説明

植物由来成分を有するポリエステル樹脂組成物

【課題】本発明の目的は、高い生物起源物質含有率を示し、耐熱性に優れたポリエステル樹脂組成物を提供することにある。
【解決手段】ポリエチレンテレフタレート樹脂50〜99質量部、および下記式(1)の構成単位よりなる植物由来成分を有するポリエステル樹脂1〜50質量部からなり、
(i)融点(Tm)が240〜300℃
(ii)ガラス転移温度(Tg)60〜100℃
であることを特徴とするポリエステル樹脂組成物。
【化1】


(上記式中、Rは炭素数2〜8の脂肪族基、R、Rはそれぞれ独立にH、OH、OCH、OCのいずれかである。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車部品、電気・電子機器部品、機械部品などとして有用なポリエステル樹脂組成物に関する。更に詳しくは生物起源物質から誘導され得る部分を含有し、耐熱性が良好なポリエステル樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
テレフタル酸とエチレングリコールより得られるポリエチレンテレフタレート(以下「PET」と称することがある)樹脂は、成形時の透明性、ガスバリア性、耐熱性および機械的強度に優れた性質を有することから、例えば包装用や磁気テープ用などのフィルムやシート、中空成形品であるボトル、その他エンジニアリングプラスチック成形品等多くの分野に用いられている。
【0003】
一般的にポリエチレンテレフタレート樹脂は石油資源から得られる原料を用いて製造されるが、現在、石油資源の枯渇および二酸化炭素など温室効果ガスによる地球温暖化が懸念されており、植物などの生物起源物質から得られる原料を用いたポリマーが求められている。現在、そのようなポリマーとして、ポリ乳酸等の種々の脂肪族バイオポリマーが検討されているが、耐熱性や結晶性が不十分であり使用の制限がある。そこで、耐熱性や結晶性の改善を図るために糖質や木質から製造可能な芳香族ヒドロキシカルボン酸原料を用いた芳香族バイオポリマーの検討がなされている。
【0004】
上記のような芳香族ヒドロキシカルボン酸原料としては、例えば、下記式(A)
【化1】

に示した4−ヒドロキシ−3−メトキシ安息香酸(本明細書では以下「バニリン酸」と呼称することもある)、
また、下記式(B)
【化2】

に示した4−ヒドロキシ−3、5−ジメトキシ安息香酸(本明細書では以下「シリンガ酸」と呼称することもある)が挙げられる。共に木質由来物質であるリグニンから得られ、例えばバニリン酸はリグニンをアルカリ中で酸化分解して得られたバニリンを変換することにより得られる。また、バニリン酸は糖質からの発酵によって得ることも可能である。
【0005】
これまで、上記化合物を含む芳香族ヒドロキシカルボン酸の中でも、バニリン酸ポリマーが検討されてきたが、バニリン酸の単重合体では融点が非常に高すぎて利用が困難であった。
【0006】
そこで、融点を降下させるため、下記式(2)の4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−メトキシ安息香酸のように
【化3】

バニリン酸などのヒドロキシ安息香酸のフェノール性ヒドロキシル基をヒドロキシアルキルエーテル化したモノマー化合物を重縮合させたポリエステル(以下、ホモポリエステルと称することがある)が検討されてきた(特許文献1、2、3、非特許文献1参照)。しかし、ホモポリエステルは結晶性が高いことから、成型などの操作性の悪さなど樹脂としての利用技術が確立されていないという問題があった。以上のことから、耐熱性と生物起源物質含有率の全てが高いポリエステル樹脂は得られていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特公昭34−10793号公報
【特許文献2】特公昭35−17345号公報
【特許文献3】特公昭36−17198号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】“Holz als Roh−und Werkstoff”,(ドイツ)、Springer−Verlag(シュプリンガー・フェアラーク)、1981年,第39巻,p.107−112
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、高い生物起源物質含有率を示し、耐熱性に優れたポリエステル樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上記課題に鑑み鋭意検討し、バニリン酸などのヒドロキシ安息香酸のフェノール性ヒドロキシル基をヒドロキシアルキルエーテル化したモノマー化合物を重縮合させたポリエステルを用いて、ポリエチレンテレフタレートとの組成比を検討することにより従来技術より結晶性を抑え、成形性の良くなる組成比を見出した。その結果、高い生物起源物質含有率を示し、耐熱性に優れたポリエステル樹脂を得る方法を見出し、本発明を完成させた。本発明の要旨を以下に示す。
【0011】
1. ポリエチレンテレフタレート樹脂50〜99質量部、および下記式(1)の構成単位よりなる植物由来成分を有するポリエステル樹脂1〜50質量部からなり、
(i)融点(Tm)が240〜300℃
(ii)ガラス転移温度(Tg)60〜100℃
であることを特徴とするポリエステル樹脂組成物。
【化4】

