説明

植物由来の賦活化剤及び細胞外マトリックス産生促進剤

【課題】動物系、植物系由来の賦活物質は各種見つかっているが、実際には産業上利用可能な程度に十分かつ安定した効果は得られていない。本発明の課題は、細胞に対して細胞外マトリックス産生促進効果に優れ、長期にわたる使用に十分に耐えうる植物由来の細胞外マトリックス産生促進剤を提供することにある。
【解決手段】ポリアミンを有効成分として含む植物抽出物を含有することを特徴とする細胞外マトリックス産生促進剤、さらにそれらを有効成分とする化粧品・医薬部外品(皮膚外用剤、浴用剤、育毛剤等)、飲食品、医薬品に利用するための方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種細胞の賦活化作用又は細胞外マトリックス作用を高める物質及びその利用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
各種の疾患などは、分裂するすべての細胞の分裂速度の低下、細胞機能の低下と深く関わっている。例えば皮膚は真皮及び表皮は、表皮細胞、繊維芽細胞、及びこれら細胞外の皮膚構造を支持するエラスチン、コラーゲン、ヒアルロン酸等の細胞外マトリックスによって構成されている。特にコラーゲンやヒアルロン酸の合成や分解を制御しているのは主として繊維芽細胞である(非特許文献1)。若い皮膚においては、これらの皮膚組織の相互作用が恒常性を保つことによって柔軟性等の皮膚特性が確保され、肌は外観的にも艶、引き締め、透明感があり、しっとり状態に維持される。ところが、紫外線、乾燥、ストレスなどによって特に細胞外マトリックスや繊維芽細胞の機能低下が引き起こされ、その結果、皮膚の柔軟性等の皮膚特性は低下し、肌は艶、引き締め、透明感を失い、荒れ、しわ、くすみなどの症状が発生する。皮膚特性の衰えとともに繊維芽細胞の機能は衰え、コラーゲンやヒアルロン酸の代謝回転速度は低下することも知られている(非特許文献2)。
【0003】
細胞レベルで賦活化剤、抗老化剤の探索が行われている。例えば動物系由来の賦活化剤としては、結合組織加水分解物(特許文献1)、胸腺・脾臓由来水溶性蛋白(特許文献2)、牛胎盤エキス(特許文献3)などが知られている。植物系由来の賦活化剤としては、ゴマ、サンヤク、トウガラシ、トウキ、ドクダミ、バクモンドウ(特許文献4)、アーモンド、セイヨウタンポポ、セイヨウニワトコ、センキュウ、センブリ、ソウハクヒ、トウニン、ニンジン、ホップ、ムクゲ、ヨクイニン(特許文献5)、ショウガ科ウコン属(特許文献6)、ハナヤスリ科ハナヤスリ属(特許文献7)の抽出物などが知られており、これらの一部は賦活化剤、抗老化剤として医薬部外品や化粧品に利用されているが、非常に個人差が大きく、作用効果が十分とは言えず、満足すべき作用効果を発揮する賦活化剤は得られていなかった。
【0004】
ポリアミンは、第1級アミノ基を2つ以上もつ脂肪族炭化水素の総称で生体内に普遍的に存在する天然物であり、20種類以上のポリアミンが見いだされている。代表的なポリアミンとしてはプトレシン、スペルミジン、スペルミンがある。ポリアミンの主な生理作用としては(1)核酸との相互作用による核酸の安定化と構造変化(2)種々の核酸合成系への促進作用(3)タンパク質合成系の活性化(4)細胞膜の安定化や物質の膜透過性の強化(5)活性酸素の消去(6)細胞増殖の促進が知られているが、細胞における賦活化作用については全く知られていなかった。
【0005】
細胞外マトリックス産生促進作用を有する物質としては、例えばコラーゲンを産生促進する作用を有する物質としては、甘草葉抽出物(特許文献8)、ハス胚芽抽出物(特許文献9)、加水分解バレイショタンパク(特許文献10)、柿の葉抽出物又はサンザシの果実抽出物(特許文献11)、米糠溶媒抽出物(特許文献12)、アヤメ科クロッカス属サフラン抽出物(特許文献13)、ウリ科植物の種子抽出物(特許文献14)などが知られており、これらの一部はコラーゲン又はヒアルロン酸産生促進剤として医薬部外品や化粧品への応用が試みられているが、作用効果が十分とは言えず、満足すべき作用効果を発揮する細胞外マトリックス産生促進剤は得られていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭62−84024号公報
【特許文献2】特開昭63−188697号公報
【特許文献3】特開平03−141299号公報
【特許文献4】特開平10−45615号公報
【特許文献5】特開平10−36279号公報
【特許文献6】特開2004−75632号公報
【特許文献7】特開2005−89375号公報
【特許文献8】特開2000−191498号公報
【特許文献9】特開2002−29980号公報
【特許文献10】特開2005−263689号公報
【特許文献11】特開2006−160629号公報
【特許文献12】特開2005−272433号公報
【特許文献13】特開2005−206510号公報
【特許文献14】特開2006−273815号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】FRAGRANCE JOURNAL, 12, 51-55, 2004
【非特許文献2】FRAGRANCE JOURNAL, 26(1), 45-50, 1998
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
哺乳類、特にヒトの細胞に対して賦活化を付与することは極めて重要な課題であり、動物系、植物系由来の賦活物質は各種見つかっているが、実際には産業上利用可能な程度に十分かつ安定した効果は得られておらず、新規な賦活化剤が探索されているのが現状である。従って、本発明の目的は、植物由来で細胞に対して賦活化効果に優れ、長期にわたる使用に十分に耐えうる安全性を備えた賦活化剤を提供し、これらを有効成分とした化粧品・医薬部外品(皮膚外用剤、浴用剤、育毛剤等)、飲食品、医薬品に利用するための方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは上記の目的を達成すべく鋭意努力した結果、ポリアミンを有効成分とする植物抽出物が細胞の賦活化又は細胞外マトリックス産生促進に有効であることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は以下のような構成からなる。
1.植物由来ポリアミン含有抽出物を有効成分とすることを特徴とする賦活化剤。
2.植物由来ポリアミン含有抽出物が、大豆種子、大豆胚芽、大豆胚、大豆芽、小麦種子、小麦胚芽、小麦胚、小麦芽、豆乳及びオカラよりなる群から選ばれた少なくとも1種以上から得ることを特徴とする前記1の賦活化剤。
3.ポリアミンが、第一級アミノ基を2つ以上有する脂肪族炭化水素からなる群より選ばれたすくなくとも1種以上の化合物であることを特徴とする前記1または2の賦活化剤。4.ポリアミンが、1,3−ジアミノプロパン、プトレシン、カダベリン、カルジン、スペルミジン、ホモスペルミジン、アミノプロピルカダベリン、テルミン、スペルミン、テルモスペルミン、カナバルミン、アミノペンチルノルスペルミジン、N,N−ビス(アミノプロピル)カダベリン、ホモスペルミン、カルドペンタミン、ホモカルドペンタミン、カルドヘキサミン及びホモカルドヘキサミンよりなる群から選ばれた少なくとも1種以上の化合物であることを特徴とする前記1〜3のいずれかの賦活化剤。
5.ポリアミンが、プトレシン、スペルミジン及びスペルミンからなる群から選ばれた少なくとも1種以上の化合物であることを特徴とする前記1〜4のいずれかの賦活化剤。
6.前記1〜5のいずれかの賦活化剤を有効成分として含有することを特徴とする化粧品類。
7.前記1〜5のいずれかの賦活化剤を有効成分として含有することを特徴とする医薬部外品類。
8.前記1〜5のいずれかの賦活化剤を有効成分として含有することを特徴とする飲食品類。
9.前記1〜5のいずれかの賦活化剤を有効成分として含有することを特徴とする医薬品類。
10.植物由来ポリアミン含有抽出物を動物に接触させる工程を含むことを特徴とする賦活化方法。
11.ポリアミンが、第一級アミノ基を2つ以上有する脂肪族炭化水素からなる群より選ばれたすくなくとも1種以上の化合物であることを特徴とする前記10の賦活化方法。
12.植物由来ポリアミン含有抽出物が、大豆種子、大豆胚芽、大豆胚、大豆芽、小麦種子、小麦胚芽、小麦胚、小麦芽、豆乳及びオカラよりなる群から選ばれた少なくとも1種以上から得ることを特徴とする前記10または11の賦活化方法。
13.ポリアミンが、1,3−ジアミノプロパン、プトレシン、カダベリン、カルジン、スペルミジン、ホモスペルミジン、アミノプロピルカダベリン、テルミン、スペルミン、テルモスペルミン、カナバルミン、アミノペンチルノルスペルミジン、N,N−ビス(アミノプロピル)カダベリン、ホモスペルミン、カルドペンタミン、ホモカルドペンタミン、カルドヘキサミン及びホモカルドヘキサミンよりなる群から選ばれた少なくとも1種以上の化合物であることを特徴とする前記10〜12のいずれかの賦活化方法。
14.ポリアミンが、プトレシン、スペルミジン及びスペルミンからなる群から選ばれた少なくとも1種以上の化合物であることを特徴とする前記10〜13のいずれかの賦活化方法。
15.大豆種子、大豆胚芽、大豆胚、大豆芽、小麦種子、小麦胚芽、小麦胚、小麦芽、豆乳及びオカラよりなる群から選ばれた少なくとも1種以上から得られた植物由来ポリアミン含有抽出物を有効成分とする賦活化剤。
16.植物由来ポリアミン含有抽出物を有効成分として含有することを特徴とする細胞外マトリックス産生促進剤。
17.細胞外マトリックス産生促進剤がコラーゲン産生促進剤であることを特徴とする前記22の細胞外マトリックス産生促進剤。
18.植物由来ポリアミン含有抽出物を動物に接触させる工程を含むことを特徴とする細胞外マトリックス産生促進方法。
19.植物由来ポリアミン含有抽出物を動物に接触させる工程を含むことを特徴とするコラーゲン産生促進方法。
20.ポリアミンが、第一級アミノ基を2つ以上有する脂肪族炭化水素からなる群より選ばれたすくなくとも1種以上の化合物であることを特徴とする前記19のコラーゲン産生促進方法。
21.植物由来ポリアミン含有抽出物が、大豆種子、大豆胚芽、大豆胚、大豆芽、小麦種子、小麦胚芽、小麦胚、小麦芽、豆乳及びオカラよりなる群から選ばれた少なくとも1種以上から得ることを特徴とする前記19または20のコラーゲン産生促進方法。
22.ポリアミンが、1,3−ジアミノプロパン、プトレシン、カダベリン、カルジン、スペルミジン、ホモスペルミジン、アミノプロピルカダベリン、テルミン、スペルミン、テルモスペルミン、カナバルミン、アミノペンチルノルスペルミジン、N,N−ビス(アミノプロピル)カダベリン、ホモスペルミン、カルドペンタミン、ホモカルドペンタミン、カルドヘキサミン及びホモカルドヘキサミンよりなる群から選ばれた少なくとも1種以上の化合物であることを特徴とする前記19〜21のいずれかのコラーゲン産生促進方法。
23.ポリアミンが、プトレシン、スペルミジン及びスペルミンからなる群から選ばれた少なくとも1種以上の化合物であることを特徴とする前記19〜22のいずれかのコラーゲン産生促進方法。
24.植物由来ポリアミン含有抽出物を動物に接触させる工程を含むことを特徴とするヒアルロン酸産生促進方法。
25.ポリアミンが、第一級アミノ基を2つ以上有する脂肪族炭化水素からなる群より選ばれたすくなくとも1種以上の化合物であることを特徴とする前記24のヒアルロン酸産生促進方法。
26.植物由来ポリアミン含有抽出物が、大豆種子、大豆胚芽、大豆胚、大豆芽、小麦種子、小麦胚芽、小麦胚、小麦芽、豆乳及びオカラよりなる群から選ばれた少なくとも1種以上から得ることを特徴とする前記24または25のヒアルロン酸産生促進方法。
27.ポリアミンが、1,3−ジアミノプロパン、プトレシン、カダベリン、カルジン、スペルミジン、ホモスペルミジン、アミノプロピルカダベリン、テルミン、スペルミン、テルモスペルミン、カナバルミン、アミノペンチルノルスペルミジン、N,N−ビス(アミノプロピル)カダベリン、ホモスペルミン、カルドペンタミン、ホモカルドペンタミン、カルドヘキサミン及びホモカルドヘキサミンよりなる群から選ばれた少なくとも1種以上の化合物であることを特徴とする前記24〜26のいずれかのヒアルロン酸産生促進方法。
28.ポリアミンが、プトレシン、スペルミジン及びスペルミンからなる群から選ばれた少なくとも1種以上の化合物であることを特徴とする前記24〜27のいずれかのヒアルロン酸産生促進方法。
【0010】
また、本願発明の「細胞外マトリックス産生促進剤」とは下記のものである。
植物由来ポリアミン含有抽出物を有効成分として含有することを特徴とする細胞外マトリックス産生促進剤。
細胞外マトリックス産生促進剤がコラーゲン産生促進剤又はヒアルロン酸産生促進剤であることを特徴とする上記に記載の細胞外マトリックス産生促進剤。
植物由来ポリアミン含有抽出物が、大豆種子、大豆胚芽、大豆胚、大豆芽、小麦種子、小麦胚芽、小麦胚、小麦芽、豆乳及びオカラよりなる群から選ばれた少なくとも1種以上から得ることを特徴とする上記に記載の細胞外マトリックス産生促進剤。
ポリアミンが、第一級アミノ基を2つ以上有する脂肪族炭化水素からなる群より選ばれたすくなくとも1種以上の化合物であることを特徴とする上記に記載の細胞外マトリックス産生促進剤。
ポリアミンが、1,3−ジアミノプロパン、プトレシン、カダベリン、カルジン、スペルミジン、ホモスペルミジン、アミノプロピルカダベリン、テルミン、スペルミン、テルモスペルミン、カナバルミン、アミノペンチルノルスペルミジン、N,N−ビス(アミノプロピル)カダベリン、ホモスペルミン、カルドペンタミン、ホモカルドペンタミン、カルドヘキサミン及びホモカルドヘキサミンよりなる群から選ばれた少なくとも1種以上の化合物であることを特徴とする上記に記載の細胞外マトリックス産生促進剤。
ポリアミンが、プトレシン、スペルミジン及びスペルミンからなる群から選ばれた少なくとも1種以上の化合物であることを特徴とする上記に記載の細胞外マトリックス産生促進剤。
上記に記載の細胞外マトリックス産生促進剤を有効成分として含有することを特徴とする化粧品類。
上記に記載の細胞外マトリックス産生促進剤を有効成分として含有することを特徴とする医薬部外品類。
上記に記載の細胞外マトリックス産生促進剤を有効成分として含有することを特徴とする飲食品類。
