説明

植物由来コーティング剤およびそのコーティング物

【課題】環境に配慮した植物由来のコーティング剤であって、高価な原料を必要とせず、しかも、耐加水分解性にも優れる、植物由来コーティング剤とそのコーティング物を提供する。
【解決手段】本発明にかかる植物由来コーティング剤は、水酸基および/またはカルボキシル基を有してその官能基数が3以上の多官能化合物ならびに乳酸を必須のモノマー成分とし特定のSP値を有する乳酸系重合体(A)と、水酸基および/またはカルボキシル基を含有し特定のSP値を有する樹脂(B)とを造膜成分として含み、前記乳酸系重合体(A)と樹脂(B)のSP値差(ΔSP)が0.2〜4.0の範囲であることを特徴とし、本発明にかかるコーティング物は前記コーティング剤をコーティングしてなることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は植物由来コーティング剤およびそのコーティング物に関し、詳しくは、植物由来の成分である乳酸を原料とするコーティング剤とそのコーティング物に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、プラスチックは生活と産業のあらゆる分野で使用されており、その生産量は莫大な量になっている。このようなプラスチックの大半は使用後に廃棄物として処理されているが、その廃棄処理の仕方によっては地球環境に悪影響を及ぼす場合がある。
例えば、焼却処理を行う場合には、焼却するために無駄なエネルギーが必要になり、また、焼却する際に発生する二酸化炭素により地球の温暖化が進行するおそれがあるとともに、廃棄物の原料組成によっては、焼却により塩化水素ガスが発生し、酸性雨の原因となる場合もある。そして、土中に廃棄を行う場合には、廃棄処理用地の確保が困難になってきている問題があるとともに、廃棄物が長期間にわたって分解せずに残留するため、自然環境を破壊したり土中の生態系を破壊したりするおそれもある。
【0003】
プラスチックを原料とするコーティング剤に関しても、使用後に不要になったコーティング物は、基材からコーティング膜を剥離した後、焼却したり土中に廃棄したりなどして処理されるのが一般的で、やはり、上述の問題があった。
そこで、上述の問題を生じる石油や石炭などの化石資源を原料とする従来のプラスチックに代わるものとして、天然素材のプラスチックが提案されており、例えば、ポリヒドロキシアルカン酸、ポリコハク酸アルキレン、多糖類などの植物由来の高分子が提案されている(非特許文献1参照。)。
より具体的な従来技術としては、例えば、以下に示す技術が提案されている。
【0004】
植物由来の原料として変性澱粉を用いた塗料が提案されている(例えば、特許文献1〜3参照。)。しかし、変性澱粉は脆性が高いために、屈曲などに弱く、傷が付き易いなどの欠点があるため、広範囲に使用することが出来ないばかりか、耐加水分解性などの長期安定性に乏しい。また、澱粉のアルキル化変性を行うための製造経費が高いという欠点がある。
ポリ乳酸のマクロモノマーとその重合体も提案されているが(特許文献4参照。)、このようなマクロモノマーは、環状ラクタイドを用いなければ高収率で得ることが困難であるため、変性澱粉と同様に高価格なものとなってしまう。
【0005】
塗料用樹脂組成物として、乳酸、ジカルボン酸類、グリコール類を共重合してなるポリ乳酸が提案されている(特許文献5参照。)。しかし、この技術では、十分な耐加水分解性を有する塗膜を得ることはできない。
ポリ乳酸を用いたその他の技術として、低温接着性に優れたポリ乳酸系樹脂コーティング剤(特許文献6参照。)や、ポリ乳酸エマルションを使用して、透明性、保存安定性および密着性に優れた包装フィルム用接着剤(特許文献7参照。)なども提案されているが、これらの方法では、可塑剤や乳化剤を通常よりも多く用いることが必要であり、硬度、耐傷付性などの塗膜物性が充分ではなく、また、耐加水分解性の問題についても、一切解決が図られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−224887
【特許文献2】特開2006−282960
【特許文献3】特開2008−13744
【特許文献4】特開平6−298921
【特許文献5】特開平8−3297
【特許文献6】特開2006−291000
【特許文献7】特開2008−50514
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】高分子学会編、「天然素材プラスチック」、初版、共立出版、2006年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、環境に配慮した植物由来のコーティング剤であって、高価な原料を必要とせず、しかも、耐加水分解性にも優れる、植物由来コーティング剤とそのコーティング物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記課題を解決するべく鋭意検討を行った。その結果、コーティング剤の造膜成分として、水酸基および/またはカルボキシル基を有してその官能基数が3以上の多官能化合物ならびに乳酸を必須のモノマー成分としSP値が10.0〜15.0である乳酸系重合体(A)を含有させるようにすれば、この乳酸系重合体(A)は低コストで簡易に得ることができるものであり、耐加水分解性にも優れたものとなることを見出すとともに、水酸基および/またはカルボキシル基を含有しSP値が9.5〜14.0である樹脂(B)を併用し、前記乳酸系重合体(A)のSP値と樹脂(B)のSP値との差(ΔSP)が0.2〜4.0の範囲となるように調整することで、耐加水分解性がより一層高まることを見出し、それを確認して、本発明を完成した。
【0010】
前記のごとき乳酸系重合体(A)が優れた耐加水分解性を与える理由については、この乳酸系重合体(A)が高度な分岐構造をとっているために、従来の乳酸系重合体のような線状構造と比べて立体障害が大きく、この立体障害によって加水分解の原因となる物質のエステル結合への接近が妨げられるからであると推測され、また、SP値が10.0〜15.0である乳酸系重合体(A)とSP値が9.5〜14.0である樹脂(B)とを、乳酸系重合体(A)のSP値と樹脂(B)のSP値との差(ΔSP)が0.2〜4.0の範囲となるように調整して併用することで耐加水分解性がさらに高まる理由については、コーティング剤の硬化時に、SP値が9.5〜14.0である樹脂(B)由来の撥水性成分がコーティング膜の表層に移動して(空気のSP値により近い値であるため)、樹脂(B)よりもSP値が高いために膜内部に保持される乳酸系重合体(A)由来の成分を保護するためと推測される。
【0011】
すなわち、本発明にかかる植物由来コーティング剤は、水酸基および/またはカルボキシル基を有してその官能基数が3以上の多官能化合物ならびに乳酸を必須のモノマー成分としSP値が10.0〜15.0である乳酸系重合体(A)と、水酸基および/またはカルボキシル基を含有しSP値が9.5〜14.0である樹脂(B)とを造膜成分として含み、前記乳酸系重合体(A)のSP値と樹脂(B)のSP値との差(ΔSP)が0.2〜4.0の範囲である、ことを特徴とする。
