説明

植物由来化粧シート

【課題】耐傷つき性、耐衝撃性に優れ、またキッチンなど多湿環境下においても十分な耐久性を備えており、表面の光沢が高く意匠性に優れ、さらに植物由来度が高く地球温暖化の抑制効果が高い、植物由来化粧シートを提供すること。
【解決手段】着色熱可塑性樹脂層上に少なくとも絵柄層と透明熱可塑性樹脂層を有してなる化粧シートにおいて、前記着色熱可塑性樹脂層は植物原料由来の熱可塑性樹脂を70重量%以上含み、前記透明熱可塑性樹脂層は植物原料由来の熱可塑性樹脂を30重量%以上含む2軸延伸ポリトリメチレンテレフタレートフィルムよりなることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は建築内装材、建具の表面、家電品の表面材等に用いられる化粧シートに関するものであり、木質ボード類、無機系ボード類、金属板等に貼り合わせて化粧板として用いられるものである。特にキッチンなどに用いることの多い表面の光沢性の高い化粧シートに関する発明である。
【背景技術】
【0002】
近年、塩化ビニル製化粧シートに替わる化粧シートとしてオレフィン系樹脂を使用した化粧シートが数多く提案されている。塩化ビニル樹脂を使用しないことにより焼却時の有毒ガス等の発生は無くなるが、オレフィン系樹脂を使用した化粧シートは石油由来の原料により重合されているため、二酸化炭素排出量は塩化ビニル製化粧シートに対して同等なレベルであり、近年注目されている地球温暖化に対する抑制効果は期待できなかった。
【0003】
また、オレフィン系樹脂を使用した化粧シートは表面の光沢性の高い化粧シートには、延伸したフィルムを使用しても光沢が十分でなく意匠性に劣る欠点を有していた。
【0004】
そこで、二酸化炭素排出量の削減に大きな効果のある植物由来樹脂として主にポリ乳酸を使用したものが提案されるようになってきた。また2軸延伸フィルムを使用することで表面光沢の高い化粧シートを作ることも可能である。
【0005】
しかし、ポリ乳酸は耐衝撃性が悪く、使用時に割れやクラックが入りやすいほか、耐加水分解性が悪く、高温多湿下での使用も想定しなくてはならない化粧シートにおいては用途が著しく限定されてしまい、普及には至っていない。ポリ乳酸末端のカルボキシル基をカルボジイミドやエポキシと反応させて加水分解を抑制する手法が知られており実用化されているが、これらの処理により透明性が阻害されるため、透明性を必要とする層への使用は出来なかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平2−128843号公報
【特許文献2】特開平4−83664号公報
【特許文献3】特開平6−1881号公報
【特許文献4】特開平6−198831号公報
【特許文献5】特開平9−328562号公報
【特許文献6】特許第4127570号
【特許文献7】特許第3900321号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は前記問題点を解決するためになされたものであり、その課題とするところは、耐傷つき性、耐衝撃性に優れ、またキッチンなど多湿環境下においても十分な耐久性を備えており、表面の光沢が高く意匠性に優れ、さらに植物由来度が高く地球温暖化の抑制効果が高い、植物由来化粧シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は前記課題を解決したものであり、すなわちその請求項1記載の発明は、着色熱可塑性樹脂層上に少なくとも絵柄層と透明熱可塑性樹脂層を有してなる化粧シートにおいて、前記着色熱可塑性樹脂層は植物原料由来の熱可塑性樹脂を70重量%以上含み、前記透明熱可塑性樹脂層は植物原料由来の熱可塑性樹脂を30重量%以上含む2軸延伸ポリトリメチレンテレフタレートフィルムよりなることを特徴とする植物由来化粧シートである。
【0009】
また、請求項2記載の発明は、前記着色熱可塑性樹脂層が、2軸延伸されたフィルムよりなることを特徴とする請求項1記載の植物由来化粧シートである。
【発明の効果】
【0010】
請求項1記載の発明により、着色熱可塑性樹脂層と透明熱可塑性樹脂層の植物由来度を限定して化粧シート全体での植物由来度を50%以上に保ちつつ、透明熱可塑性樹脂層に2軸延伸定ポリトリメチレンテレフタレートフィルムを用いることで表面光沢を有し、表面の耐傷付き性を有し、かつ高温高湿度下でも耐久性を有する植物由来化粧シートを得ることが可能となった。
【0011】
またその請求項2に記載の発明により、着色熱可塑性樹脂層を2軸延伸のシートとすることでさらに表面の耐久性に優れた植物由来化粧シートとすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の植物由来化粧シートの一実施例の断面の構造を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
図1に本発明の植物由来化粧シートの一実施例の断面の構造を示す。着色熱可塑性樹脂層1の上に絵柄層2、適宜設ける接着剤層3を介して透明熱可塑性樹脂層3を有してなる。