上記に記載の細胞外マトリックス産生促進剤を有効成分として含有することを特徴とする医薬品類。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、安全性に優れた賦活化作用細胞外マトリックス産生促進作用が期待でき、ポリアミンを含む植物抽出物を有効成分とした化粧品・医薬部外品(皮膚外用剤、浴用剤、育毛剤等)、飲食品、医薬品を提供することである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】ダイズ種子から調製した植物抽出物(左)と精製植物抽出物(右)の純度確認
【図2】ダイズ胚芽から調製した植物抽出物の純度確認
【図3】コムギ胚芽から調製した植物抽出物の純度確認
【図4】豆乳から調製した植物抽出物の純度確認
【図5】ヒト皮膚繊維芽細胞を用いたダイズ胚芽抽出物による賦活化活性
【図6】ヒト皮膚繊維芽細胞を用いたコムギ胚芽抽出物による賦活化活性
【図7】ヒト毛乳頭細胞を用いたダイズ胚芽抽出物による賦活化活性
【図8】ヒト毛乳頭細胞を用いたコムギ胚芽抽出物による賦活化活性
【図9】ダイズ胚芽抽出物とコムギ胚芽抽出物によるコラーゲン産生促進活性
【図10】ダイズ胚芽抽出物とコムギ胚芽抽出物によるコラーゲン産生促進活性(3日間培養)
【図11】ダイズ胚芽抽出物とコムギ胚芽抽出物によるコラーゲン産生促進活性(6日間培養)
【図12】ダイズ胚芽抽出物とコムギ胚芽抽出物によるヒアルロン酸産生促進活性(3日間培養)
【図13】ダイズ胚芽抽出物とコムギ胚芽抽出物によるコラーゲン産生促進活性(3日間培養)
【図14】ダイズ胚芽抽出物とコムギ胚芽抽出物によるコラーゲン産生促進活性(6日間培養)
【図15】ダイズ胚芽抽出物とコムギ胚芽抽出物によるコラーゲン産生促進活性(3日間培養)
【図16】ダイズ胚芽抽出物とコムギ胚芽抽出物によるコラーゲン産生促進活性(6日間培養)
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明において「賦活化」とは、動物の細胞機能や細胞活性を活発、増大又は維持させることで細胞機能や細胞活性の低下を小さくすることである。例えば皮膚細胞においては、光老化による基低膜の構造変化の蓄積に伴う皮膚細胞の機能低下を小さくすることで、皮膚のしわ、たるみ、硬化、くすみ等を防止、改善して艶、透明感、すべすべ感のある若々しい健康な肌の状態を維持することなどを指している。毛乳頭又は毛母細胞においては、ストレス、ホルモンバランスによる毛乳又は毛母細胞の機能低下を小さくすることで、ヘアサイクルを維持して脱毛を抑えることなどを指している。
【0014】
本発明において「ポリアミン」とは、第1級アミノ基を2つ以上もつ脂肪族炭化水素の総称で生体内に普遍的に存在する天然物であり、20種類以上のポリアミンが見いだされている。例えば、1,3−ジアミノプロパン、プトレシン、カダベリン、カルジン、スペルミジン、ホモスペルミジン、アミノプロピルカダベリン、テルミン、スペルミン、テルモスペルミン、カナバルミン、アミノペンチルノルスペルミジン、N,N−ビス(アミノプロピル)カダベリン、ホモスペルミン、カルドペンタミン、ホモカルドペンタミン、カルドヘキサミン、ホモカルドヘキサミンなどが挙げられる。代表的なポリアミンとしてはプトレシン、スペルミジン、スペルミンがある。
【0015】
本発明において「植物抽出物」とは、植物及び/又は植物加工物から得られる物である。
【0016】
本発明において「植物由来ポリアミン含有抽出物」とは、植物及び/又は植物加工物から得られる(天然)ポリアミンを含む植物抽出物、植物及び/又は植物加工物から得られる3種類の(天然)プトレシン、スペルミジン、スペルミンを含む植物抽出物、植物及び/又は植物加工物から得られる3種類の(天然)プトレシン、スペルミジン、スペルミンを同時に含む植物抽出物である。本発明においては、「植物由来ポリアミン含有抽出物」を「ポリアミンを含む植物抽出物及び/又はポリアミンを有効成分として含む植物抽出物」と称することもある。植物由来ポリアミン含有抽出物に含有されるポリアミン濃度は、M(モル/リットル)では、通常は0.00001〜100mM、好ましくは0.00005〜75mM、より好ましくは0.0001〜50mMである。また、重量%では、通常は0.0001〜100%、好ましくは0.001〜75%、より好ましくは0.01〜50%である。
【0017】
本発明で言うところの「プトレシン」は代表的なポリアミンの一つで生物体内に普遍的に存在する一般的な天然物であり、第一級アミノ基を2つもつ脂肪族炭化水素化合物である。「カダベリン」は代表的なポリアミンの一つで生物体内に普遍的に存在する一般的な天然物であり、第一級アミノ基を2つもつ脂肪族炭化水素化合物である。「スペルミジン」は代表的なポリアミンの一つで生物体内に普遍的に存在する一般的な天然物であり、第一級アミノ基を3つもつ脂肪族炭化水素化合物である。「スペルミン」は代表的なポリアミンの一つで生物体内に普遍的に存在する一般的な天然物であり、第一級アミノ基を4つもつ脂肪族炭化水素化合物である。
【0018】
本発明で言うところの「動物に接触させる」とは、ヒト、家畜などに対してポリアミンをあらゆる剤型(アンプル状、カプセル状、粉末状、顆粒状、丸剤、錠剤状、固形状、液状、ゲル状、気泡状、乳液状、クリーム状、軟膏状、シート状、ムース状など)で外部塗布、外部処理、経口投与等で与えることである。例えばポリアミンを化粧品、医薬部外品、飲食品、医薬品、飼料などに配合して動物に接触させることができる。
【0019】
「細胞外マトリックス産生促進」とは、細胞外の皮膚構造を支持するエラスチン、コラーゲン、ヒアルロン酸等の細胞外マトリックスの産生を促進することである。このように細胞外マトリックス産生促進する物質を「細胞外マトリックス産生促進剤」と称している。細胞外マトリックス産生促進により、「美肌効果」が実現される。「細胞外マトリックス産生促進剤」には、「エラスチン産生促進剤」、「コラーゲン産生促進剤」や「ヒアルロン酸産生促進剤」が含まれる。特に「コラーゲン産生促進剤」とは、「細胞外マトリックス産生促進剤」のなかでも、コラーゲンの産生を促進する物質のことをいう。「ヒアルロン酸産生促進剤」とは、「細胞外マトリックス産生促進剤」のなかでも、ヒアルロン酸の産生を促進する物質のことをいう。
【0020】
ポリアミンの主な生理作用としては(1)核酸との相互作用による核酸の安定化と構造変化(2)種々の核酸合成系への促進作用(3)タンパク質合成系の活性化(4)細胞膜の安定化や物質の膜透過性の強化(5)活性酸素の消去などが知られている。
【0021】
ポリアミンを含む植物抽出物及び/又はポリアミンを有効成分として含む植物抽出物を得る植物としては、特に限定されるものではないが、例えば双子葉植物、単子葉植物、草本性植物、木本性植物、ウリ科植物、ナス科植物、イネ科植物、アブラナ科植物、マメ科植物、アオイ科植物、キク科植物、アカザ科植物、マメ科の植物、該植物抽出物、該植物エキスなどが挙げられる。例えば、サツマイモ、トマト、キュウリ、カボチャ、メロン、スイカ、タバコ、シロイヌナズナ、ピーマン、ナス、マメ、サトイモ、ホウレンソウ、ニンジン、イチゴ、ジャガイモ、イネ、トウモロコシ、アルファルファ、コムギ、オオムギ、ダイズ、ナタネ、ソルガム、ユーカリ、ポプラ、ケナフ、杜仲、サトウキビ、シュガービート、キャッサバ、サゴヤシ、アカザ、ユリ、ラン、カーネーション、バラ、キク、ペチュニア、トレニア、キンギョソウ、シクラメン、カスミソウ、ゼラニウム、ヒマワリ、シバ、ワタ、エノキダケ、ホンシメジ、マツタケ、シイタケ、キノコ類、チョウセンニンジン、アガリクス、ウコン、オタネニンジン、柑橘類、緑茶、紅茶、ウーロン茶、バナナ、キウイ、納豆、豆乳、ダイズエキス、コムギエキス、胚芽エキス、胚エキス、果汁、オカラ、コメ胚芽、コムギ胚芽、オオムギ胚芽、ダイズ胚芽、トウモロコシ胚芽、マイロ胚芽、ヒマワリ胚芽などが挙げられる。
【0022】
好ましくは、単子葉植物や双子葉植物がよく、さらに好ましくはイネ科植物やマメ科植物がよく、特に好ましくは、トウモロコシ、キノコ類、ダイズ、コムギ、納豆、豆乳、オカラ、コムギ胚芽、ダイズ胚芽、トウモロコシ胚芽、ダイズエキス、コムギエキス、胚芽エキス、胚エキスがよい。特に国民一人・1年当たり供給純食料が多い植物、例えば、平成15年度で年間6.7kgのダイズ、平成15年度で年間32.6kgのコムギなどからポリアミンを含む植物抽出物及び/又はポリアミンを有効成分として含む植物抽出物を回収してもよい。
【0023】
ポリアミンを含む植物抽出物及び/又はポリアミンを有効成分として含む植物抽出物を得る植物組織としては、特に限定はされない。好ましくは、種子形態、生育過程にあるものである。生育過程にある植物は全体、あるいは部分的な組織から得ることができる。得ることができる部位としては、特に限定されないが全樹、花、蕾、子房、果実、葉、子葉、茎、芽、根、種子、乾燥種子、胚、胚芽、根などである。好ましくは、果実、葉、茎、芽、種子、乾燥種子、胚芽、胚であり、特に好ましくは、種子、乾燥種子、胚芽、胚などである。
【0024】
ポリアミンを含む植物抽出物及び/又はポリアミンを有効成分として含む植物抽出物を得る植物としては植物加工物であってもよい。その加工方法は、植物を水、有機溶媒、水と有機溶媒の混合物などを用いて、低温、室温、加温条件下での含浸法、蒸留法、圧搾法、超音波法、超臨界流体法、亜臨界流体法などで抽出物を回収する。さらに植物や植物から回収した抽出物を発酵させるなどの加工処理した加工物なども含まれる。例えば植物エキス、豆乳、オカラ、小麦粉、発酵エキス、納豆などが挙げられる。
【0025】
ポリアミンを含む植物抽出物及び/又はポリアミンを有効成分として含む植物抽出物を得る方法としては、植物及び/又は植物加工物に、酸性条件下になるように酸溶液を添加することにある。酸性条件下は、pHが6以下の条件をいう。抽出時に、pHを酸性条件下にすることにより、植物組織から効率的かつ安定的なポリアミン組成物回収の効果が得られる。この効果は、pHが6以下であれば一様に得られるが、好ましくはpHが4以下であり、特に好ましくはpHが2以下などである。下限については、使用する酸溶液の原液のpHで構わないので、特に制限されないが、好ましくは、pH0〜2である。
酸性条件下(酸水溶液)で植物抽出物を得ることで、エタノールやメタノールのような有機溶媒で回収した植物抽出物に比べてポリアミン量の回収率が高く、特に水に溶けにくい化合型ポリアミンは酸性条件によって水に可溶化でき、有機溶媒では抽出効率が低い遊離型ポリアミンの含量も向上する。ポリアミンは酸性条件下では優れた安定性を示し、植物抽出物中に含まれるポリアミンやその他の有効成分の安定性が向上する。さらに酸性条件下(酸水溶液)で植物抽出物を得ることで、ポリアミン以外の天然有効成分が同時に回収される。例えば、天然有効成分としては単糖、オリゴ糖等の糖類、ペプチド、蛋白質等が挙げられる。ポリアミンとポリアミン以外の天然有効成分を同時に含むことで賦活化、細胞外マトリックス産生促進効果がより増強される。加えて回収した植物抽出物は水溶液であるため有機溶媒に比べて安全性の面でも高いメリットが期待される。
【0026】
酸性条件下になるように添加する酸溶液としては、塩酸、硫酸、リン酸などの鉱酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、蓚酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、リンゴ酸、乳酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸などの有機酸および酸性水が挙げられるが、0.01N〜6Nの塩酸、硫酸、硝酸、酢酸、リン酸、トリクロロ酢酸、スルホサリチル酸、ギ酸、クエン酸、乳酸や0.1〜10%の過塩素酸などの無機酸や有機酸などである。好ましくは、0.0625〜1Nの塩酸、0.25〜5%の過塩素酸などである。
【0027】
抽出工程において、ポリフェノール吸着剤を添加してもよい。ポリフェノール吸着剤の添加により、ポリアミンを含む植物抽出物及び/又はポリアミンを有効成分とする植物抽出物の回収を容易ならしめることができる。ポリフェノール吸着剤は、ポリフェノール類を吸着出来る物質であれば、特に限定はされないが、PVPP(ポリビニルポリピロリドン)、PVP(ポリビニルピロリドン)、PEG(ポリエチレングリコール)等が好ましく使用される。特に好ましくは、PVPP(ポリビニルポリピロリドン)である。これらのポリフェノール吸着剤は市販の物質を使用してもよい。たとえば、ポリクラール(登録商標)、POLYCLAR(登録商標)(アイエスピー社製)、Dowex(登録商標)−1、PVP−40等を使用しても良い。植物及び/又は植物加工物に酸溶液を添加した後にポリフェノール吸着剤を添加することで、ポリアミンを含む植物抽出物及び/又はポリアミンを有効成分として含む植物抽出物の回収量、収率、純度が高まることが期待できる。また、ポリフェノール吸着剤を添加することで、細胞、皮膚細胞に対する賦活化、抗老化、細胞外マトリックス産生、コラーゲン産生、ヒアルロン産生効果に対してネガティブに作用するポリフェノール類等の植物抽出物中への混入を抑えることができる。
ポリフェノール吸着剤の添加量は、好ましくは0.1〜30%(w/v)、より好ましくは0.5〜20%(w/v)、さらに好ましくは、1〜10%(w/v)である。
【0028】
植物及び/又は植物加工物に、酸性条件下になるように酸溶液を添加又は酸性条件下になるように酸溶液を添加した後にポリフェノール吸着剤を添加した後に破砕、粉砕、混合をおこなうことでポリアミンを含む植物抽出物及び/又はポリアミンを有効成分として含む植物抽出物の回収量を高めることができる。特に植物組織の場合は細胞壁を有することから細胞壁に損傷を与えることが望ましい。植物加工物や植物エキスの場合には、細胞壁を含まないことから特に細胞壁に損傷を与えるような破砕や粉砕を行う必要はない。破砕や粉砕を行う方法としては、例えば、ミキサー、ブレンダー、ホモジナイザー、乳鉢、超音波破砕機などを利用することができる。
【0029】
植物及び/又は植物加工物に含まれていたポリアミンを酸溶液中(液体画分)に十分に抽出した後に遠心分離や濾過分離によって液体画分を残査や沈殿と分離する。回収された液体画分にはポリアミンが多く含まれており「ポリアミンを含む植物抽出物及び/又はポリアミンを有効成分として含む植物抽出物」として得た。
【0030】
ポリアミンを含む植物抽出物及び/又はポリアミンを有効成分として含む植物抽出物はそのまま賦活化剤として利用しても良いが、化粧品・医薬部外品(皮膚外用剤、浴用剤、育毛剤等)、食品、医薬品に配合して利用することが好ましい。ポリアミンを配合する濃度は、吸収程度、作用程度、製品形態、使用頻度などによって決められ、特に限定されるのもではないが、通常は0.00001〜100mM、好ましくは0.00005〜75mM、より好ましくは0.0001〜50mMである。