また、本発明にかかるコーティング物は、前記植物由来コーティング剤をコーティングしてなる、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、造膜成分として用いる乳酸系重合体(A)が、安価に入手可能な乳酸、多価アルコールや多価カルボン酸を必須のモノマー成分とするものであってその重合も簡易に行いうるものであるため、原料コストの低減が可能であり、また、乳酸系重合体(A)の必須モノマー成分として、乳酸との反応点となる水酸基および/またはカルボキシル基を有してその官能基数が3以上の多官能化合物を用いるとともに、前記乳酸系重合体(A)としてはSP値が10.0〜15.0であるものを用いて、これと水酸基および/またはカルボキシル基を有しSP値が9.5〜14.0である樹脂(B)とを、乳酸系重合体(A)のSP値と樹脂(B)のSP値との差(ΔSP)が0.2〜4.0の範囲となるようにして併用することにより、非常に優れた耐加水分解性を発揮する。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。本発明の範囲はこれらの説明に拘束されることはなく、以下の例示以外についても、本発明の趣旨を損なわない範囲で適宜変更実施し得る。
〔造膜成分〕
本発明にかかるコーティング剤は、造膜成分として、以下に詳述する乳酸系重合体(A)と樹脂(B)を必須に含む。
<乳酸系重合体(A)>
本発明における乳酸系重合体(A)は、水酸基および/またはカルボキシル基を有してその官能基数が3以上の多官能化合物ならびに乳酸を必須のモノマー成分としSP値が10.0〜15.0である。SP値については、樹脂(B)のSP値と併せて後述する。
【0014】
官能基数が3以上の多官能化合物を必須のモノマー成分とすることで、高度に分岐した乳酸系重合体となり、耐加水分解性に優れたものとなる。
前記多官能化合物としては、例えば、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、グリセリン、ポリグリセリン、キシリトールなどの分岐型アルコール類、ヒドロキシ(メタ)アクリレート含有アクリル共重合体などの多価アルコール、トリメリット酸などの芳香族カルボン酸類、(メタ)アクリル酸含有アクリル共重合体などの多価カルボン酸が挙げられ、さらに、ジメチロールプロパン酸、ジメチロールブタン酸などの分子内に水酸基とカルボキシル基を併せ持つ化合物も挙げられる。これらの化合物は、1種、または、2種以上併用することができる。
【0015】
上記特定の多官能化合物および乳酸以外のモノマー成分として、例えば、1,4−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオールなどのジアルコール類、アジピン酸、コハク酸などのジカルボン酸類、グリコール酸、4−ヒドロキシ酪酸、3−ヒドロキシ吉草酸、3−ヒドロキシヘキサン酸などの乳酸以外のヒドロキシアルカン酸などが挙げられる。
上記のように、本発明にかかる乳酸系重合体(A)のモノマー成分としては、官能基数が2つのモノマー成分を含んでいても良いのであるが、ヒドロキシアルカン酸以外のモノマー成分における平均官能基数が2.2〜30であることが好ましく、2.5〜10であることがより好ましい。2.2未満では十分な分岐構造が得られずに所望の耐加水分解性が得られないおそれがあるとともに、硬化剤との反応においては、架橋点となる各分岐鎖末端が少ないことで高い架橋密度が得られ難くなり耐溶剤性や耐アルカリ性などの塗膜物性が低下するおそれもある。30を超えると重合時の粘度が高くなるため工業的生産が困難となり、塗膜が脆くなってしまうおそれがある。
【0016】
また、工業的に安価に重合体を得るためには、ヒドロキシアルカン酸中に占める乳酸の割合は60重量%以上であることが好ましく、80重量%以上であることがより好ましい。
上記モノマー成分から乳酸系重合体(A)を得る際におけるヒドロキシアルカン酸と他の多官能化合物は、ヒドロキシアルカン酸以外の多官能化合物が有する水酸基またはカルボキシル基1molに対して、ヒドロキシアルカン酸が1〜50molの割合であることが好ましく、3〜30molの割合であることがより好ましい。1mol未満では、イソシアネート化合物による硬化やエポキシ化合物による硬化などを考慮すると植物化度に乏しくなるばかりか、架橋密度が上がりすぎて可撓性が低下するおそれがあり、50molを超えると逆に架橋密度が低くなりすぎて、硬度、耐溶剤性、耐加水分解性などの塗膜物性が低下するおそれがある。
【0017】
乳酸系重合体(A)は公知の方法によって得ることができる。例えば、上記モノマー成分を用いて、150〜220℃で生成する水分をキシレンなどと共沸して除去しながら反応を進めることで得ることができる。
<樹脂(B)>
本発明における樹脂(B)は、水酸基および/またはカルボキシル基を含有しSP値が9.5〜14.0であるものであり、乳酸系重合体(A)と併用することによって、特に耐加水分解性や、耐光性が向上する。SP値については、乳酸系重合体(A)のSP値と併せて後述する。
【0018】
本発明に適用できる上記樹脂(B)は、上記条件を満たすものであれば特に限定されず、例えば、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、アルキッド樹脂、エポキシ樹脂などが挙げられ、1種のみ、あるいは、2種以上を併用してもよい。中でも、水酸基および/またはカルボキシル基を含有するアクリル樹脂を用いることが好ましい。
本発明にかかる前記樹脂(B)は、水酸基価、酸価の合計が10〜260mgKOH/gであることが好ましく、40〜180mgKOH/gであることがより好ましい。260mgKOH/gを超えると架橋密度が上がりすぎて可撓性が低下するおそれがあり、10mgKOH/g未満では逆に架橋密度が低くなりすぎて、硬度、耐溶剤性、耐アルカリ性などの塗膜物性が低下するおそれがある。
【0019】
乳酸系重合体(A)の酸価が5mgKOH/g以下である場合、本発明にかかる前記樹脂(B)は乳酸系重合体(A)とともに水性溶剤に溶解または分散させるための材料として用いることができる。その場合の酸価は5mgKOH/g以上であることが好ましく、10mgKOH/g以上であることがより好ましい。5mgKOH/g未満では水性溶剤に安定に分散することが困難となる。
本発明にかかる前記樹脂(B)の数平均分子量は1000〜100000であることが好ましく、4000〜40000であることがより好ましい。1000未満では塗膜が脆くなるおそれがあり、100000を超えるとコーティング剤の粘度が上がりすぎて、スプレー塗装などには適さなくなるおそれがある。
【0020】