【0014】
本発明における着色熱可塑性樹脂層1としては、植物原料由来の熱可塑性樹脂を70重量%以上含むものを用いる。植物原料由来の熱可塑性樹脂が70重量%より少ないと、後述する透明熱可塑性樹脂層とあわせて化粧シート全体で植物原料由来度50%以上を達成できない。
【0015】
着色熱可塑性樹脂層1の層厚としては50μm〜100μmが好適であり、70μmが最適である。厚みが50μm未満では印刷適性が低下したり、着色による隠蔽性が低下したりする。厚みが100μmを越えると化粧シートとしての加工性が低下する。
【0016】
着色熱可塑性樹脂1には、植物原料由来の熱可塑性樹脂の他にに着色剤としての顔料、染料を添加し、また必要に応じて無機フィラー、熱安定剤、酸中和剤、帯電防止剤、滑剤、造核剤、難燃剤、ブロッキング防止剤等が適宜添加可能である。着色剤については公知の材料が使用でき、特には酸化チタン、酸化鉄等の無機顔料が多く用いられる。
【0017】
前記植物原料由来の熱可塑性樹脂としては、特に規定されるものではないが、特に高い表面傷付き性や植物由来度を必要とする場合はポリ乳酸を使用することが望ましい。ポリ乳酸は一般的に植物由来材料由来のL−乳酸を重合して製造されるため、植物由来度が高い着色フィルムを作ることが可能で、またポリ乳酸は一般的に使用されるオレフィン系樹脂に対して剛性が高く、平滑なフィルムを製膜することが可能なため、化粧シートの表面光沢度や耐傷付き性を高めることができる。前記ポリ乳酸には、耐加水分解性を高めるために、末端カルボキシル基をカルボジイミドやエポキシに反応させて封鎖したものを使うことが望ましい。
【0018】
また前記着色熱可塑性樹脂層1に含まれる植物原料由来の熱可塑性プラスチックは2軸延伸することで、さらに剛性や平滑度が高まるため化粧シートの表面光沢度や耐傷付き性を向上させることができる。また、熱をかけたときの挙動が、後述する絵柄層2を介して積層される透明熱可塑性樹脂層4に用いる2軸延伸トリメチレンテレフタレートに近く、化粧シートの反りやラミネート強度の低下が少なくなる。
【0019】
着色熱可塑性樹脂層1の製造方法としては、特に限定されるものではないが、Tダイによるキャスト成形、カレンダー成形、インフレーション成形等が良く用いられる。特に2軸延伸されたものとする場合は、Tダイによる押出製膜後加熱延伸するのが一般的である。
【0020】
絵柄層2としては、通常印刷インキによって形成される。インキバインダーとしては硝化綿、セルロース、塩化ビニル酢酸ビニル共重合体、ポリビニルブチラール、ポリウレタン、アクリル、ポリエステル系等の単独もしくは各変性物の中から適宜選定すればよい。これらは水性、溶剤系、エマルジョンタイプのいずれでも問題なく、また1液タイプでも硬化剤を使用した2液タイプでも任意に選定可能である。さらに紫外線や電子線等の照射によりインキを硬化させることも可能である。中でも最も一般的な方法は溶剤系のポリエステル−ウレタン−ウレアインキをグラビア印刷にて印刷する方法である。これらバインダー以外には通常のインキに含まれている顔料、染料等の着色剤、体質顔料、溶剤、各種添加剤が添加されている。特によく用いられる顔料には縮合アゾ、不溶性アゾ、キナクリドン、イソインドリン、アンスラキノン、イミダゾロン、コバルト、フタロシアニン、カーボン、酸化チタン、酸化鉄、雲母等のパール顔料等がある。
【0021】
適宜設ける接着剤層3は、層間の接着力向上のためのものであり、用いる接着剤は接着方法によって好適なものを選択して適宜決定すればよく、特に限定するものではない。具体的にはドライラミネート接着剤、感熱接着剤、感圧接着剤又は電離放射線硬化型接着剤等が挙げられる。
【0022】
さらに接着剤層3を設ける表面には、コロナ処理又はオゾン処理等の適宜の表面活性化処理を施しておいてもよい。特に、押し出しラミネート法により透明熱可塑性樹脂層を積層する場合には、ラミネート面に接着性樹脂を共押し出し積層することにより、接着性の向上を図ることもできる。
【0023】
本発明における透明熱可塑性樹脂層4としては、植物原料由来の熱可塑性樹脂が30重量%以上であり、2軸延伸したポリトリメチレンテレフタレートフィルムよりなるものが用いられる。植物原料由来の熱可塑性樹脂が30重量%より少ないと、後述する透明熱可塑性樹脂層とあわせて化粧シート全体で植物原料由来度50%以上を達成できない。
【0024】
透明熱可塑性樹脂層4の層厚としては20μm〜100μmが好適であり、50μmが最適である。厚みが20μm未満になると絵柄層2を保護する役割を果たせなくなり、100μmを越えるとなると化粧シートとしての加工性が低下する。
【0025】
透明熱可塑性樹脂層4の2軸延伸の延伸倍率については、特に規定されるものではないが、流れ方向、幅方向ともに延伸倍率を2.0倍〜5.0倍の範囲にすることが望ましい。延伸倍率が2.0倍を下回ると配向結晶に対してラメラ結晶の比率が高まり、透明性が阻害される。また延伸倍率が5.0倍を超えるとラミネート時の加熱による熱収縮が大きくなり、ラミネート強度の低下が発生しやすくなる。
【0026】
