射プリズム5の反射膜15にて反射され、反射プリズム5の端面21、31から、同図下方の植物7に向かって照射される。
【0059】
なお、一部の光、即ち、青色波長変換光学板11にて波長変換された光及び波長変換されない光の一部は、青色波長変換光学板11を板厚方向に透過して、下側の赤色波長変換光学板13に到る。
【0060】
同様に、下面側の赤色波長変換光学板13に入射した太陽光の多くは、赤色波長変換光学板13にて波長変換される。具体的には、前記図3(b)に示した特性により、主として緑色の光が赤色光に波長変換される。
【0061】
この赤色光は、赤色波長変換光学板13内にて全反射を繰り返し、前記図1の破線で示す様に、赤色波長変換光学板13の平面方向の端部から反射プリズム5に放射される。この端部から放射された赤色光は、前記青色光と同様に、反射プリズム5の反射膜15にて反射され、反射プリズム5の端面21、31から、同図下方の植物7に向かって照射される。
【0062】
なお、一部の光、即ち、赤色波長変換光学板13にて波長変換された光及び波長変換されない光の一部は、赤色波長変換光学板13を板厚方向に透過して、赤色波長変換光学板13の下面側から放射される。
【0063】
また、植物育成パネル9の左右両端の波長変換光学板3には、その外側の端面35に反射膜37が形成されているので、波長変換光学板3によって波長変換された光は、前記端面35から外部に漏出することなく、反射プリズム5側などに放射される。
【0064】
c)この様に、本実施例では、波長変換光学板3で波長変換された光は、その平面方向の端部から反射プリズム5に射出され、更に、反射プリズム5の反射膜15によって、下面側に配置された植物7に照射されるので、植物7を生産するためのエネルギー、生産コスト、環境負荷等を大きく低減することができる。
【0065】
つまり、波長変換光学板3の上面から照射された太陽光は、波長変換光学板3の平面方向の端部側に約70%集光されるので、本実施例の様に、波長変換光学板3の平面方向の端部から反射プリズム5を介して植物7に光を供給することにより、太陽光を極めて効率良く利用できるという利点がある。
【0066】
更に、本実施例では、青色波長変換光学板11と赤色波長変換光学板13とを積層することにより、各波長変換光学板11、13に到達した波長の光を、それぞれ植物の生育に適した波長の光に変化することができる。特に、赤色波長変換光学板13は、青色波長変換光学板11にて波長変換された青色光を、効率よく赤色光に変換できるので、太陽光を極めて有効に利用できるという利点がある。
【0067】
つまり、本実施例では、植物7の成長によって好ましい波長の光を十分に供給することができるので、植物7を効率良く成長させることができるという顕著な効果を奏する。
【実施例2】
【0068】
次に、実施例2について説明するが、実施例1と同様な内容の説明は省略する。
図5に示す様に、本実施例の植物生産システム41は、前記実施例1と同様に、(青色波長変換光学板43と赤色波長変換光学板45とが積層された)複数の波長変換光学板47と、左右の波長変換光学板47の間に配置された複数対の反射プリズム49とからなる植物育成パネル51を備えており、反射プリズム49の下面側(同図下方)には植物53が配置されている。
【0069】
また、左右の反射プリズム49L、49Rの斜面には、それぞれ反射膜55が形成されるとともに、左右の外側に配置された波長変換光学板43の外側の端面にも反射膜57が形成されている。
【0070】
特に、本実施例では、反射プリズム49は、その長手方向と垂直の断面の形状は、長方形と直角三角形が一体となった台形の形状となっている。そして、直角三角形部分59の斜面には前記反射膜55が形成されているものの、長方形部分61の上下面には反射膜が形成されていない。従って、上方から反射プリズム49の長方形部分61に入射した光は、長方形部分61を透過して、その長方形部分61の下面側から出射されるようになっている。
【0071】
従って、本実施例では、前記実施例1と同様に、上面側の青色波長変換光学板43に入射した太陽光の多くは、青色波長変換光学板41にて波長変換され、また、下面側の赤色波長変換光学板45に入射した太陽光の多くは、赤色波長変換光学板45にて波長変換される。
【0072】
そして、青色波長変換光学板43で集光された光と赤色波長変換光学板45で集光された光は、それぞれ平面方向の端部から反射プリズム49側に出射され、反射プリズム49の反射膜55で反射して、植物53側に照射される。
【0073】
また、植物育成パネル51の上方から照射された太陽光のうち、反射プリズム49の長方形部分61に照射された太陽光は、上述した様に、透明な長方形部分61を透過して、そのまま植物53に供給される。
【0074】
これにより、本実施例では、前記実施例1と同様な効果を奏するとともに、反射プリズム49に太陽光がそのまま透過する長方形部分61を備えているので、多くの波長の光を植物53に供給することができる。よって、植物53の生育には、より好ましいと推定される。