【0031】
本発明の「植物由来ポリアミン含有抽出物」は、天然植物由来であるために化学合成品に比べて安全性が極めて高い(化学合成に使用する基質、触媒、不要な反応物などの混入が一切ない)。ポリアミンを化学合成する場合には、プトレシンの場合には2つのアミノ基、スペルミジンの場合には3つのアミノ基、スペルミンの場合には4つのアミノ基を直鎖状に連結する反応を行う必要があり、数多くの反応と精製ステップを要し大変困難である。植物由来の場合には、植物からポリアミン含有抽出物を調製すれば良くて簡便性に優れている。さらに化学合成の場合、3種類のポリアミンを調製するためにはプトレシン、スペルミジン、スペルミンをそれぞれ調製し、一つずつ化学合成を行う必要がある。植物由来の場合には、ポリアミン含有抽出物中には少なくともプトレシン、スペルミジン、スペルミンの3種類は含まれており、それぞれについて個々に調製する必要はない。実際にコスト面では前述の通り化学合成が困難であることから、化学合成品は高価である。植物由来の場合には、栽培または市販されている植物原料を用いれば良く、特に小麦や大豆の種子は植物原料の中でも安価に販売されており、大量に原料確保することもできポリアミン含有抽出物の生産コストは化学合成品に比べて安価である。機能性食品には化学合成品は使用不可であり、化粧品においても天然物特に植物由来が望まれている。また、植物由来の抽出物中にはポリアミン以外の天然成分が含まれており、その成分がポリアミンによる効果をより高める可能性がある。加えて、ポリアミン以外の天然成分(例えば単糖、オリゴ糖等の糖類、ペプチド、タンパク質等)が有効成分として作用(賦活化・抗老化・コラーゲン産生促進、ヒアルロン酸産生促進)することとが期待される。したがって、本発明の植物由来ポリアミン含有抽出物を有効成分とすることを特徴とする賦活化剤又は細胞外マトリックス産生促進剤の有用性は非常に高い。
本発明の植物由来のポリアミン含有抽出物は抽出物中にはポリアミン以外の天然成分が含まれることで、ポリアミンに比べてポリアミン特有の臭気(におい)が軽減し、安定性も高まることで、食品用途、化粧品用途、医薬部外品用途、医薬品用途に利用しても品質を損なうことがない。
【0032】
本発明の賦活化剤、細胞外マトリックス産生促進剤は、ポリアミンの必須成分に加え必要に応じて本発明の効果を損なわない範囲内で、化粧品類、医薬部外品類、飲食品類、医薬品類などに使用される成分や添加剤を併用して配合することができる。
【0033】
例えば、油脂類としては、アボガド油、アルモンド油、ウイキョウ油、エゴマ油、オリーブ油、オレンジ油、オレンジラファー油、ゴマ油、カカオ脂、カミツレ油、カロット油、キューカンバー油、牛脂、牛脂脂肪酸、ククイナッツ油、サフラワー油、大豆油、ツバキ油トウモロコシ油、ナタネ油、パーシック油、ヒマシ油、綿実油、落花生油、タートル油,ミンク油、卵黄油、カカオ脂、パーム油、パーム核油、モクロウ、ヤシ油、牛脂、豚脂、硬化油、硬化ヒマシ油などが挙げられる。
【0034】
ロウ類としては、ミツロウ、カルナバロウ、鯨ロウ、ラノリン、液状ラノリン、還元ラノリン、硬質ラノリン、カンデリラロウ、モンタンロウ、セラックロウなどが挙げられる。
【0035】
鉱物油としては、流動パラフィン、ワセリン、パラフィン、オゾケライド、セレシン、マイクロクリスタンワックス、ポリエチレン末、スクワレン、スクワラン、プリスタンなどが挙げられる。
【0036】
脂肪酸類としては、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、オレイン酸、12-ヒドロキシステアリン酸、ウンデシレン酸、トール油、ラノリン脂肪酸などの天然脂肪酸、イソノナン酸、カプロン酸、2−エチルブタン酸、イソペンタン酸、2−メチルペンタン酸、2−エチルヘキサン酸、イソペンタン酸などの合成脂肪酸が挙げられる。
【0037】
アルコール類としては、エタノール、イソピロパノール、ラウリルアルコール、セタノール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール、ラノリンアルコール、コレステロール、フィトステロールなどの天然アルコール、2−ヘキシルデカノール、イソステアリルアルコール、2−オクチルドデカノールなどの合成アルコール、酸化エチレン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ポリエチレングリコール、酸化プロピレン、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、グリセリン、バチルアルコール、ペンタエリトリトール、ソルビトール、マンニトール、ブドウ糖、ショ糖などの多価アルコール類などが挙げられる。
【0038】
エステル類としては、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル、ラウリン酸ヘキシル、ミリスチン酸ミリスチル、オレイン酸オレイル、オレイン酸デシル、ミリスチン酸オクチルドデシル、ジメチルオクタン酸ヘキシルデシル、乳酸セチル、乳酸ミリスチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、酢酸ラノリン、モノステアリン酸エチレングリコール、モノステアリン酸プロピレングリコール、ジオレイン酸プロピレングリコールなどが挙げられる。
【0039】
金属セッケンとしては、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、パルミチン酸亜鉛、ミリスチン酸マグネシウム、ラウリン酸亜鉛、ウンデシレン酸亜鉛などが挙げられる。
【0040】
ガム質及び水溶性高分子化合物としては、アラビアゴム、ベンゾインゴム、ダンマルゴム、グアヤク脂、アイルランド苔、カラヤゴム、トラガントゴム、キャロブゴム、クインシード、寒天、カゼイン、デキストリン、ゼラチン、ペクチン、デンプン、カラギーナン、カルボキシアルキルキチン、キトサン、ヒドロキシアルキルキチン、低分子キトサン、キトサン塩、硫酸化キチン、リン酸化キチン、アルギン酸及びその塩、ヒアルロン酸及びその塩、コンドロイチン硫酸、ヘパリン、エチルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、カルボキシエチルセルロースナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ニトロセルロース、結晶セルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルメチルエーテル、ポリビニルピロリドン、ポリビニルメタアクリレート、ポリアクリル酸塩、ポリエチレンオキサイドやポリプロピレンオキサイド等のポリアルキレンオキサイド又はその架橋重合物、カルボキシビニルポリマー、ポリエチレンイミンなどが挙げられる。
【0041】
界面活性剤としては、アニオン界面活性剤(カルボン酸塩,スルホン酸塩,硫酸エステル塩,リン酸エステル塩)、カチオン界面活性剤(アミン塩,四級アンモニウム塩)、両性界面活性剤(カルボン酸型両性界面活性剤,硫酸エステル型両性界面活性剤,スルホン酸型両性界面活性剤,リン酸エステル型両性界面活性剤)、非イオン界面活性剤(エーテル型非イオン界面活性剤,エーテルエステル型非イオン界面活性剤,エステル型非イオン界面活性剤,ブロックポリマー型非イオン界面活性剤,含窒素型非イオン界面活性剤)、その他の界面活性剤(天然界面活性剤,タンパク質加水分解物の誘導体,高分子界面活性剤,チタン・ケイ素を含む界面活性剤,フッ化炭素系界面活性剤などが挙げられる。
【0042】
ビタミン類としては、ビタミンA群ではレチノール、レチナール(ビタミンA1)、デヒドロレチナール(ビタミンA2)、カロチン、リコピン(プロビタミンA)、ビタミンB群では、チアミン塩酸塩、チアミン硫酸塩(ビタミンB1)、リボフラビン(ビタミンB2)、ピリドキシン(ビタミンB6)、シアノコバラミン(ビタミンB12)、葉酸類、ニコチン酸類、パントテン酸類、ビオチン類、コリン、イノシトール類、ビタミンC群では、アスコルビン酸及びその誘導体、ビタミンD群では、エルゴカルシフェロール(ビタミンD2)、コレカルシフェロール(ビタミンD3)、ジヒドロタキステロール、ビタミンE群では、トコフェロール及びその誘導体、ユビキノン類、ビタミンK群では、フィトナジオン(ビタミンK1)、メナキノン(ビタミンK2)、メナジオン(ビタミンK3)、メナジオール(ビタミンK4)などが挙げられる。
【0043】
アミノ酸としては、バリン、ロイシン、イソロイシン、トレオニン、メチオニン、フェニルアラニン、トリプトファン、リジン、グリシン、アラニン、アスパラギン、グルタミン、セリン、システイン、シスチン、チロシン、プロリン、ヒドロキシプロリン、アスパラギン酸、グルタミン酸、ヒドロキシリジン、アルギニン、オルニチン、ヒスチジンなどや、それらの硫酸塩、リン酸塩、硝酸塩、クエン酸塩、あるいはピロリドンカルボン酸の如きアミノ酸誘導体などが挙げられる。
【0044】
美白剤としては、アスコルビン酸又はその誘導体、イオウ、胎盤加水分解物、エラグ酸又はその誘導体、コウジ酸又はその誘導体、グルコサミン又はその誘導体、アルブチン又はその誘導体、ヒドロキシケイヒ酸又はその誘導体、グルタチオン、アルニカエキス、オウゴンエキス、ソウハクヒエキス、サイコエキス、ボウフウエキス、マンネンタケ菌糸体培養物又はその抽出物、シナノキエキス、モモ葉エキス、エイジツエキス、クジンエキス、ジユエキス、トウキエキス、ヨクイニンエキス、カキ葉エキス、ダイオウエキス、ボタンピエキス、ハマメリスエキス、マロニエエキス、オトギリソウエキス、油溶性カンゾウエキスなどが挙げられる。
【0045】
保湿剤としては、ヒアルロン酸、ポリグルタミン酸、セリン、グリシン、スレオニン、アラニン、コラーゲン、加水分解コラーゲン、ヒドロネクチン、フィブロネクチン、ケラチン、エラスチン、ローヤルゼリー、コンドロイチン硫酸ヘパリン、グリセロリン脂質、グリセロ糖脂質、スフィンゴリン脂質、スフィンゴ糖脂質、リノール酸又はそのエステル類、エイコサペンタエン酸又はそのエステル類、ペクチン、ビフィズス菌発酵物、乳酸発酵物、酵母抽出物、レイシ菌糸体培養物又はその抽出物、小麦胚芽油、アボガド油、米胚芽油、ホホバ油、ダイズリン脂質、γ−オリザノール、ビロウドアオイエキス、ヨクイニンエキス、ジオウエキス、タイソウエキス、カイソウエキス、キダチアロエエキス、ゴボウエキス、マンネンロウエキス、アルニカエキス、小麦フスマなどが挙げられる。
【0046】
育毛剤としては、ペンタデカン酸グリセリド、コレウスエキス、ゲンチアナエキス、マツカサエキス、ローヤルゼリーエキス、クマザサエキス、t-フラバノン、6-ベンジルアミノプリン、センブリエキス、塩化カルプロニウム、ミノキシジル、フィナステリド、アデノシン、ニコチン酸アミド、桑の根エキス、ジオウエキス、5-アミノレブリン酸などが挙げられる。
【0047】
動物或いは植物、生薬の抽出物やエキスとしては、アセンヤク(阿仙薬)、アシタバ、アセロラ、アルテア、アルニカ、アボカド、アマチャ(甘茶)、アロエ、アロエベラ、イラクサ、イチョウ(銀杏葉,銀杏)、ウイキョウ(茴香)、ウコン(鬱金)、ウスバサイシン(細辛)、ウメ(烏梅)、ウラジロガシ、ウワウルシ、ノイバラ(営実)、ヒキオコシ(延命草)、オウギ(黄耆)、コガネバナ(オウゴン)、ヤマザクラ(桜皮)、キハダ(黄柏)、オウレン(黄連)、オタネニンジン(人参)、オトギリソウ(弟切草)、オドリコソウ、オランダガラシ、オレンジ、イトヒメハギ(遠志)、ウツボグサ(夏枯草)、ツルドクダミ(何首烏)、エンジュ(槐花)、ヨモギ(ガイ葉)、ガジュツ(莪朮)、クズ(葛根)、カノコソウ(吉草根)、カミツレ、キカラスウリ(瓜呂根)、カワラヨモギ(茵チン蒿)、カンゾウ(甘草)、フキタンポポ(款冬花,款冬葉)、キイチゴ、キウイ果実、キキョウ(桔梗)、キク(菊花)、キササゲ(梓実)、ミカン属植物果実(枳実)、タチバナ(橘皮)、キュウリ、ウドまたはシシウド(羌活,独活)、アンズ(杏仁)、クコ(地骨皮,枸杞子,枸杞葉)、クララ(苦参)、クスノキ、クマザサ、グレープフルーツ果実、ニッケイ(桂皮)、ケイガイ(ケイガイ)、エビスグサ(決明子)、マルバアサガオ又はアサガオ(ケン牛子)、ベニバナ(紅花)、ゴバイシ(五倍子)、コンフリー、コパイバ、クチナシ(山梔子)、ゲンチアナ、ホオノキ(厚朴)、ヒナタイノコズチ(牛膝)、ゴシュユ(呉茱萸)、ゴボウ、チョウセンゴミシ(五味子)、米、米ぬか、コムギ、ミシマサイコ(柴胡)、サフラン、サボンソウ、サンザシ(山ザ子)、サンショウ(山椒)、サルビア、サンシチニンジン(三七人参)、シイタケ(椎茸)、ジオウ(地黄)、シクンシ(使君子)、ムラサキ(紫根)、シソ(紫蘇葉,紫蘇子)、カキ(柿蒂)、シャクヤク(芍薬)、オオバコ(車前子,車前草)、ショウガ(生姜)、ショウブ(菖蒲)、トウネズミモチ(女貞子)、シモツケソウ、シラカバ、スイカズラ(金銀花,忍冬)、セイヨウキヅタ、セイヨウノコギリソウ、セイヨウニワトコ、アズキ(赤小豆)、ニワトコ(接骨木)、ゼニアオイ、センキュウ(川キュウ)、センブリ(当薬)、クワ(桑白皮,桑葉)、ナツメ(大棗)、ダイズ、タラノキ、チクセツニンジン(竹節人参)、ハナスゲ(知母)、ワレモコウ(地楡)、ドクダミ(十薬)、フユムシナツクサタケ(冬虫夏草)、トウガラシ、ホオズキ(登呂根)、タチジャコウソウ、リョクチャ(緑茶)、コウチャ(紅茶)、チョウジ(丁子)、ウンシュウミカン(陳皮)、ツバキ、ツボクサ、トウガラシ(番椒)、トウキ(当帰)、トウキンセンカ、ダイダイ(橙皮)、ワレモコウ(地楡)、トウモロコシ(南蛮毛)、トチュウ(杜仲,杜仲葉)、トマト、ナンテン(南天実)、ニンニク(大サン)、オオムギ(麦芽)、ハクセン(白蘚皮)、ジャノヒゲ(麦門冬)、パセリ、バタタ、ハッカ(薄荷)、ハマメリス、バラ、ビワ葉(枇杷葉)、マツホド(茯リョウ)、ブドウまたはその葉、ヘチマ、ボダイジュ、ボタン(牡丹皮)、ホップ、マイカイ(マイ瑰花)、松葉、マロニエ、マンネンロウ、ムクロジ、メリッサ、メリロート、ボケ(木瓜)、モヤシ、モモ(桃仁,桃葉)、ヒオウギ(射干)、ビンロウジュ(檳ロウ子)、メハジキ(益母草)、ヤグルマギク、ユキノシタ(虎耳草)、ヤマモモ(楊梅皮)、ヤシャブシ(矢車)、ハトムギ(ヨクイニン)、モウコヨモギ、ヤマヨモギ、ラベンダー、リンゴ果実、マンネンタケ(霊芝)、レモン果実、レンギョウ(連翹)、レンゲソウ、ゲンノショウコ(老鸛草)、ハシリドコロ(ロート根)、鶏トサカ、牛・人の胎盤抽出物、豚・牛の胃、十二指腸、或いは腸の抽出物若しくはその分解物、水溶性コラーゲン、水溶性コラーゲン誘導体、コラーゲン加水分解物、エラスチン、エラスチン加水分解物、水溶性エラスチン誘導体、シルク蛋白、シルク蛋白分解物、牛血球蛋白分解物などが挙げられる。