(上記式中、Rは炭素数2〜8の脂肪族基、R、Rはそれぞれ独立にH、OH、OCH、OCのいずれかである。)
2. ASTM D6866 10に準拠して測定された生物起源物質含有率が1〜50%である上記1.項に記載のポリエステル樹脂組成物。
3. 上記1.項の式(1)で表されるポリエステル構成単位が下記式(2)で表される4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−メトキシ安息香酸由来のポリエステル構成単位であることを特徴とする上記1.項または2.項に記載のポリエステル樹脂組成物。
【化5】

【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、高い生物起源物質含有率を示し、かつ耐熱性に優れたポリエステル樹脂組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明を実施するための形態につき詳細に説明する。尚、本発明の趣旨に合致する限り他の実施の形態も本発明の範疇に属し得ることは言うまでもない。
本発明のポリエステル樹脂組成物は、ポリエチレンテレフタレート樹脂50〜99質量部、前記式(1)の構成単位よりなる植物由来成分を有するポリエステル樹脂1〜50質量部からなるポリエステル樹脂組成物である。ポリエチレンテレフタレート樹脂を50部未満、前記式(1)の構成単位よりなる植物由来成分を有するポリエステル樹脂を50質量部超過の量にて含有する樹脂組成物は、結晶性が高すぎて成型加工などの操作性が悪い。
【0014】
本発明のポリエステル樹脂組成物は、その融点が240℃〜300℃であり、好ましくは250℃〜300℃であり、より好ましくは250℃〜280℃である。融点が300℃を超えると成形時の熱安定性が悪くなる。
本発明のポリエステル樹脂組成物は、ガラス転移温度(Tg)が60℃〜100℃であり、好ましくは70℃〜90℃である。ガラス転移温度が60℃未満だと耐熱性が劣り、100℃を超えると成型性が悪くなる。
また、本発明のポリエステル樹脂組成物は、その5%質量減少温度が350℃以上であり、より好ましくは380℃以上である。5%質量減少温度が350℃未満であると、溶融成形時でのポリマー分解が顕著になり、成型性が悪くなる。
【0015】
本発明のポリエステル樹脂組成物は前記式(1)の構成単位よりなる植物由来成分を有するポリエステル樹脂を含んでおり、前記式(1)におけるR、Rのうち一方が水素、もう一方がメトキシ基のもの、又はR、Rの双方がメトキシ基のものが好ましく、Rについては炭素数2〜4の脂肪族基から選ばれる1種類以上のものが好ましい。本発明のポリエステル樹脂組成物として、特に好ましくは、前記式(2)で表される4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−メトキシ安息香酸由来の構成単位よりなるポリエステル樹脂のみを含むものである。
【0016】
本発明のポリエステル樹脂組成物について、前記式(1)の構成単位よりなる植物由来成分を有するポリエステル樹脂0.06gを1,1,2,2−テトラクロロエタンとp−クロロフェノールとの質量比8:5の混合液10mLに溶解した溶液の35℃における還元粘度が0.50〜1.00dL/gであると好ましい。還元粘度が0.50より低くなると成形品に十分な機械強度を持たせることが困難となる。
本発明のポリエステル樹脂組成物は、ASTM D6866 10に準拠して測定された生物起源物質含有率が1〜50%であると好ましく、5%〜40%であるとより好ましい。
【0017】
本発明のポリエステル樹脂組成物に含まれる前記式(1)の構成単位よりなる植物由来成分を有するポリエステル樹脂は、下記式(3)で表されるモノマー化合物から製造することができ、製造方法としては溶融重合法が好ましい。
【0018】
【化6】