上述の通り、本発明にかかる前記樹脂(B)は、水酸基および/またはカルボキシル基を有するものであるが、具体的には、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸イソボルニル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸イソボルニルなどの(メタ)アクリル酸アルキルエステル、グリシジルメタクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチルメタクリレート、3−エチル−3−メタクリロイルオキシメチルオキセタンなどの分子中にオキシラン基やオキセタニル基と(メタ)アクリロイル基を有するオキシラン基含有アクリル単量体、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、アクリル酸4−ヒドロキシブチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸4−ヒドロキシブチルなどの分子中に水酸基と(メタ)アクリロイル基を有する水酸基含有アクリル単量体、アクリル酸、メタクリル酸、β−カルボキシエチルアクリレートなどの分子中にカルボキシル基と(メタ)アクリロイル基を有するカルボキシル基含有アクリル単量体、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシランなどの分子中にアルコキシシリル基と(メタ)アクリロイル基を有するアルコキシシリル基含有アクリル単量体などの1種または2種以上の公知のモノマー成分を(共)重合して得ることができる。また、本発明の効果を害しない範囲であれば、スチレンなどのビニル芳香族化合物などのアクリル系以外の他のモノマー成分を併用してもよい。
【0021】
<乳酸系重合体(A)および樹脂(B)のSP値>
本発明にかかる乳酸系重合体(A)のSP値は10.0〜15.0である。11.0〜13.5であることが好ましい。
また、本発明にかかる樹脂(B)のSP値は9.0〜14.0である。9.5〜13.5であることが好ましい。9.0未満であっても、14.0を超えるものであっても、十分な耐加水分解性を付与することが困難となる。
乳酸系重合体(A)のSP値と樹脂(B)のSP値との差(ΔSP)は、乳酸系重合体(A)のSP値から樹脂(B)のSP値を差引いて得られる値であり、本発明においては、このΔSPが0.2〜4.0である。0.5〜2.5であることが好ましい。前記ΔSPが0.2未満では樹脂(B)の塗膜表面への移行が抑えられるため十分な耐加水分解性、耐候性、耐酸性などが得られず、4.0を超えると相溶性が悪くなり塗膜が不透明となるおそれがある。例えば、乳酸系重合体(A)のSP値を11.5〜13.5とし、樹脂(B)のSP値を9.5〜11.0とすることが好ましい。
【0022】
なお、上記SP値(溶解性パラメーター)は濁点滴定によって測定することができ、具体的には、K.W.SUH、J.M.CORBETTの式(Journal of Applied Polymer Science,12,2359頁,1968年)に記載の下記式によって計算される値である。
SP値=(V1/2・δ+V1/2・δ)/(V1/2+V1/2
(式中、Vはn−ヘキサンの容積分率、Vは脱イオン水の容積分率、δはn−ヘキサンのSP値、δは脱イオン水のSP値を示す)
濁点滴定では、乾燥させた樹脂組成物(固形分)0.5gをアセトン10mlに溶解した中に、n−ヘキサンを徐々に加え、濁点での滴定量H(ml)を読み、同様にアセトン溶液中に脱イオン水を加えての濁点における滴定量D(ml)を読んで、これらを下記式に適用し、V、V、δ、δを算出する。なお、各溶剤のSP値はアセトン:9.75、n−ヘキサン:7.24、脱イオン水:23.43である。
【0023】
=H/(10+H)
=D/(10+D)
δ=9.75×10/(10+H)+7.24×H/(10+H)
δ=9.75×10/(10+D)+23.43×D/(10+D)
<硬化剤>
本発明にかかるコーティング剤は、通常、造膜成分中の水酸基および/またはカルボキシル基と反応可能な官能基を有する化合物を硬化剤として含む。このような硬化剤としては、例えば、以下に示すイソシアネート化合物、カルボジイミド化合物、エポキシ化合物などが挙げられる。
【0024】
(イソシアネート化合物)
イソシアネート化合物としては、分子中にイソシアネート基(−NCO)を2個以上有する化合物であれば特に限定されず、例えば、トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、メタキシリレンジイソシアネートなどの芳香族のもの;ヘキサメチレンジイソシアネートなどの脂肪族のもの;イソホロンジイソシアネートなどの脂環族のもの;その単量体およびそのビュレットタイプ、ヌレートタイプ、アダクトタイプなどの多量体などを挙げることができる。上記ポリイソシアネートの市販品としては、デュラネート24A−90PX(NCO:23.6%、旭化成社製)、スミジュールN−3200−90M(住友バイエルウレタン社製)、タケネートD165N−90X(三井武田ケミカル社製)、スミジュールN−3300、スミジュールN−3500(いずれも住友バイエルウレタン社製)、デュラネートTHA−100(旭化成社製)などを挙げることができる。また、水性コーティング剤用には、親水基をこれらに反応修飾した水分散型のポリイソシアネートを用いることができる。市販品としては、バイハイジュール305(バイエル社製)、デュラネートWB40−100(旭化成社製)などが挙げられる。
【0025】
イソシアネート化合物として、置換フェノール類、オキシム類、アセト酢酸アルキルエステル類、マロン酸アルキルエステル類、フタルイミド類、イミダゾール類、塩化水素、シアン化水素または亜硫酸水素ナトリウムによりイソシアネート基がブロック化されたブロックイソシアネート化合物を用いることもできる。その市販品としては、デュラネート17B−60PX(旭化成社製)やデュラネートTPA−B80E(旭化成社製)などが挙げられる。
(カルボジイミド化合物)
カルボジイミド化合物は、分子中にカルボジイミド基(−N=C=N−)を有する化合物であり、例えば、市販品として、カルボジライトV−05(日清紡社製)やカルボジライトV−02(日清紡社製)などが挙げられる。
【0026】
(エポキシ化合物)
エポキシ化合物としてはビスフェノールAのジグリシジルエーテルおよびそのオリゴマー、水素化ビスフェノールAのジグリシジルエーテルおよびそのオリゴマー、オルソフタル酸ジグリシジルエステル、イソフタル酸ジグリシジルエステル、テレフタル酸ジグリシジルエステル、p−オキシ安息香酸ジグリシジルエステル、テトラハイドロフタル酸ジグリシジルエステル、ヘキサハイドロフタル酸ジグリシジルエステル、コハク酸ジグリシジルエステル、アジピン酸ジグリシジルエステル、セバシン酸ジグリシジルエステル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテルおよびポリアルキレングルコールジグリシジルエーテル類、トリメリット酸トリグリシジルエステル、トリグリシジルイソシアヌレート、1,4−ジグリシジルオキシベンゼン、ジグリシジルプロピレン尿素、グリセロールトリグリシジルエーテル、トリメチロールエタントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル、グルセロールアルキレンオキサイド付加物のトリグリシジルエーテルなどを挙げることができる。