【0048】
微生物培養代謝物としては、酵母エキス、亜鉛含有酵母エキス、ゲルマニウム含有酵母エキス、セレン含有酵母エキス、マグネシウム含有酵母エキス、米醗酵エキス、ユーグレナ抽出物、脱脂粉乳の乳酸発酵物などが挙げられる。
【0049】
α−ヒドロキシ酸としては、グリコール酸、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、乳酸などが挙げられる。
【0050】
無機顔料としては、無水ケイ酸、ケイ酸マグネシウム、タルク、カオリン、ベントナイト、マイカ、雲母チタン、オキシ塩化ビスマス、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化チタン、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、黄酸化鉄、ベンガラ、黒酸化鉄、グンジョウ、酸化クロム、水酸化クロム、カーボンブラック、カラミンなどが挙げられる。
【0051】
紫外線吸収剤としては、p−アミノ安息香酸誘導体、サルチル酸誘導体、アントラニル酸誘導体、クマリン誘導体、アミノ酸系化合物、ベンゾトリアゾール誘導体、テトラゾール誘導体、イミダゾリン誘導体、ピリミジン誘導体、ジオキサン誘導体、カンファー誘導体、フラン誘導体、ピロン誘導体、核酸誘導体、アラントイン誘導体、ニコチン酸誘導体、ビタミンB6誘導体、オキシベンゾン、ベンゾフェノン、グアイアズレン、シコニン、バイカリン、バイカレイン、ベルベリンなどが挙げられる。
【0052】
収斂剤としては、乳酸、酒石酸、コハク酸、クエン酸、アラントイン、塩化亜鉛、硫酸亜鉛、酸化亜鉛、カラミン、p−フェノールスルホン酸亜鉛、硫酸アルミニウムカリウム、レソルシン、塩化第二鉄、タンニン酸などが挙げられる。
【0053】
抗酸化剤としては、アスコルビン酸及びその塩、ステアリン酸エステル、トコフェロール及びそのエステル誘導体、ノルジヒドログアセレテン酸、ブチルヒドロキシトルエン(BHT)、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)、パラヒドロキシアニソール、没食子酸プロピル、セサモール、セサモリン、ゴシポールなどが挙げられる。
【0054】
抗炎症剤としては、イクタモール、インドメタシン、カオリン、サリチル酸、サリチル酸ナトリウム、サリチル酸メチル、アセチルサリチル酸、塩酸ジフェンヒドラミン、d又はdl−カンフル、ヒドロコルチゾン、グアイアズレン、カマズレン、マレイン酸クロルフェニラミン、グリチルリチン酸及びその塩、グリチルレチン酸及びその塩などが挙げられる。
【0055】
殺菌・消毒薬としては、アクリノール、イオウ、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化メチルロザニリン、クレゾール、グルコン酸カルシウム、グルコン酸クロルヘキシジン、スルファミン、マーキュロクロム、ラクトフェリン又はその加水分解物などが挙げられる。
【0056】
頭髪用剤としては、二硫化セレン、臭化アルキルイソキノリニウム液、ジンクピリチオン、ビフェナミン、チアントール、カスタリチンキ、ショウキョウチンキ、トウガラシチンキ、塩酸キニーネ、強アンモニア水、臭素酸カリウム、臭素酸ナトリウム、チオグリコール酸などが挙げられる。
【0057】
香料としては、ジャコウ、シベット、カストリウム、アンバーグリスなどの天然動物性香料、アニス精油、アンゲリカ精油、イラン精油、イリス精油、ウイキョウ精油、オレンジ精油、カナンガ精油、カラウェー精油、カルダモン精油、グアヤクウッド精油、クミン精油、黒文字精油、ケイ皮精油、シンナモン精油、ゲラニウム精油、コパイババルサム精油、コリアンデル精油、シソ精油、シダーウッド精油、シトロネラ精油、ジャスミン精油、ジンジャーグラス精油、杉精油、スペアミント精油、西洋ハッカ精油、大茴香精油、チュベローズ精油、丁字精油、橙花精油、冬緑精油、トルーバルサム精油、バチュリー精油、バラ精油、パルマローザ精油、檜精油、ヒバ精油、白檀精油、プチグレン精油、ベイ精油、ベチバ精油、ベルガモット精油、ペルーバルサム精油、ボアドローズ精油、芳樟精油、マンダリン精油、ユーカリ精油、ライム精油、ラベンダー精油、リナロエ精油、レモングラス精油、レモン精油、ローズマリー精油、和種ハッカ精油などの植物性香料、その他合成香料などが挙げられる。
【0058】
色素・着色剤としては、赤キャベツ色素、赤米色素、アカネ色素、アナトー色素、イカスミ色素、ウコン色素、エンジュ色素、オキアミ色素、柿色素、カラメル、金、銀、クチナシ色素、コーン色素、タマネギ色素、タマリンド色素、スピルリナ色素、ソバ全草色素、チェリー色素、海苔色素、ハイビスカス色素、ブドウ果汁色素、マリーゴールド色素、紫イモ色素、紫ヤマイモ色素、ラック色素、ルチンなどが挙げられる。
【0059】
甘味料としては、砂糖、甘茶、果糖、アラビノース、ガラクトース、キシロース、マンノース、麦芽糖、蜂蜜、ブドウ糖、ミラクリン、モネリンなどが挙げられる。
【0060】
栄養強化剤としては、貝殻焼成カルシウム、シアノコラバミン、酵母、小麦胚芽、大豆胚芽、卵黄粉末、ヘミセルロース、ヘム鉄などが挙げられる。
【0061】
その他、ホルモン類、金属イオン封鎖剤、pH調整剤、キレート剤、防腐・防バイ剤、清涼剤、安定化剤、乳化剤、動・植物性蛋白質及びその分解物、動・植物性多糖類及びその分解物、動・植物性糖蛋白質及びその分解物、血流促進剤、消炎剤・抗アレルギー剤、細胞賦活剤、角質溶解剤、創傷治療剤、増泡剤、増粘剤、口腔用剤、消臭・脱臭剤、苦味料、調味料、酵素などが挙げられる。
【0062】
本発明の剤型は任意であり、アンプル状、カプセル状、粉末状、顆粒状、丸剤、錠剤状、固形状、液状、ゲル状、気泡状、乳液状、クリーム状、軟膏状、シート状、ムース状などの医薬部外品類、皮膚・頭髪用化粧品類及び浴用剤化、飲食品類、医薬品類に配合して用いることができる。
【0063】
具体的には化粧品類、医薬部外品類としては、例えば内用・外用薬用製剤、化粧水、乳液、クリーム、軟膏、ローション、オイル、パックなどの基礎化粧料、洗顔料や皮膚洗浄料、シャンプー、リンス、ヘアートリートメント、ヘアクリーム、ポマード、ヘアスプレー、整髪料、パーマ剤、ヘアートニック、染毛料、育毛・養毛料などの頭髪化粧料、ファンデーション、白粉、おしろい、口紅、頬紅、アイシャドウ、アイライナー、マスカラ、眉墨、まつ毛などのメークアップ化粧料、美爪料などの仕上げ用化粧料、香水類、浴用剤、その他、歯磨き類、口中清涼剤・含嗽剤、液臭・防臭防止剤、衛生用品、衛生綿類、ウエットティシュなどが挙げられる。
【0064】
飲食品類としては、例えば清涼飲料、炭酸飲料、栄養飲料、果実飲料、乳酸飲料等の飲料、アイスクリーム、アイスシャーベット、かき氷等の冷菓、そば、うどん、はるさめ、ぎょうざの皮、しゅうまいの皮、中華麺、即席麺等の麺類、飴、キャンディー、ガム、チョコレート、錠菓、スナック菓子、ビスケット、ゼリー、ジャム、クリーム、焼き菓子、パン等の菓子類、カニ、サケ、アサリ、マグロ、イワシ、エビ、カツオ、サバ、クジラ、カキ、サンマ、イカ、アカガイ、ホタテ、アワビ、ウニ、イクラ、トコブシ等の水産物、かまぼこ、ハム、ソーセージ等の水産・畜産加工食品、粉乳、加工乳、発酵乳等の乳製品、サラダ油、てんぷら油、マーガリン、マヨネーズ、ショートニング、ホイップクリーム、ドレッシング等の油脂及び油脂加工食品、ソース、たれ等の調味料、カレー、シチュー、親子丼、お粥、雑炊、中華丼、かつ丼、天丼、うな丼、ハヤシライス、おでん、マーボドーフ、牛丼、ミートソース、玉子スープ、オムライス、餃子、シューマイ、ハンバーグ、ミートボール等のレトルトパウチ食品、種々の形態の健康・栄養補助食品、保健機能食品、錠剤、カプセル剤、ドリンク剤、トローチなどが挙げられる。
【0065】
本発明の賦活化剤、細胞外マトリックス産生促進剤はヒトに対して好適に適用されるものであるが、それぞれの作用効果が期待できる限り、ヒト以外の動物に対して適用することもできる。
【実施例】
【0066】
以下に実施例を示して本発明をより具体的に説明するが、これらは単なる例示であって、本発明の範囲を何ら限定するものではない。
【0067】
(ポリアミン分析方法)
動物、植物、微生物、前記抽出物及び加工物、ポリアミンを含む植物抽出物を有効成分として含有することを特徴とする賦活化剤、ポリアミンを有効成分として含む植物抽出物を含むことを特徴とする細胞外マトリックス産生促進剤、ポリアミンを含む植物抽出物を有効成分とすることを特徴とする化粧品類、ポリアミンを含む植物抽出物を有効成分とすることを特徴とする医薬部外品類、ポリアミンを含む植物抽出物を有効成分とすることを特徴とする飲食品類、ポリアミンを含む植物抽出液を有効成分とすることを特徴とする医薬品類などに含まれるポリアミン含量を以下の方法で調べることができる。ポリアミンは遊離型ポリアミン、化合型ポリアミン、結合型ポリアミンがあり抽出方法は異なるがいずれも解析することができる(Plant Cell Physiol., 43(2), 196-206, 2002, J. Nutr. Biochem., 4, 66-70, 1993, Biosci. Biotech. Biochem., 61(9), 1582-1584, 1997)。具体例として植物種子の遊離型ポリアミンの分析方法について詳細に示す。約0.1〜1.0gのダイズ種子に希釈内部標準液(1,6−hexanediamine、又は1,7−diaminoheptane、内部標準量=7.5又12nmol)と5%過塩素酸水溶液(試料生体重1.0g当たり5〜20mL)を加え、ポリトロンミキサーを用いて室温下で十分に磨砕抽出する。磨砕液を、4℃・35,000×gで20分間遠心分離して上清液を採取し本液を遊離型ポリアミン溶液とする。スクリューキャップ付きのマイクロチューブに100〜400μLの遊離型ポリアミン溶液(植物抽出物,精製植物抽出物)、200μLの飽和炭酸ナトリウム水溶液、200μLのダンシルクロライド/アセトン溶液(10mg/mL)を加えて軽く混和する。チューブの栓をしっかりと閉めたのちアルミ箔で覆い、60℃のウォーターバスで1時間加温してダンシル化を行う。チューブを放冷した後、プロリン水溶液(100mg/mL)を200μL加えて混和する。アルミ箔で覆ってウォーターバスで30分間再加温する。放冷後、窒素ガスを吹き付けてアセトンを除いた後に、600μLのトルエンを加えて激しく混和する。チューブを静置して2相に分かれた後に、上層のトルエン層を300μLマイクロチューブに分取する。分取したトルエンに窒素ガスを吹き付けてトルエンを完全除去する。チューブに200μLのメタノールを加えてダンシル化遊離型ポリアミンを溶解させる。プトレシン、スペルミジン、スペルミンの遊離型ポリアミン量の定量は蛍光検出器(励起波長:365nm・発光波長:510nm)を接続した高速液体クロマトグラフィーを用いて内部標準法で分析する。HPLCカラムはμBondapak C18(Waters社製:027324、3.9×300mm、粒子径10μm)を使用する。試料中のポリアミン含量は標準液と試料のHPLCチャートから、それぞれ各ポリアミンと内部標準のピーク面積を求めて算出する。
【0068】
(実施例1)ダイズ種子からのポリアミンを含む植物抽出物及び/又はポリアミンを有効成分として含む植物抽出物の調製
100gのダイズ種子(品種‘フクユタカ’)に希釈内部標準液(1,7−diaminoheptane、内部標準量=1200nmol)と480mLの5%過塩素酸水溶液を加えて室温下で一晩放置した。その後、ポリフェノール吸着剤であるポリクラールVT(ISP社製)を16g添加し、ブレンダーミキサーでダイズ種子を十分に破砕後、室温下で30分間放置して酸性条件下で抽出した。破砕物を2℃・22,000×gで20分間遠心分離して液体画分を採取し、30%の水酸化ナトリウム溶液で中和して本液を植物抽出物(ダイズ種子抽出物)とした。植物抽出物中にはポリアミンとしてプトレシンが8.2mg、スペルミジンが12.4mg、スペルミンが6.1mg含まれており、合計で26.7mgであった。さらに回収した植物抽出物を陽イオン交換樹脂(AG 50W-X4, 200-400mesh, H+型, バイオラッド社製)で充填したカラムに通し、ポリアミンを樹脂に吸着させた。0.7NNaCl/0.1Mリン酸ナトリウム溶液(pH8.0)、水、1N塩酸を順次流してカラムを洗浄した。不純物を除去した後に、6N塩酸でポリアミンを溶出して30%の水酸化ナトリウムで中和して本液を精製植物抽出物(精製ダイズ種子抽出物)とした。精製植物抽出物中にはポリアミンとしてプトレシンが6.4mg、スペルミジンが10.4mg、スペルミンが5.1mg含まれており、合計で21.9mgであった。植物抽出物と精製植物抽出物のHPLC分析のチャート図を図1に示した。プトレシン(検出時間:10.173分・10.175分)、カダベリン(検出時間:10.903分・10.890分)、スペルミジン(検出時間:16.050分・16.137分)、スペルミン(検出時間:20.100分・20.225分)のシャープな単一ピークがいずれの抽出物においても検出され、ポリアミンが主成分であることが確認された。ポリアミン純度をHPLC分析のピーク面積から算出したところ、植物抽出物は80〜86%、精製植物抽出物は88〜93%であった。ポリアミンが主成分である理由は、ポリフェノール吸着剤を添加し、酸条件下で抽出することで種子タンパク質などの不純物を変性及び吸着除去していることが大きく影響している。植物抽出物(ダイズ種子抽出物)と精製植物抽出物(精製ダイズ種子抽出物)は電気透析装置(アシライザー, アストム社製)により脱塩を行い、凍結乾燥により濃縮して種々の評価に用いた。
【0069】
100gのダイズ種子(品種‘フクユタカ’)に希釈内部標準液(1,7−diaminoheptane、内部標準量=1200nmol)と500mLの1N塩酸溶液を加えて低温(4℃)下で一晩放置した。その後、ポリフェノール吸着剤であるポリクラールVT(ISP社製)を16g添加し、ブレンダーミキサーでダイズ種子を十分に破砕後、低温(4℃)下で30分間放置して酸性条件下で抽出した。破砕物を2℃・22,000×gで20分間遠心分離して液体画分を採取し、30%の水酸化ナトリウム溶液で中和して本液を植物抽出物(ダイズ種子抽出物)とした。植物抽出物中にはポリアミンとしてプトレシンが4.1mg、スペルミジンが9.1mg、スペルミンが2.9mg含まれており、合計で16.1mgであった。回収した植物抽出物(ダイズ種子抽出物)を電気透析装置(アシライザー, アストム社製)により脱塩を行い、凍結乾燥により濃縮して種々の評価に用いた。