(上記式中、Rは炭素数2〜8の脂肪族基であり、R、Rはそれぞれ独立にH、OH、OCH、OCのいずれかであり、RはH、CH、C又はC(フェニル基)である。)
【0019】
上記式(3)で表されるモノマー化合物として、具体的には、4−(2−ヒドロキシエトキシ)安息香酸、4−(3−ヒドロキシプロポキシ)安息香酸、4−(4−ヒドロキシブトキシ)安息香酸、4−(5−ヒドロキシヘプトキシ)安息香酸、4−(6−ヒドロキシヘキトキシ)安息香酸、4−(7−ヒドロキシヘプトキシ)安息香酸、4−(8−ヒドロキシオクトキシ)安息香酸、4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−メトキシ安息香酸、4−(3−ヒドロキシプロポキシ)−3−メトキシ安息香酸、4−(4−ヒドロキシブトキシ)−3−メトキシ安息香酸、4−(5−ヒドロキシヘプトキシ)−3−メトキシ安息香酸、4−(6−ヒドロキシヘキトキシ)−3−メトキシ安息香酸、4−(7−ヒドロキシヘプトキシ)−3−メトキシ安息香酸、4−(8−ヒドロキシオクトキシ)−3−メトキシ安息香酸、4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3,5−ジメトキシ安息香酸、4−(3−ヒドロキシプロポキシ)−3,5−ジメトキシ安息香酸、4−(4−ヒドロキシブトキシ)−3,5−ジメトキシ安息香酸、4−(5−ヒドロキシヘプトキシ)−3,5−ジメトキシ安息香酸、4−(6−ヒドロキシヘキトキシ)−3,5−ジメトキシ安息香酸、4−(7−ヒドロキシヘプトキシ)−3,5−ジメトキシ安息香酸、4−(8−ヒドロキシオクトキシ)−3,5−ジメトキシ安息香酸およびそのメチルエステル、エチルエステル、フェニルエステルが挙げられる。
【0020】
上記に挙げた前記式(3)のモノマー化合物の中でも、特に4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−メトキシ安息香酸、4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3,5−ジメトキシ安息香酸、およびそれらのメチルエステル、エチルエステル、フェニルエステルが好ましい。その理由は、原料である4−ヒドロキシ−3−メトキシ安息香酸(バニリン酸とも言う)及び4−ヒドロキシ−3,5−ジメトキシ安息香酸(シリンガ酸とも言う)は糖質や木質、またはグルコースからの発酵により作ることができるため再生可能な資源として入手可能であるからである。
【0021】
前記式(1)の構成単位よりなる植物由来成分を有するポリエステル樹脂の製造方法においては、前記式(3)のモノマー化合物の反応時に撹拌して、生成するアルコール、水、フェノールなどを留出させることが好ましく、反応系は窒素などの原料、反応混合物に対し不活性なガスの雰囲気に保つことが好ましい。窒素以外の不活性ガスとしては、アルゴンなどを挙げることができる。
【0022】
本発明において用いられる前記式(1)の構成単位よりなる植物由来成分を有するポリエステル樹脂の製造方法については、反応初期には常圧で加熱反応させることが肝要である。これはオリゴマー化反応を進行させ、反応後期に減圧してアルコールなどを留去する際、未反応のモノマー化合物の留出を防ぐためである。本発明にかかる製造方法においてはアルコールなどを適宜系(反応器)から除去することにより反応を進めることができる。そのためには、減圧することが効果的である。また、反応温度は、重合反応を適切に進める為には重合温度は200℃〜300℃の範囲であることが好ましい。
【0023】
重合触媒としては、周期律表第I族のリチウム、ナトリウム、カリウム等、周期律表同第II族のカルシウム、ストロンチウム、バリウム、モリブデン、ニッケル、銅、銀、水銀、鉛、白金、パラジウム、アルミニウム、ガリウム、ゲルマニウム、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、マンガン、鉄、及びコバルトの、酸化物、水酸化物、アルコキシド、カルボン酸塩、炭酸塩、蓚酸塩、有機錯体、及びハロゲン化物等からなる群から選択された少なくとも1種の金属元素成分が含有された化合物および含窒素有機化合物を使用することが可能であるが、チタン、モリブデン、マンガン、コバルト、及びゲルマニウムからなる群から選択された少なくとも1種の金属元素成分が含有された化合物が好ましく、特にチタン化合物が好ましい。