【0027】
<他の造膜成分>
本発明の効果を害しない範囲であれば、造膜成分として、上記乳酸系重合体(A)および樹脂(B)や硬化剤以外の成分を含んでいても良い。
そのような他の造膜成分としては、上記乳酸系重合体(A)および樹脂(B)や硬化剤以外のポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂、アルキッド樹脂などが挙げられる。
<造膜成分の配合>
乳酸系重合体(A)/樹脂(B)の配合比率は、重量基準で、95/5〜25/75であることが好ましく、90/10〜50/50であることがより好ましい。樹脂(B)が5未満では耐加水分解性、耐光性が不十分となるおそれがあり、75を超えると植物化度が低くなってしまう。
【0028】
硬化剤を配合する場合、その配合割合は、特に限定するわけではないが、例えば、造膜成分中の水酸基および/またはカルボキシル基の数(いずれかの官能基しか有しない場合は該官能基数、両方の官能基を有する場合はその合計官能基数)と、前記水酸基および/またはカルボキシル基と反応可能な硬化剤の官能基数が、70:30〜30:70の範囲となることが好ましく、60:40〜40:60となることがより好ましい。造膜成分中の水酸基および/またはカルボキシル基の数が相対的に過剰であると十分に架橋が起こらず耐加水分解性が低下するおそれがあり、前記水酸基および/またはカルボキシル基と反応可能な硬化剤の官能基数が相対的に過剰であると塗膜性能の低下を招くおそれがある。後述のように硬化剤としてのカルボジイミド化合物を加水分解抑止剤としても用いる場合に、意図的に前記範囲よりも硬化剤を過剰に配合するようにしても良い。
【0029】
また、上記乳酸系重合体(A)および樹脂(B)や硬化剤以外の成分を配合する場合、その割合は、造膜成分中、10重量%以下であることが好ましい。10重量%を超えると、本発明の効果が害されるおそれがある。
〔その他のコーティング剤成分〕
本発明にかかるコーティング剤は、加水分解抑止剤として、カルボジイミド化合物を含有していることが好ましい。
すなわち、カルボジイミド化合物は、コーティング剤中の乳酸系重合体(A)が加水分解を受けてカルボキシル基を生じた場合に、このカルボキシル基と反応することで、耐水性や耐アルカリ性などの塗膜性能の低下を抑制することができる。また、乳酸系重合体(A)が有する残存カルボキシル基や、乳酸系重合体(A)の副生成物としてコーティング剤中に含まれることのある乳酸オリゴマーのカルボキシル基と反応するなどして、耐水性や耐アルカリ性などの塗膜性能をさらに向上させることが可能となる。
【0030】
加水分解抑止剤としてのカルボジイミド化合物は、カルボジイミド基の平均官能基数が3以上で、末端にイソシアネート基を有するものが好ましい。カルボジイミド基の平均官能基数が3以上であることで、加水分解抑止剤としての効果が良好に得られ、末端にイソシアネート基を有するものであることで、水酸基とも相互作用して塗膜性能を安定化させる。
なお、造膜成分がカルボキシル基を有するものである場合には、上述のように、硬化剤としてカルボジイミド化合物を用いることができるが、その配合量を硬化剤として必要な量よりも過剰にしておくことで、硬化膜中の残存カルボジイミド化合物を加水分解抑止剤として利用することができる。
【0031】
本発明にかかるコーティング剤は、必要に応じて、さらに、従来公知の着色剤を含んでもよい。前記着色剤としては、例えば、天然色素、有機顔料、無機顔料、体質顔料、導電性顔料、メタリック顔料などが挙げられる。前記着色剤は、溶剤に分散させるものに限らず、溶解させるものであってもよい。
前記天然色素としては、例えば、カロチノイド系色素、フラボノイド系色素、フラビン系色素、キノン系色素、ポルフィリン系色素、ジケトン系色素、ベタシアニジン系色素などが挙げられる。前記カロチノイド系色素としては、例えば、カロチン、カロチナール、カプサンチン、リコピン、ビキシン、クロシン、カンタキサンチン、アナトーなどが挙げられる。前記フラボノイド系色素としては、例えば、シソニン、ラファニン、エノシアニンなどのアントシアニジン類;サフロールイエロー、ベニバナなどのカルコン類;ルチン、クエルセチンなどのフラボノール類;カカオ色素などのフラボン類などが挙げられる。前記フラビン系色素としては、例えば、リボフラビンなどが挙げられる。前記キノン系色素としては、例えば、ラッカイン酸、カルミン酸(コチニール)、ケルメス酸、アリザリンなどのアントラキノン類;シコニン、アルカニン、エキノクロームなどのナフトキノン類などが挙げられる。前記ポルフィリン系色素としては、例えば、クロロフィル、血色素などが挙げられる。前記ジケトン系色素としては、例えば、クルクミン(ターメリック)などが挙げられる。前記ベタシアニジン系色素としては、例えば、ベタニンなどが挙げられる。
【0032】
前記有機顔料としては、例えば、アゾレーキ系顔料、不溶性アゾ系顔料、縮合アゾ系顔料、フタロシアニン系顔料、インジゴ系顔料、ペリノン系顔料、ペリレン系顔料、フタロン系顔料、ジオキサジン系顔料、キナクリドン系顔料、イソインドリノン系顔料、ベンゾイミダゾロン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料、金属錯体顔料(フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、カルバゾールバイオレット、アントラピリミジンイエロー、フラバンスロンイエロー、イソインドリンイエロー、インダンスロンブルー、キナクリドンバイオレットなど)などが挙げられる。
前記無機顔料としては、例えば、黄色酸化鉄、ベンガラ、カーボンブラック、二酸化チタン、酸化クロム、クロム酸鉛、黄鉛、紺青などが挙げられる。
【0033】
前記体質顔料としては、例えば、タルク、炭酸カルシウム、沈降性硫酸バリウム、シリカなどが挙げられる。
前記導電性顔料としては、例えば、導電性カーボン、アンチモンドープの酸化スズをコートしたウイスカーなどが挙げられる。
前記メタリック顔料としては、例えば、アルミニウムフレーク、銅ブロンズフレーク、雲母状酸化鉄、マイカフレーク、金属酸化鉄を被覆した雲母状酸化鉄、金属酸化鉄を被覆したマイカフレークなどを挙げることができる。
前記着色剤は、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0034】
前記着色剤の配合割合は、特に制限されないが、例えば、前記本発明の水酸基含有樹脂100重量部に対して、0.001〜400重量部の範囲であり、好ましくは、0.01〜200重量部の範囲である。
本発明にかかるコーティング剤は、必要に応じて、さらに、従来公知の添加剤を含んでもよい。前記添加剤としては、例えば、表面調整剤、流動性調整剤、ハジキ防止剤、垂れ止め防止剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、紫外線安定剤、艶消し剤、艶出し剤、防腐剤、硬化促進剤、硬化触媒、擦り傷防止剤、消泡剤などが挙げられる。
本発明にかかるコーティング剤は、例えば、上述した造膜成分やその他のコーティング剤材料を、溶剤に溶解もしくは分散して、液状で使用することができる。