【0070】
以上の結果から、ダイズ種子から工業的又は実用的に利用できるポリアミンを含む植物抽出物及び/又はポリアミンを有効成分として含む植物抽出物を得ることができた。特に、植物から1N塩酸でポリアミンを含む植物抽出物及び/又はポリアミンを有効成分として含む植物抽出物が回収できることが確認できたことから、安全性に優れたポリアミンを含む植物抽出物及び/又はポリアミンを有効成分として含む植物抽出物を提供することができる。塩酸でポリアミンを含む植物抽出物及び/又はポリアミンを有効成分として含む植物抽出物を回収し、30%の水酸化ナトリウムで中和すれば、ごく一般的なイオンによる中和反応となり、ポリアミンの抽出に一般的に用いられるトリクロロ酢酸に比べて安全性が高いと考えられる。
【0071】
(実施例2)ダイズ芽からのポリアミンを含む植物抽出物及び/又はポリアミンを有効成分として含む植物抽出物の調製
ダイズ種子(品種‘フクユタカ’)を吸水させて、光条件下又は暗黒条件下、26℃で2日間培養して発芽させた。光条件下又は暗黒条件下で培養した発芽ダイズの芽部分をそれぞれ約50gサンプリングした。50gのダイズ芽に希釈内部標準液(1,7−diaminoheptane、内部標準量=600nmol)、250mLの5%過塩素酸水溶液、ポリフェノール吸着剤であるポリクラールVT(ISP社製)を8g添加し、ホモジナイザーでダイズ芽を十分に破砕した。次に室温下で30分間放置して酸性条件下で抽出した。破砕物を2℃・22,000×gで20分間遠心分離して液体画分を採取し、30%の水酸化ナトリウム溶液で中和して本液を植物抽出物(ダイズ芽抽出物)とした。光条件下で発芽させたダイズ芽から植物抽出物中にはポリアミンとしてプトレシンとカダベリンが26.2mg、スペルミジンが1.8mg、スペルミンが0.2mg含まれており、合計で28.2mgであった。暗黒条件下で発芽させたダイズ芽から植物抽出物中にはポリアミンとしてプトレシンとカダベリンが17.1mg、スペルミジンが1.6mg、スペルミンが0.2mg含まれており、合計で18.9mgであった。回収した植物抽出物(ダイズ芽抽出物)を電気透析装置(アシライザー, アストム社製)により脱塩を行い、凍結乾燥により濃縮して種々の評価に用いた。
【0072】
以上の結果から、ダイズの芽には特にプトレシンとカダベリンが多く含まれていることが明らかとなった。ポリアミンの中でもプトレシンやカダベリンを特に有効成分として利用する際には、ダイズの芽を抽出材料として利用することが望ましい。ダイズ芽から工業的又は実用的に利用できるポリアミンを含む植物抽出物及び/又はポリアミンを有効成分として含む植物抽出物を得ることができた。
【0073】
(実施例3)ダイズ胚芽(ダイズ胚)からのポリアミンを含む植物抽出物及び/又はポリアミンを有効成分として含む植物抽出物の調製
100gのダイズ胚芽(フォーユー社製)に希釈内部標準液(1,7−diaminoheptane、内部標準量=1200nmol)、500mLの5%過塩素酸水溶液を加えて室温下で1時間放置した。その後、ポリフェノール吸着剤であるポリクラールVT(ISP社製)を16g添加し、ブレンダーミキサーでダイズ胚芽を十分に破砕後、室温下で30分間放置して酸性条件下で抽出した。破砕物を2℃・22,000×gで20分間遠心分離して液体画分を採取し、30%の水酸化ナトリウム溶液で中和して本液を植物抽出物(ダイズ胚芽抽出物)とした。植物抽出物中にはポリアミンとしてプトレシンが23.5mg、スペルミジンが24.0mg、スペルミンが9.6mg含まれており、合計で57.1mgであった。さらに回収した植物抽出物を陽イオン交換樹脂(AG 50W-X4, 200-400mesh, H+型, バイオラッド社製)で充填したカラムに通し、ポリアミンを樹脂に吸着させた。0.7NNaCl/0.1Mリン酸ナトリウム溶液(pH8.0)、水、1N塩酸を順次流してカラムを洗浄した。不純物を除去した後に、6N塩酸でポリアミンを溶出して30%の水酸化ナトリウムで中和して本液を精製植物抽出物(精製ダイズ胚芽抽出物)とした。精製植物抽出物中にはポリアミンとしてプトレシンが20.4mg、スペルミジンが22.3mg、スペルミンが7.7mg含まれており、合計で50.4mgであった。植物抽出物(ダイズ胚芽抽出物)と精製植物抽出物(精製ダイズ胚芽抽出物)は電気透析装置(アシライザー, アストム社製)により脱塩を行い、凍結乾燥により濃縮して種々の評価に用いた。
【0074】
1kgのダイズ胚芽(フォーユー社製)に希釈内部標準液(1,7−diaminoheptane、内部標準量=10μmol)、5Lの1N塩酸溶液を加えて室温下で1時間放置した。その後、ポリフェノール吸着剤であるポリクラールVT(ISP社製)を80g添加し、ホモジナイザーでダイズ胚芽を十分に破砕後、室温下で1時間放置して酸性条件下で抽出した。破砕物を2℃・22,000×gで30分間遠心分離して液体画分を採取し、30%の水酸化ナトリウム溶液で中和して本液を植物抽出物(ダイズ胚芽抽出物)とした。植物抽出物中にはポリアミンとしてプトレシンが235.1mg、スペルミジンが241.8mg、スペルミンが80.1mg含まれており、合計で557.0mgであった。植物抽出物のHPLC分析のチャート図を図2に示した。プトレシン(検出時間:10.925分)、スペルミジン(検出時間:15.898分)、スペルミン(検出時間:20.025分)のシャープな単一ピークが検出された。13.002分の単一ピークは希釈内部標準液(1,7−diaminoheptane)である。各ポリアミンのシャープな単一ピークが植物抽出物で検出され、ポリアミンが主成分であることが確認された。植物抽出物が高純度である理由は、胚芽(胚)部分のみを用いることで種子タンパク質等の混入が低いことと、ポリフェノール吸着剤を添加し、酸条件下で抽出することで種子タンパク質などの不純物を変性及び吸着除去していることが大きく影響している。植物抽出物(ダイズ胚芽抽出物)は電気透析装置(アシライザー, アストム社製)により脱塩を行い、凍結乾燥により濃縮して種々の評価に用いた。
【0075】
以上の結果から、ダイズ胚芽(ダイズ胚)から極めて高含量なポリアミンを含む植物抽出物及び/又はポリアミンを有効成分として含む植物抽出物が得ることが明らかとなった。特にダイズ胚芽から、これ程の量のポリアミンが回収された報告は全くなく、ダイズ胚芽中にポリアミン含量が著しく高いことについても始めての知見であった。これまでにポリアミン又はポリアミン組成物を植物から抽出して工業的に利用する場合、植物中に含まれるポリアミン含量が極めて低く、さらに抽出効率が低いことが大きな問題であったが、1kgのダイズ胚芽(ダイズ芽)から約0.5gのポリアミン又はポリアミン組成物が回収できたことから、生産コストの面でも大きな改善がなされた。植物から1N塩酸でポリアミンを含む植物抽出物及び/又はポリアミンを有効成分として含む植物抽出物が回収できることが確認できたことから、安全性に優れたポリアミンを含む植物抽出物及び/又はポリアミンを有効成分として含む植物抽出物を提供することができる。
【0076】
(実施例4)コムギ胚芽(コムギ胚)からのポリアミンを含む植物抽出物及び/又はポリアミンを有効成分として含む植物抽出物の調製
100gのコムギ胚芽(培焼・ローストタイプ,日清ファルマ社製)に希釈内部標準液(1,7−diaminoheptane、内部標準量=1200nmol)、500mLの5%過塩素酸水溶液を加えて室温下で1時間放置した。その後、ポリフェノール吸着剤であるポリクラールVT(ISP社製)を16g添加し、ブレンダーミキサーでダイズ胚芽を十分に破砕後、室温下で30分間放置して酸性条件下で抽出した。破砕物を2℃・22,000×gで20分間遠心分離して液体画分を採取し、30%の水酸化ナトリウム溶液で中和して本液を植物抽出物(コムギ胚芽抽出物)とした。植物抽出物中にはポリアミンとしてプトレシンが6.4mg、スペルミジンが23.9mg、スペルミンが14.3mg含まれており、合計で44.6mgであった。さらに回収した植物抽出物を陽イオン交換樹脂(AG 50W-X4, 200-400mesh, H+型, バイオラッド社製)で充填したカラムに通し、ポリアミンを樹脂に吸着させた。0.7NNaCl/0.1Mリン酸ナトリウム溶液(pH8.0)、水、1N塩酸を順次流してカラムを洗浄した。不純物を除去した後に、6N塩酸でポリアミンを溶出して30%の水酸化ナトリウムで中和して本液を精製植物抽出物(精製コムギ胚芽抽出物)とした。精製植物抽出物中にはポリアミンとしてプトレシンが5.7mg、スペルミジンが21.5mg、スペルミンが12.9mg含まれており、合計で40.1mgであった。植物抽出物(コムギ胚芽抽出物)と精製植物抽出物(精製コムギ胚芽抽出物)は電気透析装置(アシライザー, アストム社製)により脱塩を行い、凍結乾燥により濃縮して種々の評価に用いた。
【0077】
1kgのコムギ胚芽(培焼・ローストタイプ,日清ファルマ社製)に希釈内部標準液(1,7−diaminoheptane、内部標準量=10μmol)、5Lの1N塩酸溶液を加えて室温下で1時間放置した。その後、ポリフェノール吸着剤であるポリクラールVT(ISP社製)を80g添加し、ホモジナイザーでコムギ胚芽を十分に破砕後、室温下で1時間放置して酸性条件下で抽出した。破砕物を2℃・22,000×gで30分間遠心分離して液体画分を採取し、30%の水酸化ナトリウム溶液で中和して本液を植物抽出物(コムギ胚芽抽出物)とした。植物抽出物中にはポリアミンとしてプトレシンが75.1mg、スペルミジンが294.0mg、スペルミンが119.4mg含まれており、合計で488.5mgであった。植物抽出物のHPLC分析のチャート図を図3に示した。プトレシン(検出時間:10.110分)、スペルミジン(検出時間:15.892分)、スペルミン(検出時間:20.019分)のシャープな単一ピークがそれぞれ検出された。12.994分の単一ピークは希釈内部標準液(1,7−diaminoheptane)である。各ポリアミンのシャープな単一ピークが植物抽出物で検出され、ポリアミンが主成分であることが確認された。植物抽出物が高純度である理由は、胚芽(胚)部分を用いることで種子タンパク質等の混入が低いことと、ポリフェノール吸着剤を添加し、酸条件下で抽出することでタンパク質などの不純物を変性又は吸着除去していることが大きく影響している。植物抽出物(コムギ胚芽抽出物)は電気透析装置(アシライザー, アストム社製)により脱塩を行い、凍結乾燥により濃縮して種々の評価に用いた。
【0078】
以上の結果から、コムギ胚芽(コムギ胚)から工業的又は実用的に利用できるポリアミンを含む植物抽出物及び/又はポリアミンを有効成分として含む植物抽出物を得ることができた。コムギ胚芽中にはポリアミン以外にも有効な成分が多く含まれていることから、回収した植物抽出物中には主成分であるポリアミン以外にも有効成分が含まれている可能性がある。ポリアミン以外の有効成分の効果と作用がポリアミンの効果と作用に混合されることによって、より優れた効果と作用がさらに期待できる。植物から1N塩酸でポリアミンを含む植物抽出物及び/又はポリアミンを有効成分として含む植物抽出物が回収できることが確認できたことから、安全性に優れたポリアミンを含む植物抽出物及び/又はポリアミンを有効成分として含む植物抽出物を提供することができる。
【0079】
(実施例5)豆乳からのポリアミンを含む植物抽出物及び/又はポリアミンを有効成分として含む植物抽出物の調製
100mLの豆乳(品種‘フクユタカ’)に希釈内部標準液(1,7−diaminoheptane、内部標準量=1200nmol)、100mLの5%過塩素酸水溶液を加えた。その後、ミキサーで十分に混合後、室温下で30分間放置して酸性条件下で抽出した。混合物を4℃・27,700×gで20分間遠心分離して液体画分を採取し、30%の水酸化ナトリウム溶液で中和して本液を植物抽出物(豆乳抽出物)とした。植物抽出物中にはポリアミンとしてプトレシンが0.7mg、スペルミジンが1.9mg、スペルミンが0.7mg含まれており、合計で3.3mgであった。回収した植物抽出物(豆乳抽出物)を電気透析装置(アシライザー, アストム社製)により脱塩を行い、凍結乾燥により濃縮して種々の評価に用いた。
【0080】
100mLの豆乳(品種‘フクユタカ’)に希釈内部標準液(1,7−diaminoheptane、内部標準量=960nmol)、10%過塩素酸水溶液を2.5mL(終濃度0.25%)、5mL(終濃度0.5%)、10mL(終濃度1%)、20mL(終濃度2%)、40mL(終濃度4%)それぞれ加えた。その後、ミキサーで十分に混合後、室温下で30分間放置して酸性条件下で抽出した。混合物を2℃・27,700×gで20分間遠心分離して液体画分を採取し、30%の水酸化ナトリウム溶液で中和して本液を植物抽出物(豆乳抽出物)とした。0.25%の過塩素酸濃度では液体画分が白色を呈した。過塩素酸濃度が低いことで、pH低下によるダイズタンパク質の変性が不十分になり液体画分に混入したと考えられる。0.5%と1%の過塩素酸濃度でも僅かに白色を呈した。ポリアミンの回収量は0.25%の過塩素酸濃度の植物抽出物ではポリアミン以外のピークが見られ他の成分の混入が見られた、他の過塩素酸濃度に比べてポリアミン回収量が低下した。一方、0.5%以上の過塩素酸濃度の植物抽出物では、回収量は同じレベルでポリアミンとしてプトレシンが1.8mg、スペルミジンが2.8mg、スペルミンが1.0mg含まれており、合計で5.6mgであった。回収した植物抽出物(豆乳抽出物)を電気透析装置(アシライザー, アストム社製)により脱塩を行い、凍結乾燥により濃縮して種々の評価に用いた。0.5%の過塩素酸濃度でもポリアミンを含む植物抽出物及び/又はポリアミンを有効成分として含む植物抽出物が回収できることが確認でき、安全性の面でも優れた調製方法が見出された。
【0081】