【0024】
重合触媒として好ましいチタン化合物としては、具体的には、例えば、テトラ−n−プロピルチタネート、テトラ−i−プロピルチタネート、テトラ−n−ブチルチタネート、テトラ−n−ブチルチタネートテトラマー、テトラ−t−ブチルチタネート、テトラシクロヘキシルチタネート、テトラフェニルチタネート、テトラベンジルチタネート、ジイソプロポキシチタンビス(トリエタノールアミネート)、チタンテトラキス(2−エチル−1−ヘキサノラート)、チタンジイソプロポキシビス(2、4−ペンタンジオネート)、酢酸チタン、蓚酸チタン、乳酸チタン、チタンアセチルアセトナート、蓚酸チタンカリウム、蓚酸チタンナトリウム、チタン酸カリウム、チタン酸ナトリウム、チタン酸− 水酸化アルミニウム混合物、塩化チタン、塩化チタン−塩化アルミニウム混合物、臭化チタン、フッ化チタン、六フッ化チタン酸カリウム、六フッ化チタン酸コバルト、六フッ化チタン酸マンガン、六フッ化チタン酸アンモニウム、チタンアセチルアセトナートやその他のチタン錯体化合物などが挙げられ、中でも、テトラ−n−プロピルチタネート、テトラ−i−プロピルチタネート、テトラ−n−ブチルチタネート、ジイソプロポキシチタンビス(トリエタノールアミネート)、チタンジイソプロポキシビス(2、4−ペンタンジオネート)、蓚酸チタン、蓚酸チタンカリウムが好ましい。
【0025】
また、前記式(1)の構成単位よりなる植物由来成分を有するポリエステル樹脂の重合触媒として使用できるチタン以外の金属元素の化合物としては、二酸化ゲルマニウム、四酸化ゲルマニウム、水酸化ゲルマニウム、ゲルマニウムテトラエトキシド、ゲルマニウムテトラブトキシド、蓚酸ゲルマニウム等のゲルマニウム化合物、酸化マンガン、水酸化マンガン、マンガンメトキサイド、酢酸マンガン、安息香酸マンガン、マンガンアセチルアセトナート、塩化マンガン等のマンガン化合物、蟻酸コバルト、酢酸コバルト、ステアリン酸コバルト、ナフテン酸コバルト、安息香酸コバルト、コバルトアセチルアセトナート、炭酸コバルト、蓚酸コバルト、塩化コバルト、臭化コバルト等のコバルト化合物等が挙げられる。
【0026】
更に、上記の金属化合物に加えて、周期律表第I族の金属化合物、例えば、酢酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム等、周期律表第II族の金属の化合物、例えば、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、酢酸カルシウム、炭酸カルシウム、酸化バリウム、水酸化バリウム、酢酸バリウム、炭酸バリウム等、その他、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、酢酸アンチモン、メトキシアンチモン、トリフェニルアンチモン、アンチモングリコレート、酢酸亜鉛、安息香酸亜鉛、亜鉛メトキサイド、亜鉛アセチルアセトナート、塩化亜鉛、酸化鉛、メチルメルカプチド鉛、酢酸カドミウムなどを補助的に重合触媒として使用しても良いが、これらの金属化合物を多量に使うと、物性が著しく劣ったポリエステルしか得られないことがあり好ましくない。
【0027】
また、前記式(1)の構成単位よりなる植物由来成分を有するポリエステルの製造方法における重合触媒として使用できる含窒素有機化合物としては、具体的には、例えば、4−ジメチルアミノピリジン(DMAP)、2−ジメチルアミノピリジン、1−メチルイミダゾール、2−メチルイミダゾール、1−エチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、ビピリジン、4−ピロリジノピリジン、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2.]オクタン(DABCO)、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン(DBU)等が挙げられる。