透明熱可塑性樹脂層4に用いるポリトリメチレンテレフタレートについては、植物原料由来の熱可塑性樹脂を30重量%以上含むものを用いる。ポリトリメチレンテレフタレートの植物原料由来度は現在はポリトリメチレンテレフタレートの原料である1,3−プロパンジオールの製法に起因しており、使用できる材料や植物由来度は限られている。具体的には1,3−プロパンジオールの原料としてコーンスターチを用いた澱粉バイオ法が米デュポン社により開発商品化されており、これを原料としたポリトリメチレンテレフタレートを用いることができる。
【0027】
透明熱可塑性樹脂層4の製造方法としては、特に限定されるものではないが、Tダイによる押出製膜後に加熱延伸するのが一般的である
【実施例1】
【0028】
着色熱可塑性樹脂層1として厚み80μmの無延伸ポリ乳酸製着色フィルム(リケンテクノス(株)製)用い、この表面にコロナ処理を施した。そしてこのコロナ処理をした表面に、グラビア印刷法によりアクリルウレタン系インキを用いて乾燥後の塗布厚が1g/mとなるように木目模様の印刷を施して絵柄層2とした。
【0029】
透明熱可塑性樹脂層4として、植物由来樹脂である米デュポン社製「ソロナ」を用いて、これを延伸倍率が流れ方向と幅方向ともに3倍となるように2軸延伸処理を行い、厚み50μmの2軸延伸ポリトリメチレンテレフタレートフィルムを作成した。そしてこの表面にコロナ処理を施し、このコロナ処理を施した表面と前記絵柄層2の面とを、接着剤層3としてドライラミネート接着剤(三井武田ポリウレタン(株)製「タケラックA520」「タケネートA50」)を用いて乾燥後の塗布厚が2g/mとなるようにしてドライラミネートして、化粧シートを得た。
【実施例2】
【0030】
着色熱可塑性樹脂1として厚み80μmの耐加水分解処理を施した2軸延伸ポリ乳酸着色フィルム「エコロージュ」(三菱樹脂(株)製)を用いた以外は実施例1と同様にして化粧シートを得た。
【0031】
<比較例1>
着色熱可塑性樹脂層1として厚み80μmの無延伸ポリプロピレン製着色フィルム(リケンテクノス(株)製)を用い、透明熱可塑性樹脂層4として厚み50μmの無延伸ポリプロピレン製透明フィルム(リケンテクノス(株)製)を用いた実施例1と同様にして化粧シートを得た。
【0032】
<比較例2>
透明熱可塑性樹脂層4として厚み80μmの耐加水分解処理を施した2軸延伸ポリ乳酸透明フィルム「エコロージュ」(三菱樹脂(株)製)を用いた以外は比較例1と同様にして化粧シートを得た。
【0033】
以上のようにして得た実施例1,2、比較例1,2の化粧シートの性能を以下の試験奉納により評価した。
【0034】
<表面光沢>
堀場製作所(株)製「グロスチェッカーIG320」を用い、JIS K5600−4−7にて光沢度を測定し、70以上を○とした。
【0035】
<鉛筆硬度>
YOSHIMITSU SEIKI社製「C221A」を用い、JIS K5600−5−4にて鉛筆硬度を測定し、F以上を○とした。
【0036】
<植物由来度>
原料の植物由来度から計算によって求めた。50重量%以上を○とした。
【0037】
<耐湿熱性>
化粧シートの裏面にエポキシ系接着剤を1g/mになるようにコートし、厚み1mmのアルミ板に貼り付けた。これを60℃×90%RH 1000時間放置したのち、サンプルに25mm幅で切り込みをカッターナイフで付けて透明熱可塑性樹脂層4とアルミ板を引張り試験機の治具でチャックして、50mm/minの引張速度で180度ラミネート剥離強度を測定し、10N/25mm以上を○とした。
以上の結果を表1に示す。
【0038】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明の植物由来化粧シートは、キッチン等特に耐湿熱性が必要で表面光沢度の高い化粧シートが好まれる分野において利用可能である。
【符号の説明】
【0040】
1…着色熱可塑性樹脂層
2…絵柄層
3…接着剤層
4…透明熱可塑性樹脂層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
着色熱可塑性樹脂層上に少なくとも絵柄層と透明熱可塑性樹脂層を有してなる化粧シートにおいて、前記着色熱可塑性樹脂層は植物原料由来の熱可塑性樹脂を70重量%以上含み、前記透明熱可塑性樹脂層は植物原料由来の熱可塑性樹脂を30重量%以上含む2軸延伸ポリトリメチレンテレフタレートフィルムよりなることを特徴とする植物由来化粧シート。
【請求項2】
前記着色熱可塑性樹脂層が、2軸延伸されたフィルムよりなることを特徴とする請求項1記載の植物由来化粧シート。



【図1】
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【公開番号】特開2010−234572(P2010−234572A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−83214(P2009−83214)
【出願日】平成21年3月30日(2009.3.30)
【出願人】(593173840)株式会社トッパン・コスモ (243)
【Fターム(参考)】