100mLの豆乳(品種‘フクユタカ’)に希釈内部標準液(1,7−diaminoheptane、内部標準量=800nmol)を加え、6N塩酸を用いて終濃度が0.0625N、0.125N、0.25N、0.5N、1Nになるように添加した。その後、ミキサーで十分に混合後、室温下で30分間放置して酸性条件下で抽出した。混合物を2℃・27,700×gで20分間遠心分離して液体画分を採取し、30%の水酸化ナトリウムで中和して本液を植物抽出物(豆乳抽出物)とした。0.0625N、0.125N、0.25N、0.5Nの塩酸濃度では液体画分が少し白色を呈した。塩酸濃度が低いことで、pH低下によるダイズタンパク質の変性が不十分になり液体画分に混入したと考えられる。ポリアミンの回収量は全ての塩酸濃度でほぼ同じレベルでポリアミンとしてプトレシンが1.1mg、スペルミジンが2.3mg、スペルミンが0.6mg含まれており、合計で4.0mgであった。回収した植物抽出物(豆乳抽出物)を電気透析装置(アシライザー, アストム社製)により脱塩を行い、凍結乾燥により濃縮して種々の評価に用いた。1N以下の塩酸でもポリアミンを含む植物抽出物及び/又はポリアミンを有効成分として含む植物抽出物が回収できることが確認でき、安全性の面でも優れた調製方法が見出された。1Nの塩酸で回収した植物抽出物のHPLC分析のチャート図を図4に示した。プトレシン(検出時間:10.124分)、スペルミジン(検出時間:15.929分)、スペルミン(検出時間:20.040分)のシャープな単一ピークがそれぞれ検出された。各ポリアミンのシャープな単一ピークが植物抽出物で検出され、ポリアミンが主成分であることが確認された。植物抽出物が高純度である理由は、酸条件下で抽出することで豆乳中に混入している種子タンパク質のほとんどが変性し、遠心分離によって沈殿除去されたためである。
【0082】
以上の結果から、豆乳から工業的又は実用的に利用できるポリアミンを含む植物抽出物及び/又はポリアミンを有効成分として含む植物抽出物を得ることができた。豆乳からポリアミンを含む植物抽出物及び/又はポリアミンを有効成分として含む植物抽出物を回収する場合には、破砕や粉砕処理が不要であり、調製行程が少なくメリットが大きい。豆乳中にはポリアミン以外にも有効な成分が多く含まれていることから、回収した植物抽出物中には主成分であるポリアミン以外にも有効成分が含まれている可能性がある。ポリアミン以外の有効成分の効果と作用がポリアミンの効果と作用に混合されることによって、より優れた効果と作用がさらに期待できる。特に、過塩素酸や塩酸の濃度を下げることで、植物抽出物中のダイズタンパク質の混入量が高めることが確認されたので、用途に応じて過塩素酸や塩酸の濃度を低くして調製すればよい。豆乳はごく一般的に飲食されていることから豆乳から調製したポリアミンを含む植物抽出物及び/又はポリアミンを有効成分として含む植物抽出物の安全性は極めて高い。
【0083】
(実施例6)オカラからのポリアミンを含む植物抽出物及び/又はポリアミンを有効成分として含む植物抽出物の調製
1kgのオカラに希釈内部標準液(1,7−diaminoheptane、内部標準量=10μmol)、5Lの5%過塩素酸水溶液を加えて室温下で1時間放置した。その後、ホモジナイザーでオカラを十分に破砕後、室温下で1時間放置して酸性条件下で抽出した。破砕物を2℃・22,000×gで30分間遠心分離して液体画分を採取し、30%の水酸化ナトリウム溶液で中和して本液を植物抽出物(オカラ抽出物)とした。植物抽出物中にはポリアミンとしてプトレシンが5.4mg、スペルミジンが17.8mg、スペルミンが6.5mg含まれており、合計で29.7mgであった。植物抽出物(オカラ抽出物)は電気透析装置(アシライザー, アストム社製)により脱塩を行い、凍結乾燥により濃縮して種々の評価に用いた。
【0084】
以上の結果から、オカラから工業的又は実用的に利用できるポリアミンを含む植物抽出物及び/又はポリアミンを有効成分として含む植物抽出物を得ることができた。オカラは豆乳採取後の残査であり、ポリアミンがほとんど含まれていないと考えられていたが、豆乳よりは少ないがポリアミンが多く含まれていることが確認された。オカラは豆乳採取後の残査であることから、ダイズタンパク質等の含量が低く、植物抽出物中のポリアミン純度は高く、陽イオン交換樹脂での精製が不要であることも明らかとなった。オカラはそのほとんどが廃棄されていることから、オカラを生産材料としてポリアミンを含む植物抽出物及び/又はポリアミンを有効成分として含む植物抽出物を回収すれば、産業上大きなメリットが期待される。
【0085】
(実施例7)ダイズ胚芽由来のポリアミンを含む植物抽出物及び/又はポリアミンを有効成分として含む植物抽出物による正常ヒト皮膚繊維芽細胞を用いた評価
ダイズ胚芽由来のポリアミンを含む植物抽出物及び/又はポリアミンを有効成分として含む植物抽出物は実施例3に記載されている植物抽出物(ダイズ胚芽抽出物)と精製植物抽出物(精製ダイズ胚芽抽出物)を用いた。評価は以下の手順で行った。正常ヒト皮膚線維芽細胞を1ウェル当たり2.0×104個となるように48穴マイクロプレートに播種した。播種培地には、ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)に10%のウシ胎児血清を添加したものを用いた。37℃、二酸化炭素濃度5vol%中にて24時間培養後、任意のポリアミン濃度の試料を添加した試験培地に交換し、さらに48時間培養した。次いで3−(4,5−ジメチル−2−チアゾリル)−2,5−ジフェニルテトラゾリウムブロミド(MTT)を100μg/mL含有する培地に交換して3時間培養し、テトラゾリウム環の開環により生じるフォルマザンを2−プロパノールにて抽出し、マイクロプレートリーダーにて550nmの吸光度を測定した。同時に濁度として650nmにおける吸光度を測定し、両測定値の差により細胞賦活作用を評価した。評価結果を、コントロール(水添加)における細胞賦活作用を100とした相対値にて図5に示す。
【0086】
図5より明らかなように、ダイズ胚芽抽出物、精製ダイズ胚芽抽出物を添加した培地では、いずれにおいても正常ヒト皮膚線維芽細胞に対して高い細胞賦活化効果を有していることが認められた。濃度はポリアミン濃度で示した。特に、ダイズ胚芽抽出物では0.67μM、6.7μM、13.4μM(プトレシン濃度9.2μM,スペルミジン濃度3.8μM,スペルミン濃度0.4μM)、33.5μMのポリアミン濃度、精製ダイズ胚芽抽出物では7.4μM、14.8μM(プトレシン濃度8.2μM,スペルミジン濃度5.8μM,スペルミン濃度0.8μM)、37.0μMのポリアミン濃度においてブランク(水)と比較して、いずれも20%以上の有意な細胞賦活作用が認められた。以上のことから、これらのポリアミンを含む植物抽出物及び/又はポリアミンを有効成分として含む植物抽出物は、優れた細胞賦活作用を有することが明らかとなり、これらを肌に適用することにより、繊維芽細胞の衰えが軽減されることでコラーゲンやヒアルロン酸の代謝回転速度の低下が小さくなり、極めて優れた効果を発揮し、紫外線曝露等により生じる皮膚のしわ、たるみ、くすみ、荒れ等を効果的に改善することができる。
【0087】
(実施例8)コムギ胚芽由来のポリアミンを含む植物抽出物及び/又はポリアミンを有効成分として含む植物抽出物による正常ヒト皮膚繊維芽細胞を用いた評価
コムギ胚芽由来のポリアミンを含む植物抽出物及び/又はポリアミンを有効成分として含む植物抽出物は実施例4に記載されている植物抽出物(コムギ胚芽抽出物)と精製植物抽出物(精製コムギ胚芽抽出物)を用いた。評価は以下の手順で行った。正常ヒト皮膚線維芽細胞を1ウェル当たり2.0×104個となるように48穴マイクロプレートに播種した。播種培地には、ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)に10%のウシ胎児血清を添加したものを用いた。37℃、二酸化炭素濃度5vol%中にて24時間培養後、任意のポリアミン濃度の試料を添加した試験培地に交換し、さらに48時間培養した。次いで3−(4,5−ジメチル−2−チアゾリル)−2,5−ジフェニルテトラゾリウムブロミド(MTT)を100μg/mL含有する培地に交換して3時間培養し、テトラゾリウム環の開環により生じるフォルマザンを2−プロパノールにて抽出し、マイクロプレートリーダーにて550nmの吸光度を測定した。同時に濁度として650nmにおける吸光度を測定し、両測定値の差により細胞賦活作用を評価した。評価結果を、コントロール(水添加)における細胞賦活作用を100とした相対値にて図6に示す。
【0088】
図6より明らかなように、コムギ胚芽抽出物、精製コムギ胚芽抽出物を添加した培地では、いずれにおいても正常ヒト皮膚線維芽細胞に対して高い細胞賦活化効果を有していることが認められた。濃度はポリアミン濃度で示した。特に、コムギ胚芽抽出物では0.33μM、3.3μM(プトレシン濃度0.7μM,スペルミジン濃度2.3μM,スペルミン濃度0.3μM)、6.6μM、16.5μMのポリアミン濃度、精製コムギ胚芽抽出物では4.1μM、8.2μM、20.5μM(プトレシン濃度3.5μM,スペルミジン濃度14.5μM,スペルミン濃度2.5μM)のポリアミン濃度においてブランク(水)と比較して、いずれも20%以上の有意な細胞賦活化作用が認められた。以上のことから、これらのポリアミンを含む植物抽出物及び/又はポリアミンを有効成分として含む植物抽出物は、優れた細胞賦活作用を有することが明らかとなり、これらを肌に適用することにより、繊維芽細胞の衰えが軽減されることでコラーゲンやヒアルロン酸の代謝回転速度の低下が小さくなり、極めて優れた効果を発揮し、紫外線曝露等により生じる皮膚のしわ、たるみ、くすみ、荒れ等を効果的に改善することができる。
【0089】
(実施例9)ダイズ胚芽由来のポリアミンを含む植物抽出物及び/又はポリアミンを有効成分として含む植物抽出物によるヒト毛乳頭細胞を用いた評価
・ ヒト毛乳頭細胞の培養方法
ヒト頭髪毛乳頭細胞(THPC−001)トータルキット(HDPCトータルキット:THPCK−001、製造元:セルアプリケイションズインク USA、輸入販売元:東洋紡績株式会社)を用いて、常法によりヒト毛乳頭細胞を培養した。解凍した細胞を懸濁するためのPCGM培地を10mL、15mL遠心チューブに分注し、氷令しておく。即ち、凍結したヒト頭髪毛乳頭細胞(THPC−001)の入ったバイアル瓶を37℃の恒温槽で急速に融解する。このバイアル瓶にPCGM培地を1mL程度徐々に滴下しDMSOを希釈後、全量をPCGM培地が入った遠心チューブに移し懸濁させる。浮遊細胞を冷却低遠心機で4℃、1000rpm、5分間遠心する。沈殿した細胞を吸わないように注意しながら上清を吸引し、1mLPCGM培地に再懸濁させる。この全量を、コラーゲン液でコートしたT−75フラスコに植え込み、加湿下で、二酸化炭素濃度5vol%、37℃に保たれたインキュベーターに入れ静置培養を行う。1日後、培地の交換を行う。以後、1日おきに培地の交換を行い継代培養する。尚、PCGM培地成分は、1%FBSを含有するPCGM基礎培地250mLに牛下垂体抽出液(BPE)100倍希釈液を2.5mL、牛胎児血清(FCS)100倍希釈液を2.5mL、インシュリン・トランスフェリン・トリヨードサイロニン溶液(ITT)200倍希釈液を1.25mL、サイロプロテイン溶液(Cyp)200倍希釈液を1.25mL添加したものを用いた。
【0090】
・ 毛乳頭細胞賦活作用の評価
ダイズ胚芽由来のポリアミンを含む植物抽出物及び/又はポリアミンを有効成分として含む植物抽出物は実施例3に記載されている植物抽出物(ダイズ胚芽抽出物)と精製植物抽出物(精製ダイズ胚芽抽出物)を用いた。評価は、以下の手順で行った。ヒト毛乳頭細胞を1ウェル当たり2.0×104個となるように48穴マイクロプレートに播種した。播種培地には、ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)に10%のウシ胎児血清を添加したものを用いた。24時間培養後、任意のポリアミン濃度の試料を添加した試験培地に交換し、さらに48時間培養した。次いで3−(4,5−ジメチル−2−チアゾリル)−2,5−ジフェニルテトラゾリウムブロミド(MTT)を100μg/mL含有する培地に交換して3時間培養し、テトラゾリウム環の開環により生じるフォルマザンを2−プロパノールにて抽出し、マイクロプレートリーダーにて550nmの吸光度を測定した。同時に濁度として650nmにおける吸光度を測定し、両測定値の差により細胞賦活作用を評価した。評価結果を、試料無添加のブランクにおける細胞賦活作用を100とした相対値にて図7に示す。
【0091】
図7より明らかなように、ダイズ胚芽抽出物、精製ダイズ胚芽抽出物を添加した培地では、ヒト毛乳頭細胞に対して高い細胞賦活化効果を有していることが認められた。濃度はポリアミン濃度で示した。特に、ダイズ胚芽抽出物では6.7μM、13.4μM(プトレシン濃度9.2μM,スペルミジン濃度3.8μM,スペルミン濃度0.4μM)、33.5μMのポリアミン濃度、精製ダイズ胚芽抽出物では7.4μM、14.8μM(プトレシン濃度8.2μM,スペルミジン濃度5.8μM,スペルミン濃度0.8μM)、37.0μMのポリアミン濃度においてブランク(水)と比較して、いずれも20%以上の有意な細胞賦活化作用が認められた。以上のことから、これらのポリアミンを含む植物抽出物及び/又はポリアミンを有効成分として含む植物抽出物は、優れた細胞賦活作用を有することが明らかとなり、これらを肌に適用することにより、極めて優れた効果を発揮し、紫外線曝露等により生じる皮膚のしわ、たるみ、くすみ、荒れ等を効果的に改善することができる。さらに、ヒト毛乳頭細胞のおいて優れた細胞賦活作用が確認されたことから、ストレス、ホルモンバランス、紫外線暴露により生じる毛髪形成阻害等をポリアミンは効果的に改善することができる。
【0092】
(実施例10)コムギ胚芽由来のポリアミンを含む植物抽出物及び/又はポリアミンを有効成分として含む植物抽出物によるヒト毛乳頭細胞を用いた評価
・ ヒト毛乳頭細胞の培養方法
ヒト頭髪毛乳頭細胞(THPC−001)トータルキット(HDPCトータルキット:THPCK−001、製造元:セルアプリケイションズインク USA、輸入販売元:東洋紡績株式会社)を用いて、常法によりヒト毛乳頭細胞を培養した。解凍した細胞を懸濁するためのPCGM培地を10mL、15mL遠心チューブに分注し、氷令しておく。即ち、凍結したヒト頭髪毛乳頭細胞(THPC−001)の入ったバイアル瓶を37℃の恒温槽で急速に融解する。このバイアル瓶にPCGM培地を1mL程度徐々に滴下しDMSOを希釈後、全量をPCGM培地が入った遠心チューブに移し懸濁させる。浮遊細胞を冷却低遠心機で4℃、1000rpm、5分間遠心する。沈殿した細胞を吸わないように注意しながら上清を吸引し、1mLPCGM培地に再懸濁させる。この全量を、コラーゲン液でコートしたT−75フラスコに植え込み、加湿下で、二酸化炭素濃度5vol%、37℃に保たれたインキュベーターに入れ静置培養を行う。1日後、培地の交換を行う。以後、1日おきに培地の交換を行い継代培養する。尚、PCGM培地成分は、1%FBSを含有するPCGM基礎培地250mLに牛下垂体抽出液(BPE)100倍希釈液を2.5mL、牛胎児血清(FCS)100倍希釈液を2.5mL、インシュリン・トランスフェリン・トリヨードサイロニン溶液(ITT)200倍希釈液を1.25mL、サイロプロテイン溶液(Cyp)200倍希釈液を1.25mL添加したものを用いた。