【0035】
本発明にかかるコーティング剤は、造膜成分が有機溶剤に溶解または分散している有機溶剤型コーティング剤であっても良いし、造膜成分が水性溶剤に溶解または分散している水性コーティング剤であっても良い。
前記有機溶剤としては、例えば、脂肪族系溶剤、芳香族系溶剤、エステル系溶剤、エーテル系溶剤、ケトン系溶剤、アルコール系溶剤などが挙げられる。前記有機溶剤は、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。また、前記有機溶剤は、有機化合物のみからなる厳密な意味での有機溶剤である必要はなく、一般的に有機溶剤として認識されるものであれば、例えば、少量の水を含むものであっても良い。
【0036】
前記水性溶剤を用いる場合は、例えば、造膜成分中にカルボキシル基が存在する場合に、アルカリ(例えば、アミン化合物など)によって中和することにより、水に対して良好に溶解または分散するので、水性コーティング剤として優れたものとなる。前記水性溶剤は、一般的に水性溶剤として認識されるものであれば良く、水のみからなるものであっても、少量の有機溶剤(例えば、エステル系溶剤、エーテル系溶剤、ケトン系溶剤、アルコール系溶剤などの親水性有機溶剤)をさらに含むものであっても良い。
このような液状のコーティング剤は、例えば、ローラー塗装、刷毛塗装、浸漬塗装、スプレー塗装(例えば、非静電塗装、静電塗装など)、カーテンフロー塗装などにより塗装することができる。
【0037】
本発明にかかるコーティング剤は、固形状の粉体コーティング剤として使用することも可能である。前記粉体コーティング剤として使用する場合には、数平均粒子径が、1〜150μmの範囲であることが好ましく、より好ましくは、2〜100μmの範囲である。粉体塗装方法としては、流動浸漬塗装、静電粉体塗装、コロナ、摩擦帯電塗装などが挙げられる。
本発明にかかるコーティング剤は、例えば、熱風乾燥機、赤外乾燥機、遠赤外乾燥機などを用いて熱硬化させることができる。被膜の厚みは、特に制限されないが、例えば、1〜200μmの範囲であり、好ましくは、2〜150μmの範囲である。
【0038】
〔コーティング剤の用途〕
本発明にかかるコーティング剤が塗装される被コーティング物としては、特に制限されず、例えば、プラスチック、金属、ガラス、陶器、木材、植物、岩、砂などが挙げられるが、本発明にかかるコーティング剤は、特に、ポリ乳酸系の基材に対して密着性に優れるため、これらを被コーティング物とすることが好ましい。
本発明のコーティング剤は、例えば、上記のごとき被コーティング物上に塗布されて、接着剤の用途、粘着剤の用途、粘着−接着移行型接着剤の用途、プラスチックや金属用の塗料用途、紙用インキの用途、水性インクの用途などに好ましく使用できる。特に、塗料としての用途に優れ、前記塗料としては、単に表面保護や表面装飾効果を目的としたものに限らず、導電性塗料、絶縁塗料、防火塗料などのその他の目的を持たせた特殊塗料をも含む。
【実施例】
【0039】
以下に、実施例および比較例によって本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。以下では、便宜上、「重量%」を「%」と記すことがある。

〔乳酸系重合体(A)の合成例〕
<合成例1>
温度調節計、撹拌翼、窒素導入口、ディーンスタークトラップ、還流管を備えた1Lのセパラブルフラスコに、トリメチロールプロパン22.6g、L−乳酸(ピューラック社製)727.4g、トルエン50g、p−トルエンスルホン酸0.15gを仕込んだ。また、ディーンスタークトラップにはトルエンを上限まで満たした。窒素気流下、系内の温度を140℃に上昇させて1時間保持し、さらに175℃に昇温して5時間、縮合反応を継続し、樹脂酸価が4mgKOH/g以下(樹脂固形分)になったのを確認して冷却を開始した。冷却後、酢酸ブチルを添加して、固形分率を80%に調節した。
【0040】
得られた乳酸系重合体(A)の乳酸平均重合度は16、SP値は11.9、水酸基価は46.9mgKOH/gであった。
<合成例2>
合成例1と同様の反応器に、ペンタエリスリトール64.7g、L−乳酸(ピューラック社製)685.3g、トルエン50g、p−トルエンスルホン酸0.15gを仕込んだ。また、ディーンスタークトラップにはトルエンを上限まで満たした。窒素気流下、系内の温度を140℃に上昇させて1時間保持し、さらに175℃に昇温して5時間、縮合反応を継続し、樹脂酸価が4mgKOH/g以下(樹脂固形分)になったのを確認して冷却を開始した。冷却後、酢酸ブチルを添加して、固形分率を80%に調節した。
【0041】
得られた乳酸系重合体(A)の乳酸平均重合度は4、SP値は12.4、水酸基価は174.2mgKOH/gであった。
<合成例3>
合成例1と同様の反応器に、ソルビトール65.9g、L−乳酸(ピューラック社製)684.1g、トルエン50g、p−トルエンスルホン酸0.15gを仕込んだ。また、ディーンスタークトラップにはトルエンを上限まで満たした。窒素気流下、系内の温度を140℃に上昇させて1時間保持し、さらに175℃に昇温して5時間、縮合反応を継続し、樹脂酸価が4mgKOH/g以下(樹脂固形分)になったのを確認して冷却を開始した。冷却後、酢酸ブチルを添加して、固形分率を80%に調節した。
【0042】
得られた乳酸系重合体(A)の乳酸平均重合度は10、SP値は13.2、水酸基価は198.7mgKOH/gであった。
<合成例4>
合成例1と同様の反応器に、トリメリット酸15.9g、L−乳酸(ピューラック社製)734.1g、トルエン50g、p−トルエンスルホン酸0.15gを仕込んだ。また、ディーンスタークトラップにはトルエンを上限まで満たした。窒素気流下、系内の温度を140℃に上昇させて1時間保持し、さらに175℃に昇温して7時間、縮合反応を継続し、樹脂酸価が22mgKOH/g(樹脂固形分)以下になったのを確認して冷却を開始した。冷却後、酢酸ブチルを添加して、固形分率を80%に調節した。
【0043】
得られた乳酸系重合体(A)の乳酸平均重合度は36、SP値は11.5、酸価は21.1mgKOH/gであった。
<合成例5>
合成例1と同様の反応器に、ジメチロールプロパン酸82.8g、L−乳酸(ピューラック社製)667.2g、トルエン50g、p−トルエンスルホン酸0.15gを仕込んだ。また、ディーンスタークトラップにはトルエンを上限まで満たした。窒素気流下、系内の温度を140℃に上昇させて1時間保持し、さらに175℃に昇温して5時間、縮合反応を継続し、樹脂酸価が57mgKOH/g以下(樹脂固形分)になったのを確認して冷却を開始した。冷却後、プロピレングリコールモノメチルエーチルを添加して、固形分率を80%に調節した。
【0044】
得られた乳酸系重合体(A)の乳酸平均重合度は4、SP値は13.2、水酸基価は111.3mgKOH/g、酸価は55.7mgKOH/gであった。

〔比較用乳酸系重合体(A’)の合成例〕
<合成例6>