【実施例3】
【0075】
次に、実施例3について説明するが、実施例2と同様な内容の説明は省略する。
図6に示す様に、本実施例の植物生産システム71は、前記実施例2と同様に、(青色波長変換光学板73と赤色波長変換光学板75とが積層された)複数の波長変換光学板77と、左右の波長変換光学板77の間に配置された複数対の反射プリズム79とからなる植物育成パネル81を備えており、反射プリズム79の下面側には植物83が配置されている。
【0076】
また、左右の反射プリズム79L、79Rも、前記実施例2と同様に、台形形状であり、その斜面に反射膜85が形成されるとともに、左右の外側に配置された波長変換光学板77の外側の端面にも反射膜87が形成されている。
【0077】
特に、本実施例では、波長変換光学板77の下面、即ち、赤色波長変換光学板75の下面にも、前記と同様な光を反射する反射膜89が形成されているので、赤色波長変換光学板75の下面から光が植物83側に照射されることを防止している。
【0078】
従って、本実施例では、前記実施例2と同様な効果を奏するとともに、波長変換光学板77に入射した光は、赤色波長変換光学板75の下面から漏出することなく、効率的に反射プリズム79に導かれて、植物83に供給されるので、太陽光を有効利用できるという利点がある。
【0079】
特に、本実施例では、赤色波長変換光学板75の下面に反射膜87が形成されているので、赤外線が波長変換光学板77の板厚方向に透過して、植物83に照射されることを防止できるので、植物に対する熱放射を少なくできる。従って、植物育成パネル81を植物83に近接して配置できるので、好適に植物を育成できるという顕著な効果を奏する。
【実施例4】
【0080】
次に、実施例4について説明するが、実施例1と同様な内容の説明は省略する。
図7に示す様に、本実施例の植物生産システム91では、(青色波長変換光学板93と赤色波長変換光学板95とが積層された)複数の波長変換光学板97が同図の紙面の厚み方向に沿って並列に配置された植物育成パネル101が用いられている。
【0081】
そして、波長変換光学板97の平面方向における端部の下面側(同図下方)に、植物103が配置されている。
特に本実施例では、波長変換光学板97の平面方向における端部、従って、青色波長変換光学板93と赤色波長変換光学板95との平面方向における端部が、平面方向に対して斜め(例えば45°)にカットされており、この斜めの端面に、反射膜105が形成されている。
【0082】
従って、本実施例では、波長変換光学板97の上方から入射された光は、青色波長変換光学板93と赤色波長変換光学板95とでそれぞれ集光されて、各端部の反射面105で反射して植物103側に照射される。
【0083】
よって、本実施例でも、前記実施例1と同様な効果を奏するとともに、反射プリズムを使用しないので、構成を簡易化できるという利点がある。
【実施例5】
【0084】
次に、実施例5について説明するが、実施例4と同様な内容の説明は省略する。
図8に示す様に、本実施例の植物生産システム111では、(青色波長変換光学板113と赤色波長変換光学板115とが積層された)複数の波長変換光学板117が同図の紙面の厚み方向に並列に配置された植物育成パネル121が用いられている。
【0085】
そして、波長変換光学板117の平面方向における端部の下面側(同図下方)に、植物123が配置されている。
また、青色波長変換光学板113と赤色波長変換光学板115とのそれぞれの平面方向における端部が、平面方向に対して斜め(例えば45°)にカットされており、この斜めの端面に、それぞれ反射膜125、127が形成されている。
【0086】
特に本実施例では、青色波長変換光学板113の幅(同図左右方向)が赤色波長変換光学板115の幅より大きく設定されている。詳しくは、青色波長変換光学板113の反射膜125と赤色波長変換光学板115の反射膜127とが、同図上下方向において重ね合わないように設定されている。
【0087】
従って、本実施例では、青色波長変換光学板113の上方から入射された光は、青色波長変換光学板113で集光されて、その端部の反射面125で反射して植物123側に照射される。一方、赤色波長変換光学板115に入射して集光された光は、その端部の反射面127で反射して植物123側に照射される。
【0088】
よって、本実施例では、前記実施例4と同様な効果を奏するとともに、青色波長変換光学板113で集光されて反射膜125で反射した光は、直接に植物123に供給されるので、植物123への光の供給を一層効率良く行うことができるという利点がある。
【実施例6】
【0089】
次に、実施例6について説明するが、実施例1と同様な内容の説明は省略する。
図9に示す様に、本実施例の植物生産システム131では、植物育成パネル132として、青色波長変換光学板133と赤色波長変換光学板134とが積層された波長変換光学板135が用いられている。