【0028】
また、上記の金属化合物および含窒素有機化合物から選ばれる2種類以上のものを混合して、本発明において用いられる前記式(1)の構成単位よりなる植物由来成分を有するポリエステル樹脂の製造方法における重合触媒として使用することもできる。
【0029】
本発明にて用いられる前記式(1)の構成単位よりなる植物由来成分を有するポリエステル樹脂の製造方法における上記の重合触媒の使用量は、前記式(3)のモノマー化合物1モルに対し、好ましくは1×10−9〜1×10−3モル、より好ましくは1×10−8〜5×10−4モルの範囲で選ばれる。また反応は不活性ガス下で行うことが好ましい。不活性ガスとしては、窒素、アルゴン、ヘリウムなどを挙げることができる。更に、必要に応じて酸化防止剤等の添加剤を加えてもよい。
【0030】
本発明のポリエステル樹脂組成物は単独で用いてもよく、また本発明の目的を損なわない範囲で他の熱可塑性ポリマー(例えば、ポリアリレート、液晶性ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリウレタン、シリコーン、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンスルフィド、ポリスルホン、ポリエチレンおよびポリプロピレンなどのポリオレフィンなど)、充填剤(ガラス繊維、炭素繊維、天然繊維、有機繊維、セラミックスファイバー、セラミックビーズ、タルク、クレーおよびマイカなど)、天然高分子(ポリヒドロキシブチレート(PHB)、ポリヒドロキシブチレート/バリレート、ポリヒドロキシバリレート/ヘキサノエート、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリブチレンサクシネート(PBS)、ポリブチレンサクシネート/アジペート、ポリエチレンサクシネート、ポリ乳酸樹脂、ポリリンゴ酸、ポリグリコール酸、ポリジオキサノン、ポリ(2−オキセタノン)等の脂肪族ポリエステル;ポリブチレンサクシネート/テレフタレート、ポリブチレンアジペート/テレフタレート、ポリテトラメチレンアジペート/テレフタレート等の脂肪族芳香族コポリエステル;デンプン、セルロース、キチン、キトサン、グルテン、ゼラチン、ゼイン、大豆タンパク、コラーゲン、ケラチン)、酸化防止剤(ヒンダードフェノール系化合物、イオウ系酸化防止剤など)、難燃添加剤(リン系、ブロモ系など)、紫外線吸収剤(ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、シアノアクリレート系など)、流動改質剤、着色剤、光拡散剤、赤外線吸収剤、有機顔料、無機顔料、離形剤などを添加したものでもよい。
【実施例】
【0031】
以下の実施例により本発明の詳細をより具体的に説明する。しかし、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。本発明の趣旨に合致する限り他の実施の形態も本発明の範疇に属し得ることは言うまでもない。各物性の測定方法について以下に示す。
【0032】
1)還元粘度ηsp/C
ポリマー(ポリエステル)試料0.06gを、1,1,2,2−テトラクロロエタンとp−クロロフェノールとの質量比8:5の混合溶媒10mL(ポリマー濃度が約0.6g/dL)に溶解した試料溶液を用いて、濃度35℃にて、ウベローデ粘度計を使用して測定した結果より、下記式にて求めた。
ηsp/C[dL/g]=(t/t−1)/0.6
t:試料溶液のフロータイム
:溶媒のみのフロータイム
【0033】
2)ガラス転移温度、融点
TA Instruments社製DSC (型式DSC2920)により、昇温速度10℃/min、2nd Runにて測定した。
【0034】
3)5%質量減少温度
Rigaku社製 TGA (型式 TG 8120 Thermo plus)により測定した。
【0035】
4)生物起源物質含有率
ASTM D6866 08に準拠し、放射性炭素濃度(percent modern carbon;C14)による生物起源物質含有率試験から、生物起源含有物質率を測定した。
【0036】
[参考例1] ポリエステル樹脂の合成