合成例1と同様の反応器に、1,4−ブタンジオール15.3g、L−乳酸(ピューラック社製)734.7g、トルエン50g、p−トルエンスルホン酸0.15gを仕込んだ。また、ディーンスタークトラップにはトルエンを上限まで満たした。窒素気流下、系内の温度を140℃に上昇させて1時間保持し、さらに175℃に昇温して5時間、縮合反応を継続し、樹脂酸価が4mgKOH/g以下(樹脂固形分)になったのを確認して冷却を開始した。冷却後、酢酸ブチルを添加して、固形分率を80%に調節した。
【0045】
得られた比較用乳酸系重合体(A’)の乳酸平均重合度は24、SP値は11.5、水酸基価は31.6mgKOH/gであった。

〔変性澱粉の合成例〕
<合成例7>
ハイアミロースコーンスターチ100g(無水物換算)を水に懸濁し、40重量%濃度のスラリーを調製した。これを、52℃にセットした恒温槽中で撹拌しながら加温し、15重量%濃度の塩酸を、前記ハイアミロースコーンスターチに対して15重量%添加した。前記塩酸の添加開始から4時間、52℃で撹拌しながら保持し、酸処理を実施した。その後、前記スラリーを30℃まで氷冷し、2重量%濃度の水酸化ナトリウム溶液でpH6.5〜7に中和した。これを、ヌッチェで脱水し、ハイアミロースコーンスターチ固形分の5倍量の50重量%濃度のエタノール溶液で懸濁させて洗浄した。この洗浄を2回実施して、得られたウェットケーキを30℃の温風乾燥機で一晩乾燥させた。このようにして得られた重量平均分子量約15000のハイアミロースコーンスターチ80gをジメチルスルホキシド(DMSO)640gに懸濁させ、オイルバス中で撹拌しながら90℃に加温し、90℃で30分間保持することにより糊化させた。この溶液に重炭酸ソーダ64gを添加し、次いで前記ハイアミロースコーンスターチの糖残基1モルに対して、1モルのラウリン酸ビニルを添加し、90℃で1時間反応させた。次いで、前記ハイアミロースコーンスターチの糖残基1モルに対して、2.5モルの酢酸ビニルを添加し、同様に90℃で1時間反応させた。前記反応液を、大量の水に懸濁し、生成物を析出させ、前記生成物をミキサーで粉砕してヌッチェで回収した。この回収物を、40℃で一晩真空乾燥させた。このようにして重量平均分子量が約20000、ラウリン酸エステル基置換度が0.60、アセチル基置換度が1.60の変性澱粉を得た。
【0046】
得られた変性澱粉のSP値は10.6、水酸基価は130mgKOH/gであった。

〔樹脂(B)の合成例〕
<合成例8>
温度調節計、撹拌翼、窒素導入口、滴下ロート、還流管を備えた1Lのセパラブルフラスコに、酢酸ブチル230gを仕込み、120℃に昇温した。ここに、スチレン128.0g、メチルメタクリレート20.0g、n−ブチルアクリレート24.0g、n−ブチルメタクリレート144.0g、ヒドロキシエチルメタクリレート40.0g、プラクセルFM−2(ダイセル化学工業社製)40.0g、アゾビスイソブチロニトリル8.0gの混合液を3時間かけて滴下した。滴下終了後1時間経過した後、アゾビスイソブチロニトリル0.8g、酢酸ブチル37.0gの混合液を1時間かけて滴下した。滴下終了後1時間経過した後、冷却を開始した。
【0047】
得られた樹脂(B)(アクリル樹脂)の重量平均分子量は8720、SP値は9.9、水酸基価は63mgKOH/gであった。
<合成例9>
合成例8と同様の反応器に酢酸ブチル230gを仕込み、110℃に昇温した。ここに、スチレン16.0g、メチルメタクリレート132.0g、n−ブチルアクリレート24.0g、n−ブチルメタクリレート96.0g、メタクリル酸4.0g、ヒドロキシエチルメタクリレート68.0g、プラクセルFM−2(ダイセル化学工業社製)60.0g、アゾビスイソブチロニトリル8.0gの混合液を3時間かけて滴下した。滴下終了後1時間経過した後、アゾビスイソブチロニトリル0.8g、酢酸ブチル37.0gの混合液を1時間かけて滴下した。滴下終了後1時間経過した後、冷却を開始した。
【0048】
得られた樹脂(B)(アクリル樹脂)の重量平均分子量は14340、SP値は10.9、水酸基価は97mgKOH/g、酸価は6.5mgKOH/gであった。
<合成例10>
合成例8と同様の反応器に酢酸ブチル230gを仕込み、100℃に昇温した。ここに2−エチルヘキシルアクリレート24g、エチルアクリレート144g、メタクリル酸32.0g、ヒドロキシエチルメタクリレート112.0g、プラクセルFM−2(ダイセル化学工業社製)88.0g、アゾビスイソブチロニトリル8.0gの混合液を3時間かけて滴下した。滴下終了後1時間経過した後、アゾビスイソブチロニトリル0.8g、酢酸ブチル37.0gの混合液を1時間かけて滴下した。滴下終了後1時間経過した後、冷却を開始した。
【0049】
得られた樹脂(B)(アクリル樹脂)の重量平均分子量は21160、SP値は12.2、水酸基価は155mgKOH/g、酸価は52mgKOH/gであった。
<合成例11>
合成例8と同様の反応器にキシレン347.8g、T4692(ポリカーボネートジオール、旭化成社製)400.0gを仕込み、80℃に昇温した。ここにジブチル錫ラウレート0.8gを加え、ついで、ヘキサメチレンジイソシアネート67.3gを加えて、2時間ウレタン化反応を継続した後、ペンタエリスリトール54.5gを加えて、さらに4時間反応を継続した。
【0050】
得られたカーボネート結合とウレタン結合を有する樹脂(B)の重量平均分子量は2860、SP値は11.6、水酸基価は129mgKOH/gであった。
<合成例12>
合成例1と同様の反応器にキシレン233.4g、P−3050(ポリエステルジオール、クラレ社製)300.6gを仕込み、100℃に昇温した。ここにジブチル錫ラウレート0.6gを加え、ついで、イソホロンジイソシアネート33.3gを加えて、2時間ウレタン化反応を継続した後、1,9−ノナンジオール16.0gを加えて、さらに4時間反応を継続した。
【0051】
得られたエステル結合とウレタン結合を有する樹脂(B)の重量平均分子量は9450、SP値は11.4、水酸基価は16.1mgKOH/gであった。
<合成例13>
合成例8と同様の反応器に酢酸ブチル230gを仕込み、100℃に昇温した。ここに2−エチルヘキシルアクリレート32.0g、エチルアクリレート144.0g、メタクリル酸24.0g、ヒドロキシエチルメタクリレート112.0g、プラクセルFM−2(ダイセル化学工業社製)88.0g、アゾビスイソブチロニトリル8.0gの混合液を3時間かけて滴下した。滴下終了後1時間経過した後、アゾビスイソブチロニトリル0.8g、酢酸ブチル37.0gの混合液を1時間かけて滴下した。滴下終了後1時間経過した後、冷却を開始した。
【0052】
得られた樹脂(B)(アクリル樹脂)の重量平均分子量は20100、SP値は11.9であった。

〔コーティング剤とそのコーティング物〕
<実施例1>
合成例1の乳酸系重合体(A)(SP値=11.9)35.0g、合成例8の樹脂(B)(アクリル樹脂、SP値=9.9)20.0g、デュラネートTPA−100(旭化成社製)7.0g、酢酸ブチル94.7g、L−7604(東レダウコーニング社製)0.25g、ジブチル錫ラウレート0.05gを均一透明になるまで混合し、ABS基材上に膜厚30±3μmになるようにスプレー塗装した。
【0053】