【0090】
また、波長変換光学板135の平面方向の一端には、光を反射する反射膜136が形成されている。
特に本実施例では、波長変換光学板135の平面方向の他端、即ち、青色波長変換光学板133の平面方向の他端と赤色波長変換光学板134の平面方向の他端には、それぞれ光ファイバー137、138の一端が配置されている。そして、光ファイバー137、138の他端には、植物139が配置されている。
【0091】
従って、本実施例では、青色波長変換光学板133の上方から入射された光は、青色波長変換光学板133で集光されて、その端部から光ファイバー137内に出射され、光ファイバー137の他端から植物139に照射される。同様に、赤色波長変換光学板134に入射して集光された光は、その端部から光ファイバー138内に出射され、光ファイバー138の他端から植物139に照射される。
【0092】
よって、本実施例では、前記実施例1と同様な効果を奏するとともに、光ファイバー137、138の方向は自由に変更できるので、植物生産システム131の構造の自由度が高いという利点がある。
【実施例7】
【0093】
次に、実施例7について説明するが、実施例3と同様な内容の説明は省略する。
図10に示す様に、本実施例の植物生産システム141は、前記実施例3と同様に、(青色波長変換光学板143と赤色波長変換光学板145とが積層された)複数の波長変換光学板147と、左右の波長変換光学板147の間に配置された複数対の反射プリズ149とからなる植物育成パネル151を備えており、反射プリズム149の下面側に植物153が配置されている。
【0094】
また、左右の反射プリズム149L、149Rも、前記実施例3と同様に、台形形状であり、その斜面に反射膜155が形成されている。また、左右の外側の波長変換光学板147の外側の端面に反射膜157が形成されるとともに、波長変換光学板147の下面にも反射膜159が形成されている。
【0095】
特に、本実施例では、左右の反射プリズム149L、149Rの間に空間が設けられており、この空間に、植物153に光を照射する例えばLEDからなる照明161が配置されている。
【0096】
この照明としては、前記図4に示す様に、450nm前後の光を照射する青色LEDや650nm前後の光を照射する赤色LED等の両方又は一方を用いることができる。また、青色LEDや赤色LEDの配置としては、図10の左右方向に配列する方法や、図10の紙面の厚み方向に交互に配置する方法等を採用できる。
【0097】
従って、本実施例では、前記実施例3と同様な効果を奏するとともに、照明161を備えているので、太陽光が少ない場合でも、植物153を安定的に成長させることができるという利点がある。
【実施例8】
【0098】
次に、実施例8について説明するが、実施例7と同様な内容の説明は省略する。
図11に示す様に、本実施例の植物生産システム171は、前記実施例7と同様に、(青色波長変換光学板173と赤色波長変換光学板175とが積層された)複数の波長変換光学板177と、左右の波長変換光学板177の間に配置された複数対の反射プリズ179とからなる植物育成パネル181を備えている。
【0099】
また、左右の反射プリズム179L、179Rも、前記実施例7と同様に、台形形状であり、その斜面に反射膜183が形成されている。また、左右の外側の波長変換光学板177の外側の端面に反射膜185が形成されるとともに、波長変換光学板177の下面にも反射膜187が形成されている。更に、左右の反射プリズム179L、179Rの間に照明191が配置されている。
【0100】
特に本実施例では、反射プリズム179の下面側に、上面側より光の入射が可能な透明な(同図の紙面の厚み方向に長く伸びる)密閉容器193が配置されている。
そして、密閉容器193には、養分水195が供給されるとともに、植物197を載置するパッド199、パッド199を載置して紙面の厚み方向に移動させるベルトコンベア201、水分を供給するシャワー203が設けられている。
【0101】
また、この密閉容器193には、図示しないが、周知の、養分水195を循環させるポンプ等の循環システム、炭酸ガスを供給する炭酸ガスシステム、植物の生育に有害な物質や(昆虫や植物等の)生物の侵入を阻止するクリーンエアシステム等が設けられている。
【0102】
本実施例では、前記実施例7と同様な効果を奏するとともに、植物197は密閉容器193内にて生育するので、有害な物質や生物の侵入を防止でき、よって、無農薬で植物を育てることができるという顕著な効果を奏する。また、最小限の容積で植物を育成することができるという利点がある。
【実施例9】
【0103】
次に、実施例9について説明するが、実施例8と同様な内容の説明は省略する。