4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−メトキシ安息香酸メチル50g(0.221モル)を反応器に入れ、重合触媒としてテトラ−n−ブチルチタネートを0.0225g(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−メトキシ安息香酸メチル成分1モルに対して3×10−4モル)仕込んで窒素雰囲気下常圧で180℃に加熱し溶融させた。
撹拌下、反応槽内を1時間かけて徐々に205℃まで温度を上げながら、生成するメタノールを留去し、この状態で1時間かけて100Torr(13.3kPa)まで徐々に減圧し、さらにメタノールを留去した。
次いで、285℃まで徐々に昇温し、285℃に到達後、更に減圧した。最終的に、0.75Torr(0.1kPa)、285℃で2時間反応せしめた。その結果、還元粘度0.51dL/gのポリエステル樹脂が得られた。融点が273℃であり、ガラス転移温度(Tg)が84℃であり、且つ5%質量減少温度(Td)が397℃と耐熱性、熱安定性いずれも良好であった。
【0037】
[実施例1]
参考例1で得られたポリエステル樹脂10質量部とポリエチレンテレフタレート樹脂(帝人株式会社製FK−OM 還元粘度 0.854dL/g、融点 258℃、ガラス転移温度 82℃、5%質量減少温度 365℃)90質量部をSTEER OSADA ENG社製 二軸押出機(α―18 TWIN SCREW EXTRODER)を使用し、以下の条件で混練を行った。
温度 280℃
回転数 300rpm
フィード量 3rpm
ベント部より真空引き実施
その結果、還元粘度が0.734dL/g、融点(Tm)が256℃であり、ガラス転移温度(Tg)が81℃と耐熱性が良好であり、且つ5%質量減少温度(Td)が390℃と熱安定性が良好なポリエステル樹脂組成物が得られた。また、ポリエステル樹脂組成物の生物起源物質含有率は8%であった。
【0038】
[比較例1]
参考例1で得られたポリエステル樹脂を用いず、ポリエチレンテレフタレート樹脂のみを用いた以外は実施例1と同様に二軸押出機を使用し、混練を行った。
その結果、還元粘度が0.747dL/g、融点(Tm)が258℃、ガラス転移温度(Tg)が81℃、5%質量減少温度(Td)が369℃のポリエチレンテレフタレート樹脂が得られた。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明のポリエステル樹脂組成物は、衣料用や産業資材用の繊維、包装用や磁気テープ用などのフィルムやシート、中空成形品であるボトル、その他エンジニアリングプラスチック成形品等多くの分野に利用可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエチレンテレフタレート樹脂50〜99質量部、および下記式(1)の構成単位よりなる植物由来成分を有するポリエステル樹脂1〜50質量部からなり、
(i)融点(Tm)が240〜300℃
(ii)ガラス転移温度(Tg)60〜100℃
であることを特徴とするポリエステル樹脂組成物。
【化1】

(上記式中、Rは炭素数2〜8の脂肪族基、R、Rはそれぞれ独立にH、OH、OCH、OCのいずれかである。)
【請求項2】
ASTM D6866 10に準拠して測定された生物起源物質含有率が1〜50%である請求項1に記載のポリエステル樹脂組成物。
【請求項3】
請求項1の式(1)で表されるポリエステル構成単位が下記式(2)で表される4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−メトキシ安息香酸由来のポリエステル構成単位であることを特徴とする請求項1または2に記載のポリエステル樹脂組成物。
【化2】


【公開番号】特開2012−107082(P2012−107082A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−254860(P2010−254860)
【出願日】平成22年11月15日(2010.11.15)
【出願人】(000003001)帝人株式会社 (1,209)
【Fターム(参考)】