塗装後、10分間室温で放置した後、塗膜温度を100℃まで加熱し、この温度を30分間維持することにより乾燥し、実施例1の試験板を作製した。
塗膜評価は乾燥終了後24時間経過した後に実施した。
<実施例2〜4>
それぞれ下記に示す配合に変更したこと以外は実施例1と同様にして実施例2〜4の試験板を作製した。塗膜評価は、乾燥終了から24時間経過後に実施した。
(実施例2)
合成例2の乳酸系重合体(A)(SP値=12.4) 40.0 g
合成例8の樹脂(B)(アクリル樹脂、SP値=9.9) 13.3 g
デュラネートTPA−100(旭化成社製) 20.6 g
酢酸ブチル 128.2 g
L−7604(東レダウコーニング社製) 0.25g
ジブチル錫ラウレート 0.05g
(実施例3)
合成例3の乳酸系重合体(A)(SP値=13.2) 40.0 g
合成例9の樹脂(B)(アクリル樹脂、SP値=10.9) 13.3 g
デュラネートTPA−100(旭化成社製) 24.2 g
酢酸ブチル 136.5 g
L−7604(東レダウコーニング社製) 0.25g
ジブチル錫ラウレート 0.05g
(実施例4)
合成例4の乳酸系重合体(A)(SP値=11.5) 20.0 g
合成例9の樹脂(B)(アクリル樹脂、SP値=10.9) 40.0 g
デュラネートTPA−100(旭化成社製) 7.9 g
カルボジライトV−02(日清紡社製) 3.2 g
酢酸ブチル 91.8 g
L−7604(東レダウコーニング社製) 0.25g
ジブチル錫ラウレート 0.05g
<実施例5>
合成例5の乳酸系重合体(A)(SP値=13.3)46.7g、合成例10の樹脂(B)(アクリル樹脂、SP値=12.2)15.0g、トリエチルアミン3.4g、ジブチル錫ラウレート0.05g、ポリフローKL−245(共栄社化学社製)0.50g、サーフィノール104PA(エアープロダクツ社製)0.30gを均質になるまで混合し、そこに、脱イオン水256.3gを混合して樹脂の水分散体を得た。ここに、バイハイヂュール305(住化バイエルウレタン社製)19.3g、カルボジライトV−02(日清紡社製)14.0gを均質になるまで混合し、ABS基材上に膜厚30±3μmになるようにスプレー塗装した。塗装後、10分間室温で放置した後、100℃で40分間乾燥し、実施例5の試験板を作製した。
【0054】
塗膜評価は乾燥終了後24時間経過した後に実施した。
<実施例6>
ABS基材上に1液ウレタン塗料「R333ベース黒色塗料(日本ビー・ケミカル社製)」を膜厚15±3μmとなるようにスプレー塗装した。10分間放置後、実施例1のクリヤー塗料を膜厚30±3μmになるように塗装し、10分間室温にて放置した後、塗膜温度を120℃に加熱し、この温度を30分間維持することにより、着色層の上にクリヤー塗膜を形成し、実施例6の試験板を作製した。
塗膜評価は乾燥終了後24時間経過した後に実施した。
【0055】
<実施例7>
ABS基材上に1液ウレタン塗料「R333ベース黒色塗料(日本ビー・ケミカル社製)」を膜厚15±3μmとなるようにスプレー塗装した。10分間放置後、実施例2のクリヤー塗料を膜厚30±3μmになるように塗装し、10分間室温にて放置した後、塗膜温度を120℃に加熱し、この温度を30分間維持することにより、着色層の上にクリヤー塗膜を形成し、実施例7の試験板を作製した。
塗膜評価は乾燥終了後24時間経過した後に実施した。
<実施例8>
合成例2の乳酸系重合体(A)(SP値=12.4)40.0g、合成例9の樹脂(B)(アクリル樹脂、SP値=10.9)13.3g、モナーク1300(キャボットスペシャリティケミカルズ社製)2.0g、酢酸ブチル64.7gからなる黒色顔料分散体に、ジブチル錫ラウレート0.05g、キシレン20.0g、BYKETOL SPECIAL(ビックケミー・ジャパン社製)0.02gの混合液を加え、さらに、デュラネート24A−100(旭化成社製)21.2gを加えて均質化し、ABS基材上に膜厚30±3μmになるようにスプレー塗装した。
【0056】
塗装後、10分間室温で放置した後、塗膜温度を100℃まで加熱し、この温度を30分間維持することにより乾燥し、実施例8の試験板を作製した。
塗膜評価は乾燥終了後24時間経過した後に実施した。
<実施例9>
合成例3の乳酸系重合体(A)(SP値=13.2)30.0g、合成例9の樹脂(B)(アクリル樹脂、SP値=10.9)26.7g、モナーク1300(キャボットスペシャリティケミカルズ社製)2.0g、酢酸ブチル61.3gからなる黒色顔料分散体に、ジブチル錫ラウレート0.05g、キシレン20.0g、BYKETOL SPECIAL(ビックケミー・ジャパン社製)0.02gの混合液を加え、さらに、デュラネート24A−100(旭化成社製)21.1gを加えて均質化し、実施例8と同様に試験板を作製した。
【0057】
<実施例10>
合成例1の乳酸系重合体(A)(SP値=11.9)35.0g、合成例11のカーボネート結合とウレタン結合を有する樹脂(B)(SP値=11.6)20.0g、デュラネート24A−100(旭化成社製)9.5g、酢酸ブチル98.6g、L−7604(東レダウコーニング社製)0.25g、ジブチル錫ラウレート0.05gを均一透明になるまで混合し、ABS基材上に膜厚30±3μmになるようにスプレー塗装した。
塗装後、10分間室温で放置した後、塗膜温度を100℃まで加熱し、この温度を30分間維持することにより乾燥し、実施例10の試験板を作製した。
【0058】
塗膜評価は乾燥終了後24時間経過した後に実施した。
<実施例11>
合成例2の乳酸系重合体(A)(SP値=12.4)40.0g、合成例12のエステル結合とウレタン結合を有する樹脂(B)(SP値=11.4)10.0g、デュラネート24A−100(旭化成社製)19.0g、酢酸ブチル119.8g、L−7604(東レダウコーニング社製)0.25g、ジブチル錫ラウレート0.05gを均一透明になるまで混合し、ABS基材上に膜厚30±3μmになるようにスプレー塗装した。
塗装後、10分間室温で放置した後、塗膜温度を100℃まで加熱し、この温度を30分間維持することにより乾燥し、実施例11の試験板を作製した。
【0059】
塗膜評価は乾燥終了後24時間経過した後に実施した。
<比較例1〜4>
それぞれ下記に示す配合に変更したこと以外は実施例1と同様にして比較例1〜4の試験板を作製した。塗膜評価は、乾燥終了から24時間経過後に実施した。
(比較例1)
合成例6の比較用乳酸系重合体(A’)(SP値=11.5) 25.0 g
合成例9の樹脂(B)(アクリル樹脂、SP値=10.9) 33.3 g
デュラネートTPA−100(旭化成社製) 8.6 g
酢酸ブチル 94.1 g
L−7604(東レダウコーニング社製) 0.25g
ジブチル錫ラウレート 0.05g
(比較例2)
合成例7の変性澱粉(SP値=10.6) 40.0 g
デュラネートTPA−100(旭化成社製) 17.4 g
酢酸ブチル 133.8 g
L−7604(東レダウコーニング社製) 0.25g
ジブチル錫ラウレート 0.05g
(比較例3)
合成例2の乳酸系重合体(A)(SP値=12.4) 66.7 g
デュラネートTPA−100(旭化成社製) 23.3 g