図12に示す様に、本実施例の植物生産システム211は、前記実施例8と同様に、波長変換光学板213や反射プリズム215を備えた植物育成パネル217(他の実施例の植物育成パネルでも良い)の下面側(図12では紙面の裏側)、詳しくは、反射プリズム215の下面側に、同図の左右方向に伸びる第1ベルトコンベア219を並列に複数本備えている。
【0104】
そして、第1ベルトコンベア219の上面(図12では紙面の表側)には、複数のトレイ311が一列に配置されるとともに、各トレイ311には、複数個(例えば3個)の植物313が載置されている。
【0105】
また、植物育成パネル217の端部(図12の左端)には、同図の上下方向に伸びるような第2ベルトコンベア315が設けられている。この第2ベルトコンベア315は、第1ベルトコンベア219によって搬送されたトレイ311を受領することが可能なように、第1ベルトコンベア219と高さを揃えて、第1ベルトコンベア219と(平面において)垂直に配置されている。
【0106】
更に、第2ベルトコンベア315の上方(図12では紙面の表側)には、第2ベルトコンベア315に載置した植物313の培養床(図示せず)に対して種付けを行う自動種付け装置317と、第2ベルトコンベア315に載置した植物313を回収する回収装置319とを備えている。
【0107】
なお、図示しないが、植物生産システム211には、例えば第1、2ベルトコンベア219、315、自動種付け装置317、回収装置319などの動作を制御するために、制御装置を備えている。
【0108】
従って、本実施例では、第2ベルトコンベア315によって、同図上方に搬送された植物313(又は自動種付け装置317によって種がまかれた培養床)が載置されたトレイ311を、例えばロボットのアーム等によって第1ベルトコンベア219に移し替え、その第1ベルトコンベア219によって、同図右側に搬送することによって、光の照射を受ける位置に配置することができる。
【0109】
また、植物313が十分に成長した場合には、第1ベルトコンベア219によって、同図左側に搬送されたトレイ311を、第2ベルトコンベア315に移し替え、その第2ベルトコンベア315によって、同図上方に搬送し、回収装置319によって(例えばロボットのアーム等によって)植物313を回収することができる。
【0110】
本実施例では、前記実施例8と同様な効果を奏するとともに、植物313の種付けや回収などを第1、第2ベルトコンベア219、315等を用いて行うことができるので、植物生産の労力を低減できるという利点がある。
【0111】
また、従来の様な、コストのかかる大型の建物が不要であるという効果もある。
なお、以上、本発明の実施例について説明したが、本発明は上記の具体的な実施例に限定されず、本発明の範囲内でこの他にも種々の形態で実施することができる。
【0112】
(1)波長変換光学板としては、波長変換の機能を有しない透明等の基板の表面に、波長変換の機能を有する層を形成してもよい。
具体的には、例えば図13(a)に示す様に、波長変換光学板411として、例えば透明なアクリル又はガラスからなる第1基板413の表面に、無機半導体クラスターからなる青色波長変換層415を形成した青色波長変換光学板417と、同様に、例えば透明なアクリル又はガラスからなる第2基板419の表面に、無機半導体クラスターからなる赤色波長変換層421を形成した赤色波長変換光学板423とを積層したものを用いることができる。
【0113】
なお、300nmから400nmの波長の光を、波長400nmから500nmの青色光に波長変換する青色波長変換層415を構成する無機半導体クラスターとしては、ZnSe(Erドープ)や、CdSe(Erドープ)等を採用できる。
【0114】
また、400nmから600nmの波長の光を、波長600nmから700nmの赤色光に波長変換する赤色波長変換層421を構成する無機半導体クラスターとしては、ZnSe(Mnドープ)や、CdSe(Mnドープ)等を採用できる。
【0115】
(2)また、例えば図13(b)に示す様に、他の波長変換光学板431として、例えば前記実施例1と同様な青色波長変換光学板433及び赤色波長変換光学板435からなる積層体437の表面に、無機半導体クラスターからなる波長変換層439を形成したものを用いることができる。
【0116】
なお、前記波長変換層439構成する無機半導体クラスターとしては、ZnSe(Er、Mnドープ)や、CdSe(Er、Mnドープ)等を採用できる。この波長変換層439により、波長300nmから400nmの光を、波長400nmから700nmの光に変換できる。
【0117】
(3)例えば太陽光以外の光も利用可能である。
【符号の説明】
【0118】
1、41、71、91、111、131、141、171、121…植物生産システム
3、47、77、97、117、135、147、177、213、411、431…波長変換光学板
5、5L、5R、49、49L、49R、79、79L、79R、149、149L149R、179、179L、179R、215…反射プリズム