【0093】
・ 毛乳頭細胞賦活作用の評価
コムギ胚芽由来のポリアミンを含む植物抽出物及び/又はポリアミンを有効成分として含む植物抽出物は実施例4に記載されている植物抽出物(コムギ胚芽抽出物)と精製植物抽出物(精製コムギ胚芽抽出物)を用いた。評価は、以下の手順で行った。ヒト毛乳頭細胞を1ウェル当たり2.0×104個となるように48穴マイクロプレートに播種した。播種培地には、ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)に10%のウシ胎児血清を添加したものを用いた。24時間培養後、任意のポリアミン濃度の試料を添加した試験培地に交換し、さらに48時間培養した。次いで3−(4,5−ジメチル−2−チアゾリル)−2,5−ジフェニルテトラゾリウムブロミド(MTT)を100μg/mL含有する培地に交換して3時間培養し、テトラゾリウム環の開環により生じるフォルマザンを2−プロパノールにて抽出し、マイクロプレートリーダーにて550nmの吸光度を測定した。同時に濁度として650nmにおける吸光度を測定し、両測定値の差により細胞賦活作用を評価した。評価結果を、試料無添加のブランクにおける細胞賦活作用を100とした相対値にて図8に示す。
【0094】
図8より明らかなように、コムギ胚芽抽出物、精製コムギ胚芽抽出物を添加した培地では、ヒト毛乳頭細胞に対して高い細胞賦活化効果を有していることが認められた。濃度はポリアミン濃度で示した。特に、コムギ胚芽抽出物では6.6μM、16.5μM(プトレシン濃度3.5μM,スペルミジン濃度11.5μM,スペルミン濃度1.5μM)のポリアミン濃度、精製ダイズ胚芽抽出物では4.1μM、8.2μM、20.5μM(プトレシン濃度3.5μM,スペルミジン濃度14.5μM,スペルミン濃度2.5μM)のポリアミン濃度においてブランク(水)と比較して、いずれも20%以上の有意な細胞賦活化作用が認められた。以上のことから、これらのポリアミンを含む植物抽出物及び/又はポリアミンを有効成分として含む植物抽出物は、優れた細胞賦活作用を有することが明らかとなり、これらを肌に適用することにより、極めて優れた効果を発揮し、紫外線曝露等により生じる皮膚のしわ、たるみ、くすみ、荒れ等を効果的に改善することができる。さらに、ヒト毛乳頭細胞のおいて優れた細胞賦活作用が確認されたことから、ストレス、ホルモンバランス、紫外線暴露により生じる毛髪形成阻害等をポリアミンは効果的に改善することができる。
【0095】
(実施例11)ダイズ胚芽由来とコムギ胚芽由来のポリアミンを含む植物抽出物及び/又はポリアミンを有効成分として含む植物抽出物によるコラーゲン産生能の評価
ダイズ胚芽由来のポリアミンを含む植物抽出物及び/又はポリアミンを有効成分として含む植物抽出物は実施例3に記載されている植物抽出物(ダイズ胚芽抽出物)を用いた。コムギ胚芽由来のポリアミンを含む植物抽出物及び/又はポリアミンを有効成分として含む植物抽出物は実施例4に記載されている植物抽出物(コムギ胚芽抽出物)を用いた。評価は、以下の手順で行った。正常ヒト皮膚線維芽細胞を1ウェル当たり1.0×105個となるように48穴マイクロプレートに播種した。播種培地には、ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)に1%のウシ胎児血清を添加したものを用いた。37℃、二酸化炭素濃度5vol%中にて24時間培養後、PBS(−)で2回洗浄した後、任意の濃度の試料を添加した無血清培地に交換し、さらに50時間同条件にて培養した。培養上清から、ヒト線維芽細胞が産生するI型プロコラーゲンC末端ペプチド(Procollagen typeI carboxyterminal propeptide:PIP)を、Procollagen type I C-peptide (PIP) EIA Kit (TaKaRa)で測定した。コラーゲン産生促進率は、標準品を上記ELISAキットにて測定し、その結果から検量線を作成、その検量線から試料添加時のコラーゲン産生量及び試料無添加時のコラーゲン産生量を求め、試料無添加時のコラーゲン産生量を100%として算出し、評価を行った。
【0096】
図9より明らかなように、ダイズ胚芽抽出物または小麦胚芽抽出物を添加した培地では、ヒト皮膚のコラーゲン産生活性(コラーゲン産生促進作用)が有意に高まることが認められた。濃度はポリアミン濃度で示した。特に、ダイズ胚芽抽出物では6.7μMのポリアミン濃度、コムギ胚芽抽出物では3.3μMのポリアミン濃度においてブランク(水)と比較して、いずれも20%以上の有意なコラーゲン産生促進作用が認められた。ポリアミンを含む植物抽出物及び/又はポリアミンを有効成分として含む植物抽出物を肌に適用することにより、繊維芽細胞の衰えが軽減されることでコラーゲンやヒアルロン酸の代謝回転速度の低下が小さくなり、極めて優れた効果を発揮し、紫外線曝露等により生じる皮膚のしわ、たるみ、くすみ、荒れ等を効果的に改善することができる。
【0097】
(実施例12)ダイズ胚芽由来とコムギ胚芽由来のポリアミンを含む植物抽出物及び/又はポリアミンを有効成分として含む植物抽出物によるコラーゲン産生能の評価
ダイズ胚芽由来のポリアミンを含む植物抽出物及び/又はポリアミンを有効成分として含む植物抽出物は実施例3に記載されている植物抽出物(ダイズ胚芽抽出物)を用いた。コムギ胚芽由来のポリアミンを含む植物抽出物及び/又はポリアミンを有効成分として含む植物抽出物は実施例4に記載されている植物抽出物(コムギ胚芽抽出物)を用いた。ポリアミンとの比較としてプトレシン、スペルミジン、スペルミンをそれぞれ単独で用いた。評価は、以下の手順で行った。正常ヒト皮膚線維芽細胞を1ウェル当たり1.0×105個となるように48穴マイクロプレートに播種した。播種培地には、ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)に1%のウシ胎児血清を添加したものを用いた。37℃、二酸化炭素濃度5vol%中にて24時間培養後、PBS(−)で2回洗浄した後、任意の濃度の試料を添加した無血清培地に交換し、さらに3日間、6日間同条件にて培養した。培養上清から、ヒト線維芽細胞が産生するI型プロコラーゲンC末端ペプチド(Procollagen typeI carboxyterminal propeptide:PIP)を、Procollagen type I C-peptide (PIP) EIA Kit (TaKaRa)で測定した。コラーゲン産生促進率は、標準品を上記ELISAキットにて測定し、その結果から検量線を作成、その検量線から試料添加時のコラーゲン産生量及び試料無添加時のコラーゲン産生量を求め、試料無添加時のコラーゲン産生量を100%として算出し、評価を行った。
【0098】
図10、図11より明らかなように、ダイズ胚芽抽出物または小麦胚芽抽出物を添加した培地では、ヒト皮膚のコラーゲン産生活性(コラーゲン産生促進作用)が有意に顕著に高まることが認められた。濃度はポリアミン濃度で示した。ダイズ胚芽抽出物では6.7μM、13.4μM、33.5μMのポリアミン濃度、コムギ胚芽抽出物では3.3μM、6.6μM、16.5μMのポリアミン濃度においてブランク(水)や各種ポリアミンと比較して、いずれも顕著なコラーゲン産生促進作用が認められた。ポリアミンを含む植物抽出物及び/又はポリアミンを有効成分として含む植物抽出物は各種ポリアミンに比べて明らかに優れた細胞外マトリックスやコラーゲンの産生作用を有することが確認された。ポリアミンを含む植物抽出物及び/又はポリアミンを有効成分として含む植物抽出物肌に適用することにより、繊維芽細胞の衰えが軽減し、コラーゲンの産生を促進してコラーゲン量を維持することができる。その結果、紫外線曝露等により生じる皮膚のしわ、たるみ、くすみ、荒れ等を効果的に改善することができる。
【0099】
(実施例13)ダイズ胚芽由来とコムギ胚芽由来のポリアミンを含む植物抽出物及び/又はポリアミンを有効成分として含む植物抽出物によるヒアルロン酸産生能の評価
ダイズ胚芽由来の植物抽出物は実施例3に記載されている植物抽出物(ダイズ胚芽抽出物)を用いた。コムギ胚芽由来の植物抽出物は実施例4に記載されている植物抽出物(コムギ胚芽抽出物)を用いた。ポリアミンとの比較としてプトレシン、スペルミジン、スペルミンをそれぞれ単独で用いた。評価は、以下の手順で行った。正常ヒト皮膚線維芽細胞を1ウェル当たり1.0×105個となるように48穴マイクロプレートに播種した。播種培地には、ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)に1%のウシ胎児血清を添加したものを用いた。37℃、二酸化炭素濃度5vol%中にて24時間培養後、PBS(−)で2回洗浄した後、任意のポリアミン濃度の試料を添加した無血清培地に交換し、さらに3日間同条件にて培養した。培養上清中のヒアルロン酸を測定した。尚プレート上の細胞を0.5% Triton-X100を含む細胞溶解液で溶解し回収後にタンパク質量を測定し(Bio Rad,プロテインアッセイキット)、細胞数の指標とした。ヒアルロン酸の測定は、正常ヒト皮膚線維芽細胞が産生するヒアルロン酸を、ヒアルロン酸プレート「中外」(富士レビオ社)を用いてHyaluronic acid binding protein(HABP)を用いたサンドイッチ法により測定した。ポリアミンや植物抽出物を添加していない試料(コントロール)のヒアルロン酸量を100とした場合の、ポリアミン、植物抽出物添加試料のヒアルロン酸量を産生率とした。
【0100】
図12より明らかなように、各ポリアミン、ダイズ胚芽抽出物又はコムギ胚芽抽出物を添加した培地では、ヒト皮膚のヒアルロン酸産生率が有意に高まることが認められた。各濃度はポリアミン濃度で示した。培養3日間では、ダイズ胚芽抽出物は6.7μM、13.4μM、33.5μMのポリアミン濃度、コムギ胚芽抽出物は3.3μM、6.6μM、16.5μMのポリアミン濃度においてコントロールや各種ポリアミンと比較して、いずれも高いヒアルロン酸産生促進作用が認められた。ポリアミンを含む植物抽出物及び/又はポリアミンを有効成分として含む植物抽出物は、ポリアミン以外の有効成分を含むことでポリアミンに比べて明らかに優れた細胞外マトリックスやヒアルロン酸の産生作用を有することが確認された。ポリアミンを含む植物抽出物及び/又はポリアミンを有効成分として含む植物抽出物を肌に適用することにより、繊維芽細胞の衰えが軽減し、ヒアルロ
ン酸の産生を促進してヒアルロン酸量を維持することができる。その結果、紫外線曝露等により生じる皮膚のしわ、たるみ、くすみ、荒れ等を効果的に改善することができる。
【0101】
(実施例14)美容液の製造
以下に示す組成の美容液を常法により製造した。コントロールとして、胚芽抽出物を含まない美容液も常法により製造した。
(組成) (重量%)
ソルビット 4.0
ジプロピレングリコール 6.0
ポリエチレングリコール 1500 5.0
POE(20)オレイルアルコールエーテル 0.5
ショ糖脂肪酸エステル 0.2
メチルセルロース 0.2
精製ダイズ胚芽抽出物(ポリアミン濃度7.4mM) 1.0
精製水 全体で100となる量
【0102】
(実施例15)乳液の製造
以下に示す組成の乳液を常法により製造した。コントロールとして、胚芽抽出物を含まない乳液も常法により製造した。
(組成) (重量%)
グリセリルエーテル 1.5
ショ糖脂肪酸エステル 1.5
モノステアリン酸ソルビタン 1.0
スクワラン 7.5
ジプロピレングリコール 5.0
精製ダイズ胚芽抽出物(ポリアミン濃度7.4mM) 1.0
精製水 全体で100となる量
【0103】
(実施例16)クリームの製造
以下に示す組成のクリームを常法により製造した。コントロールとして、胚芽抽出物を含まないクリームも常法により製造した。
(組成) (重量%)
プロピレングリコール 6.0
フタル酸ジブチル 19.0
ステアリン酸 5.0
モノステアリン酸グリセリン 5.0
モノステアリン酸ソルビタン 12.0
モノステアリン酸ポリエチレンソルビタン 38.0
エデト酸ナトリウム 0.03
精製ダイズ胚芽抽出物(ポリアミン濃度7.4mM) 1.0
精製水 全体で100となる量
【0104】
(実施例17)官能評価
実施例14〜16を用いて官能評価を行った。なお、胚芽抽出物を含まない比較例も同時に評価した。官能評価は、しわ、たるみ、くすみ等の症状の気になる40〜60歳のパネル20人を1群として実施例及び比較例をそれぞれ1日2回,3カ月間連続使用してもらい、3カ月後の肌状態についてアンケート調査をして行った。
【0105】
【表1】

【0106】
官能評価の結果として、各項目における評価者の数を表1に示した。胚芽抽出物を含まない比較例より実施例の方が、8割以上のパネルが皮膚のはり・つやが回復し、しわの軽減が認められたと回答しており、顕著な皮膚の症状の回復効果があることが示された。
【0107】
(実施例18)美容液の製造
以下に示す組成の美容液を常法により製造した。コントロールとして、胚芽抽出物を含まない美容液も常法により製造した。
(組成) (重量%)
ソルビット 4.0
ジプロピレングリコール 6.0
ポリエチレングリコール 1500 5.0
POE(20)オレイルアルコールエーテル 0.5
ショ糖脂肪酸エステル 0.2
メチルセルロース 0.2
精製コムギ胚芽抽出物(ポリアミン濃度10.25mM) 1.0
精製水 全体で100となる量
【0108】
(実施例19)乳液の製造
以下に示す組成の乳液を常法により製造した。コントロールとして、胚芽抽出物を含まない乳液も常法により製造した。
(組成) (重量%)
グリセリルエーテル 1.5
ショ糖脂肪酸エステル 1.5
モノステアリン酸ソルビタン 1.0
スクワラン 7.5
ジプロピレングリコール 5.0
精製コムギ胚芽抽出物(ポリアミン濃度10.25mM) 1.0
精製水 全体で100となる量
【0109】