酢酸ブチル 111.0 g
L−7604(東レダウコーニング社製) 0.25g
ジブチル錫ラウレート 0.05g
(比較例4)
合成例1の乳酸系重合体(A)(SP値=11.9) 35.0 g
合成例13の樹脂(B)(アクリル樹脂、SP値=11.9) 20.0 g
デュラネートTPA−100(旭化成社製) 10.8 g
酢酸ブチル 103.5 g
L−7604(東レダウコーニング社製) 0.50g
ジブチル錫ラウレート 0.05g

〔評価とその結果〕
上記実施例1〜11、比較例1〜4にかかる各試験板について、下記のとおりの試験を行った。結果を表1に示す。
【0060】
【表1】

【0061】
<外観>
塗膜表面を目視して、以下の基準により評価する。
○:フクレ、割れ、ピンホールなどの塗膜表面異常が認められない。
×:フクレ、割れ、ピンホールなどの塗膜表面異常が認められる。
<60°光沢>
JIS−K−5600−4−7に準拠し、鏡面光沢度計を用いて60°光沢度を測定することにより評価する。
○:60°光沢度が85以上
×:60°光沢度が85未満
<初期密着性>
JIS−K−5600−5−6に準拠して評価する。具体的には、カッターナイフで塗膜上に2mmの碁盤目100個を作り、その上にセロハン粘着テープを完全に付着させ、テープの一方の端を持ち上げて上方に剥がす。この剥離動作を同一箇所で3回実施し、1桝目内で塗膜が面積比50%以上剥がれた正方桝目の個数を基準に以下のとおり評価する。
【0062】
○:0個
×:1個以上
<耐湿性>
JIS−K−5600−7−12に準拠して評価する。具体的には、温度50±2℃、湿度98±2%の雰囲気中に240時間放置し、1時間以内に塗膜表面の観察および碁盤目密着性試験を行う。碁盤目密着性試験はカッターナイフで塗膜上に2mmの碁盤目100個を作り、その上にセロハン粘着テープを完全に付着させ、テープの一方の端を持ち上げて上方に剥がす。この剥離動作を同一箇所で3回実施し、1桝目内で塗膜が面積比50%以上剥がれた正方桝目の個数で示す。
【0063】
○:白化、フクレなどの塗膜表面異常が認められず、かつ、剥離箇所0個である。
×:白化、フクレなどの塗膜表面異常が認められるか、または、剥離箇所が1個以上である。
<耐アルカリ性>
JIS−K−5600−6−1に準拠して評価する。具体的には、塗膜表面に円筒型のリングを取り付け、そこへ0.1Nの水酸化ナトリウム水溶液5mLを加えて、ガラス板で蓋をし、55℃で4時間放置する。その後水洗し、塗膜の表面を観察する。
○:白化、フクレなどの塗膜表面異常が認められない。
【0064】
×:白化、フクレなどの塗膜表面異常が認められる。
<耐水性>
JIS−K−5600−6−1に準拠して評価する。具体的には、塗膜表面に円筒型のリングを取り付け、そこへ蒸留水5mLを加えて、ガラス板で蓋をし、55℃で4時間放置する。その後水洗し、塗膜の表面を観察する。
○:白化、フクレなどの塗膜表面異常が認められない。
×:白化、フクレなどの塗膜表面異常が認められる。
<耐酸性>
JIS−K−5600−6−1に準拠して評価する。具体的には、塗膜表面に円筒型のリングを取り付け、そこへ0.1Nの硫酸5mLを加えて、ガラス板で蓋をし、室温で24時間放置する。その後水洗し、塗膜の表面を観察する。
【0065】
○:汚れ、フクレなどの塗膜表面異常が認められない。
×:汚れ、フクレなどの塗膜表面異常が認められる。
〔考察〕
上記表1に示す結果から、実施例1〜11のいずれについてみても、すべての評価項目が○となっていることが分かる。すなわち、植物化度の高いコーティング剤でありながら、極めて高い耐加水分解性を発揮しているとともに、外観、光沢、初期密着性といった他の塗膜性能についても良好な結果を与えることが確認された。
比較例1は、官能基数が2つである1,4−ブタンジオールをモノマー成分として用いた合成例6の比較用乳酸系重合体(A’)を用いており、この比較用乳酸系重合体(A’)は分岐構造を持たないので、耐加水分解性が不十分であり、耐湿性、耐アルカリ性、耐水性、耐酸性が低い。
【0066】
比較例2は、乳酸系重合体(A)と樹脂(B)を用いず、代わりに変性澱粉を用いたものであるが、比較例1と同様に、耐湿性、耐アルカリ性、耐水性、耐酸性が低い。
比較例3は、実施例2と同様の合成例2の乳酸系重合体(A)を用いているが、樹脂(B)を用いていないため、比較例1と同様に、耐湿性、耐アルカリ性、耐水性、耐酸性が低く、さらに、初期密着性も低くなってしまっている。
比較例4は、乳酸系重合体(A)と樹脂(B)との間でSP値に差がないので(ΔSP=0)、耐湿性、耐アルカリ性、耐水性、耐酸性が低い。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明は、例えば、コーティング剤が用いられる種々の分野において、優れた塗膜性能を有しながら環境負荷の少ないコーティング剤およびそのコーティング物として利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水酸基および/またはカルボキシル基を有してその官能基数が3以上の多官能化合物ならびに乳酸を必須のモノマー成分としSP値が10.0〜15.0である乳酸系重合体(A)と、水酸基および/またはカルボキシル基を含有しSP値が9.5〜14.0である樹脂(B)とを造膜成分として含み、前記乳酸系重合体(A)のSP値と樹脂(B)のSP値との差(ΔSP)が0.2〜4.0の範囲である、植物由来コーティング剤。
【請求項2】
前記乳酸系重合体(A)/樹脂(B)の配合比率が、重量基準で、95/5〜25/75である、請求項1に記載の植物由来コーティング剤。
【請求項3】
造膜成分中の水酸基および/またはカルボキシル基と反応可能な官能基を有する化合物を硬化剤として含む、請求項1または2に記載の植物由来コーティング剤。
【請求項4】
カルボジイミド化合物を加水分解抑止剤として含む、請求項1から3までのいずれかに記載の植物由来コーティング剤。
【請求項5】
造膜成分が有機溶剤に溶解または分散している有機溶剤型コーティング剤である、請求項1から4までのいずれかに記載の植物由来コーティング剤。
【請求項6】
造膜成分が水性溶剤に溶解または分散している水性コーティング剤である、請求項1から4までのいずれかに記載の植物由来コーティング剤。
【請求項7】
塗料である、請求項1から6までのいずれかに記載の植物由来コーティング剤。
【請求項8】
請求項1から7までのいずれかに記載の植物由来コーティング剤をコーティングしてなる、コーティング物。

【公開番号】特開2010−248478(P2010−248478A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−36206(P2010−36206)
【出願日】平成22年2月22日(2010.2.22)
【出願人】(593135125)日本ビー・ケミカル株式会社 (52)
【出願人】(504255685)国立大学法人京都工芸繊維大学 (203)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】