7、53、83、103、123、139、153、197、313…植物
9、51、81、101、121、132、151、181、217…植物育成パネル
11、43、73、93、113、133、143、173、417、433…青色波長変換光学板
13、45、75、95、115、134、145、175、423、435…赤色波長変換光学板
15、37、55、57、85、87、89、105、125、127、136、15
5、157、159、183、185、187…反射膜
137、138…光ファイバー
193…密閉容器
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光の波長を変換する波長変換光学板と、該波長変換光学板の平面方向における端部の外側に配置された反射プリズムと、を備え、
前記反射プリズムは、前記波長変換光学板の平面方向における端部から射出された光を該波長変換光学板の板厚方向に反射させるようにその反射面が配置されるとともに、該反射プリズムによる光の反射方向に、植物の配置場所が設定されていることを特徴とする植物生産システム。
【請求項2】
前記波長変換光学板の平面方向における端部と、該端部の外側に配置された反射プリズムの反射面との間に、前記光を前記波長変換光学板の板厚方向に透過させる光透過部を備えたことを特徴とする請求項1に記載の植物生産システム。
【請求項3】
前記反射プリズムの周囲に、前記植物に向けて光を照射する照明部を設けたことを特徴とする請求項1又は2に記載の植物生産システム。
【請求項4】
光の波長を変換する波長変換光学板と、該波長変換光学板の平面方向における端部に配置されて光を反射する反射部と、を備え、
前記反射部は、前記波長変換光学板の平面方向における端部に到る光を該波長変換光学板の板厚方向に反射させるように、該波長変換光学板の平面方向に対して斜めに配置されるとともに、該反射部による光の反射方向に、植物の配置箇所が設定されていることを特徴とする植物生産システム。
【請求項5】
前記波長変換光学板の平面方向における端部が該平面方向に対して斜めにカットされており、該斜めの斜面に前記反射部を構成する反射膜が形成されていることを特徴とする請求項4に記載の植物生産システム。
【請求項6】
光の波長を変換する波長変換光学板と、該光を案内する光ファイバーと、を備え、
前記光ファイバーの一端は、前記波長変換光学板の平面方向における端部から射出された光を受光するように、該波長変換光学板の平面方向における端部の外側に配置されるとともに、前記光ファイバーの他端側に、植物の配置箇所が設定されていることを特徴とする植物生産システム。
【請求項7】
前記波長変換光学板は、波長変換の特性が異なる複数の波長変換光学板が積層されたものであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の植物生産システム。
【請求項8】
前記波長変換光学板は、300nm〜400nmの波長の紫外光を吸収し、400nm〜500nmの波長の青色光を発光する青色波長変換光学板と、400nm〜600nmの波長の光を吸収し、600nm〜700nmの波長の赤色光を発光する赤色波長変換光学板とのうち、少なくとも1種を備えたことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の植物生産システム。
【請求項9】
複数の前記波長変換光学板を板厚方向に積層した構成を備えるとともに、前記光の入射側の波長変換光学板の面積が該光の入射側と反対側の波長変換光学板の面積より大きく設定されていることを特徴とする請求項7又は8に記載の植物生産システム。
【請求項10】
前記波長変換光学板の光の入射側と反対側の表面に、光を反射する反射膜を備えたことを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の植物生産システム。
【請求項11】
前記波長変換光学板から射出される光が案内される位置に、前記光の導入が可能な密閉容器を配置するとともに、
前記密閉容器内に、前記植物を載置して移動させるベルトコンベア、前記植物に養分を与える養分水循環システム、前記植物に水分を供給するシャワー、前記植物に炭酸ガスを供給する炭酸ガスシステム、前記植物の生育に有害な物質及び/又は生物の侵入を阻止するクリーンエアシステムのうち、少なくとも1種を備えたことを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の植物生産システム。
【請求項12】
更に、前記ベルトコンベアに載置した植物の培養床に対して種付けを行う自動種付け装置と、前記ベルトコンベアに載置した植物を回収する回収装置とのうち、少なくとも1種を備えたことを特徴とする請求項11に記載の植物生産システム。
【請求項1】
光の波長を変換する波長変換光学板と、該波長変換光学板の平面方向における端部の外側に配置された反射プリズムと、を備え、