(実施例20)クリームの製造
以下に示す組成のクリームを常法により製造した。コントロールとして、胚芽抽出物を含まないクリームも常法により製造した。
(組成) (重量%)
プロピレングリコール 6.0
フタル酸ジブチル 19.0
ステアリン酸 5.0
モノステアリン酸グリセリン 5.0
モノステアリン酸ソルビタン 12.0
モノステアリン酸ポリエチレンソルビタン 38.0
エデト酸ナトリウム 0.03
精製コムギ胚芽抽出物(ポリアミン濃度10.25mM) 1.0
精製水 全体で100となる量
【0110】
(実施例21)官能評価
実施例18〜20を用いて官能評価を行った。なお、胚芽抽出物を含まない比較例も同時に評価した。官能評価は、しわ、たるみ、くすみ等の症状の気になる40〜60歳のパネル20人を1群として実施例及び比較例をそれぞれ1日2回,3カ月間連続使用してもらい、3カ月後の肌状態についてアンケート調査をして行った。
【0111】
【表2】

【0112】
官能評価の結果として、各項目における評価者の数を表2に示した。胚芽抽出物を含まない比較例より実施例の方が、8割以上のパネルが皮膚のはり・つやが回復し、しわの軽減が認められたと回答しており、顕著な皮膚の症状の回復効果があることが示された。
【0113】
(実施例22)ダイズ胚芽由来とコムギ胚芽由来のポリアミンを含む植物抽出物及び/又はポリアミンを有効成分として含む植物抽出物によるコラーゲン産生能の評価
ダイズ胚芽由来のポリアミンを含む植物抽出物及び/又はポリアミンを有効成分として含む植物抽出物は実施例3に記載されている植物抽出物(ダイズ胚芽抽出物)を用いた。コムギ胚芽由来のポリアミンを含む植物抽出物及び/又はポリアミンを有効成分として含む植物抽出物は実施例4に記載されている植物抽出物(コムギ胚芽抽出物)を用いた。ポリアミンとの比較としてプトレシン、スペルミジン、スペルミンをそれぞれ単独で用いた。さらに市販品である大豆エキスを比較対照として用いた。評価は、以下の手順で行った。正常ヒト皮膚線維芽細胞を1ウェル当たり1.0×104個となるように48穴マイクロプレートに播種した。播種培地には、ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)に1%のウシ胎児血清を添加したものを用いた。37℃、二酸化炭素濃度5vol%中にて24時間培養後、PBS(−)で2回洗浄した後、任意の濃度の試料を添加した無血清培地に交換し、さらに3日間、6日間同条件にて培養した。培養上清から、ヒト線維芽細胞が産生するI型プロコラーゲンC末端ペプチド(Procollagen typeI carboxyterminal propeptide:PIP)を、Procollagen type I C-peptide (PIP) EIA Kit (TaKaRa)で測定した。コラーゲン産生促進率は、標準品を上記ELISAキットにて測定し、その結果から検量線を作成、その検量線から試料添加時のコラーゲン産生量及び試料無添加時のコラーゲン産生量を求め、試料無添加時のコラーゲン産生量を100%として算出し、評価を行った。
【0114】
図13、図14より明らかなように、大豆胚芽抽出物または小麦胚芽抽出物を添加した培地では、ヒト皮膚のコラーゲン産生活性(コラーゲン産生促進作用)が有意に高まることが認められた。濃度はポリアミン濃度で示した。ダイズ胚芽抽出物では12μM、24μMのポリアミン濃度、コムギ胚芽抽出物では6.3μM、12.6μMのポリアミン濃度においてブランク(水)や各種ポリアミンと比較して、いずれも顕著なコラーゲン産生促進作用が認められた。市販の大豆エキスは、エタノールなどの有機溶媒で抽出したエキスであり、ポリアミンがほとんど含まれていないことから、コラーゲン産生活性はダイズ胚芽抽出物に比べて極めて低くなった。大豆エキスでコラーゲン産生活性が低かった理由としては、プトレシン、スペルミジン、スペルミンを有効成分として含まず、加えて酸性条件下ではなくエタノール等の有機溶媒で抽出したためにポリアミン以外の有効な成分が含まれていないためであると考えている。ポリアミンを含む植物抽出物及び/又はポリアミンを有効成分として含む植物抽出物は各種ポリアミンに比べて明らかに優れた細胞外マトリックスやコラーゲンの産生作用を有することが確認された。ポリアミンを含む植物抽出物及び/又はポリアミンを有効成分として含む植物抽出物肌に適用することにより、繊維芽細胞の衰えが軽減し、コラーゲンの産生を促進してコラーゲン量を維持することができる。その結果、紫外線曝露等により生じる皮膚のしわ、たるみ、くすみ等を効果的に改善することができる。
【0115】
(実施例23)ダイズ胚芽由来とコムギ胚芽由来のポリアミンを含む植物抽出物及び/又はポリアミンを有効成分として含む植物抽出物によるコラーゲン産生能の評価
ダイズ胚芽由来のポリアミンを含む植物抽出物及び/又はポリアミンを有効成分として含む植物抽出物は実施例3に記載されている植物抽出物(ダイズ胚芽抽出物)を用いた。コムギ胚芽由来のポリアミンを含む植物抽出物及び/又はポリアミンを有効成分として含む植物抽出物は実施例4に記載されている植物抽出物(コムギ胚芽抽出物)を用いた。ポリアミンとの比較としてプトレシン、スペルミジン、スペルミンをそれぞれ単独で用いた。評価は、以下の手順で行った。正常ヒト皮膚線維芽細胞を1ウェル当たり1.0×105個となるように48穴マイクロプレートに播種した。播種培地には、ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)に1%のウシ胎児血清を添加したものを用いた。37℃、二酸化炭素濃度5vol%中にて24時間培養後、PBS(−)で2回洗浄した後、任意の濃度の試料を添加した無血清培地に交換し、さらに3日間、6日間同条件にて培養した。培養上清から、ヒト線維芽細胞が産生するI型プロコラーゲンC末端ペプチド(Procollagen typeI carboxyterminal propeptide:PIP)を、Procollagen type I C-peptide (PIP) EIA Kit (TaKaRa)で測定した。尚プレート上の細胞を0.5% Triton-X100を含む細胞溶解液で溶解し回収後にタンパク質量を測定し(Bio Rad,プロテインアッセイキット)、細胞数の指標とした。コラーゲン産生促進率は、標準品を上記ELISAキットにて測定し、その結果から検量線を作成、その検量線からタンパク質(細胞数)当たりの試料添加時のコラーゲン産生量及び試料無添加時のコラーゲン産生量を求め、試料無添加時のコラーゲン産生量を100%として算出し、評価を行った。
【0116】
図15、図16より明らかなように、大豆胚芽抽出物または小麦胚芽抽出物を添加した培地では、ヒト皮膚のコラーゲン産生活性(コラーゲン産生促進作用)が有意に高まることが認められた。濃度はポリアミン濃度で示した。特に培養6日間では、全ての胚芽抽出物においてブランク(水)、各ポリアミンと比較して、いずれも有意に高いコラーゲン産生促進作用が認められた。ポリアミンの生理作用として細胞増殖作用が知られているが、タンパク質量を指標とした細胞当たりで各種ポリアミンによりコラーゲン産生促進作用が示されたことから、プトレシン、スペルミジン、スペルミンの各ポリアミンを含んだ大豆胚芽抽出物や小麦胚芽抽出物には細胞増殖(細胞数増加)を伴わないコラーゲン産生促進(細胞外マトリックス産生促進)作用を有することが本結果から始めて見出された。言い換えれば、プトレシン、スペルミジン、スペルミンの各ポリアミンを含んだ大豆胚芽抽出物や小麦胚芽抽出物は1細胞当たりのコラーゲン産生量を顕著に高める作用を有することが明らかとなった。以上のことから、これらの各ポリアミンを含んだ大豆胚芽抽出物や小麦胚芽抽出物を肌に適用することにより、繊維芽細胞の衰えが軽減し、コラーゲンの産生を促進してコラーゲン量を維持することができる。その結果、紫外線曝露等により生じる皮膚のしわ、たるみ、くすみ等を効果的に改善することができる。
【0117】
(実施例24)大豆胚芽由来と小麦胚芽由来の植物抽出物の成分分析
ダイズ胚芽由来の抽出物は実施例3に記載されている植物抽出物(ダイズ胚芽抽出物)を用いた。コムギ胚芽由来の抽出物は実施例4に記載されている植物抽出物(コムギ胚芽抽出物)を用いた。成分として、エネルギー、水分、蛋白質、脂質、灰分、炭水化物、ナトリウム、糖類を分析した。分析は、(株)マシス食品安全分析センターで実施した。成分の分析結果を表3に示した。サンプルは水溶液のため水分が約85%含まれており、残りの約15%の固形成分は、炭水化物(約11〜12%)、タンパク質(約3%)、灰分(0.6〜0.8%)、脂質(約0.1%)であった。固形成分の内、炭水化物がほとんどを占めており、炭水化物の約70%が糖類であった。残りの30%は核酸、食物繊維等と思われる。糖類の内訳は、大豆胚芽抽出物は単糖のグルコースとフルクトース(60%)、二糖のマルトース(3%)、三糖のラフィノース、マルトトリオース(36%)、小麦胚芽抽出物はグルコースとフルクトース(59%)、ラクトース、スクロース(18%)、ラフィノース、マルトトリオース(7.4%)、残りが四糖以上のオリゴ糖であった。以上の結果から、特に大豆胚芽抽出物、小麦胚芽抽出物の成分の多くを占めている糖類(特に単糖・オリゴ糖とその組み合わせ)が賦活化、抗老化、細胞外マトリックス産生促進、コラーゲン産生促進、ヒアルロン酸産生促進、美肌効果に対する有効成分の一つであると考えている。大豆胚芽抽出物、小麦胚芽抽出物に共通して単糖、オリゴ糖等の有効成分が多く含まれるのは、大豆や小麦の種子や胚芽を塩酸等の酸性条件下で抽出処理したことが大きなポイントであると考えている。また、抽出の際にポリフェノール吸着剤を添加することで、賦活化、抗老化、細胞外マトリックス産生促進、コラーゲン産生促進、ヒアルロン産生促進に対してネガティブに作用するポリフェノール類等の植物抽出物中への混入を抑えることができと考えている。しかしながら、これにより本発明が何ら限定されるものではない。
【0118】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0119】
本発明により、植物由来の安全性に優れた賦活化作用、細胞外マトリックス産生促進作用が期待でき、ポリアミンを有効成分とした化粧品・医薬部外品(皮膚外用剤、浴用剤、育毛剤等)、飲食品、医薬品を提供することできることからも、産業界に大きく寄与することが期待される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物由来ポリアミン含有抽出物を有効成分として含有することを特徴とする細胞外マトリックス産生促進剤。
【請求項2】
細胞外マトリックス産生促進剤がコラーゲン産生促進剤であることを特徴とする請求項1に記載の細胞外マトリックス産生促進剤。
【請求項3】
植物由来ポリアミン含有抽出物を動物に接触させる工程を含むことを特徴とする細胞外マトリックス産生促進方法。
【請求項4】
植物由来ポリアミン含有抽出物を動物に接触させる工程を含むことを特徴とするコラーゲン産生促進方法。
【請求項5】
ポリアミンが、第一級アミノ基を2つ以上有する脂肪族炭化水素からなる群より選ばれたすくなくとも1種以上の化合物であることを特徴とする請求項4に記載のコラーゲン産生促進方法。
【請求項6】
植物由来ポリアミン含有抽出物が、大豆種子、大豆胚芽、大豆胚、大豆芽、小麦種子、小麦胚芽、小麦胚、小麦芽、豆乳及びオカラよりなる群から選ばれた少なくとも1種以上から得ることを特徴とする請求項4または5に記載のコラーゲン産生促進方法。
【請求項7】
ポリアミンが、1,3−ジアミノプロパン、プトレシン、カダベリン、カルジン、スペルミジン、ホモスペルミジン、アミノプロピルカダベリン、テルミン、スペルミン、テルモスペルミン、カナバルミン、アミノペンチルノルスペルミジン、N,N−ビス(アミノプロピル)カダベリン、ホモスペルミン、カルドペンタミン、ホモカルドペンタミン、カルドヘキサミン及びホモカルドヘキサミンよりなる群から選ばれた少なくとも1種以上の化合物であることを特徴とする請求項4〜6のいずれかに記載のコラーゲン産生促進方法。
【請求項8】
ポリアミンが、プトレシン、スペルミジン及びスペルミンからなる群から選ばれた少なくとも1種以上の化合物であることを特徴とする請求項4〜7のいずれかに記載のコラーゲン産生促進方法。
【請求項9】
細胞外マトリックス産生促進剤がヒアルロン酸産生促進剤であることを特徴とする請求項1に記載の細胞外マトリックス産生促進剤。
【請求項10】
植物由来ポリアミン含有抽出物を動物に接触させる工程を含むことを特徴とするヒアルロン酸産生促進方法。
【請求項11】
ポリアミンが、第一級アミノ基を2つ以上有する脂肪族炭化水素からなる群より選ばれたすくなくとも1種以上の化合物であることを特徴とする請求項10に記載のヒアルロン酸産生促進方法。
【請求項12】
植物由来ポリアミン含有抽出物が、大豆種子、大豆胚芽、大豆胚、大豆芽、小麦種子、小麦胚芽、小麦胚、小麦芽、豆乳及びオカラよりなる群から選ばれた少なくとも1種以上から得ることを特徴とする請求項10または11に記載のヒアルロン酸産生促進方法。
【請求項13】
ポリアミンが、1,3−ジアミノプロパン、プトレシン、カダベリン、カルジン、スペルミジン、ホモスペルミジン、アミノプロピルカダベリン、テルミン、スペルミン、テルモスペルミン、カナバルミン、アミノペンチルノルスペルミジン、N,N−ビス(アミノプロピル)カダベリン、ホモスペルミン、カルドペンタミン、ホモカルドペンタミン、カルドヘキサミン及びホモカルドヘキサミンよりなる群から選ばれた少なくとも1種以上の化合物であることを特徴とする請求項10〜12のいずれかに記載のヒアルロン酸産生促進方法。
【請求項14】
ポリアミンが、プトレシン、スペルミジン及びスペルミンからなる群から選ばれた少なくとも1種以上の化合物であることを特徴とする請求項10〜13のいずれかに記載のヒアルロン酸産生促進方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate


【公開番号】特開2012−46544(P2012−46544A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−259683(P2011−259683)
【出願日】平成23年11月29日(2011.11.29)
【分割の表示】特願2007−82260(P2007−82260)の分割
【原出願日】平成19年3月27日(2007.3.27)
【出願人】(000003160)東洋紡績株式会社 (3,622)
【Fターム(参考)】