前記反射プリズムは、前記波長変換光学板の平面方向における端部から射出された光を該波長変換光学板の板厚方向に反射させるようにその反射面が配置されるとともに、該反射プリズムによる光の反射方向に、植物の配置場所が設定されていることを特徴とする植物生産システム。
【請求項2】
前記波長変換光学板の平面方向における端部と、該端部の外側に配置された反射プリズムの反射面との間に、前記光を前記波長変換光学板の板厚方向に透過させる光透過部を備えたことを特徴とする請求項1に記載の植物生産システム。
【請求項3】
前記反射プリズムの周囲に、前記植物に向けて光を照射する照明部を設けたことを特徴とする請求項1又は2に記載の植物生産システム。
【請求項4】
光の波長を変換する波長変換光学板と、該波長変換光学板の平面方向における端部に配置されて光を反射する反射部と、を備え、
前記反射部は、前記波長変換光学板の平面方向における端部に到る光を該波長変換光学板の板厚方向に反射させるように、該波長変換光学板の平面方向に対して斜めに配置されるとともに、該反射部による光の反射方向に、植物の配置箇所が設定されていることを特徴とする植物生産システム。
【請求項5】
前記波長変換光学板の平面方向における端部が該平面方向に対して斜めにカットされており、該斜めの斜面に前記反射部を構成する反射膜が形成されていることを特徴とする請求項4に記載の植物生産システム。
【請求項6】
光の波長を変換する波長変換光学板と、該光を案内する光ファイバーと、を備え、
前記光ファイバーの一端は、前記波長変換光学板の平面方向における端部から射出された光を受光するように、該波長変換光学板の平面方向における端部の外側に配置されるとともに、前記光ファイバーの他端側に、植物の配置箇所が設定されていることを特徴とする植物生産システム。
【請求項7】
前記波長変換光学板は、波長変換の特性が異なる複数の波長変換光学板が積層されたものであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の植物生産システム。
【請求項8】
前記波長変換光学板は、300nm〜400nmの波長の紫外光を吸収し、400nm〜500nmの波長の青色光を発光する青色波長変換光学板と、400nm〜600nmの波長の光を吸収し、600nm〜700nmの波長の赤色光を発光する赤色波長変換光学板とのうち、少なくとも1種を備えたことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の植物生産システム。
【請求項9】
複数の前記波長変換光学板を板厚方向に積層した構成を備えるとともに、前記光の入射側の波長変換光学板の面積が該光の入射側と反対側の波長変換光学板の面積より大きく設定されていることを特徴とする請求項7又は8に記載の植物生産システム。
【請求項10】
前記波長変換光学板の光の入射側と反対側の表面に、光を反射する反射膜を備えたことを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の植物生産システム。
【請求項11】
前記波長変換光学板から射出される光が案内される位置に、前記光の導入が可能な密閉容器を配置するとともに、
前記密閉容器内に、前記植物を載置して移動させるベルトコンベア、前記植物に養分を与える養分水循環システム、前記植物に水分を供給するシャワー、前記植物に炭酸ガスを供給する炭酸ガスシステム、前記植物の生育に有害な物質及び/又は生物の侵入を阻止するクリーンエアシステムのうち、少なくとも1種を備えたことを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の植物生産システム。
【請求項12】
更に、前記ベルトコンベアに載置した植物の培養床に対して種付けを行う自動種付け装置と、前記ベルトコンベアに載置した植物を回収する回収装置とのうち、少なくとも1種を備えたことを特徴とする請求項11に記載の植物生産システム。
【図2】
【図12】
【図13】
【図1】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図1】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−47(P2012−47A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−137413(P2010−137413)
【出願日】平成22年6月16日(2010.6.16)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年6月16日(2010.6.16)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
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